映画「THE GREY 凍える太陽」…それでも生き残るとは?
原題:THE GREY 製作年度:2012年 製作国:アメリカ 上映時間:117分
土曜の夜は父親との夕食.その後に通いのシネコンでレイトショー鑑賞したのは本年100本目.
哀しい訃報を聞いたばかりのトニー・スコットが兄リドリー・スコットと製作を担当した作品.
「特攻野郎Aチーム THE MOVIE」のジョー・カーナハン監督と
主演のリーアム・ニーソンが再びタッグを組み、極寒のアラスカを舞台に
繰り広げる迫真のサバイバル・アクション.
アラスカの石油採掘現場で、凶暴な野生動物から作業員たちを守る
警備の仕事をしているオットウェイ(リーアム・ニーソン).
最愛の妻を失い、最果ての地で生きる希望を見出せない日々を送っていた.
やがて休暇の時期を迎え、作業員たちとともに飛行機での帰途につく.
ところが途中で激しい嵐に遭遇し、飛行機はアラスカの山中に墜落してしまう.
辛うじて生き延びたのはオットウェイを含むわずか7人だけ.
しかしそこは、深い雪に覆われたマイナス20℃の大雪原.
しかも恐ろしい野生のオオカミが一帯を縄張りにしていた.
オットウェイは望み薄の救助を待つよりも、生き残りを懸けて
移動を始めるべきと皆を説得するが….
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まずは狼のその獰猛さ、強靭さ、そしてその狡猾さが印象的.
主人公オットウェイは狼退治専門のスナイパーという設定だが、
墜落時にライフルを失い、狼に関する知識を逃げることに活用するだけ.
飛び道具がなければ、獰猛な狼の前では人間は無力.
狼に追いつめられ、ひとりまたひとりと命を落とす壮絶な脚本を
ハードな演出で描かれ、観客まで精神的に追いつめられる感あり.
強力な主人公の元に観客に爽快なスリルを提供しながら生き延びていくような
サバイバル活劇作品ではない.主人公たちは寒さや飢え、狼の襲撃にも耐え抜きながら、
さらなる思いがけないハードルに行く手を阻まれる.
それは偶然や運命、神の悪戯ともいえる障害が登場人物たちを襲う.
それに加えて、それぞれの個人的な苦悩のドラマも内含している.
オットウェイは亡くした愛する妻の想い出に苦しみ、自殺まで考えている.
それぞれ愛する家族はいても、極寒の地で働く理由を個々持っている.
印象に残ったのは、役者名は失念したが、残り生存者3名にまでなった所で、
もう生きていく気力、体力を無くしてしまった生存者.
遠く雪山を抱いた渓流で倒木に座り、他の二人に置いていってくれと懇願する.
どうせ生き残っても、暗い山の中で掘る仕事しか待っていない、自分はここまで
やるだけの事はやった…と.
“海猿”的な発想なら、残り二人が背負ってでも連れて行く…シーンだろうが、
この作品は甘くない.個々で生きのびるという意思を持つものだけが立ち進んでいく.
二人は握手をして、この男を残していく….
そして、最後の最期に主人公オットウェイに待ち受けた最悪、絶望的な試練は….
というところで、映画は終わり、エンド・ロールが流れ始める.
この日のレートショー、観客はたったの6名.
エンド・ロールが始って、席を立つ者2名.
この2名は、エンド・ロール終了後のワンシーン…最後の試練の結果を見逃してしまっている.
最近の映画は、このての馬鹿者たちをあざ笑う様な作りをしている.
照明が点くまでが作品の全てであることを料金払うなら認識してもらいたい.
原題「Grey」の表わすもの、灰色の極寒の世界のことか、狼の毛の色か、それとも
それぞれの人間が持つ苦悩のことなのか….示唆的でもあり、想像させられる.
映像的にも、シャープな部分とボケを上手く多用した所に感心させられた.
降る雪の表現がある時は細かく美しく表現するかと思えば、圧倒的なボリュームで
降りしきる雪の表現にへきへきとさせられる.
極限まで追いつめられた人間の生き様を考える佳作.
暑い夏に観ても、心まで凍えた….
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コメント
No title
やっぱり観に行こうかな~。
エンドクレジットは映画の余韻に浸る良い時間なんですけどね(^_^;)
2012-08-26 10:16 木蓮 URL 編集
No title
派手さは無いけど、きちんと作ってある作品でした.主人公の心の中の葛藤が実に好く描かれていて、それが最後まで持続している内容でした.エンド・クレジットから得る情報ってけっこう多くて、ロケ地だったり、使用音楽情報だったり、貴重だと思うのですけどねぇ.
2012-08-26 11:38 チャコティ副長 URL 編集
No title
2012-08-26 14:32 きみちゃん URL 編集
No title
そうしたものを問う映画だとしたら、・・・トニー・スコット自身もこの作品から何かを感じたでしょうに。
「生き残る意思」を描いた映画。観るときはどうしてもトニー・スコットを思い出してしまいそうです。
2012-08-26 14:57 - URL 編集
No title
そうそう最近の作品はエンドロールの最期まで観ないと損をしちゃう作品多し…デス.
2012-08-26 15:43 チャコティ副長 URL 編集
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そこの部分にトニー・スコットがプロデューサーとしてどう関わったか知りたいところです.主人公リーアム・ニーソンは常に死を頭においてました.飛行機に乗る前夜、ライフルの銃口をくわえる処まで追いつめられていたのですから.そんなシーンを観ると橋から飛び降りたトニー・スコットを想わざるを得ませんでした.黙祷….
2012-08-26 15:48 チャコティ副長 URL 編集
No title
終盤リーアムさんが生きるのを諦めた頃、途中であきらめた彼が戻ってきて叱咤激励してくれるのでは?とか希望的観測を持ったんですが、甘くなかったですね(>_<)
おかげさまで最後もしっかり確認しました!
TBさせてくださいね。
2012-08-29 20:45 木蓮 URL 編集
No title
そう、甘い処が無いサバイバル作品でしたね.暑い夏に相応しい“寒さ”でした.リーアムの別側面的な魅力を見せられました.トラバありがとうございます.
2012-08-30 00:19 チャコティ副長 URL 編集