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映画「ソフト/クワイエット」…この不愉快さは突出している.


映画「ソフト クワイエット」-4
原題:Soft & Quiet 製作年:2022年
製作国:アメリカ 上映時間:92分



「ゲットアウト」を始めとするビックリものの得意なブラムハウス・
プロダクションの作品をつくばのシネプレで発見.
興味本位で金曜初日に観に出かけた.
本年度累積112本目は極めて不愉快な作品であった.
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マイノリティへの偏見を持つ白人女性たちがあるトラブルをきっかけに
取り返しのつかない事態に陥っていく様子を全編ワンショット&リアル
タイム進行で描いたクライムスリラー.

郊外の幼稚園に勤めるエミリーは、「アーリア人団結をめざす娘たち」
という白人至上主義グループを結成する.教会の談話室で開かれた
初会合には、多文化主義や多様性を重んじる現代の風潮に不満を
抱える6人の女性が集まる.

日頃の鬱憤や過激な思想を共有して盛りあがった彼女たちは2次会
のためエミリーの家へ向かうが、その途中に立ち寄った食料品店で
アジア系の姉妹と口論になってしまう.

腹を立てたエミリーたちは、悪戯半分で姉妹の家を荒らしに行くが…….

「ゲット・アウト」のジェイソン・ブラムが製作総指揮を手がけ、これが
長編デビュー作となるベス・デ・アラウージョがオリジナル脚本・監督を務めた.

以上は《映画.COM》から転載.
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これは完全な反面教師的映画だ.有ってはならない、ゆるされない
人間ヘイトの物語. 悪霊も悪魔もゾンビもモンスターもサイコキラーも
出てこない.白人の平凡な主婦たちが日常から転げ落ちるさまを描く.

人が人でなくなる恐怖をワンショットで見せつける.吐き気がするほど
恐ろしいのは、それが心霊現象でも超常現象でもなく、おおらく今の
ご時世、特にアメリカの田舎社会では日常的にありえる現象を逆手に
とって描いているのが恐ろしい.

冒頭の主人公エミリー:ステファニー・エステスは不妊に悩む、中年に
さしかかった主婦.幼稚園の教師をしているらしい.冒頭にそんな環境が
判った以降は驚異の言動と行動が描かれる.

教会の談話室で集まり、手作りの料理や菓子でもてなす一見
和やかな会合.会のネーミングは「アーリア人団結をめざす娘たち」.
移民を否定し、多文化主義に反抗し、多様性主義に真っ向から
反対するメンバーが集まり、白人至上主義グループを結成する.


映画「ソフト クワイエット」-1


手作りのラズベリーパイの表面にハーケンクロイツ(鍵十字)が
書かれているのにも引いてしまうが、ナチス風に右手をかかげ
挨拶するのには、もう完全にこいつら気が狂っているとしか
思えなくなる.

勢いづいたこの白人の女どもはエミリー宅で2次会を催そうと、
移動中にスーパーへ立ち寄り酒を購入しようとする.
そこで起きる、客として来ていたアジア系姉妹といざこざを
起こす.


映画「ソフト クワイエット」-2


その腹いせをはらすべく、女たちはアジア系姉妹の家に行き
パスポートを盗んでやろうと目論み、行動に走ってしまう.
違法家宅侵入、捜索、荒らし、窃盗…とドンドンとエスカレート
していくアホでマヌケなアメリカ白人女たち.
そこに、アジア系姉妹が帰宅してくる….そして起きる悲劇.

こんな連中がアメリカの田舎の大部分ではびこる共和党支持者なので
あろう.観ていてトランプの影がちらついてしょうがなかった.
これがアメリカの分断社会の現実の有り様なのだろう.

主人公が言うセリフ、「表向きはソフトに.ひそかに入り込むの…」が
原題の理由であろう. このセリフとも相まり、“異次元”の映像体験と
“人間による恐怖”が描かれる、スリルとは言い難い吐き気がするような
恐怖を突きつけてくる作品.

これほどひどい不愉快な映画はちょっと記憶にない.でも最後まで
目を離せない.有色人種の立場からは、悔しい、悲しい、怖い、その
すべてが凝縮されている.全編ワンショットの途切れがない映像がゆえに
逃れられない魔力をもつ.

本作に登場する白人女性たちは、徹底的に傲慢で間抜けな人物と
して描かれている.間抜け過ぎて致命的なミスを犯すあたりは
少しご都合主義が過ぎる気もするが、そもそも正常な判断ができる
人物はその場のノリで犯罪を犯そうとは考えないのだろう.

最後の最期に少し灯りが見えて、アジア系姉妹の姉が湖の底から
浮き上がるシーンで終わるのだが、その後の彼女の反転攻勢は
どうなるのだろう?

これは、米にはびこる“人間ヘイト”を描いたホラー映画だ.
ブラムハウス作品の中でも最恐最狂格の位置付けと思う.

.


[副長日誌補足]

副長の勝手な推測による、
もしパート2があるなら…こうなる.

生き延びた姉は当然、警察へ駆け込む.
白人女たちの証拠隠滅作業により、
なかなか起訴できないが、
湖の底から妹の死体が発見され、
家からも何人かの指紋が発見され、
起訴される.
が、保守的、封建的、反移民的な陪審員、
裁判長の裁定により、容疑者達は無実に
なってしまう.
怒り心頭の姉は、私的報復をそれぞれの
白人女たちに下していく….

なんちゃって、あまりにも悲観的すぎるか?(笑).

妄想はこれでお終い.


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