先日の大阪・京都書店回りのレポート、まだ京都編が残っているんですが、その前に、都内の新刊書店がらみのニュースを2件、ご紹介します。まずは渋谷のこちらから。
文教堂書店渋谷店が、リニューアルのため、明日から一時閉店となるそうです。文教堂のサイトには「文教堂渋谷店一時閉店のお知らせ」として以下のようにあります。《文教堂渋谷店は、9/1から9/10まで改装の為一時閉店いたします。ご迷惑をおかけしますが、何卒ご理解のほど宜しくお願いします》。告知はこれだけで、ずいぶんあっさりしていますが、ツイッター他で知った情報によれば、リニューアルオープンは9/11。現在2フロアのお店が、1フロアになっての再出発とのことです。
現在の店舗は、2フロア合わせて300坪ほどと、大きめの中規模店という感じのサイズですが、1フロアになるというのは純粋な縮小なのか、フロアの形状などが変わるのか、また、2階にあったカフェスペースはどうなるのか、など、いろいろ気になりますね。渋谷駅からすぐ近く、とくに地下鉄の出口からはすぐという好立地で、夕方などいつもお客さんでにぎわっているお店だけに、どんなお店になるのか、今から楽しみです。
次は新宿。この空犬通信でも何度か取りあげてきましたが、新宿三越アルコット閉店に伴うジュンク堂書店新宿店の今後の件です。しばらく前の記事では、業界紙『新文化』の8/11号に、「ジュンク堂書店/新宿店は継続か? 工藤会長“再出店”への含み示唆」という記事が出た件を紹介しました。
そのときは、《今回のように、まだ確定ではないという段階で、こういうコメントが業界紙の記事として文章化されるのは、異例のことと言っていいでしょう。残る方向に決まりつつあるのか、談話を出しても大丈夫という「何か」があったんでしょうか。》などと書いたのですが、先日、こんな報道がありました。「最大級ユニクロが「新宿三越アルコット」跡地に出店 ビックカメラと同居」(8/29 Fashionsnap.com)。
記事には、《同館(アルコットのこと)には、2012年夏を目処に三越伊勢丹ホールディングスから外部一括賃貸するビックカメラが出店する予定で、ユニクロはその1~3階を転借。5,000平方メートル級のアジア最大店舗となる見通しだ。》とあります。新宿通りの路面スペースをユニクロに譲っちゃうのか。ふうむ、それって4階より上に入る店舗(ビックカメラだけなのか、他にも入るのかはわかりませんが)にとって、集客上、正しい戦略なんでしょうか。素人にはよくわからないけど、なんだかちょっとびっくりな話です。
その他のメディアのものもざっと見てみましたが、いずれの記事でも、ジュンク堂新宿店のことにはふれられていないようです。ただ、地上8階のうち下の3フロアが、これで埋まることになったわけですから、ふつうに考えて、ジュンク堂新宿店が残り5フロアに残る可能性は、大幅に減少することになります。仮に、残る=再出店があるにしても、現在のような3フロアで、というのはあり得ないでしょう。ううむ、どうなる、ジュンク堂新宿店……。
ビックカメラが、8/29付けで発表した
「新店の一部を株式会社ユニクロに転貸することに関するお知らせ」(*注意:PDFファイルです)
IRニュースにあがっています。こちらにも、当然ながら、他の店舗に関する言及はありません。気になるなあ。
書店回りのレポート、大阪編の続きです。今回、お茶はここで、と決めていたお店がありました。《大阪市北区中崎町にあるブック&ギャラリーカフェ》、珈琲舎・書肆 アラビクがそれ。知り合いの、大阪の書店員Mさんにすすめられたもの。
中崎町というのは、大阪・梅田エリアからは、地下鉄で1駅の街。ふだんなら歩いていける距離の街ですが、この日は、残念ながら雨だったので地下鉄で行きました。
↑お店の前の様子。
かなり年季の入った建物の店内に足を踏み入れると、珈琲と本のにおいが。壁には本棚が並び、その前に、テーブルと椅子が配されています。1段高くなった奥のエリアにもテーブル席とカウンター席があり、そちらの壁際は、ギャラリースペースになっています。おお、いい感じ、いい感じ。神保町にあったAMULETの、移転前の感じ、と言えば雰囲気が伝わるでしょうか。
あいにくの天気だというのに、店内はお客さんでいっぱい。唯一空いていたカウンターに座らせてもらい、珈琲を。店内を眺めながらぼーっとしていたら、店主の方(森内さん(@Arabiq_owner))が、話しかけてきてくれました。この日は、吉っ読Tシャツを着ていたんですが、そのTシャツに気づいたといいますから、ちょっと驚き。ふつうの新刊書店ならともかく、こういう場合は、名乗るべきなのかどうなのか、迷います。結局、名乗りませんでした。@Arabiq_ownerさん、すみません……。
吉祥寺の話から、大阪でもOSKというのがあって、という話になり、いろいろ興味深い話を聞かせてもらいました。ぼくはかつて大阪にいたくせにまったく知らなかったのですが、中崎町の界隈は、おもしろいお店がたくさん増え、ちょっとしたおしゃれエリアになっていること、こんなふうにお店が増えたのは5、6年前ぐらいからであること、決して広くはないこのエリアに、本の関係のお店が複数あること、などを教えてもらいました。吉祥寺の東急裏が盛り上がっていったときの感じに近いのかも、などとも思いましたが、あたっているかどうかはよくわかりません。
そうした本の関係の方と一緒にフリペを作ろうというアイディアが出ていたりするそうです。その他、本や書店にまつわる何かを一緒にやりたい、ということで、いろいろ企画中なんだそうです。なんかおもしろそうだなあ。大阪の新刊書店も一緒にやれたらおもしろそうだなあ、と、お話をうかがいながら、(自分が書店員でも、大阪の人間でもなんでもないくせに)考えたりしていました。
お店の本もじっくり見てきたかったのですが、先に書いた通り、お客さんがいっぱいで、テーブルの近くの棚を見られなかったのがちょっと残念。店内は新刊と古書が同居していて、ジャンルが完全に特定されている感じではないものの、文芸を中心に、なんとなくテイストを感じさせるというか、雰囲気のある本が並んでいます。店主の方の話では、生きている作家の本は置かない、ということで始めたそうですが、最近はちょっとぶれてきてしまっているのだとか。
店主の方に、近隣の書店の場所を教えてもらってお店を離脱。丁寧に、本の関係のお店数店を教えてくれました。
↑周囲は、古めの建物が並ぶ、一見ふつうの街なんですが、このように、ちょっと昭和テイストを感じさせるお店が、あちこちに。古い建物をそのまま利用しているので、いわゆる原宿化にはなっていなくて、とてもいい感じです。
↑森内さんに教えてもらったお店の1つ、「リトルプレスの専門書店」の、ブックスダンタリオン(写真は、ビルの入り口とお店のある廊下)。ここで、『中崎町ぶらりマップ』なる、文庫判オールカラーのマップを入手。たったの50円。でも、アラビクも、後述の「本は人生のおやつです!!」も載っていなかったりする。
【“アラビク他中崎町のお店たち……大阪・京都書店回りレポート その2”の続きを読む】
先日、出張で大阪と京都に行ってきました。大阪と京都に分けて、簡単にレポートを。まずは、大阪編から。(以下、写真と店内の様子は、大阪が8/21、京都が8/22時点のものです。)
今回は、いつも以上に空き時間が少なかったので、数を回るのはあきらめて、最近の新店で訪問できていなかった2店、三省堂書店ルクア大阪店とスタンダードブックストア茶屋町、そして、建て替えのために年内で閉店することになった旭屋書店本店の計3店を中心に見てきました。まずは、三省堂書店ルクア大阪店。
オープン時は大変なにぎわいが新聞他で報じられていたルクア。訪問したのが日曜の昼時だったこともあり、お客さんでいっぱいでしたね。三省堂書店は9階にあります。
↑商業施設内のお店なので、写真はエスカレータあたりからの1枚のみ。
施設自体が新しいことに加え、奥に窓の開放部があるせいか、とても明るくてきれいな印象のお店です。第一印象は、三省堂書店の他のお店でいうと札幌店のような感じかな。広さは255坪。札幌ほど大きくはないのですが、明るくて開放的な造りのせいか、数字よりも広く見えますね。お客さんは女性が多い感じだけど、それはこのお店に限らず施設全体の傾向でしょう。家族連れがもっと多いかと思ったけど、全体のにぎわいからすると子どもは少なめ。店内がにぎわっているだけに、コミック売り場に人が少ないのが目につく、という感じでした。
着いていきなりフリペコラボのウォールポケットが目に入りました。おお、ここでもやってるやってる。初めて見るフリペも発見、うれしいなあ。ルクア大阪店独自のものもあるんですね。フリペについては、後日まとめて紹介します。
フリペコーナーの近くにあるお店の売上ランキング(客層などを見るのに重要な情報ですからね)を見ると、売れ筋の本がふつうに並んでいるのですが、トップが上沼恵美子夫妻の本だったりするところが、おしゃれビルのなかにあってもやっぱり大阪だなあと、うれしくなってしまいました(笑)。
とくに、文芸コーナーに顕著ですが、店内の平台では、POPが目立ちます。美しくデザインされた台紙に、きれいなこまかい字でぎっしりとコメントの詰まったPOPがあちこちにたくさんあって、見ていて楽しい。三省堂書店京都駅店から異動された中澤めぐみさんの手によるものでしょうか。面識があるわけではないし、担当ジャンルも違うので、眺めるだけにしましたが、ああ、誰か知り合いがいれば写真を撮らせてもらえたのに!とちょっと残念。そうそう、京都と言えば、話題の文芸書の一画には、京都水無月大賞の南伸坊さんの本、『笑う茶碗』がPOP付きでジャーンと積まれていましたよ。
文庫の棚の奥は、窓になっていて、窓から駅と線路、ルクアと伊勢丹側をつなぐ(で、いいのかな)アトリウムを見下ろすことができて、なかなかいい感じ。後述する、旭屋書店本店は鉄道関連が充実したお店として有名なお店ですが、同店が閉店した後は、ここが鉄道本の聖地になったりしたらおもしろいのになあ、などと窓から駅を眺めつつ、暢気なことを考えたりしました。ぼくはあまりその方面は強くないのですが、駅や線路が見えるだけでうれしい鉄道好きの方もいると聞きますからね。
お店には、カフェ(スタバ)が隣接、そちらにも書棚があり、ブックカフェスタイルになっています。書店とカフェの境の棚には、写真集他のおしゃれ系の本(フロアガイド上では「アート/絵本」)が並んでいました。
商業施設の雰囲気に合わせつつ、さりとて、セレクトショップ的な品揃えには走らず、全ジャンルをカバー、幅広い客層に対応した、敷居が低くて居心地のいいお店になっているように感じました。大阪駅周辺のお店とも違う雰囲気になっていて、いいお店だと思いましたよ。
次は、茶屋町へ移動、開店前から楽しみにしていたスタンダードブックストア茶屋町へ。
いいなあ、この感じ。ミナミのお店ともちょっと雰囲気が違っていて、こちらはこちらで、にぎやかで楽しいし、お店が明るくて(店内の照明はちゃんと節電モードになっているにも関わらずそう感じさせる、の意)、棚が見やすい。本のセレクトや扱うジャンルにはヴィレッジヴァンガードと似ている点もあるけど、同じ雑貨を扱っていても、こちらのほうが「本屋さん」の感じが強いですね。いい意味でのごちゃごちゃ感と、すっきりと見せるディスプレイのバランスがうまくとれているんでしょうね、きっと。
ちょうどお昼どきだったので、席はないものとあきらめていたんですが、なんと座れてしまいました。ラッキー。と思ったら、楽しみにしていたカレーは、ご飯が切れているとかで食べられず。運がいいんだか悪いんだか、よくわかりません(苦笑)。でも、ホットドッグをおいしくいただいたので、いいんですけどね。
日曜のランチタイムなのに、ぼくが店内にいたときはBGMがずっとブルースでした。How blue can you getとか聴きながらのランチはなかなかいいもの(←ブラックミュージック好き)ですが、一般のお客さん的にはどうなんだろう(笑)。
ランチの前後は、店内の本を席で読ませてもらったんですが、こういう、店内の商品を席で閲覧できるタイプのブックカフェはちょっと緊張しますね。ホットドッグのチリソースをはねたりしないか、表面に汗をかいたコップの水滴を落としてしまわないか、などなど。自分が本を作る側の人間でもあるせいか、やっぱり飲食中に売り物にふれるのはとても気を遣ってしまうので、飲食中は自分の本にして、店内の本を見るのは、飲食の前後にするほうが、気を遣わず、本をゆっくり見られますね。
店内の本のセレクトは、いかにもそれらしいものなんですが、お店の入り口すぐ、メインの平台の1つに、新潮文庫の夏の100冊があるのが、目を引きます。3社のうち、夏文庫はこの新潮文庫だけ。店内の他の棚には、出来合のフェアを展開しているところはないので、ちょっと意外な感じでした。何かの戦略なのかな。
本のセレクトのノリが合う人なら、いくらでも長居できそうなお店です。これから訪ねる方は、ぜひ時間に余裕を持ってどうぞ。
最後は、旭屋書店本店を。
【“三省堂ルクア、スタンダード茶屋町、旭屋本店……大阪・京都書店回りレポート その1”の続きを読む】
本日も「夏休み」でお休み。親子で終日のんびり過ごしましたよ。で、たまの休みの日ぐらい、たまっている本をがしがし読めばよさそうなものなんですが、未読本以上に懸案なのが、本の収納問題。とにかく、どこかをどうにかせんことには、もう本が置けないのですよ……。
というわけで、今日は、午後の半日かけて、本棚の大整理を試みました。本の山や前後二重の棚を崩してみると、いやはや、出てくるわ出てくるわ、あっちからもこっちからも、久しぶりに見る本や、買っていたことを忘れていた本が(笑)。当然、「仕分け」の判断のためには、内容のチェックが必要ですから、片端からぱらぱらやることになります。思いがけず楽しい時間を過ごすことになってしまいましたよ。
ただ、そんなことをしていては、当然、本来の目的である「整理」が進むはずもありません。半日かけて、処分決定は結局、段ボール1箱ほど。あふれた本棚に入らずにあちこちに積み置かれた本の「一部」が減っただけ。本棚に空きがない状態は変わりません。嗚呼……。
本の整理をしていて、積み上げた山の下のほうや、棚の奥のほうから気になる未読の本が出てきたりして、内容確認をと思って手にしたらつい読み始めてしまって、気がついたら整理がぜんぜん進まない……こういう事態って、おそらく、ため込み派の本好きの多くが経験してることなんだろうなあ。そんなふうにツイートしたら、あちこちからあるあるの声が(笑)。やっぱりなあ。ちょっと安心しました(笑)。
そんなこんなで、夏休みもまもなく終わり。8月の終わりって、なんとなくさびしいというか、慌ただしいというか、ほかの月末とはちょと違う感じがありますよね。うちの子は、宿題はそんなにためていないようで、慌てて駆け込み作業を強いられている様子はないみたい。一緒にいるときは、済んだものを見てやったり、質問にこたえたりします。で、今日は、読書の記録のチェックを見ていたんですが、うちの子の小学校では、読書感想文の宿題がないんですよ。最近の小学校では、一般的にはどうなのかな。
で、代わりに何があるかというと、書名・作者・頁数に、1、2行の感想を書く読書リストがあるのです。1冊だけ読んで書く感想文と違い、複数の本を読むことが前提なので、読めば読むほどリストの空欄が埋まり、同時に、読書量=頁総数がたまっていく、というしかけ。このやり方だと、子どもが達成感を感じることができるから、とてもいいのではないかと思いました。
その読書リスト、見てみると、かわいいひとこと感想がぎっしり書き込んであるんですよ。親ばか丸出しで恐縮ですが、もう読んでて泣けるのなんの。別に感動的なことが書いてあるわけでもなんでもないんですが、ストレートな本の感想ってやっぱりいいなあ、と、そんなことを思わされたりしたのでした。これ、もちろん新学期になったら提出することになるわけですが、戻ってきたら、もらっちゃおうっと。そして、文字が消えちゃわないよう、いい紙にコピーして(ざら紙にエンピツ書きなので保存が心配なのです)、表紙つけて製本して、保存版にするのだ。
ところで。割に悪者扱いされやすい、その読書感想文について少し。先日も、たまたま本好き仲間と話していて、この話題になったんですが、予想通り、みな、いいイメージを持っていないようでした。まあ、わかります。本好きはいても、読書感想文好きって、周りにまずいませんでしたから。
でもね、世によく言われるほど、悪いものかなあ、という気も一方ではするのです。読書感想文があるから本が読みたくなくなった、本が嫌いになった、みたいな言い方されますよね。でも、どうなんだろ、ぼくも、それからそのときに話していた複数の本好きも、みな小学校で読書感想文を書かされた世代でしたが、みんな、それで本が嫌いになったりすることなく、こうして本好きをやってますからね。しかも、本を仕事にしている人になってたりする。また、文章を書くのが嫌いになるどころか、頼まれもしないのに、POPを作ったり、フリペを作ったり、ブログに感想をアップしたり、そんな人がたくさんいますからね。
読書感想文が別にベストなやり方だとは思いません。思わないけれど、でも、本にふれた人がもっと本を読みたい!と思う気持ちを殺いでしまうような、そんなたいそうなものだとは思えないんですよね。嫌だ嫌だ、と言いながら、みんななんとなく通り過ぎてしまうもの、その程度だと思うんですよ。逆に、読書感想文があるから本は嫌なんだ、というタイプの子どもがいるとして、では、読書感想文がなかったら、その子たちが本好きになってくれるか、というと、問題はそんな簡単じゃないと思うんですよね。
ぼくは、本に出会う機会はたくさんあればあるほどいいと思ってます。本屋さんの店頭で出会う以外に、教科書で出会ったり、図書館・図書室で出会ったり、夏休みの宿題で出会ったり、いろいろあっていいと思うのです。借りたものでも、買ってもらったもので、それが新本でも古本で、なんでもいい。まずは本(作品)に出会うこと、それがなければ始まりませんからね、何も。課題図書/読書感想文だって、朝の読書だって、そういう出会いの、立派な1つの機会だと思うんですよ。
【“本の整理はいつも悩ましい……そして、読書感想文のこと”の続きを読む】
昨日から、短い、そして遅めの夏休み中の空犬です。夏休みのときぐらい、blogの更新はさぼってもいいのではという気が我ながらしないでもないのですが、いつものように新刊書店の開店閉店関連情報を。
静岡で、現在7店舗を展開している地域チェーンの江崎書店。うち、静岡駅ビル「パルシェ」が、9/22(木)、新パルシェ店として、増床リニューアルオープンとなるようです。広さは205坪。
これに合わせて、呉服町通りにある本店と、同店2階にある「アニメフレンズ」は閉店となるようです。閉店日ですが、アニメフレンズは、9/1(木)。サイトに、「移転について」の記事があり、以下のように告知されています。《この度、アニメフレンズは9月1日をもっての営業休止が決定いたしました。/今後はパルシェ5階、江崎書店パルシェ店内にスペースを設けて頂き、そこでコーナー展開、という形での営業を再開します。/それに併せ営業開始日は江崎書店パルシェ店の開店日と同日になります。》
「アニメフレンズ」は、「市内最大級のアニメショップ」をうたって、2010年2月オープンしたお店ですから、1年半ほどでの移転リニューアルとなるわけですね。本店のほうは、はっきりした閉店日がわからないのですが、9/22の新パルシェ店オープン後の閉店となるようです。なお、閉店後の本店の建物ですが、外商部が残るそうで、建物自体がなくなるわけではないそうです。
以上、Kei Hiraideさん(@wekhira)からの情報です。静岡は、仕事でもプライベートでもなかなか縁のない地域で、新幹線では何度も通過しているのに、降りたことがありません。この後、翌月10月には、「新静岡セノバ」にMARUZEN&ジュンク堂書店がオープンします。土地勘ゼロなため、両店およびその他の新刊書店がどのような位置関係にあり、商圏的にどのような影響関係にあるのかがさっぱりわからないのですが、同エリアの書店事情が大きく変わることは間違いないですね。機会あれば、秋以降、ぜひ訪れてみたいものです。
なかなか縁のない地域と言えば、こちらもそう。島根県松江市の件を紹介します。今井書店西津田店が8/21に閉店、その跡地に、8/28(日)にいったん閉店となるブックス文化の友橋南店が、ブックス文化の友津田店として移転、9/10(土)オープンとなるそうです。
前店舗の閉店から新装開店まが20日を切っていることを考えると、居抜きに近いようなかたちで入ることになるのでしょうか。ブックス文化の友のサイトには、「橋南店が9月10日移転オープン」の記事があり、「新店舗の特徴」として、以下のようにありました。
《1. 児童書・コミックの充実
売場面積1.5倍。特に児童書・コミックを充実
通路を広くし、本・文具・雑貨のボリュームを大幅アップ
2. オープニングイベント
限定バッグ、レアキャラクターグッズ、商品券が当たる
ポイント3倍!など、オープニングイベント満載!》
告知には店名の件はないのですが、新店は「ブックス文化の友津田店」ということでいいのでしょうか。
先日、8/25にアップした、『世界の夢の本屋さん』の書評に関する記事ですが、事情があって、いったん取り下げていたのを、再度アップしました。内容は変えていません。
(以下、記事の扱いについての経緯を書きましたが、こまかなことですので、興味のない方はとばしてください。)
【“『世界の夢の本屋さん』の書評の記事について”の続きを読む】
仕事の用事でぎっしりだった出張の「隙間」をフル活用し、大阪京都の書店をいろいろ見てきた空犬です。大阪・京都の書店レポは、まとめるのにちょっと時間がかかるので、週末の作業とし、今日は、簡単に書けそうなこの件を。
まさに書名通り、書店好きにはこたえられない1冊、『世界の夢の本屋さん』の書評が、先週日曜日の朝日新聞に載りましたね。その前には、週刊朝日にも載っています
空犬通信でも大プッシュのこの本、たくさんの本好き書店好きの目にとまってほしいし、もっともっと売れてほしいので、こうして書評に取りあげられるのはとてもうれしいですね。
週刊朝日の評者は西條博子さん(@hirorobin_s)。《大判の写真はカラフルな書棚が万華鏡のようにも見え美しい。》と締められるその文章は、短いものなんですが、同書に取りあげられているお店の「カラフル」な様子がコンパクトに紹介されていますよ。
朝日新聞のほうは、評者、荒俣宏さん。言わずと知れた本の鬼のような方、海外の書店の利用歴もふつうではないでしょうから、どんな紹介をしてくれたのかと、楽しみに読み始めたら……うーん、これがなんというかなあ、ちょっと微妙な書き方。
《西洋の老舗書店というと、古本の墓場か中世の牢獄かと見誤るような老建築を連想するかもしれない。しかし本書を見てびっくり、これは夢のように美しい店内を紹介する写真集であり、著者2人が女性というところも、男性マニアの作りそうなかび臭い書店ガイドとは異なる。/まず書店の選び方からしてファッショナブルだ。》
著者が女性だから書店の選び方がファッショナブル、という時点で、いまどきこんな見方で大丈夫?、著者のお二人にも失礼なのでは?と、早くも心配になってしまう書き方。まあ、先を見ましょうか。ロンドンとパリのお店への言及があり、本書の「見どころ」だというイタリアのお店にふれたくだりには、こんなふうにあります。
《本書の見どころは、本を宝飾品のように展示するイタリアの本屋さんだろう。これらに比べたら、日本のそれは残念ながら下町の雑貨屋レベルだ。》
これは、ぼくの読解力の問題で、荒俣さんなりのひねった表現で、実は日本の書店のことをほめてるんではないか、変わった愛情表現なのではないかと、何度も読み返してみましたが……何度読んでも、このくだり、日本の書店について、大変に失礼な書き方がされてるとしか読めません。……っていうか、我が愛する日本の本屋さんが、思いっきりバカにされてる!
何かをほめるときに、他のものを引き合いに出して、それをおとしめたり、けなしたりする方法でしか語れない人って、どうも信用できないし、苦手なんですよね。○○○っていいよね、それに比べて△△△は……タイプの物言いをする人。もちろん、気をつけないと、自分でもやっちゃいかねないわけで、この駄ブログのなかでも完全にそれをまぬがれているかどうはわかりません。でも、名のある書き手が、全国紙の書評でそのような書き方をするべきなのか、してもいいのかは、まったく次元の違う問題ですからね。
だいたい、この本に取りあげられているのは、一部のすてきな本屋さん、まさに「夢のような本屋さん」たちなわけでしょう? いくら、ロンドンやパリやイタリアの書店がすごいたって、全部が全部、あのような書店のわけじゃあるまいし(苦笑)。っていうか、ぼくのごくごく限られた海外旅行の経験で言っても、パリにだって、ロンドンにだって、ふつうの「街の本屋さん」がありましたよ。
それは日本だって同じですよね。一見、ごくふつうの街の本屋さんもあれば、全国チェーンのお店もあれば、おしゃれだったりとんがってたりするセレクトショップもあれば、その中間もあれば……とにかくいろいろなわけです。どこをどう切り取るかで、その国なり街なりの書店事情なんて、いくらでも違うかたちで見せられるわけだし、それだけのバリエーションに富んだ世界でもあるのです。日本の書店をどの程度ご覧になっているのか、昨年から今年にかけて何冊も出ている雑誌の書店特集をどの程度ご覧になっているのか、よくわかりませんが、「日本のそれ」の実状をどれぐらい把握されているんでしょうか。そもそも、比べ方が変ですよ。著者のお二人のセンスで、見事にセレクトされたお店たちと、日本の書店を雑ぱくにひとくくりにして比べるなんて。双方に失礼ですよね。
荒俣さんはこうも書いています。《町興(まちおこ)しの主役となった書店はどこも、「夢」を追求している。出版不況に苦しむ日本には、大きな衝撃だろう。》ぼくは、この本、大変に楽しく読みました。読了後も、ぱらぱら読み返しています。ぼくは出版業界の端くれにいるものですが、初めて目にしたときから今にいたるまで、別に、衝撃なんて、ぜんぜん感じなかったけどなあ。わくわくしたり、うれしくなったりはしたけどね。だって、あちらとこちらで、上っ面の比較したって、しかたないもの。書店の置かれている状況も、出版事情も、書店の数も、その人口比も、ぜんぜん違うんだもの。あちらには夢がある、こちらには夢がない、だなんて、そんないい加減なこと、本の世界のプロが書くことなのかなあ。
このブログでは(書店の閉店のような、一部特別な話題をのぞいて)なるべく楽しいことしか取りあげたくないんですが、この書評は、この『世界の夢の本屋さん』を愛する者として、そして、なにより、日本の書店を心から愛する者として、ちょっと読み流すわけにいかなかったので、駄文をつらねた次第。もしかしたらぼくの杞憂で、ふつうの人は、《これらに比べたら、日本のそれは残念ながら下町の雑貨屋レベルだ。》にいちいち目くじらを立てたりしないのかもしれない。書店関係者は大人な人ばかりなのかもしれない。かもしれないけど、でも書いておきます。
日本の書店は、(ぼくは「下町の雑貨屋」さんの存在に悪いイメージはまったくありませんが、ここではあきらかに見下す対象として使われているので、その流れで引用しますが)「残念ながら下町の雑貨屋レベル」などとひとくくりにされるようなものではありませんよ。あなたが本好きなら確実に、(まあちょっと好きかな、ぐらいでもおそらく)、大変に幸せな時間を過ごせるすてきなお店が、あちこちにたくさんありますから。
それから、日本の書店関係者のみなさんにも申し上げたいのですがみなさんのお店やお仕事は、なんとかレベルだ、などとひとくくりにされるようなものではありませんよ。昨日一昨日も、合わせて十数軒の書店を見てきたばかりですが(それも同一商圏の、同じチェーンの別のお店を含む十数軒)、1つとして、「これは○○○レベルだな」などと思わされるようなお店はありませんでした。どの店も楽しくて、毎回時間切れで最後は体力切れで、ほんと、毎回うれしい悲鳴ですよ(笑)。外国のお店と比べて云々するような意見は、どうぞ気になさらず。
それから、この『世界の夢の本屋さん』をまだお読みでない方、これから買うかもしれない方にも、申し上げたい。この本は、世界には「夢のような本屋さん」がいくつもあって、出版不況やデジタルの波に苦しみつつも、すてきなお店造りを実現したり維持したりしていて、その店頭の様子がこんなにすてきなんですよと、そういうことを伝えてくれる本です。日本の書店がなんとかレベルだ、などということを言いたい本ではないし、ふつうの読み方をしていたら、そんな感じは受けないと思います。だから、安心して、日本の書店で、この本をお買い求めください。値段以上の価値のある本で、(もちろん、日本の、も含めて)書店のことがもっと好きになる本だと思います。
こんなことを、あえて言う必要があるとはまさに「夢」にも思わなかったのですが、このような書評が出てしまったので、余計なお世話ながら、一応書いておきます。
まあ、弱小ブログにこんなことを書いても、書き手に届くわけはありませんが、最後に、一応書いておこう。荒俣さん、あなたの本は、ロンドンでも、パリでも、ローマでもなく、日本の「残念ながら下町の雑貨屋レベル」の書店さんたちが、一生懸命売っているんですよ。どうぞ、そのことをお忘れなく。そして、いくらかつてほどの影響力はないなどと言われているにせよ、全国紙の書評欄は、本の売り手にとっても、本の買い手にとっても、いまなお大事な場なんですよ。そういう場所で、日本の書店に言及される際には、そのようなことにもお気遣いいただきたものです。
出張で京都に来ている空犬です。
出先なので、iPhone+折り畳みキーボードを使って更新しています。初めての試み。うまくいくかな。
今日は朝から夕方までずっと仕事の用事で自由時間はほとんどなかったんですが、用事が終了したらすぐに河原町に移動、わずかな空き時間を使って、京都の書店をいくつか見てきましたよ。
さすがにこの環境で長い記事は無理なので、帰京後、あらためてまとめます。
今日もっとも印象に残ったのは、河原町の丸井の、フタバ+京都マルイ店。おもしろい店であろうことは想像していましたが、想像以上のお店でした。
やっぱり旅先で、ふだんいけない書店を訪ねるのは、ほんと、楽しいなあ。
本・書店ネタで、書かなくちゃいけないことがいっぱいあるというのに、こんなことまで拾ってるから、いくら時間があっても足りないんだと、方々から怒られそうな気もするけど、でも書いておこう。
先日、朝日新聞のむさしの版に、こんな記事が載りました。「「日本初」の流れくむ喫茶店、8月で幕 東京・阿佐谷」(8/18 朝日新聞)。
記事の一部を引きます。《「日本最初の喫茶店」の流れをくむ、JR中央線阿佐ケ谷駅近くの喫茶店が8月末、44年続いた歴史に幕を下ろす。営業している中央線高架下の商業施設の建て替え計画のためだ。改築後の新しい商業施設での再開も検討するが、昔懐かしい雰囲気の喫茶店がなくなることを惜しむ人は多い。》
《31日に閉店するのは、「阿佐ケ谷ゴールド街」(東京都杉並区阿佐谷南2丁目)2階の「可否茶館(こーひーさかん)」。JR中央線中野~荻窪駅の高架化に伴ってゴールド街が誕生した1967(昭和42)年5月にオープンした。》
《「日本最初の喫茶店」とのゆかりは、開店当初の共同経営者の1人が、1888(明治21)年に台東区上野で本格的なコーヒー店「可否茶館」(読み方は「かひさかん」など諸説ある)を創業した鄭永慶さんの孫だったからだ。》
《コーヒーの歴史や文化にくわしく、この店をテーマに著書「日本最初の喫茶店」を出した星田宏司さん(68)は「鹿鳴館に代表される明治政府の欧化主義に反発し、一般庶民がコーヒーを飲める店をめざした。国内外の新聞や雑誌をそろえ、知識普及の場でもあった」と言う。》
《経営は現在、もう1人の共同経営者の長男、小菅秀生さん(66)に引き継がれている。80年代前半には同じゴールド街のいまの場所へ店を移し、2倍の広さの約100平方メートルになった。だが3年ほど前、JR東日本の関連会社からゴールド街の建て替えを理由に立ち退きを迫られた。「地域に親しまれた店を残したかった」が、今年4月に撤退を決意した。》
《建て替え後の新しい商業施設への入居を希望しているが、賃貸料がいまの数倍に上がる見通しなど、条件は厳しい。また、一部の店舗が立ち退きに応じず訴訟になっており、建て替え時期のめどは立っていない。》
《従業員が独自に存続を求める署名を集め始め、これまでに常連客約80人が応じた。小菅さんは「みなさんの熱意をひしひしと感じ、身を引き裂かれるようだ。最後の日にはお客さま一人ひとりに感謝の思いを伝えたい」と話す。》
すみません、一部を省略しつつ、長々と引いてしまいました。阿佐ヶ谷は、ぼくが上京して初めて住んだ街です。いま、ぼくは中央線沿線に住んでいて、阿佐ヶ谷ほか中央線沿線の街に大変に愛着があるのですが、初めての街が阿佐ヶ谷でなければ、こんなにも中央線沿線の雰囲気が好きになることもなかったでしょうし、いまのこの生活もなかったでしょう。
阿佐ヶ谷は、ぼくのような本好きには理想的な街でした。いい新刊書店があって、いい古本屋さんが複数あって、安くておいしい飲食店があって、そして、たくさんのユニークで居心地のいい喫茶店があって。
可否茶館だけではありません。ほかにも、たくさんのいい喫茶店があったのですが、いつのまにか、その数をすっかり減らしてしまいました。西瓜糖、プチ、アコヒーダ……阿佐ヶ谷にあった個性的な喫茶店が次々になくなってしまって、ほんと、さびしいかぎり。店内にブランコがあるgionや、名曲喫茶ヴィオロンはまだあるよね。対山館はまだあるのかな。
あと、個人的にすごくショックなのは、クロンボが閉店してしまったこと。可否茶館と同じゴールド街にあった洋食屋さん、ハンバーグ屋さんです。大好きだったなあ。安くて、ボリュームがあって、お店の人がとっても感じがよくて。学生時代、いったい何度この店に通ったことか。それがもうないなんて……。
学生時代からずっとあって、いつまでもあるに違いないと勝手に思い込んでいた、クロンボ。阿佐ヶ谷の洋食屋さんで、学生のころに好きでよく通っていたお店でいうと、しばらく前に、閉店してしまった洋包丁もそうでした。ぼくは、この2店に寄るためだけに、たまに途中下車してたぐらい好きだったのになあ。そうそう、阿佐ヶ谷にこの6月にできた古書店、コンコ堂を初めて訪ねたときも、帰り、クロンボに寄って、その日買った本を長めながら、ビール&夕ご飯してきのでした。ほんとに、ほんとにさびしいです。
本にも書店にもまったく関係ないうえに、超個人的な話ばかりですみません……。でもね、どうしても書いておきたかったんですよ……。
1週間ほどキャンプで家を空けていた我が子が帰宅。家族旅行に行ってる、とか、おばあちゃんちに行ってる、とかと違い、途中まったく連絡がとれないので、もう心配で心配で、さびしくてさびしくてしかたない。お迎えのとき、親のほうが泣いたりするんじゃないかと心配になるぐらい、こちらは一日そわそわだったんですが、子どものほうは意外にあっさりしたもの。これが「成長」、なのかなあ。
さて。子の帰りを待って終日そわそわしててもしかたないので、さびしさをまぎらすために(としかいいようがない;笑)、家人と一緒に映画を観てきました。ツイッターでつぶやくだけで済ませるつもりでしたが、ブログにはSF映画と特撮のことしか書かないので(この前に観た映画が『モンスターズ 地球外生命体』と『トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』であることは内緒だ)、たまにはこんなのも観るんだよ、ということで、こっちにも書いておくことにしました。観てきたのは、これ。
寡作で知られる監督、テレンス・マリックの作品は、『天国の日々』も『シン・レッド・ライン』も大好き。作品としてより好きなのは前者だけど、こちらはレンタルがVHSだった時代に、大きいとは言えないブラウン管のテレビで観ているだけなのが、ちょっと残念。その点、後者は、リアルタイムでスクリーンで観ているんですが、作品の内容よりも、その映像美がとにかく圧倒的で、いまなお、あの絵この絵が、印象に残っています。
で、今回の『ツリー・オブ・ライフ』ですが……うーん、今回は感想を、簡単なことばでは書きにくいなあ。良し悪しとか、好き嫌いとかで片づけたくないというか、なんというか。先入観なしで観たかったので、あまりWeb他の情報は目に入れないようにしてたんですが、最高と最悪の両方の声があがっていて、後者については、そのわかりにくさがやりだまにあがっているようですね。わかる気がします。
でもなあ、そもそも、展開がリニアでないから、といって、わからな=つまらない、としてしまうのはどうかなあ、という気もするんだけどなあ。まあ、映画はそれが文芸映画だろうがなんだろうが、娯楽として観るわけで、つまらない、わからないと感じてしまったら、それはそれでしかたないんだけどね。だから、そういう印象を持ってしまった方に向かって、この映画がいかにおもしろいか、どこをどう観ればいいか、などと野暮なことを言うつもりはまったくないです。そもそも、テレンス・マリック作品の解説なんて、できるわけないしね。
ただ、わからない、で片づけられちゃうのはもったいないので、これから観る予定の方には、作品を丁寧に観てほしい、と言いたいですね。今回の作品では、プロローグに引用されているのがヨブ記で、その後の台詞にも神云々も何度も出てきます。その点をきちんとおさえて続く場面を観ているかどうかで、その後の(ネタバレになるので書きませんが)人によっては大変にわけがわからなかったり、退屈だったりするのかもしれない、一連の場面の意味がずいぶん変わってくるし、ラストの印象もずいぶん変わるでしょう。
あと、テレンス・マリックは映像美の人、とことん「絵」にこだわる人なので、一見、つなぎに使われているだけに思えてしまうようなシーンにも、いろいろなものが込められていたりします。そういうのをくみ取りながら観ると、「わからない」の度合いは変わってきそうな気がします。
ただ、テレンス・マリック作品に流れている時間の感じって独特なので、丁寧に観ろとか絵がのどうといっても、そもそもリズムが合わない人にはつらいのかもしれませんね。『シン・レッド・ライン』も、ぼくは個人的にいい映画だと思いましたが、これだって、戦争映画としては、ずいぶん牧歌的だからなあ(これは1998年作品ですが、この同じ年、『プライベート・ライアン』が現れて、戦争映画の戦闘描写を根本から変えてしまったことを考えると、よけいに)。映像の美しさが印象に残るなんて、他の戦争映画ではあんまりあり得ないことですからね。
……すみません、例によって脱線してます。まあ、わかったようなわからないような、えらそうなこと書いてますが、ぼくだって、テレンス・マリック作品、とくに今回の『ツリー・オブ・ライフ』をどんだけくみとれてるかなんて、わかりませんけどね(苦笑)。
【“これはたしかに賛否が分かれそう……映画『ツリー・オブ・ライフ』”の続きを読む】
昨日は、横浜で、ちょっと変わった飲み会に参加してきましたよ。ある書店さんを訪問したときに、そのお店の造りやスペースの使い方、棚の分類などについて、ツイッター上の書店・出版関係の知り合いとやりとりしたことがあるんです。よく考えたら、ほんと、よけいなお世話以外の何物でもないんですが、当のお店の人も乗ってくださったので、よし、じゃあ、みんなでお店を見に行って、その後で飲みながら、お店をどんなふうにしたらいいか、いろいろ話そう、なんてことになったのでした。
どのお店の話で、どんな話になったかはここでは省略しますが、書店のことを真剣に考えている人がこんなにたくさんいるんだ、ということ、そして、そういう人たちが集まると、初めてかそれに近い関係であっても、まったく問題なく話が盛り上がってしまうことに、なんかぐっときてしまいましたよ。楽しい会でした。
さて、その用事が横浜だったので、それだけのために行くのはもったいない、ということで、貧乏性のぼくは、前回の神奈川書店回りで回れなかったお店をチェックすべく、ちょっと早めに出て横浜駅周辺のお店を見てきましたよ。
……となるはずだったんですが、横浜駅周辺だけでも、けっこうな数の書店があるんですよね。しかも、大型のターミナル駅周辺はどこもそうなんですが、駅の出口が違うと、けっこう離れていたりするもので、短時間では回れないんですね。ふだんから書店回っているくせに、そんな当たり前のことを放念していたうえに、昨日は、この夏最高の暑さなどと言われた猛暑日。そりゃあ、短時間で複数店舗回れないよね。
というわけで、チェックできたのは2店だけ。まずは、有隣堂横浜西口店。ところで、このお店、正式な店舗名称は、「有隣堂横浜西口店」で、それぞれの売り場に、「ザ・ダイヤモンド書籍売場」とか「エキニア横浜書籍売場」とか、ブロックの名前がついている、という理解でいいのかな(お店で配られている「各売場・レジのご案内」↓ではそうなっている。でも、サイトでは、「横浜駅西口ザ・ダイヤモンド店」が独立店舗扱いだな。うーん)。まあ、こまかいことはともかく、西口地下の売場をひと通り見てきましたよ。
ここは、何度も来ているお店なんですが、じっくり見るのは久しぶり。やー、ここはいつ来ても活気があっていいなあ。と、楽しく見ていたら、あっという間に30分以上経過、ここで時間をとられてしまって、他を見ることができなくなってしまいました。それほど、うろうろしていてあきないお店です。
文芸書の売場は、文庫も単行本もPOPがいっぱい。『書店ポップ術』シリーズ2点の著書をお持ちの、POP術師、梅原潤一さんの手になるものがとにかくたくさん並んでいます。ご本人もいらっしゃったので、思わずぺこりと会釈しちゃったりしたんですがが、こちらはいろんな書店関連の記事や著書でお顔を拝見していて勝手に知ってる気になっているだけで、面識はゼロ。変な客だと思われたに違いありません。ちなみに、ご本人の著書2点も、POP付きで面陳になっていました。破格の扱い(笑)。いいなあ。その、ポップ術のある棚には、本の本が並んでいました。点数こそわずかですが、地下商店街の立地のこの規模のお店なら、スルーされそうな本(たとえば、論創社の小田さんのシリーズとか)がいくつも並んでいて、ちょっとうれしくなります。
通路側、雑誌が並ぶあたりは、女子のみなさんがずらり(上の写真参照)。中に入って、店内中央の、ちょっと広い通路のあたりは、ビジネス書の棚ということで、おじさんたちがずらり。同じお店なのに、通路をはさむだけで見事に「色」が違っていて、見ていて楽しい。そのビジネスの棚、「経営・経済」は当たり前として、「貿易・株」なんて区分があるあたりが、横浜っぽいというか、さすが有隣堂というか。
文芸関係では、ポケミスベストランキングのコーナーも目を引きました。直木賞も大々的にフィーチャーされていましたが、その下の一段が佐藤泰志にあてられていたのがちょっとうれしい。梅原さんのおすすめPOPがついている本は、エンタメ系のフィクションが多いようですが、売り場全体として見ると、こうして地味目の純文にも、海外文学にもちゃんとスポットがそれぞれにふさわしいかたちであてられていて、いろんな趣味のお客さんの関心を引く工夫がされていることが、よくわかります。
これは、過去に訪問したときには気づかなかったので、もしかしたら最近のことなのかもしれませんが、おもしろかったのは、アイドルの写真集の売り方。写真集のコーナ-、というほど棚は割かれていなくて、タレント本・芸能本の一画という感じなんですが、そこには現物は並んでいなくて、表紙のカラーコピーを厚紙の台紙にはってビニールをかけたような、手作りっぽい「見本」が並んでいるのです。現物ほどは場所をとらないので、狭いスペースにたくさん置くことができます(実際、雑誌の面差し棚のような置かれた方になっていました)。メジャーなタイトル(がどれなのかは、よくわからないんだけど)は、ちゃんと平積みになっています。万引き防止+スペースの効率的な活用、ということなんでしょうか。初めて見た並べ方なので、印象に残りました(ぼくが、写真集に弱いので、知らないだけで、ごくふつうの売り方なんだとしたら、すみません)。
【“またまた横浜の書店を見てきましたよ……有隣堂西口、リブロ相鉄ジョイナス”の続きを読む】
あさって、日曜日から2泊で、大阪・京都に行ってきます。残念ながら、今回も仕事です。月火は朝から夕方までの用事で、自由になる時間は日曜の午後数時間だけ。今回は、書店回りの時間もあんまり取れなさそう。
というわけで、今回は欲張らないことにして、去年から今年にかけてできた新店のうち、まだ訪問できていなかったお店、茶屋町のスタンダードブックストアと、ルクアの三省堂書店ルクア大阪店、この2店を中心に見てこようと思います。あ、もちろん、先日の記事で取りあげた、年末に閉店の決まった旭屋書店本店もね。現在の姿、今のうちにしっかり見ておかないとね。「おすすめ本処かわら版」も忘れずにもらってこなくては。
あと、泊まりが京都だから、京都のお店も見たいけど、夕方まで用事ありだから、むずかしいかなあ。せめて、FUTABA+京都マルイ店と大垣書店のイオンモールKYOTO店と京都ヨドバシ店だけでも……月曜の夕方~夜の2時間ほどでは無理かなあ。
とりたてて旅行好きなほうではない、というか、ぜんぜん旅行しなくても大丈夫、というスーパーインドア派で、よほどのきっかけがないと、自分から旅に出たりすることのないぼくのようなタイプにとっては、たとえ自由時間が少ないとはいえ、出張があると、ふだん行けないお店に行けたりしていいんですよね。
さて、これから道中の本を選ばなくちゃ。2泊かあ。何冊持っていくか悩むよね。2冊じゃ足りない気がする。でも、今回は、日曜日は、仕事の用事なしの私用&フリーの半日だから、好きに買い物できるからね。少なめにして、あちらの書店で買うほうが書店巡りの楽しみも増えていいんだけど、もしも行きの新幹線の途中で読み終わっちゃったりしたら大事だからなあ(そんなことは、ここ数年の出張で一度もないんだけどね;苦笑)。あと、ノリが合わなかったりすることもあるからなあ(好きな作家の未読か再読作品を持っていけばいいんだけどね)。保険にあと1冊、足しておこう。
旅の前は、この選書がいちばん楽しいんだよね。旅の選書が終わったら、もう旅なんて8割ぐらい終わったようなものだもんね(笑)。
さすがに、この時間に帰ってきて、これからブログの記事を書くのはしんどいんですが、今日のうちにあげておきたい件がいくつかあるので、ちょっとがんばります。
まずは、新刊書店のオープン関連のこちら。蔦谷書店(TSUTAYA BOOKS)がこの秋、代官山にオープンする新店の募集、なんと、朝日新聞に全面広告が出てましたね。
過去にも、丸善/ジュンクの新店で新聞に全面広告が出たことがあり、この空犬通信でも、めずらしい例として取り上げたことがありましたが、それらは、オープンの告知です。今回のように、新刊書店の求人で全面広告というのは、きわめてめずらしいケース、いや、もしかしたら初めてのことではないでしょうか。
応募はWEBエントリーとのことで、説明会のサイトも立ち上がっています。「代官山 蔦屋書店 TSUTAYA BOOKS 採用説明会」。募集職種は書店員だけではなく、複数の業種・職種があがっていますから、ご興味のある方は、サイトをチェックしてみてはいかが。
オープンは、今年の11月。新聞広告には、住所が載っていませんが、求人サイトによれば、住所は「東京都渋谷区猿楽町17」で、代官山駅徒歩5分とありました。詳細、気になりますね。また何かわかったら、記事で取りあげます。
開店・閉店関連ではこれも気になります。「新文化」の8/11号に、「ジュンク堂書店/新宿店は継続か? 工藤会長“再出店”への含み示唆」という記事が出ましたね。
開店関連は、その商業施設/テナントだけでなく、周辺の商圏への影響が大きいことから、報道がぎりぎりになることもしばしば。今回のように、まだ確定ではないという段階で、こういうコメントが業界紙の記事として文章化されるのは、異例のことと言っていいでしょう。残る方向に決まりつつあるのか、談話を出しても大丈夫という「何か」があったんでしょうか。
同店には知り合いや仲良しもいるし、個人的に、大型店のなかで、そしてジュンクのお店のなかでも好きなお店の1つです。今後がどうなるのか、アルコット閉館の報道以来、ずっと注目しています。お店にとっても、周囲の商圏にとっても、新宿を利用する本好きにとっても、とにかく、みんなにとっていいかたちになるといいですよね。
最後は、これ。昨日、ツイッターで知った情報です。大ショックです。なんと、梅田にある老舗大型新刊書店の1つ、旭屋書店本店が、今年12月末で閉店になるというのです。な、なんと……。
8/12付けの「本店ビル建替えによる閉店のお知らせ」なる貼り紙が、旭屋書店本店の店頭に出ているそうです。貼り紙の写真はこちら。
貼り紙によれば、同店は、ビルの老朽化のため、平成23年12月末を持って閉店。建て替え工事を行い、平成27年春に竣工予定、とのことです。なんと、約3年もの間、旭屋書店本店がなくなってしまうことになるとは……。仮店舗営業もないのでしょうか。だとしたら、それはお店にとって、とても大変なことでしょうし、利用者である我々本好きにとっても、ショックすぎるなあ……。
【“蔦谷代官山、ジュンク新宿、旭屋梅田……新刊書店開店閉店いろいろ”の続きを読む】
終日ゲラ(校正刷)と格闘、やっと終わって、残業後に何をするのかと思ったら古本かよと、そちらの方面に関心のない方(が、この駄ブログを見ているとも思えませんが)が聞いたら確実にあきれられそうですが、今日は会社帰りに渋谷東急の大古本市に行ってきましたよ。
以前の記事で、都内のデパートで開催される古本市、3つを紹介しました。
以前に比べて、すっかり少なくなってしまったとはいえ、まだこうして、それなりに規模の大きい古本市が都心で3つも開催されているですから、喜ばないといけませんよね。ひと昔前は夏休み時期だけで古本市がいくつもあったなんて、今となっては信じられませんよね。新宿だけで、伊勢丹・小田急・京王と、ひと夏に3つも古本市が開催されていたことがあるんですよ。ぼくよりも下の古本好きだと知らないかもしれませんが、そんな時期がほんとにあったんですよ、古本者の妄想とか願望とかじゃなくて。
さて。昔話はおいといて。古本市、今年の収穫ですが、3つのうち、新宿京王はなんと忙しくて行きそびれてしまいました(泣)。池袋リブロは「当たり」でけっこうたくさん買いものができましたが、今日の東急は閉店前の1時間ほどと短時間だったせいもあってか、ほとんど買い物できず、という感じでした。
今日の東急もね、欲しい本がなかったというわけではないんですよね。それこそ、西村文生堂やアート文庫の高額商品には、探偵者なら魂と引き換えでもいいと思えそうな本たちがいっぱいありますからね。もちろん、いつもガラスケースを、ため息つきながら眺めるだけ……。はあ……。
天変地異でも起きて、明日、突然大金持ちになったら、これらの稀少本、全部買い占めたいよね。……いや、いっぺんに買ってしまったら、つまらない。だって、もう買い物できないもの(苦笑)。置く場所もないしね。って、ああ、もう大富豪だから、その問題はいいのか。とにかく。ほんとの大金持ちになったら、お店の在庫をまるごと売ってもらうことにしよう。っていうか、戦前探偵とかSF、幻想に強いお店数店を、お店ごと、中の人ごと買っちゃうのはどうか。
中の商品はすべてもう自分のものなんだけど、今まで通り、店に置いておいて、店も開けてもらうのね。ただ、ふつうのお客さんは入れなくて、空犬だけが入れると。それで、ぼくはどうするかとういと、たまに(毎月1回)、お店を訪問するのね。事前に、ぼくの指示で、戦前探偵もの古書の世界を代表する名品たちが、超お買い得価格に、値付けされ直されてるわけ。ただ本を抜くだけじゃつまらないから、やっぱり買い物したいからね。で、ぼくが棚を見ると、「うわ、蘭郁二郎の『脳波操縦士』がなぜか1000円で売ってる!」とかね、「乱歩の署名本、300円均一棚でみっけ!」とかね、「シナリオ悪霊島が、3冊100円の箱にあったー!」とかね、次々に見つかるわけ。でも、あんまりそういうのばかりだと、一日でその店のめぼしい商品がなくなっちゃうから、そこは、各店の店主に工夫してもらうのね。こうして、ぼくは死ぬまで、毎月どこかしらの自分のお店で、超稀少&高額探偵本たちのウルトラ激安掘り出し本に、「必ず」出会えるの。……なんて幸せな古本人生なんだっ! たまに、自分のお店の商品集めて、古本市とかも開きたいよね。もちろん、大富豪だから、デパートの催事場も簡単に借りられるはず。そうだ、伊勢丹の催事場を借りて、なつかしの伊勢丹の古本市を再開しよう。そしたら、もう古本者、大喜びだよね。
……し、失礼しました。いったい、何書いてんだ……。さて、そんな妄想はさておき。一応、池袋と渋谷でのリアルな収穫(の一部)を紹介しておきますね。まずは、池袋から。(*以下、雑本ばかりで、めずらしいものはありません。念のため。)
↑毎年、1冊ぐらいはえいやと高いのを、ってことで、今年は目録買いのこれ。香山滋『秘境の女』(小壺天書房)。ぼくはコレクターではないんですが、香山滋だけは、3桁、4桁で買えるものはとりあえずそろえたいな、と。教養文庫も、それこそ全集も持ってるんだけどね(苦笑)。
↑映画本は下手に手を出すときりがないし、仮にジャンルを絞ったとしても、集めようなんて思うと大変なことになるので、適当に取捨選択しながらではあるのだけれど、特撮・SF・ホラー関連は、目についたら買ってます。この石崎浩一郎『映像の魔術師たち 恐怖幻想映画論』(三一書房)は古本屋でふつうに見かけるけど、なんとなく買いそびれてたもの。とてもレアな本とも、内容の突出したものとも思えないけど、神保町の某店ではものすごい値段がついてたっけなあ。
↑前から好きだったけど、『昔日の客』効果というかなんというか、最近(というかこの1年ほど)は大森文士関連も気になって、未所有本を見かけると買ってします。尾崎一雄『楠ノ木の箱』(講談社)。ほんと、ひと昔前の文芸書はたたずまいがいいよね。
↑たたずまいと言えば、ひと昔前の文芸新書もいいんだよね。いまは、新書判で文芸ものって、ノベルスをのぞけばuブックスぐらいしかないけれど、昔、昭和30年代ぐらいまでかな、はいろいろ出てましたよね。その頃の新書判文芸もので、文庫で読めないものが安価で見つかったりすると、とってもうれしい。これは梅崎春生『限りなき舞踏』(東方社)。表紙がいいでしょ。
表紙がいい文芸ものと言えば、文庫にもいいのがあって、結局、迷って買わなかったけど、獅子文六の『青春怪談』(角川文庫)は表紙画がよかったなあ。この作品は新潮文庫版もあるけれど、カバーがいいのは角川版。でも、これ、角川文庫でカバー違いを持ってるんですよね。リブロで見つけた版は表紙の書体が旧字だったので、途中で改装されたんでしょうか。角川横溝じゃあるまいし、別にカバー違いで持っておくほど、好きでもないしなあ(苦笑)。安く見つかる古本なので、気になる方はチェックを。
【“夏の3大デパート古本市、今年の結果報告です”の続きを読む】
いまさらな感じなんですが、コーネル・デュプリーのことを書きます。
- 『ギターマガジン』2011年8月号(リットーミュージック)
↑『ギター・マガジン』8月号の表紙。ピックガードをはずしたおなじみのテレキャスを抱えたコーネルの姿はもうかっこよすぎ……。
コーネル・デュプリーが亡くなったのは、5/8。訃報を聞いた直後は、ショックが大きすぎて、記事で取りあげられずにいました。というのも、このコーネル・デュプリーというギタリストは、ブラックミュージックが大好き、かつ、愛用のギターがテレキャスターである空犬にとって、まさに神様のようなギタリストの1人なのです。『ティージン』をはじめとする一連のリーダー作、参加作など何枚あるんだかわからない関連アルバム群はもちろん、本人名義の唯一の教則本もバイブルでした。
『ギターマガジン』のコーネル・デュプリーの特集は、マヂでたまらんです。インタビューからの抜粋の語録もいい。参加作がたくさんありすぎてファンでも聞き漏らしがあるはずだから、ディスクガイドと参加作のリストもありがたい。テレキャス弾きは全員必読。
訃報記事はいろいろありますが、短い文章のなかにコーネル愛がよくあらわれたこれを引いておきましょう。「訃報 コーネル・デュプリー」(5/10 HMV Online)。
もう3か月も経っているのに今読み返すと、最後の《先に天国に旅立ったスタッフのリチャード・ティー、エリック・ゲイルと共に素敵なセッションを繰り広げている事を願ってやみません。 》のくだりなんて、涙出てくるものなあ。ほんとにそんなふうにしてそうで。ぼくも、いざあっちへ行くことになったら、やっぱりギター抱えていかないとなあ。
◆今日のBGM◆
なんかAmazonには大変厳しいレビューもあがってるみたいですが、でも、やっぱりファンとしては聴いておきたい1枚。そりゃあ、たしかに往年のキレはないかもしれないけど、でも、ずっとファンとして追っかけてきたミュージシャンの遺作の聴き方って、あると思うんですよ。全盛期と比べたってしかたないですからね。ぼくは、これはこれで楽しんで聞けましたよ。
『図鑑少年』という本がある。24の短篇が収められた本で、その表題作には、文字通り、図鑑少年が登場するのだけれど、男の子が図鑑大好きという単純な話ではない。本の紹介文に、《名も知れぬ人々が暮らす都市という空間、そこに無数に潜む事件のきざし……日常のこわれやすさ、出会いの切なさ、そして生きることの儚さが、豊かな陰影で綴られたストーリーの中から浮かび上がってくる》とあるように、ちょっと不思議な味わいをもついい本で、たまに棚から引っ張りだす。
中身がいいのはもちろんなんだけど、でも、この本が気になるのは、やっぱりこのタイトル(と、ついでに言えば、装丁も、なんだよね。中公文庫版は、堀江敏幸という、テイストの似た書き手によるすばらしい解説を得て、装丁といい、文庫のレーベルといい、理想的といっていい組み合わせで文庫化がされていて、もちろん文庫版もすばらしいのだけれど、でも、やっぱりこの本は、親本をおしたい、というのは、この本の造りが中身にぴったり合ってるからなんだよね、と脱線)がいいからなんだよね。
ちょっと前の記事だけど、8/6(土)、朝日新聞の別刷り「be」に「売れ筋拝見」が「子どもの図鑑 ユニークな編集で人気を集める」という記事が載っていましたね。ぼくはかつて図鑑少年だったし、今も児童向けの図鑑を、子どもと同じかそれ以上に楽しめるぐらいの図鑑好きなので、この記事、興味深く読みましたよ。
売れ筋としてあがっているのは、『講談社の動く図鑑MOVE』『小学館の図鑑NEOぷらす』『新ポケット版学研の図鑑』の各シリーズから6点。恐竜に虫に星にって、いまも昔も子どもが好きなものは同じなんだなあ、と思ってランキングを眺めてたんですが、かつてと違うのは、小学館の『もっとくらべる図鑑』『ふしぎの図鑑』といった、従来の生き物の種別の図鑑とは切り口のまったく異なるものが上位に入っていること。これ、おもしろいよね。おとなが読んでも。大好きな図鑑です。前者も好きだけど、後者がこれまた、よくできてるよねえ。
あと、かつてと違うという意味では、『講談社の動く図鑑MOVE』。副題の通り、動画(DVD)がついた図鑑。これまで、図鑑に音声CDがついたものはあったけど、DVDがついたものってなかったのかな。なんでも動画にすればいいってものではないけれど、でも、生き物、とくに恐竜が動いているところを見られるとなると、やっぱり見たくなりますよね。
いずれもすてきな工夫に満ちた本で、元図鑑少年の大人でも楽しめそう。夏休みだし、親子読書にいかが。
ところで。おもしろそう、見たい、などと書いておいてなんなんだけど、でもね、図鑑って、動かなくていいんだよなあと、一方では思います。っていうか、図鑑は、動かないのがいいんだよね、と。
だってね、DVDで動画なんかつけて、動くようにしたら、動いちゃうじゃん、絵が。動かないから、じっくり見られるから、いいんだよ、図鑑って。
子どもが一心になにか集中してるさまを、飽かずに眺める、なんて言うけど、子どもってほんとにそういうふうに本を「見る」んだよね。ぼくもそうだったと思うし、見る本によっては、今もそうなんだろうと思う。そういう、本に穴があくほどじっくり見たい「図鑑少年」にとってはね、図鑑は、動かないのがいいんだよ。だって、じっくり見たいもの。
図鑑って、ベストショットの集成なんだよね。今回の記事でとりあげられているような、恐竜や動物や宇宙や乗り物の図鑑もそうだし、あと、男の子たちの大好きなウルトラ怪獣図鑑とか、ライダー怪人図鑑のたぐい、あるじゃない? あれもまさにそう。ああいう怪獣怪人ものって、それこそテレビ録画でもDVDでも、動画で見ればいい、って思うかもしれないんだけど、番組本編の動く怪獣怪人たちと、図鑑とか、カードになったものとかって、は別なんだよね。
ある動物なり、恐竜なり、怪獣なり怪人なりを、図版1カットと、わずかな説明文で伝えるって、まさに「編集」力を問われること。図版の選び方、説明の与え方で、その生物なり天体なり怪獣なりのイメージって、まったく違うものになってしまう。それこそ、まさに作り手の力がもっとも試されるところなんだよね。そうした工夫なり苦労なりの集大成が図鑑なんだとしたら、それは、動かなくていいと思うんだよね。そのベストショットを、じっくりと眺めたいと、そう思うから。
……なんて、えらそうな図鑑論、ぶってみたけど、でも、たぶん買うと思うけどね、動く恐竜図鑑(苦笑)。でも、これから初めて図鑑を買う方、とくに、お子さんに図鑑を与える方には、ぜひともオーソドックスな、動かない図鑑を買ってあげてほしいなと、そんな気もするのです。
【“ほんと、図鑑っておもしろいよね”の続きを読む】
発売前から楽しみにしていたこの本、やっぱりおもしろかったなあ。
シリーズ既刊の読者には説明不要ですね。『本棚探偵の冒険』『本棚探偵の回想』に続く、本棚探偵シリーズ、実に7年ぶりの新刊です。毎回、凝った造本で楽しませてくれるこのシリーズ、今回は、函入りで2巻組。さらに、月報は切ってたたむと豆本になるという仕様。ほんと、ふつうの函入り本でさえ新刊文芸書ではめったにないこのご時世に、ここまでやるか、という凝りよう。すごいなあ。
本の造りだけではなく、中身のほうも、本好き、とくに古本が好きな人なら楽しめるものになっている点も、これまで同様。言及される本や作家は、探偵小説・ミステリー関連が多いんですが、この分野にさほど知識や興味がなくても楽しめそうな中身になっています。というのも、この本棚探偵シリーズがおもしろいのは、どの作家のどの作品がおもしろいか、といったガイド、作品案内的な文章がほとんどないことなんですよね。
で、何が書かれているかというと、本と書店(主に古本屋さん)をどう楽しむか、というネタが満載なんですよ。本棚を自作したり、豆本を作ったり、函入りでない本の函を作ったり、ポケミスをそろえるために書店を回ったり、中央線の古本屋さんをマラソンで回ったり、古本を求めてあっちにいったりこっちにいったり……とにかく、喜国さんとそのお仲間のみなさんが、本を徹底的に楽しむ様子が描かれていて、それがまた実に楽しそうなんですよ。いいなあ、こういうの。
ぼくはこのシリーズのそういうノリが大好きで、既刊2点も、何度も読み返しているんですが、この3冊目も、棚から何度も何度も取り出すことになりそうです。シリーズ1冊目、『本棚探偵の冒険』の双葉文庫版を、ルーエの夏文庫フェアに選んだとき、こんな紹介文を書きました。
《「本“を”楽しむ」のはあたりまえ、
「本“で”楽しむ」ことができてこそ、ほんとの読書人、なのかも
……この本を読むとそんなふうに思えてきます。
探偵小説/ミステリー好きはもちろん、そうでない方も楽しめる、オトナの遊び心に満ちた、本/古本をめぐるエッセイの隠れた名作。本書が気に入った人は、ぜひ親本、それも初版本を探してみてください。著者の「遊び心」を堪能できる1冊です。》
この紹介文は、『生還』にもそのまま流用したいですね。広く本好きにおすすめしたい1冊です。
ところで。今回の『本棚探偵の生還』、サイン会に参加してきたのでした。簡単に様子をレポートしておきましょう。サイン会は、8/5(金)、ジュンク堂書店池袋本店で行われました。
↑店頭告知ポスター。
↑喜国さんのサイン、ゲット。わーい。大好きなシリーズの1冊が、サイン本になるというのは、ほんと、うれしいなあ。
↑サイン会で配布されていた限定小冊子。こういうのがあるとうれしいよね。
【“ライフワークにしてほしい……『本棚探偵の生還』はやっぱりおもしろい!”の続きを読む】
残業でへとへと、会社帰りにちょっと書店に寄ったら、こんな時間。飲んできたわけでも、映画のレイトショーを観てきたわけでもないのになあ。こんな日はブログの更新もサボりたいところですが、今日は、我が街、吉祥寺の書店事情に影響がありそうなこの件についてどうしても書いておかなくちゃ。
以前の記事で紹介済みですが、JR吉祥寺駅の南口側にあったブックオフが、北口側に移転、「ブックオフ吉祥寺駅北口店」として、本日新装オープンとなりました。早速チェックしてきましたよ。
↑昨日の、朝日新聞武蔵野版に入っていたチラシ。「リプレイスオープン」って、なんか違うぞ(苦笑)。
↑こういうときかぎってデジカメを忘れてしまった……。iPhoneで撮ったら、まっくらで何がなにやらわからない……。ルーエの左脇の路地を撮ったもの。ルーエの看板「本」は節電で消えているので、写真ではほとんど見えませんが、まあ、要するにとっても近い、ってことです。歩いて30秒という感じ。
↑入り口は二方に開いていて、こちらが正面入り口のよう。向かいはABC。ここ、歩道が狭いんですよね。自転車客が、この歩道や、上の写真の、ルーエの脇の道路に長時間駐輪したりしないか、心配。
ご覧の通り、ルーエのすぐそばです。ほんとに近い。別に、新古書店があってもかまいません。ぼくだって、好きではないが利用することがまったくないわけではない。吉祥寺ぐらいの街なら、ないほうがおかしいぐらいだし。元の場所なら、ぜんぜん問題なかったんですよね。移転するのはけっこうだけど、何も、新刊書店の真裏に来なくなって……。昨年はジュンク、今度はブックオフ……ルーエにとっては試練が続きます。
で、そのお店の様子ですが、特筆すべきはないですね。《広さも在庫も1.5倍》をうたっていますが、たしかに、フロアは4フロア(以前の記事では3フロアとしていましたが、4フロアでした)になり、床面積的には広くなった感じです。ただ、在庫は、前の店の様子を見ている目には、増えたなあ、充実したなあ、という感じは別にないですね。以前のものはそのまま持ってきてるんでしょうし、それほど新しいものが追加された感じは(もちろん広くなった分、追加はしているんでしょうが、全体の印象として、という意味では)ありません。
4フロアは、下から、1階が実用書・ゲーム、2階が文芸書・文庫・新書・雑誌、3階がDVD・CD・コミック・児童書、4階がコミック・写真集。前の店は2フロアで店内移動は階段だけでしたが、今回のビルはエレベータがあります。今日は1、2階だけのぞいてきましたが、それなりにお客さんは入っていましたね。
気になる新刊書店、なかでも直近のルーエへの影響がどうなるのかが、吉祥寺書店員の会の一員であり、書店を心から愛する書店応援派としては大変気になるところ。お店をのぞいてきた印象の報告がてら、ルーエのS店長とちょっとおしゃべりしてきました。数字的には、それほど大きな変化はなかったそうです。ただ、昼前にSさんがのぞいたところ、平日の昼間にこんなに!というぐらい客が入っていたといいますから、初日だけでは判断できませんよね。また、吉祥寺の場合、平日人口と休日人口の差が激しいので、土日がどうなるのかも気になるところ。
客層にも変化はあるでしょうね。これまで、ルーエを利用していたお客さんのなかに、少しでも安いほうが、ということであちらに流れる人は当然出てくるでしょう。駅の向こうまで行くのは面倒だけど、すぐそこなら、という感じで。ルーエで本をチェックして、買うのはより安いほうで、と。あとは、やはり万引きの件も心配です。ルーエで抜いた本をすぐ隣で売らないだろう、というご意見もいただきましたが、そういうことが平気で行われている(らしい)という話も複数聞きますからね。決してないとは言い切れないでしょう。
差し障りがあるといけないので、詳述は避けますが、実際今日も、これまで見たことないような、ちょっと驚くようなお客さんがお店に来たという話も、S店長から聞きました(古本屋さんがそばにできたために来たとしか思えないタイプの客です)。こういうのを聞くと、ほんとに心配になります……。
というようなことを、S店長と、それから花本くんと話しているうちに、すっかり話し込んでしまって、気がついたら閉店時間。ブックオフでは「もちろん」何も買わなかったので、ルーエで買い物するぞー、おー、みたいな気分で行ったのに、買い物しそびれてしまいました(苦笑)。まあ、しょっちゅう行ってるから、次に来たときに倍、買い物すればいいんだけどね(笑)。
品揃えや雰囲気はふつうのブックオフなので、その点はどうということもないのですが、なにより、立地があまりにもな今回の移転リニューアル。看板に電気がつくと、その近さにあらためて驚かされましたが、でも、こうしてお店ができてオープンしちゃった以上、気にしたってしかたないですからね。ルーエをはじめとする吉祥寺の新刊書店を利用する我々本好き書店好きとしては、これまで通り、ルーエや他の新刊書店で買い物をすればいいんだしね。
というわけで。2年連続で、直近への同業出店で大変なBOOKSルーエ、吉祥寺および近隣の本好きのみなさん、これからもどうぞよろしくお願いします。
今日は、以前の記事で予告したとおり、文庫遠足にいってきましたよ。「文庫遠足」がどのようなものかは、上のリンクの記事を見てくださいね。
今年で3回目の文庫遠足。年々、賛同者が増えて、今回はなんと8人になりましたよ。参加者は、初年度から参加のえのくん(@enomotos)とYさん、昨年に引き続いての参加のyukaさん(@yuka24)、初参加のうりさん(@kafu_kafu)、ぜみちょーさん(@zemichou)、Nさん、黒夜行さん(@tooorisugari)のみなさん。
↑木陰でくつろぐ人たち。このときは、みんな本を読んでましたが、次々に、睡魔にやられてました(笑)。もちろん、最初にやられたのがぼくであるのは言うまでもありません。
↑場所は、立川の昭和記念公園。我々がいた場所の回りはこんな感じ。写真だと、ものすごく暗い感じに見えますが、実際は、ほどよい曇り空、という感じで、とっても過ごしやすい天気でしたよ。
↑各自3冊の文庫を持ち寄り、最初におひろめ。こうして、真ん中に本を出しておいて、自由に読めるようにするのです。3冊×人数分で、一気に読む本が増えるのがこれまた楽しい。
ちなみに、今回も、本の重なりも、作家の重なりもなし。すごいよね。事前にすりあわせたり何もしてないのに。しかも、今回は、初めての顔合わせが複数、お互いの本の趣味もぜんぜん知らない人がいるのに。
何を持ち寄ったかは、全部あげなくてもいいかな。でも、参加者で記録しておきたい、という人もいたので、後日、アップするかもしれません。
↑帰りに寄ったオリオンパピルス。立川駅直結の駅ビル、グランデュオの6階にあります。すてきなお店です。お店の様子は、過去にくわしくレポートした記事があるので、よろしければそちらを。
パピルスでは、制限時間30分、上限1000円と条件を決め、みんなで買い物をしました。条件をつけるのは、そうでもしないと、本好きたちのことだから、いくらでもいられるし、いくらでも買っちゃうということになりかねないので。
で、その後、飲みにいって、お店で、買った本のお披露目会をします。これも楽しいんだよね。ふたをあけてみたら、上限1000円、って言ってたのに、みんなオーバーしてるの(笑)。まあ、パピルスで上限1000円、1冊だけ、というのは本好きには酷だよねえ。
というわけで、お昼前から、夜まで、半日を本とお酒とおしゃべりと昼寝とで、たっぷり楽しんできましたよ。本好きの大人の休日の過ごし方として、この文庫遠足、おすすめです。ぜひあちこちの本好きの間ではやらせていただきたいものです。我々も、また秋にも企画しますよ。
明日は、文庫遠足。この3日ぐらい天気が気になって気になって、天気予報サイトばっかりのぞいている空犬です。こんな日ぐらいブログ更新さぼって、早く寝ればいいようなものですが、こういう日にかぎって、いろいろ書きたいことがあるんだよね。どうせ、遠足の前の晩は眠れないものって相場が決まってるしね(笑)。
さて。今日は、午後、仕事で書店回り。渋谷、恵比寿、池袋を回ってきました。そして、仕事の書店回り終了後、ジュンク堂書店池袋本店で、昨日の記事で紹介した、喜国雅彦さんの『本棚探偵の生還』刊行記念サイン会に参加してきましたよ。
この件は、ちょっと書きたいことがあるので、記事をあらためます。
で、書店の話。今日は、書店、たくさん回りましたよー。渋谷では、ブックファースト渋谷文化村通り店、MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店、リブロ渋谷店、紀伊國屋書店渋谷店、啓文堂書店渋谷店を、恵比寿では、有隣堂アトレ恵比寿店を、池袋では東京旭屋書店池袋店、ジュンク堂書店池袋本店、リブロ池袋本店を回ってきました。ふう……。
うち、今日は、有隣堂アトレ恵比寿店のレジ前で開催されていたフェア「2011夏の小説祭り」を紹介します。ちなみに、このフェアはあくまでついでにのぞいてきたんであって、今日はちゃんと仕事してたんだからね。ほんとに。
↑店頭の写真はないので、代わりに、店頭で無料配布されているフェアの小冊子を。
冊子の表紙には、《作家・出版社員・有隣堂スタッフの有志が2011上半期に刊行された小説の中からベスト1を選び、POPにしました。》とあります。
「2011上半期に刊行された小説」というしばりだと、本好き小説好きを集めれば集めるほど、重なっちゃいそうな感じがしますが、これが見事にカラフルでバラエティに富んだセレクトになっていましたね。いやはや、さすが本を仕事にしている小説読みのみなさんは違うなあ。
フェアに自分が好きな本が並んでいるとうれしいですね。本のテイストが似ているのはどこのどなた、と、ついPOPを確認してしまいます。ちらほら知ってるお名前も。なんだ、明日の遠足仲間までいるじゃないか。
POPはすべて選者の方の手作り(って、知らないけど、そのように見える)。個性的なPOPを端から眺めていると、このコピーいいなあ、とか、デザインがいいなあ、とか、気になるものがいくつもあります。写真に撮りたいぐらいだなあ、と思いつつも、店頭でぱちぱちやるわけにいかず、あきらめて帰ってきたら、上の冊子に、POPがすべて掲載されていました。ただの選書リストかと思ってもらってきたので、家で開いてびっくりです。フェアをのぞいた方は、冊子をもらってくるのを忘れずに。
同フェアは、冊子によれば、8/21までとのこと。夏休みに読む小説をお探しの向きは、ぜひ、このお祭りをのぞきにいってみてはいかが。冊子でもPOPは確認できますが、冊子で済ませずに、ぜひカラーの実物で確認できる店頭でチェックを。
……と、えらそうに紹介してるけど、今日は残念ながら、仕事中だったし、仕事の資料やら何やらで荷物が重くて、フェアから何も買えなかったんだよなあ。ということは、必然的に再訪しなくてはならないことになりました(笑)。ちなみに、ぼくがいちばん気になった本は……これからフェアを見る方もいるでしょうから、まだ伏せておいたほうがいいですね。
昨日もBOOKSルーエでたくさん買い物したばかりだというのに、今日も会社帰りに、池袋へ繰り出し、いろいろ本を見てきましたよ。
今日の池袋行き、もちろんメインの目的は、リブロ池袋本店の「夏の古本まつり」。
しばらく前の記事で、夏といえばデパート古本市と、自分で以下の3つを紹介しておきながら、このところこ忙しかったもので、京王を失念、見逃しちゃったのです。嗚呼……。気づけば、池袋もあと2日。ということで、あわてて駆けつけてきたのです。
飛び上がって驚喜みたいな掘り出し物こそありませんでしたが、けっこう好みの本があちこちに目について、あっというまにカゴがずっしり。戦利品については、後日、ブログで紹介の予定です(あんまり重いので、配送にしちゃったから、手元にないのです)。
古本の後は、ジュンク堂とリブロにも寄ってきましたよ。ジュンク堂。9階の芸術書のフロアをのぞいたら、「夏休み手作り楽器フェア」なる、楽器好き音楽好きは足を止めずにはいられない、超楽しげなフェアが展開中。バイオリン、ギター、ウクレレといったギターの組み立てセットが売っていて、1万円前後と手頃な値段だったりするものだから、思わず衝動買いしそうになりましたよ。ほかにも、100円ショップの材料で楽器を作ろうといった本など、関連書も並んでいて、楽しいコーナーになってますよ。
3階に寄ったら、あれ、たしか8/4発売と新刊案内にはあったはずの喜国雅彦さんの『本棚探偵の生還』がもう並んでる! 早速購入。同店で8/5に行われるというサイン会の整理券ももらっちゃった。
このシリーズ、好きなんだよなあ。「冒険」も「回想」も何度も読み返してますよ。毎回造本に凝ったこのシリーズ、今回はなんと函入り2巻本ですよ(笑)。帯に《こんな時代に無謀な造本!!》って書いてあります。ほんと、無謀だよなあ。よくこんな造本で企画通ったよなあ。今晩の読書はこれに決まり。
版元のサイトから、サイン会の案内を引かせてもらいます。
8月4日(木)発売 「本棚探偵の生還」の刊行を記念致しまして下記会場にてサイン会を行います
日時:2011年8月5日(金) 18:30~
場所:ジュンク堂書店池袋本店 1階エントランス
住所:豊島区南池袋2-15-5
お問い合わせ:03-5956-6111(電話予約可)
受付方法:上記店舗にて対象書籍1冊お買い上げに対し整理券を1枚配布致します
対象書籍:「本棚探偵の生還」
サイン会は先着順にご整列して頂きます
整理券は無くなり次第、受付終了とさせて頂きます
シリーズ既刊の読者は要チェックですね。
昨日は、朝から晩までノンストップでゲラと格闘する一日、へとへとに憔悴しきって帰路についたんですが、こんなときこそ書店へ、ということで、吉祥寺のBOOKSルーエに寄ってきましたよ。
それほどごぶさたしていたわけでもないのですが、たまたま花本氏やS店長のいないときに訪ねたりが続いていたので、おしゃべりしながらゆっくりするのは久しぶり。なんだかんだで、1時間半以上、いました。長居しすぎだよね。で、買ってきたのは、こんな本たち。
- 杉作J太郎『杉作J太郎が考えたこと』(青林工藝舎)
- 高野秀行『メモリークエスト』(幻冬舎文庫)
- 三津田信三編『江戸・東京 歴史ミステリーを歩く』(PHP文庫)
- 田澤耕『ガウディ伝』(中公新書)
杉作J太郎はおもしろいなあ。イラストも写真もなし、ゆるーい文体の文章が2段組で200頁超。ノリが合う人なら、いつまででも読んでられそうな、なんかじんわり効いてくるアルコールみたいな本。飲み屋読書にぴったりだ。
探偵者におすすめしたいのが、『江戸・東京 歴史ミステリーを歩く』。空犬通信では何度も書いているとおり、ぼくは東京本、それも文庫の東京本が大好きなので、見かけると手にしてしまうんですが、この本、「歴史」「ミステリー」と、ぼくがあまり強くない、というか興味の薄いキーワードが2つも入っているので、スルーでもおかしくない本。
ところが、目次を開いてみると、岡本綺堂を取り上げた章はあるし、「乱歩の東京幻想空間を彷徨う」なんて章(書き手は、編者の三津田信三さん)はあるし、紀田順一郎さんによる「古本屋探偵、神田神保町に現わる」なんて章まで。これは買わないわけにはいきませんよね。『ワールド・ミステリー・ツアー』というシリーズの文庫化だそうですが、親本はまったく知らなかったので、ちょっとうれしい出会いです。
↑階段の踊り場のウインドウは、8/1からこのような感じになっています。芸術新聞社の新刊、齋藤芽生『徒花図鑑』がご覧の通り、大フィーチャー。よほど芸術関連雑誌のバックナンバーが充実している大型書店でもないかぎり店頭で目にする機会のない月刊誌『アート・トップ』のバックナンバーもずらり。
《本書は、絵画と同時に日々書きためている作者の詩文も収録しています。まだ37歳の作者があたかも幼い頃からのいままでの人生の旅路で拾い集め、再構成した、絵画と言葉を「図鑑」として仕立て上げた、画集であり詩文集です。》(サイトより)という本書。中身はサイトでも一部見られますが、やはり店頭で見ると、迫力や印象が違いますよ。花本氏いちおしのこの本、今月いっぱいの展示のようですので、ぜひルーエ店頭でご確認ください。
↑芸術書の平台にはサイン本も。
↑フェア台では、花本氏渾身のフェア「将棋浪漫」が展開中。ただ、残念ながら、あんまり売れていないのだとか(苦笑)。さすがに将棋だと、ぼくが抜ける本もありません。小川洋子のチェス小説は持ってるしなあ。フリペ(選書リスト)もありますよ。将棋好きのみなさん、将棋に興味はあるけどよく知らないというみなさん、ぜひこのフェアをチェックしにきてください。フェアの時期は未定で、あんまり売れないと早めに片づけちゃうかも(涙)と、花本氏。
【“杉作J、メモリークエスト、江戸東京、ガウディ……ルーエで買った本たち。”の続きを読む】
書店の開店・閉店関連のニュース、続きです。
まずは、書原新橋閉店のニュースから。お店のサイトには、このような告知文があがっています。《この度、新橋店は、平成23年7月15日を以って閉店することと相成りました。今までご愛顧いただいた皆様には長年にわたるご厚情に心より感謝申し上げます。閉店により、皆様にご迷惑おかけすることを深くお詫び申し上げます。尚、ご連絡事項等ございましたら、 霞ヶ関店及び他店にご連絡いただければ幸いに存じます。今後とも変わらぬご支援をよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。》
書原は、今年になって高幡不動店が閉店していますが、今度は新橋店が……。都内の閉店話は、こうした中小規模のお店のことが多く、ほんと、書店好きとしてはなかなかつらいです……。次の茗溪堂もそうですよね。この知らせには驚きました。
《突然ですが、2011年7月21日をもちまして、茗溪堂お茶の水店は、しばらくの間閉店休業させていただきます。小売部門休業で、出版関係は続けますので宜しくお願いいたします。/長い間のご愛顧ありがとうございました。再びお目にかかれる日を楽しみにして居ります。》
休業とのことで、完全な閉店、廃業ということではないようですが、それでも、昨今の出版・書店をとりまく状況を考えると、入っていた商業施設の改装や移転などで、リニューアルオープンが決まっているようなケースをのぞくと、一度閉めてしまった単独の店舗がふたたびオープンするのはかなり大変なことのはず。
同店は、《山や自然の本と「本の雑誌」の仲間たちの本を扱う》お店ということで、山岳本に縁のない身としてはそれほど熱心に利用していたわけではありません。とくに、閉店時の場所(楽器屋さんの入っているビルの3階)に移ってしまってからは、ほとんど足を踏み入れたことはなかったのですが、その前、路面店だったときには、何度も雑誌や文庫を買ったものです。御茶ノ水駅を利用している本好きにとっては、たとえ山の本にそれほど興味はなくても、なじみ深いお店の1つでしたよね。ぜひ「再びお目にかかれる」ようになるといいですね。
【“書原新橋、茗溪堂お茶の水、りーぶる天神……新刊書店の開店閉店いろいろ”の続きを読む】
先日の記事でリストアップだけしておいた、書店の開店・閉店に関するあれこれ。後日補足といいながら、ほったらかしですみません。さらに追加したうえで、それぞれにちょっと補足したいと思います。長いです。
まずは北海道・北見の福村書店の件から。《【北見】北見の書籍販売の老舗、福村書店(下斗米ミチ社長)は6日、事業を停止し、事後処理を弁護士に一任した。近く釧路地裁北見支部に自己破産を申請する。信用調査会社の東亜リサーチ(北見)によると、負債総額は約5億6千万円の見込み。》
創業は昭和23年ですから、半世紀以上続いていたお店だったんですね。北見には、この空犬通信でも紹介済みですが、コーチャンフォーの新規開店が決まっています。
次は、モスバーガーの件。《モスバーガーを展開するモスフードサービスは21日、セルフスタイルのコーヒーショップ『MOSUCO(モスコ)』を新たに展開すると発表した。30日に東武東上線成増駅構内に1号店をオープンし、駅構内や空港、書店併設など、今までモスバーガー店舗の出店が少なかった場所を中心に、2012年度までに5店舗の出店を目指し、検証を行っていく。》
気になるのは、この「書店併設」の部分ですよね。どんなふうになるのかなあ。などとツイッターでつぶやいたら、いろいろ反応があって、「スタバに対抗するのか」などといった意見のほか、「飲食店併設の本屋では買う気が起きない」「本が心配」「手が汚れそう」といった、飲食と書店が共存するブックカフェスタイル自体に抵抗があるという意見も。あと、書店部分はどこかと組むことになるのでしょうから、どの書店か、というのが気になりますよね。
次は、いろいろな意味で今年も話題のたえないジュンク関連を。
《書店大手のジュンク堂書店(本社・神戸市)が10月中旬、甲府市の岡島百貨店に進出する。売り場面積約2600平方メートルは県内書店で最大。会社設立75周年を迎え、集客力を改善したい岡島が、専門書の品ぞろえに定評があるジュンク堂側に出店を打診していた。》
記事にもあるとおり、甲信地区初出店となる今回の件。2600平米と言えば、坪換算で約780坪。これは、3月にオープンした博多の丸善と同レベルですよ。九州の「玄関」で、商圏の規模や勢いの点でもずっと上と思われる博多はともかく、甲府に800坪弱? うーん、大丈夫なのかなあ……。
《今秋にある岡島の大型改装に合わせて撤退する6階の三省堂書店(東京)の後継テナントだが、売り場面積は三省堂の約3倍になる。》《同じ大日本印刷グループ傘下の文具店、丸善書店(東京)も約260平方メートルの店舗を構えることで、6階フロアをほぼ埋め尽くす。》
先日の記事で大きく取りあげましたが、CHIグループは、丸善の人員削減が報じられたばかり。グループ内の別会社の話で、直接の影響はない、ということなのかもしれませんが、同じグループで、一方は人員削減、一方では超のつく大型出店、それも複数となると、よけいなことかもしれませんが、ほんと、大丈夫なのかなと思わざるを得ませんよね。《巽賢司・岡島社長室長は「郊外店と差別化できる。地域に文化を発信していきたい」と話す。》……もちろん「地域に文化を発信」する方向にすべてのことが進めばいいのですが……。このほか、丸善/ジュンク関連では、仙台についてもちょっと噂を聞いているのですが、まだ噂レベルのことなので、情報確認できたら、また紹介したいと思います。
なお、記事にもある現テナントの三省堂書店の甲府岡島店は、9/15に閉店となるそうです。「【甲府岡島店】閉店のお知らせ」(三省堂書店公式ブログ)
【“ 北見・福村書店、モスの書店併設店舗、甲府岡島ジュンク堂、大船の島森書店……新刊書店の開店閉店いろいろ”の続きを読む】
今回は、ライヴの告知です。本&書店にまったく関係ない話題で失礼します。
今度の日曜日、8/7に、ブックンロールに出演した「酔舎バンド」が、ライヴをやりますよ。場所は、代々木のライヴハウスマイバックページ。開場が16時、開演は16時半となります。チャージは3500円(ぐらい)で、フリードリンク/フリーフードになると思いますので、ライヴ付きの飲み会に参加するような感じで、気楽に遊びに来ていただけるとうれしいです。予約などは不要です。
今回のライヴは、酔舎バンドの凄腕鍵盤弾き、一鉄氏ことE出版のNくんのファイナルライヴ。というのも、Nくんがまもなく渡米することになっているのです。なので、現メンバーでのライヴは今回が最後となってしまうのです。残念なことに。
一鉄氏と一緒に演奏したのは、去年のライヴが初めてだったかな。ライヴのための練習で初めてそのプレイを聴いたときは驚きました。素人にも腕の立つプレイヤーはもちろんたくさんいますが、彼の場合はちょっとレベルが違う感じ、我々の仲間内では技術が突出しているのです。酔舎バンドがブックンロールに出演したときには、そこそこ演奏もほめてもらったりしたんですが、技術面はほぼ彼一人の手柄といっていいぐらいです。
今回の渡米も、音楽がらみのこと。彼なら、音楽家としてもっともっと上のステージに行けるのは間違いなしですから、最高の鍵盤弾きを失うのは、バンドを一緒にやってきた身としてはとっても残念なんですが、バンド全員、全面応援モードです。で、その応援モード全開で、渡米前に最高のライヴをやろうと、そういう次第で企画したのが、今回のライヴなのです。
一鉄氏の華麗な鍵盤プレイを日本で気軽に聴けるのも最後、かどうかはわかりませんが、当分ないのは間違いありません。そんなわけで、一鉄氏のファイナルライヴ、よかったら代々木に駆けつけてください。彼のプレイを知る人はもちろんですが、出版営業としての彼のことしか知らない書店員さんや出版仲間の方がいらっしゃったら、そういう方にはぜひ聴いていただきたいものです。おそらく、みなさんがこれまで知っていると思っていたNくんと、鍵盤弾きのNくんは、ほんと、別人ですよ、きっと。
出演は、酔舎バンドのほかに2組ほど。ブックンロールでも共演したみぎたとしきも、ソロ&with酔舎バンドで数曲歌うかもしれません。というわけで。8/7(日)、代々木でお待ちしております。
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