映画「第三夫人と髪飾り」…そこは、女たちの愛と哀しみが眠る桃源郷.
原題:THE THIRD WIFE
制作年:2018年 制作国:ベトナム 上映時間:93分
土曜は父の介護の日.その前に柏のキネマ旬報シネマに寄って、貯まったポイントで
タダ観したのは、珍しいベトナム作品.本年累積176本目の鑑賞.
これが長編デビューとなるベトナムの女性監督アッシュ・メイフェアが、
自身の曾祖母から聞いた話をベースに撮り上げた官能の女性映画.
一夫多妻婚が認められていた19世紀ベトナムの秘境を舞台に、
わずか14歳で第三夫人として富豪の家に嫁ぐことになった少女を主人公に、
世継ぎを産むことが最大の役割として求められた女たちの日々の営みと
心模様を、官能描写を織り交ぜつつ、静謐かつ透明感あふれる映像美で綴る.
主演はオーディションで選ばれた新人、グエン・フオン・チャー・ミー.
共演にトラン・ヌー・イエン・ケー、マイ・トゥー・フオン.
19世紀の北ベトナム。絹の里を治める富豪のもとに嫁ぐことになった14歳のメイ.
富豪にはすでに第一夫人のハと第二夫人のスアンがおり、まだ無邪気さの
残るメイは2人からさまざまな家のしきたりや暮らしに必要な知識を学んでいく.
そして自分に求められているのは元気な男児を産むことだと
自覚していくメイだったが….
以上は<allcinema>から転載.
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この新人監督はベトナム人だけど、在米NY大学卒.本作の脚本がスパイク・リー
プロダクション・ファウンドを獲得、彼の後援による作品.また美術アドバイザーに
あの「青いパパイヤの香り」のトラン・アン・ユンがクレジットされていて、期待の
新人監督であるよう.
始めに、“事実に基づく”のクレジットが.監督の祖母の実話らしい.
14歳で富豪の家に第三夫人として嫁ぐことになったメイが主人公.
穏やかでエレガントな第一夫人には息子がひとり、美しく魅惑的な第二夫人には
娘が三人いたが、一族にはさらなる男児の誕生が待ち望まれていた.
やがて、まだ無邪気だったメイは、この家では世継ぎを産んでこそ“奥様”に
なれることを知る.若き第三夫人がやってきたことで静かな里はさざめきたち、
女たちのドラマが幕を開ける….
ベトナムの秘境と言われるチャンアンの幽玄な美しい風景の映像が印象的.
BGMは少なく無音のシーンが多い.美しいカメラワークは印象的.
時折挟まれる蚕の食事シーンや繭を生成するシーンも効果的だ.
物語の舞台となる北ベトナムのチャンアンは、世界遺産として登録され、
世界中から観光客が訪れるベトナムの秘境.輝く竹の翠、ランタンに灯る光、
石を打つ雨だれの滴、女たちの纏うアオザイの色彩…、スクリーンには
壮大な自然を背景に東洋の美が映しだされる.
14歳の少女の初夜の儀、甘美な秘めごと、第二夫人の雇い人との禁断の愛など、
エロティックな描写さえも絵画的な美しさで、その甘い官能は観る者を陶酔させる.
15R規制で十分か?(笑).
一夫多妻制や因習的な家人と雇い人の関係とかが時代を感じさせるが、
そんな中での女性間の同士感、そして敵劾感.ねたみ、そねみ….複雑なようで
単純な感情の流れが見え隠れしてくる.
美しい自然の表現と感情表現の巧みさ、監督の才能を感じさせる作品.
次が観たい…と感じさせた.
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