映画「POP!」…感動も共感も無いけど、観てしまう無常観.
制作年:2021年 制作国:日本 上映時間;86分
久々に新宿の映画館街に進出.と思ったらTOHOシネマズは変わりばえしないし、
シネマカリテはぶっ飛んだ作品ばかりで付いていけない.結局新宿武蔵野館で
時間が合う作品で本作を選んでしまった.本年累積301本目の鑑賞.
これが長編初監督作となる小村昌士監督が、「アルプススタンドのはしの方」
などインディーズ映画界で注目される小野莉奈を主演に迎え、大人と社会の
矛盾をシニカルな笑いとともに描いたコメディ.
地方テレビ局のチャリティー番組でオフィシャルサポーターを務める19歳の柏倉リン.
番組内ではハート型の被り物をし、「世界平和」をうたって募金を呼びかけている
ものの、実生活では周りの大人たちと馬が合わず、バイト先でも上手くいかない
ことばかり.
社会の欺瞞と不寛容さにいら立ちを募らせていくリンは、そうした日々の中で
二十歳という人生の節目を迎えることになるが…….
若手クリエイターの作品を対象とした「MOOSIC LAB[JOINT]2020-2021」
のコンペティション部門でグランプリと最優秀女優賞をダブル受賞.
以上は《映画.COM》から転載.
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地方局の世界平和を謳うチャリティー番組「明日のアース」のオフィシャル
サポーターを務めつつ、暇な駐車場の管理人のバイトをする主人公の
無垢でマジメな人生観の話.
ぼんやりと生きているけど、なんだか満たされず、将来もはっきりと見えない.
「自分の夢ってなんだっけ? 自分は何になりたかったんだっけ?」
と自問自答すれども、答えなんか見つかるわけもない….
主演は小野莉奈.上手いのか下手なのかよくわからない.そんな彼女が
シュールな被り物をして、それが答えだと押し付けられた枠組みで葛藤する
様はこっけいでむなしくも見える.
個人的には、彼女が自宅で繰り広げるAIスピーカーとのやり取りが面白かった.
ひまで、AIスピーカーとしりとりを始める…彼女が答えに詰まると、AIスピーカー
は「眠くなりましたか?」と照明を落として、「おやすみなさい…」だと(笑).
題名の「POP」はPrincess Of Parking の略と判り、大納得.
どう見ても、彼女が19歳から20歳の狭間で、もっとも彼女らしく見えるのは
駐車場で客や呆けた同僚老人と格闘している時だけだ.
19歳から20歳のちょうど狭間、ここまで歩いてきたけど、意外と何もないことに
気づく.いいのか悪いのか分からないまま、そこに浮かんでいる浮遊感を感じる.
共感と違和感、シュールさを引きずりながらポツッと終わる無常観.
感動も共感も生まない、不思議な作品だった.
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