映画「ミッドナイト・イン・パリ」…甘さも棘も、やはりアレン風.
原題:MIDNIGHT IN PARIS 製作年度:2011年 製作国:スペイン/アメリカ 上映時間 94分
風邪からも完全復活して、早速の映画鑑賞も復活.
本年63本目はウディ・アレンの出演しないウディ作品.
本国アメリカではウディ・アレン監督作としては最大ヒットとなったファンタジー・コメディ.
作家志望のアメリカ人男性が、ひょんなことからヘミングウェイやフィッツジェラルド、
ピカソといった伝説の作家や芸術家たちが集う憧れの1920年代パリに迷い込み、
幻想的で魅惑的な時間を過ごすさま を、ノスタルジックかつロマンティックに綴る.
主演はオーウェン・ウィルソン.共演にレイチェル・マクアダムス、マリオン・コティヤール、
キャシー・ベイツ、マイケル・シーン.また、フランス大統領夫人カーラ・ブルーニの
出演も話題になった.
ハリウッドでの成功を手にした売れっ子脚本家のギル(オーウェン・ウィルソン).
しかし、脚本の仕事はお金にはなるが満足感は得られず、早く本格的な小説家に
転身したいと処女小説の執筆に悪戦苦闘中.
そんな彼は、婚約者イネズ(レイチェル・マクアダムス)の父親の出張旅行に便乗して
憧れの地パリを訪れ、胸躍らせる.ところが、スノッブで何かと鼻につくイネズの
男友達ポール(マイケル・シーン)の出現に興をそがれ、ひとり真夜中のパリを彷徨うこと.
するとそこに一台のクラシック・プジョーが現われ、誘われるままに乗り込むギル.
そして辿り着いたのは、パーティで盛り上がる古めかしい社交クラブ.
彼はそこでフィッツジェラルド夫妻やジャン・コクトー、ヘミングウェイといった
今は亡き偉人たちを紹介され、自分が1920年代のパリに迷い込んでしまったことを知る.
やがてはピカソの愛人アドリアナ(マリオン・コティヤール)と出逢い、惹かれ合っていくギルだが….
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“パリは魔窟の街”…歴史ある、芸術に満ち、活気溢れたパリに魅せられた男の物語.
それは主人公だけではなく、タイムスリップした先で待ち受けるコクトーやピカソ、そして
ヘミングウェイだって、パリの魅力に魅せられて虜になっていたのだから….
毎夜毎夜クラシックな黄色のプジョーに乗ると1920年代のパリにタイムスリップしてしまう、
SFと言えるような、言えないようなウディ・アレンらしい味付け.
1920年代に待ち受けるのは、名うての芸術の達人たち.しかもみんな親切だ(笑).
芸術家との知的な会話のやりとりの楽しいこと.
挙げ句の果てに、主人公ギルはアドリアナ(マリオン・コティヤール)と手を取って、
もうワンステップ1890年代にタイムスリップしてみせる.
待ち受けるのはロートレックにドガやゴーギャン!!もう夢の世界…♪.
そんな楽しいミッド・ナイトと対照的な昼間のパリの生活は陳腐な環境.
“パリのアメリカ人”を地でいくようなジルの婚約者とその両親.
フランス人がもっとも嫌い、小馬鹿にする典型的プチブルのアメリカ人.
芸術を解さず、歴史に浅く、舌の狂った、新大陸人…アメリカ人.
俗物なブランド信者の母親、ジルを信用せず探偵に尾行までさせる父親.
ほんとにいけすかない両親の元に育った娘は、ジルの願望より安定した収入の
仕事に就くことをせがむ、そして自分にはない知的な博識ぶった嫌みな男友達
マイケル・シーンと浮気までしてしまう….
アメリカ人なのにアメリカの軽薄短小、成金無教養を笑うウディ・アレン、洒脱な腕と思う.
本作品、アメリカで大ヒットしたというけど、ほんとに奴ら分かっているのかな?
出てくる女優陣の競演にも心ときめいた.婚約者を演ずるレイチェル・マクアダムスの
はしゃいだ演技の可愛らしさ、それとは正反対の魅力で主人公を恋に落としてしまう
マリオン・コティヤールの美しさと魅力.ゴーギャンのたっくそな英語を翻訳してみせる.
英仏語を上手くこなす彼女にうってつけの役柄.この人はほんとに作品毎にその美貌と
魅力の種類が違う…多彩な魅力の女優さんだ.好きだなぁ….
そして…問題?の元大統領夫人:カーラ・ブルーニ、先月の大統領選で敗れたサルコジ仏
前大統領の夫人、前ファースト・レディだね.パリの芸術作品のガイド役.鼻持ちならぬ博識の
アメリカ人教授のマイケル・シーンとロダンの生涯に関して言い争うフランス人ガイドという
恵まれた役柄は、格から来る役得?英語もフランス語綺麗に話す元モデルだけあって姿形も
美しい….天は三物を与えたもうか?(笑).
恥ずかしながら?、パリは何十回も訪れた街.在仏時田舎の西部に住んでいたが、
日本食を買いに、日本人美容師の居る美容院に通うために、毎月1回は
350kmの距離を車でかっ飛ばしてパリまで往復していた.
“街の遊撃手”みたいに凱旋門のロータリーの混雑を泳ぐ様に運転するのが十八番だった….
もう20年前のことだけど、今もパリの姿はまるで変わっていない.
そんな街の姿が冒頭にずっと流れるのだけど、これだけでも当時の想い出が
いっぱい蘇ってきて、心の中に甘いモノと酸っぱいモノがまじりあい…ウッとなった(笑).
素敵な夢みたいな芸術家達との出逢いにときめき、アホなアメリカ人像を笑い、
懐かしいパリの風景にウッと酔う…素敵な94分間の小作品.
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