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映画「家族ゲーム」…納得?の名作


柏のキネマ旬報シネマは年末年始に過去70年代、80年代のベストテン
作品の上映を敢行.今週は80年代邦画のベスト3を上映.




栄えある1位を勝ち取った森田芳光監督の「家族ゲーム」を水曜の夜に鑑賞.
本年累積192本目の鑑賞.


制作年:1983年 制作国:日本 上映時間:108分


松田優作扮する三流大学の7年生という風変わりな家庭教師が、
高校受験生を鍛え上げる様をコミカルに描く.

共演に、伊丹十三、由紀さおり、宮川一郎太、岡本かおり、阿木曜子他..

音楽なしの誇張された効果音、テーブルに横一列に並び食事をするという
演劇的な画面設計など、新しい表現が評判となった森田演出が冴える
ホーム・コメディの傑作.

以上は《映画.COM》から転載.
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本作はTV地上波でしか観たことが無かったかもしれない.
よって極めて印象が残っていなかった.改めて劇場で観て新鮮な気持ちで
受け入れられた.公開当時は難解と思っていたのかもしれない.

さて、ATGらしいぶっきらぼうなオープニングに出てくる風景は東京中央区
の工場地帯.IHIやら川重の看板に囲まれて建つ中層のマンションが舞台.
お水系が多く住むというこのマンションに主人公ら家族4人が住んでいる.

横長のテーブル一列に並んで食事するシーンが本作の支配的な位置づけ.
決して向き合わない家族たちを象徴する設定.

彼らはその生活においても向き合わない.入学したてで高校に通わない
長男に対しても、学校で問題児となっている劣等生の次男に対しても
横から上辺だけの言葉がかけられるだけ….伊丹十三の父と由紀さおりの
母親がまたエキセントリックな夫婦を演ずる.

直接息子たちに意見すると金属バットで殴られるからと、何事も母親を
通じて指示を徹底させようとする父親.朝食の目玉焼きの黄身だけを顔を
引っ付けてすするその姿だけでマザコンだったことを観客に思い知らせる

その手腕は森田監督らしい?三度目のそのすするシーンに由紀さおりは
両面焼きの目玉焼きですすらせないように反逆する(笑).

大声で心おきなく会話できる場所と伊丹が言うその場所は、駐車場の
車の中というにも笑った.ここでも向き合わず、隣同士の会話なのだ.

そこに現れるダメな次男の家庭教師として松田優作の登場.
とかく神格化されがちな俳優だが、ぶっきらぼうな演技がうりの役者じゃ
ないかと思っている.されど本作には見事にそのアクトぶりがマッチ
している.森田監督の起用の上手さかもしれない.

いつも学研の植物図鑑を小脇にかかえ、熱心に?でも乾いた態度で
次男を“教育”していく三流大学の7年生を松田優作が淡々と演ずる.

時に頬を殴り、四の字固めをかけたり、いじめっ子に対峙する為に
喧嘩の仕方を教えたり、エロ本を取り上げたり…とそれなりの“教育”
を施していく.その甲斐あってか成績は徐々に上がり、見事に長男の通う
一流高校に合格するまでに至る….

BGMを廃し、効果音を強調した演出.モノを食べる咀嚼音、ドアの開閉音、
バスのブレーキのきしみ音…耳障りとも思える音量で不協和音のように
観客を翻弄する.まるでこの家族のゲームのような生活を飾るのに
相応しい不協和音.

その家族の不協和音と家庭教師の独奏が入り混じっての祝杯の宴もまた、
横一列のテーブルに5人掛け….予想通りの乱闘となって大笑い!

オーラスの兄弟そろって死んだように眠りこける処に母親も誘われて
寝てしまうシーンの意味するものは??しかもヘリコプターの爆音下で.
不可解な部分も含めて名作とされてしまうのか、と妙な納得感のある名作.







コメント

非公開コメント

No title

キネ旬で開催中ですね。スケジュール見ただけでは上映作品が分かりませんでしたが、作品群がオープンになったのですね!
本作は由紀さおりが新鮮な驚きだった印象が。伊丹十三も俳優としても個性的でしたよね。

No title

> アンダンテさん
最新のスケジュールでは作品名が記載されてますよ。そうそう、由紀さおりだったんですよね‼改めてビックリ‼ 悪い演技じゃありませんでした。抜け気味の演技がお似合い(笑)。
温故知新、古い作品も良いですね。
ナイスありがとうございます。

No title

実生活でも
向き合わないと 結構 話が弾んだりします
車での運転席と助手席のように

No title

> きみちゃんさん
目を見て話すことばかりだと疲れちゃいますものね。でも、本作のは極端。35年前の作品とは思えない斬新さでした ♪
ナイスありがとうございます。

No title

写真のシーンがシュールでしたね。時代もそんな時代だったなあという感じが蘇ります。
松田優作は、ハードさと滑稽さと、不思議さを持った、特異な存在でした。
TBお願い致します。

No title

> atts1964さん
画面に向かって一同でモノを喰らうあのシーンのインパクトは凄いですよね。それにあの音‼
松田優作は大好きですけど、神格化されすぎてますよね。ナイスとトラバありがとうございます。

No title

これ、キネマ旬報の今月号の特集でしたね、立ち読みしました。
キネ旬シネマ、いいな~、大阪にもほしい!

No title

> じゃむとまるこさん
私も、今日キネマ旬報シネマで立ち読みしました(笑).
あはは、受付の前に今月号が放りだしてあるんですよ♪
素敵な映画館デス.
ナイスありがとうございます.

No title

こういう映画館がある柏って都会ですね。

No title

> 豊栄のぼるさん
たまたま潰れた映画館をキネマ旬報が買い上げた…、収益状態はかなり悪そうです(笑)。
いつ潰れてもおかしくない。
ナイスありがとうございます。

No title

私も初見はテレビ版でした。
当時のテレビは映画を切り貼りしちゃうからこの映画もラストはいきなり由紀さおりが寝てましたっけ。
だから余計よくわからなかった。(笑)
森田芳光監督の血気盛んな頃の独特の演出が冴えわたっていましたよね。

No title

> はらみさん
確かにTVで観たはずなのに印象が無いのはそのせいでしょうか?
今観ても、森田監督の演出は斬新、と言うかシュールですよね(笑)。温故知新、来年は古い作品も掘り起こして観たいと思いました。