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“生誕130年 川瀬巴水展 ―郷愁の日本風景” @千葉市美術館




3連休の最終日は横須賀線に乗って千葉まで遠出.

久々に千葉市美術館を訪ねた.ここは浮世絵のコレクションではなかなか有名な美術館.
大好きな大正昭和の版画家川瀬巴水の企画展を開催していると聞いて駆けつけた.

川瀬巴水は明治16(1883)年、東京市芝区露月町(現在の港区新橋5丁目)の生まれ.
幼い頃から絵を好み、画家を志しましたが本格的な修業の開始は遅く、鏑木清方への
入門を果した時すでに27歳になっていた.

転機が訪れたのは大正7(1918)年.同門の伊東深水が手がけた連作《近江八景》を見て
木版画の魅力に打たれる.そして版元・渡邊庄三郎と組み、塩原に取材した三部作を翌年発表.

写生に基づく温雅な下絵が清新な木版画となり、好評をもって迎えられた.
以後旅にでてはスケッチをし、東京に戻っては 版画を作るという暮らしを、
病で世を去る昭和32(1957)年まで続けた.

本展は、渡邊庄三郎の孫である渡邊章一郎氏の全面的な協力を得て開催.
その良質な渡邊版の出品以外にも、巴水の写生帖や原画類をあわせて展示.

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川崎のアパートは6畳ほどの1Kで、壁には例の如く和手ぬぐいが飾ってあるのだが、
実は2枚だけ画が飾ってある.それが2枚とも川瀬巴水なのだ.




1枚は上記真ん中の“雪の増上寺”.建物の赤、白い雪、洋装の男の黒のコントラスト
が目を奪う…とにかく川瀬巴水は副長が愛して止まない版画家.

巴水の写生の旅は日本全国に及んでいる.名所旧跡も選んでいるが、多くはかつて
日本のどこにでもあった風景が多い.

四季や時刻の表情を大切にし、その土地に暮らす人々を点景として織り交ぜながら、
おぼろ月の、わきたつ入道雲の、そぼふる雨の、しんしん雪の降る風景を、描ききる.

今回も原版の展示や、その刷り方を示すVideoが上映され、巴水の作方が示される.
昭和の新木版画の特徴は、版元、作者、彫り師、刷り師の4者の共同作業であること.

作者の写生や下絵を版元が選び(売れ行きに影響するからだ)、彫り師と綿密に
打ち合わせして版を作り、刷り師の作業に作者が立ち会い、細かい指示をした上で
刷り上がる….

事実、刷り師とのやり合いを示すが如く、さまざまな試し刷りが同時展示されていた.
刷り方で、画の印象がこうも違うかというくらい変わる.
雪や雨の降る空には刷りのばれんの跡が残るようなタッチが存在する.

作者の想いを成し遂げるのは彫り師と刷り師との共同作業の賜物なのだ.

そんな観点で観ると、また一興の木版画.

今年で川瀬巴水は生誕130年、他の美術館でも記念展を開催しているよう.
追っかけしなくちゃ(笑).






コメント

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1・・・(*゚▽゚*)

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とっても素敵ですね♥
版画だとは思えないです。
こんなに素敵な版画・・学生の時に見たかったなぁ~♥

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クラゲさん.
おはようございます.
初コメ!ありがとうございます.

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小梅と小麦と小豆さん.
版画とは思えない題材もありますね.3点の右端なんか法師温泉での作者の姿が描かれています.ちょっと遊びも感じられますね♪
ナイス!ありがとうございます.

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浮世絵と言えば年明け1月2日から、江戸東京博物館で行われる「大浮世絵展」、時代作家を問わず有名なヤツが全部きます、お勧めなので副長殿も是非ご覧ください。

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flingscottomomiさん.
えぇ、狙ってマスとも…(笑).

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日曜美術館で見ました!
残念ながら東海地方への巡回は無さそう(T-T)
カレンダーとか色々あるみたいですが、本物を見たいものです。

替わりというのでもありませんが、12/21から始まった名古屋ボストン美術館の「北斎」に行く予定です(^-^)

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版画って不思議よね~
何人もの人が関わっての作品なのだもの

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こにさん.
先週の日曜美術館で演ってましたね。カレンダーもカタログも買ってきちゃいました♪。
北斎展も良いですねぇ…、見てみたい♪。

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きみちゃん.
そうそう、複数のしかも、組み合わせで変わるのですよねぇ、だから面白いっ!ナイスありがとうございます.

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11コメ目で~す。
おおさかStationに2コメ目をありがとうございます。・・・(*゚▽゚*)

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初めて知りました。
雪の静けさが聞こえてくるようです。
教えて頂きありがとうございました。
産後は美術館から足が遠のいてしまいましたが、絵を観るのは好きです。

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クラゲさん.
こんばんは~、おおきにぃ~!

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ななこさん.
そう、無言の世界なんですね、巴水の版画って….
この日はたっぷり2時間以上も楽しませてくれました♪

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この作家、知らなかったのですが、素敵な版画ですね。
本物を見てみたくなりました~!!!
ご紹介、ありがとうございます(^^)

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やっくるママさん.
これはね、浮世絵の概念が吹っ飛びます.だからあえて“木版画”って書いてます.しっとりした風景が心に染み入りますよ….

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今日、巴水の本物の版画を見てきました~(^^)
素晴らしかったです。
今回は、平木コレクションだったので、他の版画家の作品もあったのですが、これぞ版画って感じで、惚れちゃいました。
この記事を読んでいて良かった~と思いましたよ。
ありがとうございました~!!!

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やっくるママさん.
おぉ、ご覧になりましたか!好いですよねぇ~巴水♪
江戸の浮世絵とは又違う風合いで、やはり木版画と呼びたいですね.
ありがとうございます.