映画「半世界」 (DVD鑑賞)
制作年:2019年 制作国:日本 上映時間:120分
苦手意識のある元SMAPなのだが、よくよく考えると真に苦手なのは
香取慎吾だけであった.よって稲垣吾郎主演の本作も抵抗なく
DVDを借りて観た.本年累積124本目.
「エルネスト」「人類資金」の阪本順治監督のオリジナルストーリーで、
稲垣吾郎が主演を務めた人間ドラマ.
稲垣が主人公となる炭焼き職人の紘を演じるほか、長谷川博己、
池脇千鶴、渋川清彦ら実力派キャストが共演する.
山中の炭焼き窯で備長炭の職人として生計を立てている紘の前に
元自衛官の瑛介が現れた.突然故郷に帰ってきた瑛介から
紘は「こんなこと、ひとりでやってきたのか」と驚かれるが、
紘自身は深い考えもなく単に父親の仕事を継ぎ、ただやり過ごして
きたに過ぎなかった.
同級生の光彦には妻・初乃に任せきりの息子への無関心を 指摘され、
仕事のみならず、反抗期である息子の明にすら 無関心だった自分に
気づかされる. やがて、瑛介が抱える過去を知った紘は、仕事、そして
家族と 真剣に向き合う決意をする.
2018年・第31回東京国際映画祭コンペティション部門に出品され、
観客賞を受賞した.
以上は《映画.COM》から転載.
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稲垣吾郎の役柄が彼にピッタリの印象.ぼくとつで気が回らない
タイプ、どこかよそよそしい雰囲気を常に身にまとう….
その妻を演じる池脇千鶴はもう最高の演技だ.
夫の本質を見抜きながらも、それでも愛している.そのことを
あからさまには表現しないが、行動のふしぶしにそれが見え
隠れする. あぁ、上手い役者だなぁ…池波千鶴は.
稲垣が演じるのは、妻と息子とともに暮らし、親から受け継いだ
炭焼き窯で備長炭を作って生計を立てるアラフォー男.
同じ地元で家族で中古車販売店を営む光彦:渋川清彦、
海外派遣を経験し、帰国した元自衛官の瑛介:長谷川博己
という幼なじみの3人が再び顔を合わせることになり、それぞれの
生き方を模索しながらも変わらぬ友情を確認しあう.
この三人の関係の描き方が秀逸.つかず離れず、気にして
いるようで、ほったらかしもある.お互いの世界をもって、
引きずっているが、それは決して交差しないし、ダブらない.
が、それぞれの世界を覗き込もうとはしてみる.
題名の「半世界」は言いえて妙な表現だと思う.
世界の残酷な現実を見てしまった元自衛官の世界と、田舎の狭い
人間関係で炭を焼いて暮らす男の世界は交差しようがない.
だが、お互いを理解しようとはしているのが、もどかしく、愛しい.
稲垣吾郎と池脇千鶴は絶妙な夫婦関係を演ずるが、
二人の間には反抗期の息子明:杉田雷麟が居る.
明は中学校でいじめにあっているが両親に知られたくない.
都会であろうと田舎であろうと、未成熟な子供たちが複数存在
すれば、必ず“いじめ”は発生する.親や教師に相談できない
いじめられっ子は悲惨だ.
たまたまいじめの現場に遭遇した元自衛官の瑛介:長谷川博己は
明に複数との格闘の秘訣を教える.その通りには出来ないのだけど、
明はいじめっ子4人に戦いを挑む.
3人は倒したが、ボス役には歯が立たない. がボスは見逃してくれる.
かつては自分も同じようにいじめられて いたんだと….
負の連鎖は続く、誰かが断ち切らないと….
そんな小さな世界の出来事を拾い上げながらも、それぞれは
良化の方向に向かい始めているように見えた.
そこで大きな破綻が起きる….
紘:稲垣吾郎の炭焼きの仕事は過酷だ、木の伐採から始まり 切断、
釜への搬入、焼き、釜から回収、冷却、調質、出荷….
独り作業では追いつかぬと告白するシーンが多い.
その過酷な作業中に紘は心筋梗塞で倒れてしまう.
愛する妻、相いれない息子、親しき友人を残して逝ってしまう
意外な結末に驚き、わなないてしまう.
ラストシーンは、唐突にボクサーを目指す明が炭焼き小屋で
シャドーボクシングする場面.阪本監督らしい〆方だ.
稲垣の好演と、池脇千鶴の偉大さが印象的な一作.
悪くなかった.
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