映画「ハント」(DVD)…申し分ない快作.

原題:Hunt 製作年:2022年
製作国:韓国 上映時間:125分
レンタル屋の新作棚で見つけたのは作年秋公開の韓国情報機関もの.
本年度累積61本目に観賞.
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Netflixの大人気ドラマ「イカゲーム」で主人公を演じたイ・ジョンジェが
脚本を手がけて自らメガホンを取った監督デビュー作で、20年来の
友人でもあるチョン・ウソンとともにダブル主演も務めたスパイアクション.
1980年代の韓国.安全企画部(旧KCIA)の海外班長パクと国内班長
キムは、機密情報が「北」に漏れたことから、組織内にスパイがいること
を告げられる.
組織内の人間全員が容疑者という状況の中、パクとキムはそれぞれ
部下とともに捜査を開始する。二重スパイを見つけなければ自分たち
が疑われるという緊迫した状況下で、スパイを見つけ出すことができない
パクとキムは互いの動向を監視するようになり、次第に対立を深めていく.
そんな中、大統領暗殺計画が発覚し、その緊張は頂点に達する.
以上は《映画.COM》から転載.
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「イカゲーム」は未見.今だNetflixを繋げてないからね.でもイ・ジョンジェ
という役者さん、脚本どころか監督までこなすとは才人であることは承知した.
脚本的にも登場人物の心理戦に焦点を当てており、誰も信じられないという
状況の中で対峙するパクとキム、高まっていく緊張感の末にたどり着く真実に
は驚かされる.

もともと韓国映画は実際に起きた事件を題材にフィクションを巧みに交えて、
サスペンスやドラマの娯楽作を仕立てるのが得意という印象があるが、
本作もしっかりその路線に乗っている.
背景となるのは、全斗煥が軍の実権を掌握した1979年の粛軍クーデター
と大統領就任の足掛かりにした1980年の光州事件、1983年の北朝鮮軍
飛行士による亡命、北朝鮮工作員が全斗煥大統領の暗殺を図ったビルマ・
ラングーン爆弾テロといった重大な事件.
そうした史実の点と点をフィクションの補助線でつなぐかのように、韓国の
情報機関に食い込んだ北朝鮮スパイをめぐる動きと、韓国内部で大統領
暗殺を画策する動きを交錯させ、緊張感を維持したまま怒涛のクライマックス
へとなだれ込む手腕は見事だ.

イ・ジョンジェの役どころは、安全企画部の海外班長パク.パクとライバル
関係にあるのが、国内班長のキム:チョン・ウソン.
序盤から全開で展開し、二人の主人公たちが80年代の韓国政府の情報部で
二重スパイ探しに駆けずり回る姿を描く.一息つく場面はほとんどなく、贅肉を
削ぎ落としたシビアな攻防が最初から最後までずっとテンションを維持しながら
続く.展開のペースは幾分速すぎるくらい.
一つ間違えると観客側が情報過多、消化不良に陥るリスクをはらみつつ、
作り手側は観客がついてきてくれることを最後まで信じてこのスピードを緩めない.
その信頼関係こそが終盤のスパイの正体が明らかになってからの怒涛の展開を
より効果的に加速させていく.
これを機にパクとキムの関係性も変化するのだが、2人それぞれの信念と
感情もまた的確に描くことで、終盤の派手なアクションにエモーショナルな
要素が加わり、一層味わい深いエンディングへ繫がっていく.

街中でのカーチェイスや銃撃戦など、リアルなアクションシーンひとつとっても
改めて韓国映画の質の高さを実感する.80年代の再現も細部まで作り上げられ、
ワシントン、東京、タイのシーンはすべて韓国で撮影されたと言うからビックリ.

東京の真ん中で行われる派手な銃撃戦はよく警視庁の許可が降りたものだと
感心していたら、全て韓国内の収録と聴き疑問氷解した.
脚本良し、演出良し、アクション良し、役者良し…申し分ないアクション快作.
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