「紅葉」を含む日記 RSS

はてなキーワード: 紅葉とは

2024-12-12

山梨市観光覚え書き修正

anond:20241209190903表題が混乱を招いたので解説

 

元増田表題は後述するように広義の山梨県下は富士五湖周辺などで観光経験があること、および甲府市限定で巡ったわけでもないことから

山梨県中心部の(山エリアではない)市内観光という意味合いを手抜き的にまとめた結果

指摘を受け、過去山梨市訪問していたことに気づいた

というか山梨市という行政単位があることもコメントで知った

 

山梨市ではない、富士急ハイランド前のカプセルホテル

諸般の事情でブチっとなって中央線に飛び乗ってからまれる安宿を検索した

なお富士急ハイランドには入園していない

 

山梨市ではない。富士急ハイランドに隣接するスーパー銭湯

カプセルホテルチェックインして存在を知り徒歩で訪問

ホテルとの往復が思ったより遠かった印象しかない

 

ブチっと泊ったはいいがどうしたものかと考えあぐねた末、上記スーパー銭湯での欲求の不充足を埋めるべく

ゆるキャンの地に行くことにした

電車で最寄り駅まで移動したあと黙々と歩いて到着

基本的明け方の来迎タイムを狙うらしく、空いている

一人で浸かって、なんか色々と落ちるものが落ちた

基本的に徒歩での訪問お勧めしない

 

ほったらかし温泉往路が直線坂道農道で辛かったため

復路は公園内を散策しながらの下降を選択

終始、見晴らしがいい上に一度登ってしまえばひたすら下るだけなので

晴れてさえいればキレる理由など消滅する

展望台のレストランカロリー消費後なこともあり、とても美味しい

 

  • 1回目まとめ

上記1回目は山梨を全く意識しておらず、観光目的でもないためノーカン

 

紅葉の時期に箱根から富士五湖家族を連れて行ったもの

どこも紅葉に恵まれ

この公園なら高低差があるため紅葉が見れる帯域があるのではと川口湖畔から強行

結果は外れ

家族にはひたすら空振りにつき合わせた形

 

当初は箱根紅葉狩り予定だったものがズルズルと足を伸ばしたものなため

山梨観光認識がなくノーカン

 

笛吹川フルーツ公園に対する家族の印象が良くないものに終わったことに懸念を抱き

長野旅行に行く途中でほったらかし温泉の来迎を組み込んでのイメージアップ作戦を図る

そこそこ成功

 

長野旅行の立ち寄りという体裁のため山梨観光という認識がなくノーカン

 

観光目的で立ち寄ったという認識からことごとく外れているという結果だった

今後軌道修正を図っていきたい

2024-12-07

一人植物園めぐりが楽しすぎる

追記

寝て起きたらホッテントリ入りできてて嬉しいか追記

最近だと京都府立植物園に行ったよ。開園100周年おめでとう!

モミジとかイチョウがあるエリア紅葉がまさに見頃で最高だった。

この植物園には植物生態園っていうゾーンがあって、植物本来の生態で育てているらしく

最低限の手入れにとどめられた迷路のような小道を探索するのが楽しかった。

他ではあまり見ない盆栽の展示もあったり。

そして温室!すごかった。

小1時間はかかるボリュームで巨大な食虫植物から高山植物、熱帯植物等々実に豊富

バニラの香料見本が置いてあって木からあのおいしそうな香りがプンプンするのを実体験できて

「ほんとにバニラ!」とヘンに感動した。温室全体の手の入れようもすごかった。

地下鉄の駅が目の前にあって、交通の便も良いところだった。

新宿御苑もかなり前だけどいったなぁ。

位置づけはたぶん公園なんだろうけど、植物園といってもいい。

あの温室もよかった。バナナがおいしそうになってた。

「お前みたいなキモいのが来ると他に迷惑がかかる」

だよね、そうだと思う。

から行くときは身なりを出来る限り整えて、

家族連れや友達まり集団とは距離をとって

可能範囲で気配を消す努力はしてる。

許してほしいとは言わないけどわかってほしい。

□□□ 以下本文 □□□

ハードルいかと思ってたけど、そんなこと全然なかった

だいたいは自動券売機で入場券買って、さっと入場。これだけ。

入場料も安く、公営とかだと200円くらい。

当日なら再入場自由とかゆるゆる。

広いうえに込み合うほど人はおらず、みんな穏やかな顔した人ばかりで

季節の移ろいを味わえる木々花々を気のむくまま愛でる。

わりと一人でいる人もいる。

おすすめ

2024-12-03

あ、今日10時の仕事が終わったらあと全然予定ねえや、今気がついた

紅葉でも見に行こうかな

今年も紅葉を見に行けなかった

2024-12-01

紅葉を見にいこうよう”

約 6,490 件 (0.24 秒)


紅葉を見に行こうよう”

28,600 件 (0.25 秒)

紅葉って言うほど綺麗か?

そんなにでもなくないか

近所の公園紅葉見に来る観光客でごった返してる

あれか、入場料が無料から来るのか

お金がないか紅葉を見るのか?

そんな気がしてきた

2024-11-29

祇園クラブで働いていた頃の思い出


大学卒業して社会人○年目。大阪で働いている。職種は……まぁ専門職だと思う。若い方だと信じたい笑

サービス現場仕事で、給料は安いけどやりがいだけはある。我ながら搾取されている。

年末に向けて部屋の中を掃除していたところ、学生時代の思い出の箱を見つけた。その中には、京都祇園にあるクラブで働いてた頃のグッズがまとめてある。ドレスとか、メイク道具とか、指名を沢山とった時の記念品とか、最初にお店を選んだ時の求人誌とか。当時、いわゆるキャストと呼ばれる仕事をしていた。

これから話すのは思い出を振り返ってるだけなので、散漫なことが多いです。ご了承ください。

祇園クラブでのお仕事とか、年上の男性との関係とか、様々な感情が入り混じった、心の奥底からくるようなお話に胸が締め付けられるような思いがする……ということはないです笑



夜のお店の種類、クラブとか、ラウンジとか、キャバクラとか、そのあたりの区別は今でもわかってない。4回生からの1年+半年(聞かないでほしい…)しか働いてなかったこともある。

短大から大学編入した関係で、単位を取るのに忙しかった。親ともケンカしてたから、大学学費自分で工面するしかなかった。奨学金ばかりというのも危ない気がしたので、面白いアルバイトいかな~と探していると、祇園クラブが見つかった。

リベンジのつもりもあった。

短大生の頃はYouTuberをしていた。顔はメイクを濃いめにして、男性向けに恋愛のことをおしゃべりする動画だった。始めは自分動画編集してたけど、そのうちやってくれる人が見つかって、女子男性に向けて恋愛ノウハウをおしゃべりする~というスタイル確立した。もう引退してるかもだけど、Baiand(バイアンド)さんの動画スタイルが近い。

それがあまり人気が出なくて、再生数は最後の方は1万もいかなかった。才能がないのかなと思って、そうしたら、チャンネル更新をしなくなって数か月経った頃に、コメント機能を通して隠れたファンが何人もいたことがわかった。みんな熱烈だった。

正直、後悔した。たった4~5人でもいいから、私の動画配信を好きな人がいてくれるなら、投稿を続けていればよかったと後悔した。

そんな気持ちがあったから、次のクラブアルバイトでは、誠心誠意、自分を贔屓してくれる人に尽くそうと思った。仕事なんだから、尽くすのは当たり前なんだけど…

最初の方はうまくいった。飲食店アルバイトしたことがあった。何をどうすればいいかは最低限わかる。お話をする相手も、コミュニケーションが通じない人はほぼいなかった。みんな常識のある人だった。

1セットにつき、最低でも2万円はかかるお店だった。つまらないサービスはしたくないと思った。けど……働き始めてひと月も経つと、ほかの従業員との関係とか、ノルマのことで考えることが多くなった。

明らかに変なお客さんもいたけど、それは我慢した。いや、我慢するんじゃなくて、その人と向き合って、一生懸命コミュニケーションをするのが正しい姿だ。それができないなら、キャストとして続かないことを学んだ日々。

かに働いてるキャストの人は、私に比べると、その……生活がカツカツな人が多かった。間違いないと思う。

学生は少なくて、いわゆるプロの人が多かった。それでも20代が多かったけど。

私たちのような学生バイト存在が軽かった。ヘルプで付いた時だと、ドリンクを欲しそうな態度を示すとウザがられる。とあるお客さんがシャンパンやニューボトルを入れた日だって、その人がトイレに行ってる間を縫って、「ほら、今のうちにもっと飲んで。早くボトル減らして」と無理やり飲まされることもあった。

インスタグラムで、系列店同士で売上競争をするイベントがあった時も、私たち学生はどうせ勝てないからと、先輩たちのヘルプとしてお店を勝たせるポジションだった。

苦しいこともあったけど、お店には感謝している。いい経験ができた。あそこで働いてなかったら、大学卒業時の借金額は片手で数えきれない本数になってた笑

あとは……ノルマのことが記憶に残っている。

祇園木屋町みたいな激戦区だと、求人面接時にノルマ説明がある。インターネット求人案内にもノルマの有無が書いてある。ノルマじゃなくて、「目標」「売上によって時給が変動」「時給・出勤日数保証期間○か月」みたいな書き方だ。

大阪なんば道頓堀、ダイナミックコードの『たこ焼き激戦区』ほどお店が密集してるわけじゃないけど、明らかに店舗間の競争がある。



ノルマ表示の例】※当時の求人情報

ポイント

ひと月に10ポイントを取ってください

・同伴3ポイント、お客を呼んだら1.5ポイント

・週3日以上出勤を基本としま

ドリンクバックはノルマとは別に計算

・未達成時は10,000円を給料から天引きしま

ペナルティ

遅刻  :日給の最大50%

当日欠勤:10,000円

無断欠勤20,000円

内引きなど不正行為:当店が認定した被害額の最大300%

※お店を通さずにお客からお金をもらうこと。買い物含む



私がノルマを達成できた月は……1年半のうち、半分もなかった。

最初半年は、初心者ということでお店が多めに見てくれるけど、しだいに厳しくなって……どうしても達成できないキャストの子で、黒服からも人気がなかった子は普通に辞めさせられた。もしくはシフトを干される。

この業界が厳しいかと言ったら、そんなことはないと思う。私のような当時素人にも日給で2万円以上を出してくれた。ほとんど役に立たなかったのに。

先輩方は、あまり仕事のことを教えてくれなかったけど、背中で教えるタイプの先輩も確かにいた。「もし今日ヘルプに付いたら、うちのこと見とき~♪」と言って、売上を捨てて教科書通りの対応をしてくれる神先輩だった。



自分まさか、お客さんと恋愛するとは思ってなかった。本当に。可能性はないと思ってた。

うちに来店するお客さんは、ある程度お金を持った人が多い。いい会社勤めの人や、経営者公職に就いてる人や、お坊さんの人が多かった。

その中で、あるお客さん(増田なのでMさんにする。当時43歳くらい?)と最初に会った時は、なんだか面白い人だなとしか思ってなかった。ええと、私が最初に付いた時が、その日の二人目のキャストだったはず。

会話を始めると、優しそうな印象があった。もう彼と会うことはないと思うので、書いてもいいかな。名刺には「土地家屋調査士」とあった。京都市の北の方で営業していた。ちょっと話をして、何分か経った時に「よかったら……オレンジジュース飲む!?」って聞いてきた。

それを聞いて大笑いした。なにが面白いのかわからなかったけど、とにかく笑った。普通カクテルとかワインとか、ビールとか……そういうのを注文する。

お客さんも、カクテルだとリキュールを一滴しか入れないとわかってるからか、ワインの注文をする人が多かった(※ワインビールも、黒服の人が限界まで薄めてくれる。ほぼ水だった笑)。

あー、あの時は本当に楽しかった。まだ入って数か月だったのもあるけど、今でも楽しく思い出せる。

その日、お店を出る時に「ダメ元だけど、よかったら同伴する?」と言ってくれた。嬉しかった。最初接客でいきなり同伴っていうのは、珍しいことだと私でもわかってた。

最初の同伴のお店は……河原町通りの途中にある古いレストランだった。お手頃でおいしいところだった。壁に美大の人が書いたような風景画が何枚も飾ってあった。「俺が学生時代、たまにここに来てて。20年ぶり」とMさんは言っていた。

それからも、Mさんは月に1~2回のペースでお店に来てくれた。私を指名することもあったし、しないこともあった。同伴出勤は、月に一度あれば多い方だった。

あの人は多分、お金をたくさん持ってたと思う。でも、倹約……いや、ケチなのかな?? あまりお金を使おうとはしなかった。私の誕生日が近い時、黒服さん(店長)が私とMさんがいる席に来て、今度の誕生日イベント説明をしてくれた。

条件付きの特別サービスMさん提案したんだけど…普通にシャンパン注文を断ってた笑 店長さんは粘っていた。営業トークも。実際、Mさん特別サービスをするのは本当だった。

でも結局、Mさんは……

「ありがたいのですが、申し訳ありません。私には不要です」

だって。はっきり言ってた。

ほかのお客さんとの比較だと、大体みんな店長の考えたサービスを受けることが多い。実際にシャンパンの注文料金は相当お得だし、キャストだって本気でサービスをする。そういう「装い」だってする。身体接触だって、いつもより積極的のはず。本当に常連さん向けの特別だった。

でも、あの人はキッパリ断った。お店では、いつもハウスボトルだった。ほかのお客さんは、見せびらかすみたいにマイボトル名前入りのタグを何個もぶら下げている。けど、Mさんは本当にいつもハウスボトルだった。私には、私が希望するだけドリンクをくれたけど。

それにしても「不要です」だって……今でも思い出して笑うことがある。いまの私も冗談で、Mさんの口調を真似することがある。

あれは、夏から秋になる頃の同伴で、少し高めのレストランに入った時だった。ウェイターの人がトリュフ?(もう忘れちゃった…食後のケーキだったかも)を薦めに私たちテーブルに来た。その時も「私たちには不要です」とはっきり断った。

その後、祇園にあるお店まで行く時に、小さい橋を渡ることがあった。その時に、Mさんから笑えるアプローチがあった。

「ねえ、橋を渡るまでの間、手を繋いでいい?」

と言ってきた。

私は笑いを堪えた後、彼氏の顔が頭に浮かんだ。前に、ほかの男子学生が私にそういう目的で声をかけた時、彼氏が怒ってその学生を威嚇すると、そそくさと逃げていったことがあった。

その時、Mさんの顔を見上げると、何かが違った。大学生とは何か違う……見た目の若さもあったけど、とにかく自信にあふれていた。彼氏自信過剰タイプだったけど、それとは明らかに違う余裕だった。

「えー。じゃ、はい……どうぞ」

と手を出すと、Mさんが優しく握って、お店がある富永通りまでゆっくり歩いて行った。

その日は人がすごく多かった。道を歩いている時、私の手を優しく引いて、道の端の安全地帯誘導してくれた。

いい人だ。とは思ったかな? その日もお店に行くと、私を指名してドリンクを2杯注文して、それからいつもどおりすぐに帰った。料金は2万円少々だった。



ちょっとずつ、Mさんからアプローチがあった。

紅葉の頃に、「今度お昼に同伴しない?」と言われることがあった。夜じゃなくて、お昼に同伴すれば一緒に買い物ができる(≒プレゼント)ということだった。

正直、魅力はあった。ほかのお客さんだと、ただ昼とか夜にデートしようって言ってくるだけ。本当にそれだけ。論外だった。禁止事項だし。ただ、Mさんとなら。外を一緒に歩いても不自然に見えない。そういう見た目の人だった。

けど、断ることにした。同伴の場合、必ずお店の黒服が私を送迎して、お客さんのところに行く。車で待ち合わせ場所の近くに下ろすのだ。内引き防止のためと思われる。あとは防犯対策

でも結局、どうしようかと迷って、違う系列店のキャストに聞いてみたり、中学時代からお世話になっているYahoo!知恵袋で聞いてみたけど、直接の答えはなかった。Yahoo!知恵袋中の人は、「あなた大人なんだから善悪を秤にかけて自分で考えなさい」という回答をくれた。500知恵コインを渡した。

結局、同伴はナシで、私が勝手にお昼デートすることにした。Mさんには内引きの箝口令をお願いして、夜になると普通にお店に来てもらうことにした。

え?何を買ってもらったか?? 四条通りにある高島屋大丸で、雑貨のお店があって、そこで……ワンちゃんのためのペットフードを買ってもらった。小さいサイズの。ピアス指輪とか装飾品に興味はあったけど、別にいかと思った。

後はレストランご飯を食べて、近隣店舗グルグル周って、一緒にアイスクリームを食べて……あとはもう、覚えてない。

この日の写真スマホに保存してある。手も繋いだ。私が帰りにバス停まで行く時、四条通りを歩いている時だった。この日も人がすごかった。当時まだ、コロナウイルス流行ってない。

市バスに乗った後、車中でも、桂川のあたりを歩いている時も、Mさんのことを思い出した。

別に好きだったとか、そこまでの感情じゃなくて。彼氏と同じ場所(高島屋付近)をデートした時のことを思い出して、やっぱり大人社会人の人って、無駄がなくて、そつがなくて、しっかりしてて……と振り返っていた。

少なくとも、彼氏みたいに店員さんに怒ったり、私や仲間に何かを自慢したり、立場の弱い人に大きく出たりすることはなかった。私の肩をいきなり抱いたりしなくて、体を触るときは優しくしてくれる。

同じ高島屋にある時計店で、彼氏店員さんに渋い対応を取られて悔しがっていた。けど、Mさんに対しては、私でも引きそうになるくらい、店員さんがウヤウヤしい対応だった。学生目線だと『神扱い』に見えた。



秋が過ぎて、冬になって……Mさんとお昼のデートは三回目だった。その日は夕方が近かった。烏丸通りのあたりの観光名所を見ていて、遅くなって、終わった後もなんとなく一緒にいた。

今日は一旦解散するんじゃなくて、一緒に居てからお店に行こうという話をしていた。ホテルオークラの前まで来た時、Mさんが「今日はここに泊まってる。仕事の都合で」とホテルを指さした。

当時の私は、オークラのことを知らなかった。大きいホテルしか認識してなかった。今では、リーズナブルなお値段の『一般向けの優良ホテル』だと思っている。京都市内には、一泊10万円以上のホテルがたくさんあるけど、実際に利用してみて……サービス÷宿泊料という観点では、元京都市民の視点では№1だ。

一緒にオークラの1階にあるカフェご飯を食べて、バーに行こうとしたけど、まだ営業してなかった。2階にある展示物を一緒に並んで見てると、彼の手が私に触れて、ぐいっと引っ張られて、私の顔がMさんの肩の近くにあった。

「一緒にいられる?」と言われた。考えるより前に頷くと、私の肩をぎゅうっと抱いて、手を繋いで、エレベーターカードをかざして、高い階に上がって、彼の部屋に入って……

暗い部屋に入った直後に、ゆっくりキスをされた。両手の位置がわからなくて、Mさんの両肩を触っていた。キスが終わると、一緒にベッドに座った。

部屋の中で夜の京都市内を見ながら、ベッドでくつろいだ。そしたら、Mさんが「一緒にシャワー浴びよう」って……恥ずかしかったので断って、それから間が空いて、「メイクだけ落としたよ」と報告すると、すぐに押し倒されて、キスがあって、始まった。

普通セックスだったと思う。お互いに体をくっつけたり、舐めたあったり。優しいキスだったり、激しいキスだったりした。唾液を飲ませるとか、変なことはしなかった。

私を抱きしめてくれた。優しい感じだった。私が彼氏にするみたいに、乳首とか舐めたりすると、彼はくすぐったいと笑っていた。その時の私は、すごく甘えていた。

お互い、あんまり動かなくて、くすぐったいことばかりした。

入れる時も、髪が痛くならないようにギュッと抱いてくれた。暖房のせいもあるけど、蒸し暑かった。汗が出ていて、体同士が液体で滑る感触気持ちよかった。Mさんの体はがっしりしてたけど、若々しくはなかったし、お腹ちょっと出てた。

でも、体なんてどうでもよかった。頭を撫でられると気持ちよくなって、Mさんの何でも愛しくなった。

Mさんは胸が好きみたいだった。バストを使って、特別な機会だと思っていろいろしてみた。彼はすごく照れていた。遠慮がちに行為をしてた。「もっと強くしていい」って言ったら、本当にすごく強くしてきて、胸のあたりが痛かった。でも、続けているうちに気持ちよくなって。

私は笑いながら、Mさん身体をくっつけていた。マグロじゃないよ、ちゃんと私も動いてたから笑

まっすぐの体位の時も、そうじゃない体位の時も、私のことを見てくれて、よそ見することはなかった。だから下半身が痛くても耐えられたし、痛くてもいいって思えた。入れてる最中、私はそんなに動かなかったかな?

正常位で、Mさんの胸板が顔の上にあって、熱くて、息ができなかった。窒息しそうだった。我慢してると、ようやく顔を抜くことができて、するとMさんが真上から口を塞いでキスをしてきた。また息ができない。

いろんな行為の中には痛いものがあった。けど、全部ちゃんと受け止めた。

最後に出し終わって、Mさんが正面から私を抱きかかえると、「あの……好きだよ」って恥ずかしそうに言った。私が笑うと、改まって「愛してますだってさらに笑った。ごまかす時に、私は笑いがちになる。

「これからも付き合ってくれる?」

目を閉じて、「はい」って答えると涙が出てきた。顔を上げて、Mさんキスをした。

それから何分も、ずっと口づけをしてたら……唾液が漏れるのがひどいことになって、また私が笑って吹き出して、それでセックスは終わった。

その日はお店を欠勤した。罰金1万円は痛かったけど、それはもういい。大事もの大事な人を手に入れた。ならもう、それでよかった。シングルの部屋だった。夜には出ないといけない。

深夜だったけど、寒空の下でMさんは、私の手を引いてタクシー乗り場まで連れて行ってくれた。別れる時、タクシーに乗った瞬間に涙が零れた。



今は何をしてるんだろう。優しい人だから、今もずっと人の役に立つ仕事をしてるのかな。

社会人になった今では思うけど、仕事付き合いだけでも人間関係って大変だ。

でも、Mさんから学んだことは、教えてもらったことはたくさんあって。それが今でも仕事に活きてる。

あれから時間は経ったけど、今でもMさんとの思い出を記憶水槽仕舞っている。いつでも取り出せるつもりだ。

また、いつか会えたらいいと思う。ありがとうございました。

2024-11-27

近所にあったら嬉しいお店

IKEA(安いホットドッグドリンクバーに気軽に行けるから

ピザーラ(持ち帰りしても熱々で家で食べれるから

鳥貴族(酔ってもすぐ家に帰って寝れるから

歯医者(通いやすいから)

映画館(気が向いた時にすぐ観れる。レイトショーも行きやすい)

市役所手続きやすい)

免許センター更新やすい)

スーパー銭湯(帰りに湯冷めしにくい)

イオンモール(なんでも揃うから

はてな社(増田エラーが起きたら直で言いにいけるから

たい焼きやさん(好きだから

・ディッパーダンクレープ(好きだから

・桜や紅葉が綺麗な公園(季節を感じたいから)

花火が見える丘(夏を満喫したいから)

神社初詣が楽だから

ホットヨガスタジオ(通いやすいから)

ラジオ放送局DJに手を振りたいから)

バッティングセンターストレス発散したいから)

コストココストコ仕入れた物を家の前で転売したいから)

一蘭(麺と向き合いたいから)

・でっかいダム(好きだから

・天然の湧き水(癒されたいから)

・お城(かっこいいから)

サファリパーク動物が好きだから

ごめんもうないわ

みんなは何かある?

2024-11-25

最も重要盆栽の樹種 10

追記

ごめん。タイトルがアホでしたので変えました。盆栽10選ではなくて樹種10選ですね。

盆栽10選となるとどうなるんだろ。ちょっとわかりません。まさか国風展じゃないだろうし、大宮のでもなさそうだし。

誰々の何ちゃら、っていう盆栽指定できるんだろうか?誰かお願い。




はじめに

盆栽植木観葉植物とは違う。ざっくり言うと、手間をかけて小さく育てるのが盆栽、手間をかけずに自由気ままに育てるのが植木特になにもしないのが観葉植物。はっきり違うわけではなく、なだらかなグラデーションがある。でも実際に樹を「小さく育てる」ことを主眼に置くと、色々やることが出てくるわけで。朝に歯磨きするように、ペット食事をあげるように、樹に水やりする習慣を持てない人にとっては大変。なので、観葉植物を選んでください。

鉢を合わせて楽しむのが盆栽醍醐味という意見もあるが、それはフラワーアレンジメントコーデックスやガーデニングの人たちも楽しそうにやってるし、まあそっちでもいいよね。しばらく植物に慣れたら盆栽、という感じなんでしょうかね。その点では、確かにジジイ趣味といわれるのもわかる気がする。

五葉松

絵文字でも盆栽は松。波平さんがいじってるのも五葉松かな?五葉松は頑丈だから人気で、幼苗に多少の無理をしても大丈夫

あと成長が早いので見守るのが楽しい。5年、10年でも日々が楽しみだし、持ち込んで20年も経ってくると、神々しくなってくる。

これが100年、400年だと、と想像すると、なるべく若い時期に始めた方がよかった、と後悔すること間違いなしです。

真柏

真柏も丈夫な樹。これも成長が早く、古木の風格を出しやすい。お分かりかと思うが、これはタイパがよいということでもある。

たいていの盆栽の展示会に必ずある樹種で、いろいろと参考にできる名樹がたくさんある。

シャリとかジンとかの、幹の一部を枯れさせて古い樹に見せる遊びも楽しめるし、盆栽の魅力が一番詰まっている樹種。

黒松

葉先を触ってチクチクする方の松。五葉松とはまったく趣が異なる。好みの問題もあるが両方持ってるとなお楽しい

半懸崖や懸崖にすると、その葉の特徴もあって、自生樹のようなワイルドさが映える。

自然風景を鉢の上に持ち込むことを盆栽の魅力と考えるなら黒松がぴったり。

ウメ

樹形、幹肌、花と、一年中楽しみの多い樹。甲州野梅が有名(高いけどね)。

「桜切るバカ梅切らぬバカ」という言葉もあって、素人ながら手をかけてもどんどん成長してくれる。

失敗して手に負えなくなったとしてもやり直しが利く。

長寿梅/ウメモドキ

長寿梅はボケ矮性ウメモドキはモチノキの一種で、どちらもまったく梅ではない。他にもオウバイロウバイなどもある。

梅に風流を求めてきた日本の先輩諸氏の感性で、梅の名前が付けられているところが、なにか歴史を感じる。

梅買う前にこっちから始めるのもあり。それほど高くないし、きれいな花を咲かせることを目標に育てられる。

カリン

「実もの」と呼ばれる樹。実がでかい普通に食べられるので、植木や庭木にして実を収穫することを楽しむ人も多いのでは?

盆栽だと花芽限定してギュッと小さく締める。旺盛に育つので、中品以上にかっこよく育てるのは結構大変。

からと言って小さく育てるのもなかなか。手のかかる子だけに、コロリとした実が成ると感動する。

ヤブコウジ

カリンとかヒメリンゴとかのでかい実はダサい、という好みの問題もあり、小さい実のヤブコウジも良い。

いかにも「樹!」という雰囲気ではなく、一見すると草かな?というヒョロヒョロ〜とした細い佇まいがなんともかわいい

部屋にこれが飾ってあったりすると、一気に品の良さが増すと思います

ピラカンサ

はいっても、ヤブコウジ落葉樹で、はっきり言うと渋い趣味いかにも和室!っていう場所もいまどきないだろうし。

となると、常緑のピラカンサがよいかな? 白い小さな花が咲いたあと、秋には小さな赤い実がワーっとついて景気がよい。

鉢さえ変えれば、より観葉植物的に飾れるし。飾ることを考えたらピラカンサの方が無難なのかも。

ケヤキ

ヤブコウジのヒョロヒョロ〜や、松柏類のウネウネ〜の情緒よりも、まっすぐ立つ樹の方がかっこいいよね!と思うならこれ。

街路樹にも多く見られるのでありがたみはないんだが、これが鉢の上に乗っかると非常に姿が良い。箒作りを目指したい。

また、根の張り方もかっこよく、植え替え時に修正できるのも楽しみ。

モミジ

紅葉文句なししかし本当は一年中、四季折々の姿がドラマチックで美しい。

幹や株元もどっしりと太くなり、もっとハンサムイケメンな樹種かもしれない。

展示会で見る、うすい水盤に乗っけたモミジは惚れ惚れします。

anond:20241031065835

anond:20241125151425

秋の風情を感じて、周りの人に感心されるような上品表現を使うには、季語文学的言い回しを取り入れると効果的です。以下にいくつかの例を挙げます


自然風景に対する表現


紅葉

木々が錦に染まり、秋の深まりをしみじみと感じますね。」

もみじの赤が一段と鮮やかで、まるで自然が描く絵画のようです。」


夕暮れ

「秋の夕暮れは、一日の終わりに穏やかな詩情を添えてくれます。」

「日が短くなるにつれ、夕焼けの色がいっそう深くなりましたね。」


秋の風

「そよぐ秋風に金木犀香りが混じり、季節の移ろいを感じます。」

「この風に吹かれると、どこか懐かしい気持ちになりますね。」

感情や心情を込めた表現


郷愁

「秋の夜長、虫の音に耳を傾けていると、故郷景色が胸に浮かびます。」

「静かな秋の気配に、心の奥深くが優しく揺さぶられる気がします。」


移ろい

「この葉が落ちる様子に、時の儚さと美しさを感じざるを得ません。」

「移りゆく季節の中で、ふと立ち止まる時間が大切だと思います。」


文学的引用比喩を用いる


万葉集俳句引用

「『秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる』ですね。」

「まるで松尾芭蕉の『寂しさや岩にしみ入る蝉の声』が聞こえてきそうです。」


自然擬人化する

「月が優しく微笑んでいるようで、秋の夜がいっそう幻想的に感じます。」

紅葉が枝先で舞い踊る姿に、自然生命力を感じます。」


相手が親しい人であれば、こうした表現に軽いユーモアや気軽さを加えると、さらに会話が弾みやすくなるかもしれません!

2024-11-24

anond:20241124120859

秋の季節に安芸の宮島(厳島)へ行って一面の紅葉の中を散策したけど、目の前を同じように通りかかった観光客ぽいナイスミドル年格好のカネかかってそうな服を着た芸能人みたいなカップルが何のためらいもなく枝から勝手に葉をちぎってるのを見てしまって台無しな気分になったのを想い出した😢

2024-11-22

見て!ちんこ紅葉して赤くなってるよ!

2024-11-21

お前ら「秋短い!」「秋短い!」 俺「今が秋だろ?」

コートの季節になったら冬だ冬だ騒ぐのなんなん?

まだ紅葉だってまりきってないんだぞ

お前らがほしいのは20度くらいの季節ってことだろ?

 

1950年

8月 23.2度〜30.4度

9月 20.8度〜28.6度 ←秋

10月 12.3度〜20.4度 ←秋

11月 7.1度〜15.9度 ←秋

12月 0.9度〜11.2度

とみると、秋は7.1度〜28度、10月に絞れば7.1度〜15.9度

ほら、今日とかぜんぜん秋だよ

 

ちなみに2024

8月 25.7度〜33.6度

9月 23.5度〜30.9度 ←夏

10月 17.4度〜24.5度 ←秋

11月 11.6度〜18.5度 ←秋

 

たぶん12上旬も秋だよ

2024-11-06

秋の風

紅葉舞い散る

静寂に

メイクアメリカ

グレートアゲイン


Copilotくんやるやん。

2024-11-03

anond:20241103103209

今年の11月初旬だとまだ早いかもだけど、紅葉を調べる。

四六時中盛りやがって

10月ハロウィン11月紅葉12月クリスマス1月初詣2月ヴァレンタイン

これらのイベントでよぉーーー!

やるんだろお前ら!!!!!

つの男だ女だいがみあってるお前らあああ!

どうせやることはやるんだろーーーー!

卑怯者があああああ!

日頃から口では男が女が言い争ってるくせによおおおおお!

ゆるせん!

イオナズン!!!💥

2024-10-29

ハロウィンが終わったらいきなしクリスマスムードになるのは変

11月がないがしろにされてる

ほら、色々あるじゃん

紅葉とか、七五三とか、文化の日とか・・・

あんまりいね

何かイベントが欲しい!!

2024-10-20

高尾山に登ってきた。一人で。

数年前に一度友人と登ったことがあった。その時は中腹のビアガーデンに行くのが目的だったけど「ビアガーデンのためだけに行くのも...」ということでリフトで中腹まで行ってから頂上まで往復した。その時は滅茶苦茶暑い日でしんどかったのを覚えてる。

昨日は一人で、高尾山口駅からリフトを使わずに登ってきた。目的ダイエットちょっとから筋トレウォーキングをしているけどずっと街中を歩くのもということで朝5時頃に家を出て6時ごろから登り始めた。

前回リフトを使ったというのが本当に「登った」と言えるのかというなんか謎のモヤモヤがあったのもあったわけだが、そのリフトで飛ばせる区間が実は一番きついという事が分かった。舗装はされているけれど傾斜が凄い。

ダイエットをしているぐらいだから太っていて運動不足人間なわけで、ちょっと登っただけで心臓バクバクする。途中つづら折りになっているところは頑張ってヘアピンまで登ったと思ったらまた次の凄い角度が見えて「ハハッ」という乾いた笑いが出てきた。

何とか中腹のリフト乗り場まで着いた時点で40分。そこで少しだけ休んでから続きを登ったが、そこから先は正直楽ちんだった。途中階段が続くところもあるけどそんなに長くないし、前半に比べれば本当に何でもなかった。

数年前にはこの後半だけでヒーヒー言ってたわけだけど、今以上に運動不足だったという事だろう。まぁ猛暑の日だったというのもあるけど。

結局6時に上り始めて頂上には7時半ちょっと前には着いた。登ってるときは雲の中という感じで全然景色が見えなかったけど山頂では雲を抜けたのか景色が良く、富士山も凄く綺麗に見えて良かった。

20分ぐらいしたら寒くなってきちゃったのもあってそそくさと下山。8時台になると登ってくる人が随分増えたから、6時に登り始めたのは正解だった。但しこの時間に登ると下山までどのお店もやってないので、途中で何かを食べたりお土産を買ったりしたい人はもっと遅く行くべき。

下りときも後半、つまり中腹から下がきつかった。斜度が大きい坂って登りはもちろんきついんだけど下りはずっとブレーキをかけ続けなければならないので脚への負担が凄い。微妙に路面がぬれていて滑らないようにと気を使っていたのもあって精神的にも疲れた

最終的に9時前には下山完了してそのまま電車で帰った。登り始めから3時間で往復完了。良い運動にはなった。今年は暑いいかまだ全く紅葉していなくて青々しい葉っぱが広がっていたので、紅葉し始めたらまた行こうと思う。それまでに痩せてもう少し楽に登れるようになっておこう。

2024-10-01

七  裏から回ってばあさんに聞くと、ばあさんが小さな声で、与次郎さんはきのうからお帰りなさらないと言う。三四郎勝手口に立って考えた。ばあさんは気をきかして、まあおはいりなさい。先生書斎においでですからと言いながら、手を休めずに、膳椀を洗っている。今晩食がすんだばかりのところらしい。  三四郎茶の間を通り抜けて、廊下伝いに書斎入口まで来た。戸があいている。中から「おい」と人を呼ぶ声がする。三四郎は敷居のうちへはいった。先生は机に向かっている。机の上には何があるかわからない。高い背が研究を隠している。三四郎入口に近くすわって、 「御勉強ですか」と丁寧に聞いた。先生は顔をうしろねじ向けた。髭の影が不明瞭にもじゃもじゃしている。写真版で見ただれかの肖像に似ている。 「やあ、与次郎かと思ったら、君ですか、失敬した」と言って、席を立った。机の上には筆と紙がある。先生は何か書いていた。与次郎の話に、うちの先生は時々何か書いている。しかし何を書いているんだか、ほかの者が読んでもちっともわからない。生きているうちに、大著述にでもまとめられれば結構だが、あれで死んでしまっちゃあ、反古がたまるばかりだ。じつにつまらない。と嘆息していたことがある。三四郎広田の机の上を見て、すぐ与次郎の話を思い出した。 「おじゃまなら帰ります。べつだんの用事でもありません」 「いや、帰ってもらうほどじゃまでもありません。こっちの用事もべつだんのことでもないんだから。そう急に片づけるたちのものをやっていたんじゃない」  三四郎ちょっと挨拶ができなかった。しかし腹のうちでは、この人のような気分になれたら、勉強も楽にできてよかろうと思った。しばらくしてから、こう言った。 「じつは佐々木君のところへ来たんですが、いなかったものですから……」 「ああ。与次郎はなんでもゆうべから帰らないようだ。時々漂泊して困る」 「何か急に用事でもできたんですか」 「用事はけっしてできる男じゃない。ただ用事をこしらえる男でね。ああいうばかは少ない」  三四郎はしかたがないから、 「なかなか気楽ですな」と言った。 「気楽ならいいけれども。与次郎のは気楽なのじゃない。気が移るので――たとえば田の中を流れている小川のようなものと思っていれば間違いはない。浅くて狭い。しかし水だけはしじゅう変っている。だから、する事が、ちっとも締まりがない。縁日へひやかしになど行くと、急に思い出したように、先生松を一鉢お買いなさいなんて妙なことを言う。そうして買うともなんとも言わないうちに値切って買ってしまう。その代り縁日ものを買うことなんぞはじょうずでね。あいつに買わせるとたいへん安く買える。そうかと思うと、夏になってみんなが家を留守にするときなんか、松を座敷へ入れたまんま雨戸をたてて錠をおろししまう。帰ってみると、松が温気でむれてまっ赤になっている。万事そういうふうでまことに困る」  実をいうと三四郎はこのあい与次郎に二十円貸した。二週間後には文芸時評から原稿料が取れるはずだから、それまで立替えてくれろと言う。事理を聞いてみると、気の毒であったから、国から送ってきたばかりの為替を五円引いて、余りはことごとく貸してしまった。まだ返す期限ではないが、広田の話を聞いてみると少々心配になる。しか先生にそんな事は打ち明けられないから、反対に、 「でも佐々木君は、大いに先生に敬服して、陰では先生のためになかなか尽力しています」と言うと、先生はまじめになって、 「どんな尽力をしているんですか」と聞きだした。ところが「偉大なる暗闇」その他すべて広田先生に関する与次郎所為は、先生に話してはならないと、当人から封じられている。やりかけた途中でそんな事が知れると先生しかられるにきまってるから黙っているべきだという。話していい時にはおれが話すと明言しているんだからしかたがない。三四郎は話をそらしてしまった。  三四郎広田の家へ来るにはいろいろな意味がある。一つは、この人の生活その他が普通のものと変っている。ことに自分の性情とはまったく容れないようなところがある。そこで三四郎はどうしたらああなるだろうという好奇心から参考のため研究に来る。次にこの人の前に出るとのん気になる。世の中の競争があまり苦にならない。野々宮さんも広田先生と同じく世外の趣はあるが、世外の功名心のために、流俗の嗜欲を遠ざけているかのように思われる。だから野々宮さんを相手に二人ぎりで話していると、自分もはやく一人前の仕事をして、学海に貢献しなくては済まないような気が起こる。いらついてたまらない。そこへゆくと広田先生太平である先生高等学校でただ語学を教えるだけで、ほかになんの芸もない――といっては失礼だが、ほかになんらの研究も公けにしない。しかも泰然と取り澄ましている。そこに、こののん気の源は伏在しているのだろうと思う。三四郎は近ごろ女にとらわれた。恋人にとらわれたのなら、かえっておもしろいが、ほれられているんだか、ばかにされているんだか、こわがっていいんだか、さげすんでいいんだか、よすべきだか、続けべきだかわけのわからないとらわれ方である三四郎はいまいましくなった。そういう時は広田さんにかぎる。三十分ほど先生と相対していると心持ちが悠揚になる。女の一人や二人どうなってもかまわないと思う。実をいうと、三四郎が今夜出かけてきたのは七分方この意味である。  訪問理由の第三はだいぶ矛盾している。自分は美禰子に苦しんでいる。美禰子のそばに野々宮さんを置くとなお苦しんでくる。その野々宮さんにもっとも近いものはこの先生である。だから先生の所へ来ると、野々宮さんと美禰子との関係がおのずから明瞭になってくるだろうと思う。これが明瞭になりさえすれば、自分の態度も判然きめることができる。そのくせ二人の事をいまだかつて先生に聞いたことがない。今夜は一つ聞いてみようかしらと、心を動かした。 「野々宮さんは下宿なすったそうですね」 「ええ、下宿したそうです」 「家をもった者が、また下宿をしたら不便だろうと思いますが、野々宮さんはよく……」 「ええ、そんな事にはいっこう無頓着なほうでね。あの服装を見てもわかる。家庭的な人じゃない。その代り学問にかけると非常に神経質だ」 「当分ああやっておいでのつもりなんでしょうか」 「わからない。また突然家を持つかもしれない」 「奥さんでもお貰いになるお考えはないんでしょうか」 「あるかもしれない。いいのを周旋してやりたまえ」  三四郎苦笑いをして、よけいな事を言ったと思った。すると広田さんが、 「君はどうです」と聞いた。 「私は……」 「まだ早いですね。今から細君を持っちゃたいへんだ」 「国の者は勧めますが」 「国のだれが」 「母です」 「おっかさんのいうとおり持つ気になりますか」 「なかなかなりません」  広田さんは髭の下から歯を出して笑った。わりあいきれいな歯を持っている。三四郎はその時急になつかしい心持ちがした。けれどもそのなつかしさは美禰子を離れている。野々宮を離れている。三四郎の眼前の利害には超絶したなつかしさであった。三四郎はこれで、野々宮などの事を聞くのが恥ずかしい気がしだして、質問をやめてしまった。すると広田先生がまた話しだした。―― 「おっかさんのいうことはなるべく聞いてあげるがよい。近ごろの青年は我々時代青年と違って自我意識が強すぎていけない。我々の書生をしているころには、する事なす事一として他を離れたことはなかった。すべてが、君とか、親とか、国とか、社会とか、みんな他本位であった。それを一口にいうと教育を受けるものがことごとく偽善家であった。その偽善社会の変化で、とうとう張り通せなくなった結果、漸々自己本位思想行為の上に輸入すると、今度は我意識が非常に発展しすぎてしまった。昔の偽善家に対して、今は露悪家ばかりの状態にある。――君、露悪家という言葉を聞いたことがありますか」 「いいえ」 「今ぼくが即席に作った言葉だ。君もその露悪家の一人――だかどうだか、まあたぶんそうだろう。与次郎のごときにいたるとその最たるものだ。あの君の知ってる里見という女があるでしょう。あれも一種の露悪家で、それから野々宮の妹ね、あれはまた、あれなりに露悪家だから面白い。昔は殿様と親父だけが露悪家ですんでいたが、今日では各自同等の権利で露悪家になりたがる。もっとも悪い事でもなんでもない。臭いものの蓋をとれば肥桶で、見事な形式をはぐとたいていは露悪になるのは知れ切っている。形式だけ見事だって面倒なばかりだから、みんな節約して木地だけで用を足している。はなはだ痛快である。天醜爛漫としている。ところがこの爛漫が度を越すと、露悪家同志がお互いに不便を感じてくる。その不便がだんだん高じて極端に達した時利他主義がまた復活する。それがまた形式に流れて腐敗するとまた利己主義に帰参する。つまり際限はない。我々はそういうふうにして暮らしてゆくものと思えばさしつかえない。そうしてゆくうちに進歩する。英国を見たまえ。この両主義が昔からうまく平衡がとれている。だから動かない。だから進歩しない。イブセンも出なければニイチェも出ない。気の毒なものだ。自分だけは得意のようだが、はたから見れば堅くなって、化石しかかっている。……」  三四郎は内心感心したようなものの、話がそれてとんだところへ曲がって、曲がりなりに太くなってゆくので、少し驚いていた。すると広田さんもようやく気がついた。 「いったい何を話していたのかな」 「結婚の事です」 「結婚?」 「ええ、私が母の言うことを聞いて……」 「うん、そうそう。なるべくおっかさんの言うことを聞かなければいけない」と言ってにこにこしている。まるで子供に対するようである三四郎はべつに腹も立たなかった。 「我々が露悪家なのは、いいですが、先生時代の人が偽善なのは、どういう意味ですか」 「君、人から親切にされて愉快ですか」 「ええ、まあ愉快です」 「きっと? ぼくはそうでない、たいへん親切にされて不愉快な事がある」 「どんな場合ですか」 「形式だけは親切にかなっている。しかし親切自身目的でない場合」 「そんな場合があるでしょうか」 「君、元日におめでとうと言われて、じっさいおめでたい気がしますか」 「そりゃ……」 「しないだろう。それと同じく腹をかかえて笑うだの、ころげかえって笑うだのというやつに、一人だってじっさい笑ってるやつはない。親切もそのとおり。お役目に親切をしてくれるのがある。ぼくが学校教師をしているようなものでね。実際の目的は衣食にあるんだから、生徒から見たらさだめて不愉快だろう。これに反して与次郎のごときは露悪党領袖だけに、たびたびぼくに迷惑をかけて、始末におえぬいたずら者だが、悪気がない。可愛らしいところがある。ちょうどアメリカ人金銭に対して露骨なのと一般だ。それ自身目的である。それ自身目的である行為ほど正直なものはなくって、正直ほど厭味のないものはないんだから、万事正直に出られないような我々時代の、こむずかしい教育を受けたものはみんな気障だ」  ここまでの理屈三四郎にもわかっている。けれども三四郎にとって、目下痛切な問題は、だいたいにわたっての理屈ではない。実際に交渉のある、ある格段な相手が、正直か正直でないかを知りたいのである三四郎は腹の中で美禰子の自分に対する素振をもう一ぺん考えてみた。ところが気障か気障でないかほとんど判断ができない。三四郎自分感受性人一倍鈍いのではなかろうかと疑いだした。  その時広田さんは急にうんと言って、何か思い出したようである。 「うん、まだある。この二十世紀になってから妙なのが流行る。利他本位の内容を利己本位でみたすというむずかしいやり口なんだが、君そんな人に出会ったですか」 「どんなのです」 「ほかの言葉でいうと、偽善を行うに露悪をもってする。まだわからないだろうな。ちと説明し方が悪いようだ。――昔の偽善家はね、なんでも人によく思われたいが先に立つんでしょう。ところがその反対で、人の感触を害するために、わざわざ偽善をやる。横から見ても縦から見ても、相手には偽善しか思われないようにしむけてゆく。相手はむろんいやな心持ちがする。そこで本人の目的は達せられる。偽善偽善そのままで先方に通用させようとする正直なところが露悪家の特色で、しかも表面上の行為言語あくまでも善に違いないから、――そら、二位一体というようなことになる。この方法を巧妙に用いる者が近来だいぶふえてきたようだ。きわめて神経の鋭敏になった文明人種が、もっと優美に露悪家になろうとすると、これがいちばんいい方法になる。血を出さなければ人が殺せないというのはずいぶん野蛮な話だからな君、だんだん流行らなくなる」  広田先生の話し方は、ちょうど案内者が古戦場説明するようなもので、実際を遠くからながめた地位にみずからを置いている。それがすこぶる楽天の趣がある。あたか教場講義を聞くと一般の感を起こさせる。しか三四郎にはこたえた。念頭に美禰子という女があって、この理論をすぐ適用できるからである三四郎は頭の中にこの標準を置いて、美禰子のすべてを測ってみた。しかし測り切れないところがたいへんある。先生は口を閉じて、例のごとく鼻から哲学の煙を吐き始めた。  ところへ玄関足音がした。案内も乞わず廊下伝いにはいって来る。たちまち与次郎書斎入口にすわって、 「原口さんがおいでになりました」と言う。ただ今帰りましたという挨拶を省いている。わざと省いたのかもしれない。三四郎にはぞんざいな目礼をしたばかりですぐに出ていった。  与次郎と敷居ぎわですれ違って、原口さんがはいって来た。原口さんはフランス式の髭をはやして、頭を五分刈にした、脂肪の多い男である。野々宮さんより年が二つ三つ上に見える。広田先生よりずっときれいな和服を着ている。 「やあ、しばらく。今まで佐々木が家へ来ていてね。いっしょに飯を食ったり何かして――それから、とうとう引っ張り出されて……」とだいぶ楽天的な口調であるそばにいるとしぜん陽気になるような声を出す。三四郎原口という名前を聞いた時から、おおかたあの画工だろうと思っていた。それにしても与次郎交際家だ。たいていな先輩とはみんな知合いになっているからえらいと感心して堅くなった。三四郎は年長者の前へ出ると堅くなる。九州流の教育を受けた結果だと自分では解釈している。  やがて主人が原口に紹介してくれる。三四郎は丁寧に頭を下げた。向こうは軽く会釈した。三四郎それから黙って二人の談話を承っていた。  原口さんはまず用談から片づけると言って、近いうちに会をするから出てくれと頼んでいる。会員と名のつくほどのりっぱなものはこしらえないつもりだが、通知を出すものは、文学者とか芸術家とか、大学教授とか、わずかな人数にかぎっておくからさしつかえはない。しかもたいてい知り合いのあいだだから形式はまったく不必要である目的はただおおぜい寄って晩餐を食う。それから文芸有益談話を交換する。そんなものである。  広田先生一口「出よう」と言った。用事はそれで済んでしまった。用事はそれで済んでしまったが、それから後の原口さんと広田先生の会話がすこぶるおもしろかった。  広田先生が「君近ごろ何をしているかね」と原口さんに聞くと、原口さんがこんな事を言う。 「やっぱり一中節稽古している。もう五つほど上げた。花紅葉吉原八景だの、小稲半兵衛唐崎心中だのってなかなかおもしろいのがあるよ。君も少しやってみないかもっともありゃ、あまり大きな声を出しちゃいけないんだってね。本来四畳半の座敷にかぎったものだそうだ。ところがぼくがこのとおり大きな声だろう。それに節回しがあれでなかなか込み入っているんで、どうしてもうまくいかん。こんだ一つやるから聞いてくれたまえ」  広田先生は笑っていた。すると原口さんは続きをこういうふうに述べた。 「それでもぼくはまだいいんだが、里見恭助ときたら、まるで形無しだからね。どういうものかしらん。妹はあんなに器用だのに。このあいだはとうとう降参して、もう歌はやめる、その代り何か楽器を習おうと言いだしたところが、馬鹿囃子をお習いなさらいかと勧めた者があってね。大笑いさ」 「そりゃ本当かい」 「本当とも。現に里見がぼくに、君がやるならやってもいいと言ったくらいだもの。あれで馬鹿囃子には八通り囃し方があるんだそうだ」 「君、やっちゃどうだ。あれなら普通人間にでもできそうだ」 「いや馬鹿囃子はいやだ。それよりか鼓が打ってみたくってね。なぜだか鼓の音を聞いていると、まったく二十世紀の気がしなくなるからいい。どうして今の世にああ間が抜けていられるだろうと思うと、それだけでたいへんな薬になる。いくらぼくがのん気でも、鼓の音のような絵はとてもかけないから」 「かこうともしないんじゃないか」 「かけないんだもの。今の東京にいる者に悠揚な絵ができるものか。もっとも絵にもかぎるまいけれども。――絵といえば、このあい大学運動会へ行って、里見と野々宮さんの妹のカリカチュアーをかいてやろうと思ったら、とうとう逃げられてしまった。こんだ一つ本当の肖像画をかい展覧会にでも出そうかと思って」 「だれの」 「里見の妹の。どうも普通日本の女の顔は歌麿式や何かばかりで、西洋の画布にはうつりが悪くっていけないが、あの女や野々宮さんはいい。両方ともに絵になる。あの女が団扇をかざして、木立をうしろに、明るい方を向いているところを等身に写してみようかしらと思っている。西洋の扇は厭味でいけないが、日本団扇は新しくっておもしろいだろう。とにかくはやくしないとだめだ。いまに嫁にでもいかれようものなら、そうこっちの自由いかなくなるかもしれないから」  三四郎は多大な興味をもって原口の話を聞いていた。ことに美禰子が団扇をかざしている構図は非常な感動を三四郎に与えた。不思議因縁が二人の間に存在しているのではないかと思うほどであった。すると広田先生が、「そんな図はそうおもしろいこともないじゃないか」と無遠慮な事を言いだした。 「でも当人希望なんだもの団扇をかざしているところは、どうでしょうと言うから、すこぶる妙でしょうと言って承知したのさ。なに、悪い図どりではないよ。かきようにもよるが」 「あんまり美しくかくと、結婚の申込みが多くなって困るぜ」 「ハハハじゃ中ぐらいにかいておこう。結婚といえば、あの女も、もう嫁にゆく時期だね。どうだろう、どこかいい口はないだろうか。里見にも頼まれているんだが」 「君もらっちゃどうだ」 「ぼくか。ぼくでよければもらうが、どうもあの女には信用がなくってね」 「なぜ」 「原口さんは洋行する時にはたいへんな気込みで、わざわざ鰹節を買い込んで、これでパリー下宿に籠城するなんて大いばりだったが、パリーへ着くやいなや、たちまち豹変したそうですねって笑うんだから始末がわるい。おおかた兄からでも聞いたんだろう」 「あの女は自分の行きたい所でなくっちゃ行きっこない。勧めたってだめだ。好きな人があるまで独身で置くがいい」 「まったく西洋流だね。もっともこれからの女はみんなそうなるんだから、それもよかろう」  それから二人の間に長い絵画談があった。三四郎広田先生西洋の画工の名をたくさん知っているのに驚いた。帰るとき勝手口で下駄を捜していると、先生梯子段の下へ来て「おい佐々木ちょっと降りて来い」と言っていた。  戸外は寒い。空は高く晴れて、どこから露が降るかと思うくらいである。手が着物にさわると、さわった所だけがひやりとする。人通りの少ない小路を二、三度折れたり曲がったりしてゆくうちに、突然辻占屋に会った。大きな丸い提灯をつけて、腰から下をまっ赤にしている。三四郎は辻占が買ってみたくなった。しかしあえて買わなかった。杉垣に羽織の肩が触れるほどに、赤い提灯をよけて通した。しばらくして、暗い所をはすに抜けると、追分の通りへ出た。角に

https://anond.hatelabo.jp/20241001205100

与次郎用事というのはこうである。――今夜の会自分たちの科の不振の事をしきりに慨嘆するから三四郎もいっしょに慨嘆しなくってはいけないんだそうだ。不振事実であるからほかの者も慨嘆するにきまっている。それから、おおぜいいっしょに挽回策を講ずることとなる。なにしろ適当日本人を一人大学に入れるのが急務だと言い出す。みんなが賛成する。当然だから賛成するのはむろんだ。次にだれがよかろうという相談に移る。その時広田先生の名を持ち出す。その時三四郎与次郎に口を添えて極力先生賞賛しろという話である。そうしないと、与次郎広田食客だということを知っている者が疑いを起こさないともかぎらない。自分は現に食客なんだから、どう思われてもかまわないが、万一煩い広田先生に及ぶようではすまんことになる。もっともほかに同志が三、四人はいから大丈夫だが、一人でも味方は多いほうが便利だから三四郎もなるべくしゃべるにしくはないとの意見である。さていよいよ衆議一決の暁は、総代を選んで学長の所へ行く、また総長の所へ行く。もっとも今夜中にそこまでは運ばないかもしれない。また運ぶ必要もない。そのへんは臨機応変である。……  与次郎はすこぶる能弁である。惜しいことにその能弁がつるつるしているので重みがない。あるところへゆくと冗談をまじめに講義しているかと疑われる。けれども本来性質のいい運動から三四郎もだいたいのうえにおいて賛成の意を表した。ただその方法が少しく細工に落ちておもしろくないと言った。その時与次郎は往来のまん中へ立ち留まった。二人はちょうど森川町神社鳥居の前にいる。 「細工に落ちるというが、ぼくのやる事は自然の手順が狂わないようにあらかじめ人力で装置するだけだ。自然にそむいた没分暁の事を企てるのとは質が違う。細工だってかまわん。細工が悪いのではない。悪い細工が悪いのだ」  三四郎はぐうの音も出なかった。なんだか文句があるようだけれども、口へ出てこない。与次郎の言いぐさのうちで、自分がまだ考えていなかった部分だけがはっきり頭へ映っている。三四郎はむしろそのほうに感服した。 「それもそうだ」とすこぶる曖昧な返事をして、また肩を並べて歩きだした。正門をはいると、急に目の前が広くなる。大きな建物が所々に黒く立っている。その屋根がはっきり尽きる所から明らかな空になる。星がおびただしく多い。 「美しい空だ」と三四郎が言った。与次郎も空を見ながら、一間ばかり歩いた。突然、 「おい、君」と三四郎を呼んだ。三四郎はまたさっきの話の続きかと思って「なんだ」と答えた。 「君、こういう空を見てどんな感じを起こす」  与次郎に似合わぬことを言った。無限とか永久かいう持ち合わせの答はいくらでもあるが、そんなことを言うと与次郎に笑われると思って三四郎は黙っていた。 「つまらんなあ我々は。あしたから、こんな運動をするのはもうやめにしようかしら。偉大なる暗闇を書いてもなんの役にも立ちそうにもない」 「なぜ急にそんな事を言いだしたのか」 「この空を見ると、そういう考えになる。――君、女にほれたことがあるか」  三四郎は即答ができなかった。 「女は恐ろしいものだよ」と与次郎が言った。 「恐ろしいものだ、ぼくも知っている」と三四郎も言った。すると与次郎が大きな声で笑いだした。静かな夜の中でたいへん高く聞こえる。 「知りもしないくせに。知りもしないくせに」  三四郎憮然としていた。 「あすもよい天気だ。運動会はしあわせだ。きれいな女がたくさん来る。ぜひ見にくるがいい」  暗い中を二人は学生集会所の前まで来た。中には電燈が輝いている。  木造廊下を回って、部屋へはいると、そうそう来た者は、もうかたまっている。そのかたまりが大きいのと小さいのと合わせて三つほどある。なかには無言で備え付けの雑誌新聞を見ながら、わざと列を離れているのもある。話は方々に聞こえる。話の数はかたまりの数より多いように思われる。しかしわあいにおちついて静かである煙草の煙のほうが猛烈に立ち上る。  そのうちだんだん寄って来る。黒い影が闇の中から吹きさらしの廊下の上へ、ぽつりと現われると、それが一人一人に明るくなって、部屋の中へはいって来る。時には五、六人続けて、明るくなることもある。が、やがて人数はほぼそろった。  与次郎は、さっきから煙草の煙の中を、しきりにあちこちと往来していた。行く所で何か小声に話している。三四郎は、そろそろ運動を始めたなと思ってながめていた。  しばらくすると幹事が大きな声で、みんなに席へ着けと言う。食卓はむろん前から用意ができていた。みんな、ごたごたに席へ着いた。順序もなにもない。食事は始まった。  三四郎熊本赤酒ばかり飲んでいた。赤酒というのは、所でできる下等な酒である熊本学生はみんな赤酒を飲む。それが当然と心得ている。たまたま飲食店へ上がれば牛肉である。その牛肉屋の牛が馬肉かもしれないという嫌疑がある。学生は皿に盛った肉を手づかみにして、座敷の壁へたたきつける。落ちれば牛肉で、ひっつけば馬肉だという。まるで呪みたような事をしていた。その三四郎にとって、こういう紳士的な学生親睦会は珍しい。喜んでナイフフォークを動かしていた。そのあいだにはビールをさかんに飲んだ。 「学生集会所の料理はまずいですね」と三四郎に隣にすわった男が話しかけた。この男は頭を坊主に刈って、金縁の眼鏡をかけたおとなしい学生であった。 「そうですな」と三四郎は生返事をした。相手与次郎なら、ぼくのようないなか者には非常にうまいと正直なところをいうはずであったが、その正直がかえって皮肉に聞こえると悪いと思ってやめにした。するとその男が、 「君はどこの高等学校ですか」と聞きだした。 「熊本です」 「熊本ですか。熊本にはぼくの従弟もいたが、ずいぶんひどい所だそうですね」 「野蛮な所です」  二人が話していると、向こうの方で、急に高い声がしだした。見ると与次郎が隣席の二、三人を相手に、しきりに何か弁じている。時々ダーターファブラと言う。なんの事だかわからない。しか与次郎相手は、この言葉を聞くたびに笑いだす。与次郎ますます得意になって、ダーターファブラ我々新時代青年は……とやっている。三四郎の筋向こうにすわっていた色の白い品のいい学生が、しばらくナイフの手を休めて、与次郎の連中をながめていたが、やがて笑いながら Il a le diable au corps(悪魔が乗り移っている)と冗談半分にフランス語を使った。向こうの連中にはまったく聞こえなかったとみえて、この時ビールのコップが四つばかり一度に高く上がった。得意そうに祝盃をあげている。 「あの人はたいへんにぎやかな人ですね」と三四郎の隣の金縁眼鏡をかけた学生が言った。 「ええ。よくしゃべります」 「ぼくはいつか、あの人に淀見軒でライスカレーをごちそうになった。まるで知らないのに、突然来て、君淀見軒へ行こうって、とうとう引っ張っていって……」  学生ハハハと笑った。三四郎は、淀見軒で与次郎からライスカレーをごちそうになったもの自分ばかりではないんだなと悟った。  やがてコーヒーが出る。一人が椅子を離れて立った。与次郎が激しく手をたたくと、ほかの者もたちまち調子を合わせた。  立った者は、新しい黒の制服を着て、鼻の下にもう髭をはやしている。背がすこぶる高い。立つには恰好のよい男である演説いたことを始めた。  我々が今夜ここへ寄って、懇親のために、一夕の歓をつくすのは、それ自身において愉快な事であるが、この懇親が単に社交上の意味ばかりでなく、それ以外に一種重要な影響を生じうると偶然ながら気がついたら自分は立ちたくなった。この会合ビールに始まってコーヒーに終っている。まったく普通会合であるしかしこのビールを飲んでコーヒーを飲んだ四十人近くの人間普通人間ではない。しかもそのビールを飲み始めてからコーヒーを飲み終るまでのあいだに、すでに自己運命の膨脹を自覚しえた。  政治自由を説いたのは昔の事である言論の自由を説いたのも過去の事である自由とは単にこれらの表面にあらわれやす事実のために専有されべき言葉ではない。我ら新時代青年は偉大なる心の自由を説かねばならぬ時運に際会したと信ずる。  我々は古き日本の圧迫に堪ええぬ青年である。同時に新しき西洋の圧迫にも堪ええぬ青年であるということを、世間に発表せねばいられぬ状況のもとに生きている。新しき西洋の圧迫は社会の上においても文芸の上においても、我ら新時代青年にとっては古き日本の圧迫と同じく、苦痛である。  我々は西洋文芸研究する者であるしか研究はどこまでも研究である。その文芸のもとに屈従するのとは根本的に相違がある。我々は西洋文芸にとらわれんがために、これを研究するのではない。とらわれたる心を解脱せしめんがために、これを研究しているのである。この方便に合せざる文芸はいかなる威圧のもとにしいらるるとも学ぶ事をあえてせざるの自信と決心とを有している。  我々はこの自信と決心とを有するの点において普通人間とは異なっている。文芸技術でもない、事務でもない。より多く人生根本義に触れた社会原動力である。我々はこの意味において文芸研究し、この意味において如上の自信と決心とを有し、この意味において今夕の会合一般以上の重大なる影響を想見するのである。  社会は激しく動きつつある。社会産物たる文芸もまた動きつつある。動く勢いに乗じて、我々の理想どおりに文芸を導くためには、零細なる個人を団結して、自己運命を充実し発展し膨脹しなくてはならぬ。今夕のビールコーヒーは、かかる隠れたる目的を、一歩前に進めた点において、普通ビールコーヒーよりも百倍以上の価ある尊きビールコーヒーである。  演説意味ざっとこんなものである演説が済んだ時、席にあった学生はことごとく喝采した。三四郎もっとも熱心なる喝采者の一人であった。すると与次郎が突然立った。 「ダーターファブラ、シェクスピヤの使った字数が何万字だの、イブセンの白髪の数が何千本だのと言ってたってしかたがない。もっともそんなばかげた講義を聞いたってとらわれる気づかいはないか大丈夫だが、大学に気の毒でいけない。どうしても新時代青年を満足させるような人間を引っ張って来なくっちゃ。西洋人じゃだめだ。第一幅がきかない。……」  満堂はまたことごとく喝采した。そうしてことごとく笑った。与次郎の隣にいた者が、 「ダーターファブラのために祝盃をあげよう」と言いだした。さっき演説をした学生がすぐに賛成した。あいにくビールがみな空である。よろしいと言って与次郎はすぐ台所の方へかけて行った。給仕が酒を持って出る。祝盃をあげるやいなや、 「もう一つ。今度は偉大なる暗闇のために」と言った者がある。与次郎の周囲にいた者は声を合して、アハハと笑った。与次郎は頭をかいている。  散会の時刻が来て、若い男がみな暗い夜の中に散った時に、三四郎与次郎に聞いた。 「ダーターファブラとはなんの事だ」 「ギリシア語だ」  与次郎はそれよりほかに答えなかった。三四郎もそれよりほかに聞かなかった。二人は美しい空をいただいて家に帰った。  あくる日は予想のごとく好天気である。今年は例年より気候がずっとゆるんでいる。ことさらきょうは暖かい三四郎は朝のうち湯に行った。閑人の少ない世の中だから、午前はすこぶるすいている。三四郎は板の間にかけてある三越呉服店看板を見た。きれいな女がかいてある。その女の顔がどこか美禰子に似ている。よく見ると目つきが違っている。歯並がわからない。美禰子の顔でもっと三四郎を驚かしたものは目つきと歯並である与次郎の説によると、あの女は反っ歯の気味だから、ああしじゅう歯が出るんだそうだが、三四郎にはけっしてそうは思えない。……  三四郎は湯につかってこんな事を考えていたので、からだのほうはあまりわずに出た。ゆうべから急に新時代青年という自覚が強くなったけれども、強いのは自覚だけで、からだのほうはもとのままである休みになるとほかの者よりずっと楽にしている。きょうは昼から大学陸上運動会を見に行く気である。  三四郎は元来あまり運動好きではない。国にいるとき兎狩りを二、三度したことがある。それから高等学校の端艇競漕の時に旗振りの役を勤めたことがある。その時青と赤と間違えて振ってたいへん苦情が出た。もっとも決勝の鉄砲を打つ係りの教授鉄砲を打ちそくなった。打つには打ったが音がしなかった。これが三四郎のあわてた原因である。それより以来三四郎運動会へ近づかなかった。しかしきょうは上京以来はじめての競技会だから、ぜひ行ってみるつもりである与次郎もぜひ行ってみろと勧めた。与次郎の言うところによると競技より女のほうが見にゆ価値があるのだそうだ。女のうちには野々宮さんの妹がいるだろう。野々宮さんの妹といっしょに美禰子もいるだろう。そこへ行って、こんちわとかなんとか挨拶をしてみたい。  昼過ぎになったから出かけた。会場の入口運動場の南のすみにある。大きな日の丸イギリス国旗が交差してある。日の丸は合点がいくが、イギリス国旗はなんのためだかからない。三四郎日英同盟のせいかとも考えた。けれども日英同盟大学陸上運動会とは、どういう関係があるか、とんと見当がつかなかった。  運動場は長方形の芝生である。秋が深いので芝の色がだいぶさめている。競技を見る所は西側にある。後に大きな築山をいっぱいに控えて、前は運動場の柵で仕切られた中へ、みんなを追い込むしかけになっている。狭いわりに見物人が多いのではなはだ窮屈である。さいわい日和がよいので寒くはない。しか外套を着ている者がだいぶある。その代り傘をさして来た女もある。  三四郎失望したのは婦人席が別になっていて、普通人間には近寄れないことであった。それからフロックコートや何か着た偉そうな男がたくさん集って、自分が存外幅のきかないようにみえたことであった。新時代青年をもってみずからおる三四郎は少し小さくなっていた。それでも人と人との間から婦人席の方を見渡すことは忘れなかった。横からからよく見えないが、ここはさすがにきれいである。ことごとく着飾っている。そのうえ遠距離から顔がみんな美しい。その代りだれが目立って美しいということもない。ただ総体総体として美しい。女が男を征服する色である。甲の女が乙の女に打ち勝つ色ではなかった。そこで三四郎はまた失望した。しかし注意したら、どこかにいるだろうと思って、よく見渡すと、はたして前列のいちばん柵に近い所に二人並んでいた。  三四郎は目のつけ所がようやくわかったので、まず一段落告げたような気で、安心していると、たちまち五、六人の男が目の前に飛んで出た。二百メートルの競走が済んだのである決勝点は美禰子とよし子がすわっている真正面で、しかも鼻の先だから、二人を見つめていた三四郎視線のうちにはぜひともこれらの壮漢がはいってくる。五、六人はやがて一二、三人にふえた。みんな呼吸をはずませているようにみえる。三四郎はこれらの学生の態度と自分の態度とを比べてみて、その相違に驚いた。どうして、ああ無分別にかける気になれたものだろうと思った。しか婦人連はことごとく熱心に見ている。そのうちでも美禰子とよし子はもっとも熱心らしい。三四郎自分無分別にかけてみたくなった。一番に到着した者が、紫の猿股をはい婦人席の方を向いて立っている。よく見ると昨夜の親睦会で演説をした学生に似ている。ああ背が高くては一番になるはずである。計測係りが黒板に二十五秒七四と書いた。書き終って、余りの白墨を向こうへなげて、こっちを向いたところを見ると野々宮さんであった。野々宮さんはいつになくまっ黒なフロックを着て、胸に係り員の徽章をつけて、だいぶ人品がいい。ハンケチを出して、洋服の袖を二、三度はたいたが、やがて黒板を離れて、芝生の上を横切って来た。ちょうど美禰子とよし子のすわっているまん前の所へ出た。低い柵の向こう側から首を婦人席の中へ延ばして、何か言っている。美禰子は立った。野々宮さんの所まで歩いてゆく。柵の向こうとこちらで話を始めたように見える。美禰子は急に振り返った。うれしそうな笑いにみちた顔である三四郎は遠くから一生懸命に二人を見守っていた。すると、よし子が立った。また柵のそばへ寄って行く。二人が三人になった。芝生の中では砲丸投げが始まった。

砲丸投げほど力のいるものはなかろう。力のいるわりにこれほどおもしろくないものもたんとない。ただ文字どおり砲丸を投げるのである。芸でもなんでもない。野々宮さんは柵の所で、ちょっとこの様子を見て笑っていた。けれども見物のじゃまになると悪いと思ったのであろう。柵を離れて芝生の中へ引き取った。二人の女も、もとの席へ復した。砲丸は時々投げられている。第一どのくらい遠くまでゆくんだか、ほとんど三四郎にはわからない。三四郎はばかばかしくなった。それでも我慢して立っていた。ようやくのことで片がついたとみえて、野々宮さんはまた黒板へ十一メートル三八と書いた。

 それからまた競走があって、長飛びがあって、その次には槌投げが始まった。三四郎はこの槌投げにいたって、とうとう辛抱がしきれなくなった。運動会めいめいかってに開くべきものである。人に見せべきものではない。あんものを熱心に見物する女はことごとく間違っているとまで思い込んで、会場を抜け出して、裏の築山の所まで来た。幕が張ってあって通れない。引き返して砂利の敷いてある所を少し来ると、会場から逃げた人がちらほら歩いている。盛装した婦人も見える。三四郎はまた右へ折れて、爪先上りを丘のてっぺんまで来た。道はてっぺんで尽きている。大きな石がある。三四郎はその上へ腰をかけて、高い崖の下にある池をながめた。下の運動会場でわあというおおぜいの声がする。

 三四郎はおよそ五分ばかり石へ腰をかけたままぼんやりしていた。やがてまた動く気になったので腰を上げて、立ちながら靴の踵を向け直すと、丘の上りぎわの、薄く色づいた紅葉の間に、さっきの女の影が見えた。並んで丘の裾を通る。

 三四郎は上から、二人を見おろしていた。二人は枝の隙から明らかな日向へ出て来た。黙っていると、前を通り抜けてしまう。三四郎は声をかけようかと考えた。距離があまり遠すぎる。急いで二、三歩芝の上を裾の方へ降りた。降り出すといいぐあいに女の一人がこっちを向いてくれた。三四郎はそれでとまった。じつはこちからまりごきげんをとりたくない。運動会が少し癪にさわっている。

あんな所に……」とよし子が言いだした。驚いて笑っている。この女はどんな陳腐ものを見ても珍しそうな目つきをするように思われる。その代り、いかな珍しいもの出会っても、やはり待ち受けていたような目つきで迎えるかと想像される。だからこの女に会うと重苦しいところが少しもなくって、しかもおちついた感じが起こる。三四郎は立ったまま、これはまったく、この大きな、常にぬれている、黒い眸のおかげだと考えた。

 美禰子も留まった。三四郎を見た。しかしその目はこの時にかぎって何物をも訴えていなかった。まるで高い木をながめるような目であった。三四郎は心のうちで、火の消えたランプを見る心持ちがした。もとの所に立ちすくんでいる。美禰子も動かない。

「なぜ競技を御覧にならないの」とよし子が下から聞いた。

「今まで見ていたんですが、つまらいからやめて来たのです」

 よし子は美禰子を顧みた。美禰子はやはり顔色を動かさない。三四郎は、

「それより、あなたたこそなぜ出て来たんです。たいへん熱心に見ていたじゃありませんか」と当てたような当てないようなことを大きな声で言った。美禰子はこの時はじめて、少し笑った。三四郎にはその笑いの意味がよくわからない。二歩ばかり女の方に近づいた。

「もう宅へ帰るんですか」

 女は二人とも答えなかった。三四郎はまた二歩ばかり女の方へ近づいた。

「どこかへ行くんですか」

「ええ、ちょっと」と美禰子が小さな声で言う。よく聞こえない。三四郎はとうとう女の前まで降りて来た。しかしどこへ行くとも追窮もしないで立っている。会場の方で喝采の声が聞こえる。

高飛びよ」とよし子が言う。「今度は何メートルになったでしょう」

 美禰子は軽く笑ったばかりである三四郎も黙っている。三四郎高飛びに口を出すのをいさぎよしとしないつもりである。すると美禰子が聞いた。

「この上には何かおもしろものがあって?」

 この上には石があって、崖があるばかりであるおもしろものがありようはずがない。

「なんにもないです」

「そう」と疑いを残したように言った。

「ちょいと上がってみましょうか」よし子が、快く言う。

あなた、まだここを御存じないの」と相手の女はおちついて出た。

「いいからいらっしゃいよ」

 よし子は先へ上る。二人はまたついて行った。よし子は足を芝生のはしまで出して、振り向きながら、

「絶壁ね」と大げさな言葉を使った。「サッフォーでも飛び込みそうな所じゃありませんか」

 美禰子と三四郎は声を出して笑った。そのくせ三四郎はサッフォーがどんな所から飛び込んだかよくわからなかった。

あなたも飛び込んでごらんなさい」と美禰子が言う。

「私? 飛び込みましょうか。でもあんまり水がきたないわね」と言いながら、こっちへ帰って来た。

 やがて女二人のあいだに用談が始まった。

あなた、いらしって」と美禰子が言う。

「ええ。あなたは」とよし子が言う。

「どうしましょう」

「どうでも。なんならわたしちょっと行ってくるから、ここに待っていらっしゃい」

「そうね」

 なかなか片づかない。三四郎が聞いてみると、よし子が病院看護婦のところへ、ついでだからちょっと礼に行ってくるんだと言う。美禰子はこの夏自分の親戚が入院していた時近づきになった看護婦を尋ねれば尋ねるのだが、これは必要でもなんでもないのだそうだ。

 よし子は、すなおに気の軽い女だからしまいに、すぐ帰って来ますと言い捨てて、早足に一人丘を降りて行った。止めるほどの必要もなし、いっしょに行くほどの事件でもないので、二人はしぜん後にのこるわけになった。二人の消極な態度からいえば、のこるというより、のこされたかたちにもなる。

 三四郎はまた石に腰をかけた。女は立っている。秋の日は鏡のように濁った池の上に落ちた。中に小さな島がある。島にはただ二本の木がはえている。青い松と薄い紅葉がぐあいよく枝をかわし合って、箱庭の趣がある。島を越して向こう側の突き当りがこんもりとどす黒く光っている。女は丘の上からその暗い木陰を指さした。

「あの木を知っていらしって」と言う。

「あれは椎」

 女は笑い出した。

「よく覚えていらっしゃること」

「あの時の看護婦ですか、あなたが今尋ねようと言ったのは」

「ええ」

「よし子さんの看護婦とは違うんですか」

「違います。これは椎――といった看護婦です」

 今度は三四郎が笑い出した。

「あすこですね。あなたがあの看護婦といっしょに団扇を持って立っていたのは」

 二人のいる所は高く池の中に突き出している。この丘とはまるで縁のない小山が一段低く、右側を走っている。大きな松と御殿一角と、運動会の幕の一部と、なだらかな芝生が見える。

「熱い日でしたね。病院あんまり暑いものから、とうとうこらえきれないで出てきたの。――あなたはまたなんであんな所にしゃがんでいらしったんです」

「熱いからです。あの日ははじめて野々宮さんに会って、それから、あすこへ来てぼんやりしていたのです。なんだか心細くなって」

「野々宮さんにお会いになってから、心細くおなりになったの」

「いいえ、そういうわけじゃない」と言いかけて、美禰子の顔を見たが、急に話頭を転じた。

「野々宮さんといえば、きょうはたいへん働いていますね」

「ええ、珍しくフロックコートをお着になって――ずいぶん御迷惑でしょう。朝から晩までですから

だってだいぶ得意のようじゃありませんか」

「だれが、野々宮さんが。――あなたもずいぶんね」

「なぜですか」

だってまさか運動会の計測係りになって得意になるようなかたでもないでしょう」

 三四郎はまた話頭を転じた。

「さっきあなたの所へ来て何か話していましたね」

「会場で?」

「ええ、運動会の柵の所で」と言ったが、三四郎はこの問を急に撤回したくなった。女は「ええ」と言ったまま男の顔をじっと見ている。少し下唇をそらして笑いかけている。三四郎はたまらなくなった。何か言ってまぎらそうとした時に、女は口を開いた。

あなたはまだこのあいだの絵はがきの返事をくださらないのね」

 三四郎はまごつきながら「あげます」と答えた。女はくれともなんとも言わない。

あなた原口さんという画工を御存じ?」と聞き直した。

「知りません」

「そう」

「どうかしましたか

「なに、その原口さんが、きょう見に来ていらしってね、みんなを写生しているから、私たちも用心しないと、ポンチにかかれるからって、野々宮さんがわざわざ注意してくだすったんです」

 美禰子はそばへ来て腰をかけた。三四郎自分いかにも愚物のような気がした。

「よし子さんはにいさんといっしょに帰らないんですか」

「いっしょに帰ろうったって帰れないわ。よし子さんは、きのうから私の家にいるんですもの

 三四郎はその時はじめて美禰子から野々宮のおっかさんが国へ帰ったということを聞いた。おっかさんが帰ると同時に、大久保を引き払って、野々宮さんは下宿をする、よし子は当分美禰子の家から学校へ通うことに、相談がきまったんだそうである

 三四郎はむしろ野々宮さんの気楽なのに驚いた。そうたやす下宿生活にもどるくらいなら、はじめから家を持たないほうがよかろう。第一鍋、釜、手桶などという世帯道具の始末はどうつけたろうと、よけいなことまで考えたが、口に出して言うほどのことでもないから、べつだんの批評は加えなかった。そのうえ、野々宮さんが一家の主人から、あともどりをして、ふたたび純書生と同様な生活状態に復するのは、とりもなおさず家族制から一歩遠のいたと同じことで、自分にとっては、目前の迷惑を少し長距離へ引き移したような好都合にもなる。その代りよし子が美禰子の家へ同居してしまった。この兄妹は絶えず往来していないと治まらないようにできあがっている。絶えず往来しているうちには野々宮さんと美禰子との関係も次第次第に移ってくる。すると野々宮さんがまたいつなんどき下宿生活永久にやめる時機がこないともかぎらない。

 三四郎は頭のなかに、こういう疑いある未来を、描きながら、美禰子と応対をしている。いっこうに気が乗らない。それを外部の態度だけでも普通のごとくつくろおうとすると苦痛になってくる。そこへうまいあいによし子が帰ってきてくれた。女同志のあいだには、もう一ぺん競技を見に行こうかという相談があったが、短くなりかけた秋の日がだいぶ回ったのと、回るにつれて、広い戸外の肌寒がようやく増してくるので、帰ることに話がきまる。

 三四郎も女連に別れて下宿へもどろうと思ったが、三人が話しながら、ずるずるべったりに歩き出したものから、きわだった挨拶をする機会がない。二人は自分を引っ張ってゆくようにみえる。自分もまた引っ張られてゆきたいような気がする。それで二人にくっついて池の端を図書館の横から、方角違いの赤門の方へ向いてきた。そのとき三四郎は、よし子に向かって、

「お兄いさんは下宿なすったそうですね」と聞いたら、よし子は、すぐ、

「ええ。とうとう。ひとを美禰子さんの所へ押しつけておいて。ひどいでしょう」と同意を求めるように言った。三四郎は何か返事をしようとした。そのまえに美禰子が口を開いた。

「宗八さんのようなかたは、我々の考えじゃわかりませんよ。ずっと高い所にいて、大きな事を考えていらっしゃるんだから」と大いに野々宮さんをほめだした。よし子は黙って聞いている。

 学問をする人がうるさい俗用を避けて、なるべく単純な生活にがまんするのは、みんな研究のためやむをえないんだからしかたがない。野々宮のような外国にまで聞こえるほどの仕事をする人が、普通学生同様な下宿はいっているのも必竟野々宮が偉いからのことで、下宿がきたなければきたないほど尊敬しなくってはならない。――美禰子の野々宮に対する賛辞のつづきは、ざっとこうである

 三四郎赤門の所で二人に別れた。追分の方へ足を向けながら考えだした。――なるほど美禰子の言ったとおりである自分と野々宮を比較してみるとだいぶ段が違う。自分田舎から出て大学はいったばかりである学問という学問もなければ、見識という見識もない。自分が、野々宮に対するほどな尊敬を美禰子から受けえないのは当然である。そういえばなんだか、あの女からかにされているようでもある。さっき、運動会はつまらいから、ここにいると、丘の上で答えた時に、美禰子はまじめな顔をして、この上には何かおもしろものがありますかと聞いた。あの時は気がつかなかったが、いま解釈してみると、故意自分を愚弄した言葉かもしれない。――三四郎は気がついて、きょうまで美禰子の自分に対する態度や言語を一々繰り返してみると、どれもこれもみんな悪い意味がつけられる。三四郎は往来のまん中でまっ赤になってうつむいた。ふと、顔を上げると向こうから与次郎とゆうべの会で演説をした学生が並んで来た。与次郎は首を縦に振ったぎり黙っている。学生帽子をとって礼をしながら、

「昨夜は。どうですか。とらわれちゃいけませんよ」と笑って行き過ぎた。

anond:20241001201601

2024-09-26

ケツに指突っ込んだせいでしんどい

なぜかひどい便秘になった。

便秘とはあんまり縁がない。いちじく浣腸でさえ10年前くらいに使ったかどうかだ。

たまに切れ痔があるけど食生活に気をつけてれば治った。

それが、出ない。

何をどうやっても、出ない。

トイレ小一時間格闘したが出ない。

諦めてドラッグストアいちじく浣腸を買おうかと思った。

しか便意と戦いつつ外出はハードル高いなんてもんじゃない。

そこで思いついたのが部屋にあった使い捨て手袋である

まれて初めて自分のケツに、手袋した指を突っ込んだ。

悪戦苦闘の末、なんとか掻き出した。

手袋が血で真っ赤。便器真紅。ひと足先に紅葉が来た。

素人適当なことをするもんじゃなかった。

しかも全部ってわけではない。

その後出たものデカビタよりやや小さいか、くらいのビックサイズである

めちゃくちゃだ。

出口の直径には限界がある。腸のほうも出口に配慮してサイズを調整してもらいたい。

そして1日たったがまだ尻が微妙に痛い。

血は止まってるのだけが幸いだ。

月曜まで難儀するようなら潔く肛門科に行く。

いちじく浣腸オオバコサイリウムという食物繊維は買った。乳酸菌オリゴ糖は日頃からとっている。

それにしても、アナルセックスはどう考えても健康に悪い。もう2度とケツに指なんか突っ込みたくない。

とりあえずこんな話どこにも吐き出せないし、しんどいからここに書く。つらい。

2024-09-12

牛丼百人一首(完全版)

秋の田の かりほと牛の 客はあらみ わが丼は 汁にぬれつつ(天丼天皇

牛丼屋に入ると秋の穫りたて新米だった、だが客たちは荒ぶっている、忙しいのだろう、急いで盛った丼に汁がこぼれてて手が汚れた、俗世の民たちの力強い生き様を喜び新米店員頑張れの歌

田子の浦にうちいでて見れぬ白米の 肉の高嶺に紅はふりつつ(山牛赤人

恋に敗れ田子の浦を傷心旅行中、肉山で米が見えない素晴らしい牛丼出会えた、私は感動のあまり紅生姜たっぷり乗せて食った、明日から頑張ろう

奥山に 紅葉みわけ 鳴く牛の声きく時ぞ 客は悲しき (牛丸太夫)

落ち葉の積もる山奥のド田舎を歩いていると、腹が減りようやく見つけた牛丼屋に入り、いつもの並&卵を食していると、どこかしらから牛の鳴き声が聞こえてきてなんか罪悪感を覚えた、モォーモォー鳴いてるし、ゴメンて

かさかさの わたせる箸を おく丼の 白きを見れば 朝があける(Chu♡なゴーン家持)

オールで遊び疲れ牛丼を食うた、汁一滴も残らぬ乾いた丼に渡し箸、行儀が悪い

一息ついて外を見れば夜が明けてきた、そういえば肌もカサカサだわ、不健康だわ

こんな人生で良いのだろうかと悩む様

牛の香が うつりにけりな いたづらに わが腹世にふる デブにせしまに (小野小町(女))

街を歩いていると牛丼匂いがしてきた、誘われてる、悪い誘い、食いたい、

だが自分の腹を見ると肥満

散々牛丼を食い散らかしてこうなったんだなあと反省、だが食う

これやこの 行くも帰るも 別れては 牛も鰻も 大阪の店 (蛸丸)

休みエレベーターを待っているとこれからランチに行く人、ズルして早飯で戻ってきた人と別れすれ違う、みな牛丼を食ったのだろう、奮発してうな重だろうか、僕はなにを食べようか、ワクワ

それにしても大阪支店ガバナンスヌルすぎね?大阪気質か?

東京本社では平社員早飯とかありえないんですけど、という心情

君がため 春の野に出でて 牛をつむ 我が衣手に 雪はふりつつ (親光孝天皇

親父(君)が牛丼買ってこいつーて、寒いから嫌だと断ったのに、もう春だと押し切られ、まぁこれも親孝行かと諦めて渋々出かけたら案の定コートに雪が積もる、

ありえねぇ、チャリの前カゴに詰んだ牛丼を眺めるとイライラする、Uberにすればよかった

千早ぶる 注文もきかず なみたまご 水くれなゐに 牛がくるとは (ざいはらぎょうへいあさしん何故か変換できない

仕事が忙しくランチタイムを逃し、ようやく仕事が片付いて飯に向かう、腹がすきすぎて大急ぎで吉野家に駆け込み、注文を聞かれる前に「並と卵!」とオーダーしたった

まりの形相に店員は驚いたのだろう水を出すのも忘れ、先に牛丼が来た、お水ちょーだい

住の江の 岸による店 夜さへや 夢の通ひ路 人目よくらむ (Toshi

住之江競艇場ナイトレースで大博打を打ったら負けた

夢破れ打ちひしがれた帰り道に海岸沿いの牛丼屋に入った

ふと見た窓の外には大勝ちした客がおり目眩がした

難波馬 みじかき夢の ふしの間も あはでこの世を 過ぐして牛や (Isse feat. Toshi

昨日の住之江競艇に懲りずに難波ウインズ競馬で大博打、夢は一瞬で散った

哀れすぎてこの世を去りたい、だが牛丼を食う、すぐ忘れて元気になった

わびぬれば 今はた同じ 難波MIO着いたけど 牛無理とぞ思ふ (Shin feat. Toshi

昨日の難波ウインズを妻に詫びたが、結局今日も懲りずに難波ウインズでまた負けた

電車賃も使い果たしトボトボ歩いて帰る、ようやく天王寺MIOに着いたが

今日牛丼を食う金も無い、牛丼屋の明かりが切ない、おうちにも帰りたくない、はぁ、怒られる

次の25件>
ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん