映画「耳をすませば」…まずまずの着地点か?

製作年:2022年 製作国:日本 上映時間:114分
1995年のジブリ版は劇場で観ている.当時小学生だった娘と艦長の3人で観た.
主人公たちの中学生時代を描いていたが、本作はその10年後を描く実写版.
ジブリ作品の実写化は失敗するという伝説に不安を持ちながらTOHOシネマズ柏
で本年度累積239本目の鑑賞.
――――――――――――――――――――
スタジオジブリの人気アニメ映画の原作として知られる柊あおいの名作漫画を、
清野菜名と松坂桃李の主演で実写映画化.原作漫画とアニメ映画で描かれた
中学時代の物語に加え、主人公2人が大人になった10年後をオリジナル
ストーリーで描く. 読書好きな中学生・月島雫は、図書貸出カードでよく名前を
見かけていた天沢聖司と最悪の出会いを果たす.しかし雫は聖司に大きな夢
があることを知り、次第に彼にひかれていく.
そんな聖司に背中を押され自身も夢を持つようになる雫だったが、聖司は夢を
かなえるためイタリアへ渡ることに.2人は離れ離れになってもそれぞれの夢を
追い、10年後に再会することを誓い合う.
それから10年が過ぎた1999年.出版社で働きながら夢を追い続ける雫は、
イタリアで奮闘する聖司を想うことで自分を奮い立たせていたが…….
大人になった雫と聖司を清野と松坂が演じ、中学時代の2人には映画初出演
の安原琉那と「光を追いかけて」の中川翼を起用.
監督・脚本は「ツナグ」「約束のネバーランド」の平川雄一朗.
以上は《映画.COM》から転載.
―――――――――――――――――――――――
中学生時代を描いた回顧シーンではジブリ版の雰囲気を良く再現している.
子役二人、安原琉那と中川翼がそれぞれがなかなか良い.アニメ版の
イメージを崩していないし、大人になってからのそれぞれの役者に似てるので
10年後の物語がスムーズに繫がって頭に入ってくる.

ジブリ版を基とする観客には、主題歌が“カントリロード”ではなく“翼をください”
だったり、天沢聖司はジブリ版ではヴァイオリン職人を目指しているのだが、
本作ではチェリスト(チェロの演奏家)を目指していたりして、違和感を感じて
しまうのかもしれない.
アニメ版の“カントリーロード”だって当時観た時は凄い違和感を感じたし、
天沢聖司は原作では画家を目指していたりする.そんな差異は主題とは、
別次元であろう.
結論から言えば、アニメ版を上手く踏襲しながら、10年後の姿を軟着陸させた
かなとの印象. 中学時代のイントロの時代屋のセットや、招き猫の容姿、
猫人形の“バロン”の造作など、アニメ版の雰囲気を上手く表現している.


10年後を演じる月島雫の清野菜名と天沢聖司の松坂桃李は雰囲気的には
上手いキャスティングだと思うのだが、中学生の10年後というと24、25歳.
二人ともその年齢に見えないのが残念な気がした.どちらも30歳直前の
容姿と演技だ(苦笑).


さて、主題曲“翼をください”.70年代初期の赤い鳥の名曲.高校時代の
合唱コンクールの課題曲で、繰り返し練習のおかげでそらでも歌える曲.
本作中でも、安原琉那歌唱で1回、清野菜名歌唱で1回、松坂桃李演奏の
チェロで2回、〆に杏の歌唱で1回.アレンジは良く出来ているのだが、
いささか耳たこ状態(笑).しつこすぎない?
10年後を描くオリジナル脚本は、少し平板な気もするがドラマティックな
パートも含めて想定内の結末へ導いてくれる.
自己の状況打開の為、雫は聖司に逢いにイタリアを訪ねるが、二人の仲は
進展するどころか、一旦の破局を迎える.10年に及ぶ遠距離恋愛はやはり
成就しないかと思われるが….
コロナ禍の撮影で、長期間に渡った撮影とかイタリアロケの不発とか障害は
多かったようだが、セット撮影も含めてそれなりの完成度で仕上げたのは
平川雄一朗監督の手腕なのだろう.
.