おすすめ度:★★★★★★★☆☆☆
タイトル | シンフォニック=レイン |
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公式ジャンル | ミュージックアクションゲーム |
フィーリング | 鬱 感動 |
メーカー | 工画堂スタジオ |
脚本家 | キュートロン、西川真音、松園浩史 |
発売日 | 2004年3月26日 |
主人公 | 故郷に恋人がいる音楽学院生 |
ストーリー ★★★★★★★☆☆☆ | 文章表現 ★★★★☆☆☆☆☆☆ |
キャラクター ★★★★★★☆☆☆☆ | 読み易さ ★★★★★☆☆☆☆☆ |
CG ★★★★☆☆☆☆☆☆ | サウンド ★★★★★★★☆☆☆ |
ゲーム性 ★★★★★★★★☆☆ | おすすめ度 ★★★★★★★☆☆☆ |
---{▼概要}-------
『シンフォニック=レイン』は、2004年3月26日に工画堂スタジオくろねこさんちーむより発売された全年齢対象パソコンゲームである。音楽を担当した岡崎律子の『Ma memoire』からプロデューサーの貝阿弥範明が着想を得て企画された。工画堂スタジオウェブサイト内愛蔵版の紹介ページではコアと表現されるなど岡崎の音楽から強い影響を受けている。また、発売直後に亡くなった岡崎にとって遺作ともいえる作品である。愛蔵版の特典CDの記述や時期的な観点からほぼ明らかだが、曲は闘病生活中に作られている。
---{▼あらすじ}-------
一年中雨が降る街ピオーヴァ。フォルテニストになるべくそこの音楽学校に通う主人公は、卒業まで数ヶ月なのに卒業演奏のパートナーが決まっていなかった。主人公は無事にパートナーを探しだし卒業演奏を成功させることが出来るだろうか、それとも…
---{▼感想}-------
『それぞれのかなしみがあって、イエナイナミダがある』(~OP曲「空の向こうに」より)
発売から14年経つ今でも時より語り草になる、全年齢対象PC美少女ノベルゲーム「シンフォニック=レイン」をプレイし終わりましたので、その魅力を語っていこうと思います。尚、2017年6月にリメイク版が発売されましたが、この記事で扱うのは元祖……というか通常盤です。
▶ 魅力その1:雨の情景が美しいサウンドノベル
本編を始めるとすぐに飛び込んでくる、雨の音と欧州風な街並み。導入部だけで「あ、これは良いゲームだな」と確信。この手の雰囲気を持つゲームは稀有ですので、その一点で購入を決心するのもアリですよね。
▶ 魅力その2:岡崎律子さんの遺作
概要にも書かれておりますが、若くして亡くなられた作曲家・岡崎律子さんの遺作として認知されていることが、ファンの心を離さぬ理由の一つに挙げられます。斯く言う私も「岡崎さんが作中の楽曲を手掛けている」などの理由から購入に至りました。
各ヒロインに持ち曲があり、会うたびにセッション(実際にプレイヤーが演奏)するという音楽に注力した本作で、全編にわたり作詞・作曲を手掛けられております。どの楽曲も琴線に触れる瑞々しいものばかり。
▶ 魅力その3:実力派声優らの歌声
ヒロイン達が実際に歌うゲームですので、声優ひとつとっても馬鹿にできません。ましてや、中原麻衣・笠原弘子・浅野真澄・折笠富美子とえり抜きの実力派揃い。声優ファンにも十分に満足行く出来となっている。
▶ 魅力その4:“驚嘆”の一語に尽きるストーリー
肝心のストーリーなのですが……絵柄に似合わずカラクリ仕掛けといいますか、有毒成分のあるお話となっています。特徴的なのが、ヒロインにそれぞれ隠し事がある、という点。終盤に近づくにつれ息を飲む展開になっていきます。なかなか強烈ですよ。
▶ 魅力その5:没入感を味わえる音ゲー要素
主人公は架空の楽器・フォルテールの奏者であり、ヒロインの歌声に合わせてタイピングをする演奏パートがあります。ハイスコアを目指すことも出来るのですが、どちらかと言うと本編への没入感を増すためのアクセントとしての役割を担っています。練習に勤しむ感覚は、なんだか懐かしい気持ちにさせてくれますね。バンド活動とか合唱コンクールの練習とかそういうのを彷彿とします。また、ヒロインと共に作曲する等、シナリオに絡む部分もあるので、思い入れも強くなると思います。
ここからは更に細かく詳細を書いていきます。
< --- ▽ここから下はネタバレあり▽ --- >
▶ da capo 共通ルート 【△】
ブラインドタッチに合わせた【ASDFJKL+】のキーを用いる演奏パート。タイピングに難があり、音感も無く、楽譜も読めない私がPC音ゲーに挑むのは無謀だったか……!?と不安でしたがなんとかなりました。
挫折しかけた時に気付きました。『音符が楽譜の下の方に来たら左手で、上の方に来たら右手や!』と……(←如何に低レベルかがお解りになりましたでしょうか笑)。ずっと”D”とか”K”とか記号を見て打ち込んでいたんですよねぇ。音ゲー初心者あるある……だと思いたい。
この時点で、音の妖精・フォーニの存在が謎というか怪しいなと感じていたのは、我ながら鋭かったなぁ(自画自賛)。
▶ da capo トルタ ルート 【△】
恋人のアルを「トルタ」と呼び間違えてしまう等、不倫色の濃いトルタ ルート。
ルート分岐に差し掛かるあたりで、“彼女持ちなのに別のヒロインを攻略していく”ことへの強烈な違和感を覚えました。そのため以下3ヒロインのルートにおいては、主人公に全く共感できない状態が続きましたー……不誠実に感じるのは、私が恋愛に潔癖性を求めているからでしょうか??
何はともあれ、中原麻衣さんが声をあてているトルタは実に魅力的なヒロインです。この段階ではまだトルタの“隠し事”が明かされないんですよね。「どういうことなの?」という疑問を強く持ち続けることがこのゲームでは非常に重要。
▶ da capo リセ ルート 【△】
只々可哀想なリセ ルート。彼女の“隠し事”は――
1:『声楽科ではなくフォルテール科』、
2:『後継者にするため、父親に連れてこられた孤児』、
3:『歌うことを許されず、父親に虐待される』。 と、怒涛の発覚ラッシュに度肝を抜かれました。しかし結局、喉を壊され記憶も朧げに……でも一年後に歌えるまで回復したよ!という介護END。面白かったけれど後味が悪すぎるのが惜しい。
▶ da capo ファル ルート 【△】
本作の必要悪的な立ち位置の、悪女ファル ルート。
彼女の“隠し事”は――
1:『腹黒な性格で、主人公の才能を利用したい一心』
2:『友人アーシノも手玉に取っている』
“誰も信じず、誰にも感謝せず、ただ歌を歌い、必要とあらば人を騙すことも厭わない”と、処世術は完璧な彼女。孤児だからこそ高みを目指しているという設定ですが、「彼女になら利用されるのもいいかも知れない」という結論には達する主人公は凄いですね……(^_^;)
試しに卒業演奏で手を抜いてみたら「何故手を抜いたの」と糾弾されてワロタ。
▶ al fine (トルタ視点 トルタ ルート) 【◎】
上記ルート攻略後に解禁される、トルタ ルートの種明かし。
1:『主人公とアルは交通事故に遭い、アルは意識不明。主人公はその事実を忘れている』
2:『雨は主人公の幻覚・幻聴』
3:『トルタがアルを騙り、主人公を見守っている』
謎がトントン拍子で解ける上に、トルタの心理描写が豊かでスラスラ読める!罪悪感に苛まれるトルタは実に健気で応援したくなるのも、本章の面白さに拍車をかけていますね。
▶ da capo フォーニ(アル) ルート 【◎】
記憶を取り戻しアルを救う、実質のTRUE END。
ここまで来ると、フォーニ=アル である事は主人公もプレイヤーも解っている上で、敢えて言及せずに進行する手法がまた良いですね。フォーニのことを考えていると楽想を思い付くというプロセスを踏み、“フォルテール奏者が一人でステージへ上がる”という前代未聞の事をやらかす高揚感。そして得られる成果、「天使の声が聞こえたんだ。馬鹿らしいとは思うがな」。
幻覚の一部であるはずのフォーニの歌声が他人にも聴こえる奇跡。フォーニが重なるようにして、アルが意識を取り戻す奇跡。この手の類の“奇跡”……嫌いじゃないです。
フォーニと共に作り上げた『Fay』が作中一番好きな楽曲だったかな。思い入れもありますし、笠原弘子さんの歌声がまた良かった……。
楽曲と言えば、シンフォニック=レインの主題歌とキャラクターが歌う挿入歌のセルフカバーを中心に構成された、岡崎律子さんの7thアルバム『for RITZ』も非常におすすめです。製作中に岡崎さんが亡くなり、それでもレコーディングスタッフが最後まで仕上げたというエピソードがなんとも……。
本作中の楽曲は「演奏する曲」という事もあってか、練習曲風味ですよね。ローテンポで、伴奏のみで至ってシンプルです。歌声が映えます。
岡崎律子さんが逝去されてから13年。もし今もご存命ならば……と幾度想った事でしょう。才能を惜しむと共に、謹んで哀悼の誠を捧げます。
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