原田マハ「キネマの神様」
オーストラリアのブリズベン在住のブロ友 guchi さんからのお勧め本.
とにかく泣けるから、送りつけてやる…という勢いに推されて、
そのコメントを読んだ15分後には本屋で購入していた(笑).
原田マハは初読、読みやすい文章でサクサク読める.
このところ読書から遠ざかっていた副長にも優しい文体だ.
映画好きの父娘をめぐる映画好きな人たちによる心温まる物語.
名作映画が出て来て、名画座が出て来て、ブログが出て来て、
ギャンブル依存症の父が居て、その父を面倒みる母が居る….
そして主人公の娘;歩(あゆみ).アラフォーで独身、一流企業で課長を務めるも
突然会社を辞めてしまう.と同時に趣味はギャンブルと映画という父が心筋梗塞
で倒れる.しかも多額の借金をしていることも発覚.
父の仕事の肩代わりをしている時に、父がしたためた映画感想を見つけ、自分も
書いてそのノートに挟んだ.ある日復帰した父がその歩の文章を映画雑誌「映友」
に投稿したことから、歩の就職と父の映画ブログがスタートすることとなる….
映画のブログがとりもつ人と人の縁によって、家族が再生する.オンボロ雑誌社が
再生する.つぶれかけた名画座が復活する…映画、名画座、ブログの三題話しだ、
まるで、今の我々の状況じゃないか.入れ込んで読んでしまうのも無理は無い.
出てくる登場人物にスーパーマンは居ない.
むしろ欠陥ばかりの駄目ダメ人間ばかりなのだけど、その一途さがとっても魅力的.
そんな人の間の関係の機微を好く表す書き手なんだね、原田マハっていう人は.
父と娘の心の通わせ方はぶっきらぼうだが暖かい.
共通の趣味、映画を同体験しているからこそ、あうんの呼吸のやりとりもある.
これは筆者の個人的体験によるものであろうか?そうでなかったら…天才である.
最後はシネコンの波に押されて消えていこうとする名画座をめぐって一騒動.
大団円のラストシーンは、関係者みんなで名画座で一番好きな映画を観るという
シーンが目に浮かぶような表現に涙ポロポロ…最近涙腺が緩いからね、副長は.
大好きな人と並んで生涯一番好きな映画作品を観る…そんな夢が主人公と
その父の願いだった.その作品とは…副長も断然この作品だなぁ.
ねえ、guchiさん ! .
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