映画「息子の部屋」 (DVD観賞)…精神分析医の苦悩を描く.
原題:La stanza del figlio 製作年:2001年
製作国:イタリア 上映時間:99分
観落とした名作シリーズ.カンヌのパルムドール受賞作品.
イタリア作の家族の物語.本年度累積294本目の鑑賞.
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01年カンヌ映画祭パルムドール受賞作.イタリアの小さな港町で暮らす、
精神科医の夫と画商の妻、高校生の娘と息子の4人家族は、平穏な
日々を送っていた.
が、突然の息子の事故死により、その生活はこれまでと同じでは
なくなっていく.
モレッティ監督自身が父親役、妻役は、80年代のモレッティ作品に
出演していたラウラ・モランテ.
音楽は「ライフ・イズ・ビューティフル」のニコラ・ピオバーニが担当.
以上は《映画.COM》から転載.
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精神科医ジョバンニ:ナンニ・モレティと妻・パオラ:ラウラ・モランテ、
娘・イレーネ:ジャスミン・トリンカ、息子アンドレア:ジョゼッペ・サンフェリーチェ
はイタリアの港町で穏やかな生活を送っている.
アンドレアが学校のアンモナイトの化石を盗んで、一週間の停学に
なったりするが、皆、彼の無実を信じている.
が、アンドレアは数日後、”先生の困った顔が見たかった”と盗んだ事を
母にだけに打ち明ける.このエピソードの回収はなされないのだが、
息子と父親の仲は良くても微妙な距離感を表していると思った.
精神科の分析医という職業が淡々と描かれる.自殺願望のある男.
生きる意味を失っている男.毎日の予定が立てられない主婦….
淡々と冷静に患者の言い分を聞いているジョバンニの忍耐力には
ほどほど感心されられるが、ひょっとすると彼自身も病んでいるのでは
と思わせるシーンが続いていく….
そして、日曜日に自殺願望のある男から”直ぐに家に来て欲しい”と
電話が入り、ジョバンニは車で出かける.
その彼のいない時に、悲劇は起きる.息子アンドレアがダイビング中に
洞くつで酸欠死してしまう. 自分を激しく攻めるジョバンニ.
妻、パオラ、娘イレーネも悲しみの底に叩き落とされる.
哀しみを紛らわすかのように、精神科医ジョバンニの診察は続く.
家族関係がギクシャクし始めた頃、アンドレア宛の、アリアンナという
女の子からの手紙を見つけ、家族でその女の子に一度は断られながらも
会いに行こうとするジョバンニと妻・パオラ、娘・イレーネのジレンマは
更に肥大していく.そしてある日、突然アリアンナが訪れてくる.
この主人公の苦悩は生前の息子が自分だけの世界を築きつつある兆候
を見せていたことに気づかなかったことに起因する.
そのために息子の死の責任をひとりで背負い込んでしまう.
この辺りになると、分析医の仕事がどちらが分析医で患者か判らないような
状況をみせてくる.ジョバンニは分析医という仕事をあきらめる決断をする.
彼を救うのは息子の恋人・アリアンナだが、それは単純に彼女の存在に
よって知らないうちに息子が成長していたのを確認するということではない.
分析医として確実性を生きてきた彼は、ヒッチハイクという不確実性に身を
委ねるアンドレアの姿に息子を見出し、徹夜のドライブというむちゃな行動を
通して息子に歩み寄ろうとする.
そして、自分を責めることは息子を認めていないことだと悟り、その死を
受け入れることができたように見えた.
後半、息子が通ったCDショップで若い人向けならと店主に勧められた
ブライアン・イーノの名曲”By This River"の優しき音色は繰り消し流れて
観る者の気持ちを落ち着かせてくれるのは助かる.
それまで他人の悩みを聞き癒して来た男が、息子を失った事により激しく
落胆し、自らを責める中で、亡き息子の一時だけのガールフレンドに
癒されていく姿を静かに暗く描いた佳作.
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