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空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

今週末からです……早稲田青空古本祭

今日は残業帰りに、吉祥寺でBOOKSルーエジュンク堂書店をのぞき(リブロは間に合わなかった……)、仲良しの書店員さんと一杯やってから帰ってきましたよ。


このところ書店レポートの記事がないね、と指摘されたりしているんですが、そうなんです、本業(書店の話しか書いてないので、忘れられがちなんですが、一応、これでも編集者なんですよ)のほうが忙しくて、日中はもちろんのこと、会社帰りに書店に寄る時間も十分にとれないような状況で。いまの仕事が落ち着いたら、またあちこちの書店の様子やフェアをレポートしたいと思いますが、しばらくは無理そうな感じです。その手の記事を期待されている方には、本当に申し訳ないです。


さて、今日はちょっと新ネタをあげる元気がないので、先日、一度取りあげていますが、今週末に始まるこのイベントの件を、再度、紹介しておきましょう。


    第26回 早稲田青空古本祭
    会期:10月1日(土)~6日(木)
    時間:10:00~19:00(最終日17時終了)
    会場:穴八幡宮境内

今度の土曜日から。楽しみだなあ。土日は用事で行けないので、平日に時間を作れるかどうか。古本好きのみなさんは、手帳に予定の記入をお忘れなく。来週、早稲田でお会いしましょう。


F-WOROLD、文庫の歩き方……書店フリペを紹介します

しばらくの間、断続的に、書店フリペをいろいろ紹介していきたいと思います。と、前おきしておいて、初回がいきなり「書店」フリペではないフリペの紹介で恐縮なんですが、これはぜひ紹介しておきたい。


(*以下、フリペ・冊子に、編集人・発行人・担当などのお名前の明記がある場合のみ、文中でお名前を紹介しています。ツイッター発だったり、ツイッターで話題になっていたりするものについては、アカウントを入れたものもあります。)


福島県発のフリーペーパー「F-WORLD」Vol.01です。発行は、NPO法人オンザロード福島支部、2011/9/11付けになっています。ご覧の通り、形状は福島県のかたち。オールカラーで36ページ。


F-WORLD Vol.1

特集は、「県民134人に聞いた福島の本音」。表紙にも顔写真が載っていますが、学生の方、無職の方、自営業、会社員、さまざまな職・立場の福島のみなさんが顔写真とともに登場、一言を寄せています。


地域の書店で配布されているようですが、内容的には本や書店にはとくに関係はありません。先の134人のなかにも書店・出版関係者らしき人はいないようですし、特集以外の記事にもとくに本に関係する記事(たとえば、新刊紹介、書評、ご当地本紹介など)もありません。でも、このフリペは、フリペ好きのみなさんにはぜひチャンスがあれば手にとってみてほしいなと思います。被災地からの情報発信として、こういう形態もあるのだ、という一例として。


ちなみに、このフリペ、読みたいなあ、とこのブログに書いたところ、それを読んだ福島の書店の方がわざわざ送ってくださいました。ありがとうございました。いまのところ、都内の書店では見かけませんので、その方のご厚意がなければ、こうして紹介することもできないところでした。東京ではなかなか見るチャンスがないかもしれませんので、ぼくの手持ちは西荻窪のブックカフェ、beco cafeのフリーペーパーを集めたコーナーに置いてもらいます。よかったらそちらで手にとってみてください。


さて、もう1つ、東北発で、書店のものも紹介しておきましょう。すごい迫力ですよ、これ。


文庫の歩き方1109

さわや書店フェザン店さんの壁新聞、「月刊文庫の歩き方」です。お店では、壁新聞として貼られているようですが、フリペコラボ店ではフリペとして配布されているようです。(ぼくはA4で印刷された状態で読んでいます。)


全編手書き、色や飾りもたくさん使われ、これでもか、という感じで、おすすめ本への熱い思いがびっしりと書き込まれています。いいなあ。これ。なんだか、眺めているだけでうれしくなってしまいますよね。この壁新聞に、実際に店頭で出会える地元のお客さんがうらやましくなります。


同店は、フリペコラボ参加店。ということで、この壁新聞の下には、コラボ参加書店さんのフリペがずらりと並んでいるようです。しかも、地図付きで。この様子をツイッターに写真であげている方がいらっしゃいましたので、引いておきます。フリペコーナーの様子はこちら、地図付きの紹介コメントは、こちら


フリペコラボ参加店店頭で手に入るほか、昨日紹介したアーカイブにもあがっていますので、フリペ好きはチェックしてみてください。


書店フリペはまだまだ熱い! おもしろい!

blogでやたらに書店フリペのことをプッシュしてきたからでしょうか、このところ、ふだんはなかなかいけない地域のお店の方が自店のフリペを送ってきてくださったり、こんなの作ったからとか最新号ができたからなどと、わざわざ知らせてきてくださったり、なかには、感想を聞かせてくれ、などと、名指しでうれしいことを言ってきてくれる方もいたり。書店好き、書店フリペ好きには、ほんと、うれしいかぎりです。


で、そのフリペの件、ずっとblogで紹介しなくちゃ、と思いつつ、なにしろ件数が多いので、まとめるのに時間がかかり、すっかり遅くなってしまいました。まとめて紹介しようと思うから大変なわけで、出会ったりいただいたりしたものを、小出しにして紹介していけばいいんですよね(って、そんなこと、早く気づけよ、って感じですよね;苦笑)。


書店フリペといえば、まずはこれを紹介しないと。このフリペの盛り上がりの中心のお店の1つ、書店フリペのコラボを推進したお店と言えば、三省堂書店海老名店さん。その海老名店さんが、三省堂書店各店およびコラボ参加店のフリーペーパーが読める、こんなページを用意されました。「フリーペーパーアーカイブス」(三省堂書店公式ブログ)。始められたのはけっこう前のこと、すぐにも紹介したかったのが、すっかり遅くなってしまいました……。


これはすごいなあ。こういうのがあれば、直接お店で入手できないフリペも、いろいろな本好き書店好きの目にふれることになるのになあ、と思っていたんですが、作り手のみなさんがそんなことを思いつかないわけがありませんよね。さすがです。たくさんある書店フリペの全部が入手できるわけではなく、PDFでダウンロードできるのはこの記事を書いている時点で10種ほどですが、それでもフリペ好きにはうれしいサイトですよね。


フリペは、基本的には、配布店の店頭で出会うのが、お客さんにとってもお店にとってもいちばんだと思うのですが、でも、遠くて行けないがどうしても読みたい、という方はいるでしょうから、そのようなときはぜひこのサイトをご利用になるといいと思います。この後、種類も増えていくかもしれませんから、フリペ好きは定期的にチェックしてください。


サイト以外に、書店フリペを紹介しているものとして、こんな「フリペのフリペ」も登場しましたよ。語学書などを中心に刊行している出版社、ベレ出版が発行している書店向け通信「ベレベレ通信」の最新号で、書店フリペが取りあげられています。「書店さん発フリーペーパーカタログ2011」(*注意:リンク先はPDFファイルです)。先の三省堂書店のアーカイブにないものも含め、11種の書店フリペが紹介されています。おお、BOOKSルーエの「ルーエの伝言」も取りあげられてるぞ。


「ベレベレ通信」は、ふだんは語学書の話題などが中心ですが、語学系版元発の通信としては異例なことに、自社出版物以外、語学書以外の話題も多くて、語学書担当者でなくても楽しめるような内容になっています。過去にも、フリペやPOPなど、書店寄りの話題を何度も取りあげていて、ぼくも参考にさせてもらっています。吉っ読のイベント「ブックンロール」の初回で、書店フリペを話題で取りあげた際には、会場で、ベレベレ通信の書店フリペ関連の号を配布させてもらったこともあります。サイトからバックナンバーがダウンロードできますので、タイトルを見て気になる号があったら、ぜひ見てみてください。読み物としてとてもおもしろい号がいくつもありますので。


と、あいかわらず活発な動きの書店フリペ。この盛り上がりはまだまだ続きそうですよね。今回は、三省堂書店のアーカイブとベレベレ通信の紹介で長くなってしまったので、個別のフリペの紹介は、記事をあらためたいと思います。


なお、個別のフリペの紹介は、この後続けていきますが、それとは別に、誰に頼まれたわけでもなく、自分の趣味で、ということなんですが、フリペの一覧のようなものも作っているので、完成(はなかなかしないと思うので、一段落)したら公開したいと思います。


雑誌の付録……のことは実はよくわからない……でも、なんとかしたい

昨晩は、ツイッター上の書店員さんたちの間で、雑誌の付録の件が話題になっていました。とても興味深いやりとりがされていたんですが、ツイッターをご覧になっていない方も見られるよう、こんなまとめができています。「「ジョージと付録」外伝~雑誌付録を巡る環境は変わったか~」。これ、雑誌の編集、販売、制作、とにかくなんらかのかたちで雑誌に関わっている版元関係者は全員読むべきだと思います。


ぼく自身は、付録目当てで雑誌を買うことは(ゼロではないし、過去に、実際にそういう買い物をしたこともあるだろうと思いますが)ふだんはほとんどありません。だから、買い手の感覚として、付録が購買動機としてどうなのか、どれだけありがたいもの、うれしいものなのか、はさっぱりわかりません。また、ぼくは出版社につとめる者ですが、雑誌の担当ではありません。過去に雑誌を手がけたときも付録とは無縁の媒体だったので、作り手にとっての付録、のこともよくわかりません。もちろん、売り手ではないので、書店員さんたちの店頭での、付録にまつわる苦労も(想像はできますが)実感としてはまったくわかりません。


そういう意味では、完全な門外漢、部外者なんですが、でも、付録をめぐる書店員さんたちの声を見聞きとしていると、とても自分に関係のない世界だからと、見ないふり、聞こえないふりはできないんですよ。この件に少しでも関心を持たれた方は、とくに、版元関係者は、先のまとめはもちろん、ぜひ、以下のまとめにも合わせて目を通してほしいものです。



我々(と、あえて自分も含めます)出版社の作った付録付き雑誌を扱っている書店員さんたちが、これだけ、まさに「悲鳴」としか言いようのない声を上げ続けているんですよ。我々が、それを無視するわけにはいかないだろうと思うのですよ。この声が、できるだけ多くの関係者に届くことを願わずにはいられません。


ところで、先に、付録につられて買ったりしないと書いたくせに、昨日、こんなものを買っていたりすることを、ここで白状します……。


【“雑誌の付録……のことは実はよくわからない……でも、なんとかしたい”の続きを読む】

探偵者として応援したい……三一書房のこと

理論社のときにもいろいろ考えさせられたことですが、出版社、それも大変な状況にある出版社のことについて書くのはむずかしいことがありますよね。その社が、労働争議を抱えていたり、経済的な危機にあったりするような場合はとくに。


この版元についても、いろいろな思いを持っている方がいることでしょう。「 〈本の舞台裏〉帰ってきた三一書房」(9/18 朝日新聞)。


記事は、『ボクが東電前に立ったわけ 3・11原発事故に怒る若者たち』を冒頭で紹介、その版元、三一書房を《大ヒットベストセラー『人間の条件』(五味川純平)で知られ、「反権力」「反差別」の出版姿勢で様々な著者に門戸を開いてきた》と紹介しています。


記事は、こう続きます。《しかし1998年以降は労働争議が勃発。本社のロックアウトなどが発生する中、新刊はもちろん重版の数も極端に減り、出版活動は停滞を余儀なくされる。06年に一度解決したが、新経営陣との間で再度争議が起こり、著者に対する印税や関連企業の従業員への給料の不払いなども続出。会社の存続自体が危ぶまれる状況が続いていた。》


《今年8月、東京地裁で、労働組合側が設立した新社が事業譲渡を受けて出版社の再建を図る和解が成立。新生・三一書房として再スタートを切った。園さんの『ボクが東電前に立ったわけ』は、新社にとって記念すべき新刊第一号になる。》


こまかな事情ではいろいろ違うところがありますが、理論社のときのことを思わせる流れですよね。


三一書房といえば、こういう硬派で社会派な版元というイメージが(とくにある世代の読者には)強いと思います。この種の社会派ノンフィクションはそれほど得意でないほうなんですが、ぼくの本棚には三一書房の本がたくさん並んでいたりします。というのも、この三一書房、探偵小説好きにとっても重要な版元だったりするんですよね。


なにしろ、この会社、海野十三、夢野久作、中井英夫、久生十蘭、香山滋の全集、少年小説大系といったシリーズを出している版元ですからね。うち、創元推理文庫版でそろえている中井をのぞき、海野・夢野・久生・香山は三一の全集を持っています。初めて買った個人全集は三一版の夢野、それも旧版の函入りのほうでした(ちなみに、久生も旧版の函入りのほう)。どれも大事な全集ですが、なかでも香山全集は、ぼくにとっては宝物としかいいようのない、我が家の本棚に並ぶ本のなかでも特別な本たちです。少年小説大系は、さすがに全部はそろえてませんが、探偵がらみのものは全部持っています。国書刊行会の「探偵クラブ」に単独巻がある蘭郁二郎はともかく、平田晋作なんて、手軽(とは言い難い値段だけど)に読めるのって、これだけですからね。


そのほかにも、探偵小説好きとして無視できない本に、以下のようなものがあります。


  • 伊藤秀雄『近代の探偵小説』
  • 伊藤秀雄『大正の探偵小説』
  • 伊藤秀雄『昭和の探偵小説』
  • 伊藤秀雄『黒岩涙香』
  • 紀田順一郎『幻書辞典』
  • 狩々博士『ドグラ・マグラの夢 覚醒する夢野久作』

探偵小説、とくに戦前の探偵小説、新青年周辺の作家・作品を愛する人で、この版元の本を1冊も持っていない人、この版元にお世話になっていない人はまずいないでしょう。それぐらい、探偵者にとっては、重要かつ大事な版元だったんですよね。(それだけに、この版元の本、とくに探偵関係のそれが、ぞっき扱いで、神保町の古書店でたたき売りとしか言いようのない値付けで安売りされているのを見ると、ほんとに悲しくてしかたないですが、それはまた別の話、ということで……。)


探偵小説以外にもいろいろありますよ。別役実さんの戯曲集もこの版元でしたね。装丁が印象的で、戯曲読みではないくせに、古書店で見かけるたびにけっこう気になったりしていました。フィクションでは、福島正実『SFハイライト 新しい夢と冒険の傑作集』といった意外なタイトルがあったり、『国立国会図書館入門』や『現代人の読書』(紀田順一郎)といった本の本も入っていたりと、意外にセレクトの幅の広い三一新書を思い浮かべる人も多いでしょう。


記事の最後には、こうあります。《かつては会社の出版姿勢が高く評価され、「三一だから」と言って書いてくれる著者を多く抱えているのが強みだった。小番(こつがい)伊佐夫・代表は「約13年間続いた労働争議の中で、著者との信頼関係も損なわれてしまった。きちんとおわびをした上で新たな信頼関係を築き、今後も三一らしい本を出していきたい」と話している。》


この「三一らしい本」に、探偵小説や異端文学は含まれてはいないでしょう。もちろんわかっています。わかっていますが、それでも、かつて、そのような分野の本をたくさん手がけ、探偵者にとって宝物のような本をたくさん残してくれたことは、多くの読者がちゃんと覚えていると思います。もちろんぼくも。だから、三一書房には、ぜひともがんばってほしいと、心からそう思うのです。


雑誌のブックカフェ特集にbeco cafeが……ついでにbeco reco2の告知を再度

表紙に本棚が写っている、というだけで反応してしまいます。


  • 『Cafe.mag(カフェマグ)』11月号(グラフィス)

特集は「Relaxing BOOK CAFE 本を読む、本を買う、本と出会う 心地良き ブックカフェ」。いつだったかも雑誌のブックカフェ特集を紹介したことがありましたが、半年もしないうちにまた雑誌でブックカフェが特集されるとはなあ。それだけブックカフェが増え、そして一般的になってきた、ということなんでしょうか。


今回のカフェマグの特集、さすがカフェの専門誌だけあって、とにかくたくさんのお店が紹介されています。聞いたことのないお店もけっこうあって、ブックカフェってこんなにたくさん、あちこちにあったんだと、あらためて驚かされます。カラーで写真も多いので、それぞれのお店の雰囲気がよく伝わってきますね。


e-honのサイトでは、特集の一部を「立ち読み」できますので、購入前に雰囲気をチェックしたいという方は、こちらをどうぞ。


ふつうの喫茶店も好きだし、平日の夜は飲み屋さんに行っちゃうことが多いし、ひいきにしているブックカフェがあるしで、こういうすてきな特集を見ても、実際にあちこちのお店に足を運んだりはなかなかしなかったりできなかったりするんですが、でも、眺めているだけでもいいものですよね、こういうのって。本棚の写真、本がある風景を眺めているだけでも楽しい、そういう向きにはぴったりの1冊だと思いますよ。


ぱらぱら見ていくと、おっ、我らが西荻窪beco cafeも見開きで、しかもお店の2人の写真入りで取り上げられているではないですか! beco cafe、とってもいいお店なので、中央線沿線の本好き&カフェ好きのみなさま、同店を、どうぞよろしくお願いします。


さて、そのbeco cafeで来月こんなイベントをやります、というのは、先日の記事で紹介済みですが、beco cafeの話のにかこつけて、もう一度あげておきます。


    吉っ読 presents beco reco Vol.2
    ~東北のお酒を片手に音楽を楽しもう
    UKパンク&ニューウェーヴ編~
    日時:10月14日(金)19:30~21:30
    場所:beco cafe(東京・西荻窪)
    出演:鈴木茂(アルテスパブリッシング)・島田潤一郎(夏葉社)・空犬(吉っ読)
    チャージ:500円(ドリンクは別です)
    予約:お店に以下の方法でご連絡ください。
    電話(03-6913-6697)
    メール([email protected]
    twitter(@bookendlss)

(*twitterでご連絡される場合は、通常ツイートで連絡先などを流さないよう、ご注意ください。ちょっと面倒ですが、@をとばして、フォローしてからDMで連絡をとるようにしてください。)


becoreco2チラシ(パンダ)

↑お店で作ったチラシ。イラストが、なんというか、あやしい(笑)。


まだ空きがあるようですので、ご予約、ぜひよろしくお願いします。このジャンルにそれほど強くないという方、お酒は苦手という方も大歓迎ですよ。


この秋冬も大型オープンが続きます……新刊書店の開店関係いろいろ

書店blogを標榜しているくせに、気がつけば脱線ばかり、新刊書店関連の話題をしばらく取り上げていませんでした。あんまり新しい情報はないのですが、新規&リニューアルオープンの関係を少しまとめておきます。この秋から冬にかけて、新刊書店の開店では、大きなものがいくつか続きますね。


(*以下、開店日は今日の時点で判明しているもので、変更になる場合もあります。坪数は発表されたものか、関係者の方からヒアリングしたものをあげていますが、文具など他メディアを含めるかどうかなど、媒体により違いがあることもあります。)


特に、10月は、5日にMARUZEN&ジュンク堂書店静岡店(新静岡セノバ内)、14日にコーチャンフォー北見店(北海道北見市並木町、ブックオフ北見店跡地、1707坪)、中旬にジュンク堂書店 岡島店(甲府市、岡島百貨店内、780坪)と、規模的に、話題的にも大きなものが続きます。


11月は、日程がまだわかりませんが、朝日全面広告で話題を呼んだ蔦屋書店代官山店がありますね。また、すでに18日には、リブロ天神店(岩田屋本館内、350)がオープンとなります。後者については、すでにいろいろなところで、天神に「復活」「帰ってくる」などと書かれているように、一度撤退したエリアに同じチェーンが再出店する(例がないわけではないですが)めずらしいケースとなっています。いろいろ関連の記事はあるようですが、たとえばこれ。「天神に書店「LIBRO(リブロ)」が帰ってきます♪」(9/12 福岡アンテナ)。


福岡市の天神エリアといえば、新刊書店業界に関心のある方には説明不要かもしれませんが、複数のチェーンが進出・撤退を繰り返しながらしのぎをけずり、かつては「天神ブック戦争」などと言われたこともあるほど、新刊書店の競争が非常に激しいところとして知られています。興味はあるものの、なにしろ行ったことがなく、残念ながら、現地の様子や個々の店のことがわからないので、自分ではくわしい説明ができませんので、代わりに、これを。「ブック戦争」(2006/12/16 シンクタンク・バードウイング)。少し前の記事ですが、その分ひと昔前、90年代から数年前までの様子がわかるものになっていますね。


多くのチェーンの出入りの様子や、最初にリブロが天神に出したお店のことなどにもふれられていますので、興味のある方は、ぜひ記事をご覧ください。


最初の出店時といろいろ事情が変わっているのはもちろんとしても、今なお、書店激戦区であることは変わりない天神エリア。そこに再出店、それも、最近ではそれが当たり前になってしまった感のある「超大型店」で乗りこむのではなく、あえて大きめの中規模店ぐらい(350坪とのこと)での出店というのが、ちょっと目を引きますね。商業施設内のワンフロア店としては、いいサイズだと思いますし、当然、他のお店との差異化も考えられているのでしょう。個人的に注目している出店の1つで、楽しみです。


秋の福岡と言えば、毎年行きたい行きたいと言いながら、いまだに果たせてないブックオカ訪問もあります。この秋は仕事の関係で、ちょっと福岡行きは厳しそうなんですが、なんとか、時期を合わせて見にいけたらなあ、などと夢想中です。


「書斎」「本棚」好きにもぴったり?!……「音楽が生まれる場所」=プライベートスタジオの本がおもしろい

一昨日の記事で、アウェーな環境での演奏はなかなか大変だった、などと弱っちいことを書いたら、そんなことないよ、ちゃんと聴いてた人、見てた人もいたよと、メールやコメントで励ましの言葉をいただいてしまいました。すみません、ありがとうございます。


そんなふうに、初めての方、知らない方にも聞いてもらえることこそ、身内・仲間内以外のお客さんが集まるライヴの醍醐味なんですよね。だいたい、どんな環境、どんな会場であれ、お客さんに、演奏が長いと感じさせてしまったとしたら、それはひとえに自分たちの演奏力なり選曲なりの問題なわけで、そんなこと、長くバンドやっている身には当たり前のことなのに、よけいなことを気にして、よけいなことを書いてしまいました……。反省。


さて。バンド仲間や他の演奏者とのセッションはもちろん楽しいんですが、楽器って、独りで自宅で演奏するのもまた別の楽しみがあっていいんですよね。最近では、宅録(=自宅録音)はあんまりしなくなっちゃったんですが、かつて(それこそ、パソコンなんかなかったころ)は、カセットのMTRをフル活用して、宅録に凝っていたことがあるんです。そんな「元」宅録少年としてが書店でこういう本に出会ってしまったら、買わないわけにはいきませんよね。


  • 黒田隆憲『プライベート・スタジオ作曲術 音楽が生まれる場所を訪ねて』(ブルース・インターアクションズ)

本好きには、本が収納されている空間、「本棚」や「書斎」に興味のある方って、たくさんいると思いますが、音楽好きにとってのリスニングルームや、演奏者にとってのプライベートスタジオは、まさに音版の「書斎」と言える存在かもしれません。以前、『サウンドデザイナー』という宅録派、とくにギタリスト向けの雑誌の「プライベートスタジオ特集を紹介したときに、《基本的にはプレイヤー向けの内容ではあるのですが、広義の「書斎」特集とも読めるので、「書斎」に興味のある音楽好き、先に紹介した『男の隠れ家』の部屋特集やインテリア雑誌読みなど、人の部屋が気になるタイプにはけっこうおもしろく読める内容かもしれませんよ。》などと書きましたが、楽器や機材、レコードが並ぶ自宅スタジオの様子を眺めるのには、本や雑誌で紹介された「書斎」を眺めるのと同じ楽しさがある気がします。この本は、そうした音の「書斎」の世界をたっぷり楽しめる1冊になっていますよ。


内容紹介によれば、《ミュージシャンの創作部屋を、オールカラーで大公開! プロはどのような機材を使用し、どのように作曲をしているのか? 自身もミュージシャンである、音楽ライター黒田隆憲(『シューゲイザー・ディスク・ガイド』監修)が、ずっと気になっていた、名うてのポップソングライター、ロックミュージシャンに積年の疑問をぶつけにスタジオ訪問!》という本書。たくさんの現役ミュージシャンが登場しています。ぼくは音楽に関しては超オールドタイマーなので、この本でプライベートスタジオが紹介されているミュージシャンの方々は、実を言うと、1人も知りません。名前を聞いたことはさすがにある、という方はいますが、その音楽はよく知りません。でも、知らなくても、おもしろく読めるんですよ。これは、たぶん、雑誌や本に取りあげられた書斎や本棚を、その作家のファンでなくても(作家どころか、素人の方の書斎が紹介されている場合もありますね)けっこう楽しめてしまうのと、同じノリなんだろうなあ、きっと。


以前に紹介した『サウンド・デザイナー』のような宅録派向け雑誌とは違って、機材をアップにした写真や、機材の詳細な情報などは控えめ。その点、そういう情報を得るのが目的の読者にはものたりない面があるかもしれませんが、音が生み出される空間とその主の話を楽しむ分には、まったく問題ない、というか、マニアックな視点が控え目な分、読みやすくなっていると思います(ただし、あくまで情報面の話で、インタビューの文中にはけっこうマニアックな話が出てきて、それはそれでとておもおもしろい)。写真がすべてカラーなのもうれしい。


というわけで、自分で宅録をやっている人はもちろんですが、そうでない楽器弾きや音楽好き、もしかしたら、(さすがに音楽に無縁だときびしいと思いますが)楽器や宅録には縁がなくても、人の棚が気になるタイプの音楽好き兼本好きなら、けっこう、いや、かなり楽しめる1冊なんじゃないかなと思います。


ところで。この本の版元、ブルース・インターアクションズと言えば、ユニークな音楽書をたくさん刊行している、音楽好きには説明不要の出版社ですが、しばらく前に、こんなリリースが出ていましたね。「当社、ならびにグループ会社組織再編のお知らせ」。以下のようにあります。


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ライヴは楽しい、けど、難しい……

今日はある書店のえらい方を囲む会みたいなライヴが池袋であって、どういうわけかぼくも末席に加えていただき、ギターを弾いてきましたよ。


(以下、今日のライヴの雑感というか独り言みたいなもので、本にも書店にもまったく関係のない話です。すみません……。)


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ウルトラQ関連書が続々と……まもなく内山まもる版ウルトラマン復刊も

すみません(って、個人の趣味全開のブログが謝罪で始まるのも我ながらどうかと思うけれど)、今回はまた特撮ネタです。


書店をうろうろしていたら、昨日一日だけで、こんなにウルトラQ関係の本が目についてしまいました。



(以下、特撮の話題オンリーなので、お好きな方だけどうぞ。)

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早稲田、神田神保町、文京……秋は古本祭りの季節です

今日は本の話題です。まずは、発売前から楽しみにしていた、これらのムックから。


  • 神田古書店連盟『神保町公式ガイド(メディアパルムック)』Vol.2(メディア・パル)
  • 『神田神保町古書街2012(毎日ムック)』(毎日新聞社)

神田神保町の古書街のガイド本は、昨年に「公式ガイド」がデビューしたことで、2種が店頭に仲良く並ぶことになりましたね。昨年の2点については、こんな記事や、こんな記事を書いています。


さて、今年の版ですが、昨年同様、神保町での書店の扱いなどをみると、やはり公式ガイドが優勢のもよう。値段が安く(公式が1200円、毎日が1500円、ボリュームもあって、さらに「公式」の冠付き、と有利な条件がそろってますからね。でも、表紙は毎日のほうが好みだなあ。どちらも売れるといいなあ。公式ガイドはもう購入済みなんですが、毎日ムックのほうがまだなので、2冊そろえて、内容をチェックしたら、またあらためて取りあげたいと思います。


で、これらのムックが出ると、すぐに、秋の古本祭りのシーズンですよね。都内で秋の古本祭りと言えば、なんと言ってもこの2つ。


    第26回 早稲田青空古本祭
    会期:10月1日(土)~6日(木)
    時間:10:00~19:00(最終日17時終了)
    会場:穴八幡宮境内

「読書の秋はワセダから」でおなじみですね。全20店舗参加、のべ30万冊の規模で、まさに「年に一度の大バーゲンセール」。楽しみだなあ。ただ、今年は運悪く土日が埋まってしまっているので、平日に時間がとれるかどうか。今から仕事、調整しておかなくっちゃ。


    第52回東京名物神田古本まつり
    会期:10月27日(水)~11月3日(木・祝)
    会場:神田神保町古書店街

こちらも、毎年紹介してますから、説明不要ですね。参加店約100店舗、出品点数のべ100万冊余という、東京で、というか日本で最大の古本祭り。こちらは職場のある神保町での開催ということで、毎年欠かさず参加。平日は毎日、昼に夕にとぶらぶら歩いています。今年も今から楽しみです。


秋の古本祭りと言えば、なんといってもこの2つなんですが、規模の小さいものも含めれば、ほかにもいろいろ古本市・即売展はあるんですよね。くわしくは、古本市・即売展をまとめているサイトをあたってみてください。たとえば、ぼくもいつも参考にさせてもらっている四ッ谷書房さんの東京古本市予定表がありますよ。


こまかく網羅されている東京古本市予定表にも今日の時点ではまだ載っていない古本市がありましたので、これもあげておきましょう。


    文の京の古本市
    会期:10月31日(月)~11月4日(金)10時~
    会場:文京区役所(文京シビックセンター
    1階 アンテナスポット

文京区役所/文京シビックセンターといえば、地下鉄後楽園駅そばの、のっぽのビルですが、へー、あんなところで古本市をやるんですね。


サイトには、まだくわしい案内が出ていませんが、日本の古本屋メールマガジンの情報によれば、《東京都文京区にある古書店は、和本古典籍、作家原稿・書簡、稀覯本、学術書からサブカルチャーまで皆各分野専門店。そんな個性派ぞろいの「文京の古本屋」面々が古本市を行います。》とのこと。神田古本まつりの時期と重なっているのがちょっと気になりますが、でも、神保町からも歩ける街だし、時間がとれたら、ぶらぶらのぞきにいってみようと思います。


何度買い直し/買い足しする羽目になるのか……スター・ウォーズ コンプリート・サーガBD BOX発売

前回に引き続き、本にも書店にも関係ない話です。すみません(書きたいネタはあるんですが、書店のことでちょっといろいろ気になることがあって、どうも書店関連の記事を書きにくくて……)。


こんなの、買ってしまいました……。


  • 『スター・ウォーズ コンプリート・サーガ ブルーレイBOX』



いったい、何回買わせんねん……って、思わず関西弁になってますが、まあ、SF映画好きをやっている以上、これはしかたないですよね。「初回生産限定」とか言っても、まあ、また、この後も、いろいろ手をかえ品をかえ、もっとすごいのが現れることはほぼ確実、このボックスの「コンプリート」感も、それほど長持ちはしないでしょう。わかってます。わかってるんですが、それでも買っちゃうんですよねえ。


明日はふつうに仕事、その翌日はライヴだというのに、一気観したい気分全開で、大変危険です。


スターウォーズBDBOX

↑我が家に届けられたブツ。下に見えるのは、初回特典の「限定版35mmセニタイプ」。ダースベイダーのが欲しかったんだが、アナキンのだった……。


Webでの感想や評価はあまり気にしないようにしてますが、大絶賛大感激の声に混じって、けっこう厳しい声も聞こえてきますね。修正の仕方や程度など、技術的なこまかいことは、ぼくはよくわからないし、そんなにこだわりもないほうなんですが、パッケージに関しては、ぼくも多くのファンと同じで、大いに不満です。この中途半端なイラストパッケージ、ほんと、どうにかならなかったのかなあ。


しかも、中開けてみたらね、ブックレットが入ってて、これがSW初のBDボックスの初回に入れる品物か、っていうぐらいぺらぺらなんだけど、スチルもデータもほとんどなし、パッケージと同じイラストレーターによる、イラスト集になってるの。ファンがこういったコンプリートボックスに何を求めているのか、さっぱりわかっていないと言わざるを得ない。レイ・ハリーハウゼン・ボックスに同梱されていた、すばらしすぎる冊子(「本」と呼びたいボリューム)を見習っていただきたいものです。


OST スター・ウォーズ

↑パッケージ、妙ないじり方して、失敗するぐらいなら、これでいいじゃん、と思う(写真は、最初のサントラのジャケ)。


……まあ、観る前から、自ら興をそぐようなことは書かないほうがいいですよね。正直、箱のイラストなんか、(少なくともぼくは)どうでもいいですから。


ちなみに、今回のボックス、もういろんなところで書かれてると思いますが、劇場初公開版は入ってませんから(容量的には可能だと思うんだけどなあ)、特別編とのカップリングDVDなど、過去メディアをお持ちの方は、ボックスを買ったからといって、あわてて処分したりしないよう、ご注意を。


音楽とトークとお酒のイベント、beco reco Vol.2、開催決定です!

この春、西荻窪のブックカフェ、beco cafeで、東北の地ビールを楽しみながら音楽を聞くというイベント、beco recoを開催しました(前回の様子は、こちら)。ちょっと間が空いてしまいましたが、第2回を、来月10月に、無事開催できることになりました。じゃーん。


    吉っ読 presents beco reco Vol.2
    ~東北のお酒を片手に音楽を楽しもう
    UKパンク&ニューウェーヴ編~
    日時:10月14日(金)19:30~21:30
    場所:beco cafe(東京・西荻窪)
    出演:鈴木茂(アルテスパブリッシング)・島田潤一郎(夏葉社)・空犬(吉っ読)
    チャージ:500円(ドリンクは別です)

今回は、アルテスの鈴木さん、夏葉社の島田さんを迎え、吉祥寺出版仲間の3人で音楽とトークをお届けしたいと思います。吉祥寺でよく3人で飲んでいるんですが、3人とも音楽好きなもので、飲み話の半分ぐらいが音楽の話。で、これが自分たちで言うのもなんですが、微妙に世代や趣味がずれているせいもあって、おもしろい。で、このノリをそのままイベントにしちゃおうと、そんなふうに考えたわけです。


前回は、震災後、まだ間もない時期の開催だったこともあり、元気が出る音楽を、ということでオールジャンルにしましたが、今回は、「UKパンク&ニューウェーヴ編」と、ジャンル限定のセレクトに挑戦です。パンク? うるさいんじゃないの? ニューウェーヴ? 知らないなあ、いまさらなあ……そんなふうに思われる方もいるかもしれませんね。でも、ご安心ください。そこは、マニアックな選曲に走ることなく、このジャンルが好きな方はもちろんですが、ぜんぜん知らない、実はあまり好きじゃない、という人にも楽しんでもらえそうな、そんな選曲を考えていますよ。超のつく定番に、隠れた名曲や、マイナーなアーティスト・作品も混ぜて、バラエティに富んだセレクトで、ぐっとハードルの低い会にしますから、このジャンルに弱いという方にもぜひ遊びに来ていただければと思います。


前回同様、アナログレコードとCDをかけます。機材は安物で、盤もふつうの盤です。最高級のオーディオで、貴重なオリジナル盤を聞き比べるといった、そういう高級な会ではありません。音質・音響的にレベルの高いものをお求めの方はがっかりされるかもしれませんので、その点はご注意ください。


チャージは、前回同様、1口500円をいただきます(何口でも受け付けます;笑)。チャージの分は全額募金します。募金先については、ブックンロールのときにご紹介した「こどもとあゆむネットーワーク」「本棚プロジェクト」を予定しています。


東北のお酒ですが、日本酒はくわしい者が関係者にいないので、前回同様、地ビールを数種類用意します。なお、地ビールは、被災地のものが入手できれば、それを中心にしたいと考えていますが、限定はせず、被災地でない地域の地ビールも混ぜて用意する予定です。ビール飲みのみなさんは、こちらもぜひ楽しみにしていてください。なお、東北の地ビールの売上の一部も募金に回します。レギュラーメニューのドリンクも出しますが、当日はぜひ、ビール好きのみなさんは、東北の地ビールの売上にご協力いただけるとうれしいです。


当日は、フードはおつまみのみで、食事(ご飯もの)は「ベコライス」のみとなります。しっかり食べたいという方は、あらかじめ軽く食べてからお越しになるほうがいいかもしれません。東北の食材で、お酒のおつまみとして簡単に出せそうなものがうまく入手できれば、当日出せるかもしれません。くわしい方で、何かおすすめのものがあれば、ぜひご教示ください。


席の数があまり多くありませんので、申し訳ありませんが、事前に予約していただくかたちとなります。beco cafeに直接、
電話(03-6913-6697)
メール([email protected]
twitter(@bookendlss)
のいずれかでご連絡ください。(*twitterでご連絡される場合は、通常ツイートで連絡先などを流さないよう、ご注意ください。ちょっと面倒ですが、@をとばして、フォローしてからDMで連絡をとるようにしてください。)


それでは、10/14、音楽好きお酒好きのみなさんのお越しを、たくさんのすてきな音楽と東北の地ビールを用意してお待ちしております。


東京の公園、怪獣少年遺作、カルト映画、ユートピア……今日買った本たち。

今日BOOKSルーエで買った本、別の店で買った本をまとめてざっと紹介します。


  • スマートライフクラブ『東京23区の有名公園散歩』(新人物文庫)
  • 竹内博『特撮をめぐる人々 日本映画昭和の時代』(ワイズ出版)
  • 末次由紀『ちはやふる』14巻(講談社)
  • 『仰天カルト・ムービー100 映画の必修科目01』(洋泉社)
  • 藤子・F・不二雄、藤子不二雄A『ユートピア 最後の世界大戦』(小学館クリエイティブ)

『東京23区の有名公園散歩』は書名通りの文庫で、見開きで1か所、公園が紹介されています。散歩のお伴にも良さそうだし、ぱらぱら読みつつ、文庫遠足の候補地を探すのも楽しそう。表紙に、《鳥と花の図鑑付き!》《わかりやすいマップ付き》と、2つも「付き」物がうたってあるのがなんだかおかしい(笑)。


『特撮をめぐる人々』は、しばらく前、7月の記事で訃報を紹介した、特撮研究家、竹内博さんの遺作。2章立てで、前半は本多猪四郎、伊福部昭といった特撮関係者へのインタビュー6本、後半は映画史論が三本。巻末のあとがきの日付は5/11。亡くなられたのが、6/27。本の刊行まであと少しだったのに……。そのあとがきの最後には、こうあります。《かつての怪獣少年より、あなたに。》……現役も元も、怪獣少年は必読。


『仰天カルト・ムービー100』、目次を見たら、好きな映画がたくさん入っている。趣味がばれますね。この本と取りあげられている映画たちに興味がある人には、《伝説のカルト・ムービー誕生の真実を描いたドキュメンタリー》という内容の映画『ミッドナイト・ムービー』もおすすめです。




まさか、この本を新刊書店で、新刊として買える日がくるとはなあ……。『ユートピア 最後の世界大戦』。ぼくは漫画の稀少本の世界にくわしいわけではぜんぜんないですが、それでも、この元本がものすごい古書価であったことは、知識として知ってるぐらいの有名な1冊。帯に《超超幻の単行本》とありますが、この《超超》がまったく大げさでない本ですからね、これ。


もちろん、発行は、驚愕の復刻漫画を次々に刊行している小学館クリエイティブ。けっこういい値段がしますが、でも、この本を読みたいと思うような人にとっては、決して高くないような気がします。ずっしりと、うれしい持ち重りのする1冊です。


今日のルーエの様子もついでに紹介しておきましょう。


ルーエ ブロンソンズフェア

↑「空犬さん、社運をかけたこのフェア、見てくださいよっ!」と花本氏。いや、かけてない気がするぞ、社運は(笑)。ちくま文庫の『ブロンソンならこう言うね』が、ありえないぐらいずらりと並んでいます。POPの文言とかもなんだかおかしい(笑)。


ぜひ売上に協力したいところだけど、これ、親本のごま書房の新書を持ってるんだよなあ。というわけで、社運がかかっているかもしれないこのフェア、空犬からもぜひよろしくお願いします。ちなみに、この本は、すごーくくだらないですが、すごーくおもしろいです。とくに、男子には。



ルーエ 人生相談フェア

↑上の『ブロンソンならこう言うね』、親本には、「マニア・カルト一生相談」という副題がついてました。で、その意味で、リンクしていると言えなくもない、こんなフェアが近くで展開中。「悩めるときの駆け込み文庫」。


人生相談的な内容の文庫がずらりと並んでます。POPを見たら、なんか、全部に「第1位」って書いてあるぞ(笑)。それぞれの人生相談本が何の部門の第1位なのかは、ぜひ店頭で確認してみてください。


工作少年、安房直子、馬たちよ……最近買った本たち。

昨日は家族の用事でおでかけ、午後は、神保町で書店関係の集まりがあってそれに顔を出し、書店員さんのトークを聞いて、その後、その会に誘ってくださった碧野圭さん(@aonokei)と飲みにいって、お酒片手に、本とか書店の話をたくさんしてきましたよ。


それにしても、担当編集者でもない(というか、そもそも文芸担当でもない)のに、こうして作家の人と飲みにいって、本と書店の話を楽しくしていられるというのは、なんというか、幸せなことですよね。接点は書店。碧野さんも空犬も書店blogの書き手という共通点があります。なもので、どちらも書店営業が本業ではないのに、半分ぐらいは、出入りしてきた書店の話をしている、というのもなんだか冷静に考えるとおかしな話ですよね(笑)。


ちなみに、夜はバンドの練習、その後、バンドメンバーと打合せを兼ねた飲み会でたくさん飲んでしまったため、今日は半日ダウンしてました……。


さて。一昨日は、久しぶりに往来堂書店へ行ってきました。同店の恒例フェア、D坂文庫を空犬通信で紹介しなくちゃと思いつつ、8月はいろいろ忙しくて行く機会がなく、ようやく駆けつけた次第。ぎりぎり間に合いましたが、まもなく終了とのことでしたので、今回は店頭の写真は遠慮してしまったんですが、記録のために撮らせてもらえばよかったなあ。空犬が選んだ本のなかには、売れて追加発注したものもあるとのこと。ランキングが楽しみだなあ。というわけで、まだご覧になっていない方はどうぞお急ぎあれ。次のフェアの予定なども聞いてきたけど、これまたおもしろそう。フェアが切り替わったら、また店頭撮影させてもらって、今度こそ、空犬通信で紹介の予定です。


往来堂書店ではこんな本たちを買ってきましたよ。


  • 森博嗣『工作少年の日々』(集英社文庫)
  • 安房直子『春の窓 安房直子ファンタジスタ』(講談社X文庫ホワイトハート)
  • 古川日出男『馬たちよ、それでも光は無垢で』(新潮社)

『工作少年』はD坂文庫の1冊。タイトルがいいですね。ミステリーを読まないもので、この方の作品を読むのは初めてなんですが、独特のユーモアがあって、なかなかおもしろい。内容案内に《工作系ミステリィ作家のモノ作り日常エッセィ集》とあるこの本、工作少年というから、元プラモ少年がそのまま大きくなったオタ話か何かなのかなと思ったら、木工に金属加工に、作るものも道具もやたらに本格的で、プラモがどうとかのレベルをはるかに超えた話が次から次に出てくるので、びっくりするやらあきれるやら(笑)。解説が萩尾望都さんというのもポイントかも。


安房直子さんは、今年になってから、福音館文庫で出た『天の鹿』がありました。スズキコージさんの装画に解説は堀江敏幸さんと、組み合わせも豪華なすてきな1冊でしたが、こんな文庫も出てたんですね。これは、文芸の棚に並んでいたので出会えたんですが、レーベル別の文庫棚に置かれていたら、ぼくのようなオヤヂが出会うことはまずなかったでしょう。なにしろ、講談社X文庫ホワイトハートの1冊ですから。


12編を収めた短篇集。装画が100%オレンジというのが安房直子作品としてはちょっと意外だけど、いい感じですよね。もちろん自分でも読むつもりですが、子どもが興味を持つかもと、わざとリビングにぽんと出しておいたら、すすめもしないうちに、早速読んでしまったらしく、「すっごくよかった!」と、うれしい感想が。


以上2冊は両方とも2、3年前に出た本ですが、どちらもチェックから漏れていて、知らなかった本。こういう、未知の「非新刊」に出会えるのも、書店のフェアや棚探索の楽しみの1つですよね。この日はちょっと時間がとれたので、棚を端からじっくり見ることができました。この往来堂書店の規模だと、少し時間があれば、そういう全方位探索ができるんですよね。自然、ふだんはあまり目にしないジャンルも含めて目に入ることになり、大型書店とはまた違った、情報「量」を楽しむことができるのがいいところ。


今日、9.11でちょうど半年。古川さんの『馬たちよ』は、これまで読んできた作家の、このテーマの作品ということで、一刻も早く読みたいという気持ちと、ふつうに読み通せるだろうかという不安とがあって、迷っていたんですが、読むならこのタイミングで、と思い、購入。ちょうど半年の今日読み始めて、半分ほどを読み終えたところ。簡単な感想を許さない1冊で、安直なことばにまとめてしまいたくないのですが、とにかく言葉の力に圧倒されています。残りは、今晩、ゆっくりゆっくり読もうと思っています。

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東北の書店レポ、BIBLIOPHILIC、super_wakuwaku他……新刊書店関連いろいろ

前回は、新刊書店関連のニュースのうち、ジュンク/丸善関連をまとめましたが、今回はそれ以外の書店で。今回も件数が多いので、ちょっと長いです。


まずは、東北の書店関係を。紹介しそびれていたんですが、『週刊ポスト』の不定期連載、「復興の書店」の第3回「震災が炙り出す「雑誌作り」の原点」が、9月2日号に掲載されていましたね。仙台でタウン誌を出しているプレスアート、『仙台学』他の荒蝦夷(あらえみし)が紹介されています。同じ週刊誌の記事では、めずらしく(と、言っちゃっていいかな)『女性セブン』にも関連の記事が。9/23号に掲載された「被災書店が甦らせた笑顔」がそれ。ブックスなにわ多賀城店(多賀城市)、ジュンク堂書店仙台店(仙台市)、紀伊國屋書店仙台店(仙台市)と、宮城県の書店3店の様子が写真入りでレポートされています。


同じく雑誌では、8/16発売の『月刊J-novel』2011年9月号(実業之日本社)に、碧野圭さんが「支援の先にあるもの」を寄稿しています。空犬も同行させていただいた仙台の様子のほか、その前後に碧野さんが行かれた他のエリアの様子も合わせて、読み応えのあるレポートになっています。blogに発表されているものと内容的に重なっているところもありますが、碧野さんのblogを読んでいる方も、ぜひこの記事はあらためて読まれるといいと思います。


碧野さんは、このほか、神戸の書店、海文堂が出している『ほんまに』の10月発売の号にも東北行きについて寄稿されるとのこと。そちらも本が出たら、また紹介したいと思います。


新聞の震災関連記事のうち、書店に関係する記事で最近のものでは、これが印象的でした。「仮設住宅で書店はじめた大槌町の男性」(9/6 朝日新聞)。記事で紹介されているのは、岩手県大槌町の「信栄書店」店主、阿部さん。ここまでして本を届けようとしている人がいる……短い記事ですが、かなり「効き」ます。記事最後に引かれた阿部さんのことば。「本好きな人にとって、本から離れるのはつらいだろう。元気なうちにできることをしたい」。もちろん、東京で本の仕事をしている我々もできることをしなくては。あらためてそう思わされます。


東北のもまだまだ大変な状況が続いているというのに、ここにきて、別のエリアで、また自然災害による大きな被害が出てしまいましたね。今回、関西を襲った台風、まさかこのような事態になるとは思いませんでした。書店・出版流通関係への影響はどうなんでしょうか。長く近畿にいた者としても、非常に気になります。とくに、


こういう災害のとき、やはり自分の仕事も趣味も、全面的にそこに集中しているものですから、どうしても出版・書店業界のことばかりを書いてしまうことになります。何も書店のことだけが心配なわけではないのですが、こればかりは仕方ありません。だから、たとえば、このような、台風被害全般を伝える記事、「台風、無残な傷痕」(9/6 朝日新聞) を読んでいても、《書店を経営する西美恵子さん(67)は、泥まみれの本をごみ袋にまとめていた》という一行が、とても気になって気になってしかたありません。お店はどこなんだろう、被害の程度はどれくらいなんだろう、お店は再開できるんだろうか、などなど。東北のときのように、書店・出版流通関係の被害をまとめた情報などはまだ見当たりませんが、現地の様子、ぜひ知りたいものです。


次は、開店・閉店・改装関係を。まず、先日の記事でとりあげた島根県松江市のブックス文化の友津田店、名称はこれでいいのだろうかと書きましたが、これでいいのだそうです。情報、ありがとうございました。


それ以外の件、まずは見出しをまとめて。



フタバ図書は、広島佐伯区。店名は「GIGA(ギガ)五日市店」で、広さは約700坪、新刊のほかに、リサイクル本、CD・DVD・ゲーム、レンタルなどの扱いのある大型複合書店。9/16にオープンとのことです。場所は、ベスト電器五日市店の跡地とのことです。


精文館書店は、千葉県市原市。市原市五井駅のすぐ近くとのことで、8月にオープンとなったそうです。広さは680坪。こちらも、書籍以外に、文具・CD・DVD、レンタルの扱いなどのある大型複合店舗のようです。


前橋の件は、以前の記事でふれましたね。店名は、蔦屋書店前橋みなみモール店、広さは1737坪(書籍は758坪)、こちらも大型複合店舗。


前橋はあまりいく機会のない街ですが、1000坪に近い紀伊國屋書店がありましたよね(紀伊國屋書店前橋店、970坪)。両店の位置関係がどうなっていて、商圏がどのようになっているのか、まったく知識がないのでわかりませんが、この規模の大型書店を複数抱えられるような街であり商圏であり、なんでしょうか。今後ほかにもまだ予定されているというトップカルチャーの大型出店の参考の意味も含め、この前橋のお店はぜひ見ておきたいものです。


次は、開店・閉店・改装以外の、新刊書店関連ニュースを雑多に。


まずはこれ。「10歳男児がひったくり被害」(9/6 朝日新聞)。春日井市の書店で、とあり、店名はありません。書店の店内で、しかも10歳の小学生がひったくりにあうだなんて……。子どもを連れていくことも多い書店好きとしては、ぜったいにあってほしくない、悲しいニュースです。「書店」関連ニュースを検索していると、いろいろなニュースが目に入るわけですが、犯罪・事故などの関係はやはり見たくないものです。たとえば、しばらく前だと、「書店」で検索していると、「児童ポルノ法違反で書店経営者を逮捕」なんて、嫌なニュースが目に入ったり、書店員さんが被害にあった「万引きバレた中3、書店員に体当たり…強盗傷害」が目についたり、その前は、このニュースもやたらに「書店」がらみで目につきました。「酒田の中学教諭盗撮:罰金刑の教諭、懲戒免 /山形」。どんなかたちにしろ、書店で、書店の回りで、犯罪や事故が起こらないことを心から祈るばかりです。


ディスクユニオンが読書用品専門ブランドを立ち上げたようです。これは音楽好き兼本好きとしては気になりますよね。「「本のある生活」を楽しむ、読書用品専門ブランド「BIBLIOPHILIC」スタート!」(8/24 ディスクユニオン)。《この度、ディスクユニオンから「本のある生活」を楽しむ、読書用品専門ブランド「BIBLIOPHILIC」がスタートします。ディスクユニオンでは音楽ソフトコレクターの方々向けにCD・レコードを収集、保護するための商品を販売していますが、そこで培ったノウハウを今回「BIBLIOPHILIC」というブランドで本好き・読書家の方々のために読書用品の販売で活かしていきます。》というものだそうです。で、具体的な中身はというと。


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往復書簡、改装・閉店、ブクポップ……新刊書店関連いろいろ ジュンク&丸善編

新刊書店関連のニュースで紹介しておきたいものが少したまったので、まとめてみます。件数が多いので、ジュンク/丸善関連とそれ以外の書店に分けます(ジュンク/丸善を別にしたのは、たまたま関連ニュースの件数が多かったためです)。今回はジュンク/丸善関連を。


ジュンク堂書店のPR誌『書標(ほんのしるべ)』で連載「往復書簡をはじめませんか」が始まりました。書簡を交わすのは、ジュンク堂書店仙台ロフト店の佐藤純子と、そして吉祥寺の出版&飲み仲間、夏葉社の島田潤一郎さん。サイトでも読めますよ。半年ほど続くとのこと。楽しみですね。


ちなみに、『書標(ほんのしるべ)』のこの号、巻頭の「文学散歩」は「旧江戸川乱歩邸」、特集は「アイドル音楽 in JAPAN!」、「著書を語る」は「ほげちゃん」 のやぎたみこさん、先頃亡くなった「特撮研究家」竹内博さんの『特撮をめぐる人々 日本映画 昭和の時代』の書評も掲載と、何やら空犬が好きだったり興味があったりする記事がいっぱい。連載は、サイトだと本誌にはない写真なども見られていいのですが、サイトだけで済ませずに、ぜひ『書標(ほんのしるべ)』のほうも見てみてください。


さて、佐藤純子さんのいる仙台ですが、現在は、ジュンク堂書店仙台ロフト店(470坪)、7/9に復活したジュンク堂書店仙台店(572坪)、丸善仙台アエル店(606坪)と、同じグループの大型店舗が駅から徒歩数分圏に集中しています。


(以下、いずれも、知り合いから未確定との断りつきで聞いている話です。)うち丸善仙台アエル店は、増床・改装、9/17にリニューアルオープンとなるようですね。什器などにも手を入れ、従来のジュンクのそれになるのだとか。増床は40坪とのこと。また、もと900坪あった仙台店がいまのかたちになったことで、3店が似た規模になるためでしょうか、将来的には、仙台店が、もとのeBeansの耐震工事が終了後に、MARUZEN&ジュンク堂書店ブランドで、もとの規模の大型店として再出店という噂も聞いています。


いつだったかのレポートに書きました通り、仙台は書店が充実していて、本好き書店好きにはとてもいい街でした。ただ、とはいえ、駅周辺に合計で2000坪規模の書店が共存できるような商圏か、と言われるとちょっと疑問です。いろいろ考えがあってのことでしょうから、よく知らないエリアの書店事情に素人があれこれ言うことはしたくないですが、無理な出店や大型化で、当該のお店で働く人たちに負担が増えたり、また同一商圏の同業の方々を圧迫することになったり、本の街としていい具合にまとまっている街のバランスを崩してしまったり、そんなことがないことを祈るばかりです。


ジュンク堂ブランドでは、広島駅前店がリニューアル、8/25にオープンとなったようです。「ジュンク堂書店広島駅前店リニューアルオープンのお知らせ」。棚配置が変更になり、専門書の在庫が充実したとあります。どんなふうになったんだろう。


開店・閉店・改装関係では、残念なニュースも。北海道・新札幌の丸善ブランドの店舗、丸善ら・がぁーる新札幌DUO店が10/2で閉店とのことです。札幌は、昨年末に丸善札幌北一条店がオープン、今年になってからはジュンク堂書店札幌店がリニューアル、名称をMARUZEN&ジュンク堂書店札幌店にあらためるなど、いろいろ動きのあった街。前回、訪問したときも、書店の充実ぶりをたっぷり確認してきたのですが、丸善ら・がぁーる新札幌DUO店は行けなかったので、いつか行きたいなあと思っていたお店でした。残念。


丸善については、名古屋栄店についても話を聞いているのですが、これはもう少し詳細がわかってからふれたいと思います。


閉店の話で締めるのはなんなので、最後は、ちょっと楽しいこの話題で。タイトルを見ただけで、本好き書店好きなら気になるに違いない、こんな記事がありました。「店員になったつもりで本のPOPを自作、ソーシャルサイト「ブクポップ」公開」(9/7 INTERNET Watch)。記事の一部を引いてみます。


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「手塚治虫を装丁する」展の図録入手!……そしてオンデマンド本のことをちょっと考えてみた

このところ、ちょっと仕事がたまっていて、日中はもちろん、帰りも書店に寄る時間を十分にとれず、書店回りが「足りなくて」欲求不満気味の空犬です。書店ネタで、取りあげたい件はたくさんあるのですが、今日はちょっと別の件、装丁にかかわる話です。


しばらく前の記事で、三省堂書店神保町本店で期間限定で開催されていた「手塚治虫書店」を紹介したことがありました。


その記事中に、《見逃して悔しい思いをしていた「手塚治虫を装丁する」展の図録やらポスターやらも展示されています。これ、ほしい……(残念ながら、これらは売り物ではない)。》と書いたところ、なんと、知り合い経由で、この「手塚治虫を装丁する」展の図録を入手することができてしまいました。書いてみるものだなあ。う、うれしいなあ……(涙)。


手塚治虫を装丁する展  図録

↑こちらが現物。すごいボリュームです。


手塚治虫を装丁する展 チラシ手塚治虫を装丁する展 チラシ中

↑こちらはチラシ。こちらもすばらしい。


企画展の主催は日本図書設計家協会。90名の会員の方がこの企画展に参加、『ふしぎなメルモ』や『メトロポリス』『火の鳥』など、10作品を新たに「装丁」、それをまとめたのがこの図録です。これ、企画展や三省堂書店の店頭でご覧になった方ならわかると思いますが、手塚ファンはもちろん、装丁に関心のある人も楽しめそうだし勉強になるし、両方兼ねた人だったら、しばらくあきないと思いますよ。すばらしいなあ。


このすばらしい図録に、1つだけ物足りない点があるとしたら、カバーを横に広げ、それを2つ折りにした状態で閉じてあるため、これだけだと、「本の感じ」がやや薄い、ってことかなあ。やっぱり、表紙がどう見えるか、背はどうか、というふうにみたいので、そのためにはばらして、本か束見本にでも巻き付けないといけない……。さすがにそういうわけにはいきませんからね(苦笑)。


その点、企画展のチラシのほうは、ちゃんと書影のかたちになって写真が載っていますから、いいですね(上の写真のうち、右がチラシの中)。図録とチラシ、両方あったほうがいいわけです。残念ながら、チラシのほうは一部の作品だけ。全部の装丁がこのかたちで見られたらいいのになあ(訂正:いま、チラシのほうを見直したら、全点の「書影」が載ってました。失礼しました)。って、非売品を無料で手に入れておいて、ほんと、勝手なことばっかり言ってます(笑)。


手塚治虫作品は、現在も文庫版が刊行中ですし、定番の講談社版全集もあるし、秋田書店他の新書判コミックスや愛蔵版も多数、愛読者のみなさんには、お気に入りの版がそれぞれあることでしょう。


手元の本には愛着がある場合も多いと思いますが、この図録やチラシを見ていると、自分の好きな作品を、この装丁で持っていたいなあ、こんなカバーがかかってたらいいなあ、というのが、本好き、とくに装丁に関心のある方ならきっといくつも出てくると思うのです。実際、ぼくも、サイズを合わせてカラーコピーして、自分の持ってる本にかけてみようかと、本気で思ったぐらい、気に入ったものもあります。これらは企画展のためだけに用意されたもののようですが(当たり前ですよね;苦笑)、それだけだとちょっともったいないなあ、なんて気もします。


少し前の記事ですが、こんなのがありましたね。「あなたが編集長!『手塚治虫Oマガジン』 三省堂書店オンデマンドに登場!」(三省堂書店公式ブログ)。


記事によれば、こういうサービスです。《現在、手塚プロダクションでは、数ある作品の中からあなたの心に残る作品を選んでもらい、オリジナルの作品集『手塚治虫Oマガジン(オンデマンドマガジン)』を製作しています。編集者名にはあなたの名前が入り、裏表紙に作品への思いをつづる、まさにあなただけの作品集。さらには、手塚先生に多大な影響を受けた作家、漫画家、声優など13名の著名人が編集した「Oマガジン」も発売中!》


先日は、「早川SF文庫からオンデマンド復刊第一弾10点」というのもツイッター他で報じられていました。オンデマンドがこうしてどんどん充実してきて、古本でしか読めなかったものが、古本が苦手だったり、古本屋さんで見つけられなかったりする方にも簡単に読めるようになるのはすばらしいことだと思います。


ぼくは、新刊も古本も大好きだし、古い本を古本屋さんで探すこと自体、楽しいと感じるほうなので、三省堂さんには申し訳ないですが、あまりオンデマンドを利用することはないかもしれません。仮に利用するとして、気になるとしたら、値段とかタイトルの数よりも、装丁なんですよね。装丁好きとしては、どうしても、見た目が、造本が、やっぱり気になってしまう、というか、要するにちょっと物足りないのです……。


で、思ったんですが、たとえば、日本図書設計家協会が三省堂書店と組んで、オンデマンド印刷本に、独自の装丁をオプションで頼めるようにしたらどうだろう。もちろん、今のままの、定型のものやシンプルなものでかまわない、という人はなしでいいわけだし、ちょっと違うものにしたい、今のものに、市販単行本と同じようなしっかりしたカバーをかけたい、という人は、別料金で頼めるようにするのです。


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書店レポート京都編の訂正記事です

昨日アップした書店回りレポート京都編の記事で、訂正があります。


文中、大垣書店イオンモール京都店と京都の大型書店について、《1000坪のワンフロア大型書店です。京都は、京都駅周辺や河原町周辺に複数の書店があり、大きめの店もいくつか(ジュンク京都が435坪、アバンティ京都が550坪)ありますが、1000坪超は初めて、かつ、唯一でしょうか。》と書いたのですが、すみません、2006年にオープンしたジュンク堂書店京都BAL店を失念していました……。


河原町のファッションビルBAL内、5~8階の4フロアを占める同店は約1000坪(サイトの情報によれば1068坪)。さらに、2010年には増床、B1Fに「コミックスジュンク堂」ができています。こちらは180坪で、在庫は約15万冊と、コミック売り場/専門店としても京都市内最大級となっています。京都初の1000坪のお店も、また現時点での京都最大のお店も、このジュンク堂書店京都BAL店ということになりますね。


以上、記事を読んでくださった方からのご連絡で気づきました。ご指摘、ありがとうございました。なお、今回、BAL店に寄れなかったのは、単に時間と体力が切れてしまったから、ということで深い意味はありません。それどころか、コミック売り場の独立・増床のことは報道で知っていたので、次に行ったら確認しなきゃ、と思っていたお店でしたから、せっかくの機会を逃したことになり、今になってくやしい思いをしているぐらいです。


十蘭、レノン、探偵術、遅読……最近買った本たち。

すべて吉祥寺のBOOKSルーエで買ったもの。


  • 久生十蘭『パノラマニア十蘭』(河出文庫)
  • ジョン・レノン『絵本ジョン・レノンセンス』(ちくま文庫)
  • ジェデダイア・ベリー『探偵術マニュアル』(創元推理文庫)
  • 山村修『増補 遅読のすすめ』(ちくま文庫)

河出の十蘭は3冊目ですね。これまでの2点、うれしいけど解説が……みたいなちょっとえらそうなことを書いてしまいましたが、今回の石川美南さん(歌人)の解説はいいですね。タイトルがまずいい。「夢の真顔」。


ちくま文庫はこういうの文庫化があるからうれしい。『絵本ジョン・レノンセンス』。これ、晶文社の親本を高校生のときに買ったんだよなあ。大阪の旭屋書店本店で。今も大事に持ってますよ。この文庫、うれしいことに、親本にはなかった原文が収録されています。ちくま文庫で詩集で原文が掲載されたものと言えば、しばらく前に出たブローティガンの詩集もそうでしたよね。こういう「おまけ」は大歓迎です。


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↑文庫化されても、この親本を手放すわけにいかないのは、先日紹介した『アノドロギュノスの裔』と同じ。表紙は文庫版よりもこちらのほうが好き。目次も親本のほうがいいなあ。親本はもちろん平野甲賀さんのデザイン。


ふだんは最近の翻訳ミステリーを手にすることはめったにないんですが、この『探偵術マニュアル』は帯の文言につられて買ってしまいました。だって、《ポール・オースター+ブラッドベリ+カフカ》ってあるんですよ。ちょっとずるいよね(笑)。そりゃあ、買うよね。オースターのニューヨーク三部作は大好きなんだけど、あんな感じなんだろうか。まだ出だしを少し読んだだけですが、(いい意味で)妙な雰囲気で、続きが気になります。


以前は、平均よりも読むのは速いほうかな、って思ってたんですよ。でも、どうやらそうではないらしい。たくさん読めるのは、他の人が違うことをしているときも本を読んでた、つまり読書にあてる時間の絶対量が多かったというだけで、読むのが速いわけではなかったんですね。いま、周りの本好きで速い人の話聞いてると驚かされますから。とても自分にはそんなペースでは読めない、って。あと、外出するときの文庫、2日以上続けて同じのを持ってるとくやしいとかはずかしいとか言う方もいますよね。ぼくなんか、毎日電車では寝ちゃうので、1週間同じ本なんてざらですよ(苦笑)。


と、前振りが長くなりましたが、そんな向きにぴったりな本が、『増補 遅読のすすめ』。〈狐〉のペンネームでも知られる稀代の本読みが言うことですから、素人がそのまま真に受けていいかどうかはともかく、安心させられる書名であり、内容ではありますよね。


引用したいフレーズはたくさん出てきますが、それこそ、部分だけ取り出してもしかたない。このような本は、ゆっくりと、時間をかけて読まないと意味がありませんよね。読書論と、その実践の結果による書評の数々との、幸せな合体本。


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大垣書店、ふたば書房……大阪・京都書店回りレポート その3

遅くなりましたが、先日の大阪・京都書店回り、最後のレポートは京都編です。当日、8/22(月)は朝から夕方までずっと仕事の用事で自由時間はほとんどなし。日中のわずかな空き時間と、用事が終わってからの夜の時間を使って、京都駅周辺と河原町の書店をいくつか見てきましたよ。(以下、写真と店内の様子・フェアなどは、8/22時点のものです。)


時間が短い割には、というか、短かったので集中したためか、お店の数だけはそれなりに見てきたのです。全部にふれていると大変なので、大垣書店とふたば書房の各2店舗を中心にレポートします。まずは、京都駅の近くに昨年、2010年初夏にできたイオンモール内にある大型書店、大垣書店イオンモール京都店から。


大垣イオンモール1大垣イオンモール2大垣イオンモール3

↑写真は外観と入り口だけ。


1000坪のワンフロア大型書店です。京都は、京都駅周辺や河原町周辺に複数の書店があり、大きめの店もいくつか(ジュンク京都が435坪、アバンティ京都が550坪)ありますが、1000坪超は初めて、かつ、唯一でしょうか。(*この部分について、訂正記事を書きました。)


1000坪クラスのお店は、ジュンク/丸善関連のお店で見慣れて(というのも妙な話ですが)いますが、什器や店内の雰囲気がジュンクのそれとはぜんぜん違うお店でこのサイズは、けっこう新鮮ですね。


専門書などに力を入れている大型店のなかには図書館のような格調高いというかややかための雰囲気のお店もありますが、このお店は、ショッピングモールの客層を意識した造りということでしょうか、大型店としては、かなりやわらかい雰囲気のお店になっています。お店の中央あたりで複数展開されているフェアなどを見ても、いろいろな年齢層に対応したものがセレクトされているほか、京都駅近くの書店ということで、「Kyotoスタイル」(すみません、正確なフェア名は失念)といった、観光客を意識したようなフェアも展開されていました。入り口を入ってすぐのフェアコーナーはちょうど入れ替え中でチェックできませんでしたが、案内によれば自然書のフェアのようでした。見たかったなあ。


モール内のお店ということで、児童書は広めにとってあります。窓から自然光の入り安い一画にあり、大人向けのコーナーよりも低めの棚を使われているため、明るくて見通しのいいエリアになっていました。1つ下のフロアにトイザらスの大型店が入っているため、扱い商品がかぶりそうなのに、あえて知育玩具類を非常に充実させているのが印象に残りました。それ以外のエリアも、関連するジャンルがうまく隣り合うように配置されているせいか、広さの割に、求めるジャンルを探してあっちこっちと、お客さんが迷わずに済みそうなレイアウトになっています。


品揃えも十分、広くて明るく、本を探しやすい店内は、モールに買い物に来たお客さん、とくに家族連れが長時間をゆっくり過ごせそうな、感じのいいお店でした。京都駅から少し歩きますが、京都を訪れた本好きは、ぜひ足を延ばされるといいと思います。


と、全体にいい印象のお店でしたし、京都駅周辺随一の大型店ということで、今後さらにいいお店になってほしいという期待も込め、よけいなお世話かもしれませんが、気になった点にも少しだけふれておきます。お店が大き過ぎて、棚のメンテの手が回らないところがあるのでしょうか、(全体に、ということではなく特定の棚ですが)棚の乱れが目についたところが少しありました。もちろん、常に完璧に整理された状態でなくてはならない、などというつもりはありません。タイミングもありますし、それに、棚や平台は多少乱れがあるぐらいのほうが、商品が動いている感じ、イキのいい感じになったりもしますからね。今回気になったのは、そういう自然に乱れた感じではなく、ある棚では、本がかなり乱暴に棚に詰め込まれていたり、ある棚では、面陳本の多くが表紙とれ帯とれになっていたり、といったところ。(たまたま、ということがありますから、念のため、翌日帰る前にもう一度のぞいてみましたが、同じ状態でした。)お店がとてもきれいなだけに、ふつうなら気にならないことが目立ってしまった、ということなのかもしれませんし、なによりこれをもって、棚のメンテが不十分でダメだ、などというつもりはまったくありませんが、一応記しておきます。


同じく、大垣書店で最近できたお店に、京都駅の反対側、ヨドバシカメラ内の京都ヨドバシ店があります。


大垣書店ヨドバシ

広さは240坪。商業施設内によくある200坪前後のワンフロア型店舗です。家電量販店の中のお店ですが、パソコン書など理工系や、またはオタクっぽいジャンルへの偏りもなく、全ジャンルがバランスよく並べられた印象です。什器の感じ、照明など店内の雰囲気もよくて、ヨドバシのショッピングついでのお客さんはもちろん、わざわざ本を見にくるタイプのお客さんも満足できそうな、いいお店でした。


さて、次は、今回の京都書店回りでいちばん楽しみにしていたお店の1つ、フタバ+(プラス)京都マルイ店へ。


河原町丸井

↑河原町の交差点に「阪急」がないというのは、昔からこの街を知る身にはなんだか妙な感じです。


お店は6階ですが、各階にパブリックスペースが設けられ、そこに、ふたば書房がセレクトした本が並んでいると聞いていましたので、1階から順に見ていくことにしました。まずは1階から。いやはや。これは驚きました。本体はともかく、それ以外のフロアは、ごく簡単なものだろうと想像していたんですが、少なくとも1階のそれは、なかなか本格的なもの。セレクト棚にありがちなお洒落本もたくさん並んでますが、ふつうにワンピースの新刊とかもあるし、ただの「見せ棚」になってなくて、ちゃんと買い物したくなるセレクトになっています。いちいち書名・作家名はあげませんが、まさかマルイの1階の、こんな場所にこんな本が、こんな作家が!というのが、いくつも発見できたことは書いておきたいと思います。


2~5階は、それぞれ各階の売り場の雰囲気に合わせてあるのでしょう。1階ほどの点数はないものの、各階ごとに個性を持たせたセレクトになっていて、なかなか楽しいです。しかも、いくつか、へー、と思わされるタイトルがあったので、6階で見てみたら、お店のほうにはなくて、各階のコーナーのほうにだけある、というタイトルまで。かなり考えられているのがわかりますね。


で、6階のお店ですが、これが、途中階で高まった期待を裏切ることのない、すてきなお店でした。文具の扱いもあるセレクトショップということで、オリオンパピルスを思わせるところがありますが、什器の感じ、本の並べ方などはもちろん独自のもの。


端からじっくり見てみましたが、これが本好きなら思わずうれしくなるようなセレクトになっていて、眺めていてあきません。作家や作品のセレクトはなるほどなあと思わせるものなんですが、たとえば、ある本を選ぶのでも、文庫も出ているのに、あえて単行本が選ばれていたりと、作家・作品ごとに、(複数の版がある場合は)判型も選択されているようでした。新刊を10冊平積みにするというタイプの店舗ではなく、1冊が平や面になっていたりしますから、それらのセレクトもかなり考えられているようでした。


全体的にはセレクトショップ的な品揃えなんですが、1階のところにもあったように、ワンピースほか、ふつうのコミックの新刊や文庫新刊も置いてありましたし、お洒落系でないふつうの雑誌、それこそNHKのテキストなどもふつうに置かれていて、ふだん使いの本屋さんとしても最低限機能することを目指しているようでした。お洒落一色よりも、そのほうがいいですよね。


フタバプラス1フタバプラス2

↑店内ではぱちぱちやるわけにはいきませんので、入り口あたりと、休憩コーナーを。各階のパブリックスペースは、検索すれば画像を紹介しているサイトがありますから、そちらを。たとえば、こちら。


この空犬通信でも記事にした通り、開店前から気になっていたお店。予想通り、というか予想以上にすてきなお店でした。「ファッションビルのなかのお洒落セレクトショップ」というと、それだけで足が向かない年輩男性客もいそうですが(ぼく自身、ふつうならそのタイプ)、ここはそういう先入観は抜きにして、いろいろな本好き書店好きに見てほしいお店だと思いました。おすすめです。


ふたば書房と言えば、新幹線利用者にはおなじみの、京都駅八条口店もいいですね。


ふたば書房京都駅1

同店は、2008年にリニューアル。「ふたば書房、八条口店が好調/リニューアルで売上げ25%増」(2010/8/26 新文化)によれば、《リニューアル後、現在売上げが前年比25%増と好調である》とのこと。記事によれば、お店は小さくなったようですが(売場面積は65坪から50坪に縮小)、前の様子を知っている目で見ても、とくに狭い、小さいという感じはしませんね。新幹線に乗る前の短時間でざっと見るのにちょうどいいコンパクトなお店ですが、駅構内の売店とちがって、品揃えは広さに見合った十分なもの。買い物したくなる雰囲気に満ちた、いいお店だと思います。


【“大垣書店、ふたば書房……大阪・京都書店回りレポート その3”の続きを読む】

戦前探偵者驚愕必至……渡辺温『アンドロギュノスの裔』創元推理文庫版発売

このところ、こ忙しい日が続いていて、日中の書店回りはもちろん、会社帰りに書店に寄ることさえまままならなくて、書店欠乏症気味の空犬です。(以下、昨晩書いた記事ですが、内容や装丁について、あまりにもあっさりとしかふれていなかったため、一部内容を追加、書き直しました。)


今日は、久しぶりに用事のないフライデーナイト、早めに仕事を入り上げて、吉祥寺でレコードを見たり、書店に寄ったりしたかったんですが、仕事が片づかず、結局、会社を出るのが遅くなってしまい、BOOKSルーエにしか寄れませんでした。でも、BOOKSルーエでは、最近気になっていた本を、文庫中心にたーくさん買ってきましたよ。そのなかから、これを紹介しておきましょう。


  • 渡辺温『アンドロギュノスの裔(ちすじ)』(創元推理文庫)

探偵小説好き、とくに戦前もの好きには説明不要の人名であり、作品名ですよね。まさか、この本が、この作家の作品が単独文庫化される日がくるとは……(泣)。


渡辺温……その作品は、アンソロジーでは読めるものがいくつもありますが、まとまって読もうと思うと、入手しやすいのは、博文館新社の「叢書新青年」のなかの1冊、『渡辺温 嘘吐き(ラ・メデタ)の彗星』しかありません(これも、ふつうの書店で、ふつうに見かける本ではないので、「入手しやすい」とはやや言い難い)。それ以外では、決定版的な1冊として、薔薇十字社から1970年に出た『アンドロギュノスの裔』がもちろんあったわけですが、これは入手の難しい本で、けっこうな古書価がついていますからね。それほど簡単に読める作家ではなかったわけです。


いつものように内容の紹介はしませんが、表4(裏表紙)の作品紹介がとてもいいので、それを引いておきましょう。こんなふうにあります。《構溝正史の右腕として『新青年』の編集をしながら小説の執筆に励んでいた渡辺温は、原稿依頼に赴いた谷崎潤一郎宅からの帰途、貨物列車との衝突事故で27年の短い生涯を閉じた。》


「横溝正史」「新青年」「編集」「小説の執筆」「谷崎潤一郎」「列車」「衝突事故」「短い生涯」……短い文章のなかに、探偵小説好き、新青年周辺作家好きの読者の興味を引くであろうキーワードがちりばめられています。そして、《憂愁と浪漫に溢れる、影絵の如き物語世界を御堪能あれ。》と締めくくられるこの文章を読んで、手に取らずにいられる探偵者はまずいないでしょう。


今回の創元推理文庫版は、薔薇十字社版の文庫化ということではなく、すべて雑誌初出にあたった、とありますから新編集なんですね。渡辺温の全貌を(翻訳を含め)ほぼカバー、入手困難だったクラシック作品の文庫化としては、理想的なかたちだと言っていいでしょう。


すばらしいのは中身だけじゃなくて、装丁がこれまたいいんですよね。創元ライブラリの雰囲気も感じさせる、モダンでかっこいい装丁は、Fragmentの柳川貴代さんの手になるもの。探偵や幻想好きには、山尾悠子さんの『歪み真珠』(この本を以前にblogで取り上げたときは、本がいかに美しいか、ということしか書いてませんでした;苦笑)や、『独逸怪奇小説集成』、ボルヘスの『創造者』(3点とも国書刊行会)などを手がけた方だと言えば、雰囲気がわかるでしょうか。Fragmentのパートナー、西山孝司さんが手がけたものも含めた作品の全貌はサイトで見られますので、装丁に関心のある方はぜひ。


今回の『アンドロギュノスの裔』、カバーデザインがすてきなのはもちろん、帯もいいんですよ。単行本の帯ははずしてとっておきますが、文庫は、よほど特別なものでないかぎりはずして捨ててしまいます。今回のは、とっておきたくなる帯ですよ。ネームは上品な書体が選ばれ、青系の色使いもきれいで、2色の使い分けが「効いて」います。余白部分にはコラージュがちりばめられていますが、そのコラージュ、ざっと見るかぎり、本文やカバーにはありませんから、帯のためだけに用意されたものなんですよね。こまかいところにまで遊び心が……いいなあ。このコラージュは、西山孝司さんの手になるもの。


と、このように、中身も外見もすばらしくて、探偵小説読みとしては、全面的に歓迎すべき文庫化なんですが、薔薇十字社版を、大変に苦労して探して、けっこうなお金を出して買った身としては、やっぱり複雑な気がしますよね(苦笑)。この文庫化の噂を聞いたのはけっこう前ですが、うれしいような、文庫にはしてほしくないような、そんなアンビバレントな気持ちになったものでした。まあ、こうして、結局買ってるんですけどね(苦笑)。


この文庫は、渡辺温のファン、探偵小説読み、新青年周辺の作家・作品に興味がある向き、ミステリ、とくにクラシックミステリに興味のある向きは、必読必携といっていいでしょう。文庫としては一見高めの値付けですが、600頁を超えるボリュームですからね。実際に手に取ったら、値段が高いとはおそらく感じないと思いますよ。


アンドロギュノス 薔薇十字

↑我が本棚の薔薇十字社版。文庫化されても、この本がぼくにとって(そして、おそらくは、この本を所有する多くの探偵者にとって)宝物であることには変わりありません。


ところで。薔薇十字社の本で、探偵関連で、アンソロジーなどでは読めるけど文庫など単独本がなくて、と、いろいろ共通点の多い作家といえば、大坪砂男ですよね。これも、けっこうな値段出して、全集、買ったんだよなあ。結局、読み返すのは「天狗」一作だったりするんだけど、それでもやっぱり全集で持っておきたかったんだよなあ。東京創元社さん、ま、まさか、これは文庫にしたりしませんよねえ……。