「非日常からの呼び声 平野啓一郎が選ぶ西洋美術の名品」@上野国立西洋美術館
昭和の日の2件目の美術展は西洋美術館のコレクションからなる企画展.
若手世代を代表する作家の平野啓一郎氏は、デビュー作である1998年の「日蝕」以来、
西洋文化に対する深い造詣を踏まえた作品を発表してきた.その一方で、字間や余白を
工夫するなど、小説の視覚的な要素に関する視覚的な実験も行っている.
本展覧会は平野氏をゲストキュレーターとして迎え、
彼の芸術観を主に当館所蔵の美術作品によって展覧する試み.
本展では「非日常からの呼び声」という、平野氏自身が選んだテーマのもとに、
氏が自身の美術的・視覚的な感性を展覧会という場で発揮します.
非日常の光景あるいは非日常の世界へと誘う光景を描いた作品を、平野氏による解説と
ともに展示し、観客の皆さんが作品に対する視線を氏と共有することを目的とします.
以上は国立西洋美術館のHPから抜粋.
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先週のNHK日曜美術館でも紹介されたのだけれども、
いきなり、初っ端からマックス・クリンガーの「行為」から始まる.
その衝撃でまず、ノックアウトされちゃう….
“非日常”という言葉がこんなにもふさわしい作品があるだろうか?
拾おうとする謎の手袋.ちょっと傾斜した婦人像.その先に浸りの男に
連れ去れる婦人共々やはり不自然な傾斜を見せる….
キュレーターの平野啓一郎は23歳にして芥川賞を受賞した才人.
読んだことがあるのは「葬送」くらいだろうか、ショパンやジョルジュ・サンドの
どろどろした関係を描いた作品の印象しか無い.
平野啓一郎の「実験的作品」には視覚に訴える工夫が施せられている.
例えば芥川賞受賞の「日蝕」においては見開きを空白の真っ白なページにしたり、
視覚的、絵画的な志向の強い文学者なのだろう.
そんな平野がキュレーターとして選んだ作品は、意外にも素直なコンビネーションを見せる.
題名「非日常からの呼び声」にふさわしい作品が全32点.西洋美術館のお馴染みの
コレクションからでも副長の好きな作品が軒並み並んでいて、嬉しくなる企画.
中でも愁眉のものはこれ.
ヴィルヘルム・ハンマースホイ《ピアノを弾く妻イーダのいる室内》
1910年油彩、カンヴァス 国立西洋美術館
1910年油彩、カンヴァス 国立西洋美術館
数年前の個展ですっかりフアンになったハンマースホイ.
その作品の中でも決して顔を見せない愛妻イーダが背中を見せて
ピアノを弾く姿に目がいくのだが、その実この画の主題は手前の
テーブルの上にある銀の灰皿だという….
そんな非日常感がしみじみと体にしみわたる企画展.
こんなシリーズを今後も希望したいなぁ….
西洋美術館、やるじゃんっ!
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