映画「プロトタイプA 人工生命体の逆襲」(DVD観賞)…中味は立派なB級作品.
原題:Don't Look Deeper 製作年: 2020年
製作国:アメリカ 上映時間:124分
レンタル屋の新作棚にSFを見つけると、どんなにうさんくさそうでも、
B級と判っていても借りてきてしまう哀しい性(さが)が情けない.
が、おっとどっこい、本作は当りだった.
本年度累積63本目は米製アンドロイドもの.
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人間とアンドロイドが共生する近未来.高校生のアイシャは、愛情深い父の下、
友人や恋人と楽しい毎日を過ごしていた.ある日、彼女は転んで腕をケガした
際に体内に埋め込まれた“部品”を発見し、自らが人間として育てられた
アンドロイドである事実を知ってしまう.
アンドロイドであることを知りながら隠していたカウンセラーのシャロンと
愛する父からの裏切り.
従順で善良だったアイシャだが、怒りに支配されて制御不能に….
主演にヘレナ・ハワード「ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド」
共演にドン・チードル「アベンジャーズ/エンドゲーム」「キャプテン・マーベル」
エミリー・モーティマー「マイ・ブックショップ」「メリー・ポピンズ リターンズ」
監督・脚本・製作はグレゴリー・ランバーソン.
以上は《amazon primevideo》から転載.
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時制があっちこちに飛びまくるのが難点.何年前とか表示は出るが、
順番も含め脚本上で一考して欲しい部分だ.
自己を自覚していないアンドロイドというのが本作のミソ.
巧みなソフト制御で、飲む、食う、眠る、なんと生理まで演出?されていて、
定期的に受けるカウンセリングで、適当に記憶を消去されていた.
そのカウンセラー、シャロン:エミリー・モーティマーはソフトの生みの親でも
あった.途中でソフトを書き換え、父親:ドン・チードルとの二人暮らしに
設定されていた.ハードウェアは巨大ロボット開発企業で製造された肉体で、
その画期的なソフトウェアのおかげで、他の一般的アンドロイドとは一線を
かす、“人間らしさ”を生み出すことに成功している.
自分がアンドロイドであることを知りながら隠していたカウンセラーのシャロンと
愛する父からの裏切りに驚き、さらにその開発にシャロンが関わっていたことに
ショックを受けるアイシャ.
従順で善良だったアイシャだが、怒りに支配されて制御不能に陥る.
記憶操作をされた断片的で不完全な記憶の中から、信頼できる仲間を集め、
自らを生んだ研究所へ向かっていく.
滑らかな動きや外観などのハードウェアも重要であるのだけど、それを司る
ソフトウェアの重要性がよくわかる描き方が上手いと感じた.
管理コードを言えば、そのアンドロイドの状況や性能を書き換えられる.
当然そのアンドロイド自身がその管理コードを知れば、自ら書き換えられる.
ヒロインは急に始まった生理を、コード書き換え、生理を止めてしまうシーン
が愉快だった.
ロボット開発企業を牛耳る支配者兄弟は、アイシャのようなアンドロイドは
人間の領域を侵すものとしてその存在を抹消しようとする.この兄弟も
また面白いキャラクター設定で、特に弟は性転換願望者のよう.外観は
小柄な男性なのだが、どうやら元は女性なのかもしれない.
その事で抱えるコンプレックスのようなものが見え隠れし、兄との微妙な
関係を作り出している.が、とにもかくにもその弟はアイシャを追う….
アンドロイドへの感情の付与、その自立性、自律性の確立の是非、
人間との領域不明確…と内蔵する問題に答えは無い.
アンドロイドを愛してしまう人間側のドラマも描かれる.創造者としての母の愛、
疑似関係の父の愛、同世代の男性からの愛、そして一番大事に描かれる
同世代女子との同性愛…これが一番濃厚で絆が強いのだ.
訴える内容は良いのだが、前に述べたように時制の表現も含めて、脚本が
稚拙なのが残念.あと、頭に載せたポスター写真の酷さと邦題の酷さは
一応指摘しておきたい.ここいらは配給会社の責任であろう.
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