おすすめ度:★★★★★★★☆☆☆
タイトル | フェアリーテイル・レクイエム |
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公式ジャンル | メルヘン・ミステリアスホラーAVG |
フィーリング | 鬱 驚嘆 |
メーカー | ライアーソフト |
脚本家 | 海原望、他 |
発売日 | 2015年7月24日 |
主人公 | 患者として運び込まれた記憶喪失の少年 |
ストーリー ★★★★★★★★☆☆ | 文章表現 ★★★★★★★☆☆☆ |
キャラクター ★★★★★★★☆☆☆ | 読み易さ ★★★★★★★☆☆☆ |
CG ★★★★★★★★☆☆ | サウンド ★★★★★★★☆☆☆ |
ゲーム性 ★★★★★★☆☆☆☆ | おすすめ度 ★★★★★★★☆☆☆ |
▼ 概要
童話の登場人物だと思い込む人格障害「お伽話症候群(フェアリーテイル・シンドローム)」の患者たちの間で発生する事件を描いたファンタジー調のミステリ・アドベンチャーゲーム。メルヘンさと残酷さが同居する世界観となっており、幻想的な作品で知られる大石竜子が本作の原画を務めた。
▼ あらすじ
ある日、主人公はフェアリーテイル・シンドロームという人格障害の治療施設「楽園」で目を覚ましたが、彼は自分がどの童話の登場人物になりきっているのか、そもそも自分が誰なのかを思い出せなかった。楽園には、自分が童話の登場人物だと思い込んで生活している少女たちが入院しており、主人公は彼女たちとの交流を愉しんだ。だが、ある日、スケッチブックを持った少女が「自分たちの中に、つみびとがひとりいる」と主人公に見せてきたことで、彼らは惨劇に巻き込まれた。
(wikipediaより引用)
▼ 感想
「つみびとは だあれ?」ライアーソフト初プレイ!絵の美しさに釣られて本作をチョイスしましたが、大正解でした。
本作最大の特徴は、ヒロイン達が自身を有名童話の登場人物だと思い込んでいる点ですね。
「不思議の国のアリス」のアリス。
「ヘンゼルとグレーテル」のグレーテル。
「白鳥の湖」のオデットとオディール。
「ラプンツェル」のラプンツェル。
「雪の女王」のゲルダ。
他にも「青い鳥」や「ピーターパン」「オズの魔法使い」等からの引用もあり、童話好きには堪らない。勿論知らなくてもOK、作中で概略を教えてくれる親切設計です。
尚、忘れてはいけないのが、本作はホラー作品という点。
コドモが洗脳されたり、性的虐待を受ける様子を見せられたりと、とにかく歪んでいる!胸糞悪い!耐性の無い方はご注意。でもちゃんと救いはありますのでご安心を。
プロローグが終わると、“つみびと”ではない(信頼する)ヒロインを一人選択することになります。これによって、各ヒロインのルートに分岐していくわけです。ミステリーならでは、という具合で面白いですね。
これからプレイする方に伝えたいのは「個別ENDが釈然としなくても、全ての謎が解けるまでプレイしてほしい」です。
攻略順は、ラプンツェル→グレーテル→ゲルダ→アリス→オデット&オディール だと少しだけ幸せになれるかも。
詳細な感想は↓へ続きます。
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▽ ここから下はネタバレあり ▽
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▽ ここから下はネタバレあり ▽
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ここからはルート別に所感を述べます。
順番は私が攻略した順であり、推奨順ではありません。
▶ ゲルダルート 【△】
"見つけないといけないの、「彼」を。"
誰を信頼するかと問われたら、唯一正気なゲルダ一択でしょ、という流れでまずはゲルダルートに(笑)。
「雪の女王」は雪の女王に連れ去られたカイを連れ戻すためにゲルダが旅をするお話ですね。原作中に悪魔の鏡の欠片が刺さったカイの性格が一変してしまうという一節があり、それをなぞる様に主人公≒カイが豹変。
ゲルダが正気であることを望むと、雪の女王と化しBAD END。「ゲルダ」であることを望むと物語の力を借りて「カイ」を救える。……この展開に「???」な状態になり、プレイが途絶えてしまった時期がありましたw 今思えば、黒の少女が“童話の物語を実現できる力”を駆使したからこうなった、と理解できるのですが、最初はワケわかんないよなぁ……。
また、アリスが正気に戻り、家族を死へ追いやった自責の念で自殺してしまうルートでもありましたね。
アリス……(;ω;`)。
▶ アリスルート 【○】
"あなたには「笑顔」が足りないの!"
「不思議の国のアリス」は説明不要でしょうか。原作同様に、言葉遊びが巧みなアリスは本作のムードメーカーでしたね。
聖書を渡さない→絶望して性に溺れるBAD END。
聖書を渡す→幸せな狂気の世界に旅立つGOOD END。
個別ルートはどれも正気を戻す=BAD なのが面白いですよね。
「聖書に新たに物語を付け加えて幸せになればいいんだ!」という胸熱な展開。後味が良くて大好きなルートでした。
TRUEルートでも、このルートに言及しており、
『(アリスルートは)誰より楽しくて、夢と希望に満ちていて、幸せな結末。コドモを洗脳してやろうという汚い施設が、アリスの魔法によって逆に洗脳されていった、あの結末。夢の中とはいえ、「楽園」のたくらみを無力化したのはアリスだけ。彼女だけが「楽園」に勝った、といえる』と大絶賛過ぎるセルフ統括をしてて草でした。
実質第二のハッピーエンド。
▶ ラプンツェルルート 【△】
"わたくしが、代わりに泣きます。"
「ラプンツェル」は塔を登ってきた王子様と蜜月を重ね双子を身籠るお話。妊娠を知った魔法使いがラプンツェルを放逐、王子は身を投げて失明。7年後に再開し、ラプンツェルの涙が王子の視力を治してめでたしめでたし。
双子の絵を見させる→身籠れず荒野に放逐BAD END。
双子の絵を見させない→墓守小屋で出産GOOD?END。
かなり意味深な閉幕で、“夢を見させられている”ことが明確に解るルートでした。このルートを最初にやっていれば他のルートも“夢だから”とすんなり受け入れやすいのかなぁ、と。
このルートに限ってはGOODとBADがちょっと強引に感じる。
身籠れぬ体(×)+楽園追放(○)=言うほどBADか?
身籠る(○)+妊娠時期不明(×)=言うほどGOODか?
という疑問。どちらも歪なNORMAL ENDくらいの印象。
また、グレーテルがレイプ&殺害されてしまう最も胸糞なルートでもありました。基本的に、前のルートで可哀想だった子を順番に選択していけば一番ストレスフリーかなと思う次第。
▶ グレーテルルート 【△】
"大好きだったの。兄妹なのに……。"
「ヘンゼルとグレーテル」は飢饉で困った親に口減らしのため森に捨てられてしまう兄妹のお話。お菓子の家の魔女に食われそうになるが、逆に魔女をパンを焼くかまどに押し込み、財宝を持って家に帰ってめでたしめでたし。
焼死体は猫だと信じない→攫われてお菓子の家炎上BAD END。
猫だと信じる→いらない子同士で放浪の旅GOOD END。
ヘンゼルとグレーテルが「青い鳥」のチルチルとミチルになるという展開が斬新!! 現実からの逃亡ではあるけれど、発想自体は目からウロコでした。
また、壊れてしまったゲルダがカイを探して屋根から落下死するルートでもありました。選ばなかったヒロインへの仕打ちが酷いよぉぅ!
▶ オデット&オディールルート 【○】
"姉さんは……姉さんだけは……!"
「白鳥の湖」は白鳥になる呪いを受けたオデットと、求愛する王子ジークフリード、そしてオデットになりすますオディールのお話。二つの結末があり、ひとつはジークフリードがオディールに永遠の愛を誓ってしまい、その後オデットとジークフリードはそれぞれ身投げしてしまう悲劇。もうひとつは、ジークフリードがオデットの呪いを解き結ばれるハッピーエンド。童話というか、クラシックバレエのお話ですね。
永遠の愛を誓う→三人共湖に落ちて死亡BAD END。
誓わない→妹を忘却したオデットと結ばれるGOOD END。
※6日目昼に、図書館へ行かないと選択肢が現れない。
原作:オデットが幸せを望み、オディールがぶち壊す。
本編:オデットはバッドエンドを望み、オディールはハッピーエンドを押し付ける。 という逆の構図が面白いですね。
オデットが姉。オディールが妹。
妹は姉の幸せの為に寄り付く男へテスト(横取り)を繰り返し、姉は男の一人が大切な妹を蔑んだという理由で殺害した という過去。
色々と謎が解けて読み進めるのが面白いルートでした。
オディールかっこいいよね。実はシスコンだし。
▶ レクイエム(TRUE)ルート 【◎】
もう、「楽園」を振り向いたりしない。
つみびと=オデットを言い当てると辿り着くTRUEルート。一発で当ててしまったためにBADを後回しにしてしまった(;´Д`)
今までのルートは全て黒の少女が見せた夢(もしもの世界)。『馬鹿みたいに幸せな結末もあれば、その記憶ごと消えてしまいたいくらいの悲劇もあった』の一言で、「なるほど、色々と釈然としなかったのも意図されたものだったのか」と納得がいきました。
加えて、全ての謎がひとつずつ紐解かれます。
▶ 「楽園」は実験施設と囚人収容施設と娼館を兼ねている。
▶ 焼死体の正体は猫。グレーテルは自分の目に自信が持てず、アリスは猫をおばあさんだと思い込んでいて、ゲルダは警察がくるような大事になることを狙いそれに乗っかり、オディールはオデットを楽園から逃がす計画のために死体を窓の外へ。
▶ 主人公がピーターパンを受け入れなかった理由。(兄の悪行の責任を引き受けていただけで、そもそも主人公は暴君ではない)
▶ アリスは運転中の車の中で家族を笑わせて事故死させてしまった→アリスに責任は無い、むしろ家族に愛されている。
▶ グレーテルは義兄を突き飛ばし殺害した→義母を突き飛ばした記憶と、義兄が事故死した記憶が混合している。
▶ ラプンツェルは双子を殺害した→身を売られた先の病院で双子の絵を壊しただけ。諦めと罪悪感が原因。
▶ ゲルダが探していたカイ=主人公。身を案じて追ってきたことを利用され「ゲルダ」に。
▶ オディールはオデットを救うために自ら楽園へ。医師らと取引を繰り返し、洗脳から逃れていた。
▶ 黒の少女は亡くなった「オズの魔法使い」のドロシー。
▶ イケノは楽園の実情を把握していないただの傷心の医師。
各人の罪の意識=キャラクターが割り当てられた理由であるのが本作の肝で、本当に巧妙で良くできた設定だと感心させられました!!
あと、カレイド・スコープモニターによる洗脳から一人ずつ抜け出していく演出が最高に胸熱でした!!特にアリスの『こんなもので与えられなくたって、あたしは元々夢見がちで元気な女の子で、生まれながらのアリスで、気が向いたらシンデレラで、ときどきは赤ずきんなんだから』の台詞が最高にイカしてる!!メルヘンここに極まれり!って感じで。
最後は、行きたい場所へ飛べる“銀の靴”で楽園から脱出し、願いを叶える羽猿を呼ぶ“金の帽子”で楽園の医師たちに復讐。「オズの魔法使い」で締めくくるのはなかなかグッド。だいぶファンタジーですけど、そこはまぁ、ご愛敬。
▶ レクイエム(BAD?)ルート 【○】
ネバーランドを取り戻す。
つみびと推理を間違えると辿り着くBAD?ルート。
ピーターパンENDと言うか、何と言うべきか。
楽園脱出ではなく逆に大人を追放する、全員バラバラになることなく一緒に暮らせるという意味では大団円なのかも知れませんね。ただし全員洗脳にどっぷり浸かり、ドロシーの無念は晴らせず、イケノは殺害され、主人公は妹に再開できない&罪の意識で自分の上だけお日様が届かないぜ!な状態ですから、うん、やっぱりBAD ENDですね(笑) でも雰囲気は割と好き。
原作ピーターパンのウェンディも家に帰らなかったらこんな感じなのかな。やっぱりいつかは夢から覚めないと駄目よね。
▶ 蛇足
如何せんクリアまでに時間が掛かった……。ボリューム的には多すぎる訳ではないのだけれど、気乗りしない序盤~中盤の展開に加え、本筋とは無関係の会話パートも多くて疲れちゃう……。ミステリーだからサクサク読めると思いきや、メルヘン要素が長時間の書見に向いてない事を思い知らされました(*_*;)
でもやっぱり記事書いて振り返ってみると完成度の高さに驚かされる。非常に良く出来た設定で、噛めば噛むほど味わい深い作品でした。
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