映画「A.I.ライジング」 (DVD観賞)
原題:A.I. Rising
制作年:2018年 制作国:セルビア 上映時間:86分
洋画家庭内鑑賞のお次は、なんとセルビア製SF.
お初の役者、監督との 出会いに新鮮な驚き.
本年家庭内DVD観賞59本目.
宇宙船の中を舞台に、ひとりの宇宙飛行士の男と美しい女性型アンドロイド
によって繰り広げられる予測不能な事態を描いたセルビア製SFドラマ.
地球から国家が消滅した近未来.宇宙開発のためケンタウルス座アルファ星
へ探査に向かった宇宙飛行士ミルーティンには、女性型アンドロイドの
ニマーニ が同行していた.
容姿や性格などすべてがミルーティンの嗜好に合わせてプログラムされた
ニマーニは、何があってもミルーティンに対して従順だった.
しかし、長い宇宙 生活の中でミルーティンは、次第にニマーニを「人間の女」
のようにしたいという 欲望に駆られる.
その禁断の欲望をかなえるため、ミルーティンはニマーニのプログラムを
強制的 に書き換えようとするが…….
ニマーニ役は現役ポルノ女優のストーヤ.ヒューマントラストシネマ渋谷の特集
「WCC ワンダーナイト・シネマカーニバル2019」内の「WWC ホワット・ア・
ワンダフル・シネマ2019」(10月4日~)上映作品.
以上は≪映画.COM≫から転載.
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たった4人の役者しか登場しないドラマ.特に最初のシーン以外は主人公
ミルーティンとアンドロイド、ニマーニ:ストーヤの二人芝居に終始する
独特な設定の作品.
低予算と判るが、宇宙船の巨大さや出来はそう悪くなく、先の米製低予算
作品よりよほどましに思える.予算の問題じゃないね映画の出来は.
資本主義による荒廃の反動で世界中が社会主義に向かうという最初の
説明が笑える.こういうところがセルビア発の作品と実感させられる.
そんな社会主義の地球から企業は脱して宇宙を目指すそう.
そんな企業エデルデジ社から遠くケンタウルス座アルファ星へ派遣されること
となった宇宙飛行士ミルーティン:セバスチャン・カバーツァに社の担当者から
アンドロイドとの同行を命じられる.経験則から長旅には同行がベターらしい.
そんな説明をする担当:マルサ・マイエルがニンマリする理由が、その同行者は
女性型アンドロイドだったから.好み通りにプログラミングできるだけでなく、
相手の行動パターンでチューニングしていく機能を持ち、しかも知的な美人の
ルックスをまとっている.その上、性的パートナーにもなってくれるというもの.
かくして二人は長い宇宙の旅に出る.アンドロイド、ニマーニを演ずるストーヤは
知的な印象の美人.本業はポルノ女優らしく、惜しみなくその美しい肉体も
披露してくれるし、絡みのシーンもある.意外とソフティケイトされた映像で
いやらしさは感じさせない.
ミルーティンは、アンドロイドであるニマーニに対して精神的にも肉体的にも
密接に繋がろうとする.ニマーニもそれに応える.男は下半身を支配されると
腑抜け化するよね.本来の目的そっちのけでニマーニに没頭してしまう.
従順なだけでは飽き足らず、より人間的なものを求め、ミルティーンは、ニマーニ
の基本OSを除去して、自分と過ごした経験値だけでリブートしてしまう.
OSを除去するとロボット三原則も失われる可能性があると忠告されるが、
ためらいもなく実行してしまう….
ちなみに、ロボット三原則とはSF作家アイザック・アシモフノが提唱したもので、
人間への安全性、命令への服従、自己防衛を示し、要は人間に絶対服従で
危害を加えず、自らも破壊から守るということを示す.
ところが、より人間に近づくはずが、ニマーニは予期せぬ行動をみせ始める.
協力行動の拒否、性生活の拒否、ミルーティンの性格否定….
ニマーニの反撃にミルーティンはふさぎこみ、うつ状態に入ってしまう.
このままではミルーティンは自殺するまでの状態に追い込まれる.ニマーニは
地球の担当者や船内コンピューターとその対応を相談するが、事態を避ける
には障害の除去しかないと結論する.それはニマーニ自身の消滅を意味する….
人間とアンドロイドの恋愛というと、かの名作「ブレードランナー」を思い出す.
ハリソンフォード演じるリック・デカードとレイチェル(ショーン・ヤング)の愛の逃避行
の物語りであった.
その後レイチェルはデカードの子を宿すという奇跡を起こすが、 そんな崇高さに
及びはしないが、ニマーニも二つ奇跡を起こす.
ロボット三原則に反し、自らの充電拒否をして自殺しようとする. そしてもう一つ、
全くプログラムされていない動作なのに…涙をながす.
さて、この奇跡を前にミルーティンの取った行動は….
男が勝手に描く女性の理想像の幻像に対しての行動、女性としての心理と
心の中の葛藤への不理解、思い込みと現実の不一致への悩み…と主人公の
お馬鹿さ、いや男という生き物の愚かさを曝け出したような内面劇の作品.
ただのポルノ作品と評する向きもあるが、それなりの内面性を感じた一作だった.
セルビアという映画未知の国から届けられたというのが興味深い.
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