fc2ブログ

映画「デトロイト」…今も根強い差別の歴史の一端.



原題:DETROIT
制作年:2017年 制作国:アメリカ 上映時間:142分


日曜の朝早く、新宿TOHOで観たのは米デトロイト暴動を扱った作品.
本年累積14本目の鑑賞.

キャスリン・ビグロー監督が「ハート・ロッカー」「ゼロ・ダーク・サーティ」に続いて
再び脚本にマーク・ボールを迎え、1967年の“デトロイト暴動”のさなかに起きた
衝撃の事件を映画化し、今なお続く銃社会の恐怖と根深い人種対立の闇を
浮き彫りにした戦慄の実録サスペンス.

黒人宿泊客で賑わうモールを舞台に、いたずらの発砲騒ぎがきっかけで、
警察官に拘束された黒人宿泊客たちを待ち受ける理不尽な悲劇の一部始終を
圧倒的な臨場感で描き出す.

主演は「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」のジョン・ボイエガと「メイズ・ランナー」の
ウィル・ポールター.
共演にアルジー・スミス、ジョン・クラシンスキー、アンソニー・マッキー.
 
1967年7月、デトロイト.黒人たちによる暴動が激化し、鎮圧に乗り出した軍や
地元警察との衝突で街はまるで戦場と化していた.

そんな中、運悪く暴動に巻き込まれ身動きできなくなった人気バンド“ザ・ドラマティックス”
のメンバー、ラリーが宿泊していたアルジェ・モーテルで銃声が鳴り響く.
それは黒人宿泊客の一人がレース用の空砲をふざけて鳴らしたものだった.

しかし、それを狙撃手による発砲と思い込んだ大勢の警察官がモーテルに
なだれ込んでくる.やがて、偶然居合わせただけの若者たちが、白人警官の
おぞましい尋問の餌食となっていくのだったが….

以上は<allcinema>から転載.
——————————————


デトロイトの大暴動全体をもっと俯瞰的に描いているのかと勘違いしていた.
予告を観ての勝手な妄想にすぎなかったね.一つの事件に焦点を当てて、
その真相と背景にある差別の実態を描き出す作品であった.

1967年、夏のミシガン州デトロイト.権力や社会に対する黒人たちの不満が噴出し、
暴動が発生.3日目の夜、若い黒人客たちでにぎわうアルジェ・モーテルの一室から
銃声が響く.

デトロイト市警やミシガン州警察、ミシガン陸軍州兵、地元の警備隊たちが、
ピストルの捜索、押収のためモーテルに押しかけ、数人の白人警官が捜査手順を無視し、
宿泊客たちを脅迫.誰彼構わずに自白を強要する不当な強制尋問を展開していく.

その背景にあるのは、黒人蔑視、差別以外の何物でもない.
憎悪とも思えるような仕打ちを黒人宿泊客たちに加えていき、
最後には3人を射殺してしまう.

このデトロイト市警の3人が特出しており、他の州警察や州兵たちは
至ってまともな扱いを黒人たちに対してとっている様子が描かれる.が、
この3人の異常な行為の背景はなにも描かれていない.



主役?のジョン・ボエガは私的な警備員、市警の横暴に対しなす術もなく
ただ見守るだけ….そう誰しもが手を出さない、出せない状況なのだ.そして悲劇は
進んでいく.観客も傍観してボエガとの感情共有が出来てしまう?

が、その後にもっと共有できる感情が待ち受けていた.市警の3人は囚われ、訴追され
裁判を受けるが、陪審員は全て白人.裁判の結果は3人とも無罪で終わる.
あまりの酷い判決に傍聴していたボエガは吐いてしまう.全く同じ気分に襲われた.

白人警官の業務中の過度な行為で3人も殺害しておきながら無罪.
これが1967年の黒人差別の実体であったのだろう.
翌年68年にはキング牧師の暗殺も発生している.

白色と有色人種の差別感は今現在トランプ政権になってからなおさら加速している
ようにも見える.社会派?キャスリン・ビグロー監督の、今そこにある危機へのメッセージと
受け取るべきなのであろう.

その大義名分の前には、多少の脚本の不出来さや演出不足の点なんか
気にしちゃいけないのかもしれない.
荒削りだけど訴求力のある作品.







コメント

非公開コメント

No title

おはようございます( `ー´)ノ
こう言う事件が有ったのも知らなかった。まだ生まれていないと言え、キング牧師の事は知っているけれど・・実話をもとにした物は是非見たい。この映画を知らなかったから教えてくれてありがとう。
今日も良い一日を( `ー´)ノ

No title

不快極まりない出来事ですね。こういう真っ暗な時代、でも根深く人種差別は、何かあると吹き出しますから。
記事にしたらTBお願い致します。

No title

> 小梅ママさん
もう生まれていた…(笑)。
この暴動の概要は知っていましたが、この事件の詳細は知らず、差別の実態がよく分かりました。好き嫌いではなくて、こういう作品は観なければいけないと思いました…。
ナイスありがとうございます。

No title

> atts1964さん
問題なのは、今また後戻りしそうな気配が不味いと思うわけです。こんな嫌悪すべき事がまた再発しないようにせねば…。
ナイスありがとうございます。記事楽しみにしてますね。

No title

主役と言えどジョン・ボイエガもいつ我が身が危なくなるかもしれない立場ですものね。
警察に連れて来られたところでも
自分はどっちの立場?どころで済まなくなるかもしれない場面もありました。
黒人でなくてもお店が雇っただけの警備員ですから、何の権限も持ち合わせていなくて大事にならないように行った場所で出会った出来事ですから、歯がゆいところか我が身の危険と隣り合わせでしたね。
アルジェ・モーテルに焦点を絞っていてとても分かり易く描かれていました。物事の本質についてかなり考えさせられる映画でした。
この映画はアカデミー賞にもノミネートされているのではないかと
帰ってから調べましたが見当たらず、
ラリーと彼の役をやったアルジー・スミスが歌っている動画を見つけて感慨にふけりました。

No title

荒削りだけど訴求力のある映画…。これは俄然観たくなりました。
実はイオンシネマの招待券が4枚手に入ったので、『祈りの幕~』とほかに何にしようかと思ってました。
社会派、実録、けっこう好きです。

No title

トイレさえ有色人種用とか
珈琲のポットも別とか
まったく 白人は色素が足りないから白いのよ 青い目なのよ
人の細胞組織的には劣ってるのよ~!!

No title

> scabiosaさん
そうなんですね、手の出しようがない状況、環境なんですよね。黒人には行き詰まった世界でした。スカビさんの記事みたいにラリーの視点もあるかと思いました。被害者なれど、その後の生活で白人に媚びない立派な生き方をしましたよね。いくつもの人生を描いた作品でもありました。ナイスありがとうございます。帰宅後トラバに伺いますね。

No title

> まんちさん
今夕は「祈りの幕が…」の記事を予約投稿してます。こうご期待です(笑)。褒めてますよ♪

No title

> きみちゃんさん
白人優位説の愚かな信者でありますね。そんなもの無いのに…。
ナイスありがとうございます。

No title

決して白人至上主義の警官ばかりではないのでしょうが、最悪でした。嫌な役を迫真の演技をしたウィル・ポールター 上手かったです。
現大統領になってから差別主義者が増長しているのでは?と感じますので、この作品は是非 多くの人に観て欲しいです。彼らは悪いとは思っていないというのが怖いです。
TBさせて下さいね。

No title

こんにちは。
寒いです~。

>….そう誰しもが手を出さない、出せない状況なのだ
誰も何も言わない、言えない状況なのだ、と言葉を置き換えれば、結構どこにでもあることで、これじゃあだめなんだ、どんどん悪い方向に入ってしまう、そう思いました。

No title

> アンダンテさん
ウィル・ポールター 憎まれ役だけど良い演技してましたね.本望でしょう.現大統領はもう長くは無いのであまり気にしてないのですが、彼を支持する多数の人たちが存在することが驚異なのですね.
ナイスとトラバありがとうございます.

No title

> じゃむとまるこさん
こんにちは.関東も冷え切ってます.
本当に今の日本もこれに近いかもしれませんね.
悪循環…そんな気がします.
ナイスありがとうございます.

No title

世界全体が悪循環になってきているように思います、怖いな~と思うのですが。
皆が感じていることなのでしょう、警鐘を鳴らすような映画が増えています、そのどれもが力作で見逃せない気になります。
TBお願いいたします。

No title

> じゃむとまるこさん
映画人の感覚、侮れませんよね.声高らかに…ではないですが、本作みたいな作品増えてきてますね.観のがさないようにせねば.
トラバありがとうございます.

No title

ビグロー監督のアメリカ万歳の作品は嫌いなのですが、この作品は自国の恥部を描いているようなので、スルーしようと思いましたが、観ておかなくてはいけないようですね。

No title

> やっくるママさん
私もこの監督は嫌いです。でも、観ちゃう魅力を持っているのも事実…。これは観た方が良いかもしれません。
ナイスありがとうございます。