映画「レジェンド&バタフライ」…さすが綾瀬はるか!!
製作年:2023年 製作国:日本 上映時間:168分
キムタクはそんなに好きでは無いけど、綾瀬はるかは大ファンなのだ.
循環器の定期健診や父のホームの後片付けをこなしながらも、公開初日
にMovie柏の葉の夕方の回に飛び込む.本年度累積23本目の鑑賞.
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木村拓哉と綾瀬はるかの共演で織田信長と正室・濃姫の知られざる物語
を描く、東映70周年を記念して製作された歴史大作.
格好ばかりで「大うつけ」と呼ばれる尾張の織田信長は、敵対する隣国・
美濃の濃姫と政略結婚する.信長は嫁いで来た濃姫を尊大な態度で迎え、
勝ち気な濃姫も臆さぬ物言いで信長に対抗.最悪な出会いを果たした2人は、
互いを出し抜いて寝首をかこうと一触即発状態にあった.
そんなある日、尾張に今川義元の大軍が攻め込んでくる。圧倒的な戦力差
に絶望しそうになる信長だったが、濃姫の言葉に励まされ、2人は共に戦術を
練って奇跡的な勝利を収める.
いつしか強い絆で結ばれるようになった信長と濃姫は、天下統一へと
向かって共に歩み出す.
映画「るろうに剣心」シリーズの大友啓史が監督を務め、「コンフィデンスマンJP」
シリーズの古沢良太が脚本を手がけた.
以上は《映画.COM》から転載.
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さすが東映の70周年記念作品だけあって、監督脚本主演陣に申し分ない
お金のかけ方.総制作費20億円だそう.邦画時代劇としては破格の投資だ.
コロナ禍での撮影というハンデを逆に逆手にとってメリットとしたことも快挙だ.
平時では一般に開放し映画では使えないような重要文化財などでの撮影が
許可されたりして、全国30カ所以上という邦画最大規模でのロケ地で撮影が
行なわれ、国宝や重要文化財などがそこかしこに映し出されている.
本作は、「魔王」と呼ばれるなど数々の伝説を作った織田信長が、「蝶」の
ように自由を求めた濃姫との出会いから、その生涯に幕を閉じる激動の
33年間が描かれている.
さて、主役の木村拓哉の演技について.冒頭における当時16歳の織田信長
のヤンチャぶりの表現は既にキムタク臭がプンプン.“うつけ者”だった信長を
表現する為の演出であろうが、無駄なシーンだしキムタクの悪い部分満載.
それから帰蝶と呼ばれた濃姫:綾瀬はるかと政略結婚してからの信長の成長
…濃姫の刺激によって覚醒していく秘めたる器の大きさや暴走しかねない激しさ、
固定観念に囚われない発想の自由さ柔軟さという最重要な資質が得られていく
段階の表現が出来ていないのが本作の脚本、演出、演技の最大欠陥だ.
徐々に変わっていくはずの信長の特質が、エピソード毎に階段状に変わって
いってしまう唐突感が感じられる.反して濃姫;綾瀬はるかの方は一貫した
キャラクターを示し、その躍動感や静的な部分も含めて綾瀬はるかは
見事に演じ切っている.本作に限って言えば綾瀬はるかの演技が圧勝だ.
37歳の綾瀬はるかの美しい横顔の魅力にはまいってしまう.SK-Ⅱ のおかげ
だろうか、透明感あるその皮膚感は圧倒的ジャパニーズ・ビューティだ.
海外販売も意識した造りの作品ゆえ、海外でもうける美しさと思う.
初夜のファイトバトル取っ組み合いシーンでのアクションの上手さ.
「兵を奮い立たせるのじゃ.総大将が、その言霊で!!」、 桶狭間の戦い前夜、
二人で戦略を立てるシーンでの迫力.海を見ながら、目を輝かしてるシーン
でのその情緒的な演技.申し分ない綾瀬はるかワールドの構築であった.
豊富な脇役陣も魅力なのだが、一番印象に残ったのは宮沢氷魚.
演ずるは織田信長の家臣で織田五大将の一人である“明智十兵衛光秀”.
なかでも宴会の席で、信長の仇敵・朝倉義景、浅井長政と久政、3人の
頭蓋骨を盃にして信長に献上する光秀のシーンは圧倒感がある.
天下統一を掲げ、覇道を突き進む信長に心酔し、配下として共に天下統一
へと突き進む覚悟の表情と、なかば狂気の類まで感じされる宮沢氷魚の演技
にはちょっと感心した.
その後、病魔に襲われた濃姫をかばい愛を注ぐ信長に対しての感情変化.
魔王、覇王と憧れていた人が、〝つまらない〟真人間に堕してしまったことへ
の失望が、強烈な梯子を外されたことへの逆恨み感に変わったいく….
その後の“本能寺の変”に関する明智光秀の動機になるという解釈は、
古沢良太脚本ならでは.
あと面白い役者であることを再認識させられたのは斉藤工.
徳川家康として特赦メイクにより後半で登場する.最初誰だか判らなかった.
エンドロールでようやく判明.したたかで思慮深い家康を見事に演じ切っていた.
オーラスに2種のパターンを見せたが、これは本当に必要だったのか疑問.
もし信長が本能寺から逃げおうせたらば…こうなったかも、のシーンは
ハッピーエンド的で良いのだが、長尺化に寄与しただけの感がある.
過去作だが綾瀬はるかがタイムスリップして本能寺の信長を救出しようと
する名作「本能寺ホテル」を想い出してしまった(笑).
70周年記念作の意気込みは伝わるが、残ったのは綾瀬はるかの演技の
上手さの印象の168分間だった.
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