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空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

「「本屋」の現在と未来」は語られたか……地下室のトークショーを聞いてきました

5/14の日記で紹介した地下室の古書展(アンダーグラウンド・ブック・カフェ)。今日が最終日でしたが、閉場の半時間前に飛び込み、ぎりぎりで一回りしてきました。


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植草甚一のサイン本、橘外男の仙花紙本、野呂邦暢の豪華本、古びた洋書絵本……欲しい本はいくつもあったのですが、高くて買えないものばかりで、会場での掘り出しはとくになし。注文であたった海野十三の仙花紙本が唯一の収穫。


さて、この日のお目当ては、地下室のトークショー その3「「本屋」の現在と未来を語る一夜」。永江朗、笈入建志(往来堂書店)、杉江由次(本の雑誌社)の三氏による座談会。定員80名の会場はほぼ埋まっているようでした。


書店の「現在」というととかく暗い話になりがち。そこを三氏が“プロ”の目でどう切り取るのか。また、どんな「未来」の話が出てくるのか。個人的にはとくに後者に期待していました。なにしろ、往来堂は20坪の街本屋だというのに、街の本屋の苦境が言われるこの時代に、着実に売り上げ・客単価を伸ばしているという希有な“成功例”ですし、かたや杉江氏は業界に本屋大賞を定着させた功労者の一人。この人たちからならば、本屋の未来についてあかるい話が、前向きな話が聞けるかも、そのように期待した参加者は多かったのではないでしょうか。


永江氏によれば、今はある種の「書店員ブーム」なのだそうです。新刊の帯には、カリスマ書店員の推薦文句が並び、雑誌には書店員が顔写真入りでコメントや書評を寄せている……数年前なら考えられなかったこんな状況を指してのことです。杉江氏、笈入氏によれば、それはメディアが盛り上げているだけで、書店(員)側はそのような状況にクールだし、居心地の悪さも感じているのだそうです。ただ、ぼくの狭い交流範囲内で見るかぎり、そんなに冷めたものにも思えず、むしろこういう状況を「待ってました!」「やっと物が言える!」と喜んでいる方々も少なくないのではないかという気もします。だいたい、小売業の最先端である販売者が、これほど商品の売り込みに熱心な分野はほかにないわけですから(全国の家電量販店のカリスマ販売員の推薦文句が外箱にぎっしりのiPod、買いますか?(苦笑))、“クール”を決め込んだり、“居心地悪く”感じて引っ込んでしまったりせずに、「ブーム? なら、利用してやれ」ぐらいのほうがいいと思うのですが、書店関係者のみなさんはいかがでしょうか。


あと、このサイトでもたびたびふれている、書店の横のつながりに関する話題も出ていました。座談会によれば、このような傾向、つまり、書店の枠を超えて書店員同士でお酒を飲んだりしかけを一緒にする機会が増えたのはここ数年のことだそうです。ぼくもそのことはずっと気になっていて、たしかに、今でこそ、知り合いの書店員さんたちとしょっちゅう飲んでますが、以前なら考えられなかったことです。千葉の酒飲み書店員の会や、笈入氏もかかわっているNET21という個人経営の書店の会も、こうした流れから出てきたものなんでしょうし、我々の吉祥寺会もまさに同じノリです。


笈入氏のかかわっている不忍ブックストリートの話がくわしく紹介されていましたが、これも同じノリでしょう。いや、同じどころか、新刊書店・古書店の枠をこえ、さらに業種の枠をも超えて、地域全体を巻き込んだ動き、地域に根ざした動きとして、注目です。笈入氏が「新参の本の街として、東京じゅうからお客さんが来るようになればいい」という主旨の発言をしていたのが印象的です。我々が吉祥寺会も、まさに同じ方向を向いています。「本を買うなら○○書店で」から「本を買うなら吉祥寺で」に持っていきたいねえなどと話しているのですから。


トークショーの話に戻ります。結論からいうと、「本屋の未来」についての話はあまり語られませんでした。新刊書店が古書を扱うこと、また一度売った本を下取りすることなど、やや危なっかしいところに不用意に話題が及んだりする場面もあり、はらはらさせられましたし、本屋大賞の話にも時間が割かれ過ぎの気がしました。永江氏の仕切りにしては、話題のバランスや話の持っていきかたがちょっとどうかなという感じのところがあるように思われたのです。


ただ、そういうこまかいところでは不満な点はありはしたものの、全体として今日の話はとても参考になりましたし、また励みになりました。座談会の内容以上にうれしかったのは、平日の夜、有料の会だというのに、新刊書店がテーマの座談会を聞きたいと集まった人たちが、こんなにもたくさんいることを、あらためて確認できたことかもしれません。


明日は、吉祥寺会の例会です。いよいよ会が正式に発足、近日中にサイトも立ち上げたいなどと話していますから、そのあたりが具体的に詰められることになるでしょう。経過はこのブログでもご報告ご紹介していく予定です。まだ会の正式名称も決まっていないうちからあんまり大きなことを考えるのもどうかと思いますが、そのうちに、今日のような本のイベントで我らが吉祥寺会が取り上げられるぐらいに、業界内に、そして地域に根づくといいなあなどと、今から妄想をふくらませているのです……。


走って走って走りまくれ!……“野蛮”映画の極致!?『アポカリプト』観てきました

久しぶりに当サイトらしい映画が紹介できます。『アポカリプト』、観てきました。いやはや、これ、すごいです。いろんな意味で。


物語はこんな感じ。配給元の資料を引きます。
《舞台はマヤ文明後期の中央アメリカのジャングル。ジャガー・パウ(ルディ・ヤングブラッド)は、誇り高き狩猟民族の血統を受け継ぐ青年。恐怖も争いも存在しない楽園のような村で、妻や仲間たちと平和に暮らしていた彼は、ある日マヤ帝国の傭兵の襲撃を受け、都会に連れ去られてしまう。干ばつを鎮めるための儀式に駆り出され、無惨な生け贄になりかけるジャガー・パウたち。その過酷な運命を逃れたと思ったのもつかの間、次に彼らを待ち受けていたのは、人間狩りの標的にされる試練だった。村に残してきた妻子を救いたい。ただその思いだけを胸に執拗な追っ手と戦いながら、ひたすら村をめざして走り続ける。》


アポカリプト

見所の1つは全編にあふれまくるアクション。冒頭の狩猟シーン、村の焼き討ちシーン、主人公が追手から逃れてジャングルの中を追われるシーンと、とにかく疾走感にあふれまくる場面がてんこもり。森の中を猛スピードで走りまくるシーンなど、よくもこんなに鮮明に撮れたなと驚くような映像になっています。こういう映像のジェットコースターが苦手な人なら、途中息が苦しくなるかもしれません。


アポカリプト2

主人公ジャガー・パウを演じるのは、無名のネイティブ・アメリカン、ルディ・ヤングブラッド。とにかく走りまくります。森を駆け抜ける姿は、その名の通りジャガーのようなしなやかさ。優男ですが森を追われるうちにどんどん表情が締まってくるなど、体力勝負だけでない表情の演技も見せています。追われる側がみなイノセントな顔つきなのに対して、追う側は道で会ったらチビりそうなこわい顔の男たち。善悪のわかりやすいキャスティングは意図的なものでしょう。多少漫画的ではあるものの、追う側の戦士ゼロ・ウルフ(演じるはラオウル・トルヒーヨ)のこわい顔(しかも、筋肉隆々で足も速い……)は、人間狩りシーンの恐怖感を高めるのに成功しています。


スピードだけでなく、全編を覆うバイオレンスも強烈です。さすがに全米でもR指定になるわけで、とにかく半裸の男たちが暴れまくり、血が流れないのは、死者やけが人が画面に出てこないのは、冒頭数十分の平和なシーンだけと言ってよく、あとは何分かおきに血と死体を目に、それもたっぷりと目にすることになります。はやりの拷問系ホラーと違って、直接的な残酷シーンがそれほど多いわけではありません(もちろんゼロではない)。ただ、そこらじゅうに死体が転がっている場面も、その大量殺戮がサイコなシリアルキラーなどの仕業ではなく、同じ民族の手によるものであることを思えば、その凄惨さは、観る側の心理的には、へたなホラーの殺戮シーンの比ではないでしょう。


人間というのはかくも野蛮になれるものなのか……メル・ギブソンは今回も本気でそのことを伝えたがっているのは明白です。今回も、というのは、『ブレイブハート』でも『パッション』でも言いたいであろうことは同じだったように思われるからです。この作品を評して、史実と違う、とか、マヤのことがわかっとらん、とか、そんなことを言う評論家がたくさんいたとメルギブも怒っていましたが、そりゃ怒るでしょう。それって、(たとえがぜんぜん適切でない気がしますが)『スター・ウォーズ』を観て、科学的に正しくない、宇宙工学的に正しくない、などと言うぐらい、メルギブにとって(そして我々観客の多くにとって)は頓珍漢なことなんじゃないでしょうか(ちょっと違うか)。



少なくとも、メルギブは、史実に忠実にマヤ文明を描くことなど、まったく(と言うといいすぎでしょうが)考えていなかった、か、少なくとも主眼ではなかったはずです。だいたい、メルギブが“正しい”映画を撮ったとして、観客がそんなものを観たいと思うだろうか。史実に忠実で政治的に正しいアクション映画(しかもメルギブ監督作品)なんて観たいわけないじゃん。


それにしても、人間ってのはほんと野蛮な生き物ですね。力で他者を制圧したいという人間の欲望というのは、時代も場所も関係ないことがこういう映画を観るとあらためてわかります。ただの映画じゃん、などと言うなかれ。結局、映画が、こうした人間の大がかりな愚行を繰り返し繰り返し描くのはやっぱりそれが人間の本質であることを、作る側も観る側もわかっているからなんでしょう。紀元前もやってたんだし、今だってやってるし。史実・現実だけではないですからね。SF作家・SF映画監督といった幻視者たちの多くによれば、我々は100年後も、200年後も、30世紀になっても、やっぱり戦争を、それもわざわざ宇宙に出ていってまで戦争を続けているようですから。


ちょっと話がずれました。発売中の『映画秘宝』2007年7月号には、『アポカリプト』『300』公開に合わせた特集「残酷スペクタクルの大逆襲」あり。上に書いたような人類の愚行が映画作品史にからめておもしろく(?)まとめられていて、予習にはもちろん、鑑賞後の復習にも最適な内容になってます。短いですが、メルギブのインタビューもあり。未読ですが、「映画監督ほど素敵な商売はない」なる特集の『PLAY BOY日本版』2007年7月号(集英社)にも、メルギブのインタビューが掲載されているようです。興味のある方はチェックぜひしてください。



というわけで。生ぬるい映画にものたりないハードな映画人のみなさんには必見の作品です。DVDを待たずに、スクリーンでこの疾走感を、暴力と野蛮のシャワーを体感してください。全国ロードショーは6/16(土)から。主人公ジャガー・パウばりに、全速力で駆けつけていただきたいものです。なお、6/9(土)から有楽町スバル座で先行上映もあるようです。


追記。Macには未対応とのことでぼくは観られないんですが、バイラルウォーカーのサイトでスペシャル予告の動画が観られるそうです。


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虫、クレーター、おっぱい……書名の話が続きます。

それにしてもな書名、というほどではないですが、昨年の本で、大変気になった書名にこんなのも。あっ、これも虫がらみだ。


  • 篠永哲、林晃史『虫の味』(八坂書房)


読んでないからわかりませんが、おそらく内容そのままのストレートな書名、なんでしょう。昨日紹介したのとちがって、何の奇をてらうところもない。っていうか、内容のほうが奇をてらいまくっているとも言えるわけですが。


あと、このような書名はどうでしょうか。


  • 藤代冥砂『クレーターと巨乳』(スイッチパブリッシング)


「ミシンとコウモリ傘」タイプ、とでもいうべきか。著者は写真家ですが、これは写真集ではなく、小説のようです。同名の写真集があったりしたら、そちらはそちらで見てみたい気がするのは、たぶん私の頭の中身が今なお部分的に中学生な男子だからでしょう。というか、この書名も、そのような男子たちに間違って買わせるための戦略なのであろうと想像されます。


同じ路線(?)などと書くと、両方の著者から怒られそうですが、次のも、書店で男子の9割が関心を引かれたという統計が出ています。


  • 水野宗徳『おっぱいバレー』(泰文堂)


なんか無意味に(失礼)迫力があります。書名も、カバー写真も。どんな話なのかは知りませんが、仮に、書名とカバー写真のイメージがシンクロしているのだとすれば、大変に激しいバレーボールが展開されることになりそうだ、と推測され、“読む”よりもむしろ“見て”みたいというふらちな思いをおさえられません。まさに著者の、そして版元の思うつぼ、という感じであります。


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校正の話、それにしてもな書名

昼休み、岩波ブックセンターへ。寄るたびに毎回チェックする本・出版関連本コーナー、頻繁に本が入れ替わるわけではなく、どんな本が並んでいるか、8割方は頭に入っているんですが、それでも端から端まで見てしまいます。さて、しばらく前に出た本ですが、このコーナーに並んでいるため、しょっちゅう目にすることになり、そのたびにうーんな気持ちにさせられている本がありますので、ご紹介します。


  • 野村保惠『誤記ブリぞろぞろ 校正の常識・非常識』(日本エディタースクール出版部)


仕事がら、もちろん校正の話は気になりますから、本来なら即購入、仕事に役立ちそうな内容なら座右本扱い、となってもよさそうな1冊なのです。内容紹介にも
《誤植は誤記? 原稿がパソコンで書かれるようになって、印刷物にはこれまでにないタイプのおかしな文章や文字がゾロゾロ……。コンピュータ時代の校正、文字の字体、組版ルール、素読みの重要性など、誤記実例をもとに解説する》
などとあり、もちろんマジメな本。一応この世界で10年以上仕事をしている身にはあまり新しい話題はないかもしれないけれど(あったら困る)、まあ編集者としてはとしては関心のひかれるところではあります。あるんだけれど……この書名じゃあなあ(苦笑)。


いくらお役立ち本だとしても、毎日“ゴキブリ”が目に入るんじゃねえ。やっぱ手元に置きたくないでしょう、この書名は。マジメな本なんだし、手に取る人も文章に関心のある方やプロが多いのだろうから、何もこんなところでだじゃれに走らずとも……と思うのはぼくだけではないでしょう。ちょっと残念な話。


だじゃれ書名って、個人的にとても苦手です。セカチュー以後、「……で……を叫ぶ」式の書名やら見出しやらコピーやらがやたらに目につくようになりました。本のなかには、内容は良さそうなのになんでこんな書名で……というのもありましたが、まず手にする気になれません。最近も、こんな書名を目にして、まだやるか!、いつまでやってんだ!と中身を見る前から怒ってしまいました。



映画がらみの言葉の本、ということで、ストライクゾーンの本ですが、ぜったいに買わないだろうなあ、これ。自分が担当編集者だったら、また著者だったら、絶対につけたくないタイプの書名です……。


書名の話、次回も続けます。

活版の写真集!?……文字の母たち

書店で見かけて以来、ずっと気になりながら、なかなか買えない本があります。


  • 港千尋『文字の母たち Le Voyage Typographique』(インスクリプト)


3000円もするのにシュリンクで中が見られないんですよね、これ。活字・活版がテーマの写真集だなんて、空犬好みには違いないのですが、中身がわからないと、さすがにちょっと買いにくいです……。



ちなみに、版元のサイトの案内によれば、こんな感じの本だそうです。ちょっと長いけど、引用します。


《世界でもっとも古い印刷所のひとつ、パリ・フランス国立印刷所、秀英体活字を伝える東京・大日本印刷――。いまや絶えようとする活版金属活字の最後の姿をとらえ、文字の伝播の歴史を繙く最新写真集。
ガラモン体に始まるアルファベットをはじめ、楔形文字やヒエログリフ、ギリシア、アラビア、エチオピア、ヘブライ、ジャワ、チベット、そして漢字と仮名……、2006年に閉鎖されたパリ・フランス国立印刷所は、グーテンベルク以降の西欧の活版印刷技術を伝承し、近代から現代に至る活字書体の発展にも大きな影響を与えてきました。また東京・大日本印刷は日本における明朝体金属活字の精華・秀英体を伝えてきました。本書は、パリと東京で撮影を重ね、活字に凝縮された東西文明の交流と最後の職人たちの姿を見事に写しだした類のないフィールドワークです。》


ああ、なんだかやっぱりすごく良さそうだ。そういえば、先日朝日新聞の書評、それから毎日新聞の書評にも取り上げられていたし、産経新聞のWebでは堀江敏幸さんも紹介していたしなあ。良さそうだなあ。ほしいなあ。やっぱり買うしかないかなあ、これ。


◆今日のBGM◆

  • The Allman Brothers Band『Brothers and Sisters』

古本、古本、古本……最近買った本たち。

今回は古本本、3点です。


  • 萩原魚雷『古本暮らし』(晶文社)
  • 樽見博『三度のメシより古本』(平凡社)
  • 喜多村拓『古本屋開業入門 古本商売ウラオモテ』(燃焼社)


『古本暮らし』の著者は高円寺在住の、いわば“中央線系”古本ライター。本好きなら、ちくま文庫の『吉行淳之介エッセイ・コレクション』の編者の名前だと気づくかもしれません。それにしても魚雷さんとはすごい筆名だ。



『出版ダイジェスト』三社連合特集版の2007年5月1日号に魚雷氏の一文「散歩は古本屋巡礼」が掲載されているのですが、それによれば、
「中央線沿線の中野駅から吉祥寺駅のあいだに百軒以上の古本屋があり、そのあたりを毎日のように巡回してい」て、
「神保町、早稲大の古本街にもしょっちゅう行く」し、
「京都、大阪の古本祭にも行く」のだそうです。で、
「一年三百六十日くらい古本屋に行き、仕事中の古本のことばかりかんがえてい」て、
「収入の三分の一を書籍代にあてることを自分に課してきた」、そういう方です。重篤な古本病患者ですね。こういう方の古本本とくれば、古本好き、とくに中央線沿線の古本好きはきっと読みたくなることでしょう。(ちなみに引用ママ;「仕事中の古本」は「仕事中も古本」もしくは「仕事中、古本」か?)


樽見氏のは同じ平凡社新書の『古本通』に続く古本新書。古本好きなら手に取らずにはいられないいいタイトルなんだけど、内容は、浮世絵の話から始まって、明治文献、馬琴、太田南畝、真山青果と、雑本好きのこちらにはちと敷居の高い話が続きます。



最後のは、別にこれから古本屋さんを始めようというのではないですが、副題の「古本商売ウラオモテ」の部分を読みたくて。燃焼社は、古本本をたくさん出しているところですね。


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『月曜日のユカ』、今度こそ見なくっちゃ。

ラピュタ阿佐ヶ谷で開催中のモーニングショー、「昭和の銀幕に輝くヒロイン」の第34弾は「加賀まりこスペシャル」です。4月末に始まったこのシリーズ、いくつも魅力的な作品名が並ぶなか、前から観たかったこの作品が明日から1週間上映されますので、大急ぎで紹介します。


    『月曜日のユカ』
    1964年/日活/白黒/94分
    期間:5月20日(日)~5月26日(土)
    時間:10:30~
    料金:1200円(一般)

監督は中平康、出演は加藤武、中尾彬、北林谷栄ほか。DVDで観ようと思えば観られるのだけれど、スクリーンで観たかったので、こういう機会を待ってたんですよ。我々の世代(以下)にとって、加賀まりこといえば、おそらく「口の悪いおばさん」(失礼)ぐらいのイメージしか持ちようがないでしょうが、写真で見るかぎり、若い頃の小悪魔的なキュートさはまさに別人のそれ、ちょっと異星人がかっています。また白黒が似合うんですよね、これが。不思議な映像感覚に包まれた作品のようなので、今から楽しみです。



ちなみに、同名の単行本があるようですが、これはシナリオか何かでしょうか。というのも、加賀まりこの本といえば、これ↓、たしか「初のエッセイ集」となっていたもので。吉田豪に、自殺未遂のことなどダークな部分にふれていない、なんて指摘されたりはしていましたが、それはともかく、なかなかおもしろく読めた印象が残っています。



というわけで、オールド邦画ファンのみなさんは、来週は早起きして阿佐ヶ谷に全速力で駆けつけてください。


◆今日のBGM◆

  • Rufus featuring Chaka Khan『Rufusized』

本屋さん、タブー破り……最近買った本たち。

本がらみの特集雑誌、2点購入です。


  • 『ダカーポ』2007年6月6日号(マガジンハウス)
  • 『サイゾー』2007年6月号(インフォバーン)


『ダカーポ』の特集は「本屋さんがすすめるおもしろい本 次のベストセラーはここから生まれる!?」。書店員のみなさんがすすめる本がジャンル別に紹介されています。おっ、我らが吉祥寺会からも弘栄堂書店吉祥寺店のOさんが登場しているではないですか。見開き2頁とスペースもたっぷり、写真まで載っている。すごいすごい。そのほか、『書店ポップ術』を書いた有隣堂の梅原氏がダカーポ編集部員の書いたポップを評価して実例を示す記事や、ダカーポ編集部員が立川のオリオン書房で書店研修をする記事などもあります。



『サイゾー』の特集は「日本の裏側が見える! タブー破りの本100冊」。特集自体がおもしろくないわけではないのですが、たとえば渡辺直巳と小谷野敦の対談「日本文学はすでに死に体なのか!?」。このような、ほとんど中身のない対談を、文壇のタブーだの日本文学が死に体だの大袈裟な見出し付きで読まされると、なんというか、ため息をつくほか反応のしようがありません。文芸評論家を名乗る人が二人も集まってこんな話しかできない文芸評論の状況自体、まさに「死に体」なのではないでしょうか……。


『希望の書店論』を紹介した際に引いた一節が思い起こされます。《でも、「駄目だ、駄目だ」と言っていたって埒は開かんでしょう。出版物を扱うというのは、とても魅力的な仕事なのだから、なんとかいい方向に持っていこうよ、そのためには、「もう駄目だ」と言っちゃ、おしまいでしょうが。》この福嶋氏のことばを、そのまま、「ロックは死んだ」「ブンガクは終わった」的な言説をすぐに口にしたがる輩に送りつけたい、などと思ったりするのです。


◆今日のBGM◆

  • Funkadelic『Maggot Brain』


気分がギターに向いているので、こんな盤をピックアップ。夜中にたまに引っ張り出して、1曲目、Maggot Brainを聴く。聴くたびに体が震えます。真にエモーショナルなギタープレイというものがあるとすれば、これは確実にその1つでしょう。ギターはエディ・ヘイゼル。


東京国際ブックフェアにレッツゴー!

今年で14回目となる東京国際ブックフェア(TIBF)。開催日が決まりましたね。


    第14回 東京国際ブックフェア(TIBF)
    会期:2007年7月5日(木)~8日(日)
    会場:東京ビッグサイト
    入場料:1,200円
    bookfair

    東京国際ブックフェア実行委員会からの案内メールによれば、今回のブックフェアは、
    《過去最多!世界30カ国から770社が出展! 総合出版社から、学術、児童などの専門出版社まで国内外の出版社がさらに充実!》
    なんだそうです。出展社一覧はこちらでどうぞ。


    ブックフェアでは、毎回各種セミナーなどが用意されているのですが、今回、そのなかから4つ紹介します。まずは、「編集者向けセミナー」となっているこれ。


      『編集者という仕事』
      日時:7月5日(木)13:30~14:30
      講演者:幻冬舎 常務取締役 編集本部・出版局担当 石原正康氏

      『「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」ベストセラーまでの道のり』
      日時:7月6日(金)13:00~14:00
      講演者:扶桑社 en-taxi編集部 副編集長 田中陽子氏

    「編集者向け」となっていますが、現役編集者はもちろん、編集という仕事に興味のある方、出版社で仕事をしたいと考えている方にもよさそうな、なかなかに興味深いセレクションです。もう2つ、書店応援サイトとしては、「特別講演」「出版流通セミナー」と銘うたれた、これらも紹介しておきたい。


      『書店に未来はあるのか!
      大型書店から街の本屋まで、激変期の書店経営者が徹底討論』

      日時:7月7日(土)10:30~12:00
      パネラー:大垣書店(京都市)大垣守弘氏/フタバ図書(広島市)世良與志雄氏/豊川堂(豊橋市)高須博久氏他
      コーディネーター:田辺企画 田辺聰氏

      『オンライン書店楽天ブックスの戦略!~‘楽天らしさ'を追求して~』
      日時:7月6日(金)15:00~16:00
      講演者:楽天 ブックス&メディア事業部 事業部長兼楽天ブックス 取締役事業統括部長兼バイヤーコンテンツチーム リーダー 元木忍氏

    前者は《大型書店の出店競争やオンライン書店のシェア拡大、そして中小書店の淘汰など、戦後最大の激変期にある書店の未来について、大型書店、地域密着書店、老舗書店などの経営者が一堂に会し徹底討論する。》という内容。書店応援サイト主催者、リアル書店派としては聞かないわけにはいかんでしょう。


    もう1つのほうは、オンライン書店の話。先にもビーケーワンのリニューアルを紹介したばかりですが、書店好き、リアル書店派としても、やはりオンライン書店の動向はおさえておきたい感じがします。とくに、チャンピオン(=Amazon.co.jp)に追いつけ追い越せであるはずの、“Amazon.co.jp以外のオンライン書店たち”がどんなことをしようとしているのか、読者として、また出版社の人間として、興味津々です。


    この4つ以外にもいろいろあるようですから、ブックフェアで版元のワゴンと洋書バーゲンをのぞくだけじゃつまらない、という方は、「書籍・出版に関する様々な話題を網羅した計18講座の専門セミナー」のラインナップを、サイトでチェックしてみてはどうでしょうか。


オンライン書店ビーケーワンがリニューアル

オンライン書店ビーケーワン(bk1)がリニューアルするそうで、そのβサイトのモニターを募集中のようです。


bk1

ビーケーワンからの案内メールによれば、今回のリニューアルは、以下のような主旨だそうです。


《2007年夏、ビーケーワンはリニューアルします!
リニューアルオープンに先駆けて、まずβサイトを公開し、
こちらでテストを行った後の正式オープンを予定しています。
つきましては、リニューアル後のサイトについてお客様のご意見を
ぜひお伺いしたく、βサイトでのモニターを募集いたします。》


ちなみに、モニターとして選出されると、「もれなくβサイトで税抜き3000円以上のご注文時に使用できる500円ギフト券を、アンケートにお答えいただければ更に500円(注文金額制限なし)の ギフト券をプレゼント!」なんだそうです。


モニター期間は2007年5月30日(水)~6月26日(火)、モニタの募集人数は10,000人です。オンライン書店利用者の方、とくに使い勝手に不満のある方には、“書店環境”を利用者の声で変えられる(とは限らないけど、可能性はある)チャンスといっていいかもしれませんね。応募や詳細は、こちらのページからどうぞ。


気分だけはギター弾きでいたかったりする……最近買った本たち。

ああ、ギター、弾きたいなあ、バンド、やりたいなあ。なーんてため息をついていたら、こんなサイトを発見。「全国ナイスミドル音楽祭」。どうです、このネーミング。この中身。喜んでいいのかなんなのか、ものすごく微妙ですね、これ。


しかし、“ナイスミドル”って……(苦笑)。30代後半のわたくしは該当するんでしょうか。気分は十分に“おやじ”なんですが、さすがに自分が“ナイスミドル”かどうかと問われると、うっ、と返答に詰まります。ナイスミドル……うーん、“おっさん”“おやじ”のPC的言い換えなんでしょうか。“おやじバンド”なる言い方もありますが、まだしもそっちのほうがしっくりきます。「おやじバンドフェスティバル」。まあ、どっちもどっちか。



わたくし、趣味でギターを弾いたりします。学生のころ、社会人になりたてのころは、それはもう熱心にライヴだのなんだのやってたんですが、今はもうすっかり。時間や情熱の問題もあるのですが、なにより仲間がいないんです。かつてのバンド仲間たちは、楽器をやめちゃったり、地方に行っちゃったり(それこそ、地球の裏側!に行っちゃったり)。独り夜中にギターをつま弾いたりはするのですが、やっぱり独りはつまらない。パソコンで簡単に音楽できる時代になりはしましたが、根がアナログなので、デジタルな宅録にはどうも熱心になれません。やはりバンドがやりたいのです。


先日知り合った吉祥寺書店員の方と飲んでいたら、なんとバンドをやっているとのお話(言われてみれば、なるほど、ギター弾きのたたずまい)。しかもちゃんとCDまで出している。ああ! さらに、昨年仕事で知り合ったある女性著者と本の打ち合わせをしてたら、歌が好きで、単発でしたがライヴを実現なさっていました。ああ! うらやましい! そういう方々に勝手に刺激されてしまったせいもあって、このところ、ものすごくバンドがやりたい、ライヴがやりたい!気分が高まってしまって困っています。


……ものすごく前置きが長くなりました。


  • 『ギター・マガジン』2007年6月号(リットーミュージック)
  • 『サウンドデザイナー』2007年6月号(サウンドデザイナー社)


ギタマガの表紙、若きエドワード・ヴァン・ヘイレンですよ。『1984』までの、デイヴ・リー・ロス時代を中心にした特集なので、おやじたちは総泣きでしょう。おやじといえば、昨年紹介したオヤジ向けロックギター本、月刊サウンド・デザイナー12月号増刊 大人が楽しむロックギターBOOK『ギターヒーロー黄金時代 Vol.2』も表紙はエディでした。


ギターヒーロー2

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地下室の古書展、まもなくです。

もう9回目、なんですね。地下室の古書展(アンダーグラウンド・ブック・カフェ)、まもなくです。


地下室の古書展
会期:2007年5月27日(日)~29日(火)
時間:午前10時~午後6時30分
場所:東京古書会館地下ホール

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古書展そのものはもちろん、併催のイベントや企画展示も楽しいのがこのUBCのいいところ。今回も7階のトークショー「幻影城の時代」なる、探偵者なら全速力で駆けつけなくてはならない催しがあります……が、残念ながら空犬は所用で行けません(泣)。もう1つ、楽しみなトークショーがあります。こちら。


地下室のトークショー その3「「本屋」の現在と未来を語る一夜」
ゲスト:永江朗 笈入建志(往来堂書店)、杉江由次(本の雑誌社)
日時:5月29日(火)午後7時より
場所:東京古書会館地下ホール
入場料:1,000円(当日精算)
定員:80名(先着)

サイトから内容案内を引きます。
《この5年、10年で大きく変化した新刊書店業界。益々増える大型店。次々と姿を消す街の小店舗。ネットストア、新古書店の普及・・・。ゲストは書店出版業界を見続けるライター・永江朗氏。個性的な「街の本屋」往来堂書店店長・笈入建志氏。そして「本の雑誌社」の営業として書店を飛び回り、「本屋大賞」の仕掛け人でもある杉江由次氏。混沌とした「本屋」の現状を、そしてこれからを大いに語っていただきます。》


これは書店好きとしては見逃せない内容ですね。参加は、要事前予約。往復はがきかメールにて申し込みを受付中とのことです。書店好きのみなさんは全速力で神保町にかけつけてください。ああ、もちろん、予約を忘れずに。


コロコロ伝説+オバQ復活!

久しぶりに、発売前の雑誌が待ち遠しくてわくわくする、などという体験をしています。


『熱血!!コロコロ伝説 Vol.1 1977-1978』(小学館)

『コロコロ』、ああ、なつかしいなあ……。今ではマンガを手にすることはほとんどないのですが、小学生のころ漫画少年だった空犬は、『コロコロ』の創刊号をリアルタイムで買っているのです。あの分厚さ、藤子漫画満載のあの内容……当時のわくわく感は今でも思い出せるほどです。ぼろぼろになるまで読み返したものです。


このシリーズ、年代別にベスト選のようなかたちでまとめたもののようですね。ぼくは最初の数号しか知りませんが、息の長いコロコロのこと、どの世代にも必ず「なつかしい!」と思わせる作品がありそうです。まったくコロコロを通らずにきた男子なんて、少ないぐらいかもしれません。これは、各世代に必ずやいるであろう、そうした“元コロコロ少年”だったおやじたちへのプレゼント、ということなんでしょう。


発売は5/25。Vol.1と6の2巻が同時発売とのこと。このシリーズ内容や刊行順、付録など、くわしくは、こちらのサイトでチェックを。



このシリーズ、本体もうれしいのですが、個人的にうれしかったのは、Vol.1の付録、オバQの復活です。


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さよならソガ隊員

「ウルトラセブン」のソガ隊員こと、阿知波信介さんが亡くなられました。朝日新聞夕刊の記事およびWeb版の速報はずいぶんあっさりした内容ですが、他のソースによれば、自殺のようです。「「ソガ隊員」阿知波信介さん自殺…多岐川裕美の元夫」。ヒーロー番組で活躍された方が自殺とは……オールド特撮者、とくに「ウルトラセブン」をこよなく愛する者には、なんともさびしいニュースであります。


ウルトラ警備隊のソガ隊員、ドラマ内の設定で当時25歳、角刈りに近い短髪の好青年で、射撃の名手でありました。中心になるエピソードは少ないのですが、ダンと2人で異世界に迷いこんでしまう2話、18話「空間X脱出」と43話「第四惑星の悪夢」など思い出すファンもいるでしょう。あと、最終49話「史上最大の侵略・後編」。アマギ隊員がとらわれたままの敵基地に爆弾を積んだマグマライザーを突入させることが決まったとき、自分がアマギを救いに行く!と、最後まで仲間の救出にこだわり、上層部に反論を試みたのもソガ隊員でした。その熱い男気、悔しそうな様子も印象に残ります。


女優多岐川裕美さんと結婚されていたこと、芸能プロを設立し社長をされていたことは一応知ってはいたものの、正直なところ、『ウルトラセブン』のソガ隊員以外の活躍ぶりはほとんど知りません。おそらく一般的な認知で言っても、俳優としてはイコール・ソガ隊員という感じではないでしょうか。でも、我々特撮者には、あのセブンに出ていたというだけで、ソガ隊員を好演したというだけで、VIPでしょう。


阿知波信介さん=ソガ隊員のご冥福を心よりお祈り申し上げます。



新宿書店地図に再び異変あり!?……ブックファースト新宿店来年オープン

3/20の日記で、ジュンク堂書店の工藤社長が朝日新聞beに取り上げられたと紹介したばかりですが、今度はテレビです。いやはや。


「カンブリア宮殿 Ryu's Talking Live」の4月30日放送分、「社員の個性で売りまくれ!」。村上龍と小池栄子がホスト役のビジネス番組で、この日のゲストはジュンク堂社長・工藤恭孝さんと、“カリスマ店員”・田口久美子さん。ちなみに、スタジオの観客は本好き100人。


カンブリア

サイトから当日の内容紹介を引くとこんな感じ。
《1976年、神戸の小さな書店としてOPENした“ジュンク堂”は出版不況が叫ばれる中で個性的な店舗展開を続け、売り上げ(年商400億円)を伸ばしている。「立ち読み禁止、座り読み大歓迎!!」「宮沢りえの写真集が品切れになってもいいが、広辞苑は品切れさせるな!」など書店の常識を覆す店舗展開。この会社のトップ・工藤恭孝(56)社長の運営方針は、「社員任せ」。どんな本を仕入れるのか、棚にどんな本を置くのかなど、書店の鍵になる部分は、全て社員に任せている。取材中、社長も「誰が買うんやろね、こんな本」と言い出す有様。こんな経営スタイルで躍進を続けるジュンク堂書店の強さの秘密に迫る!!》


新聞の番組欄には、「売れない本が売れる」、「行列ができる本屋」などとありましたが、番組を観たかぎりでは、専門書重視の品揃えによって他書店との差異化がはかられ、結果として成功した、という感じの内容になっていました(その点、上の番組内容紹介に「専門書」の言葉がないのはちょっと変な感じですが)。新聞にテレビにと取り上げられ、社員の本の刊行も続くなど、ジュンク堂書店はメディアづいていますね。それだけ勢いがあるということなんでしょうね。


さて、そのジュンク堂書店も、今春増床リニューアルオープンばかりの新宿店を抱える書店激戦区新宿。書店地図が書き換えられたばかりの新宿に、またしても大きな変化が訪れそうです。


「ブックファースト渋谷店(東京)、10月中旬に閉店へ」。オンライン版の新文化、4月25日付の記事からです。渋谷の話じゃないか、いやいや、そうなんですが、記事の中身をご覧ください。同記事には以下のようにあります。


《「入居中のビルの建替えにより」と理由を発表。同時に、来年11月、東京・新宿駅西口で現在建設中の「モード学園コクーンタワー」地下1~2階と地上1階に「新宿店(仮称)」を1090坪で、渋谷店の閉店と同じ今年10月に渋谷第一勧銀ビル地下1~2階に「渋谷文化村通り店(仮称)」を200坪で出店することも発表した。さらに、来春に東京・秋葉原、来秋に兵庫・西宮に出店することも明らかにした。》


西口に千坪超とは! いやはや。これは新宿の書店戦争の激化はまぬがれませんね。ビジネスエリアの入り口ですし、周りはヨドバシカメラほかの家電・IT関連大型店が集まるエリアですから、おそらくは、ビジネス関連・情報関連書籍の売上に関してはジュンク堂書店紀伊國屋書店、その他の書店への影響は少なくないものと予想されます。


昨年11月にも「新宿書店地図に異変、あり?」なる記事を書いたばかりですが、ジュンク堂増床に、ブックファースト進出と、またしても大きく揺れ動きそうな新宿書店地図。新宿の書店が今年から来年にかけてどうなるのか……自称書店ウォッチャーとしては目が離せません。


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出版ポータル登場……「知恵門」オープン

ありそうでなかった出版関連情報の総合ポータルサイトがオープンしていました。「知恵門」。「じえもん」と読ませるのでしょうか。


知恵門

サイトを運営する株式会社知恵門は、取次、太洋社の出資会社だそうです。サイトの会社案内「知恵門について」によれば、
《出版社、書店、読者を情報でつなぐ総合情報サービス会社です。商品物流と情報流通の一体化を目指し、出版総合ポータルサイトとして出版業界の活性化、読者の開拓と需要の創出・拡大を図ります。》
とのことです。


トップページを見ると、業界ニュース、フェア・イベントなどの案内、受賞関連のほか、人事や求人のコーナーまであります。全体に関係者向けの内容・作りになっているようですが、会員専用とふつうに見られるページがきちんと分けられていないのは、ポータルの作りとしてはちょっと不親切かもしれません。


たとえば、「書店業務マニュアル」なんてコーナーがあって、書店好きの当方としてはぜひ見てみたいものですが、会員専用とのことで見られません。では会員登録をして……と思っても、会員登録は法人単位とのことで、会員登録して見るというのもできないことになります。書店や出版社の規模にもよりますが、このサイトをのぞいている読者の多くは、会社を代表して登録したりする権限のない読者だろうと思われますから、法人会員のみというのはどうかなあ、という気もします。「ZIENS YELLOW PAGE(出版社編)」というコーナーも会員専用。出版社の連絡先一覧なんて、会員専用にする必要があるのでしょうか……。うーん。ポータルを名乗る以上、もう少し開かれた作りになっているほうが、利用者にとってはもちろん、サイト側にとっても、後々プラスになるはずだと思うのですがどうでしょうか。


一般の本好きの方が見ておもしろいものかどうかわかりませんが、たとえば、「出版歴史館」なるコーナーをクリックすると、「写真」「資料」「統計」とサブカテゴリーがあり、まだ「写真」にしかコンテンツがありませんが、その下には、「大阪屋」「小学館の80年」「太洋社」「文藝春秋七十年史」が並んでいます。取次2社のは、社史と思われる本を撮影したものが数点あがっているだけで、ちょっとさびしい中身ですが、版元2社のをのぞくと、有名雑誌の創刊号などなつかしい本の書影があがっています。両社の歴史からすればまだまだ数が少なすぎて、資料的価値や眺める楽しみが生み出されているとは言いがたいのですが、これがいろいろと充実してくれば、一般の本好きの方、とくに古本好きが見て楽しめるページになるかもしれません。


◆今日のBGM◆

  • The Durutti Column『The Return of the Durutti Column』



脳内妄想映画祭、神菜、秘宝……最近買った本たち。(映画編)

えっ、スパイダーマン3が初日動員40万人!? 早くも興収100億円超の声!? いやはや、だってこれ、アメコミ映画で監督はサム・ライミでしょ? 本来ならありえない数字ですが、わたくしの知らないところで国民総秘宝化現象でも進行しているんでしょうか……。


実は、はずかしながら、わたくし空犬も初日、5/1に観にいってまいりました。映画好きのくせに、並んだり立ち見だったりはぜったいに嫌というくちなので、メジャー作品を初日初回に観るなんて、映画人生において一度もなかったのですが、幸い並んだりはせずに済んだもので、人生初めての初日初回体験とあいなりました。(それがスパイダーマンかよ……。)



これからの人が多いでしょうし、あらすじ紹介や映画批評めいたことは趣味でないでくわしくはふれませんが、連休に映画をと考えている人はぜひどうぞ。『スパイダーマン3』もいいけど、やはり空犬通信的には、サム・ライミは『死霊のはらわた』の監督、なんですけどね。



さて、前振りが長くなりました。例によって山のように買っている新刊・古本のなかから、今回は、映画がらみのものだけピックアップ。


  • 福井晴敏『テアトル東向島アカデミー賞』(集英社文庫)
  • 大槻ケンヂ『神菜、頭をよくしてあげよう』(角川文庫)
  • 『映画秘宝』2007年6月号(洋泉社)
  • 『ダカーポ』2007年5月16日号(マガジンハウス)


まず福井本。なにしろこのカバーだし、帯には
《あんたのカレシだって本当はこういう映画を観たがっているンだから》
なんて書いてあるし、カバー裏には脳内妄想映画祭、爆発アクション・スペクタクル中心、火薬量とアドレナリン分泌量が評価基準だなんて言葉が並んでるし、目次には
『エイリアン』
『スターシップ・トゥルーパーズ』
『デッド・ゾーン』
『スター・ウォーズ』
平成『ガメラ』3部作
なんかが並んでいるから、これは確実に“こちら側”の人、さぞボンクラ度の高い本に違いないと、映画友だちのブログでも読む気分でわくわくしながら手にしたのですが、やや拍子抜け。


たしかに、全体に男子中学生的な映画の観方ではあるんですが、なんというか、意外にまじめだし(とくに、自衛隊やら戦争やらがからむ話)、ガメラ、というか怪獣ものをバカにしたような記述もあるし、ホラーもエロもセレクトにないしで、意外にボンクラ度が低くて、映画秘宝な空犬としてはちょっとものたりない感じでした。……まあ、ぼくが大喜びするような本ではそもそも集英社文庫にはならないわけで、売れるはずもありません。一般向けの文庫ですから、空犬がものたりないぐらいでむしろいい、ということになのかもしれませんが。


オーケンのは映画エッセイというわけではなく、いつも通り、UFO、エロ、ぬいぐるみ、特撮、マジックマッシュルーム、ストリップ、トンデモ本などなど、のほほんなエッセイがたくさん詰まった1冊ですが、なかに「奇跡的につまらない映画を探せ!」「姦通と映画とゾンビの一日」なんてのがあるから、特殊映画・バカ映画好きは読まないわけにはいかんでしょう。


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堀内誠一自伝増補版+絵本原画展

空犬の大好きなデザイナー/絵本作家、堀内誠一さんの自伝は愛読書の1つですが、増補決定版が出たようです。


  • 堀内誠一『父の時代 私の時代 わがエディトリアル・デザイン史』(マガジンハウス)


手元にある、以前の版は日本エディタースクール出版部から出ていたもので1979年の刊。本文は精興社で、落ち着いた上品な組ですが、デザイン(本には「装本」と表記されています)はもちろん堀内さんご本人の手になるもの。


カバーの表4側のそでに、堀内さんが次女の紅子(もみこ)さんと写っている写真がのっています。もうずいぶん前のことになりますが、紅子さんとは本の仕事でご一緒したことがあるのです。この本を初めて手にしたときは、まさか、堀内紅子さんと、つまり憧れのデザイナー/絵本作家の娘さんと一緒に仕事をする機会が自分に訪れるなどとは夢にも思いませんでした。ちなみに、紅子さんは、児童文学の翻訳などを手がけられています。



それにしても、この「増補決定版」って、本好きを悩ませますよね。すでに持っている元版に愛着があると、はたして買い換えたり買い増したりすべきものなのかどうか、大変悩みます。今回はどこが「増補」されて、どこが「決定」的になっているのやら……。


刊行記念の意味合いか、東京銀座で、絵本原画展が開催されています。


    「堀内誠一絵本原画展 ぐるんぱも―ananも」
    時期:4月26日~5月16日(11:00~16:00)
    場所:本の教文館(中央区銀座4-5-1)9階
    「ウェンライトホール」(03-3561-0003)

残り2週間をきってしまいましたから、堀内ファンは全速力で銀座にかけつけてください。堀内誠一ファンはしばらく前に出たこの本もおさえておきたいところ。


  • 赤木洋一『「アンアン」1970』(平凡社新書)


さすがに一時代を築いた雑誌の裏側はおもしろい。マガジンハウスにも、『an an』という雑誌にもさして興味があるわけでもないのに不思議なぐらいにおもしろく読めてしまいます。出版史・メディア史に興味のある方にはおすすめの1冊です。

『希望の書店論』の話が続きます

さて、一昨日の日記で取り上げた『希望の書店論』の話、続きです。



一昨日紹介しなかったところで、印象に残った部分に、書店の「共闘」にふれた箇所があります。他書の引用を含んでいる箇所なので少し長くなりますが、引用します。


《……だから青田氏の次の言葉には、全面的に賛同する。


    気の遇う書店人、もしくは店同士、チェーン同士で交流会を持つのも効果的。最近、様相が変わってきたものの、和戦両様というか、喧嘩しながら仲がいいのも昔からの業界特性だ。今後は書店チェーン間で、本格的な提携や合併・買収も視野に入ってくる。婚約・結婚の可能性があれば、このようなかたちで「いい関係」を作るのもひとつの方法ではないか。(五四頁)

「婚約・結婚の可能性」というのも、昨今の書店業界の動きの中では意味深な言葉だが、ぼくは、「愛人」関係でもいいと思っている。
神田神保町で、東京駅前で、池袋で、新宿で、ライヴァル書店たちが「競争」しながら「協奏」する、そしてそうした書店が集積することで、より巨大な「書店空間」を形成して読者の期待に応える、そんなスケールの大きな「野望」を、ぼくたちは抱かねばならないのではないだろうか。》


いやはや。ぼくが周りの書店員さんを巻き込んで始めた「交流会」で話しているようなことと、まさに同じ主旨ではないですか! 「吉祥寺共闘計画」のアドバイザーにお迎えしたいぐらいです。ちなみに、福嶋氏が引用しているのは、青田恵一『書店ルネッサンス』(青田コーポレーション)。この引用部分を読むだけで、こちらも必読であることがわかります。



このように、紹介したい箇所を順に挙げていくだけでいくらでも長く書けそうな本書、すぐれた書店論であることは間違いないですし、実に示唆に富む本だと思うのですが、少し気になった点もあります。いい本だと思うからこそ、すぐれた書店論だと思ったからこそ、あえて少し苦言も呈したいと思います。


というのも、本書のようなすぐれた書店論は、これから書店で働こうとしている人、現在書店で働いているがいわゆるバイト・パートで、一生の仕事とするかどうかの選択をこれからすることになる人など、単に書店に興味があるというだけではない、いわば「未来の書店人」にとも言うべき若い読者にこそ読んでほしいと思うからです。そして、また、本書が読まれるのであれば、単に「通読」だけでなく、「活用」してほしい、と思うからです。そのような観点で気になったことを3点あげます。


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松浦寿輝の新刊、ABCにてトークショー

空犬のお気に入り作家の一人、松浦寿輝の新刊が出ました。


  • 松浦寿輝『クロニクル』(東京大学出版会)

小説ではなく、『読売新聞』と『UP』(東京大学出版会PR誌)の文芸時評をまとめた評論集です。


刊行記念として、青山ブックセンター本店で以下のイベントがあるようです。あさってなので大急ぎで紹介します。


    『クロニクル』(東京大学出版会)刊行記念
    松浦寿輝+小野正嗣トークショー 「同時代批評2007─文学と思考」
    ■2007年5月3日(木)15:00~17:00(開場14:30~)
    ■会場:青山ブックセンター本店内・カルチャーサロン青山
    ■定員:120名
    ■入場料:800円(税込)電話予約の上、当日精算
    ■電話予約&問い合わせ電話:青山ブックセンター本店  03-5485-5511
    ■受付時間: 10:00~22:00

同店のサイトによれば、イベント内容は以下の通りです。
《大学の教師で詩人で、芥川賞作家の松浦寿輝さんの最新評論集『クロニクル』刊行記念イベント。同じく研究者であり小説家である小野正嗣さんをゲストに、日本の小説の現在と将来に向けて、自由に語り合っていただきます。2003年から2006年までの同時代批評をおさめた『クロニクル』の2007年ライブ版。》


ぼくは所用で残念ながら行けませんが、松浦ファンは全速力で青山にかけつけてください。



ところで、青山ブックセンター本店といえば、こんな本が出ていますね。


  • 浅井輝久『ABC青山ブックセンターの再生』(新風舎文庫)

空犬通信としてはこの書名は見逃すわけにはいきません。現在、読んでる途中ですので、近日中に取り上げる予定です。