映画「梅切らぬバカ」…塚ちゃん熱演、それ以上に加賀まりこ快演!

制作年:2021年 制作国:日本 上映時間:77分
自閉症を扱う作品をシネプレックスつくばで観賞.本年累積274本目の鑑賞.
加賀まりこと塚地武雅が親子役で共演し、老いた母と自閉症の息子が
地域コミュニティとの交流を通して自立の道を模索する姿を描いた人間ドラマ.
山田珠子は古民家で占い業を営みながら、自閉症の息子・忠男と暮らしている.
庭に生える梅の木は忠男にとって亡き父の象徴だが、その枝は私道にまで
乗り出していた.
隣家に越してきた里村茂は、通行の妨げになる梅の木と予測不能な行動を
とる忠男を疎ましく思っていたが、里村の妻子は珠子と密かに交流を育んでいた.
珠子は自分がいなくなった後のことを考え、知的障害者が共同生活を送る
グループホームに息子を入れることに.しかし環境の変化に戸惑う忠男は
ホームを抜け出し、厄介な事件に巻き込まれてしまう.
タイトルの「梅切らぬバカ」は、対象に適切な処置をしないことを戒めることわざ
「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」に由来し、人間の教育においても桜のように
自由に枝を伸ばしてあげることが必要な場合と、梅のように手をかけて
育てることが必要な場合があることを意味している.
加賀にとっては1967年の「濡れた逢びき」以来54年ぶりの映画主演作となった.
以上は《映画.COM》から転載.
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親しい友人に自閉症の子がいる.勤めていた会社でも自閉症の人が一緒に
働いていた.ブロ友さんにも自閉症の子を抱える方がいる.…身近に感じて
いるのだ.
種々の症状はあるのだけど、塚地武雅は確実な演技力で中年の自閉症忠男
を演じて見せる.上手い役者だと思う.そしてその母珠子に加賀まりこ.
自閉症の息子に限りない優しさを注ぐ一方で、占い師としての職業を持つ.
こんなややこしい役を演じることが出来るのは加賀まりこならでは.偏愛とも
言える息子への愛情と、冷静に相手の状況を鑑み、テキパキとその行く末を
指示する占い師の仕事は相反するようにも見えるが.彼女の中では見事に
両立している.お代はお客任せというのも洒落ている?

大きな破綻は無く、淡々とこの親子の生活が描かれていく.忠男は良心的な
事業主大津:林家正蔵の元で菓子箱折りの仕事についている.大津が平行して
経営しているグループホームへ忠男は入所するが、そこで起こす事件が
小波のようなもの.
このグループホームを敵対する住民たちが醜く描かれる.自閉症の人たちを
特別視し、迫害する. 何をしでかすか判らないから不安、危害が怖い、土地の
評価を下げる…身勝手で差別以外の何ものでもない発言にへきへきする.
他と違うものを認めない狭視、事実に基づかない不安、自己中心的、
こんな奴らが住民代表として、役所へ訴えたり、ホーム事業主へ抗議したり
する….
こんな愚劣なことだけど、本作では状況提示だけで解決はしない.それが現実
だと思う.綺麗事ではないのだ.77分間の物語はお隣と仲良くなっただけで、
忠男はまた実家に戻り、母と暮らすこととなる.

ある意味でリアルを描いてある作品と言える.
加賀まりこがインタビューでこう言ったそう.
『見終わって、こういう息子をみかけることがあると思います.決してこの子たちは
攻撃的なことはない.手を差し伸べなくてもいいので、ほほえんであげてください』と.
微笑むことが出来る人なら、差別はしない…と信じたい.
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