西荻窪beco cafeで、ほぼ毎月開催している出版・書店関連テーマのトークイベントbeco talk、第6弾のご案内です。3月は、作家の碧野圭さんが登場です。
beco talk vol.6 刊行記念トーク
「100店営業を目指して」 『書店ガール2』はいかに書かれたか
日時:3月29日(金)
OPEN 19:00 START 19:30(〜21:30)
出演:碧野圭(作家)、空犬(吉っ読・空犬通信)
2012年に文庫化され、話題を呼んだ書店員小説『書店ガール』(PHP文芸文庫)。その続編の刊行(3月中旬予定)を記念し、日本でいちばん書店を回っている作家、碧野圭さんが、これまで訪問してきた書店や書店小説について語ります。
碧野さんの『書店ガール』については、以前にこんな記事やこんな記事を書いていますので、よろしければ、そちらもご覧ください。
今回のトークイベントは、以下のような二部構成を考えています。
1)私が訪ねたお店たち
2)『書店ガール』ができるまで
第1部では、碧野さんがこれまでに訪問した書店と、その取材結果をまとめたブログについて、同じ書店訪問ブログ(=空犬通信)の書き手であるわたくし空犬が、書店を回り始めたきっかけや、取材の方法などについていろいろ質問しながら、書店取材の裏話をうかがいます。
後半は、これまで取材で訪問したお店、ブログで取り上げたお店のなかから、碧野さんと空犬が印象に残っているお店を数店ずつピックアップし、紹介します。お店の写真も用意できれば、お見せしたいと思います。
第2部では、第1部で話していただいた書店取材を踏まえて、書店小説がどんなふうにできあがったかを、作者本人のことばで語っていただき思います。
『書店ガール』については、1作目の刊行前に、同じbeco cafeでプレ刊行トークイベントを開催しています。話の内容に重なる部分が多少はあるかもしれませんが、今回は、書店の話題が多くなること、小説についても続編のほうが中心になることがありますので、前回とはかなり違う内容になります。初めて碧野さんの話を聞く方はもちろん、前回のイベントに参加された方でも楽しんでいただけるようなトークしたいと思います。
予約は、本日、1月31日(木)から、beco cafeにて受付開始です。beco cafeに、電話・メール・ツイッターなどで直接お申し込みください。
『書店ガール2』(PHP文芸文庫)は、当日、会場でも販売の予定です(発売は、3月中旬の予定)。トーク終了後、ご希望の方には碧野さんがサインしてくださるそうですので、よろしければ会場で本をお求めください。なお、サインは事前に買った本でも大丈夫ですので、イベント前に本をお買い上げになった場合は、当日、忘れずに本をお持ちください。
イベント終了後は、いつものように、お店の閉店までドリンクタイムとして、出演者とお客さんのみなさんでお酒を飲みながらおしゃべりを楽しめる時間ももうけています。トークの途中には、質疑応答の時間はもうけませんので、ぜひトーク後の時間に出演者に話しかけたり質問したりしてください。
予約方法や、beco talk自体の説明、今年のbeco cafeイベントのラインナップなどにつきましては、こちらの記事をご覧ください。
それでは、3/29(金)、西荻窪beco cafeで、みなさまのお越しをお待ち申し上げております。
【“beco talk第6弾は『書店ガール』の碧野圭さんが登場……予約、本日からです”の続きを読む】
非書店ネタが続きます。しかも、探偵に特撮にと、趣味に走り過ぎの本の話題で、すみません……。
なんか、モンスターの本が続けて出ましたね。
『突撃! モンスター映画100』は、書名の通り、狼男にヴァンパイアからエイリアンにロボットまで、(広義の)モンスターが出てくる映画をずらりと紹介した、異形好き怪獣好きにはたまらない1冊。最初から最後まで、全編これ、大好きな映画と、みんなが大好きなモンスターたちでいっぱいです。リック・ベイカー、レイ・ハリーハウゼン、フィル・ティペットら、このジャンルの映画好きにとっては神様のような職人たちを取り上げたコラム「モンスター映画偉人伝」もgood。このコラム、もっとたくさん載っていたら、なおよかったなあ。それにしても秘宝のムックはすごい勢いで出てますね。
『ユリイカ』の特集はなんと「ゾンビ」。副題には「ブードゥー、ロメロからマンガ、ライトノベルまで」とあります。平成仮面ライダーのときもびっくりしたけど、今度は、ゾンビがきましたか(笑)。同誌が本格的にこの種の異形を扱った特集となると、「モンスターズ!」(1999年5月号)以来、ということになるのかな。
中身のほうは、ゾンビマンガにゾンビ映画にゾンビノベルにゾンビラノベにゾンビ文化にと、もりだくさん。くわしくは、上の書名リンク先で目次が見られるので、そちらをどうぞ。そういえば、ゾンビと言えば、先に紹介した洋泉社のムックで、こんなのも出てますね。ゾンビ者はこちらも要チェックでしょう。
3冊目は、まだ購入していないのですが、モンスターものの新刊ということで、一緒に紹介しておきます。『モンスター大図鑑』。副題に「SF、ファンタジー、ホラー映画の愛すべき怪物たち」とあります。こんな本です。
《本書は、マイケル・ジャクソン『スリラー』のショートフィルムや『ブルース・ブラザーズ』、『狼男アメリカン』などで知られる映画監督ジョン・ランディス氏の初の著書となります。 古今東西の映画から、吸血鬼、ミイラ、オオカミ人間、ゾンビ、宇宙人などなど、多彩なモンスターたちを、ハリウッドの特殊メイク・SFX事情を知り尽くした氏ならではの独断と偏見でビジュアル豊かに紹介。約900作にものぼる映画作品のモンスターたちを総覧でき、資料性も高い1冊となっています。また、クリストファー・リー、デヴィッド・クローネンバーグ、サム・ライミ等々モンスター映画の巨匠たちとの対談も見どころです。》
著者はなんと、我らがジョン・ランディス監督(!)。その筋の人にはあらためて説明するまでもありませんが、モンスター・特撮系では、上の内容紹介に出てくる作品のほかに、吸血鬼ものの『イノセント・ブラッド』、TVシリーズの「マスターズ・オブ・ホラー」などもある、「飲み屋で好きな映画の話をしたら楽しそうなタイプ」の監督さんです。
本書は、意外にも初めての著書だとか。それにしても、初著書が「モンスター」で、しかも「大図鑑」。すてきなおやじだなあ(笑)。『ブルース・ブラザーズ』1本で、勝手に心の殿堂入りしていただいている監督なんですが、こういう幼稚、もとい、純真(ちょっと違うか)な著作を出されると、ますます好きになりますよね。
↑追記(1/31):結局、買ってしまいました……。
ちなみに、いまいちばん楽しみにしているモンスター本はこちらです。
↑カラーチラシ。
《創立50周年を迎える円谷プロが「ウルトラマン」や「ミラーマン」などの特撮作品で作りだした怪獣約2,500体を、すべて収録した日本初の大図鑑。細かいヴァージョン違いや宇宙人の円盤などの詳細な情報まで掲載》とあります。2500体! 400頁超!しかもオールカラー! これは滅茶苦茶楽しみですよねえ。3/8ごろの発売だそうです。
以前に、渡辺温『アンドロギュノスの裔(ちすじ)』(創元推理文庫)を紹介したことがありました。こちら。その末尾に、こんなふうに書きました。
《ところで。薔薇十字社の本で、探偵関連で、アンソロジーなどでは読めるけど文庫など単独本がなくて、と、いろいろ共通点の多い作家といえば、大坪砂男ですよね。これも、けっこうな値段出して、全集、買ったんだよなあ。結局、読み返すのは「天狗」一作だったりするんだけど、それでもやっぱり全集で持っておきたかったんだよなあ。東京創元社さん、ま、まさか、これは文庫にしたりしませんよねえ……。》
文庫化の噂が出ていることをその後知るわけですが、それから待つこと1年以上。とうとう、刊行されましたね。BOOKSルーエで買ってきました。
版元の内容紹介を引きます。《高木彬光、山田風太郎らとともに、江戸川乱歩から“戦後派五人男”と称された不世出の天才・大坪砂男の作品を、旧全集二冊の全収録作に、単行本未収録作ほか随筆、著者にまつわる文章等を増補し、単独名義としては初となる文庫版にて全4巻に集成。本巻には「赤痣の女」をはじめとする、警視庁鑑識課技師・緒方三郎もの全短篇などの本格推理作品を収録した》。
全4巻ですか。1巻1300円ですから、全部買うとけっこうな額になりますが、薔薇十字社版全集の古書価を思えば、また、全集未収録作品がカバーされていることを考えれば、ファンにはぜんぜん高くはありませんよね。
『アンドロギュノスの裔(ちすじ)』のときに書いたことの繰り返しになりますが、薔薇十字社の全集を持っている身としては、今回の文庫化、悔しい気がまったくしないではないんですが、まあ、そこはやはり、手軽で読みやすい文庫になって、ふつうに買えるようになるのはうれしいことだと思わなくてはいけませんね。
大坪砂男と言えば、やはり「天狗」。もう何十回読み直したかわからない、大坪作品のベストというだけでなく、大正・昭和の探偵小説に範囲を広げてもベスト3に入れたいぐらいの、超偏愛作品です。同作については、過去にも、こんな記事やこんな記事でふれています(うち、後者では、西村賢太さんによるすばらしすぎる「天狗」評を引用しているので、ぜひ)。その「天狗」は、全4巻のうち、2巻に収録されるようで、2巻の表題にもなっています。別に全集でも、国書刊行会の探偵クラブでも読めるんだけど、でも、やっぱり楽しみだなあ。
↑国書刊行会の「探偵クラブ」の大坪砂男の巻「天狗」。1巻本としては最高の選集で、全集ではなくこちらのほうで、何度も再読してきました。
文庫になること自体、奇跡的なこと、探偵者としては、ただただ喜んでいるべきで、よけいなことを書くべきではないかもしれませんが、偏愛作家の文庫化なので、やっぱり気になったことも書いておきます。このすばらしい文庫全集に、1つだけ個人的に残念なことがあるとしたら、装丁がちょっとイメージと違う感じに思われたこと。「イメージと違う」などといっても、こちらが勝手に思い描いている「イメージ」ということで、別に正解があるという話ではないのですが……。
全体の赤を基調にした色使いとか、表1の書名回り、そして、とくに背の感じが、なんだか時代小説っぽく見えてしまうのが、個人的にはちょっと不満で……。同じく薔薇十字社の全集から奇跡的に同文庫入りした『アンドロギュノスの裔』の装丁が、シンプルでモダンで洒落ていて、最高にかっこよくて、作家にも作品にもぴったりの、実にすばらしい装丁だっただけに、(比べても意味ないことだとは十分に承知しつつ)よけいに残念に思えてしまうのかもしれません。今回も、『アンドロギュノスの裔』を手がけた柳川貴代さんの装丁だったらなあ……などと詮無いことを思ったり。
ただ、あくまで個人の好みにちょっと合わなかったというだけで、このすばらしい文庫全集の疵となるようなことではありません。大坪砂男の名前に思い入れのある探偵小説好きは全員必携でしょう。また、名のみ聞きながら読む機会がなかった、という、初めての読者にも(最初から全集で読むのが、入門としてどうかというのはありますが)最良の入り口となるかもしれません。おすすめです。
なお、初めての方は、この1巻を手にとってみて、どんな雰囲気なのか、のぞいてみるのもいいですが、やはり代表作を含む2巻の「天狗」を待つのがいいのではないかと、個人的には思います。
↑我が家の宝物本の1つ、薔薇十字社版全集、全2巻。けっこうな値段を出して買いました……。ご覧の通り、全集の装丁も赤と黒が基調になっています。文庫全集の装丁、色味は、この全集を意識したのかなあ。ただ赤と黒が共通する、というだけで、イメージはまったく違いますね。
今日、1/27は満月。2013年、最初の満月ですね。今日は天気がよかったので、東京西部、武蔵野のあたりでは、月がとてもきれいに見えていました。月は、独りで眺めているだけでもいいものですが、誰かと一緒に楽しむのもいいものです。今日は、娘を誘って、望遠鏡と双眼鏡を使った屋内での月見を、親子でしばし楽しみました。
月はいいですね。天気にさえ恵まれれば、新月のときをのぞき、ほぼ毎日、夜空にふつうに見られる、我々にもっとも身近で当たり前な天体。でも、いつ見ても、どれだけ眺めても見飽きることがありません。天文の知識がまったくない素人にも、容易に見つけることができますし、日々、その姿を変え、しかもその変化が素人にもわかりやすく、形状や位置、色味の違いを手軽に楽しむことができます。先に、天気に恵まれれば、と書きましたが、曇り空におぼろげに見える月や暈をかぶった月も、こうこうとと明るく夜空を照らす晴天の月とはまた違った趣があっていいものです。とにかく、実に手軽に、いろいろな楽しみ方をできる天体ですよね。
そんな月を楽しむ月見人にぴったりの本が昨年出ましたね。
本書は、《もっとも身近でありながら、今なお多くの謎を秘める月。つねに人々の心を捉えてきたこの天体を、13の切り口から、古今東西の文化や科学的発見の歴史を通じて概観する》という内容。月を天文学的に、科学的に解説した本にもすばらしいものがいくつもありますし、写真集にもすぐれたものがいくつもあって、ぼくもそれら月関連本はいくつも所有していますが、この本は、月を文化史的にとらえた本。先にあげたような天文本とはまった違ったノリで、理系の話題に弱い文系読者にも大いに楽しめる中身になっています。
とても読みやすい文章で、天文読み物につきものの、難しい理系的な話は一切ありません。基本的には、落ち着いたマジメな感じの読み物ですが、ときどき顔を出すユーモアも効果的です(たとえば、月面図の作成に情熱をかけた人物について、《仕事にうちこむメドラーの執念も相当なもので、望遠鏡を覗いていない瞬間がめったになかったため、妻の顔を見ることはとてもまれだったと伝えられている》といった、思わず(笑)をつけたくなるようなくだりがさらりと出てきたりします。どんだけ望遠鏡見てるんだって(笑))。
仕事帰りに、思わず夜空を見上げてしまう、そんな月好きのみなさんに広くすすめたい1冊です。
なお、本書は、1/20付日経新聞の書評欄で取り上げられています。評者は高山宏さん。「月 ベアント・ブルンナー著 人の願いと不安を反映する「鏡」」(1/20 日本経済新聞)。《M・ニコルソンの『月世界への旅』、松岡正剛『ルナティックス』とともに、博識と洞察に驚かされる月の博物学の名作》と大絶賛。ぼくの駄文と違って、すぐにも読みたくなる紹介文になっているので、ぜひこちらもチェックしてみてください。
昨年出た月の本としては、これもすばらしい本です。
《新月から三日月、そして満月を経て、再び新月へとめぐるサイクルを、わかりやすくたどるユニークな知識絵本。宇宙の不思議に迫ります。2012年〜19年の満ちかけ表付き》という本書。対象は小学生中学年からということで、児童向けの絵本なんですが、子ども向けとばかにするなかれ。書名通り、「月の満ちかけ」について、コンパクトにまとめられていて、大人でも十分に楽しめ、また勉強になります。というか、本書でカバーされている内容を、子どもにきちんと説明できる人は、相当な天文好き以外に、そんなにはいないのでは、などとも思ったりしたほど。親子での月見に最適な手引きとして、おすすめです。
ちなみに、この本は、NET21による第2回「街の本屋が選んだ絵本大賞」の、「絵本ピカピカ賞」に選ばれています。関連記事は、こちら。「NET21絵本大賞、「しろくまのパンツ」がグランプリ」(新文化)。
白水社で昨年出た天文本には、こんなのもありました。
【“今年最初の満月の夜に、「月の本」を読む”の続きを読む】
先週、全国紙を含むあちこちのメディアで報じられた以下の件、日本の書店の状況を考えるうえで、非常に重要なニュースだと思いますので、あらためて取り上げておきます。
TSUTAYAの出店戦略・店舗数などについては、一昨年にこんな記事を書いていますが、それから1年少しで、店舗数だけでなく、売上でも書店のトップに躍り出ることになったわけですね。
この件は、いろいろなメディアで取り上げられていますので、目についたものをいくつか上げておきます。
もちろん同じ案件の報道ですから、同じようなことが書いてあるわけですが、カバーされている情報の範囲が微妙に違ったりしますし、店舗の写真を載せているもの、マイナビニュースのように書籍・雑誌年間販売額・店舗数推移のグラフを示しているものなどもありますから、興味のある方は、複数のソースをあたってみてください。
これら報道の内容を箇条書きにまとめるとこんな感じでしょうか。
- TSUTAYAは1983年に第1号店「蔦屋書店枚方駅前店(現TSUTAYA枚方駅前本店)」を出店。2013年3月に30周年を迎える。
- 「TSUTAYAカンパニー」の運営はカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)。
- 書籍・雑誌販売の年間売上高(2012年1月〜12月)は1097億円。紀伊國屋書店を抜いて、街中に店舗を展開する国内書籍販売チェーンでは最大に。
- この数字は、同社過去最高。書籍・雑誌販売の売上げは10年間で3倍以上に。
- 紀伊国屋書店は1081億円(文具など含む)、丸善・ジュンク堂は837億円(ネット書店含む)。
- TSUTAYA BOOKSは、現在全国696店舗。
- 「Tポイント」のデータベースマーケティングの仕組みを活用し、特に購入量の多い顧客の購入傾向から書籍・雑誌の品揃えを強化。
- 雑誌では、各店舗の特性や利用者属性にあったタイトルの品揃えを目指した。
- 新業態の店舗展開も活発で、大型書店の出店を増やし、専門書などにも積極的に取り組み。
- 1000坪超の書籍売場を有する「蔦屋書店フォレオ菖蒲店」や群馬、茨城など各県で専門書も取りそろえる大型書店の出店、東京の代官山には団塊世代に向けて「代官山 蔦屋書店」をオープンさせるなど、2011年から進めている出店展開も販売額増加の理由に。
- 2012年の出店の書籍売場の平均面積は1,000平方メートルとなり昨年と比較し1.5倍、一昨年対比では3.6倍に拡大。
吉祥寺ネタは久しぶりかもしれません。我が町吉祥寺の書店事情にちょっと変化がありましたので、紹介しておきます。2件、あります。
まずは、ヨドバシカメラでコミックの取扱が始まったというニュースから。関連記事は、こちら。「ヨドバシカメラ、コミック販売開始――ポイント3%還元」(1/18 ITmedia eBook USER)。
記事の一部を引きます。《ヨドバシカメラは1月18日、通販サイト「ヨドバシ・ドット・コム」と一部店舗でコミックの取り扱いを開始した。コミックのヨドバシゴールドポイント還元は3%で、ラインアップは約8万5000点、オンラインからの注文は全品送料無料》。
《ヨドバシ・ドット・コムのほか、マルチメディア梅田、マルチメディア吉祥寺、マルチメディア川崎ルフロンの3店舗で取り扱う(店舗では約7万8000点のラインアップ)。マルチメディア横浜、マルチメディア博多、マルチメディア札幌、マルチメディア仙台でも2013年3月末までに取り扱いを開始予定》。
うち、気になるのは、リアル店舗でのコミックの扱いですね。スタートの3店の1つに、吉祥店が入っています。吉祥寺の書店利用者としては気になるニュース。早速見てきました。
↑1/19時点では、店内のフロア案内は、ご覧の通り、コミック売場の表示はなし。サイトのフロア案内では、5階のカテゴリに「コミック」があり、取扱商品は「マンガ・コミック」となっています。
実際の売場を見てみた印象ですが、たしかに、かなりたくさんのコミックがそろっています(なにしろ、7万8千の在庫をうたっています)。コミックはそれほどくわしくないながら、一応、あちこちの書店でコミック売場をたくさん見てはいる目で見たところ、平台には最新刊のコミックがずらり、売れ線の商品はそろっていますし、そのほかに、ぼくのような昭和おやじ世代がなつかしく感じるような作品群(たとえば、秋田書店サンデーコミックスの古い巻とか、文庫判ではない、講談社の手塚全集とか)など、吉祥寺の他のお店、たとえばコミックに力を入れている、ブックファーストアトレ吉祥寺東館店には並んでいないようなタイトルも並んでいたりします。
では、それで魅力的な売場になっているかというと、本好き書店好きの目からすると微妙です。傾斜のまったくない棚に、下の方までぎっしり本が入っていて、その棚が向かい合わせになっているところなど、非常に見づらい感じです。また、売れた本なのか、もともと本で埋まっていなかったのかわかりませんが、棚のあちこちがけっこう盛大に空いていて、本が倒れたまま。1回見ただけでこのようなことを書くべきではないと思い、2日連続で見てみましたが、同じ棚で同じように倒れたままになっているところが、複数ありました。本に合わせて作られたわけではない棚の高さを調整した結果なのか、棚の下のところが、1段分、変に空いてしまっている棚があるのも気になりました。
また、棚の横板の前面部分(棚差しの本の上下)すべてに、「図書カード使えます」とか「ポイントカードで3%還元」といった文句の入ったテープ状の案内が貼られているのも(ほんとに、全部の棚板に例外なく入っているのです)非常にうるさいです。
全体に、本を並べただけ、という印象を強く受ける売場で、とてもではないですが、本のプロの手がかけられた感じのする売場には、少なくとも現時点ではなっていないと言わざるを得ません。基本的には、空犬通信では、書店や本の売場については、どこがダメ、あれがダメみたいなことは書きたくありません。(しかも、ぼくはヨドバシカメラはけっこう好きだったりするのです。おもちゃ売場は頻繁に利用しているし、オーディオやヘッドホンや双眼鏡の売場はうろうろしているだけで楽しいし、我が家の家電の多くもここで買ったものだったりするのです。)
でも、すでにこれだけ書店があり、なかにはコミックの専門店もあり、専門店でないまでもかなり力を入れているお店だってあるエリアに、わざわざこうして進出するのに、こんな感じの売場になっているなんて、なんだかすごく妙な感じがするのです。同一商圏のライバル店の店頭の様子を調査することさえしていないんでしょうか。ちょっと覚悟が足りないというか、本の世界を甘く見ているというか、そんな感じがどうしてもしてしまったのでした。なので、あえて批判的に取り上げました。
ただ、あまりすばらしい売場だと他の書店に影響が出てしまうので、それはそれで、吉祥寺の書店を愛する者としては困ってしまう気もして、その意味では、ちょっと安心してもいるのですが、だからといって、このような中途半端な(とあえて書きます)売場で異業種進出されるのは、本の世界に関わる者にとってうれしい事態であるわけがなく、なんだかちょっと複雑な感じです。
他の2店は自分の目で見ていないのでなんとも言えませんが、梅田店を見たという業界の知り合いが感想を寄せてくれました。「売れ筋の確保ができていないし、人気シリーズは巻数抜けも多い」とのことで、「書店との差は歴然」だそうです。おそらくはぼくが吉祥寺で受けた印象と似たような感じなのでしょう。
本を並べたからといって、書店の「棚」ができるわけではない、ということですね。
【“ヨドバシにコミック売場が、ディスクユニオンにブックユニオンが登場……吉祥寺の書店事情にまたまた変化が”の続きを読む】
イベントは、もっぱら自分で企画・主催するほうで、声をかけていただくことなど、ほとんどないんですが、めずらしく、このような会に声をかけていただきました。
人文会主催研修会
ソーシャルネットワークを活かした人文書の棚作り
〜情報収集の技術〜
講師:北川毅氏(代官山蔦屋書店)・幸恵子氏(リブロ池袋本店)・空犬
会期:2013 年2 月13 日(水)
開演時間:19:00 〜 21:00(18:30 より受付開始)
参 加 費:500 円
場所:岩波セミナールーム(岩波ブックセンター3F)
定員:60 名
対象:書店の人文書担当者
※多数の書店様のご参加をお待ちしております。
予約:晶文社営業部 奥村氏(会場の都合上、ご予約をお願いいたします。)
お問い合わせ:
tel: 03-3518-4940
mail: [email protected]
このような内容です。《昨今、電子メディアの発展は目紛るしく、またソーシャルネットワークの発展が私たちのライフスタイルに与える影響は絶大なものがあります。そして時代の変化とともに人文書の棚も変化してきました。今回の研修会では、ブログ、ツイッターで書店情報を発信している空犬氏、新しい人文書の棚作りを実践している人文書の担当者として、北川毅氏(代官山蔦屋書店)、幸恵子氏(リブロ池袋本店)の御三方をお迎えして、新しい時代の人文書販売における棚作りと情報収集の技術についてお話を伺います。》詳細は、人文会のサイトの、こちらの案内をご覧ください。「2月13日(水)人文書ご担当の書店員様に向けた研修会を開催します。」(1/21 人文会)。
……イベントの主旨、自分で引用していて、びびっています(苦笑)。編集者として人文書を担当しているわけではないし、書店の人文棚に精通しているわけでもないのに、「ソーシャルネットワークを活かした人文書の棚作り」って、それは荷が重すぎる気が……(泣)。
ただ、そこは、人文のプロの方がお二人もいらっしゃいます。当方に期待されているのは、書店に関連する情報収集と発信のほうのようですので、それならば、ということで、しかも、昔から大好きな版元の晶文社の方からのお誘いということで受けてしまったんですが、大丈夫かなあ……。
というわけで、おそらくは、いつも通り、書店情報の収集と発信について、また、そうして集めた情報をもとに、実際に訪問してきた書店について、実際に目にしてきた人文棚について、お話することになるかと思います。プロの人文担当の方にとって、どれほど意味のあるものになるか、正直なところ、あまり自信がありませんが、少なくとも、ぼく以外のお二人は、書店歴も長く、「棚」に精通した、人文のプロですから(客として、お二人の話を聞きたいぐらいです;笑)、トークの3分の2は、確実に興味深いものになるのではないかと思います。
このようなテーマ、出演メンバーの会に興味のある、人文ご担当の書店員の方は、ぜひご参加いただければと思います。人文担当限定となっていますが、新書やビジネス書など、人文関連を含む隣接ジャンルの担当の方にも興味深い話になるのではないかと思いますし、仕入れや本部など、棚の直接の担当でない方にも参考になりそうな気がします。なお、わたしは一出演者で、こちらでは予約等は受けられませんので、お申し込みは、人文会のご担当、晶文社営業の奥村さん宛てにお願いします。
というわけで、2013年最初の、新刊書店、開店・改装・閉店関連ニュースです。(以下、日は、昨年のもののみ「2012」を表記しています。)
◆オープン
- 2012/12/22 アニメガ京都店
- 2/2 くまざわ書店アリオ札幌店(札幌;540)
- 2/9 ゲオ掛川大池店(静岡県掛川市;20)
- 2/上 ブリッサ・リブレリア(東京都港区;30)
- 4/2 有隣堂???店(武蔵小杉)
- 4/26 紀伊國屋書店グランフロント大阪店(940)
アニメガ京都店ですが、四条通沿い、エイシンビルの3階というのは、ブックストア談の3階ですよね。サイトでは、ブックストア談京都店の住所表記はエイシンビルの1〜3階のままのようです。アニメガは文教堂の店舗内店舗のようなかたちであることが多いようですが、今回もそのパタンになるのでしょうか。詳細がよくわかりませんので、どなたかご存じの方がいらっしゃいましたら、ご教示ください。
札幌のくまざわは、後述の「閉店」リストでふれている丸善アリオ札幌店の跡に居抜きで入るお店とのこと。半月ほどと短期間での新規オープンとなります。居抜きですが、210坪ほど増床となるそうで、500坪超のお店になっています。
ブリッサ・リブレリアは業界の知り合いからの情報ですが、現時点ではWebにも関連情報が見当たらず、どのようなお店なのかまったくわかりません。詳細ご存じの方がいらっしゃいましたら、情報いただけるとうれしいです。
有隣堂は、武蔵小杉駅の武蔵小杉東急スクエア内にできるお店。関連記事はこちら。「武蔵小杉の再開発、東急スクエアにユニクロなど98店」(1/17 日経新聞)。記事を引きます。《東京急行電鉄などは16日、東急東横線・目黒線の武蔵小杉駅南口地区の再開発ビルの商業施設部分に入居するテナントの概要を発表した。駅改札口に直結するショッピングセンター「武蔵小杉東急スクエア」にユニクロや総菜など98店が入る。このほか地権者店舗として食品スーパーのマルエツが出店する。4月2日に開業する》。書店の有無については記事では、ふれられていませんが、ツイッターで教えていただいた情報によれば、有隣堂が入ることが決まっているそうです。支店名や規模などの詳細は不明です。
昨年から噂が聞こえてきていた、うめきたの紀伊國屋書店の件、以前の記事で簡単にふれたことがありますが、とうとう正式発表されましたね。プレスリリース(「紀伊國屋書店「グランフロント大阪」に新規出店」(1/16 共同通信PRワイヤー))が出ていますので、閉店案件まで紹介してから、記事末尾で、PRなどを引きながらあらためてふれたいと思います。
◆リニューアル
- 2012/12/13 TSUTAYA WAY熊野店(三重県熊野市)
- 1/18 サガミヤ広野店(静岡県伊東市;90)
- 1/26 丸善ラゾーナ川崎店(600)
- 2/1 ブックボーイ大船渡店(岩手県大船渡市;199)
- 2/上 丸善岡山シンフォニービル店
オークワ熊野店2階のTSUTAYA WAYは移転オープンとのこと。伊東の老舗書店、サガミヤ広野店は、ビジネス書棚を一新とのこと。丸善が2件あります。ラゾーナ川崎はコミック売場の増床、岡山は、実用書・文庫・新書売場の強化とのこと。熊野以外の3件は、業界の知り合いからいただいた情報です。
大船渡のブックボーイは、仮店舗をたたんでの新規開店とのことです。関連記事は、こちら。「東日本大震災:「街に必要」本屋再建 津波乗り越え 岩手・大船渡」(1/9 毎日新聞)。記事の一部を引きます。《東日本大震災で経営する書店4店舗を失った岩手県大船渡市の佐藤勝也さん(69)が2月1日、JR大船渡駅舎跡地近くの仮店舗を畳み、本店を新築オープンさせる。地元に一つだけ残った本屋さん。70歳を目前にして1億円以上の借金を背負うが、なじみ客らに背中を押されて本格再建のスタートを切る》。
《取引業者は震災前に納めた商品の代金支払いを免除してくれた。県の制度で債務が猶予・減免され、二重ローンの懸念がなくなった》とはいうものの、《本格再建には新たに1億円を超える借金が必要になる》とのことです。決して楽な道のりではないはずですが、《地元に一つだけ残った本屋さん》として、がんばってほしいものです。機会あれば、お店も訪ねてみたいと思っています。
この記事のほか、コミックのシュリンク機を手がけているダイワハイテックス発行の書店情報誌「DAIWA LETTER(ダイワレター)」36号でも同店が取り上げられています。以前にも取り上げたことがありますが、この「ダイワレター」、ブックボーイ以外にも書店情報の充実した冊子ですので、ぜひご覧ください。PDFも公開されています。
◆閉店
- 2012/12/12 辰正堂書店本店(千葉県松戸市)
- 2012/12/16 宮脇書店東バイパス店(香川県高松市)
- 2012/12/25 ファミリーブック若葉台店(神奈川県川崎市)
- 2012/12/29 ブックフォーラム王子公園店(兵庫県神戸市灘区)
- 2012/12/31 五条書店(福岡県太宰府市;30)
- 2012/12/31 早川屋書店(愛知県名古屋市)
- 1/6 ブックスゴロー戸田公園駅店(埼玉)
- 1/6 エンターキング千葉美浜店
- 1/13 長谷川書店島本店(大阪)
- 1/14 丸善札幌アリオ店
- 1/17 福岡金文堂天神地下街店
- 1/20 ファミリーブック羽生店(埼玉県羽生市)
- 1/20 ファミリーブック小山城南店(栃木県小山市)
- 1/20 文教堂山形南店(山形県山形市)
- 1/20 宮脇書店練馬店
- ?/? ジュンク堂書店大宮ロフト店
ひと月ほどの間に15件もの閉店が……。しかも、今回(にかぎったことではないのですが)は、町の本屋さん、それも地元で長く営業してきた老舗の本屋さんの閉店が目立つのがさびしいところ。ブックフォーラムは、阪急神戸線の王子公園駅近くにあった、創業約40年という町の老舗本屋さん。五条書店は、西鉄五条駅近くにあった、こちらも創業約40年の老舗。正確な年数はわかりませんが、松戸の辰正堂書店も古くからあるお店ですね。うち、五条書店については関連記事があります。こちら。「「街の本屋さん」また一つ姿消す 西鉄五条駅前で40年 カレンダー売り寄付」(12/29 西日本新聞)。
上前津の早川屋書店、水無瀬の長谷川書店島本店、天神の福岡金文堂天神地下街店、いずれも小さな、しかし、地元の人たちにとっては大事な、ふだんづかいのお店だったであろう、そんな書店です。年末年始の短期間に、全国のあちこちで、これだけの町の本屋さんが姿を消したのかと思うと、こうして紹介記事を書いていて、なんとも言えない気分にさせられます。
ジュンク大宮は、関連記事、「大宮ロフトが閉店へ 建物老朽化などで今年中」(1/13 東京新聞)によれば、建物老朽化のためとのことで、ロフトは近辺での営業継続を検討中とあります。大宮には複数の新刊書店がありますが、1999年オープンの同店は地域の最大店舗(550坪でオープン、2006年に増床)。まだ閉店の時期さえ未定ということで、どうなるのかよくわかりませんが、今後が気になります。
【“紀伊國屋うめきた、五条書店、ジュンク大宮ロフト……新刊書店の開店・閉店いろいろです”の続きを読む】
一度はやめようかとも思っていた、新刊書店の開店・閉店関連の記事ですが、継続のリクエストを思いの外たくさんいただき、さらには、先日の新年会で、業界関係のある方から、いかにこの情報が必要とされているかを切々と訴えられてしまったので(直訴はさすがに効きました(笑)。まあ、動かされるこちらが単純なんだろうと言われればそれまでなんですが(苦笑))、しばらく続けてみようかと思っています。
これまでとまとめ方自体は変えませんが、念のため、「凡例」と「方針」のようなものをあげておきます。
- これまで同様、「オープン」(原則として新規オープン)、「リニューアル」(移転・増床など;一部、改称も含む)、「閉店」の3つに分けてまとめます。
- 情報は、WebやSNSで収集したもの、業界関係者など知り合いから教えてもらったものなど、「手作業」で集めたもので、網羅的なものではありません。
- 一般新刊書店の情報が中心です。児童書・コミックなど、一部のジャンルをのぞき、専門店は含めていません。
- お店の名前から地域がわかりにくい場合は、店名の後のかっこに示すことがあります。首都圏近郊は原則として地域表示は省略します。
- かっこ内の数字は床面積で、坪数です。公式に告知されたもの、報道されたものを示しています。平方メートルで発表されたものは、坪換算で示しています。
- 床面積について、文具売場・CD/DVD売場・カフェ・レンタルなどを併設の複合店の場合、それらを含めた総床面積表示の場合と、含めずに書籍・雑誌売場のみのサイズを示している場合とがあります。公開されている数字の内訳がわかる場合は、それにふれますが、区別されていない場合は、そのままあげています。
稿をあらため、年末年始に集まった情報を、2013年最初の開店・閉店ニュースとしてまとめます。
先日1/18に、2013年最初のbeco talkを無事開催できましたので、簡単にご報告です。第4弾の今回は、「beco talk vol.4 「他店の棚」vs.「空犬通信」 やっぱり「棚」はおもしろい」。
あちこちの書店の棚について、また、書店の棚の魅力を伝えることについて、プレジデント社の石井さんと2人でたっぷり話してきました。やっぱり書店の「棚」の話は楽しくて、話している我々のほうが盛り上がってしまい、予定時間を大幅に超過することになってしまいました。会にご参加くださったみなさん、石井さん、ありがとうございました。
石井さんと空犬が紹介したお店は以下の通りです。(空犬のリストは、空犬通信で取り上げた記事へのリンクになっています。)
石井さん紹介店:
- あゆみBooks小石川店(東京)
- 紀伊國屋書店本町店(大阪)
- 海文堂書店(神戸)
- フタバ書店南砂店(東京)&祇園中筋店(広島)
- さわや書店フェザン店(盛岡)
空犬紹介店:
あちこちのお店を紹介しながら、あらためて思いました。書店の棚を見るのはほんとに楽しいです。そして、それを冊子やblogやトークで誰かに伝えるのも、とても楽しいのです。そんなことを、2人で確認できたトークになりました。さて、次回、2月のbeco talkも、書店と書店紹介メディアがテーマです。
beco talk vol.5 公開講座
こんな店、知ってる? 「本屋さんか」とミニコミの時代
日時:2013年2月15日(金)
OPEN 19:00 START 19:30(〜21:30)
出演:どむか(書店マニア)、空犬(吉っ読・空犬通信)
80年代に発行されていた幻の書店ミニコミ『本屋さんか』。その作り手に、現代版&blog版「本屋さんか」=空犬通信の主催者が、書店テーマの情報発信の「これまで」と「これから」の話をうかがいます。
*予約受付中です。
イベントの詳細は、こちらの記事をご覧ください。テーマは本屋ミニコミですが、出演が書皮マニアとしても知られる「どむか」さんということもありますので、書皮の話もします。ぼくも、空犬通信の過去の書店レポートで紹介した書皮(ブックオカのカバー、「BOOK at ME.」、熊本のくまモンのカバーなど)をイベント当日用意していき、希望者の方に配りたいと考えています。書皮好きはぜひ遊びに来てください。
【“トークイベントbeco talk第4弾無事終了……2月も3月も書店の話です”の続きを読む】
盛岡書店レポートの続きです(前回同様、写真は昨年11/30の様子で、お店の様子は変わっている場合があります)。まずは、2006年オープンのジュンク堂書店盛岡店から。さわや書店本店から徒歩ですぐ、MOSSビルという商業施設内、2フロアで、広さは720坪。
↑建物の外壁がすごいことになっていますね(笑)。この絵自体はジュンク利用者にはおなじみのものですが、ものすごく大きなサイズで描かれているのです。
お店はいつものジュンクという感じでした。2フロアのうち、上のフロアは、まるごとJunku.COM 盛岡店になっているのですが、これがすごい。この立地、また、下の書籍フロアとのバランスからすると、ちょっと大きすぎるのではと、勝手に心配になってしまうような広さ。ジュンクスタイルの棚が延々と林立するフロアに、商品は全部コミックという売場になっています。ジュンクのコミックフロア・コミック専門店はもちろん他でも目にしていますから、別に初めて見るわけではないのですが、立地や、下の一般書籍フロアとのバランスのせいか、とりわけ、サイズの大きさが印象に残る感じでした。
↑駅の近くにある、アニメイト。位置的には、さわや書店フェザン店と、ジュンクの間になるわけですが、ジュンクのような売場が近くにあるだけでも脅威なのに、さらに、フェザン店もコミック棚は非常に充実しているうえに、前回のレポート通り、非常にこまかなPOPで探しやすい買いやすいお店になっていますから、この立地と競合条件では、専門店といえども大変でしょうね。
次は、エムズエクスポ盛岡店。さわや書店の田口さんからも、ぜひ見ておいたほうがいいと言われていたお店です。
広さは1440坪と、超のつく大型店(複合店で、後述の文具他の売場も併せた数字)。お店の前に、広大な駐車スペースが用意された(道路から見ると、建物がかなり向こうのほうに見えます)、典型的な郊外型大型店舗です。
店内に足を踏み入れると、とにかくお店の中がまっ白。うわさには聞いていましたし、写真も事前に見ていましたが、予想以上に、「まっ白」でした。好みもあるかと思いますが、個人的にはちょっと落ち着かない感じがしてしまいました。この色味のせいで、店内がよけいに広く見えるのですが、ぎっしり感がないため、ジュンクタイプの大型店とはまったく違うイメージです。
什器やディスプレイもおしゃれな感じです。POPは少なく(ほとんどない)、版元の宣伝ポスターなどもありません(貼らない主義とも聞きました)。
通路は広くとられています。メインの通路だけでなく、雑誌棚間などジャンルの棚の間の通路なども広くとられていました。たまたたま車いすの方が雑誌棚の前にいらっしゃるのが目に入りましたが、その方の後ろを余裕で行き来できるぐらいの通路幅になっていました。ベビーカーも、もちろんまったく問題なさそうです。
レジの前には、大きな平台が並んでいましたが、書籍を積んで高さを変えるのではなく、もともと段々になった平台が使われていました。
白くて、広くて、ぴかぴかでおしゃれで、本もいっぱいです。でも、なんというか、「遊び」や「引っかかり」がない感じがして、思わず足をとめてしまう、というのがあんまりないような、そんな気がしました。「遊び」や「引っかかり」があちこちにある、というか、だらけ、といっていい、さわや書店のようなタイプのお店とはまさに対極的といっていいでしょう。
この巨大な書店には、ものすごく広い文具売り場(ここが改装前の書籍売場だったとか)と、このご時世に広すぎるぐらいのCD/DVD売り場が併設されています。
同店の経営は、《岩手県で書店やCDショップ、百貨店などを経営するマルカン》(「リラィアブル、9月、1730坪で旭川店出店」(2010/6/10 新文化)より)ですが、書店チェーン「コーチャンフォー」を経営するリラィアブルの《パートナーズショップ》で、リラィアブルのデータを共有したり、経営ノウハウを活用したりしているそうです。ですので、お店の様子もコーチャンフォーのそれに非常に似たものになっています。『世界の夢の本屋さん2』(エクスナレッジ)に、札幌のコーチャンフォーが取り上げられています。店内の様子は、こちらの本をご覧になると雰囲気がわかると思います。
盛岡で書店巡りをされる方は、さわや書店3店はもちろんですが、この2店についても一緒に見ておくと、盛岡の書店事情やそれぞれのお店の特徴がよりはっきりして、いいと思います。ちなみに、ジュンクは商店街のなかにあってアクセスが簡単ですが、エムズエクスポは徒歩では行けません。盛岡からは、タクシーで行くのがいいでしょう。
(IGRいわて銀河鉄道なる、すてきな名前の電車が近くまで行くと聞き、それに乗ってみたくて、最寄り駅の「厨川」に行ったはいいんですが、そこからもけっこう歩くようで、結局タクシーに。帰りは、なかなかタクシーがつかまらず、難儀しましたが、近くにタクシー会社を見つけ、無事に盛岡に戻れました。タクシー会社でたずねたら、いわて銀河鉄道を利用するより、行きも帰りも最初からタクシーのほうが便利で早いよ、と言われてしまいました。参考までに)。
すっかり遅くなってしまいました。昨年11月の初め、ブックオカ開催中の福岡の後に訪ねた熊本の書店レポートです。(取材に協力してくださったお店のみなさまには、紹介記事が遅くなってしまったことをあらためて、お詫び申し上げます。)
熊本を訪問するのは、今回が初めて。夏葉社の島田さんから、熊本の書店はいいと前々からすすめられていましたし、なんといっても、長崎書店がある街ですから、ずっと気になってはいたのです。でも、「遠い」というイメージがあって、なかなか機会を作れずにいたんですが、聞けば、新幹線に乗れば博多から1時間もかからない、というではないですか。で、今回、思い切って足をのばしてきた次第です。午前中に博多駅周辺の書店を回ってから新幹線に乗っても、昼過ぎにはついてしまいました。
改装してまもないのでしょうか、あちこちがやけにぴかぴかした感じの熊本駅をおりると、さすが全国一の人気キャラ、くまモンの姿があちこちに目につきます。JR駅と市の中心街はちょっと離れているので、JR駅からは市電で向かいました。
熊本市内の中心にある、徒歩で回れる新刊書店はひと通り見てきたんですが、今回は、うち、3店に絞って紹介したいと思います。
まずは地域の一番店にして、九州全体でも、数々のジャンル・本の売上ランキングでトップクラスに入ることも多いという、蔦谷書店熊本三年坂。
↑蔦谷書店熊本三年坂。全3フロアのうち、書籍・雑誌は2フロア。サイズは、資料によって、400数十坪だったり、500、600坪だったりし、公式サイトでは1200坪ともあって、よくわかりませんが、3フロア全体で1200坪、書籍・雑誌売場が約500坪ということでしょうか。メインの商店街から、1本、筋を入ったところにあります。
とにかく、すごいにぎわいです。日曜日の午後に訪ねたこともありますが、店内はお客さんでいっぱい、人の流れが絶えません。とくに2階は、ぼくがお店にいた間(けっこう長い間いました)、常にレジに行列ができているような状態。お店の方に取材して、店内を撮影させてもらおうかと考えていたのですが、アポなしではとてもそれどころではなく、レジでお店の方に声をかけることすらできませんでした。いやはや。
お店は、これまでに見てきた他のTSUTAYAとは棚のイメージが異なる、独特の雰囲気で、硬軟幅広い品ぞろえ。かための本もけっこう置いてありました。さすが、地域の一番店であるだけでなく、九州全体でも売上ランキングの常連だというお店です。棚の様子をくわしく取材できなかったのが、ほんとに残念。書店好きならば、必ずおさえておきたいお店です。
次は金龍堂まるぶん店。2フロアで、260坪。市電の通りをはさんでいますが、こちらも先の蔦谷書店熊本三年坂と同じ、メインの商店街の途中にあります。後述の長崎書店とは少し離れているだけ。
↑訪問時は改修中で、改装をしながらの営業でした。ちなみに、ぼくが訪れたのは11/4なんですが、11/10に、リニューアルオープンとなったようです。お店の公式サイトの案内はこちら。数日違いで、リニューアル後の様子を見逃してしまったわけです。ついてないなあ。サイトの写真を見ると、リニューアル後の店構えも印象的ですね。
サイトに、「日本医書出版協会認定書店・教科書特約指定店」とうたわれている通り、学参や教育書、医学書などの専門書が充実しているお店のようです。
↑今回の熊本訪問でもっとも楽しみにしていたお店がこちら、長崎書店。商店街の中にある路面店で、100坪。ワンフロアのお店ですが、同じビルの3階に、イベントスペース「リトルスターホール」があります(坪数は、イベントスペースを含めない、店舗部分のサイズ)。
(ちなみに、上の金龍堂も長崎書店も(後で紹介する喜久屋書店も)、写真がぼけぼけですが、この商店街、とにかく人通りが多くて、お客さんの流れがぜんぜん途切れないんです。長崎書店も、お店の外観だけで何枚も撮っているんですが、正面の写真は、お客さんが写っていないものはゼロ。しかも、人の流れの合間に大急ぎで撮っているので、もともと下手な写真がこのような悲惨な結果に……(泣)。以上、ただの言い訳です。)
以前から見てみたかったお店の1つだったんですが、いやはや、想像をはるかに上回るすてきなお店で、圧倒されました。このお店のすばらしさについては、あれこれと駄文を費やすよりも、写真を見ていただくのがいちばんだと思いますので、稿をあらため、へたくそな素人写真ではありますが、多めに画像をあげながら紹介したいと思います。
上に紹介した3店は、みないずれも同一商圏内、徒歩で2、3分の距離にあります。タイプが異なる店とは言え、同じ一般新刊書店ですから、決してラクではないはずです。でも、こうしたお店が共存できる街というのはいいですね。しかも、ほかにもまだ書店があるわけですからね。本好き書店好きとしては、うらやましくなります。
【“蔦谷熊本三年坂、金龍堂、長崎書店……熊本書店レポート その1”の続きを読む】
今日は、ちょっとめずらしい書店本の紹介です。以前に取り上げたこともある、ビジュアル書店本『世界の夢の本屋さん』(エクスナレッジ)。同書の台湾版というのをいただきました。
『世界の夢の本屋さん』は、続編の『世界の夢の本屋さん2』も出ていますが、最初の巻の中国語翻訳版です。ふつうに買える本ではないかもしれませんし、同書の日本版をお持ちの方にはあまり意味がない情報かもしれません。でも、上の写真をご覧ください。このカバー、このデザインですよ。かっこいいですよねえ。『書店時光』という、(副題を除くと)漢字4字のシンプルな書名もgood、デザイン的にもとても効いています。これは紹介しないわけにはいきませんよね。
↑念のため、日本版のカバーはこんな感じです。カラフルな縦縞があしらわれたデザインでした。このカラフルな縞はカバーそで・見返し・目次・章扉などにも使われているのですが(うち、目次は横縞)、台湾版では、見返しに使われているだけで、扉・目次・章扉は、日本版よりに比べるとぐっとシンプルなデザインになっています。写真、中は台湾版の見返し、右は台湾版の奥付。
この台湾版、カバーそで・見返し・目次・扉・奥付など装丁回りは独自デザインになっていますが、本文のレイアウトは日本版と同じです。比較のために並べてみたら、台湾版のほうが日本版よりもひとまわりサイズが小さくなっていました。
↑目次は、こんな感じ。漢字がずらりと並ぶ様はなんだかすてき。日本版をお持ちの方は、元のカタカナ/横文字の書店名がどんな漢字で表記されているか、見比べてみるとおもしろいですよ。
ちなみにこの本は、一昨日の「吉っ読」新年会で、エクスナレッジM氏より、「おみやげ」としていただきました。
ぼくは、中国語はまったく読めないんですが、そこは漢字文化のすごいところ、なんとなく意味がわかるところがあちこちにあったりするし、アルファベット文化圏のお店の写真と周囲を埋めつくす漢字たちのギャップもおもしろいので、ぱらぱら眺めているだけでけっこう楽しいです。書店好きで、中国語におぼえのある方は、探してみるといいかもしれません。日本版とはまた違った楽しみ方ができそうです。
昨日は、吉祥寺書店員の会「吉っ読」の新年会でした。場所は、いせや総本店(いせやと言えば、偶然にも新年会の前日に、こんな記事が新聞に掲載されていましたね;笑)。ゲストのみなさんと「吉っ読」メンバー併せて50人近い方が集まってくださいました。半分ほどの方が残ってくださった2次会も含め、深夜まで大いに盛り上がりました。
ふだんの「吉っ読」は十数人の小さな集まりなんですが、1年に一度、お付き合いのある出版・書店・文筆関係者にお声をおかけして、にぎやかな会を開いています。昨日は、「吉っ読」の集まりは初めてという方から、数年前の「吉っ読」立ち上げの会に参加してくださった「常連」さんまで、たくさんの方が駆けつけてくださり、楽しい会となりました。ご参加くださったみなさま、ありがとうございました。
昨年もそうだったんですが、「吉っ読」の新年会と言えば、「ブックンロール」のキックオフの場でもあります。本・書店・音楽がテーマのトーク&ライヴイベント、「ブックンロール」。今年の開催を正式に決定、集まってくださったみなさんの前でご報告しましたので、同じ内容を、空犬通信でも報告いたします。
ブックンロール Book'n'Roll 2013
〜(サブタイトル未定)〜
日時:2013年6月28日(金)
OPEN 18:30 START 19:30(〜22:30)
19:40ごろ ライヴの部 スタート(約90分)
21:15ごろ トークの部「タイトル未定」スタート(約60分)
場所:阿佐ヶ谷ロフトA(東京・阿佐ヶ谷)
杉並区阿佐谷南1-36-16ーB1 03-5929-3445
チャージ:1000円+ドリンク500円
出演:
(トークの部)
花本 武(BOOKSルーエ)他書店員または出版関係者4名
(ライヴの部)
長谷川バンド(BOOK EXPRESSディラ大宮店長谷川さんのバンド)
C調ボーイズ(夏葉社島田さんのバンド)
ブックスピストルズ(「吉っ読」のバンド)
企画・主催:空犬(編集者・吉祥寺書店員の会「吉っ読」・空犬通信)
*時間・チャージなどは予定で、変わる場合があります。
今回も、出版・書店関係者のバンドのライヴと、書店関係者によるトークの2本立てになります。テーマと出演者は、現在企画検討中です。
すてきな会場もおさえることができました。昨年は、キャパの問題で、せっかく駆けつけてくださったみなさんに窮屈な思いをさせてしまいましたが、今回は着席で130人OKとのこと。何より、出版や本に関連するイベントもたくさん手がけている、中央線サブカルの聖地の1つといっていいような会場ですからね。このような会場でできるなんて、今からほんとに楽しみです。
トークのテーマ・出演者などの詳細は、追って、この空犬通信でご案内します。まだ少し先ですが……と、気が早いにもほどがありますが、ぜひ今からご予定ください(笑)。たくさんの方のご来場、お待ちしております!
なお、今回も、経費をのぞいた収益はすべて、本に関わる被災地支援活動をしている団体に寄付します(寄付先は、前回、前々回と同じ、仙台で、被災地の子どもたちに本や本棚を届ける活動をしている「こどもとあゆむネットワーク」を予定してします)。
というわけで。今年も「吉っ読」と「ブックンロール」をよろしくお願いします。
今日は、書店漬けの一日でした。(以下、独り言みたいな、おちも脈絡もない、だらだら書きです。)
【“本屋さんにふらりと寄れるって、いいよね”の続きを読む】
今年最初の書店関連記事が、「閉店」の話題、というのもなんですが、でも、この件にはなんとしてもふれておきたいので。また1つ、すてきな町の本屋さんが閉店になってしまいます。
大阪府三島郡島本町にある、長谷川書店。最寄り駅である阪急水無瀬駅の改札前に「水無瀬駅前店」、徒歩で少しのところに「島本店」の2店がありますが、うち、「島本店」が、1/13で閉店になるそうです。
昨年11月の記事ですが、「<閉店のおしらせ>」として、こんな文章が、長谷川書店のブログにあがっています。さびしいお知らせではあるのですが、長谷川書店がどんな本屋さんなのかがよくわかる、とてもすてきな文章なので、すみません、ちょっと長めに引かせていただきます。
《町の書店としてご愛顧いただいてきました
『島本店』を1月末で閉店いたします。
営業は1月半ばまでを予定しております。》
《古くからお付き合い下さったお客様にも
今日お会いしたお客様にも
支えていただいた日々に
心より感謝申し上げます。》
《島本店で取り扱っていた参考書、絵本、実用書、あの一角の本たちは駅前店に集約していきます。
ご不便のないようにしていくと同時に、様々な本と出会っていただけるようリニューアルしていきます。》
《長谷川書店は町の書店です。
みなさまからの声を受けてつくられてきました。
今後もご意見、ご要望、ご推薦いただきながら
本が好きという気持ちを同じくして、一緒になって歩んでゆきたいと思っております。》
《大きくなったり
小さくなったり
ふたつに分かれたり
またひっついたり》
《そうして
また一歩前に進みます。》
最初に長谷川書店のことを教えてくれたのは、夏葉社の島田さんでした。大阪に、とても小さいけれど、とてもおもしろいお店があること。町の本屋さんなのに、夏葉社のフェアやイベントをやってくれること。お店の方もとてもすてきな人であること。OSKのみんなにもすすめられました。
そして、訪問してみたら、それは噂通り、いや、噂に聞いていた以上にすてきなお店で、大好きなお店の1つになりました。昨年秋に訪問したときの様子は、こんな記事にまとめています。ただただお店の様子を写真で見せるだけで、何をも語れてはいない駄文なんですが、でも、いま、閉店を直前にして、自分の書いた記事を見返してみると、こうして、棚の様子を記録できたのは本当に幸運だったと、そして、よけいなことをくどくど書かずに、写真をたくさん見せる記事にして正解だったと、そんなことを思ったりもしています。
書店の閉店は、それが、ふだん自分が利用しているお店でなくても、どのお店の話でもさびしいものですが、とりわけ、こんなふうに幸せな時間を過ごせたお店が閉店になってしまうのは、ほんとうに、ほんとうに残念ですね。
でも、島本町から、本屋さんが、長谷川書店がなくなってしまうわけではありません。駅前店(のほうも、こんな感じの、すてきなお店なんですよ)は、これまで通り営業になります。1店になることで、「これまで通り」ではない、よりすてきな店に変わっていくことでしょう。先の、長谷川書店ブログの閉店告知記事にも、こんなくだりがあります。
《駅前店は狭いので、居心地には限界があります。
けれど、きっとそこでしかできない面白さ、本と人、人と人の出会いもまた
あると信じています。
2店に分散していた力を一所に注ぎます。
はじめて本をさわりだしたころのように、楽しくしていきたいと思っています》。
だから、今回の閉店は、とてもさびしいことではあるのですが、でも、「2店に分散していた力を一所に注」がれた、新しい長谷川書店を次に訪ねるのが、けっこう楽しみだったりもするのです。
ぼくは、残念ながら、1/13までにお店を見に行くことはできませんが、近隣の方はどうか、島本店が閉まってしまう前に、ぜひこのすてきなお店を見に行ってください。ちなみに、閉店当日まで、島本店では、『さよならのあとで 高橋和枝さん原画展』が開催中です。このお店の最後のイベントに、これほどぴったりのものはないでしょう。
今日が仕事始めの空犬です。この休みは遠出を伴う予定をほとんど入れなかったこともあり、めずらしく、しっかりと読書の時間をとれました。というわけで、今年、実質的には最初の記事は、休みに読んだ本からということで、「本の本」を2冊ご紹介します。
『文庫はなぜ読まれるか』。版元の説明には、
《文庫は、なぜ読まれるのか。文庫の歴史的考察と近未来を紐解く一冊
戦前の文庫のルーツとその苦難の道を豊富な文献で立証
戦後の文庫の歩みを克明に追い、さまざまな文庫の誕生ドラマを立証
電子書籍時代の「文庫」のあり方とデータから見た文庫の実像を立証》とあります。
ぼく自身、「文庫」という容れ物が大好きで、本の形状としては、単行本よりも好きなぐらいなんですが、そんな文庫好きにはうれしい内容です。文庫の定義や歴史、統計データの読み方など、「文庫」のこれまでを概観できる1冊として、非常に興味深く読みました。業界用語も出てきますし、出版統計の話などもありますので、一般の本好きの方がどれぐらい楽しめるものなのかわかりませんが、文庫好きのみなさん、出版の歴史に興味のあるみなさんならば手にとってみるといいかもしれません。
青田恵一さんの書評が、こちらで読めるほか、柴野京子さんも『週刊読書人』12/7号に書評を寄せていますから、それら本のプロの手になる書評もぜひ参考にどうぞ。
この本、コンパクトで気軽に読める分量なんですが、やはりこのテーマの本としては、分量的にはちょっと物足りない気もしていまいました(版元の書誌情報に、272頁とあるのは誤りで、実際は158頁)。もう少しふれてほしいなあ、もっと読みたいなあというところがいくつも出てきてしまったんですが、それは、本書の問題というよりは、それだけ「文庫」の世界が奥深いということなんでしょうね。
今後も同テーマの本が出てくることもあるでしょうから、気になった点と要望についても少しだけふれておきます。
p.144に、このようなくだりがあります。《書店員の投票によって選出される「書店大賞」や中央公論社が主催している「本屋大賞」のようなイベント性の高いランキングが文庫ジャンルでも行われれば、文庫への関心を高める一助となるだろう》。前者は「本屋大賞」のことでしょう。後者は「新書大賞」のことでしょうか。
(p.66に『人間の証明』の主題歌を「ジョニー大倉」が歌ったとありますが、これは「ジョー山中」の間違い。本書のテーマにからむ上の件はともかく、こちらは、直接関係ないところではありますが、本筋でないところでの間違いだけに、こんなことにまでふれなければよかったのになあ、と、もったいない気もしてしまいました。)
先の書店大賞・本屋大賞に関する誤記にも関連するのかもしれませんが、地域・書店をベースに文庫を盛り上げようとがんばっている独自の賞などは、調査対象になっていないようで、一切ふれられていません。たとえば千葉の酒飲み書店員大賞、福岡(ブックオカ)のブックオカ激オシ文庫、名古屋(ブックマーク)の名古屋文庫大賞、京都の京都水無月大賞など地域ベースのものがいくつもあるほか、啓文堂書店のようにチェーン独自の文庫の賞をもうけている例もあります。本書には「書店発ノベストセラー」という節がもうけられ、BOOKS昭和堂の『白い犬のワルツ』の例があげられています。上にあげた一連の動きは、書店による文庫のしかけの延長にあるといっていい、書店現場での文庫関連の重要な動きだと思いますので、ぜひふれてほしかったなと思いました。
あと、新潮・角川・集英社の大手3社による夏文庫や、文春文庫・幻冬舎文庫などの文庫レーベルのフェアにも、まったく言及がありません。「強い物語。ハヤカワ文庫の100冊」など、立派な冊子を作っているものもあり、こうした文庫版元によるフェアの歴史もまとめて読んでみたいなと思いました。
『IN☆POCKET』(講談社)、『STORY BOX』(小学館)、『文蔵』(PHP研究所)など、文庫サイズの雑誌(情報誌)についても特記がないようでした(『IN☆POCKET』のみ、講談社の文庫レーベルの1つとして言及がありますが)。このような文庫形態の雑誌(情報誌)がいつ生まれたのか、『IN☆POCKET』以前にもあったのかなど、文庫好きなら気になるところですね。将来、また、出版史における「文庫」という存在をまとめる本が出てくることがあったら、ぜひこれらについても読んでみたいと思います。
『ギャルと不思議ちゃん論』、書名からは、これまで空犬通信で取り上げてきた本とはあまり関係なさそうなものに思えますし、実際、ぼく自身、自分にはあんまり関係ない世界の話だろうなあと思いながら読み始めたんですが、これが、実におもしろい「女の子」論であると同時に、「女の子」をとりまくメディア論になっていました。
出版に興味のある方であれば、そのときどきの「女の子」たちめぐる女性誌の興亡や変遷の歴史を描いた本としてもおもしろく読めそうですよ。なお、(ぼく自身もそうなんですが)女性誌の世界にあまり強くない方は、『図説 日本のメディア』(NHK出版)に引用されている「女性誌のセグメント化(1970-2011年)」といった、女性誌全体の分布図を先におさえておくといいでしょう。
おもしろく読める本なだけに、巻末に資料がないのが、残念。索引・参考文献一覧・年表などがありません。人物名・出版社名・誌名が頻出する本なだけに、せめて索引は欲しかった。うち、年表はサイトで公開されていて、PDFでダウンロードできるようになっています。頁数や制作費の関係で入れにくい場合もあるでしょうが、索引・参考文献一覧・年表といった資料を、このようにサイトで公開したり、ダウンロードできるようにしたりするのはいい試みだと思います。
『文庫はなぜ読まれるか』は、参考文献一覧(かなり詳細です)と索引はありますが、年表はありません。「文庫の歴史」を扱った本で、どの文庫レーベルがいつ創刊されたか、など、時系列が重要なテーマがいくつも出てくる本ですので、こちらも年表があると、さらに資料性が高まったことでしょう。
いずれも、こまかいリクエストなどを書きはしましたが、出版文化史に興味のある方には一読をおすすめしたい本であるのはまちがいありません。
あけましておめでとうございます。空犬通信では、今年も新刊書店の話題を中心に取り上げていきたいと思います。本年もよろしくお願いします。
今年は、1〜5月、7月に、西荻窪のブックカフェ、beco cafeで、出版・書店関連テーマのトークイベント、beco talkを開催します。7月には『本屋図鑑』(7月刊行予定の夏葉社新刊)関連のイベントも、beco talkとは別に予定しています。6月には、「ブックンロール2013」を開催します。イベントについては、詳細が決まり次第、空犬通信でご案内します。
ちなみに、今年、家で初めて手にした本は、昨晩読み始めた『葛山二郎探偵小説選 論創ミステリ叢書』(論創社)。今年、外で初めて手にした本は、年始のおでかけの道中にと選んだ、『コンビニたそがれ堂 空の童話』(ポプラ文庫ピュアフル)。
今年最初の映画は、昨晩観た『アポロ18』(監督:ゴンサロ・ロペス=ギャレゴ)。アポロ計画がらみのフェイクドキュメンタリーということで、宇宙SF好きとしては大変楽しみにしていた1本なんですが、ちょっと(というか、かなり)肩すかし……。まあ、1年の映画ライフが、ちょっとB級な感じで始まったのも、自分らしくていいかなと、そんなことを思ったりしながら、でも、2本続けてはずすのは嫌だなあと、今晩観る映画を真剣に考え中だったりします(笑)。
2013年が、出版界・書店界にとって、すばらしい1年になりますように。
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