神楽坂ギンレイホールでの2本目はチェコ/スロバキアの合作映画.
本年78本目は昨年末日本公開の名作.
チェコの巨匠イジー・メンツェル監督が、チェコを代表する作家フラバル
のベストセラーを映画化したコメディ・ドラマ.
ナチス・ドイツとスターリン主義のソ連という2つの強国に翻弄された
小国チェコの現代史を、権力とは無縁でありながらも自らの才覚と
裡に秘めた抵抗精神でたくましく生き抜いた一人の給仕人の人生を
通して軽妙に綴った小品.
主人公:ヤン・ジーチェ役は二人一役、
若いヤンはブルガリア人のイヴァン・バルネフ、
老ヤンはチェコ人のオルドジフ・カイゼルが演じている.
妻リーザ役にドイツ人イリア・イェンチ.
背丈は小さくても百万長者になるという大きな夢を抱く青年、ヤン.
田舎町のホテルでレストランの見習い給仕となった彼は、順調にステップ・アップ
を重ねていつしかプラハ随一の“ホテル・パリ”で主任給仕となる.
一方、隣国ドイツではヒトラーが台頭、やがてプラハもナチスの占領下となっていく.
そんな中、ズデーデン地方のドイツ人女性リーザと出会い、恋に落ちるヤン….
大戦中のチェコにおいて、ドイツ人とチェコ人の結婚という不遇?な環境.
妻は圧倒的なアーリア人優性論者.当然ヒットラー信奉者でもある.
妻は自ら戦場に赴き、ユダヤ人の財産(切手)を搾取して帰ってくる.
が、その切手の為に命を落としてしまう…極めて象徴的な出来事.
搾取した者の命の代償で主人公は一旦は大金持ちになるが、
幸と不幸は裏返し…直ぐに全てを失い、投獄される.
ホテル・パリでの給仕長
(名優マルチン・フバ)はチェコ人としての気概を見せる.
ナチスにこびる事無く、主人公とも対立し、
最後は収容所送りとなる.
この人が実は“英国王給仕人”
…かつて英国王に付いたという伝説の給仕人.
主人公でもないのに、この映画のタイトルバック(邦題)になってしまう(笑).
彼と主人公がナチス政権下での両対照を演ずる.
これがチェコ/スロバキアの当時をよく表現している事に感心.
二人の給仕人の人生を描いて、またチェコ/スロバキアの過去をも描く手腕に脱帽.
観たかったけど単館上映で見られなかった小品.
良い作品を程よい小屋で静かに鑑賞出来る幸せに大満足.
やはり、神楽坂詣でをやめられない….
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