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【OVERDRIVE】 MUSICUS! 【感想】

おすすめ度:★★★★★★★★☆☆
タイトル『MUSICUS!』(ムジクス)
公式ジャンルロックンロールADV
フィーリング心躍る 考えさせる
メーカーOVERDRIVE
脚本家瀬戸口廉也
発売日2019年12月20日
主人公有名進学校を中退した、悩める若者
ストーリー
★★★★★★★☆☆☆
文章表現
★★★★★★★★☆☆
キャラクター
★★★★★★★☆☆☆
読み易さ
★★★★★★☆☆☆☆
CG
★★★★★★★☆☆☆
サウンド
★★★★★★★★☆☆
ゲーム性
★★★★☆☆☆☆☆☆
おすすめ度
★★★★★★★★☆☆

▼ 概要

美少女ゲームブランド OVERDRIVEの最終作。代表のbambooが企画を模索していた際に同ブランド過去作『キラ☆キラ』のシナリオを担当した瀬戸口廉也が話を持ちかけた経緯があり、今作は『キラ☆キラ』の後継を謳っている(続編ではない)。今作の開発費用はクラウドファンディングを採用しており、日本記録級の異例の速さで目標調達金額に到達した。

▼ あらすじ

主人公・対馬馨は有名進学校に通っていたが、中退して今は定時制に通っている。父の後継ぎとして医者を目指すか悩んでいたところ、市の懸賞に応募した小説をきっかけに音楽プロダクションの社長・八木原に興味を持たれ『うちのバンドの遠征に同行してレポートを書いてくれないか』と依頼を受ける。取材先はかつてメジャーレーベルで活動していたバンド『花鳥風月』。そのリーダー・花井是清はかなりの変わり者で戸惑いながらも、初めて参加したライブで馨は『花鳥風月』の音楽に心を奪われてしまう。しかしその数日後、感動を忘れられない馨の元に届いたのは『花鳥風月解散』のニュース。納得がいかない馨は花井を説得に向かうものの議論は平行線。 懲りずに足を運んでバンド再開を求める馨に、花井はこう告げる。『馨君、きみがおれのかわりにロックをやらないか?』
(wikipediaより引用)
▼ 感想
音楽の感動まやかし だ。

OVERDRIVE最終作!!!
OVERDRIVEといえば歌やバンドに関する作品を多く扱っているイメージ。……と言っても、私は『キラ☆キラ』を経て、2作目のプレイとなりました。他のゲームもやってみたいですね、DEARDROPSとか。

ロックンロールADVと銘打つだけあって、かなり楽曲に力を入れています。加えて本作は、「ロックとは何か」「バンドの音楽性による違い」等をトコトン煮詰めた様なシナリオで、大変読み甲斐がありました。
特に"花井是清"と"金田"の2キャラはロックを熱弁する台詞が多く、本作の"顔"と言っても良いのではないだろうか。

ロックが好きな人には是非おすすめしていきたい作品だ。

また、本作は4つのエンディングが存在するのですが、それぞれがプレイヤー自身の音楽性によって分岐していく点に面白味を感じました。バンド人生に何を求めるのかが如実に表れる。そんなノベルゲーをやってみたくないですか? それがMUSICUS!です。

ボーカルである"三日月"の歌声がYUKI(元JUDY AND MARY)っぽいと感じたのは私だけでしょうか? 上手いし聴きやすいです。個人的にはキラ☆キラの楽曲&歌声の方が好みですがw 国民的ロックスターに相応しいのは三日月の歌でしょうね。

おすすめの攻略順は、弥子→輪→澄→三日月 です。
でも初回は己の音楽性に身を任せてほしい気もします。

詳細な感想は↓へ続きます。
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▽ ここから下はネタバレあり ▽
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ここからはルート別に所感を述べます。
順番は私が攻略した順であり、推奨順ではありません。

共通ルート 【評価:○】

"利口じゃない行動を試してみたかったんだ"
高校中退の理由。ギターを手放さない理由。納得のいく導入部でした。あまり注目されるところではないかも知れませんが、親子の押し問答等もリアルでしたね。父親が敷くレールは紛れもなく正道で、でも逸れたくなる塩梅が絶妙です。

印象に残るのは、是清の言葉。
「音だけで全ての人間を魅了するような音楽は存在しない。魂をこめた演奏なんて言っても、実際にはそんなの誰にも聴きわけることは出来ない。みんな音じゃなくてストーリーに騙されるんだ。」
音楽を題材にする作品の台詞としては非常に衝撃的です。
私なんかも、強いエピソードのある曲だったり、映像作品の主題歌とかしか聴かないもんなぁ。プレイしたエロゲの曲が良く聞こえるのも同様のカラクリですよね。確かに真理だ。

"芸術性":来島澄ルート 【評価:○】


"何一つ、残しやしない。"
音楽に"芸術性"を求めると辿り着くBAD END。初めにこのルートに分岐してくる人が多いみたいですね、私もそうでした。
金や名誉ではなく、己が想う上質な=他人に理解されない音楽を作る日々。その結果、自分の作った曲が同棲相手を死に追いやってしまう。売れないことの厳しさをとことん描いたシナリオでした。
吉田兼好の格言「偽りても賢を学ばんを賢といふべし。(それが偽りであっても、すぐれた人の真似ようとする人を賢というのだ。)」を引用しつつ、主人公は泥沼の中に沈んでいきます。他のルートを含め、本作は"人に良いと思って貰えないなら(音楽は)無価値だ"というスタンスを徹底しています。
でも、それでも、このBAD ENDには愛おしさすら感じます。
「何のためだっ、何のための音楽なんだっ!」と苦しむ姿は最高にロックだと思うし、
「最後に残ったもの全部。何もかも音楽に変えるんだ。」と這いずる姿は醜くも格好良いと思ってしまう。
このBAD ENDがあってこその MUSICUS! でしょう。

"大衆性":花井三日月ルート 【評価:○】


"ロックンロールという言葉はね、きみが勇気をもって暗闇で顔をあげるとき、いつもそこにあるものの名前なのさ"
"国民的ロックバンド"へと昇り詰める、本作のメインシナリオ。
音楽に"大衆性"を求めた結果、精神的に追い詰められ、更にファンからアシッドアタックを受ける。しかしそれでも立ち上がる、音楽とバンドの素晴らしさを描いていました。
結局のところ本作が発しているメッセージは何だろうと考えると中々難しいです。音楽はただの音の振動だけれど、聴き手の思い出を呼び起こす事もあるし、弾き手の意志や心構えが大切でロックンロールなんだ。……という事だろうか。
ストーリーに騙されている、という言葉と堂々巡りになりそうな結論ですが。「ごちゃごちゃ考える必要はない、難しい事は何一つない」に収束するのでしょうね。
ロックは考えても結論に達しない。それは野暮。
思考停止ではなく、合理を求める時点でそれはロックではないのでしょうね。難しいね。

余談ですが、キラ☆キラにも登場したSTAR GENERATIONが復活する演出が嬉しい。

"青春性":尾崎弥子ルート 【評価:○】


"一度きりの人生だから――"
人生をギャンブルにしない。堅実な選択の末に訪れたメモリアルルート。定時制の学校でバンドを組み、文化祭ライブを行う。未練を断ち切るための前向きな思い出作り、そんなお話。
言うなれば、音楽に"青春性"を求める様なルートでしたね。
ミュージシャンにはならなかったけれど、学生時代に文化祭でライブをやったんだ……そんな人にとっては眩しすぎる光景。私もその一員ですので感動は一入でした。

金田が「ロックは弱い者の味方なんだ」と熱弁する部分がありましたが、そういう切り口で攻められると「ロックはやっぱり最高だな」と素直に感じ入ります。

また、「一度きりの人生。一度きりだから全てを失うような失敗は出来ないという考えと、一度きりだからやりたいことをやらなくてはいけないよいう考えのどちらが正しいのか?」と葛藤するルートでもあります。どう歩んでも後悔が生まれるのが人生なのでしょうね。
このルートのED映像が一番儚くて、沁みました。

"享楽性":香坂輪ルート 【評価:△】


"つらいときは楽器を弾くんだ"
表現云々ではなく、音を楽しむ。ライブを楽しむ。さしずめ、音楽に"享楽性"を求めるルート、と言ったところでしょうか。
何も考えていない様で、実は死生観と強く結びついている。
ヒロインのめぐるは死にたいとさえ思うほどに辛い過去があり、ライブをしている時は幸せを感じれる。人生を音楽に懸けた師匠の最期の言葉は「もう一度、ライブがしたい」であった。ステージで楽器を演奏することは、世界で一番楽しい事なのだ。
ある種、音楽の原点的な思想で、それ以上でも以下でもない。これもまた、真理をついたお話ですね。

同時に、「今は楽しい。でもいつか夢が覚めるみたいに、全てがつまらなくなってしまう日が来てしまったらどうすればいいのだろう?」という葛藤も描かれていました。それに対して特にアンサーがあった訳ではないのですが、たぶん"その時に考えればいい"のでしょうね。刹那主義であればあるほど、しっくりきそうなストーリーです。

このルートの存在意義はわかるのですが、どこか胡麻化している様な、今一歩踏み込めていない様な、空虚な後味があります。でも、バンド活動自体に憧れを持つ人にとっては、最も望む展開なのかも。ロックンロールですねぇ。

蛇足
4つのエンディングがありましたが、ぶつ切りで終わる様なものは1つもなく、全て特殊な演出のスタッフロールで締めるのが◎。どれが一番好きなのか、自分に合っているのか、思いを馳せてみると面白いエロゲだと思います。
私だったら"芸術性":来島澄ルートが似合うかな。報われないけれど、それが自分らしいと自己完結して満足するタイプ。どうしようもなく、破滅型なんですよね。同時にそういうものをロックに求めています。

本作でOVERDRIVEブランドは終了とのことですが、名残惜しい気持ちと、集大成に相応しい一作だなという気持ちが併存しています。願わくば、ロックを題材にしたノベルゲームが途絶えませんように。


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