映画「ある少年の告白」…こんなアメリカもあるのだ!
原題:BOY ERASED
制作年:2018年 制作国:アメリカ 上映時間:115分
まだまだ1ヶ月フリーパスポートの使い倒しは続いている.これで10本目だろうか.
日曜の午前中日比谷シャンテで観たのは事実に基づいた米作品.本年71本目.
同性愛者であることを否定され、“治療”を目的とした矯正プログラムを受けさせられた
自身のつらい実体験を綴り全米ベストセラーとなったガラルド・コンリーの回顧録を
映画化したヒューマン・ドラマ.
アメリカの田舎町を舞台に、自分がゲイだと気づいた少年が参加した矯正プログラム
の危険で非人道的な実態と、愛する我が子がゲイである事実を受け入れられず
動揺する両親の葛藤の行方を描く.
主演は「マンチェスター・バイ・ザ・シー」のルーカス・ヘッジズ.
共演にニコール・キッドマン、ラッセル・クロウ.
監督は「ザ・ギフト」に次いで長編2作目となるジョエル・エドガートン.
アメリカの田舎町.牧師の父と優しい母のもと、何不自由なく育った大学生のジャレッド.
ところがある日、ふとしたきっかけから自分がゲイであることに気づく.
ジャレッドはその事実を両親に伝えるが、両親は息子の衝撃の告白を受け止めきれない.
困惑する両親の姿に、ジャレッドは両親が勧める矯正プログラムへの参加を決意する
のだったが….
以上は<allcinema>から転載.
―――――――――――――――
このところイスラム教徒の過激な面だけが強調されて報道されているような気がするが、
どんな宗教においてもその宗教徒に過激な面が有ると認識している.本作はキリスト教が
主に描かれている.
別に宗教が悪いわけでは無い.神を信ずることは尊いし、どんな宗教だってその信ずる者
にとっては大事な教義があるのだろう.要はその教義の解釈と行動への反映が問題.
主人公の父親:ラッセル・クロウは敬虔な牧師の役柄.地域でも尊敬され、教会内でも
リーダーに位置するほどの人物.彼が携える聖書に山ほどの付箋が貼り付けてあるのを
見ただけでも、彼の頭の中は聖書いや、神で充満しているのであろう.
日曜ミサの講演を聞いても私には過激なアジテーションにしか聞こえない.
そんな父の元でスクスク育った主人公が同性愛嗜好という悲劇が主題.
父は同性愛の矯正施設に息子を入会させる.一応本人の同意を得てはいるが、
半ば強制的な行為.この施設がまたまるで“戸塚ヨットスクール”のような修羅場.
“患者たち”は従う振りをしないと永遠にでられないという悪魔のような施設.
施設はまた神の御技を説く、真面目な信心をもてば同性愛から離れられる.
生まれつきの同性愛者はいない、かねてからの行動からそうなってしまう.
行動を正さなければならない…というようなクソみたいな論理を繰り広げる.
最初は従おうとする主人公ジャレッド、途中からは仲間の忠告に従い従うふりに
徹しようとする.が、やはり理不尽な指導に耐えきれず、脱走してしてしまう.
待っていたのは、もっと修羅場.厳格な父が脱会を許さない.戻れと命令する….
けっきょく救いとなったのは母:ニコール・キッドマン.表向きは夫に口合わせは
するが、息子ジャレッドに味方する….
その4年後、ジャレッドは大学でその体験記をタイムに載せ、LGBTQ支援に
情熱を燃やす活動をしている.父は依然ジャレッドの現在を迎合しようとはせず、
孫の顔を見たかったなどとぼやいている….
こうなると宗教は暴力と感じた.同性愛を憎み、自死を戒め、常に神と共にあろうと
するキリスト信者の怖いこと.でもこれがアメリカの中核をなす人たちの主義主張
なのだ.
地域性もあるかと思いきや、米内にはまだ38州に及んで何百もの同様の施設が
あるそう.LGBTQの絶対否定体制なのだね.共和党のトランプがどんなにアホでも、
こういう人たちが支持・応援している現実を直視しなければいけない.
目からウロコが落ちるようなアメリカの一面を見た気がした.
因習に囚われ、過去にしか基を置かず、新たなもの、ことを受け入れない不寛容性.
これもアメリカのもう一つの顔だと知らされた印象的な作品.
.
コメント