今回は、またまたちょっと書店と離れまして、音楽本とギターの機材の話。ギターのエフェクター関係の書籍やムックはそれなりに出ていて、ぼくも何冊も持ってますが、これまた、やけにピンポイントな本が出ましたねえ。
ギタリストには説明不要ですが、一応説明しておくと、書名の「ワウ」とはエレキギター用のエフェクター「ワウペダル」(ペダルを踏むと、音がワウワウとうねる効果が得られる)のこと。書名の通り、そのワウの使い方をあれこれ、DVD付きで紹介した本ですね。
ワウペダルって、大好きなんですよ。なので、この本も即買いのつもりだったんですが、中身をぱらぱら見たら、うーん、ちょっと物足りない感じかなあ……。まあ、中学生のときから20年以上、ワウペダル、踏んでますからね。今さら、使いこなし本を買わなくちゃいけないようだと、困っちゃうんですけどね(苦笑)。
ワウペダル、使ってるけど、どうもいまひとつしっくりこない、とか、使ってみたいがどんなものだかよくわからない、とか、そういうギタリストの方にはぴったりかもしれませんよ。中身も濃すぎないし、紹介されているプレイスタイルもバランスよく多岐にわたっているし、操作の様子やサウンドが動画でわかるようになっているのでしょう、DVDも付いてますしね。
しかし、こんなトリビアな本、売れるのかなあ(苦笑)。ちょっと心配になっちゃいますが、ぱらぱら見るかぎり、(当たり前だけど)全編ワウだらけ、ワウ好きギタリストで、もっとワウのことを知りたい、という向きにはうれしい1冊となりそう。
で、こんな本を取り上げたので、ついでにワウペダルそのものの話も。(以下は、書店にも本にもぜーんぜん関係ない話題です。音楽ネタ、それもギター弾き限定の話題で、話がこまかいうえに長いです(苦笑)。なので、続きは、エレキギター、とくにエフェクターの話に興味のある(かつ、寛容な)方のみ、お読みください。)
【“ギター弾き限定?!……小型ワウペダルの話”の続きを読む】
今日はちょっと本にも書店にもあまり関係のない話題です。最近、わが家のベランダにメジロがやってくるようになりました。部屋のなかから、その愛らしい姿を眺めるのが、週末の午後の楽しみになっています。
↑下手くそな写真で失礼……。動きが早いうえに、窓越しでも近づき過ぎると逃げちゃうので、かわいい姿、それもペアでいるところを写真におさめるのは素人にはけっこう大変なのです。
マンションの上のほうの階に住んでいるのですが、ベランダといっても、別に広いわけではなく、ごくふつうのマンションのそれ。鉢植えの花木はやや多めかもしれませんが、バードテーブルなどを用意しているわけではありません。それどころか、鳩よけ・烏よけの磁石やら光ものやら、鳥の苦手なものが置いてあったりするぐらい(それでも、メジロもヒヨドリも、それこそハトも来ちゃうんですけどね;苦笑)。そんな場所の、何が気に入ったのかわかりませんが、このところ割に頻繁に、そのかわいい姿を見せてくれるのです。
それにしても、メジロのかわいいことといったら! 全長は10~12センチほどで、実物を見るとそのあまりの小ささにうたれます。体色は、きれいなウグイス色。目白の名の通り、目の周りの白いアイリングが特徴で、これがまたデザイン上のポイントになっていて、実にキュートなのです。
「目白押し」なんて表現があるように、メジロたちは仲良しで、つがいや雛たちがぎゅうぎゅうにくっついて枝にとまったりします。わが家にやってくるのも、夫婦なんでしょうか、いつもペア。それが、お互いに別々にやってきて、しばらく別々にちゅんちゅんやっていたかと思うと、同じ枝の上で、ときどき、きゅっと身を寄せ合ったりするものですから、たまりません。
野鳥の本を見ると、メジロは柿やリンゴなど、あまい果実や花の蜜を好む甘党のようです。わが家のベランダには、実のなる木はないんですが、何か彼らのエサになるようなものがあるのでしょうか。砂糖水も飲むとあるので、小さな器に入れて鉢植えのそばに置いてみるのですが、飲んでいるところは見たことがありません。
武蔵野に来てしばらくになりますが、このあたりに住むようになってうれしかったことの1つに、こうした鳥たちとの出会いがあります。日常的に見かける鳥はけっこういろいろいて、ぱっと思いつくだけで、メジロのほかにも、ヒヨドリ、ムクドリ、スズメ、ハト、ツバメ、シジュウカラ、ホオジロ、オナガ、サギ……などがいます。一度きりですが、近くの水辺でカワセミを目撃したこともあります。武蔵野+鳥で調べたら、ああ、やっぱりちゃんと調べてまとめている方がいるんですね。こんなページがありました。
【“わが家に遊びにくる野鳥たちを眺めながら”の続きを読む】
今日の夜は、以前の記事「西荻窪で吉祥寺の出版社のイベントが!……第49回西荻ブックマークがすごい!」でご紹介しました、西荻ブックマークのイベントに出かけてきます。
第49回西荻ブックマーク
「吉祥寺で出版社を営むということ」
~アルテス、クレイン、夏葉社の場合
出演:
鈴木茂(アルテスパブリッシング)
文弘樹(図書出版クレイン)
島田潤一郎(夏葉社)
会場:山崎ビリヤード
開場:16:30/開演:17:00
料金:1500円
↑デザインもかわいい西荻ブックマークのチラシ。裏がブックカバーなっています。
定員30名のところが大変な人気であっというまにいっぱいになってしまい、急遽、広めの会場に変更になったのだと聞きます。すごいですね。昨日の朝日新聞では、3社のうち、夏葉社とクレインが、「ひとりで発掘「名著」に光」という記事で、大きく取り上げられていましたしね。しかも、お二人の写真入り。吉祥寺の出版社がメディアの注目を大きく集め、本好きの支持を集めているのは、なんだかとてもうれしいことです。
今日の様子は、明日以降、この空犬通信でもレポートしたいと思います。どんな話になるのか、ほんと、楽しみです。
先日、吉祥寺のBOOKSルーエを訪れたときのこと。このお店、1階から2階への階段、その踊り場にウィンドウと棚があって、ここを使って、おもしろいフェアやディスプレイをしているのは、この空犬通信でも何度か紹介している通り、同店を利用されている方はよくご存じですよね。
毎回がそうではないんですが、文庫・芸術担当の花本くんの飛びっぷりが炸裂、いささか無法地帯の様相を呈していることが、ときどき、いや、しばしばあるんですが、現在展開中のフェアはまさにそれ。まずはこれを見てくださいな。
↑証拠図版1。
↑証拠図版、上段・下段それぞれの拡大写真。
どうですか、これ。これが、踊り場にどーん、ですよ。2階には、児童書や学参の棚もあるというのに(苦笑)。ずらりと並ぶ、こいつらエッチな図版たちをばっちり収録しているのは、こちらの本。
《お股に喰い込むTバックからロマンチックな絡みものまで
世界初! 黒人エロジャケ大集合!!
Gラップ、ソウル・ミュージックのジャケットを
ぬぁんと300枚越えのエロジャケ満載!》
という内容紹介を引くだけで、なんかはずかしい感じのナイスな1冊です。
フェアの写真や、本の表紙、Webのサンプルなどを見ると、黒人音楽ファンにはおなじみのアルバムがいっぱい入ってるみたいですね。Wild Cherry(唇アップジャケで有名)、オハイオ・プレイヤーズ(ほぼ全作がエロジャケというすばらしすぎるファンクバンド)、プリンス(これも入れるのか!)あたりから、初めて目にするものまで、いろいろ並んでます。《1点ごとに添えられた、音楽とは何ら関係のない軽快な解説も見所だ》なんてナイスな内容説明を読むと、ますます欲しくなりますよね。
↑エッチなジャケと言えば、まあ、このあたりは定番。しかし、プリンスは……。
↑こういうのも掲載されてるのかな。いずれも好きな盤。中身も、ですよ、もちろん。
【“アナログレコードファン、デザイン好きは必見?!……エロジャケの世界”の続きを読む】
今日は、「活版」の話です。昨年のいつだったか、活版がらみの本を続けていくつも目にする機会があり、活版関連本を紹介する記事を書いたことがありました。「活版?! カッパン?!……活版印刷がらみの本が立て続けに」(2011/6/21)。
そのとき紹介した3冊のうち、1冊は、《活版印刷の楽しくてカワイイ入門書誕生! 懐かしいのに新しい魅惑の印刷、カッパン。見て楽しい!知って楽しい!自分でやるともっと楽しい!カッパンを愛するアナタの必携書。》なんて内容のもので、「カッパン」という表記もなんですが、「カワイイ」というのが、この世界にいかにも似つかわしくない感じで、いったい活版の世界に何が起きているのか、と思わされたものですが、今度はなんと、若い女性に人気だなんて記事が、流通系の新聞に出たようですよ。「活版で紡ぐ、私の言葉」(2/23 日経MJ)。
サイトにはこうあります。
《デジタル技術全盛の今、産業としては苦境が続く活版印刷に、なぜか若い女性たちが熱い視線を注いでいる。鉛の活字を使い、「ものづくり」を実感できるアナログさが、かえって魅力に映るのか。文字の濃さや凹凸の深さなど、印刷物の表情が一枚一枚異なるところに、ぬくもりを感じるようだ。人気は活字そのものや印刷機にまで及ぶ。単なるアナクロニズムではない、新しい表現の手段として、日常にジワリと浸透し始めた。》
ツイッターでこの件を知り、ぜひ読んでみたいなあ、などとつぶやいてたら、情報を提供してくださった池田敬二さん(@spring41)が記事のコピーを送ってくださり、幸運にも記事全文を読むことができました(池田さん、ありがとうございました!)
さて。記事では、今月の3連休に大阪で行われた「活版エキスポ1」が紹介されています。この、名称だけ見れば、業界関係者かマニア向けか、という感じに思われそうなイベントに、なんと一日で400人もの人が集まったのだとか。イベントでは印刷の体験会が人気を呼んだそうで、実際に、女性客が、自分で選んだフレーズを組んでで印刷を体験する様子が、写真入りで紹介されています。主催は関西活版倶楽部。老舗印刷所の2代目らが結成した集まりだそうです。
記事後半では、活字の鋳造の見学・体験を行っている活字製造会社、築地活字も紹介されています。同社による体験会は、開催回数が少ないせいもあるでしょうが、キャンセル待ちも出る人気なんだとか。たしかに、活字鋳造はちょっと惹かれるなあ。幸い、ぼくはこの仕事、駆け出しのころにぎりぎり間に合って、印刷所の工場見学で活版印刷の機械や作業を見学したことがあるんですが、それきりなので、もう一度見るチャンスがあったらぜひ見てみたいものなあ。
印刷してみたい、活字の鋳造を見てみたい体験したい、ここまではまあ、本好き、書体好きの思いとしてはよくわかるんですが、さらにすごい人たちがいるらしいことも、記事の終わりのほうでは紹介されています。なんと、活字印刷機をほしがる人たちがいるのだとか。印刷所で見たときの記憶があるので、素人があんな大きいものを……と思ってしまいますが、小型・軽量のものもあるのだとか。とはいえ、60万円もするらしいので、お値段のほうは十分にヘビー。
《活版印刷の体験者が一様に語るのは、印刷の凹凸感や色の濃さなど「手作り」ならではの魅力だ》。うーん、わかるなあ。本好き、とくに古い本好きの方で、ひと昔前の文芸書の紙面の感じに妙に惹かれる、あの凸凹がいい、なんて方がいたら、この記事で紹介されているような活版にふれる機会を探して、見学してみたり、自分で体験してみたりするのはいいと思いますよ。こうして書いてるぼく自身もまさにそのようなタイプ。活版印刷、久しぶりに間近で見てみたくなってきたなあ。
この2、3日、書店関係の報道がいくつか目につきましたので、ご紹介します。
書店を見つめ続けてきた元祖書店ウォッチャー永江さんの記事から、引用された永江さんのコメントのうち、印象に残るもの、気になるものを引いてみます。
《「定点観察することで出版界の状況がよくわかる。業界の商慣習や保守性など書店は日本社会の縮図でもある」》
《「紙の本がリアルで、ネットは例外だと思っているが、読者にとってはネットがリアルになりつつある。とりわけ(ネット通販の)アマゾンで大量に本を買うような読者にとっては」》
《「人気ランキング上位の本は、どこでも手に入る。こんな本があったのかという驚きがどれだけあるか。マイナーな本の扱い方が書店員の腕の見せ所」》
《「(……)具体的な空間を持っているのが、ネットや電子にはないリアル書店の強み。本や人と出会う空間性をいかに発揮するかが大事」》
書店に理解のある方のことばです。いずれもおっしゃっている中身としては、まさにそうだろうと思います。思うのですが、一方で、
「人気本はどこでも手に入る(=多くの書店は金太郎飴)」
「マイナーな本を扱うことが書店員の技量」
と、出店相次ぐ大型店との競合で大変な思いをし、“どこでも手に入る本”の確保にすら苦労している中小規模のお店の人に、「またか……」「具体的にはどうしろと……」と言わせかねないような、いささか紋切り型めいた言い方に永江さんのような方でさえなってしまうのが、今のこの業界の状況なのかなあ、と、そんなこともつい思ってしまうのでした。
2/22の読売はCHIグループ関連の記事ですね。読売のほうには、《ありとあらゆる方が満足できる品ぞろえを実現し、地元の活性化に貢献したい》という、最近のCHIトップの方々の発言に顕著な、ある種の“使命感”にあふれる岡充孝さんのコメントが引用されています。
規模については、約3900平米とあり、坪換算で1180坪。約8割が書籍で、文具も充実させるとありますね。カフェの有無にはふれられていません。ところで、この記事でも、出店が丸善書店、運営がジュンク堂書店だとされ、岡さんの肩書きも、《ジュンク堂書店社長を兼務する岡充孝・丸善書店専務》のように紹介されています。屋号の使い分けは、どういうふうになっているんでしょうね。ここが丸善ブランドになったのは、ちょっとフシギな感じがします。
丸善&ジュンク堂のサイトに、丸善多摩センター店のスタッフ募集が出てますね。「丸善 多摩センター地区新規店(4月22日オープン予定)オープニングスタッフ募集中!」。上の計算で約1180坪、既報では約1200坪となっていたお店の広さについて、ここでは1140坪とあります。これが公式の数字でしょうか。
丸善&ジュンク堂のサイトにはこれも出てましたね。「天文館店リニューアルオープン・店名変更のお知らせ」。「ジュンク堂書店天文館店」から「丸善天文館店」に変更に。改称だけでなく「全フロアの改装工事をして」いるとのこと。
下を待たずに上げてしまいましたが、2/22、23のSankeiBizの記事、上では、主にCHIグループと紀伊國屋書店の電子書店への取り組みが紹介され、中では、「ためほんくん」や出版流通機能の改善問題についてふれられています。
【“リアル書店、大型出店、本屋の未来、古書買取……最近の書店関連の報道から”の続きを読む】
以前の記事で紹介した改装後の様子が気になっていたブックファースト新宿店。昨日、やっと見てくることができましたよ。
メインのフロアであるB1を中心に、けっこう大きく変わりましたね。新刊・話題書が入り口寄り(B1入り口を入ってすぐのエリア、Aゾーン右側)になり、見やすくなりました。文芸が文庫の近くになって両方をチェックするのがラクになったり、コミックが元の語学・児童コーナーに移ってコーナーとしてのまとまりがよくなったり、など、なるほどなあ、という変更が目につきます。旅行ガイドは文芸と同じDゾーンへ。人文は以前の文芸のあたり(Bゾーン))にまとまっています。
洋書・語学がAゾーン左側(メインレジの前から右脇にかけて)にあるのはちょっと不思議な感じも。同店は以前から洋雑誌が充実していますから、洋書と洋雑誌がまとまっているほうがいいということでしょうか。
↑その語学・洋書と言えば、同店にはこんなフリーペーパーが。新宿店独自発行のもののようで、書店フリペ好きとしては気になります。A5判両面で、オール手書き。語学と洋書の新刊情報が、読みやすい手書き文字でコンパクトにまとまっています。ジャンル限定の場合、やはり多いのは文芸とコミック。語学と洋書だけを取り上げたものは、めずらしいでしょう。書店の独自フリペはいろいろチェックしているほうですが、初めて見ました。Aゾーンへの移動といい、こういうフリペの存在といい、同店がこのジャンルに力を入れている現れ、ということなのかもしれませんね。
以前に比べてとくに使いにくい、探しにくいと感じさせるようなところはなく、上に書いたように、文芸と文庫が近くなったり、人文がBゾーン壁際をうまく使ってきれいにまとまっていたりと、いい感じになっているように思いました。1点だけ、個人的にちょっとだけ残念なことがあるとすれば、児童書コーナー。以前の、語学の奥にあった児童書コーナーは、広さといい見せ方といい、棚の配置といい、とてもいい感じだったんですよね。奥まったエリア(Cゾーン)にあるのも、なんとなく秘密基地めいていて、落ち着いてもいて、お気に入りの一角だったのですが、文庫・文芸の奥のほう(Dゾーン)に移動。棚の本数まではチェックしませんでしたが、量が減っている感じはしなかったものの、以前の見せ方に比べると、ふつうの感じ、がしてしまうのは否めないところ、でしょうか。
逆に、その元の語学・児童のコーナーに移ったコミックは、(ジャンルに関する知識がないのでただの印象ですが)いい感じにまとまったのではないでしょうか。面陳も多くて、にぎやかな感じです。それだけに、その奥に、学参の棚が(まさに、ひっそりという感じで)あるのが、ちょっとそのジャンルの本や探しにいくお客さんにとっては気の毒かな、という気がしないでもありません(苦笑)。その他、詳細はこちらで。
リニューアル後の同店の様子、まだご覧になっていないという書店好きは、ぜひその変わりっぷりを確かめてみてください。
都内の大型店の改装と言えば、東京堂書店もありましたね。3/12(土)はふくろう店のみ18:00にて閉店、3/13(日)は本店・ふくろう店とも臨時閉店、3/14(月)本店・ふくろう店ともリニューアルオープンとなるようです。
ブックファースト新宿店も開店2周年での改装で、オープン(ちなみに、開店のときの様子も記事にしています。よろしければ、こちらもお読みください)から比較的短期間でのレイアウト変更でしたが、こちら東京堂書店も、いまのかたちに変わった前回の大規模改装が同じく2008年、まだ新しくなったばかり、という気もしていましたが、このタイミングでの改装って、いったいどんなふうに変わるんでしょうね。楽しみです。
ところで。
【“リニューアルなったブックファースト新宿店、そして西新宿の書店、移り変わり”の続きを読む】
今日は、改装後のお店がどんなふうになったか、ずっと気になっていたブックファースト新宿店をのぞいてきたり、吉祥寺のBOOKSルーエでおもしろいフェアを見かけたり、本好き友人たちと読書会のような飲み会をしてきたりと、取り上げたいネタはたくさんあるのですが、これから記事にまとめるには、やや時間も体力気力も不足気味なので、また明日以降あらためて、ってことで、とりあえずは、買ってきた本の紹介だけ。
- 『アイデア』345(2011年3月号)(誠文堂新光社)
- 木村榮一『ラテンアメリカ十大小説』(岩波新書)
- ミステリー文学資料館『江戸川乱歩に愛をこめて』(光文社文庫)
いずれもBOOKSルーエで購入したもの(この前、高額本を買ったばかりなので、花本氏に「こんなに買って大丈夫?」などと心配されながらの買い物です;笑)。
『アイデア』、特集が「平野甲賀の文字と運動」。往年の晶文社本ファン、平野甲賀ファン、装丁好き、フォント好きは必見としか言いようのない、圧倒的なボリュームの大特集です。カラー図版満載で、たくさんの書影のほかに、チラシやポスターなどの作品も見ることができます。まさに眼福。
『ラテンアメリカ十大小説』は、この著者、この書名とくれば、ラ米文学読みとしては買わないわけにはいきませんね。これは、読んでからまた紹介する予定です。
次の『江戸川乱歩に愛をこめて』も、乱歩者は書名だけで即買いの1冊ですね。「乱歩小説」を集めたアンソロジーなんだとか。ほかにも乱歩関連でふれたいものもあるので、これも、読んでからあらためて、他の乱歩ネタと合わせてご紹介する予定です。
本や書店をテーマにしたイベントが各地でさかんに行われるようになったのは、別にここ最近の話ではなく、以前からいろいろ行われていたのでしょうが、ツイッターやblogなどのおかげで、地元以外のものも含めて情報が入りやすくなり、以前よりも目につきやすくなったというのはあるでしょうね。地元、東京のものでさえろくに行けていないのに、他地域のものまではとても手が回らず、ツイッターでふれられていたり、その他のメディアで取り上げられたりするのを読みながら、いいなあ、などと指をくわえていることが多い空犬です。
先日、旧知の書店員の一人、ジュンク堂書店秋田店の鈴木氏から、地元の市民講座で「本と本屋をもっと楽しむために」なる、書店好きとしては興味をそそられずにはいられないテーマで講師を務めたこと、そしてそのなかで吉っ読のことにもふれてくれたとの報告がありましたので、ちょっと紹介したいと思います。
鈴木氏は、今は秋田店の勤務ですが、以前は、吉祥寺の書店に勤務していたことがあり、そのころは、吉っ読の会にも何度も遊びにきてくれた人で、吉っ読にとっては準メンバーのような存在。ちなみに、この鈴木氏については、以前にも空犬通信で紹介させてもらったことがあります。ジュンクのPR誌『書標(ほんのしるべ)』が秋田の出版社、無明舎出版を特集で取り上げたのを紹介した記事中のSくんが鈴木氏です。このとき手がけた特集がまさにそうだし、今回の市民講座もそうなんですが、地元「秋田」と「書店」をキーワードにした情報発信にとても熱心な書店員なのです。
さて、で、そんな鈴木氏が講師をつとめた市民講座「本と本屋をもっと楽しむために」ですが、これは、ゆるやかべんきょうかいなる市民講座の第3回として開催されたもの。ゆるやかべんきょうかいとは、サイトによれば、《色々な人が講師(せんせい)になったり生徒になったりしながら、「楽しく」「わきあいあいと」学びあう場。既存の勉強会にとらわれない、日常がもっと楽しく、おもしろくなるような、ユニークな内容の”べんきょうかい”です》というものだそうです。
2/6に行われたその会には、本好きの方、書店に興味のある方でしょう、20数人のお客さんが集まったそうです。そんなお客さんたちを前に鈴木氏は、書店の1日の仕事内容、ジュンク秋田で行ってきたフェア、リアル書店の楽しみ方、書店員のおすすめ本、いろいろな個性派書店、今後の「野望」(書店員としてやってみたいこと)などについての話を披露したそうですよ。これは、書店好きとしては、ぜひとも聞いてみたくなるような中身、おもしろそうだなあ。
このほか、各地の書店発イベントも取り上げたとのこと。全国規模の「本屋大賞」のほか、千葉の「酒飲み書店員」、そして、吉っ読にもふれてくれたそうです。ありがたいなあ。吉祥寺の書店の話やそのイベントが、遠く離れた地域で行われた、本好きのみなさん向けのトークで紹介されるなんて、なんだかうれしいですねえ。
スタッフの方の手になる当日のレポートがブログにアップされていますので、くわしい内容は、そちらをご覧ください。「第3回ゆる勉のレポート」(ゆるやかべんきょうかい)。
ブログを拝見すると、地域のイベントとしては千葉と吉っ読だけがあがっていますね(苦笑)。ブックオカやブックマーク、不忍ブックストリートほか、地域書店イベントの先輩・先駆者たちをさしおいて……という感じがしないでもなくて、なんだか申し訳ない気もしますが、そこは鈴木氏と吉っ読の関係故ということで、関係の方々にはご勘弁いただきたいものです。
で、その吉っ読の件、ブログではさすがに名前のみの簡単な扱いになってますが、鈴木氏によればけっこういろいろ紹介してくれたそうで、「吉祥寺の20冊 夏読み文庫カーニバル」(吉っ読が行ったフェアの1つ)、そして、そのフェアで三冠王に輝いた枡野浩一さん『ショートソング』(3店すべてで売上1位で三冠王。全国紙に取り上げられたりも)、「ブックンロール2010」(昨年行った吉っ読のイベント。鈴木氏も裏方の一人としていろいろ手伝ってくれました。秋田からわざわざ駆けつけてくれた、もっとも遠方からの参加者をスタッフ扱いしてしまいました;苦笑)などにふれてくれたとのこと。事前に相談があったので、ブックンロールの写真を送っておいたんですが、それらも当日紹介してくれたとか。うれしいなあ。
なお、講師の鈴木氏は、現在ジュンク堂書店各店店頭で配布中のPR誌『書標』の一番最後、奥付のページ「本屋うらばなし」に、この講座に関する文章を寄せています。まだ店頭で入手できると思いますし、サイトからPDFをダウンロードでもきますから、ご興味のある方はそちらもぜひ合わせてご覧ください。
実際に書店で日々、本の仕事に関わっている現役の書店員が、本好き・書店好きの方々を相手に行うトーク……それって、いいですよね。書店応援派などといって、こんな駄文を毎日つらねてますが、そんなものよりも、書店のいろいろを伝えるという意味では、何倍も魅力と説得力とにあふれた話が聞けるだろうと思うからです。今回のように、自分が聞けなかったものも含め、またこういうトークがありましたら、ぜひ紹介したいと思います。
ところで。書店員が本と書店の話をするイベントと言えば。今年もやりますよ、吉っ読のイベント「ブックンロール」。まもなく、日程・内容などの詳細を、この空犬通信でご紹介する予定です。
こんなふうに書店の話題を取り上げることについて、ちょっと不安になっている空犬です。昨晩、ちょっと弱気なツイートをしたら、たくさんの方から励まされてしまいました。ありがとうございます。もうちょっとがんばってみるか、という気になったのはいいのですが、今日の記事は、そういう気分のときに取り上げるべき話題なのかどうか、ちょっと微妙ですねえ(苦笑)。最近新聞で取り上げられた書店関係の記事に気になるものが2つありましたので、ご紹介します。
まずは、朝日新聞の記事から。この空犬通信でも先日取り上げたボーダーズの件なんですが、いきなり、タイトルが《米書店、消滅の危機》で、記事冒頭には、《米国では書店ビジネスそのものが崩壊の危機にある》とあり、記事の最後には《書店の経営環境は厳しさを増すが、その打開策はなかなか見えない》などとあるんですよ。うーん……。
いや、わかるんですよ、こう書きたくなるのは。もちろん、我々、出版界にいる人間だって、書店を愛する者だって、ボーダーズが店舗閉鎖とリストラで、不死鳥のように蘇るだろうなんて、そんな簡単にいくとは思ってませんし、この業界自体、きわめて厳しい状況にあることは、そんなことわかっています。わかっているけれど、それを、こういうふうに大新聞が記事であおるように書いていいかどうかは、また別のことだと思うのですよ。しかも、記事、中身を見てみたら、例によってアマゾンと電子が出てきてリアル書店は大変、みたいな調子で、新味のあることは書かれていなかったりしますしね。
この記事について、『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(アスキー新書)の著書がある、ニューヨーク在住の文芸エージェント、Kay Oharaさん(@Lingualina)が、こんなふうにつぶやいていました。《朝日め、「米国では書店ビジネスそのものが崩壊の危機にある」などと煽りやがってバカヤロウ。(1)B&N2010年末の四半期は赤字ではない(2)ボーダーズによる買収劇はCEOの戯言(3)イサカでは町の本屋救済案が浮上。アタシのブログでも読んで反省しろ。》(ツイート中では、丸数字が使われていましたが、念のため、かっこ数字に置き換えて引用してあります。)
ぼくも、昨日の朝、当該記事を読んで、いきなり「崩壊の危機」って、そんな全国紙がスポーツ紙みたいな(って、別にバカにしてるわけではなくて、個人的には東スポ的な見出しの遊び方はけっこう好きだったりします)あおり方、ふき方をしていいのかな、と、そんなふうに思って、「うーん……」なんてつぶやきをしていたところだったので、大原さんのツイートは、まさに、なるほど、という感じでした。ちなみに、大原さんのブログは、こちら、「本とマンハッタン」。大原さんの著書ももちろんですが、こちらのブログにも、アメリカの書店事情・電子書籍の事情を知るうえで参考になる記事がたくさんありますので、ぜひサイト内の記事をいろいろあたってみてください。
同じく日本の新聞で、アメリカの出版事情がらみでということでは、一昨日ですがこんな記事もありました。「電子書籍:米国シェア8.3%に」(2/17 毎日新聞)。
短いので、引きますね。《米出版社協会(AAP)が16日発表した10年の米国での書籍売上高によると、電子書籍が前年の約2.6倍の4億4130万ドル(約370億円)となり、教科書などを除く一般書籍全体におけるシェアが8.3%に達した。》
《米アマゾン・コムの「キンドル」など電子書籍の専用端末が普及したことや、米アップルや米グーグルが携帯端末向けに電子書籍販売を始めたことで、市場が急速に広がった。教科書などを含めた書籍全体は3.6%増の116億7000万ドル。》
前年比260%はたしかにすごい伸びですが、それでも全体の8.3%ですよ。シェアの残り90数パーセントの「紙の本」は、リアル・オンライン合わせた広義の「書店」で売られてるわけですよね、今のところは。それを、電子の今後の伸び予想や、そのことによる書店での売上げの縮小率・額など具体的な数字もあげずに、《米国では書店ビジネスそのものが崩壊の危機にある》なんてまとめちゃっていいのかなあ……。
書店の出店・閉店の話題って、どうしても報道のトーンが似てきちゃいますよね。
中小書店が閉店または大型店が出店
→書店をとりまく状況はきびしい
→背景はAmazonの台頭と電子書籍の普及
→リアル書店には未来がない、崩壊か……。
大枠はそうなのかもしれないけれど、でも、だとしたら、もう新聞記事にする必要すらないですよ。そんなこと、言われなくても、本の業界にいる我々がいちばんわかってますから。
それよりね、《今後は日本でも電子書籍が本格的に普及するとみられる》とか、《書店の経営環境は厳しさを増すが、その打開策はなかなか見えない》とか、そんなどこかで聞いたような紋切り型で記事を安易にまとめちゃったりしないで、ある種の危機にさらされている紙メディアである点では新聞だって本だって同じなんだから、同じ危機的な立ち位置にいる者として、もっと違うアプローチで、我々素人をうならせるような、そんな分析をして、何をすべきか、どうすればいいのか、についてのアイディアでも示してくれるとうれしいんだけどな。
もう1つは、「日経MJ(流通新聞)」という、一般の方の目にふれにくい業界紙の記事ということで、お読みになっていない方も多いでしょう。ぼくもツイッターで存在を知ったはいいものの、図書館などに調べにいく時間がなくて、読めずにいたんですが、Webをあたってたら、これが見つかりました。「書店「売り方」再構築、大日印のハイブリッド戦略、大・小型店、立地に応じ。」(2/16 日経MJ(流通新聞))。現物をあたってないのでよくわからないんですが、これが記事の全文なのかな。とりあえず、そうだという前提で、中身を紹介しますね。
【“米書店は崩壊の危機なのか、そして、「売り方」を「再構築」しているのは一部の書店だけなのか……最近の新聞記事から”の続きを読む】
今晩は満月。寒い日の夜は、月がきれいに見えていいですね。今日は、予定していた飲み会がなくなってしまったので、たまった仕事を片づけてきたら、なんだかへとへと、たまにはいいよねと節酒中の身にもかかわらず、初めて目にする銘柄のビールとオリーブを買って帰宅、ゴキゲン(ってわけでもないんですが)で飲酒&読書中の空犬です。
久しぶりの、最近買った本リストです。
- 前野久美子『ブックカフェのある街 仙台文庫1』(メディアデアイン/本の森)
- 『SFが読みたい! 2011年版』(早川書房)
- 円堂都司昭『ゼロ年代の論点』』(ソフトバンク新書)
『ブックカフェのある街』、刊行前から何度かふれてきましたが、やっと、やっと買えましたよ。オンライン書店にあがっているのは見ていたんですが、なにしろブックカフェの本ですからね、書店の店頭で出会いたかったもので、すっかり時間がかかってしまいました。本好きの方の感想を目にしていたので、期待はしていましたが、これが期待に違わずというか、予想以上におもしろいですよ。あっという間に第一部を読んでしまいました。この本は、読了後にあらためて取り上げることにします。
ちなみに、ぼく同様、まだ探している方がいるかもしれませんから、参考までに書いておくと、ぼくは、東京堂書店ふくろう店で見つけましたが、最後の1冊でした。今日見たところでは、三省堂書店神保町本店の4Fは、本の本の棚にも、地方小の棚にもありませんでした。
あと、「仙台文庫」とありますが、サイズは新書判です。ぼくは事前に書影を見ていたので、迷いませんでしたが、知らないと、店頭で探すときに迷うかもしれませんから、ご注意を。店頭で探すときは、判型って重要な目印になりますからね。
毎年買ってる『SFが読みたい!』。今年のベスト、海外も国内も、読了は半分ぐらいか……。とてもSF者は名乗れません……。だいたい、「SFが読みたい!の早川さん」から読んでる時点で、ダメだこりゃ、って言われそう感じが濃厚です……。
『ゼロ年代』は、版元の案内によれば、《ゼロ年代に注目を集めた議論を、話題になった本を通してポイントを探り、これからの論点をも模索。批評、電子書籍、ツイッター、郊外......時代の論点を読み解き、現代を見渡す内容となっています。》という1冊。《話題になった本を通して》というところがポイントで、目次には、ゼロ年代の、メディア的な文脈での話題本がずらり。出版・書店に直接関係するものだと、『紙の本が滅びるとき』『電子書籍の衝撃』があがっています。
字面で忘れがたい印象を残す著者、何かで読んだっけなあ、と思ったら、『YMOコンプレックス』(平凡社)の著者でした(このYMO本、ぼくも読んでるはずなのに、それほど印象に残ってないんですが(ごめんなさい……)、賛否両論、YMOファンからはずいぶん酷評されたりもしてましたっけねえ……って、まったくの余談ですが)。
今日も書店の出店関係をいくつかご紹介します。まずは、先日の記事で取り上げた、ブックエキスプレス、3月オープンの3店ですが、開店日が決まったようですね。エキュート上野店が24日、エキュート赤羽店が26日、エキュート品川サウス店が29日とのことです。
3月は、ブックエキスプレス以外にも、あちこちで書店のオープンの話が目につきますね。いずれも、すでに記事でふれたものですが、ブックファーストルミネ大宮1店が3/2、文教堂書店二子玉川店(435坪)が3/17。以前の記事で紹介したときにはまだ開店日が明らかになっていなかった啓文堂書店の2店も日が決まったようで、アルバイト募集の案内が出ていますね。永福町店が3/23、武蔵野台店が3/31とのこと。東京近郊以外だと、3/3にオープンする800坪超の丸善書店博多店が目を引きます。
新規オープンではないですが、くまざわ書店のいくつかのお店が3月にリニューアルオープンとなる旨、サイトに案内が出ていますね。田園調布店が3/4、池袋店が3/8、長久手店が3/11、相模大野店が3/12とのこと。「新文化」の昨年の記事で予告されていた、大阪のあべの店(仮)も3月のオープンとなっていましたが、そちらの開店日や正式名称はまだ決まっていないんでしょうか。
さらに、4月以降の、東京以外の地域の話題も。まずは大阪のこれから。大阪はミナミ(心斎橋)にあるユニークな書店、スタンダードブックストア。が「キタ」、それも昨年末の大型出店で地元以外の本好き書店好きにもその地名がすっかり知られるようになった感のある茶屋町に出店するようですね。「【BLOGNOYOHAKU】キタに出店するのですが・・・」(2/14)
記事によれば、オープンは4/29、場所はNU茶屋町プラスの2階、広さは《【本+雑貨+コーヒーショップ】で100坪》だそうです。
紀伊國屋書店梅田本店のリニューアル、MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店の出店に続くかたちになったせいか、ツイッターでは、すわ「本屋戦争、勃発?」なんて声があがったのでしょうか(ぼくは直接は見てないのですが)、先のブログには、こんなふうに書かれていましたよ。《『本屋戦争、勃発』なんてご心配なさらないでください。桶狭間の戦いをやっている足軽が、ハイテク兵器を装備した方たちと戦おうなんて考えておりません。》《なんかふらっと寄ったらおもろかった、と思えるような何屋かようわからん店になったらエエなあと考えております。》お店の違い、立ち位置の違いがわかりますよね。《素晴らしい本屋に挟まれているので、併設するコーヒーショップのサンドイッチには期待していただきましょう。》と、ユーモアも忘れません(笑)。
心斎橋のお店を見たことのある方ならご存じの通り、スタンダードブックストアは、茶屋町の大型店とは、広さはもちろんですが、品揃えというか雰囲気というか、とにかく書店としてのあり方がまったく違うタイプのお店です。大型店2店とは直接競合するようなタイプのお店にはまずならないでしょうし、お客さんもそういうふうには同店を見ないような気がします。
とはいえ、それでも扱う商品のメインが「本」であることは間違いなく、圧倒的な物量や書店としての知名度をほこる大型店が2つもあるエリアにお店を出すのはとてもチャレンジングなことですよね。どんなお店になるのか、そして、どんなふうに書店激戦区でやっていくのか、今から楽しみですね。大阪に行くときの楽しみがまた1つ増えました。
そうそう、大型店と言えば、このニュースがありました。「旧丸井旭川にジュンク堂 今春 道北最大級書店」(2/15 北海道新聞)。
記事を引きます。《【旭川】丸井今井旧旭川店の後継店として今春開業する複合商業施設「フィール旭川」の核テナントとして、書店大手のジュンク堂書店(神戸)が出店を検討していることが14日、明らかになった。正式決定すれば道北進出は初となる。》
《関係者によると、ジュンク堂書店はフィール旭川の1~5階、計約3500平方メートルに入居する方向で、土地建物を所有する極東証券(東京)側と交渉している。大筋で合意しており、現在条件面などの交渉を進めている。ジュンク堂書店の岡充孝社長は「まだ決定はしていないが、前向きに検討している」と話している。》
3500平米は、坪換算で1050坪超。先の梅田の出店からまだ半年もたっていない時期ですからね。その間、(別ブランドも含めると)3月に博多があり、4月に多摩センターがあるわけですが、それらと並行して千坪超の出店が「検討」されている、だけでも驚きですよね……。
「まだ決定はしていないが、前向きに検討している」と岡充孝社長のコメントが引用されていますが、「検討」段階といっても、こうして社長の談話入りの記事が、地元のトップ新聞に出ているわけですから、これは、単に「ちょっと考えてますよ」のレベルの話とは思いにくいですよね。つまり、かぎりなく本決まりに近い、という感じなのでしょうか……。
……と、ここまで書いて、昨晩アップするのを忘れていたら、こんなヘッドラインが。「旭川にジュンク堂書店1060坪で出店へ。」(2/16 文化通信ニュース速報)。リンク先が有料記事なので、中身確認してませんが、決定なんでしょうか。
今回は書店の話はちょっとお休みで、音楽本のネタを。これ、ザッパファンは必読必携の1冊です。
- 和久井光司『フランク・ザッパ/キャプテン・ビーフハート・ディスク・ガイド レコード・コレクターズ増刊』(ミュージック・マガジン)
著者の和久井さんがザッパ本を手がけていることはずいぶん前から話題になっていましたから、待っていたファンにしてみれば、やっと出た、という感じですね。基本は1ページまたは半ページで1アルバムを紹介する作りで、重要作は見開きで取り上げられています(何が重要作扱いになっているかは、ぜひ実物で確認を。だいたい世評の通りですが、へえ、これが、というのもファンによってはあるかもしれません)。ザッパ御大と牛心隊長の全作はもちろん、関連人脈の作品も広く取り上げられていて、ボリュームたっぷりです。ザッパは、ジャケがおもしろい作品が多いのですが、この本、オールカラーなので、ジャケ写が全点カラーで見られるのはうれしいですね。
ぼくはどちらかというと、というかかなりザッパ寄りなファンで、牛心隊長ことキャプテン・ビーフハートは、ひと通り、なんとなく聴いているという程度なんですが、隊長も一部の熱狂的なファンに支えられてきたミュージシャンですよね。
そういえば、2/3の朝日新聞の夕刊に、町田康さんが、キャプテン・ビーフハートの追悼文、それも強烈なやつを寄せていましたね。
なにしろ、《はっきり言って私はキャプテン・ビーフハートの音楽は世界遺産にしてされるべきであると思っている》とありますから(笑)。まあ、世界遺産がいいかどうかはともかくとして、町田康さんの入れ込みぶり、惚れ込みぶりは十分に伝わってきますよね。町田さんの読者の方で、これを読んでついつい隊長のCD、買っちゃった人、いるんじゃないかなあ。ショックを受けていないといいけどなあ(苦笑)。だって、いきなり『トラウト・マスク・レプリカ』とか、予備知識なしで聴いちゃったりしたら、どうなのかなあ、と、よけいなことを心配してしまったりします。
って、本の内容からちょっと話がそれましたが、ザッパファン、隊長ファンにはもちろん強くおすすめですが、名のみ聞くばかりで彼らの音楽は(こわくて?)聴いたことがない、という方にも、何から聴いたらいいかのヒントになりそうな情報がいっぱいで、いいかもしれません。
そういえば、この本を購入した日の会社帰り。新宿のディスクユニオンに寄ったら、偶然『Hot Rats』がかかっていて、しかも曲が「Willie The Pimp」だった、なんてことがあったんだよなあ。ファンには説明不要ですが、念のために書いておくと、ザッパの代表作の1つである同盤にはビーフハートが参加していて、「Willie The Pimp」は隊長が吼えまくる、強烈なダミ声ヴォーカル、そして、そのダミ声にパワー負けしない、ザッパの、流麗とは言えないけえれど、なんだかよくわからない迫力に満ちまくった、強烈な音圧の長いギターソロ……まさにザッパ&ビーフハートな1曲なのです。鞄の中にザッパ&ビーフハートの本を持っているときに、この曲がちょうどかかるなんて、なんたる偶然。しかも、レコード店なので、大音量。それがまたいいんだよね。
◆今日のBGM◆
今日は当然ザッパで。大好きな盤を(上にあげた『ホット・ラッツ』をのぞいて)3枚あげます。
【“ファンは必読必携!……ザッパ&ビーフハートのディスクガイドが出ました”の続きを読む】
先日の記事でふれた「ズームイン」の書店特集でも、ユニークな取り組みをしているお店がいくつも紹介されていましたが、「ユニーク」という点ではこれまた実にユニークな取り組みをしている書店さんがあり、テレビで取り上げられるらしいということで、情報をいただきました(マス~ンさん(@pirodesuyo)情報ありがとうございました)。お店は、千葉中央区の老舗書店、中島書店本店。なんと、野菜(!)を扱っているというのです。放送は、2/15(火)、NHKの「首都圏ネットワーク」で、6時10分からとのこと。
情報を探してみたら、関連の記事がありました(テレビの特集を先に見たい、映像でびっくりしたいという方は、記事は後回しのほうがいいかもしれません)。「書店で野菜売ります 異色コラボで集客目指す 千葉の中島書店に常設直売所」(1/22 全国商店街支援センター)。さらに、こちらのサイトには、お店の告知ポスターでしょうか、朝採り野菜直売所オープンの案内の写真がありました。
(以下、記事の一部を引きながら書きますので、先に番組をご覧になりたい方は、後回しにしてください。)
【“野菜を売る書店が千葉に!?”の続きを読む】
書店の開店情報です。これ、紹介しなくちゃと思いつつ、記事にするのをすっかり失念していました……。昨年、主要店と思われていたところを含めて、いくつかの店舗が続けて閉店になってしまい、関係者や利用者を心配させていたBOOK EXPRESSですが、どうやら無事に復活になるようですね。「駅ナカ書店のブックエキスプレスではアルバイトの募集を開始いたします」(1/31、2/7)。
エキュート上野店(旧ディラ上野店)、エキュート品川サウス店(旧ディラ品川店)、エキュート赤羽店(旧赤羽店)の3店で、オープニングスタッフの募集情報が、サイトにあがっています。求人情報はこちら。いずれも開店日にはふれられていませんが、3店とも3月にオープンとありますね。
どんなお店になるのか、楽しみです。開店日やお店のサイズなど、詳細がわかりましたら、また紹介する予定です。
そうだ、品川で、エキナカで、と言えば、今日知ったばかりの情報がありましたので、追加しておきます。JR品川駅のエキュートに、PAPER WALLができるとのこと。書店関連の情報でよく参考にさせていただいている月曜社さんのウラゲツ☆ブログの記事、「新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる予定の本屋さん」(2/8)によれば、エキュート品川店は、2/4から5坪で仮店舗営業中、2/25にグランドオープンとのことです。オープン後の広さは22坪のよう。
この空犬通信でも何度か紹介したことがありますが、PAPER WALLと言えば、ご存じの通り、オリオン書房がエキナカに出店する際のブランド名(と言っていいのかな)。これまでは、JR立川駅内の1号店、エキュート立川店のみでしたから、この品川のお店が2号店ということになりますね。
こぢんまりしたサイズのお店ながら、雑誌や売れ筋の新刊のみならず、エキナカのお店にこんな本を置いてあるとは!と本好きが驚くような本まで並べた、独自の品揃え。ぼくも立川に用事があるときは、必ずのぞくことにしているお店です。そのPAPER WALLの2号店が、オリオン書房初となる山の手線駅に、しかもそれがまもなくBOOK EXPRESSの新店が復活する品川駅にできるということで、期待が高まりますね。2/25のグランドオープンが楽しみですが、その前に、今の仮店舗も見ておきたいので、近くお店をのぞきに行ってこようと思います。
書店関係のいろいろをまとめて紹介します。まずは、こちらから。今回もあちこちから異論・反論・議論を呼びそうな感じです……。「中小書店も電子書籍に参加を CHI社長が呼び掛け」(2/12 47NEWS)。
記事を引きます。《丸善、ジュンク堂などを傘下に持つ書店大手CHIグループの小城武彦社長(49)は12日までに共同通信のインタビューに応じ、準備を進めている電子書籍の販売と紙の本の販売を連携させるサービスについて「小規模書店にも仕組みを貸し出す」と述べ、中小書店にも参加を呼び掛ける方針を明らかにした。》
《明らかにした》と、最近の発言であるようにもとれる書き方ですが、この考え自体は、昨年の朝日新聞beのインタビューでも、また新文化のインタビューなど、昨年中からいろいろなところでふれられていたものですね。
《CHIは親会社の大日本印刷やNTTドコモとともにインターネットで電子書籍を販売する「電子書店」事業をこのほど始めた。年内には、この電子書店と丸善などのリアル書店の事業を連携させる「ハイブリッド型書店」のサービスを開始する予定だ。》
年内目標であることが明言されていますね。で、肝心の中身、具体的な方法は。
《具体策としては「共通ポイント制度」を導入する。電子書店とリアル書店の両方の購入価格に応じてポイントを付与し、ためたポイントでどちらでも本を買えるようにする。また、ポイントカードを持つ会員は、電子端末に表示される「バーチャル本棚」で電子、紙を問わずどんな本を買ったかが一覧できるようにする計画だ。》
ポイントシステムの共通化だけでは、「ハイブリッド」を名乗るにはちょっと弱い感じなので、やはり肝は、「バーチャル本棚」がどのような使い勝手のものになるのか、でしょうね。ここまでは、書店のデジタル戦略としては、ふつうに考えられることだし、それを単チェーンではなく多くの書店が参加する大きなシステムにしたいというのも、コストや読者・利用者の便を考えれば、業界的にはおおいに「アリ」なことだろうと思われるのですが、論議を呼びそうなのが、次のくだり。
《中小書店は出版不況の中で廃業が相次いでおり、電子書籍の販売本格化で経営が一層厳しくなると予想される。今回の計画について、CHIは自社の会員を増やすとともに、業界全体の縮小を食い止めることも目的としている。》
《業界全体の縮小を食い止める》……CHIのトップの方々がよく口にされる、義務・使命感・砦などと同じノリで書かれた表現ですね。ただ、問題は、ここ、小城社長の発言ではなく、記事の地の文なんですよね。これこそまさに批判が集まりやすい点だと思うのですが、この種の報道がされるときって、《中小書店は出版不況の中で廃業が相次いで》いることの原因として、同グループの大型出店ラッシュの影響が(地域による差は大いにあるかとは思いますが)ないわけではないことについて、まったくふれられないことが多いですよね。それって、報道のあり方としてどうなんでしょうか。
ぼくは書店のことばっかり書いているとはいえ、ただこの話題が好きなだけの素人ですし、しかも、書店は大きな店も、中規模店も、街の本屋さんも、それぞれいいところがあって、どれも好き、というタイプだったりします。なので、なかなかそのあたりについて、大したことが言えない書けないというのがあります。大文字の方針としては、なんだかなあ、と思えるものがあるとしても、やはり好きなお店がいくつもあるジュンクや丸善のことを丸ごと批判するようなそんな単純なことはしたくないし、できません。
でも、大新聞他のメディアがこうした書店問題を取り上げるときは、言われたまま、聞いたままでいいのかな、という気がするのですよ。あまりにも、「業界全体の縮小を食い止める」、義務である、使命感である、砦である、といったようなCHIのトップの方々のことばを、ストレートに、無批判に、そのまま出しすぎではないかと、昨年からの一連の報道を見てきて、そんなふうに思わずにはいられないからです。だって、同一商圏に、売り場面積で数倍もの大型店ができたら中小書店には死活問題なわけですよ。なのに、出店している側が、出店されている側に、同じシステムでどうですか、といっている構図なわけですよね。それはやはりどうかな、という気がするのです。門外漢のぼくがそんなふうに思っているぐらいなので、書店業界に身を置く方、とくにCHIのトップの方から見て「中小書店」に相当するようなお店の関係の方々には、そのような思いでいる方はきっといらっしゃることでしょう。もう少し、このあたりのこと、大型出店と書店数減少の関係について、掘り下げるべきなのではないかと、それが報道というものではないかと、そんな気もします。
……すいません、メディア批判みたいなことがしたいわけではないし、自分の手にもあまることなので、これぐらいにしておきます。このシステム、CHIは《中小書店にも参加を呼び掛け》ているわけですが、他の書店さんは、この件について、どんなふうに思われているんでしょうか。ぜひ聞いてみたい気がします。
さて。なんか大文字の話が続くのもなんなので、雰囲気を変えて、うれしい話にもふれておきましょう。先日、「ズームイン!!」で書店の特集があったとtwitterで話題になっていましたが、ふだんからテレビはぜんぜん観ないもので、当然のことながら見逃して、悔しい思いをしていたところ、YouTubeにあがっていることを、twitterで教えられました(碧野圭さん(@aonokei)、ありがとうございました)。「本屋さんがカワル!?」がそれ。
【“CHI小城社長インタビュー、ズームイン、朝日新聞広告特集、BEX……書店関係のいろいろ”の続きを読む】
連休だし、もう少し気楽な話題も取り上げたいんですが、今日は、書店派サイトとしては、やっぱりこれにふれないわけにはいかない感じです。「米書店2位が破産法申請へ、米報道 電子書籍普及で低迷」(2/12 朝日新聞)、「米書店2位のボーダーズ、週明けにも破産法申請か」(2/12 日経新聞)、「米国:書店大手が破産法申請へ ネット対応遅れ…米紙」(2/12 毎日新聞)、「Chapter 11 for Borders, New Chapter for Books 」( 2/12 Wall Street Journal)
ボーダーズ・グループ と言えば、記事のタイトルにもある通り、アメリカの書店業界では第2位の大手チェーン。それが、破産法申請とは……。よその国の話とはいえ、書店に関心を持つ身にはかなりショッキングなニュースですよね。
うち、毎日の記事からちょっと引いてみます。《米書店大手ボーダーズ・グループが資金繰りに行き詰まり、週明けにも連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の申請を準備していることが明らかになった。》
その背景については、記事が短いのでしかたないでしょうが、《書籍のインターネット販売や急速に普及している電子書籍をめぐり、ネット小売り大手アマゾン・コムの攻勢が続き、業績が低迷していた》と、ネットと電子書籍云々の、いつも通りのまとめ方。
日本で言う民事再生法の申請ということなので、いきなりお店がなくなってしまうわけではないようですが、そのあたりについては、こんなふうにあります。《ボーダーズは営業を続けるが、約670の店舗のうち約200店を閉鎖する方向》。
大手が大幅に店舗を減らすことは出版社にとっても痛手のはず。救済の話などはなかったんでしょうか。記事の最後には、《昨年末から出版社への支払いが滞り、金融機関や出版社と交渉を続けていたが不調に終わった》とあり、よそを救済どころの話ではない出版界の様子も透けて見える感じです。
日本の新聞の記事はいずれもそれほど長いものではありませんが、Wall Street Journalの記事は長文で、同社の従業員数・店舗数の推移のグラフもあるなど、情報量も多いので、英語が苦手でない方はぜひそちらも全文目を通されるといいと思います。
こういう報道がなされると、すわ紙の出版・リアル書店崩壊の序曲か、次はどこか、日本ではどうなるか、みたいな短絡的な反応が引き出されがち。たしかに、不安にならずにはいられないニュースではありますが、日本とアメリカでは、書籍販売の事情はずいぶん違いますから、そのあたりは冷静に受け止めたいところですよね。
日米の事情の違いをよくあらわしていることの一つに、店舗数があります。上の記事で、店舗数の多さに反応された方も多いでしょう。業界第2位が670って、1位はどれだけなんだとか、業界全体の店舗数はどうなってるんだとか、気になりますよね。ちなみに、1位はご存じバーンズ&ノーブルで、店舗数は、一時期は1000を超えるとも言われていたようですが(ボーダーズもかつては1000超の店舗を抱えていた)、現在は700超ほどとのこと。
アメリカの店舗数や売上の推移を、業界全体やチェーン別にまとめた適当な資料がないかどうか、また、今回の件がアメリカの書店業界・出版業界に与える影響のことなどについてまとめたものがないかと探しているんですが、なかなか、そんな都合よくまとまっていませんね(苦笑)。日本の書店の売上げや店舗数については、ネットで調べればすぐに数字も見つかりますし、書籍のかたちでまとまった資料もありますので、だいたいのところはわかっているつもりなんですが、アメリカのそれは、いくら書店に興味があるとはいえ、さすがに海外のことまではこちらも追っかけていませんので、よくわかりません。というか、そもそも素人にはそんな調査は難しいので、こういうのこそ、出版・書店流通の専門家がまとめてくれるといいのですが……。
【“米書店大手・ボーダーズ、破産法申請へ”の続きを読む】
先日、書名をあげた書店本のほか、最近読んだ本・刊行された本で、ふれたいものがいろいろたまっているんですが、今日はやはりこれを取り上げないわけにはいきませんね。「ジュンク堂書店、東京・多摩センター駅前に「丸善」の屋号で出店」(2/10 新文化)。
記事を引きます。《4月22日、多摩センター百貨店5階に1200坪でオープン。月商目標は5000万円。主帳合取次は大阪屋。店長はCOMICS JUNKUDO町田店の坂本恭亮店長が務める。》
出店の噂はずいぶん早くから流れていて、この空犬通信でも何度かふれてきました。これまでは、ジュンクまたはMARUZEN&ジュンクブランドでの出店だろうとなんとなく思われていたのが、どうやら丸善での出店らしいと聞いたのがしばらく前のこと。屋号の件はその通りでしたね。
屋号の件はともかく、驚くのはやはりその大きさでしょう。新店が三越内の大塚家具跡ということで、建物の大きさからして、最低でも数百坪規模、おそらくは千坪超のものになることは見れば想像がつきますから、以前の記事にも《多摩センター駅近辺にある新刊書店すべての床面積を合計したのよりも、さらに大きいものになりそう》などと書いたのですが、それにしても1200坪とは……。
昨年の大型出店ラッシュ、とくに昨年の最後が日本最大級2000坪超の梅田店の出店だったこともあり、もう大きな数字に慣れっこになってしまい、この数字だけではピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。でも、ジュンク堂書店吉祥寺店(約1000坪)よりも、さらに、MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店(約1100坪)よりも大きいと聞けば、そのすごさ、途方もなさがわかるかもしれません。それが、いくら複数の路線が交差するターミナル駅とはいえ、新宿から30、40分ほどの、渋谷や吉祥寺よりも大きな商圏をもつとは言えない街の話ですからね。しかも、800坪の大型店(博多)出店の翌月というタイミング。素人が簡単に言えることではないのは承知であえて言いますが、出店する街の位置的にも、商圏としても、出店のペースとしても、従来の書店の、出店戦略の常識では、ありえないような出店だと言っていいでしょう。
出店のことも、サイズのことも、早くからいろいろ噂を聞いていましから想定内のこととはいえ、こうして業界紙(のサイト)で正式に発表されたのを見ると、あらためて驚くほかないですね。丸善の出店としては、あちこちで話題になっている、3月オープンの博多店より規模としては大きいことになりますからね。本丸、丸の内本店を別格とすれば、丸善ブランドのお店としては、最大規模の1つということになるでしょうか。
先日、サイトも統合された丸善、ジュンクの2書店、今後のすみわけがどんなふうになるのか、気になっていた関係者の方も多いことと思います。なんとなくイメージとして、ジュンク(とMJブランド)=大型店、丸善=中規模店、と、そんなふうに思っていた方も、ぼくを含めてけっこういると思いますが、今回の件で、サイズによるふりわけといった単純なものでないことは明らかになりましたね。
丸善書店の役員でもあるジュンク堂書店の社長、岡充孝さんは、先日2/7の朝日新聞求人欄「あの人とこんな話」に登場、《私たちがこんなに頑張るのは、やっぱり使命感があるからなんですね》《私たちは本の最後の砦でありたいのです》と、丸善・ジュンクのトップの方々が昨年からしきりに連発されるキーワード、「義務」「使命感」を前面に出した持論を展開されていましたね。
【“東京・多摩センターの出店は「丸善」ブランドに”の続きを読む】
河出文庫からの十蘭作品集としては、昨年6月に『久生十蘭ジュラネスク』が出ています。この本は、以前に記事で紹介したこともありました。同じ河出文庫からの第2弾として、こんなのが出ましたよ。
以前の記事に《十蘭……敬愛しまくっている作家です。全集も過去の文庫たちも全部持ってるのに、こうして新刊、それもいいセレクトの文庫短篇集が出たりすると、買わざるを得ないんだよねえ。全編重なっちゃうのはわかってても。》と書きましたが、まさに今回も気分としては同じですね。
版元の内容紹介には《フランス滞在物、戦後世相物、戦記物、漂流記、古代史物…。華麗なる文体を駆使して展開されるめくるめく小説世界。「ヒコスケと艦長」「三笠の月」「贖罪」「川波」など、入手困難傑作選。》とあります。今回は、「花束町一番地」「贖罪」「大竜巻」「ヒコスケと艦長」「三笠の月」「少年」「花合せ」「再会」「天国の登り口」「雲の小径」「川波」「一の倉沢」の12編を収録。『黄金遁走曲』『巴里の雨』といったどちらかというとマイナーな単行本の収録作や、全集のみの収録作がとられていますから、岩波・創元・講談社文芸・ちくま他、過去の代表作を集めた文庫を持っているファンにとってもうれしいセレクトですよね。
十蘭が、こうして手にとりやすい文庫のかたちになるのはほんとにうれしいですね。この文庫化を機に、広く小説読みのみなさんに読まれるといいなあと思います。
前回の記事(の引用ばっかりで恐縮ですが)に《一点だけ、やや残念な点があるとすれば、小池昌代さんの解説がちょっと薄口なことかな》《だって、いきなり解説の最初に、《それほどたくさんを読んだわけではない》《この文庫には十の短篇が収められている。初めて読んだ作品が多い》なんて書いてるんだもの》と書きました。。今回も残念ながら、同じ点にやや不満を覚えました。
今回の解説は東直子さんなんですが、冒頭《私は、実は今まで、久生十蘭の小説を読んだことがありませんでした》とあります。ええーっ、また読んでない人なの……。せっかく渋いセレクト(編者の名前がないから、今回もおそらくは文庫編集部の選ですよね)で十蘭読みを喜ばせてくれたのだから、2冊続けて「読んだことない自慢」を解説のネタにする人を起用するようなことはせず、十蘭の世界をストレートに語ってくれる、しっかりした人をあててほしかったですね。
これも、前回書いたことの引用になりますが、《教養文庫の都筑道夫、朝日文庫の橋本治(再録だけど)、久世光彦といった強者十蘭読みによる、読みでのある解説に親しんできた者としては、その点だけがちょっと残念》なのです。だからといってこの文庫がダメということではぜんぜんないのですが、もし次の機会がまたあるとしたら、河出文庫さん、今度こそぜひ、「読んだことなかったけど、読んでみたら、おもしろーい!」みたいな方ではなくて、十蘭の小説世界に深い愛情と理解のある方をお願いしたいものです。
ちょっとよけいなことも書きました。初めての方にいきなりおすすめできるものかどうかはちょっとあれですが、十蘭読み、単行本や全集に手を出すことまではしていない、という、他社の文庫で十蘭を読んできた方には強くおすすめですよ。
かつては大好きなギター弾きの1人でした。「ゲイリー・ムーアさん(英国のロックギタリスト)が死去」(2/7 読売新聞)
《ゲイリー・ムーアさん 58歳(英国のロックギタリスト)ロイター通信などによると、6日、休暇で滞在していたスペイン南部のホテルの部屋で死去。/英領北アイルランド出身。8歳からギターを弾き始め、ロックバンド「シン・リジー」などで演奏した。ソロでは、ビートルズのジョージ・ハリスン、オジー・オズボーン、ビーチ・ボーイズなどと共演した。》
彼のキャリアをまとめるのに、代表的共演者としてビーチ・ボーイズを挙げるのがどうか、という問題はとりあえずさておき……。ゲイリー、ギターを手にしたばかりのギターキッズだったころは、大好きなギタリストでした。1980年代の初めに日本でブレイクした『大いなる野望』が初めてのゲイリー・ムーア体験でした。
途中、ブルース回帰などといって、ハードな音やプレイはそのままでブルースを弾きだしたりしたのが好きになれず、離れてしまうまでは、よく聴いたものです。シン・リジィやコラシアムII、ソロのとくに初期、コージー・パウエルとの共演あたりは、ほんと、好きだったなあ。コピーしたり、バンドで演奏したりもしたっけなあ。
ちなみに、ぼくにとっての、ゲイリーのベストプレイは、コージー・パウエルのソロアルバム『オクトパス』に入っている、ギターインスト「Dartmoore」。これは、初めて聴いた中学生のときから、今にいたるまでずっと、ぼくにとっての、ギターインストのオールタイムベストです。ぼくは「泣きのギター」って、そんなにこだわりがあるわけではないんですが、このギターの「泣き」っぷりはすごいです。
↑最初の3枚からのベスト(右)にも収録されてます。余談ですが、コージーのソロ作最初の3枚にはいずれもゲイリーが参加していて、「キラー」「サンセット」といった名曲が生まれているので、ゲイリーファンは必ずチェックを。
というわけで、今晩は「Dartmoore」を繰り返し聴きながら、ゲイリーを偲びたいと思います。たくさんのすばらしいプレイをありがとう。
◆今日のBGM◆
なんか、この文章を書きながら、昔のレコードやCDを聴いていたら、ほんとに涙腺がヤバくなってきました……。たくさんあるゲイリー・ムーアがらみの作品のなかから、思い出深いものをいくつか紹介します。
まずはこれ。1982年のアルバムです。中学生のとき、これでゲイリーの名前を知り、当時聴きまくった、思い出深いギターアルバムです。当時の邦題は、『大いなる野望』。やっぱりこのタイトルでないとピントきませんね。ギターの勉強もずいぶんさせてもらいました。バラード2曲がgood。
ソロ名義だと、その前のこれもよく聴きました。「パリの散歩道」が入っているアルバムです。
その「パリの散歩道」、先のはフィル・ライノット(当時は「リノット」表記)のヴォーカル版ですが、ライヴではインストで演奏されてましたね。このライヴのLPには、ギターのTAB譜がついていて、よくコピーしました。
フィル・ライノットとは、シン・リジィ以降も何度かタッグを組んでますが、このアルバム収録の「アウト・イン・ザ・フィールズ 」のデュエットはなかなかいいんですよね。ギターもめちゃくちゃドライヴしてます。ゲイリーはブルースごっこより、やっぱハードロックですよ。ちなみに、「アウト・イン・ザ・フィールズ 」の12インチシングルB面では、リジィの「それでもきみを(Still In Love With You)」を再演していて、それもなかなかgood。
ソロ名義、シン・リジィ以外で、バンドとして関わった作品のなかではこれが最高です。ジョン・ハイズマン率いるジャズロックバンドで、ドン・エイリーも参加してます。めずらしい、アコースティックギターのソロなども聴けますよ。
で、最後はリジィのこれを。ゲイリーというとすぐにシン・リジィが引き合いに出されますが、実はフルで参加してるアルバムってこれだけなんですよね。で、その唯一のフル参加アルバムが大傑作、バンドの代表作の1つになったわけですね。とにかく、この時期のゲイリーのギターはすばらしいです。「アリバイ」の短いながらワイルドなソロもいいし、アルバムのラストを飾る「ブラック・ローズ」でのスコット・ゴーハムとのツインリードはたまらんです。アイリッシュハードロックの1つの頂点でしょう。ジャケもいいしね。
仕事帰りの夜、駐輪場で出会う猫たちがいて、彼らの姿を見たり、ときにはおしゃべりしたりするのは、独り家路につく前のささやかな楽しみだったりするんですが、今日は、比較的慣れた1匹だけじゃなくて、わらわらとみんな(全部で4匹います)が寄ってきてくれて(いつもなら、まずこんなことはないのです)、気づいたら、足元にふわふわが勢揃い! 超幸せ! 猫マジックでめろめろの空犬です。
でも、今日はあまりにも寒くて、しゃがみこんで話しているだけで遭難しそう。長居はできません。この勢揃い、今のうちに集合写真を撮らねばと、カメラをとりだそうとばたばたしているうちに、2匹がふいと離れてしまいました。ああ……。
で、慌てて撮ったのがこちら↑。そのまま撮ったらまっ暗。フラッシュONにしたら、まぶしいよう、という感じで、そっぽを向かれてしまいました……。寒くて寒くて、手がかじかんでしまって、デジカメのメニューボタンなんか操作できませんからね。でも、こうして2匹がくっついている様子がかわいくてかわいくて。しばらく動けませんでした。
(写真といえば、最近、ブログにあげた写真がすべておかしなことになってますね。何をどうミスったのだろう……。)
野良たちって、ふだんはどうしてるんでしょうね。今日みたいに寒い日にはそんなことが気になってしかたありません。この日も、うち1匹が鼻をぐすぐす言わせていました。何かしてやれるといいんだけどなあ……。
ちなみに、この駐輪場、この3月でなくなってしまうのです。自分が不便になるのはまったく何も気にならないのですが、この子たちと会えなくなるのだけが残念で。さらに、この子たちがどうなってしまうのか、それも気になって気になって……。
……と、本にも書店にも関係ない話でした。今日はルーエで、こんな買い物をしてしまいましたよ。じゃーん。
これ、昨年出たときからずっと気になってたんですよねえ。書名だけ見れば、出版文化史と本のデザインに興味のある空犬ならすぐとびつきそうな本に思われそうで、実際本のテーマ的には即買い対象本なんですが、これ、10,500円もするんですよ……。この本、三省堂書店神保町本店、4Fの本・書店などの本を集めた棚(大好きな棚です)に、見本が置いてあるんですよ。その棚の前に行っては、いつも見本眺めてたんですよねえ。
先日の吉っ読の新年会に、P社のIさんがこの本を持ってきてくれたのです。実物は三省堂の店頭で見てたんですが、こうして吉っ読仲間の所有物になっているとインパクトが断然違いますからね。で、その影響というか後押しもあって、買っちゃいましたよ。BOOKSルーエで。わざわざ取り寄せてもらって。
いくらしょっちゅうまとめ買いをしているとはいえ、1万円超の高額本を機会はそうそうありません。ぼくが図書カードで払おうとすると、「図書カードだと、お金使ったって実感がないから、なんか大丈夫な気になっちゃいますから、気をつけたほうがいいですよ!」と花本氏。注意してくれましたから(笑)。やさしい書店員だなあ。さらに、「空犬さんの総量規制計画、あんまり進んでないね」って。たしかにその通りだ(笑)。しかも、こんな高額本買うときぐらい、他はガマンすればいいのに、十蘭の文庫も買ってるし(苦笑)。
そうそう、そのBOOKSルーエ、おもしろいフェアや文庫の平積みもあって、写真も撮ってきたのに、なぜかファイルがこわれちゃってるみたい。最近ブログにアップした写真、みんなダメになってるなあ(泣)。なので、店頭の様子はまた撮影させてもらってから、あらためてアップします。
先の本は書店本ではないですが、ぼくの好きないわゆる「本の本」の仲間。で、この本が並んでいる、三省堂書店神保町本店4Fの、「本の本」棚から、以前の記事で書名だけ紹介した3冊のうち、この2冊を買ってきましたよ。今日だけで、すごい出費だ……。
すぐに読むつもりなので、読んだらまたあらためて紹介します。そのとき一緒にあげた3冊のうち、前野久美子『ブックカフェのある街 仙台文庫1』(メディアデザイン/本の森)、神保町の書店でなかなか見かけないなあと思っていたら、《発売元「本の森」は、日販、トーハンと取引があるようですが、おそらく委託配本ルートではなく、それぞれの東北支店納品→物流センター→書店搬入なので時間が掛かると思われます》と、書肆紅屋さん(@shoshibeniya)に教えていただきました。なるほど、であれば、気長に店頭に並ぶのを待つのがいいですね。やっぱり、書店関連本はリアル書店で買いたいですからね。
ところで。
【“とうとう買ってしまった……『書影でたどる関西の出版100』”の続きを読む】
以前に2度ほど紹介しておきながら、なかなか見にいけずにいたこの展覧会、やっと行ってきましたよ。「『100かいだてのいえ』のひみつ 岩井俊雄が子どもたちと作る絵本と遊びの世界展」。
場所は、武蔵野市立吉祥寺美術館。コピス吉祥寺、A館の7階です。この美術館、企画展の展示室自体はそれほど大きなスペースではなくて、1室だけなんですが、会場の前には、『100かいだてのいえ』の絵を全部縦に並べた長い長い絵が飾ってありますし、壁には、子どもたちが描いた、自分なりの「100かいだてのいえ」の絵がぺたぺたと、それこそ壁を埋めつくさんばかりに貼ってあってあるなど、展示室以外にもいろいろ見るところがあります。
とくに、壁に貼られた子どもたちの絵はすごい量で、壮観です。近寄って、ひとつひとつを見ると、驚くほどうまく描かれたものもあれば、荒々しい線が交差するだけのワイルドなものもあり、生き物がいたり、おばけがいたり、宇宙人がいたりと、岩井作品に刺激を受けた子どもたちの想像力がいい具合に爆発していて、実ににぎやか。思い思いの部屋が思い思いのタッチで描かれていて、なんとも、実にかわいいのですよ。これらを眺めているだけで、まず幸せな気分になれること間違いなし。
展示室に入ると、壁4面のうち、1つには外と同じように、子どもたちの作品が貼ってありますが、それ以外は、岩井さんの原画や、作品ができあがるまでのスケッチやメモなどが展示されています。そして部屋の中央には、段ボールなどの材料を使った、動物や家など立体作品も。これがまた、素朴でいい感じ。
なにしろ大ヒット絵本の関連展示ですからね、会場は親子連れでいっぱい。あちこちから、楽しい会話が聞こえてきます。こんな感じ。
(ママと女の子が原画を見ながら)「ねえ、ママ」「なに?」「これ、ぜんぶ、そのひとがかいたの?」「そうだよ」「ふーん。けっこううまいね」(笑)。
(別の親子連れが、原画に添えられた岩井さんのサイン(Toshio Iwai)を見て)「これかいたひと、にほんじん?」(笑)。
(中央の段ボール作品を見ていた男の子(?)が)「あっ、○○○(その子の名前と思われる)がつくったやつだ!」……いや、たぶん、それは岩井さんが作ったやつだと思いますよ(笑)。
ほかにも、原画を見ながら、絵本のストーリーを親にことこまかに説明している子(原画なので、ネームがないからかな)がいたり、原画をじーっと見つめて「どうやってかいたの?」と手法的なところに興味を示している子がいたり、とにかく、会場全体に子どもたちのワンダーが満ちていて、ほんと、たまりません。
この日は、展示を見る前に入院中の友人を見舞ってきたところで、昨日から気分的にはちょっと落ち着かない感じが続いていたんですが、会場を出るころにはすっかり幸せな気分になっていましたよ。
この楽しい展示は2/20まで。あと2週間ほどですから、岩井さんファン、『100かいだて』シリーズのファンはもちろん、まだ読んだことないけど気になるなあ、という方はぜひお急ぎください。絵本を読んでいればなおいいですが、絵本を知らなくても、十分に楽しめると思いますよ。それに、なんといっても、こんなすてきな展示がたった100円で、小学生以下は無料ですからね。大人も子どもも楽しめる内容です。おすすめ。
書店関係の知り合い、それも大事な友人が、からだをこわして入院してしまいました。
うう、こういうときはどうすればいいんだろう。何をすればいいんだろう。今日、病院に駆けつけることができればよかったんだけど、面会時間に間に合わず、行けなかったので、よけいに気ばかりあせります。情けないことに、何をすべきかよくわからず、そんな自分にいらいらしています。書店を応援するなどと偉そうなことをふだんから書いてるくせに、こういう肝心なときに、ごく身近な書店員の友人の力になることが何もできないなんて……。強烈な無力感にさいなまれています。
とりあえずは、着替えほか必要と思われるものを差し入れすることに。あと、相手が書店員で、本好きなので、文庫本をたくさん持っていこうと思っています。ほかに何かできることあるかなあ……。
今日は立春かあ。日中はあったかいを通り越して暑いぐらいでしたね。そんななか、御茶ノ水、千駄木、秋葉原、新宿ほか、いろいろ書店回りしてきたら、さすがにくたくたです。今日だけじゃなくて、今週はけっこういろいろ書店を回ったりしたので、今週見てきたお店のことを、まとめて紹介します。(なお、今週だけで、かなりたくさんのお店を見てきたので、下に取り上げたのはごくごく一部です。)
まずは新宿、紀伊國屋書店新宿本店から。2階で開催中のキノベスとピクベスのコーナーをのぞいて、ペーパーをゲットしてきましたよ。
ご存じの通り、1位は『いちばんここに似合う人』。キノベス冊子には、訳者の岸本佐知子さんも稿を寄せています。書評空間では著者のミランダ・ジュライさんのメールインタビューも読めますよ。あと、こちらの記事では、店頭の写真が何枚か見られます。「全国の紀伊國屋書店員が選んだ「2010年最もおもしろかった本」とは」(1/27 新刊.JP)。
ピクベスのほうは、1位はなんと、山尾悠子さんの『夢の遠近法』。全部比較してませんが、上位を見ると、キノベスとは重なりなしで、同じお店のベストといっても、まったく趣向が違うものになっているのがおもしろいですね。
続いて。ブックファースト新宿店。サイトの案内を見落としていたので、今頃になっちゃったんですが、ブックファースト新宿店、まもなく改装のようですね。「新宿店 店内改装工事による臨時休業のお知らせ」(1/11 ブックファースト)。
2/11(金)は20:00までの営業、12(土)、13(日)が臨時休業で、2/14(月)にリニューアルオープンとのこと。サイトの案内によれば、改装後は《コミックの在庫を大幅に拡大するとともに、その他のジャンルのレイアウトも、これまで以上にご利用いただきやすいよう変更する予定です》ということだそうです。同店はジャンルがゾーンに分かれた造りで、売り場によっては一度通路に出てからアクセスするようなかたちのレイアウト。改装後がどんなふうになるのか、ちょっと楽しみですね。
この改装に関係があるのかないのかわかりませんが、1階のカフェが2/28に閉店になるようです。「新宿店 ブルースクエアカフェ閉店のお知らせ」。
このカフェ、ぼくはあまり利用していなかったんですが、カフェを利用されていた方は、《新宿店「F・Gゾーン限定 カフェチケットサービス」で配布しておりました、3月31日まで有効のドリンク無料チケットに関しましては、2月28日まではブルースクエアカフェにてご利用いただけます》とのことで、さらに《3月1日以降、3月31日までの期間に限ってサービスカウンター(B2階Eゾーン)にてポイントカード200ポイントと交換させて頂きます》とありますから、期限にご注意を。
次は渋谷へ。先日、ちょっとごぶさただったリブロ渋谷店をのぞいてきました。「著名人の本棚 朝吹真理子さんの本棚」を見てこようと思っていたのに、すっかり忘れてしまった……。何やってんだか。
というのもね、同店、レジ周りの感じが以前とちょっと変更になっていて、フェア台があったところはファッション雑誌棚に、前に「著名人の本棚」があったあたりもファッション関係になっています。つまり、印象としては、お店の中央部分がファッション一色になった感じなのです。
MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店ができて5か月。渋谷の新刊書店で距離的にいちばん近いのはリブロですから、影響がないわけはないでしょう。そういうこともあって、立地や客層を考えて今まで以上に自店の得意分野=ファッションに力を入れたというのは、方針としては当然といっていいもの。それはものすごくよくわかるんですが、ファッション関係にはほとんど縁のないぼくのような客は、(勝手な物言いなのは十分承知のうえで)ちょっと残念な気がしてしまったりもします。これまで、この空犬通信でも何度か同店のフェアを紹介したことがありますが、けっこうおもしろいものがいくつもありましたからね。そういうフェアが今後はどうなるのか、ちょっと気になります……。
リブロの様子が気になったので、渋谷の新刊書店の店頭の様子にほかに変わったところがないかどうか、ちょっと見てみようと思い、渋谷の書店を片っ端から見てきました。仕事的には直接関係のない、TOWER BOOKSも久しぶりにのぞいてきましたよ。
↑偵察のつもりが、こんな本を買っていたりもする……。アメリカのオタクが作った日本のおもちゃの本。2千数百円の本がセールで777円になってました。この値段で、図版だらけ、しかもオールカラーなので、買ってみましたが、50年代、60年代のクラシックトイも、2000年代に入ってから作られたものも、ウルトラもライダーもそれ以外も、フィギュアなど「モノ」のかたちのいわゆるおもちゃもスチルなどの写真類もごっちゃまぜ、なんかもう、「ああ、わかってないな!」といらいらさせられる造りでした……。
今日は、用事があって往来堂書店に行ってきました。直前にJRの駅にいたので西日暮里から歩こうと思ったら、間違えて京浜東北快速に乗っちゃったので、しかたなく田端で下車。ふだん来ない駅なので知らなかったんですが、田端って、改札階二階にTSUTAYAがあるんですね。TSUTAYA アトレヴィ田端店。
ご覧の通り、改札階から眺めると、書棚が並んでるのが見えて、なかなかいい感じ。お店の案内には、《2Fは駅構内を見渡せるパブリックスペースでスターバックスのコーヒーを飲みながら購入前の本を読める癒しの空間があります》とあります。時間があれば、のぞいてきたかったんですが、今日は移動の途中だったので断念。
往来堂書店では、妻本フェアが開催中でしたよ。
フェアには、いろいろ興味深い本が並んでいたんですが、1点、まったくその存在すら知らなかった本が並んでいました。こちらがそれ。
- 高見沢潤子『のらくろ ひとりぼっち 夫・田河水泡と共に歩んで』(光人社NF文庫)
タイトルの通り、のらくろの田川水泡さんのおくさまの書いた本。のらくろはそんなに熱心に読んでいるわけではないのですが、別にそれほどのファンではなくても、この手の本は存在ぐらい知ってそうなもの。それがまったくノーチェックだったのは、やっぱりレーベルが光人社NF文庫だから、ですね。戦記もの、読まないものなあ。光人社NF文庫の本を買うのって初めてかもしれない、と思いつつ、手にしました。
あと、楽しみしていたD坂文庫2010冬の冊子、「往来っ子新聞」の最新号含む数号もいただいてきましたよ。
それにしても。短期間にいろいろな書店の棚を見ると、その違いがよくわかっておもしろいですよね。新刊書店の棚が金太郎飴だなんて、ほんと、誰がどの棚・店見て言ったのか、って感じがします。往来堂書店、別にあらためて紹介するまでもないことかもしれませんが、やっぱり、棚の独自性はすごいです。今日は時間があったので、文芸他の棚を端から順にじっくり眺めてきたんですが、博文館新社の叢書新青年とか並んでるものなあ。このシリーズ、大型書店でもなかなか揃えてませんよね。残念ながら(笑)全部持ってるのでさすがに重ね買いはしませんが、ああ、持ってなかったらここで買うのになあ!とわけのわからない悔しがり方をしたくなりましたよ。おもしろい書店って、フェア台とか目立つところだけじゃなくて、レギュラーの棚がおもしろいんだよなあ……そんなことにあらためて気づかせてくれるお店です。
昨年知り合ったある方が、乱歩・正史好きであることをごく最近知り、今さら感ありありな話題のメールで盛り上がったりしたもので、beco cafeの本棚に乱歩・正史の文庫を追加したり、自宅で乱歩・正史を読み返したりしと、すっかり乱歩・正史気分になっている空犬です。さて。ちょうど乱歩な気分が盛り上がっていたところに、偶然、乱歩関連のニュースが舞い込んできましたよ。演劇関係はうといもので、まったくのノーチェックだったんですが、こんなのがあることを、教えていただきました(サンドラさん、情報、ありがとうございます!)。「*pnish*プロデュース 『黄金仮面』」。
サイトの案内によれば、このような内容です。
《江戸川乱歩による長編推理小説『黄金仮面』。
著者が残した多くの作品の中でも、より娯楽性に富んだ傑作として知られ、
初出から80年が経過した今なお、圧倒的なエンターテインメント性を放っている。
冷たい微笑を煌めかせ、華麗な窃盗術で世間を脅かす黄金仮面。
そして、その不気味な仮面に隠された素顔を暴くべく、事件解決に乗り出す明智小五郎。
この2人の対決の行方は・・・ 》
自分の好きな探偵小説を映画ならともかく舞台で見たいか、と言われると、あまり舞台関係に関心が向いていない身としては正直微妙な感じがしないでもないんですが、上の内容紹介にもある通り、乱歩通俗長編のなかでは派手めのストーリーで、タイトル通り文字通りの「黄金仮面」が出てくる見た目の派手さもありますから、仕立てようによっては舞台映えするのかもしれませんね。
東京・金沢・神戸の3都市での公演が決定しているそうです。ちなみに、東京は、2011年2月16日(水)~20日(日)、場所は、新宿の全労済ホール スペース・ゼロ。料金は前売も当日も5,500円。昨年から売り出されてますから、まだ残っているのかどうかはわかりませんが、ご興味のある方はぜひチェックしてみてください。ぼくは、というと、うーん、ちょっと迷って考えます。
その他、くわしいことは、関連のサイトをご覧ください。公式ブログはこちら、*pnish*の公式サイトはこちら。
未読の方で舞台版にだけ興味がある、という方はあまりいないかもしれませんが、本作を知らない方で、この具体化を機に興味を引かれたという方がもしもいらっしゃったら、まずは原作をどうぞ。既読の乱歩者・探偵者も、もしも舞台をご覧になるのであれば、やはり原作のほうを再読しておきたいものですよね。入手しやすい文庫をいくつか挙げておきます。そうそう、ポプラ社文庫では、復刊されなかったんですよね……。
- 江戸川乱歩『黄金仮面 江戸川乱歩文庫』(春陽文庫)
- 江戸川乱歩『黄金仮面』(創元推理文庫)
- 江戸川乱歩『黄金仮面 江戸川乱歩全集〈第7巻〉』(光文社文庫)
先週の吉っ読新年会@becoとそこで話したブックンロールのこととか、取り上げたい新刊のこととか、しばらく前にやっと観ることができた『キック・アス』(最高!)のこととか、書きたいことはいろいろたまってるんですが、今日はやはり、書店的には、これでしょうね。「丸善&ジュンク堂書店、共同の販売サイトにリニューアル」(2/1 新文化)、「丸善&ジュンク堂書店へのサイトリニューアルのお知らせ」(2/1 丸善&ジュンク堂書店)、「CHIグループ、ジュンク堂、雄松堂の子会社化完了」(2/1 文化通信 ニュース速報)。昨年、大型出店の嵐で業界に話題を提供しまくった書店の動きだけに、注目している方も多いことでしょう。
まずは新文化のほうを見てみます。《2月1日、ジュンク堂書店はCHIグループと経営統合し、丸善とグループ化。これを受けて「ネットストアHON」はジュンク堂と丸善の共同運営とし、同日付でリニューアルオープンした。丸善とアマゾン共同の「丸善オンラインストア」は2010年12月31日付で終了している。》
丸善&ジュンク堂書店のサイトも見てみましょう。《2011年2月1日、ジュンク堂書店は大日本印刷子会社のCHIグループと経営統合し、名実ともに丸善書店と同じグループとなりました。私たちの使命は、あらゆる手段で「本」を提供すること。全国に約80あるリアル店舗だけでなく、ネットストアもお客様に本を提供する大切な手段です。私たちだけにしかできない、店舗とネットの架け橋となるようなサービスを提供するために、ここに丸善&ジュンク堂書店のサイトとしてリニューアル致しました。》リアル店舗とネットストアの両方が「大切」だと思っているということが強調されてますね。
今回の経営統合は以前からアナウンスされていたとおり。このCHIグループ株式会社には、ご存じの通り、図書館流通センターや、学術書・洋古書などを扱う雄松堂書店なども含まれていますから、「書店」というくくりで話をするときにどこまでを含めるかにもよりますが、文教堂書店やbk1も傘下であることを考えると、広義の書店グループとしては、日本の出版・書店史上、最大規模ですよね。いやはや……。
で、サイトのリニューアルについて。再び新文化から。《リニューアル後は、全品送料無料とし、午前11時までに注文すれば当日出荷する。また、大阪・京都・兵庫・奈良・和歌山・滋賀限定で、午前10時半までに注文すると当日配達となる「お急ぎ便」(有料)も用意。検索と同時に、両書店・各店舗の在庫状況、配架情報も表示され、在庫を確認のうえ、店頭での取り置きも可能。》というもの。ここでも、リアル店舗との連携強化が強調されているのがわかります。ところで。へえ、特定の店舗での取り置きもサイト上でできるんだ。これは、リアル書店派には便利かも。
くわしくは、「ジュンク堂書店/インターネット部門」(アカウントは@junkudo_net)の方が、今日いろいろツイートで紹介していましたから、くわしくは、実際にご覧になってみるのがいいかと思いますが、ツイッターで紹介されていたところを、少し引いておきます。ジュンク・丸善の2ブランドがサイト統合されたわけですから、店舗案内はどんなふうになったかなと思ったら、店舗情報はこんな感じ。エリアごとにジュンク堂と丸善の店舗が一緒に確認できるようになっていますね。意外に近くにあるな、とか、こっちの丸善は文具だけだな、なんてのがわかります。関東エリアはこんな感じ。同店が《今回の目玉のひとつ》とうたうのがジャンル別のページ。芸術・音楽だと、こんな感じ。
あらためてことわるまでもないんですが、ぼくは、新刊和書については、「お店で買う派」なので、ネット書店は調べものには使うものの、買い物はたまにしかしません。店頭で見つけられないもの(棚から本を見つけるのは相当得意なほうだと思うのですが、やはり苦手なジャンルはありますし、たまにしか読まない・買わないのコミックは、ほんと、どこに何があるかわからなくて、毎回苦労し、店頭で買えなかったこともしばしば……)とか、店頭で買うのがはずかしいもの(あんまりないけど。ほんとだってば)、お店に行けないとき(ほとんどないけど)ぐらいです。
なもので、サイトのリニューアルの話だけなら、それほど強い関心はないのですが、それよりも、この2書店が《名実ともに》1つのグループになったことで、書店業界全体にどんな影響があるのかないのか、他のお店・チェーン、とくに2書店の店舗があるエリアのお店にどんな影響があるのかないのか……書店派としては、やはりそういうことが気になりますよね。
丸善&ジュンク堂、リアル店舗のことも少し。まず、ジュンク堂の池袋本店。今日から営業時間が延長で、夜23時までの営業になったようです。先日、お店を訪れたときに、貼り紙がしてあったので、知り合いの担当さんに聞いてみたら、(当たり前のことなんでしょうが)もちろん人員の補充・補強はなく、現体制で延長分もカバーすることになるという話でした。会社帰りに利用するお客さんには便利ですが、お店の人たちは大変だ……。
丸善のほうも。昨日、1/31、品川駅構内にあったエキュート品川店が閉店となりました。閉店の案内がこちらにあります。2005年の開店ですから5年ちょっとですか。30坪ほどのお店でしたね。まだこの空犬通信で書店レポートみたいな記事は書いてなかたけど、開店まもないころに見に行ったっけなあ。品川ではやはりBOOK EXPRESSを利用することが多かったので、2階にあってやや面倒で、規模も小さめだった丸善のほうはあまり利用する機会がありませんでした。今回の閉店、品川駅の改装と関係あるんでしょうか。エキュートで丸善で、といえば、エキュート立川のPAPER WALLの隣にあった丸善の文具売り場(いま調べたら、「MARUZEN CABINET」という名前だったそうです)も昨年閉まってしまいましたね。狭いながら楽しい品揃えで、けっこう好きだったのにな。何か、店舗整理でも進んでいるのでしょうか。
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