映画「ひとよ」

制昨年:2019年 制作国:日本 上映時間:123分
恒例の“1200円で邦画を楽しむ友の会”は日比谷へ集合.
TOHOシネマズ日比谷で観たのは話題の作品. 副長としては本年197本目の鑑賞.
女優で劇作家、演出家の桑原裕子が主宰する「劇団KAKUTA」が2011年に
初演した舞台を佐藤健、鈴木亮平、松岡茉優、田中裕子の出演、 「孤狼の血」の
白石和彌監督のメガホンで映画化.
タクシー会社を営む稲村家の母こはるが、愛した夫を殺害した.
最愛の3人の子どもたちの幸せのためと信じての犯行だった.
こはるは子どもたちに15年後の再会を誓い、家を去った.
運命を大きく狂わされた次男・雄二、長男・大樹、長女・園子、 残された3人の
兄妹は、事件のあったあの晩から、心に抱えた傷を隠しながら 人生を歩んでいた.
そして15年の月日が流れ、3人のもとに母こはるが帰ってきた.
次男役を佐藤、長男役を鈴木、長女役を松岡、母親役を田中がそれぞれ
演じるほか、佐々木蔵之介、音尾琢真、筒井真理子らが脇を固める.
以上は≪映画.COM≫から転載.
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冒頭で母親こはる:田中裕子がいきなり夫を轢き殺してしまうので、
その夫が子供に暴力をふるうシーンは極少なのは助かる.
クズの男の所業をまざまざ見せられることほど辛いものはない.
飲んだ勢いかもしれぬが、身内にDVをはたらく男が信じられない.
暴力で持ってしか示せない権力と強制行為は果てしなく醜い.
が、そんなクズでも殺してしまってよいか?そこが大命題.
こはるは子供の為と言いながら、勢いに任せた風もある.
尋常ならざる精神状態の上での行為かもしれない.でも、殺ってしまった
からにはその気持ちの整理として、そう考えざるを得ないのだろう.
子供たち3人を前に15年後には帰ると明言して、自首する.
量刑はそれほどでなく、退所してからこはるは転々と住処を換え、働き、
そしてきっちり15年後に子供たちの前に帰ってきた.
子供たちを自由に幸せにするために殺したのに…、子供たちは幸せでなかった.
母親が父親を殺してしまった家族に世間の仕打ちは優しいはずもなく、
子供たちはそれぞれ辛い思いをしながら育っていた.
次男・雄二:佐藤健が、言う.「殴られるのを我慢すればよかっただけなのに…」
そう、体の傷は癒えるのだけど、心の傷は癒しようが無いのである.
母が父を殺したという事実と、その後の周囲から受けたいばらだらけの境遇に
身も心も打ちのめされた三人の子供の目前にこつ然と姿を現した母親に
どう接してよいものか、それぞれ悩む.
長男・大樹:鈴木亮平は加えて妻子と別居中で離婚騒動に巻き込まれている.
長女・園子:松岡茉優は美容師になる夢を絶たれ、スナックで手伝いというか、
毎晩飲みつぶれる毎日をおくっている.次男・雄二:佐藤健は物書きをめざすが、
うだつの上がらない三流週刊誌に記事を書くだけの生活に圧迫感を感じている.
そんな三人と帰ってきた母親のぎこちない生活が描かれる.
脇役にきっちりと演技する 人を配するのが白石監督の常套手段.
あの「よこがお」で主演を張った筒井真理子が 叔母役で、これがまた実に
いやらしい、生々しい演技を魅せてくれる.
もう一人目立つのは佐々木蔵之介.生真面目なタクシードライバーかと思いきや、
服の下は倶利伽羅紋々のヤクザ上がり.されど、別れて残した息子に対面して
喜び勇んで貢いでしまう愚かな父親を演ずる.
そんな佐々木蔵之介が息子のトラブルで自棄を起こし車で暴走したり、
その佐々木に佐藤健がドロップキックしたりするエンディングは唐突だし、
話の筋に上手くマッチしないと感じた.
クライマックスが欲しかっただろうなぁ…、外れだ.
戸惑いだらけの田中裕子の演技といたいけな松岡茉優の演技だけが
印象に 残った、哀しい出来の作品.
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コメント
No title
最近の邦画ってこういうテーマ多いですけど、色々感じさせられるのでつい見てしまいます。
本作も母と子供たちのどうしようもない、でもこうなってしまった感がよく描かれていて良かったんですが、副長どのの仰る通りエンディングを急いでしまってるような感じでしたねえ。
松岡茉優はいいですねえ。
個人的には鈴木亮平も良かったです。
2019-11-24 12:27 はらみ URL 編集
Re: No title
鈴木亮平も松岡菜優も、そして佐藤健もみな良い演技でした.
ああいう好さを引き出す監督の力量はたいしたものと思うのですが….
やはり脚本は大事ですね.
2019-11-26 20:16 副長 URL 編集