映画「シン・ゴジラ」…現実?(ニッポン)対虚構(ゴジラ)
制作年・2016年 制作国:日本 上映時間:120分
土曜の夕方、おおたかの森SCのシネコンで観たのは久々の日本製ゴジラ作品.
ハリウッド版は2年前に観た気もするけど、記憶にも残ってない始末(笑).
今度は庵野版だ、期待と不安の半々で臨んで観た.今年累積96本目の鑑賞.
「ヱヴァンゲリヲン」シリーズの庵野秀明が脚本と総監督、「のぼうの城」「進撃の巨人」の
樋口真嗣が監督と特技監督を務め、世界的怪獣キャラクター“ゴジラ”を日本版としては
12年ぶりに復活させた特撮アクション大作.
謎の巨大不明生物“ゴジラ”の出現という未曾有の国難に直面した現代の日本を舞台に、
全てが想定外の中でギリギリの決断を迫られる政府関係機関の緊急対応の行方と、
ゴジラに立ち向かう人類の運命を、綿密なリサーチに基づくリアルなストーリー展開と迫力
の戦闘アクションで描き出す.
主演は「地獄でなぜ悪い」「進撃の巨人」の長谷川博己、共演に竹野内豊、石原さとみ.
そのほか大杉漣、柄本明、高良健吾、余貴美子、國村隼、市川実日子はじめ実力派
キャストが多数出演.
東京湾・羽田沖.突如、東京湾アクアトンネルが崩落する重大事故が発生する.
すぐさま総理以下、各閣僚が出席する緊急会議が開かれ、地震や火山などの原因が
議論される中、内閣官房副長官・矢口蘭堂は未知の巨大生物の可能性を指摘し、
上官にたしなめられてしまう.
しかしその直後、実際に巨大不明生物が海上に姿を現わし、政府関係者を愕然とさせる.
のちに“ゴジラ”と名付けられるその巨大不明生物は鎌倉に上陸し、逃げまどう人々など
お構いなしに街を蹂躙していく.
やがて政府は緊急対策本部を設置するが、対応は後手後手に.
一方、米国国務省が女性エージェントのカヨコ・アン・パタースンを派遣するなど、
世界各国も事態の推移と日本政府の対応に強い関心を示していく.
そんな中、様々な思惑が交錯する関係機関をまとめ上げ、ゴジラによるこれ以上の破壊を
食い止めようと奔走する矢口だったが….
以上は<allcinema>から転載.
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やっぱり庵野だ、切り口が従来のゴジラ映画と全く異なり、またハリウッド版とも異をなす.
未曾有の進化生物とゴジラをとらえ、その対処に右往左往する日本社会、いや政府の
動きに焦点をあて、淡々と表現する.そのクリアな視点はぶれていない.
先入観だらけ、既成概念だらけの政府閣僚は先ず初動から間違いを犯す.
会議だらけ、会議でしか決まらない指針や対策.官僚たちの進言にただ頷くだけの
総理大臣…大杉漣が演ずる.
防衛大臣を演ずる余貴美子がなにやら東京都知事に成り上がった某K元防衛大臣を
彷彿とさせるのは、たいした予見力かも….でも、こいつら総理、防衛大臣が乗った
ヘリもゴジラの吐く放射能火炎に吹っ飛ばされ、内閣一掃状態となってしまう.
その後の内閣再立の根回しやいきさつもいかにも今の自民党政治、いや政治屋の
思惑が見え隠れして面白い.全く能力も才覚もないと思われる農林水産大臣;大泉成が
総理代行へ推される.
そこへ、たたみかけるように無理難題をふかっけてくる世界の警察、アメリカ政府.
日米安保の行き着く先なんてこんなものであろう、ゴジラが居座る東京に熱核爆弾を
投下しようとする.二度も日本に核を使った奴らの頭の中には、三度目も…有るのである.
さて、どうする? 日本政府….
なにやらきな臭い匂いもするようなきわどいテーマを淡々と描く手腕は、単なる怪獣映画
とは一線をかす.これは政治課題を裏に抱えた近未来SF作品.
解決に導くのは、各政府機関から弾かれた無頼集団.切れの良い解析や判断が飛び交う.
環境省自然環境局の課長補佐という役どころの市川実日子がよく目立つ好演.
日本を救おうとする一生懸命な気持ちだけで、一気に解決へばく進する.
映像的には、過去のゴジラの中では最大の身長を誇る体軀の表現はよく出来ている.
大きいがゆえに、引いた画像でもそのゴジラの存在感が際立つ.鎌倉から上陸し、
多摩川を北上して、武蔵小杉で自衛隊と一戦を交えるシーンはよく出来ている.
10式戦車の特徴を良く表した走行中の射撃シーンは大迫力.上手いなぁ、映像造りが.
最も進化した生物としてのゴジラの防衛能力は秀逸.B2爆撃機も撃墜してしまう.
過去のゴジラ映画へのリスペクトも忘れてはいない.
エンディング・テーマは、伊福部昭の「ゴジラのテーマ」.
今でも通用する立派な曲だ.
たかが、と言っては失礼だが、ゴジラものでこんなに感動するとは…意外だけど、
庵野秀明総監督の仕事だ、当たり前と思うべきだろう.
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