映画「みとりし」 (DVD観賞)

制作年:2018年 制作国:日本 上映時間:110分
これまた昨年、話題になったけど上映が小規模過ぎて見落してしまった作品.
こんな作品ばかりDVDで見つけては鑑賞している.本年DVD観賞41本目.
温かい死を迎えるために、本人の希望する形で旅立つ人の心に寄り添いながら
見届ける「看取り士」を描いたヒューマンドラマ.
一般社団法人「日本看取り士会」の代表理事を務める柴田久美子さんの経験を
原案に、主演も務める榎木孝明が企画から携わり映画化した.
定年間際のビジネスマン柴久生は交通事故で娘を亡くし、自殺を図ろうとしていた.
そんな彼の耳に聞こえた「生きろ」の声.その声は柴の友人・川島の最期の時の
声だと、川島の看取り士だった女性から聞かされる.
それから5年後、岡山・備中高梁で看取り士としてのセカンドライフを送る柴は、
9歳の時に母を亡くした新人・高村みのりたちとともに、最期の時を迎える
人びとを温かく支えていく.
柴役を榎木、みのり役を村上穂乃佳が演じるほか、斉藤暁、つみきみほ、
宇梶剛士、櫻井淳子らが脇を固める.
監督は「ママ、ごはんまだ?」の白羽弥仁.
以上は《映画.COM》から転載.
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最初に、実際の看取り士は車椅子を押したり買い物を手伝う等の業務は
致しません、というテロップや太宰治の詩が載ったりと、こざかしい造りを
感じさせるのだが、脚本的には無駄が無く素直にストーリーに入り込める.
病気で余命宣告された人に寄り添い人生の終焉を看取る「看取り士」が題材.
娘を交通事故出亡くし生きる希望を無くしたが、かつての同僚の死を切っ掛けに
その仕事を知り、看取り士となった男性と、9歳の頃に母親を亡くした新人
看取り士の活動と想いや成長をみせて行くストーリー.
いわゆる終末介護の一つであろう.本作観るまで「看取り士」という職業は
知らなかった.誰しも思うことだが、病院で苦しみながら管を全身に入れられて
苦しむよりも、安心できる我が家で家族に見守られながら死んでいきたい….
そんな思いを遂げるさまが描かれる.
なんで臨終の頃合いが図れるのかとか、親類がみな間に合うのはなぜかとか
突込み所は満載なれど、脚本上そういう筋書きは致し方ないかと思う.
そんな批判を受けて立つように、看取ることが出来ず孤独死させてしまうケースも
紹介される.実際にはこんなケースが多いのではないかとも思ったりする.
余計なBGMは排し、静かなシーンの連続だが、決してテンポは悪くない.
榎木孝明が本当にピッタリの役柄で、脱サラし5年を看取り士として務めて
きたベテラン?を演ずる.決して大仰でない淡々とした演技が好ましい.
新人・高村みのりを演ずる村上穂乃佳も、幼い頃に母を亡くした想いを胸に
看取り士としての経験を積んでいくシュアな演技を見せてくれる.
そんな中、 大半は老人たちの老衰死みたいなケースの多い中で、若い死も扱われる.
櫻井淳子演ずる3人の幼子を抱えた末期癌のケース.櫻井は死の恐怖に
怯えながらも、我が子の行く末を案じ、自らその将来の姿を見られない哀しみ
に沈む.高村みのりは自己の経験も含め安らかな気持ちへ誘導する….

いくつもの死のシーンは多くても余り心を揺るがすことはないのだけど、
さすがに、幼子3人の前で櫻井淳子が逝くシーンは涙を誘う.子供たち3人が
描いた、お母さんが魔法使いになる画を見せて、逝く…はずるいなぁ.
ラストチューンは、宮下舞花 「サクラの約束」.
明るくやさしく人の心に寄り添うような佳曲.締めにふさわしい.
高齢化が進み、がん人口は2人に1人に増え、終末医療の問題は多様化する.
死と向き合う恐怖の中、最後のときを穏やかに旅立てる人はどれほどいるだろうか?
そんな穏やかな旅立ちのお手伝いとしての「看取り士」と出逢える好作品.
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