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今週のランチ事情(2023年第07週)




“王様のごとき昼食”を目指しながらも
なかなか達成できない今週のランチ模様を.

今週も土曜からの記録.

日月は内食、土火水木金は外食.
病院通いの為外食が増えてしまった.

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土曜は出先で外食.

柏の葉の洋食屋
「カマヘイ」にて.

“日替わり定食”


ランチ20230211


ついつい日替わりを頼んでしまう….
この日は、チキンソテー、鰺フライ、
ビーフハンバーグ.

チキンは醤油味のソース.
鰺フライは出来の良いタルタルだ.

ご飯は少なめ、100g.
美味しい白味噌の味噌汁付き.

約850KCal、900円也.

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日曜は自宅で内食.

パスタを茹でた.

“ガリバタ醤油スパゲティとサラダ”


ランチ20230212-2


ベーコン、玉ネギ、しめじを
にんにくとオリーブオイルで炒めて、
2分短めにゆでたパスタ80gを投入.

ソースはオーマイの市販品.


ランチ20230212


8品目サラダには、百鬼ドレッシングで.

合わせて約780KCal、材料費320円也.

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月曜も自宅で内食.

冷蔵庫に牛バラ肉が余っていたので
久々に牛丼を作った.

“グリンピースご飯牛丼”


ランチ20230213


最初に牛肉を砂糖で焼く
関西すき焼き風の作り方で.
赤ワインが隠し味.
ネギだく、しらたきも入れてみた.

余っていたグリンピースご飯の上に.

味噌汁はインスタント+白菜.

約780KCal、材料費290円也.

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火曜は出先で外食.

白内障手術前のPCR検査で
総合病院へ.そのついでで、
ファミレス「Cocos’」にて.

“チキン照り焼きと魚のフライランチ”


ランチ20230214


チキンは和風のおろしソースで.
白身魚はタルタルソース.

ご飯はスモールで100g.

約896KCal、790円也.

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水曜は出先で外食.
午前中から午後3時まで
白内障の手術.

帰宅途中に回転寿司
「くら寿司」へと飛び込んだのは
もう午後4時.

“寿司10皿”


ランチ20230215


支援の意味でスシローへ
行こうかとも思ったが、
ワサビの提供システムの差で
くら寿司をチョイス.

マグロは食べない.
ぶり、はまち、…の白身、青身
ものばっかり.

約850KCal、1150円也.

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木曜は出先で外食.

手術後の診察も快調で、
その後、JRで上野へ直行.

久々に「エーズ CROWN」
に15分間行列に並ぶ.

“カツカレー”


ランチ20230216


座席は一つおき.
ボーイさんがひと皿ずつ、ていねいに
運んでくる…ずいぶんお行儀の良い店
になったもんだ…(笑).

よく煮込まれた、甘みの中にも
秘かに辛さが存在するポーク・カレー
がベース.カツは70g、揚げ立てサクサク
は相変わらずだ♪

約900KCal、570円也.

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金曜も出先で外食.



セブンパークアリオ柏の
「濱乃屋」にて.


“江戸前天丼”



ランチ20230217


普通の並みで充分だね.
江戸前と謳うが差が判らない.

タレは濃口で甘い気がする.
具は海老2尾、南瓜、かき揚げ、海苔
イカ、茄子….

ご飯少なめが嬉しい.
赤だし付き.

約850Kcal、850円也.



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今週もバラエティに富んだランチ.

体重は微減.
元にゆっくり戻っている.

来週も頑張るぞぉ!!

今週もご馳走様.





.

映画「スクロール」…俳優陣がもったいない.


映画「スクロール」-1
製作年:2023年 製作国:日本 上映時間:117分



北村巧海、中川大志、松岡茉優、古川琴音と豪華な若手俳優を揃えた
作品なので、期待をもって近所のシネコンで観賞.本年度累積37本目.
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北村匠海と中川大志が主演を務め、小説家・橋爪駿輝の同名デビュー作
を映画化した青春群像劇.理想と現実のギャップに悩む4人の若者たちが
社会や自分自身と必死に向き合う姿をリアルに描く.

学生時代の友人である“僕”とユウスケは、友人・森が自殺したことを知る.
就職したものの上司からのパワハラに苦しみ、SNSに思いを吐き出すこと
でどうにか自分を保っている“僕”と、刹那的に生きてきたユウスケは、
森の死をきっかけに“生きること”や“愛すること”を見つめ直すように.

そんな彼らに、“僕”の書き込みに共鳴し特別な自分になりたいと願う“私”
と、ユウスケとの結婚が空虚な心を満たしてくれると信じる菜穂の時間が
交錯していく.

“僕”を北村、ユウスケを中川、菜穂を松岡茉優、“私”を古川琴音が演じる.
監督は「CUBE 一度入ったら、最後」「その日、カレーライスができるまで」
の清水康彦.

以上は《映画.COM》から転載.
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先週観た「かそけきサンカヨウ」は高校生ならではの悩みや苦闘を
描いた群像劇であったが、本作は大学を出て社会人となった若者
たちの群像劇だ.その分ドロドロしていて爽やかさは皆無だ.

大学を出て働き始めたがパワハラ上司に悩みSNSに詩の様な吐露
を投稿する僕:北村巧海.
僕の投稿を引用しあっさり会社を辞めちゃう僕の同僚の私:古川琴音.
誰だか思い出せない「森」からの電話を無視した元チャラ男のTV局
社員ユウスケ:中川大志.
ユウスケと出会った結婚が幸せの全てと考える菜穂:松岡茉優.

そんな4人が僕とユウスケの大学時代の同級生「森」の自殺が切っ掛け
で動き出すストーリー.親友というレベルでもない友人…かつて写真に一緒に
写っているだけの関係? が自殺したことから色々考える中川大志と、
その共通の友人で無気力な北村匠海がダブル主人公を演ずる.

映画「スクロール」-2

映画「スクロール」-3


四人の主役級俳優が出ている割には、それぞれの特性が活かされず、
不発に終わった感がしてならない脚本と演出.
ひと言で言うと、もったいない.

パワハラ上司や空気を読まず詮索してくるお局など、あるあるながら
自業自得な面もあり、登場人物達に感情移入はとても出来ない.
好きな松岡茉優が、ありきたりな結婚をゴールとする“重たい”女の
演技にはへきへきしてしまう.

四人の中で唯一好感を持てるのは“私”…古川琴音のみだろうか.
うざいパワハラ上司の目前で「死んで欲しい」と言い切って、会社を辞めたり
最後で吐くセリフ「社会が何もしてくれなかったんじゃない、自分が社会に
何もしてこなかったんだ」なんて決めてくれるなぁと感心.

あと、出番はほんのちょっとだけど、主人公たちが通うバーの女主人の
MEGUMIのキャラが魅力的なのだが、作途中で閉店廃業してしまう.
北村巧海と中川大志が物欲しそうに窓からそのバーの中を覗くシーンが
観客達の寂しい気持ちをも代弁してくれていた.

社会という枠の中で上手に生きられない若者たちの葛藤を描き、
テーマ的にも自殺とかパワハラとか放火とか男女の修羅場とか
重いシーンが山積みなのだけど、不思議に感動が少ない.
ミニシアター系の不条理作品映画みたいな印象で終わってしまう.

なんだか俳優陣がもったいないと感じるだけの作品.


映画「デュアル」(DVD観賞)…ブラックな結末のサスペンス.


映画「デュアル」(DVD観賞)-1
原題:Dual 製作年:2022年
製作国:アメリカ 上映時間:95分


レンタルDVDの新作紹介予告で面白そうに見えて、借りてきた新作.
近未来SFの形は取っているが、見事なサスペンス・ホラー?とでも
言うべき作品だった.本年度累積36本目の鑑賞.
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「ジュマンジ」シリーズのカレン・ギランが主演を務め、クローンとその
オリジナルである女性の生き残りをかけた死闘を描いたSFサスペンス.

ある日突然、自分が病で余命わずかだと知ったサラは、死期の迫った者
が遺族を癒すために自身のクローンを作るプログラム「リプレイスメント
(継承者)」の利用を決意する.

残された時間をクローンへの引き継ぎに充てるサラは、恋人や母親と
親しくなっていくクローンの姿に寂しさを覚える.そんな矢先、彼女の病が
奇跡的に完治したことが判明.

クローンとの共存は法律で禁止されているため、サラは自らのクローンと
の決闘裁判に挑むことになる.

サラをサポートするトレーナー役を「ニード・フォー・スピード」のアーロン・
ポールが演じ、「ダイバージェント」シリーズのテオ・ジェームズが共演.
「恐怖のセンセイ」のライリー・ステアンズが監督・脚本を手がけた.

以上は《映画.COM》から転載.
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1時間ほどでクローン人間が複製できるほど進歩した近未来.
されど、法制度は全く進歩しておらず、クローンが作れるのは
死に至る病を持つ者が遺族の為にだけ残す目的だけに許される
というのは、まだ理解出来るが、不幸にも死に至らなかった際に
併共存は許されず、決闘でどちらかが生き残る仕組みには驚き
を通り越して、笑うしかない.

しかも、その決闘の場は公開でTV中継でさらしものにされるという
おまけまで付いてくる.

ヒロイン・サラ:カレン・ギランがその自堕落な生活がゆえに不治の病と
診断され、余命いくばくかと宣言されてしまう.勧められるがままに
「リプレイスメント」プログラムを利用してクローンを作ってしまう.

ここで二人のサラが存在してしまうので、元の方は「オリジナル」、
クローンの方は「ダブル」と呼ばれる.


映画「デュアル」(DVD観賞)-2


違うのは、外観上はクローン再生の手違いで眼の色だけなのだが、
内面的には少し違う様相を見せてくる.オリジナルは恋人とか肉親と
のコミュニケーション不全を示すのに、ダブルは彼らとうまく付き合って
いける….それを見てオリジナルはダブルに嫌悪感を抱き始める.

そこへきて、突然にオリジナルの死に至る病が消失していることが
判る.当然ダブルは生存を希望し、決闘裁判になってしまう.

恋人や毒親に主体性を奪われてきたサラが、自分のクローンと殺し合う
ハメになるシュールなブラックコメディ化してきてしまうのだが、ここから
物語は別なモードに切り替わってくる.

サラは決闘のために訓練を積む過程で、戦闘術を教えてくれるコーチ:
アーロン・ポールの元に肉体改造に励むかたわら、内面改造もして
自分自身を獲得していく物語に転換していく.


映画「デュアル」(DVD観賞)-3


アーロンポール演ずるコーチのキャラがなかなか名コーチっぷりであり、
サラの体つきが締まっていくし、その精神的な攻撃性、ダブルを打ち倒す
という気持ちの高ぶりを見事に成長させていく.

本人とクローンが対決する話はウィル・スミス主演の「ジェミニマン」が
記憶に新しいし、ドッペルゲンガー的な存在では、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督
の「複製された男」や、ジョーダン・ピール監督の「アス」などが思い浮かぶ.
クローンという技術をベースにする本作はそれらの作品とはまた別な
視点からの展開をみせてくれる.

紋切り型のSFサバイバルアクションかと思わせて、元の人間とクローンの
アイデンティティや意識・記憶をめぐる問い、家族やパートナーとの
コミュニケーション(あるいはコミュニケーション不全)に対するシニカルな
視点を描いているの構成が本作の基調であろう.

決闘直前にダブルがオリジナルを誘って、まるで断酒会合みたいな集まり
に招待する.それは決闘を済ませ生き残った片割れの会合.生き残った苦しみ
や殺してしまった相方への謝罪の気持ちを告白するもの.
これもまた、決闘方式の犠牲者たちなのであるが、決闘直前に参加して
しまったこの二人の行方は…??

そこで、決闘直前に起きる一つの事件.
結局決闘は行われなかった…決闘に現れた足を引きずってきた女性は
自分はオリジナルだと主張する.相手は現れない.

その後、調査、捜査、聴聞が行われ、最後は裁判まで行われる様が描かれる.
恋人も、母親も、その女性が「オリジナル」だと証言する.
が、恋人がサラが好きなはずのメキシコ料理に誘っても断るし、母親は
カラーコンタクトの手配を電話してくる….

そして最後のシーンは「オリジナル」と称する女性の運転する車の様子.
車はボコボコの状態.「ダブル」は運転に不慣れなはず….
ランナバウトの途中で車を停めてしまい、泣き出してしまう….

その涙の理由はなんだろう?
後悔?、愛惜?、哀惜?、謝罪?、観る者に判断を委ねるブラックな結論、
上手い造りと感じた佳作.


映画「かそけきサンカヨウ」(DVD観賞)…今泉作品で一番好きかも.


映画「かそけきサンカヨウ」-1
製作年:2021年 製作国:日本 上映時間:115分


2年前の公開時、まだ今泉力哉監督にそれほど興味を持っていなかった.
よってスルーしてしまった作品.レンタル屋の棚で見つけて、観てしまった.
本年度累積35本目は静かで穏やかな邦画作品.
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人気作家・窪美澄の同名短編小説を「愛がなんだ」「街の上で」の今泉力哉
監督のメガホンで映画化.

高校生の陽は、幼い頃に母の佐千代が家を出て、父の直とふたり暮らしを
していた.しかし、父が再婚し、義母となった美子とその連れ子の4歳の
ひなたとの4人家族の新たな暮らしが始まった.

そんな新しい暮らしへの戸惑いを、同じ美術部に所属する陸に打ち明ける.
実の母・佐千代への思いを募らせていた陽は、絵描きである佐千代の個展
に陸と一緒に行く約束をする.

陽役をドラマ「ドラゴン桜」「ゆるキャン△2」などで注目され、今泉監督の
「パンとバスと2度目のハツコイ」「mellow」にも出演した志田彩良、
直役を井浦新が演じるほか、鈴鹿央士、石田ひかり、菊池亜希子らが
顔をそろえる.

以上は《映画.COM》から転載.
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辞書で「かそけき」の意味を調べてみた.
「【幽けき】今にも消えてしまいそうなほど薄い、淡い、あるいは
ほのかな様子を表す語」で、古語「幽けし」の連体形だという.

サンカヨウは、普段は白く可憐な花だが、雨に濡れると透明に
変化する「山荷葉」のこと.

サンカヨウの写真
《サンカヨウの花》

儚く消えてしまいそうなほど透き通った、青々とした若者たちの関係性、
家族との関係性や思いというものが、タイトルにきちんと込められている.

サンカヨウは陽:志田彩良が、生まれて最初の記憶に残る、母と一緒に見た花.
3歳の時に、画家の母:石田ひかり が陽を置いて家を出て行った.
以来、父親・直:井浦新と陽は2人暮らし.幼い頃から父の食事の世話を
引き受けて、中3まで父と二人三脚で穏やかに暮らしていた.

そんな生活が変化する.父が再婚することになり、美子:菊池亜希子が
幼いひなたを連れて、同居することになる. 新しい生活、新しい家族に
戸惑いを感ずる陽は美術部の活動に熱中することも出来ない….

急に3歳で生き別れた水彩画家の母親・佐千代が恋しくなる陽.
どうして母は陽を置いて出て行ったのだろう? 私は捨てられたのか?

陽には美術部で一緒の陸:鈴鹿央士という友達がいる.
陸には何も告げずに生みの母親・佐千代の個展に一緒に
出かけるが、母は陽の顔を覚えてなかった….ショックから、
落ち込んだ陽は、陸につれなく当たり、遠ざける.


映画「かそけきサンカヨウ」-2


静かに流れる中で、味わいあるセリフは今泉力哉ならではの脚本と演出.
人と人が、一定の距離をとって、他人の心の領域に踏み込まない.
そこから生まれる「思いやりや、優しさ」.そんな心の澄み切った部分を
今泉力哉監督はそっと繊細に描き出す.

佳作の多い今泉力哉監督だが、過去作の中でも一番好きかもしれない.
穏やかで、静かな作品. 出演者全員が静かなしゃべり方をして激昂する
者がいない.とは言え、ただ静かに物事が進むのでもなく、誰もが幾つか
の心のつかえや障害を持ち、その解決に悩んでいる.

サンカヨウは雨に濡れると花びらが半透明になる可憐な花.
まるで陽みたいに儚く、幽けく(かそけく=消えるように)美しい.
それは少女の頃の一瞬の、純白と純真の汚れなき日々を描いている.

とびきりの不幸ではないないが、自分の環境の何か何処かに歪みを
感じる高校生たちが真っ直ぐに立つ姿が微笑ましい作品.


映画「バビロン」…詰め込み過ぎの189分間.


映画「バビロン」-1
原題:Babylon 製作年:2022年
製作国:アメリカ 上映時間:189分 R15+



ド派手な予告編とブラピ、そしてマーゴット・ロビーに誘われて
TOHOシネマズおおたかの森で本年度34本目に観賞.
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「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督が、ブラッド・ピット、
マーゴット・ロビーら豪華キャストを迎え、1920年代のハリウッド
黄金時代を舞台に撮り上げたドラマ.

チャゼル監督がオリジナル脚本を手がけ、ゴージャスでクレイジー
な映画業界で夢をかなえようとする男女の運命を描く.

夢を抱いてハリウッドへやって来た青年マニーと、彼と意気投合
した新進女優ネリー.サイレント映画で業界を牽引してきた大物
ジャックとの出会いにより、彼らの運命は大きく動き出す.

恐れ知らずで美しいネリーは多くの人々を魅了し、スターの階段
を駆け上がっていく.
やがて、トーキー映画の革命の波が業界に押し寄せ…….

共演には「スパイダーマン」シリーズのトビー・マグワイア、
「レディ・オア・ノット」のサマラ・ウィービング、監督としても活躍
するオリビア・ワイルド、ロックバンド「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ」
のフリーら多彩な顔ぶれが集結.
「ラ・ラ・ランド」のジャスティン・ハーウィッツが音楽を手がけた.

以上は《映画.COM》から転載.
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決して冗長な部分は感じられず、テンポも良いのだが189分間は
やはり長い.前半、中盤、後半でそれぞれ趣が異なる表現になるのだが
一貫性は貫かれてはいる.

冒頭、丘の上の屋敷で夜な夜な開かれる泥酔とエログロナンセンスの狂宴.
前半は乱痴気パーティ、裸、ゲイ、ドラッグ、排泄物、死人を映し出す下品で
悪趣味な描き方ではあったが、1920年代映画産業のひたすら夢と欲望に
満ちた状況を描いている.


映画「バビロン」-2


中盤は20年代から30年代へ、サイレントからトーキーに移り変わる端境期
のハリウッドを舞台に、ジャック:ブラッド・ピットや成り上がったネリー:マーゴット・
ロビーたちが、時代の変化や見えない何かへの配慮に対応できずに歴史の裏
で消え去る様を描く.

トーキー初期に、録音が上手くいかなくネリーが8テイクも撮るシーンには
少々うんざり感が漂う.その困難さを面白可笑しく描きたかったのだろうが、
デミアン・チャゼル監督の無粋な部分を感じてしまった.


映画「バビロン」-3


もう一つの不全に感じた部分.チャゼル監督は「ラ・ラ・ランド」で、自身の
好きな音楽ジャンルであり、世界的に隆盛を誇ったジャズにむけられた
表現で成功したが、本作でも孤高のトランペッター・シドニー・パーマー:
ジョバン・アデホがトーキーの登場に乗じて活躍するシーンがあるのだが、
彼がその後どのように落ちぶれていくかは描かれず、最後場末でプレイ
するシーンで終わってしまう.このエピが必要だったかは疑問.中途半端だ.

本作には「ラ・ラ・ランド」のように切ないラブストーリーという形式が存在
していないので、観客に対してある意味わかりやすい感動を与えくれる
ことはなく、何に感動させたいのか良く分からなかった.

ブラピもマーゴット・ロビーも、乱痴気騒ぎをしていてクレイジーな人たち
だという印象を押し出しているが、無声映画時代のクレイジーな人たちは
ただのバカな存在として冷たく描かれている気がして、愛すべき存在たち
だったという描かれ方ではない.

だから、彼らが時代の流れで、無声映画からトーキ映画の時代に変わった際、
声がダサいという理由で人知れず追い込まれ苦しい思いをしていた可哀想な
存在であることもサラッとしか描かれなかった.懐古趣味による哀愁なんてものも
感じることはできなかった.

落ち目のジャックに対する評論家のエレノアの言葉は救済であり、
同時に死刑の宣告でもあった.
「時代はやがて終わる、あなたは忘れられてゆく、でも100年後にあなたの
フィルムを誰かが映写機にかけたなら、あなたはいつでも甦ることができる」と.

ジャックはそれに耐えられなかった.彼は通りがかりのホテルマンに100ドルを
渡し「これからは君の時代だ」と嘯き、それから自室で命を絶つ….


映画「バビロン」-4


マニーはプロデューサーに成り上がるが、女優生命を絶たれ、ドラッグと
ギャンブルに溺れていくネリーに引きずられメキシコへ逃避しようとするが、
ギャングに「L.Aから出て行け!」と銃を突きつけられ、ジャックやネリー同様に
ハリウッドを去っていく.かくして20年代の輝きは完全に消滅する.

ここら辺りから、エレノアの言葉のような、映画の歴史讃歌みたいな
調子へ突入していく.

20年後、妻と娘を連れたマニーがハリウッドを訪れる.昔ここで働いていたんだ、
とマニーは感慨深く呟くが、娘は「飽きちゃった」と興味さえ示さない.
時は1952年.「赤狩り」によってハリウッド自体が疲弊していたこともあり、
アメリカ人の週末の娯楽は既に映画からテレビへと少しずつ移行していた時代.

マニーは失意に暮れながら近所の映画館に入る.そこで彼はハッと目を瞠る.
上映作品はジーン・ケリーとスタンリー・ドーネンの「雨に唄えば」.
愛憎入り混じった様子でポロポロと涙を流すマニーを離れ、観客の一人一人を、
ほどなく全体を俯瞰で映し出す.客席はほとんど埋まっている.

やがてマニーの目前には、無数の映画史の断片が矢継ぎ早に明滅する.

リュミエール兄弟「ラ・シオタ駅への列車の到着」、ジョルジュ・メリエスの
「月世界旅行」、カール・テオドア・ドライヤーの「裁かるゝジャンヌ」、
ルイス・ブニュエルの「アンダルシアの犬」、ウィリアム・ワイラーの「ベン・ハー」、
スタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」、スティーブン・リズバーガー
の「トロン」、ジェームズ・キャメロンの「ターミネーター2」、「アバター」….
映画史の100年が怒涛のモンタージュとなって画面に押し寄せる.

なんだか、デミアン・チャゼル監督の個人的映画史を押しつけられるようで
心苦しい気持ちにさせられる.
とても共感までには至らなかったのが残念だった.

189分間に詰め込み過ぎの感有り.印象に残ったのはマーゴット・ロビーの
勢いのある思い切った演技だけの感有り.



映画「VETERAN ヴェテラン リベンジ」(DVD観賞)…老優頑張る!


映画「VETERAN ヴェテラン リベンジ」-2
原題:Renegades 製作年:2022年 
製作国:イギリス 上映時間:92分



題名からしてもう内容が判ってしまうアクション映画.
意外なことにイギリス製で舞台はロンドンの下町であった.
本年度累積33本目の鑑賞.
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リー・メジャース、マイケル・パレ、ダニー・トレホらベテランアクション
俳優が集結したリベンジアクション.

軍人バートンは帰国後もPTSDに悩まされ、荒んだ生活を送っていた.
バートンの父と同じ部隊にいた退役軍人カーバーはそんな彼の姿を
見かね、退役軍人の集会へ連れていくことに.

そこで出会ったカーバーの戦友たちとの交流を通し、バートンは
心の平穏を取り戻していく.ある日、カーバーの娘で議員のジュディが
ギャングに脅迫され、仲裁に入ったカーバーが命を落としてしまう.

主人公バートン役に「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」の
ニック・モラン.
ヒューマントラストシネマ渋谷&シネ・リーブル梅田で開催の
「未体験ゾーンの映画たち2023」上映作品.

以上は《映画.COM》から転載.
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邦題を見ると、3年前公開のスティーブン・ラング主演の「ヴェテラン」の
続編かと思いきや、製作国も原題も全く違う事に気付く. ひっかけの偽装
邦題なのだろう.配給元に猛省をうながしたい.

PTSDを抱える退役軍人達に寄り添う人望の厚い少佐がギャングに殺され、
その敵を討たんと復讐に燃える老人達の物語.
とにかくわかりやすいシニアアクション作品、尺も短く好ましい.


映画「VETERAN ヴェテラン リベンジ」-1


世話になった少佐の恨みを晴らすため、老体に鞭打ち強大なギャングに
無茶な闘いを挑んでいく…と思いきや、昔取った杵柄式でみなそれぞれに
強いのだ.

派手なドンパチに格闘戦なんかも結構あって頑張っていて、
非常にわかりやすいし、退屈な場面もないので体感時間もあっという間で
最初から最後まで楽しめる92分間なのだ.

低予算らしく、ドローンで真上から俯瞰するカメラワークが多いのは気になる.
爆発シーンなどのVFXだかがちょっと安っぽいのだが、老優たちの老獪さや
コミカルさで魅せてくれるので我慢できちゃう.

ストレートなストーリーと老優達の演技で低予算ながらなかなか面白い作品.


映画「ザ・コントラクター」(DVD観賞)…きちんとしたアクション作品.


映画「ザ・コントラクター」(DVD観賞)-1
原題:The Contractor 製作年:2022年
製作国:アメリカ 上映時間:104分



たまにはレンタル屋でも新作を借りなきゃね.昨年秋の公開時には
観落とした本作がもうレンタル新作に出てきた.好きな役者クリス・
パイン主演のアクションものを本年度累積32本目に観賞.
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「スター・トレック」「ワンダーウーマン」シリーズのクリス・パインが主演を
務めたアクション.

任務で負傷し、特殊部隊から除隊となったジェームスは、家族を養うために
新たな職を探し、退役軍人で構成された民間軍事組織に雇われる.

リーダーのラスティに命じられ、テロ組織が隠し持つ生物兵器の奪取任務に
ついたジェームスは、かつての戦友マイクとともに精鋭チームを組み、
アメリカからベルリンに飛び立つ.

しかし任務完了間際、何者かの裏切りにより罠にはめられ、チームは壊滅
状態に.異国の地ベルリンで追われる身となったジャームスは、家族のもと
に帰るため孤独な戦いに身を投じる.

主人公ジェームスをパインが演じ、ラスティ役にキーファー・サザーランド、
マイク役にベン・フォスター.

「ジョン・ウィック」シリーズを手がけたプロデューサーのエリカ・リーとベイジル・
イバニクが製作.「Walad Min Al Janna」でカンヌ国際映画祭の脚本賞を
受賞した、スウェーデン出身のタリク・サレが自身初の英語作品として
メガホンをとった.

以上は《映画.COM》から転載.
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愛国心とはなんぞや、という疑問を感じ得ない作品.
主人公ジェームスは幼い頃から、愛国者としての父親が憧れの存在であった.
なんと10歳にも満たない幼少時から腕に星条旗の刺青を掘っていた!

そんな幼少時の想い出シーンがときおりランダムに挟まれる.そんな父親も軍を
除隊になり、目的消失して姿を消してしまったらしい.そんな父を悔やむ自分
は特殊部隊要員として、重要な任務をイラン、アフガニスタンでこなすが、
ある日、組織刷新の名目と膝の怪我の痛み止めとして使っていた、薬物
検出により除隊となってしまう.しかも、退職金も恩給も無しで….

傷心のジェームスが見つけた新しい仕事は、ラスティ:キーファー・サザーランド
が率いる民間軍事組織だった.そこには、戦友のマイク:ベン・フォスターもいた.


映画「ザ・コントラクター」(DVD観賞)-5


アメリカ軍の処遇の酷さにも驚くのだが、そんな退役軍人の受け皿としての
アメリカの民間軍事組織の多さにも驚く.ウクライナ侵略に於いてもロシアの
民間軍事組織、傭兵が話題になったが、米に於いてもそんな組織が、政府の
下請けのような業務をこなしているのであった.

愛国心という得体の知れない感情の化け物に翻弄される主人公、組織には
誰でもが最後には裏切られる、しかし、人は多かれ少なかれ生きる為には
どこかに所属しなければならないジレンマが存在する.そんな流れに一旦は
身を任せた主人公ジェームスを描く.

クリス・パインはかつての若さは影を潜めたが、傷ついた体を鼓舞するような
アクションを見せてくれる.銃撃戦や格闘シーン、そして水中シーンと大活躍だ.
殺してしまった科学者が実は平和利用を目指していたとか、組織の中で誰が
味方で、だれが敵とか、良く出来た脚本で、ドキドキ感もある.

そして、裏切り者だったマイクと供に組織のボス:キーファー・サザーランドとの
一騎打ちに臨んでいく….

役者も脚本もしっかりしていて、ロケも含め金も掛かっている.
B級とは言えない立派な作品.

今週のランチ事情(2023年第06週)



“王様のごとき昼食”を目指しながらの
今週のランチ模様を.

今週も土曜からの記録.

日火木は内食、土月水金は外食.

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土曜は出先で外食.

白内障手術の結果に気をよくして
東京駅ステーションギャラリーへ直行.
そのまま東京駅地下にて.

「 エビス・バー」で.


ランチ20230204-1


“ポークチャップ定食”


ランチ20230204-2


期間限定品.
懐かしい味.
ケチャップベースのソースの味が
よく厚切りの豚肉に合う.

ご飯は少なめ、120g位かな.

バーだからね、黒ビールもお供に.

約850KCal、1000円也.
(エビス黒ビールは600円也)

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日曜は自宅で内食.

久々に焼そばを炒めた.

“野菜たっぷり焼そばとお握り”


野菜たっぷり焼そば


野菜パック100gとベーコン、玉ネギ
さつま揚げの千切りを炒めて、
マルちゃんの生中華麺を投入.
中華スープでほぐしながら、
めんつゆと香り付けの醤油で味付け.

おにぎりはセブン製のしゃけ.
ふっくら握られていて美味しい….

合わせて約880KCal、材料費320円也.

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月曜は出先で外食.

久々のつくばの「餃子の王将」にて.
近所に「大阪王将」もあるのだけど、
業務全体の洗練度と定番メニュウの
美味さなら前者かなと.

“天津飯セット定食”


ランチ20230206


天津飯のたれは3種から“塩だれ”
をチョイス.玉子のプレーンな味に
よくからむ.カニかま旨し…♪

鶏唐×2ヶ、焼き餃子×3ヶ付き.

中華スープも付いてリーズナブルな
セット・ランチ.

約900KCal、810円也.

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火曜は自宅で内食.

中華が続く.
麻婆豆腐丼を作った.

“麻婆豆腐丼と餃子とチゲスープ”


ランチ20230207-1


ご飯は白米150g.麻婆豆腐は
AEON製の総菜品.

餃子は味の素の冷凍品.
簡単で本当に美味しい….

チゲスープはフリーズドライ品.
十二分に辛いっ!!

デザートは、ミニみたらし団子と緑茶.


ランチ20230207-2


こんなにミニでも252KCal!!

合わせて約950KCal、材料費350円也.

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水曜は出先で外食.

眼科に通院の途中の
トンカツ屋「かざま」にて.

“牡蠣フライ定食”


ランチ20230208-1


久々?のかざまの牡蠣フライ.
安定の充分な揚げ方が安心.

ご飯は少なめ、100g.
キャベツは超大盛り、お代わりなし.
味噌汁、お新香付き.

食後のほうじ茶.
出てくる時と出ない時が
あるのは、中居さんの気まぐれ?


ランチ20230208-2


もちろん、言えばちゃんと出てくる.

約850KCal、980円也.
1年前は800円だったが、徐々に値上がり.

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木曜は自宅で内食.

笠原将弘の「おかず道場」の
レシピから作ってみた.

“こまツナ炒めとグリンピースご飯”


ランチ20230209


ツナ缶を油ごと長ネギと小松菜、
生姜で炒めて、特製タルタルソースで.

小松菜のしゃきしゃき感と
ツナの味が好く合う ♪
タルタルソースが少し甘かったかも.

魚肉ソーセージの油揚げ巻きにも
ちょい醤油を垂らして… 旨いっ!

季節のグリンピースは
塩、酒で炊き込んでみた.

味噌汁はインスタント+油揚げ+白菜.

あわせて約700KCal、材料費320円也.

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金曜は出先で外食.



雪なれど、孫を連れてイチゴ狩りへ.

そのついでに、京王レールランドへ.
付属のカフェ「HUGHUG cafe」にて.


“刻み野菜等のボロネーゼ・スパゲッティ”



ランチ20230210


普通のボロネーゼ.
120gはあるかも…(汗)



約850Kcal、1000円也.



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今週もバラエティに富んだランチ.

体重は微増…(汗).

来週は頑張るぞぉ!!

今週もご馳走様.





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映画「イニシェリン島の精霊」…アイルランド孤島に繰り広げられる諍い


映画「イニシェリン島の精霊」 -5
原題:The Banshees of Inisherin 製作年:2022年
製作国:イギリス 上映時間:114分



観たかったけどなかなか合う時間が探せずに観はぐっていた作品.
つくばまで遠征してようやく観賞.観るのを出遅れると色々と他人の
評価が耳に入ってくる.私には賛否両論ではなくネガティブな感想
ばかりが耳に入ってきた.出来るだけプレーンな気持ちで臨んで
観ようと心がけて本年度累積30本目の鑑賞.
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「スリー・ビルボード」のマーティン・マクドナー監督が、人の死を予告
するというアイルランドの精霊・バンシーをモチーフに描いた人間ドラマ.

1923年、アイルランドの小さな孤島イニシェリン島。住民全員が
顔見知りのこの島で暮らすパードリックは、長年の友人コルムから
絶縁を言い渡されてしまう.

理由もわからないまま、妹や風変わりな隣人の力を借りて事態を
解決しようとするが、コルムは頑なに彼を拒絶.ついには、これ以上
関わろうとするなら自分の指を切り落とすと宣言する.

「ヒットマンズ・レクイエム」でもマクドナー監督と組んだコリン・ファレル
とブレンダン・グリーソンが主人公パードリックと友人コルムを
それぞれ演じる.共演は「エターナルズ」のバリー・コーガン、「スリー・
ビルボード」のケリー・コンドン.

2022年・第79回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門で
マーティン・マクドナーが脚本賞を、コリン・ファレルがポルピ杯
(最優秀男優賞)をそれぞれ受賞.第95回アカデミー賞でも作品、
監督、主演男優(コリン・ファレル)、助演男優(ブレンダン・グリーソン
&バリー・コーガン)、助演女優(ケリー・コンドン)ほか8部門
9ノミネートを果たした.

以上は《映画.COM》から転載.
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なんたら賞にノミネートなんてどうでもよい、用は自分が好きか嫌いかが
大事な作品選びの基準と思っている.この作品ははっきり好きだ.

狭小なコミュニティ内で不穏なムードが蔓延するのは前作「スリー・ビルボード」
と同じ構造だ. しかし本作には美しい自然の風景がもたらす詩情や動物たち
への愛情といった事を大切にしながら、寓意に富んだ物語を奥深く転がして
いく魅力に溢れている.

舞台は1923年.アイルランドにある架空の孤島、イニシェリン.
人々は島にたった一つのパブで飲むこと以外に取り立てて楽しみがない
日々を過ごしている.だが、背後に存在する本土から響く戦争の気配も
見逃せない描写だ.遠くに聞こえる砲弾の音はそれを感じさせる.

当時はアイルランドが泥沼の内戦へ陥っている真っ最中.血を分けた兄弟
や親友が引き裂かれていく悲劇は過去に映画で観た気がする.
本作では一発の銃弾や戦闘のシーンは見せることはなく、遠くに聞こえる
砲弾の音だけなのだが、この島で進行していく出来事はやはり“戦争”に
しか思えない.

信仰や思想、主義主張の違いから仲たがいし、さらには殺傷し合う内戦の
愚かしさと悲劇が、主人公パードリック:コリン・ファレルと長年の友人コルム:
ブレンダン・グリーソンの関係にしかと投影されている.

絶縁を宣言したコルムの異様なまでの頑なさ.それを受け入れられない
パードリックの鈍感さは、彼が飼うロバのように哀れを誘う.
はたから見れば愚かしい諍いが坂道を転がるように悲劇の谷へ向かって
いくさまは、コルムがとる人間離れした行動を見ると、引き返せないところへ
突き進む二人に“戦争の本質”が投影されているのは明らかだ.

パワハラ、セクハラの権化のような警官の存在や、他人の手紙を勝手に
開封して読んでしまう郵便業兼務の店舗の女主人、堕情以外の何もの
でもないパブの風景、形だけのミサの教会…狭小な世界ゆえの幾つもの
出口の無い“関係性”を描き出し、それらは時に絡み合いながら、ブラック
な笑いや悲哀の世界へ集約さていく.こんな表現が上手い監督だ.


映画「イニシェリン島の精霊」 -3


太い眉をハの字にして親友の心変わりを嘆き、悩みきるコリン・ファレルの
演技には感心するし、対するブレンダン・グリーソンの真剣な面持ちの演技
からは彼が決して高慢な人間ではないことが切々と伝わってくる.

両者の存在感が素晴らしいだけに、崩壊し砕け散り、破滅へ向かっていく
友情がただひたすら悲しくてたまらない.その過程で徐々に監督の意図が
透けて見えてくる. 諍いが見るも無惨にエスカレートしていく島の
対岸の本島では、同じ民族同士が内戦を戦っている.
親しいだけに際限がない男たちの喧嘩は、アイルランド内戦の比喩なのだ.


映画「イニシェリン島の精霊」-1


アイルランドのアラン島でのロケだったそうだが、その風景の厳しさ、美しさ
には息を飲んでしまう.切り立った石器のような崖とそれに続くなだらかな
牧草地帯に牛や馬がのどかに時を過ごしている.

ケルトに基を置くアイルランド神話、バンシー(精霊)はコルムの作曲した曲
の題名になったり、予言の言葉を島民に投げかける老婆の存在は、作品の
雰囲気造りにかなり寄与している.コルムの演奏するフィドルが奏でる音楽は
ケルト・ミュージックそのものだ.

聞けば本作のマクドナー監督は実は英国とアイルランドの二重国籍者だそう.
自らのオリジンにもさかのぼった尽力の作品、しかと味合わせてもらった.


映画「仕掛人・藤枝梅安」…トヨエツ梅安の魅力爆発!


映画「仕掛人・藤枝梅安」-1
製作年:2023年 製作国:日本 上映時間:134分



父が愛して止まなかった池波正太郎の「仕掛人」シリーズ. 私は一切
読まなかったけど(笑)、大好きな役者:豊川悦司が演じるとなると
これは観ないといけない.つくばまで遠征してシネプレックスつくばで
本年度累積31本目の観賞.
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池波正太郎のベストセラー時代小説「仕掛人・藤枝梅安」シリーズを、
池波正太郎生誕100年となる2023年に豊川悦司主演で映画化した
2部作の第1部.

江戸の郊外、品川台町に住む鍼医者の藤枝梅安には、腕の良い医者
という表の顔と、生かしておいてはならない者たちを闇に葬る冷酷な
仕掛人という裏の顔があった.

そんな梅安がある日、料理屋を訪ね、仕掛の標的であるおかみの顔を
見た瞬間、思わず息をのむ.その対面は、梅安自身の暗い身の上を
思い出させるものだった.

これまでにも緒形拳、田宮二郎、萬屋錦之介、小林桂樹、渡辺謙らが
演じてきた梅安役を新たに演じる豊川をはじめ、片岡愛之助、菅野美穂、
小野了、高畑淳子、小林薫らが顔をそろえる.そのほか、第1部ゲストと
して柳葉敏郎、天海祐希、早乙女太一が出演.
監督は「星になった少年 Shining Boy and Little Randy」の河毛俊作.

以上は《映画.COM》から転載.
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TVシリーズは良く観ていた.昭和製の仕掛人、仕置人シリーズはBGMが
なぜかマカロニ・ウェスタン風のトランペットだったのが今でも可笑しい・
藤枝梅安というと、そのイメージは緒方拳でしかないのだけど、待望の
トヨエツの梅安はやはり色気漂う殺人者を演じ切ったものであった.

映像はやはり令和の時代劇、CGと上手く合わせ技で江戸時代の風景を
描いてみせる. 妖しげな月の表情や富士を背景の川の流れなど、新鮮だし、
江戸の町並みや部屋の設いが太秦らしく、素晴らしい仕上がりだった.

勧善懲悪ではあるのだけど、"請負での悪人始末"という一義的な正義の
不確実さや危うさ、それによって二次的な被害者・加害者を生んでしまう
という矛盾と皮肉をじっくりと描いており、人生の残酷さと因果応報を
時代劇らしい解り易さで展開してくれている.

実の妹を殺さねばならぬ宿命との葛藤、その最期の儚さの表現は
なかなか素晴らしかった.瞳に写る今と過去、憎しみと愛、そして哀しみ.
セリフや言葉に頼らない、味のある表現であった.

原作の池波正太郎らしさを表現してか、食事のこだわりが素晴らしい .
何回も出てくる愛之助とトヨエツの食事シーン.雑炊だったり、鍋だったり、
その食事の中での語り合いがまた良い味が出ていたのも忘れられない.


映画「仕掛人・藤枝梅安」-2

映画「仕掛人・藤枝梅安」-3


女優陣の頑張りも印象的. 天海祐希の悪女ぶりはあっぱれだし、既に
年増の部類に入った菅野美穂の濡れ場は色っぽかった. また高畑淳子の
世話焼き婆さんの演じっぷりもさすがと唸らせるものだった.

盛者必滅、人殺しを生業にする者の最期はどう描かれるのか?
第2編が今から楽しみでしょうがない.