少し前の話になりますが、10/21付朝日新聞書評欄「思い出す本 忘れない本」に、俳優のミムラさんが寄せた「大人への疑い かき消した」に、印象的なくだりがありました。読書感想文とセットになっているイメージのせいか、悪者にされがちな課題図書について、ミムラさんはこんなふうに書いています。
《当時の私にとって課題図書は「大人が子ども達(たち)を良い子にする為(ため)の本」という認識で、つまらないと勝手に思っていたのだ》。
ご本人は、《とんでもなくひねた思考》などとされていますが、課題図書をこのようなものだと思い込んでいた子どもは決して少なくないはずで、それは今も同じかもしれないし、子どもだけでなく、大人にもこういうイメージを持っている人は多いはず。
ミムラさんは、《そこで、わざとシールの貼られた本を選び、挑戦状とした。これで自分の作文が選ばれたらもう大人を信用しないぞと心に決め、勇ましい気持ちで読み始めた》んですが、《しかし、読み終えて完全に魅了されてしまった》というのです。なんか、このくだり、ちょっと頭でっかちな本好きの女の子が、1冊の本に、目を開かれる様子が伝わってきて、いいですね。そして、すっかりイメージの変わった課題図書との付き合い方を、こんなふうに書いています。
《今もぴかぴかシール付きの本は進んで読む。本好きの少年少女だった人達が、今の少年少女に送る本だ。面白くないわけがない》。
課題図書(や読書感想文)について、いろいろな人が語ったり書いたりしているのを見聞きしてきましたが、これまでに出会ったものなかで、もっともすてきな文章かもしれない、そんなふうに思いました。ツイッターでこのことにふれたら、ずいぶんたくさんの方の反応がありましたから、きっと同じように感じた方が多かったのでしょう。その後、Webでも読めるようになったので、あらためて上げておきます。新聞で読み逃した方はぜひこちらを。「思い出す本 忘れない本 ミムラさん(俳優)と読む『キツネ山の夏休み』」(10/21 朝日新聞)。ほんとは、部分を取り出すより、前後のつながりで読んでいただくほうがいいに決まっているので、全文を引用したいぐらいなんですが、ぜひ元記事にあたってみてください。
ミムラさんが思い出をつづっているのは、小学校5年生のときのこと。ちょうどうちの子が同じ年頃で、同じく本好きの女の子なもので、読んでいて、他人事とは思えませんでした。うちの小学生は、自分が手にする本のことを、どんなふうに思っているのだろう。課題図書について、どんなイメージでいるのだろう、などと考えてしまって。
ミムラさんの文章を読んでいたら、課題図書、というか読書感想文について、書いたことあったっけなあ、と思って、過去記事を眺めてみたら、こんな文章を書いてました。ミムラさんの、すてきな文章と一緒に紹介するのは我ながらどうかと思われる駄文なんですが、ついで、ぐらいに読んでいただければと思います。
この文章の書き手のミムラさん、NHKのドラマなどで活躍している方のようですが、なにしろテレビをぜんぜん観ないもので、どんな方だか、まったく存じ上げなかったんですが、こんな記事を自分でもツイートで紹介してました。「彼女がキレイな理由(わけ)ミムラさん 第1回 こだわり 読書は月に200冊読む“雑食系” ドラマ「家族法廷」出演」(毎日新聞)。
リンクが切れているようなので、本に関するところだけを引用しておくと、こんな感じ。《趣味は読書で、多いときは1カ月に200冊も読む。「本はとにかく雑多に読んでいます。(ジャンルは)“雑食”で、なんでも読みますね」といい、小説だけでなく専門書やマンガなど幅広い分野の本を読破している。「影響を受けるものは、ジャンルが決まっているわけではないので、なるべく間口を広く」と知識欲が旺盛だ。マンガも「どんな系列のマンガでも好きです。見方によってはお芝居の勉強になることもありますし、最近はマンガ原作のドラマや映画が多いので、映画化されると聞くと、友だちと一緒にこの役はどの役者さんがいいと思う?と話して盛り上がったりします。マンガを読んでいると結構幅広い年齢の人と会話ができるので、それもいいところだと思いますね」と話題にも事欠かない。》
いやはや。200冊はすごい。年に、じゃないですよ。月に、ですからね。本物の読書家でした。上のようなすてきな文章が自然に出てくるわけですね。動いているところを一度も観たことがないくせに、このくだりを読むだけで、ファンになってしまいそうです(笑)。
課題図書に戻ります。自分が小学校時代に読んだ課題図書で、もっとも印象に残っているのは、宮川ひろさんの『先生のつうしんぼ』(偕成社)(というか、相当の本読みだったのに、「課題図書」として読んだものとなると、この1冊しか覚えていない)。1976年の課題図書です。いまも偕成社文庫で読めるようですが、ぼくが読んだのは、もちろん親本のほう。ぼくは記憶力が貧弱で、読んだ本のことは片端から忘れてしまうほうなんですが、この本は、表紙の装画はもちろん、先生が給食に出たにんじんをなんとかしようとする場面の挿絵まで、今も鮮明に覚えています。
この本は、おそらくぼくが初めて読んだ課題図書。読後の読書感想文には苦労したはずですが、でも、この本自体にはいい思い出しか残っていなくて、「読まされた感」も「押しつけられた感」もゼロ。最初の課題図書とは幸せな出会い方ができたのかもしれません。。
全国学校図書館協議会のサイトで、過去の課題図書の一覧が見られますから、子どものころに、読まされたという思い出のある方は、眺めてみてはいかがでしょう。記憶にある書名がいろいろ見つかって、なんだかなつかしい思いにひたれます。なにしろ、《本好きの少年少女だった人達が、今の少年少女に送る本》のリストですからね。《面白くないわけがない》のです。それに、もう読書感想文を書かされることもありませんしね(笑)。書店や図書館でちょっと再読してみようかなと、そんな気にさせられるかもしれませんよ。
しばらく前の記事で、福岡のブックイベント「ブックオカ」のことと、ブックオカのフリペ展に「ブックトラック」が参加することになったことなどを書きました。
そのブックオカの公式ガイドブックを、現地の知り合い書店員さんが送ってくれました。うれしいなあ。
もちろん、現地についたらすぐに入手のつもりだったんですが、ガイドブックが事前にあると、よそのエリアから参加する者としては、ほんとに助かるんですよねえ。訪問前に書店の地図やイベント一覧を確認できるので。
早速、中をぱらぱら見てみると、実行委員の方々が写真入りでコメントを寄せているページがあります。去年のブックオカ、書店員ナイトでお会いした方々が何人も。うち何人かの方は、寄稿もしていて、文章を読んでいるだけでも愉しい。なかでも、「姉さん」呼ばわりして勝手に慕わせてもらっている、『書店員タカクラの、本と本屋の日々。…ときどき育児』の高倉美恵さんによる「オカンが読書を取り戻すまで」は最高です(姉さんが去年のガイドブックに寄せた文章も最高でした)。
そのブックオカ、今年は、11/3の一箱古本市に合わせて行ってきます。もちろん、前後に博多駅周辺と・天神界隈を中心に、書店回りもしてくる予定です。とくに楽しみなのが、昨年訪問時はオープンの少し前にあたってしまい、お店を見ることがかなわなかった、リブロ福岡天神店。そして、移転のことを失念していてたどりつけなかった、書斎りーぶる。
今回は、福岡の後で、熊本にも足をのばして、念願だった熊本の老舗書店、長崎書店を訪ねてこようと計画しています。長崎書店さんについては、以前の記事に、こんなふうに書いていました。《九州自体に行く機会がないところに持ってきて、熊本は、ブックオカなど福岡の用事と併せ技にするのもなかなか難しく》。短期間の滞在では、九州内での移動など無理だろうと、頭から決めてかかっていたのですが、聞けば、博多・熊本間は新幹線で1時間もかからないというではないですか。しかも、帰りの飛行機は、熊本・羽田便もあります。これは、寄らない手はありません。
そんなことを考えていたら、ほんと、偶然は重なるもので、その長崎書店さんの長崎さんに、東京でお会いできることになってしまったのです。セッティングしてくれたのは、往来堂書店の日比さん。なんでも、長崎さんは、割によく東京に来ていらっしゃるそうで、そのたびに、往来堂書店にお寄りになるのだとか。往来堂の冊子がきっかけなのかどうかわかりませんが、たまたま当方の名前が出て、よかったら食事会を一緒に、などということになり、先日、神保町で、長崎書店の長崎さん、スタッフの児玉さん、往来堂書店の笈入さんと日比さん、それに空犬という組み合わせの会が実現してしまったのです。
長崎さん、児玉さんにはお目にかかるのは初めてで、メールやツイッターでのやりとりもまったくなかったんですが、とても初対面とは思えないぐらい、最初から書店の話で盛り上がってしまって、2軒目を閉店時間だからと追い出されるまで、わいわいと話し込んでしまいました。いやあ、あれは実に楽しい時間だったなあ。
話をうかがって、ますますお店を訪問するのが楽しみになりました。お店の様子は、後日、ブックオカや福岡の書店の様子と合わせて、レポートしたいと思います。
その前に、最近の同店の様子・活動がわかる記事や、グッズなどを紹介しておきましょう。まずは、2回目にして、早くも熊本の定番文庫フェアになりつつある「La!Bunko」。今年は、10月の初めにスタートしていて、11月末まで。関連記事は、こちら。「長崎書店、La!Bunko2012秋がスタート」(10/10 文化通信) 。
↑こちらが冊子。オールカラーで分量もすごかった昨年のものよりは少し落ち着いた感じのものになりましたが、デザインといい中身といい完成度の高さは変わらず。表紙のイラストもいい感じですね。立派なポスターも2種、作られています。(昨年の冊子は、こちらに写真を上げてあります。)
ちなみに、現在開催中の「La!Bunko 2012」ですが、記事によれば、《開始時点で1日約20冊前後の売り上げと、11月末までの目標売上1000冊に向けて順調な滑り出し》だそうですよ。
↑この夏、6月から7月にかけて、ギャラリーで開催した「グリーンブックスフェア」。いわゆるバーゲン本のフェアで、それ自体はあちこちの書店で見かけますが、長崎書店がすごいのは、「バーゲン」という語を避けたネーミングとし、フェアの案内ロゴも洗練されたデザインにして、ギャラリーを使って開催することで、従来のバーゲン本にありがちな、「残り物」感を払拭したこと。
この試みは成功したようで、先日、長崎さんにうかがったところ、ひと月で約1400冊(!)が売れたといいます。桁を聞き違ったのかと思ってしまいました。いやはや、すごい数ですよ、それは。関連記事はこちら。「長崎書店(熊本)、バーゲン本で「グリーンブックスフェア」開催」(6/15 文化通信)。
↑長崎書店では、ホールやギャラリーを使って、こうしたイベントやフェアを積極的に手がけていることでも知られています。「La!Bunko 2012」の選書にはかなりたくさんの方が関わっているのですが、それがすべて熊本ゆかりの方で、お店を核にすごい地元人脈が築かれているのがわかります。それらの人のつながりは、こうしたイベントやフェアによって、さらにそれが広がったりしているのだそうです。
地元に根ざしたイベントやフェアなどの活動が、地域の本好きの刺激になっているのは間違いないでしょう。そして、それが単なる文化活動に終わらず、お店の売上に結びついているのだとしたら、ほんとにすばらしいことですよね。来月の訪問時には、そのあたりも、店頭の様子と一緒に取材させてもらってくるつもりです。ほんと、楽しみだなあ。
書店好きを名乗っている以上、書店関連の本は見逃すわけにはいきません。ふだんから注意してチェックするようにしているのですが、このところ、広義の書店関連本がずいぶん続いていますよね。つい先日も、こんな記事やこんな記事を書いたばかりですが、記事でふれたもの以外にも久世番子さんの書店マンガ、『暴れん坊本屋さん 完全版〜棚の巻〜』『暴れん坊本屋さん〜平台の巻〜』(新書館) が今月発売。今回紹介するのは、発売前から楽しみにしていた1冊で、広義の書店本に入ると思うのですが、書店は書店でも「古書店」関連の本です。
サイトによれば、こんな本です。《「本の雑誌」がまるごと「古本」の雑誌に?! 「本の雑誌」3年ぶりの別冊は古本にとことんこだわった1冊です。古本を売るお店の人の話もあれば、そのお店で掘り出し物を探そうとする古本マニアの話もあり、はたまたそんな古本マニアのひとたちが全国歩いたおすすめの古本屋さんを紹介する大座談会もあったり。そして椎名誠の代表作『さらば国分寺書店のオババ』の原型となる、「本の雑誌」5号に掲載されたものも収録。おお、「本の雑誌」といえばその全号をコンプリートした古本マニアのレポートもあるぞ》。
古本者の座談会、古本屋開業、一箱古本市、日本全国古本屋ガイド、古書価の変動、均一本・棚、古書用語、古書店主やマニアのみなさんによるエッセイやインタビューなどなど……とにかく、古本にまつわるあれこれがぎっしり。サイトに目次があがっていますから、くわしくはそちらをどうぞ。中身はもちろん、初期の『本の雑誌』の書影をあしらったカバーも楽しい1冊です(装丁は平野甲賀さん)。
ところで。この空犬通信では新刊書店の話題を取り上げることが多いせいか、新刊書店しか利用しないと思われたりすることもあるのですが、そんなことはなくて、古本屋さんも大好きで、よく利用しています。本の好みもちょっと古めなので、古本屋さんを利用しないと、読みたいものが十分に読めないというのもあります。幸い、勤務地が神保町で、住んでいるのがユニークな古書店の宝庫、中央線沿線ですから、そんなに苦労せずとも、複数の古本屋さんに日常的に出入りできる環境にもいます。ただ、新刊書店を応援したいという気持ちが強いので、最近は、買う本における新刊・古書の割合で言うと新刊が多めになっています。
先日、名古屋の書店回りをしてきたと書きましたが、今回の書店回りは新刊書店がメイン。数件、古書店ものぞいてきましたが、新刊書店回りの途中で見かけたお店、たまたまた行き会ったお店に寄った、というだけで、そのお店を目当てにわざわざ訪問したのは「シマウマ書房」だけ(もちろん、今回の主目的の1つだった、一箱古本市は別ですが)。名古屋滞在中はいくつか本の買い物もしましたが、古書の買い物はゼロです(シマウマ書房では買い物をしましたが、古書ではなく、グッズと新刊です)。
と、最近はすっかり新刊書店中心の書店ライフになっているんですが、古本ばっかり買ってた時期もあるんですよ。お金のなかった学生時代のころ。ここで、ちょっと昔話を。高校のときの友人が名古屋の大学に入学、一人暮らしをしていたので、その友人に案内してもらって、名古屋の書店回りをしたことがありました。1989年のことです(なぜ特定できるかというと、行きの新幹線で読んだ本が、そのときに新刊で出たばかりだった、ジョージ・A・エフィンジャーの『重力の衰えるとき』(ハヤカワ文庫SF)であったのを、今もなぜか鮮明に覚えているためです。まったくの余談ですが)。
そのときは、今回と違って、新刊書店にはほとんど目もくれず、古本屋さんとと中古レコード屋さん「のみ」を回りました。同行の友人も、そういうのが好きなタイプだった、ということもありますが、それにしても、そのころから、旅先で名所巡りも観光らしいことも一切しないで、本屋さんばっかり回っていたわけですね。なんだか、学生時代から進歩がない、という話を、その必要もないのに自分から告白しているような気分になってきました(苦笑)。まあ、それぐらい古本屋さんが好きだったし、古本屋さんをよく利用していた、ということなんです。
そのころは古本屋さんの利用頻度が圧倒的に高かったし、とくに中央線沿線の古本屋さんには滅法強かったから、まあ、古本者の端くれぐらいではあったのでしょう。今も、それなりに古本のこと、古本屋さんのことは知っているほうかなあ、などとえらそうに思っていましたが、この『古本の雑誌』を読んじゃうと、とくに、いくつか収録されている座談会の記事を読んじゃうと、とてもじゃないけど、古本好き、古本屋好き、などとは、うっかり口にできませんね(苦笑)。
今日は、西荻窪のブックカフェ、beco cafeでほぼ毎月開催している出版・書店関連テーマのトークイベント、beco talkの第2弾、「ハマザ企画会議」でした。
beco talk vol.2 公開編集会議
ハマザ企画会議
〜ハマザ聞くか? あの恐ろしい編集者に色々聞いてみる〜
日時:10月26日(金)
OPEN 19:00 START 19:30(〜21:30)
会場:beco cafe(東京・西荻窪)
会費:1000円(ワンドリンク付き)
出演:ハマザキカク(社会評論社)、空犬(吉っ読)
イベントの詳細は、こちらに書きましたので、ご覧ください。イベント出演者のハマザキカクさんも、自身のブログにくわしい記事を寄せていますので、そちらもぜひご覧ください。
「編集」という、一応、こちらも本業でかかかわっている得意分野の話題で、かつ、気心の知れた相手とのトークということで、実に楽しいトークができました。イベント終了後に、今日参加くださったみなさんに感想を聞いてみましたが、おもしろく聞けるものだったようで、企画・主催者としては、ちょっとほっとしました。本日、会場に駆けつけてくださったみなさま、メールやツイッターで応援してくださったみなさま、出演の濱崎さん、ありがとうございました。
↑会場のbeco cafeには、写真のような、「ハマザキカク棚」ができています。濱崎さんが手がけたおもしろ本がずらり。濱崎さんの手になるおもしろ本をまとめてチェックできるチャンスですので、お近くの方はぜひ見に行ってみてください。これらの本は、beco cafeで販売もしています。
次回のbeco talkは、話題のエア書店ユニット「いか文庫」の店主さんが登場です。そちらも、おもしろい話になること必至です。参加される方は楽しみにしていてください。なお、予約が満数になりましたので、予約受付はいったん締め切らせていただいたとのことです。イベント終了後のドリンクタイムだけでも参加したい、という方がいらっしゃいましたら、空犬通信のコメント欄か、ツイッター(@sorainu1968)にてご一報ください。(今回の「ハマザ企画会議」も、予約は間に合わなかったけれど、ぜひ来たい、という方が数人、イベント終了後のドリンクタイムに駆けつけてくださり、閉店まで楽しくおしゃべりとお酒を楽しむことができました。)
気がつけば、もうすぐですね。
- 10/27〜28 第22回神保町ブックフェスティバル(10/1 おさんぽ神保町)
- 10/27〜11/1 第53回 東京名物神田古本まつり(10/10 じんぼう)
↑写真は10/24朝の様子。着々と準備が進んでいます。左は青空古本市の立つ、神保町交差点の様子。中は、同じく青空古本市会場の、みずほ銀行と岩波ブックセンターの間の道。右はさくら通りの入り口。
↑すずらん通りには、神保町ブックフェスティバルの案内も。同じく、10/24朝の様子。
↑10/24夕方の様子。靖国通り沿いに露店が並び始めました。まもなく、これらが古書でいっぱいになるわけですね。本が入る前の棚のたたずまいも、なかなかいいものです。
↑毎年おなじみの無料案内冊子たち。左から、『第22神保町ブックフェスティバル』冊子、『おさんぽ神保町』No.14、神保町ブックフェスティバル特集号、「消費生活支援事業応援冊子」とある『CHIYOMO』、『千代田の秋まつり2012 公式ガイドMAP』。これらは、「本と街の案内所」ほか、神保町の書店店頭でどうぞ。
上記のうち、『CHIYOMO』はおまつり関連の冊子ではありませんが、「本でめぐる千代田区」なんて記事が載ってたりもしますから、本好きはチェックをお忘れなく。
↑無料のものと言えば、これは神保町歩きには必携ですね。『JIMBOCHO古書店MAP 2012-2013』。お店の出入りがありますから、以前の版を持っている方も、必ずこちらを入手してください。
↑有料の神保町関連雑誌としては、これらもあります。『神保町公式ガイド』Vol.3と、『神田神保町古書街2013』は毎年恒例ですね。毎日新聞社のほうは買ってないので、すみません、代わりにサンヤツを。『本の雑誌』11月号も神保町特集。40頁超のボリュームに、古書店、古書展、新刊書店、飲食店、均一台などなど、神保町関連の話題がぎっしり。これらは、古本まつり/ブックフェスティバル詣での前にチェックしておくことをおすすめします。
今日の時点での天気予報は、残念ながら、日曜日が雨になっています。毎年この時期は天気が微妙なんですが、なんといっても、1年に1度のおまつりですからね。神保町ブックフェスティバルも神田古本まつりの青空古本市も、土日の両日、なんとか天気に恵まれ、無事開催されることを願うばかりです。
【“神田古本まつり&神保町ブックフェスティバル、まもなくです”の続きを読む】
「ブックマークナゴヤ2012」開催中の名古屋を訪問、あちこちの書店を見てきましたよ。
↑「ブックマークナゴヤ2012」、公式リーフレット。
撮ってきた写真やせっせと記録してきたメモをこれから整理し、後日、簡単なレポート記事にまとめたいと思います。1泊2日しかいなかったくせに、見てきたお店の数は20を超えていたりするので(我ながら、ほんと、どうかしてますよね;苦笑)、前回の大阪のレポートのように、いくつかのお店にしぼって、紹介することになりそうです(2日間で撮ってきた写真が300枚を超えていて、頭を抱えています。しかも、全部、書店の店頭と棚の写真……)。
しかしなあ、久しぶり(?年ぶり、です)の名古屋に1日半いて、全部自由になる時間だったというのに、名古屋城にも行かず、名古屋港水族館にも行かず(ここは、けっこう本気で行きたかった)、名古屋市東山動植物園にも、科学館にも美術館にも博物館にも、とにかく、名所らしい名所にはどこにもいかず、ひたすら書店ばっかり見て回ってるんだからなあ(苦笑)。書店にそれほど思い入れのない方から見たら、これ、立派な「奇行」ですよね、たぶん……。
新刊書店の開店・閉店については、つい先日、まとめたばかりなんですが、そういうときにかぎって、記事をアップした直後に、大事なニュースが飛び込んできたりします……。他にも判明したものがありますので、前回からあまり間が空いていませんが、新刊書店の開店・閉店いろいろをまとめます。
●オープン
- 10/25 アシーネ南越谷店(97)
- 11/10 本の王国豊田吉原店(240)
- 11/20 未来屋書店貝塚店(127)
- 11/21 くまざわ書店アリオ鷺宮店(200)
- 11/下 宮脇書店南城大里店(120)
それぞれ、アシーネは埼玉県越谷市の、本の王国は愛知県豊田市の、未来屋は大阪府貝塚市の、くまざわは埼玉県久喜市の、宮脇は沖縄県南城市のお店です。くまざわは紹介済みですが、開店日がわかっていなかったもの。特記すべき事項はありません。
●リニューアル
- 10/18 ブックセンターよむよむ坂戸入西店(100)
- 11/10 アシーネ新松戸店(147)
- 11/10 アニメイト柏店(60)
- 11/中 あゆみBOOKS仙台一番町店(190)
埼玉県坂戸市のよむよむは、サイトの案内によれば、店内に《子供服リサイクルショップ「ilpiccolo(イルピッコロ)」をオープン》したとのこと。千葉県松戸市のアシーネと、千葉県柏市のアニメイトは、増床で、前者が108坪から、後者が30坪から。後者は場所も移転になっているようです。アニメイトは、店舗の移転・リニューアルが続いていますね。
最後は、仙台からのうれしいニュース。今回、前回の記事から日をおかずに紹介したかったのは、このお店の件があるからです。宮城県仙台市で、震災の影響を受けたお店はいくつかありますが、駅前のジュンク堂書店他が再開するなか、再開のニュースがなかなか聞こえてこなかった、あゆみBOOKS仙台一番町店。とうとう、この11月に、再開することが決まったようです。関連記事は、こちら。「仙台・一番町サンシャインビル 書店、ボウリング場再開へ」(10/16 河北新報)。
記事の一部を引きます。《東日本大震災で被災した仙台市青葉区一番町4丁目のサンシャインビルの修復工事が11月中旬にも終わり、テナントの書店やボウリング場が営業を再開する見通しとなった》。
記事に《2010年12月に開店し、3カ月で震災に見舞われた》とあるとおり、気の毒としか言いようのないタイミングで被災、閉店を強いられることになってしまった同店。新規にスタートを切ったばかりだったところにあのような事態で、関係者のみなさんの悔しさはいかばかりであったか、想像もできません。
《売り場面積は約630平方メートル。10月下旬に内装工事を始める予定。再開後も震災前と同様に12万冊以上をそろえ、カフェも併設する》。残念ながら、被災前の様子を知らないので、くわしいことはわかりませんが、内装工事が入るとあることから、お店は以前の状況を復帰するだけでなく、装いを新たにしてのスタートになるんでしょうね。
《あゆみブックスは「お客さまから『再開しないのか』との多くの声が寄せられていた。『お待たせしました』という思いだ」としている》。「待ってました」という思いの地元のお客さん、そして出版関係者がたくさんいるだろうなあ。同店の関係者のみなさま、おめでとうございます。復活なったお店は、いつかぜひとも見に行きたいと思います。
●閉店
- 10/14 あおい書店松阪店
- 11/7 加賀谷書店本店(160)
あおい書店は、三重県松阪市のお店。前回の記事でも、博多店の閉店にふれたばかりでした。
閉店では、JR秋田駅前にある加賀谷書店本店の件がやはりショックですね。閉店の記事は、ツイッターでもたくさんリツイートされて、話題になっているようです。関連記事は、こちら。「秋田駅前の加賀谷書店本店、閉店へ 競争激化、売り上げ減」(10/17 さきがけ)、「加賀谷書店本店:来月7日に閉店 競争激化、売り上げ落ち--JR秋田駅前/秋田」(10/18 毎日新聞)。
さきがけの記事を引きます。《2007年以降、駅前にジュンク堂書店(神戸市)、宮脇書店(香川県高松市)が相次いで出店したことにより、売り上げが減少していた。加賀谷書店の東通、茨島店の営業は継続する》。大型書店が1つでも大変なのに、近隣に2店もとなると、160坪のお店にとっては、影響は大変なものだったでしょう。毎日の記事には、《12年5月期の本店の売上高は20年前の4分の1程度にまで落ち込んだという》とあります。
再び、さきがけから。《同書店の加賀谷龍二社長(53)によると、本店は1955年ごろ現在地にオープンした。1、2階合わせ528平方メートルの売り場で専門書や漫画、雑誌などを販売。老舗の「街の本屋」として半世紀以上、地域住民のほか、鉄道やバスを利用する通勤、通学者らに親しまれてきた》。
150坪前後の路面店って、ふだん使いのお店としてはちょうどいいサイズなんですが、やはり大手2店のすぐそばでは厳しいってことなんですね。社長さんの、こんなことばが記事の末尾に引かれています。《「本店を閉めることの重みを感じている。支持してくれているお客さんがいることは分かっているが、大手にはかなわなかった。チャンスがあれば新たな出店も考えたい」》。
以前に、他の「本の本」「書店本」といっしょに簡単にふれてはいますが、ちゃんと紹介しておきたかったので、あらためて取り上げます。
最初に、週刊誌『週刊ポスト』の不定期連載時に紹介したきたときは、分量とテーマから単独での書籍化は難しいかもしれないなどと書いたのですが、その後、雑誌掲載時とは全面的に姿を変え、ボリュームもアップして、1冊の本としてまとまりました。
ぼくの知るかぎり、阪神大震災のときは、現地の復興と書店だけに焦点をあてた関連書は出ていないと思います。災害時の本と書店の役割を考える意味でも、記録という意味でも、過去に出た書店関連本のなかで、もっとも貴重かつ重要な1冊になるのではないかと、そんなふうに思っています。
内容については、もうあちこちで紹介されていますから、それにことばを重ねることはせず、代わりに、各紙の書評などを紹介したいと思います。その重要性が多くの人に認められたということでしょう、あちこちのメディアで取り上げられていますね。
《震災は「まるで血液のように循環していた本や雑誌」の流通も止めてしまった。街に再び本を届けようと立ち上がった書店・取次会社を取材したノンフィクション。》
《「食べ物の確保すらままならない」なか、恐る恐る再開した書店を驚かせたのは、活字を求める人々の行列だった。仮設商店街の店内で、紙袋を胸に抱いて喜ぶ少女の写真が印象的だ。》
《電子書籍なら、津波で在庫が泥まみれになることも、棚に並べ直すたびに余震で崩される苦労もなかっただろう。でも、ぬくもりまで伝えられただろうか。本が、人から人へ手渡される紙の束であること。その意味を問いかけてくる。》
《東日本大震災で東北の書店は大きな被害を受けた。しかし、当たり前のように身の回りにあった書店や本が失われたことは、そのありがたさを再認識するきっかけにもなった。2005年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した著者が、震災を乗り越え、読者に本を届けようと奮闘する人々を丹念に訪ね歩いた労作だ。》
《津波で店を流されたが、テントで営業を再開した親子。自宅の片づけもそこそこに、店内に積もった泥をかき出した店員。書店がなくなった町で、借金をして新規開業した夫婦。何千何万と刷られる本は〈書店に届けられ、初めて「一冊の本」となる〉。書店の再開を待ちわび、本を求めて行列を作る人々を見て、書店員自身が仕事の大切さを改めて知った。本は生活に欠かせないものだったのだ。》
《東日本大震災で被災してなお本を届けようとする人々がいる。昨年5月から継続的に岩手・宮城・福島の3県を取材するノンフィクション作家が、12の書店が復旧する様子を丁寧に描いた。》
《岩手・陸中山田駅近くにあった大手書店は、津波で店舗を失った。2カ月以上の避難所生活をへて仮店舗を得たが、本も文具もほとんどなく、お祭り用のクジや景品をならべた駄菓子屋さながらの再出発だった。福島県南相馬のおおうち書店では新しい雑誌が入らず、若い女性と子供が避難して常連客の数が劇的に減るなか売り上げが伸びる。開いている店が少ないことに加えて、避難先から戻ってきた人々が、故郷の何かを子供に手渡そうと絵本などを買い求めたからだった。》
《避難所で読む児童書やコミック、写真週刊誌、パズル誌などから、地図や以前大切にしていた本まで。人々は水や食料を買うように幅広い本を求めた。青空移動書店や、素人集団による岩手県大槌町の一頁堂書店立ち上げの試みも紹介される。本を取り巻く切実な欲求に溢れている。》
《明るい。それぞれに工夫を凝らした個性的な書店を背景に、確信にみちた明るさをうかべ老若男女が立つ。今回の大震災をめぐる厖大(ぼうだい)な数の写真を見てきたが、こんな表情に本書で初めて出会った。》
《震災から一年以上たったある日。ようやく再開にこぎつけた母娘経営の書店の取材中、著者は、「やっと本屋になったねえ…」という娘の言葉を聞く。そして思う。この一年間、被災地で接してきた多くの「復興する書店」に、等しく響いていたのはこの感慨だったのか、と。》
《本を確保し本を並べる。読者に本を手渡し、読者と悦(よろこ)びを分かち合う。震災直後から、本を求め訪れる多くの人びとに新鮮な感動を覚えつつ、「復興の書店」に携わる者は、そんな「書店の原点」を見つめ次の一歩をふみだした。「やっと本屋になったねえ…」との感慨も、写真の明るい表情もここからくるのだろう。》
《絆が過剰に要求される中、自分の世界を確保するため本が求められた、という書店員の言葉に注目し、福島での復興を不可能にしかねぬ原発事故の影も見逃さない。稲泉連の確かな眼差(まなざ)しと、深い思索がいきる秀逸なノンフィクションだ。》
【“『復興の書店』をあらためて”の続きを読む】
新刊書店の開店・閉店・改装関連がたまってしまったので、まとめて紹介します。少し前の案件も含まれています。(かっこ内の数字は坪数。)
●オープン
- 9/ 9 ブックス&ギャラリー「SNOW SHOVELING BOOKS & GALLERY」(15)
- 9/21 夢屋書店ピアゴ八剱店
- 10/ 1 ピリカタント書店(12)
- 10/12 三洋堂書店高山モリー店
- 10/25 くまざわ書店サンリブもりつね店(185)
- 11/ 1 平清書店北長岡店(70)
- 11/ 1 くまざわ書店シャル鶴見店(114)
- 11/23 TSUTAYAさくら氏家店(300)
- 11/下 くまざわ書店アリオ鷲宮店
「SNOW SHOVELING BOOKS & GALLERY」は、《「本やアート好きが集まるカルチャースペース」がコンセプト》というお店。《新刊書籍や古書をメーンに、店内で使用しているアンティークソファセットなどの調度品や本に関する雑貨なども販売する》そうです。関連記事はこちら、「駒沢に書店「スノーショベリング」-ラウンジ備え「しゃべれる本屋に」」(9/10 自由が丘経済新聞)。
ピリカタント書店は、下北沢にできた、《本と日用品を販売する食堂》。「書店」とありますが、飲食がメインのお店なんでしょうか。関連記事はこちら、「下北沢に本と日用品を販売する食堂-元編集者の女性が開く」(10/10 下北経済新聞)。
記事によれば、《店主の西野優さんは元編集者。世界の料理や雑貨などに関する書籍の編集に携わっていた》とのこと。《「世界中のいいものや面白いものを伝える方法は本だけではない」と感じ、発信源となれるような店を作りたいと考えたことが開店のきっかけだった》そうです。
気になる本の扱い内容については、記事ではふれられていませんが、記事にある店内の写真を見るかぎり、本はそれほど多くはないようですね。
以前の記事で、「くまざわ書店鶴見店」として今秋オープン予定と紹介した「くまざわ書店シャル鶴見店」は、JR鶴見駅に併設する新駅ビル「CIAL鶴見」内のお店で、店名にも施設名が入ったようです。
「TSUTAYAさくら氏家店」は、後述の11/15閉店のTSUTAYA氏家店とセットの案件。「ビッグワン、11月に1260坪で新本店を移転増床」(10/12 新文化)によれば、《栃木・さくら市にある本店「TSUTAYA氏家店」を閉店し、同21日、国道293号線を挟んだすぐ前に新本店「同さくら氏家店」をプレオープンする》とあります。それも、《4500坪の敷地に1260坪の店舗を建設》とありますから、複合大型施設ですね。
《本、レンタル、コミックレンタル、トレーディングカード、ブックオフ、ゲームリサイクル、ドトールコーヒー、ドコモショップ、アミューズメント、美容室の10業態を複合化》とあり、うち《本の売場は300坪》。《県内では1フロアで最大級の売場》とあります。グランドオープンは11/23。
●リニューアル
- 8/10 旭屋書店志木店(270)
- 8/23 旭屋書店天王寺MiO店(420)
- 9/ 6 旭屋書店池袋店(320)
- 10/ 6 笠原書店岡谷本店(165)
- 10/ 7 改造社書店MIDORI松本店
- 10/20 宮脇書店山形店(400)
- 10/23 有隣堂シャポー市川店(73)
- 10/27 ひぐらし文庫
旭屋書店はいくつかリニューアル店舗が続きましたので、まとめて紹介しようと思っていたら、ちょっとタイミングを逸してしまいました。各店のリニューアルについては、「新文化」に関連記事「旭屋書店 池袋店など4店リニューアル」がありましたので、それをもとに紹介します。
志木店は20坪増床。レジが移動になり、《文具・児童書などの棚を拡張した》とのこと。先日、訪問しそこねてしまった天王寺MiO店は、《通路と外周(壁面)に沿って仕掛け什器を大幅に拡大し、面で見せる商品を増やした》。規模の割に専門書などのかたい本や学参も多く揃えているように見えていたお店だけに、そうした本の扱いが少なくなっていないか、本の点数が減ってしまっていないか、ちょっと心配です。《雑貨や書籍、イベントスペースを融合した売場「KuLaSu360°」を約30坪のスペースで確保》とのこと。以前もエレベータ側に、ガラスで仕切られたスペースがありましたが、それとは違うものなんでしょうか。
池袋店は、8/23に仮オープンし、9/6に本格オープン。スターバックス、JINSが既存の売り場に進出し、売り場面積としてはやや縮小。かつては、600坪超、大型書店の売り場面積ランキングでも上位に食い込んでいたことがある同店、とうとう、天王寺MiO店にも抜かれていますね。
ただ、《事務所エリアの一部を売り場に充当したことで、トータルの売場面積は若干の減少で止まった》とのことで、実際に行ってみた印象でも、学参や語学があった側が奥に広がっているので、狭くなったという印象はあまり受けませんでした。《児童書・コミック・実用書コーナーを拡大し、レジ周りの仕掛け什器も増やした》。記事は、一連のリニューアルは、好調な出足であると結ばれています。
笠原書店は長野県に数店を展開する地域チェーンで、岡谷市のお店。次の改造社書店も同じ長野県のお店。松本駅ビル「MIDORI松本店」の改装に伴うものとのこと。「松本駅ビル「MIDORI」が大型リニューアル-2階に続き3階フロアも全面改装」(10/5 松本経済新聞)。改装前と思われるお店の様子が、MIDORI松本店のサイトで確認できますが、リニューアルの内容はわかりません。
宮脇書店山形店は、情報をくださった方によれば、FCを直営化し、600坪からして400坪に売場縮小。合わせて、店舗名称も「山形az七日町店」から「山形店」に改称になったとのことです。
最後の「ひぐらし文庫」ですが、ブログにこんなお知らせがあがっています。「10月のひぐらし文庫 実店舗休業のお知らせ」(10/4 ひぐらし文庫「雑司が谷つれづれ日記」)。それによれば、《今年に入り、製本業務に就くために土日営業しておりましたが、10月でいったん実店舗をお休みし、専念することにいたしました。このたび、10月27日をもって実店舗をお休みし、通販のみでしばらく活動することにいたしました》とのことです。
《通販業務は継続しますので、引き続き、変わらぬお取り引きをお願いしたく思います。また、みちくさ市や本のイベント販売などにも引き続き参加させていただきたいと思います》とのことで、お店がまったくなくなってしまうわけではないものの、さびしく感じる同店の利用者の方も多いことでしょう。
ひぐらし文庫と言えば、石橋毅史さんの『「本」は死なない』(新潮社)で大きく取り上げられていました。この本で同店を知ったという方も多いぐらい、印象的に紹介されていましたよね。
●閉店
- 9/30 ブックセンター久万
- 9/30 未来堂書店
- 9/30 文教堂真栄店
- 10/14 あおい書店博多本店(750)
- 11/15 TSUTAYA氏家店
【“ピリカタント、旭屋書店、ひぐらし文庫……新刊書店の開店・閉店いろいろです”の続きを読む】
今日は、夏葉社・島田さんと『本屋図鑑(仮)』の件で打合せをした後、吉祥寺書店員の会「吉っ読」の定例飲み会。楽しい時間を過ごして先ほどゴキゲンで帰宅した空犬です。
本屋さん本が出るよ、という噂だけはずいぶん前から聞いていましたが、ようやく書誌情報があちこちに出始めましたね。「まったく新しい本屋さんガイドブック」、だとのことです。
内容紹介によれば、こんな本。《TOKYOの書店が生まれ変わっていく!関東圏周辺のハイセンスでユニークな本屋を、新刊書店、古書店、専門書店、セレクトショップまで、あらゆるジャンルに渡って徹底紹介する、まったく新しい本屋さんガイドブック!》
アスペクトには過去にも書店本がありましたね。こちら。
《セレクトショップ感覚の新刊書店、おしゃれな新世代古書店、ブックカフェなどなど、時間も忘れて夢中になれるユニークな本屋さん全23軒を一挙紹介》という内容の、2009年刊の本書では、《NOW IDeA by UTRECHT、Calo Bookshop&Cafe、貸本喫茶ちょうちょぼっこ、artos Book Store、limArt、beyer、リゾナーレ ブックス&カフェ、森岡書店、Berlin Books、にわとり文庫、古本屋さんかく、colonbooks、Shibuya Publishing&Booksellers、百年、恵文社一乗寺店》他が取り上げられています。
恵文社一乗寺店のような、この主の書店ガイドブックでは必ずといっていいほど取り上げられる定番のお店、おしゃれ系の新刊書店・専門書店・古書店に混じって、「リゾナーレ ブックス&カフェ」といった宿泊施設内の書店が取り上げられていたり、「貸本喫茶ちょうちょぼっこ」といった、《小さな私設図書室、貸本喫茶》(サイトの案内より)をうたい、本の販売をしていない「本屋さん」まで取り上げられていたりする点がユニークな1冊でした。
ちなみに、2009年と、わずか3年ほどの前の本なのに、同書で取り上げられているお店には、閉店になったり、業態が変わったりしているものもあります。たとえば、吉祥寺にあった古書店「古本屋さんかく」は残念ながら閉店になってしまいましたし、大阪・西区にあった「貸本喫茶ちょうちょぼっこ」は、《2012年4月末に鳥かごビル4階のお店を閉め》、《2012年6月16日(土)より天満橋のISまちライブラリーさんにてちょうちょぼっこの本棚 の閲覧&貸出が可能です》となっていたりします。
全国のお店が対象になっていた『本屋さんに行きたい』と違い、今度の新刊は、「関東圏周辺」限定のようですし、そもそも著者も違います。『本屋さんに行きたい』もまだ生きていますから、お店のセレクトをあまり重ねて、似たような本にすることはないでしょうから、雰囲気の違うものになるんでしょうね。本屋さん好き、本屋さん本好きとしては、楽しみな1冊です。
……と、紹介しようと思ったら、今日、ちらりと聞いた噂によれば、この『TOKYOニューウェーブ書店』、コンセプトが少し変わり、それに伴い、書名も変わるかもしれないとのことで、発売も少し延びるのだとか。詳細を聞いたわけではないので、これ以上くわしいことは書けませんが、アスペクトから書店本が出るのはたしからしいものの、書名・内容は、現在告知されている書誌情報とは違ったものになるかも、とのことです。詳細がわかり次第、あららためて取り上げます。
追記(11/21):その後、書名・著者表記などが変わり、上のような内容になったようです。12/12発売予定。内容ですが、サイトの案内には《街の小さな本屋がおもしろい。店主が3人もいる京の町家書店、亀が八匹&望遠鏡もある本屋、呑みながら読む古本酒場……店というより友人のような、新しくも懐かしい「小さな本屋」を全国を渡り歩いて紹介する、新感覚ブックストアガイド。又吉直樹(ピース)さん特別インタビュー、岡崎武志さん&小山力也さん(古本ツアー・イン・ジャパン)特別対談も収録》とあります。
最近目についた書店関連本をいくつか紹介します。
松丸本舗関連の本としては、2010年に出た『松岡正剛の書棚 松丸本舗の挑戦』(中央公論新社)がありますから、2冊目ということになりますね。『松丸本舗主義』。500頁超、ご覧の通りの厚さです。
松丸本舗が、ここ数年、新刊書店の現場でなされた試みとしては、もっとも目を引くものの1つであったことは間違いありません。ぼくも、初めてその棚を目にしたときは、圧倒されましたし、棚のあちこちを見て回るのに、夢中になりました。ただ、松丸本舗について、というか、それをめぐる松岡さん(と周囲の方)の言動に、やや気になるところがあり、あるときから、個人的にはちょっと距離を置くようになりました。そのあたりのことは、この記事に書きました。どうでもいいことかもしれません。でも、やっぱりふつうの本屋さんが好きで、ふつうの本屋さんを応援したい身としては、このようなことがどうしても気になってしまうのです……。
この本を読んで、もう一度、松岡正剛さんの、お店への思いのようなものを確認してみたいと、そんなふうに思っています。
↑松丸本舗の閉店告知。もとの場所は、いまは壁で覆われていて、中がどうなっているのかは見られません。売り場がその後どうなるのかの案内も現時点では出ていないようです。
《表紙だけ見るとあったかほのぼのマンガのように見えますし、実際それは間違いなく3割くらいあるんですが、そう思って読むとドッキリします》などとあるので、ちょっとどうかなあ、と思ったんですが、書店本ということで、結局買ってしまったのが、『ヒナ書房へ行こう』。先の引用はこの記事から。「こんな客はいやだ!こんな書店員はいやだ!『ヒナ書房へ行こう』」(エキサイトニュース)。
早速読んでみましたが、うーん、どうなのかなあ、こういう「書店員あるある」って、書店好きが読んでおもしろいのかな。書店員の方々が読んだらおもしろいのだろうか。こちらは、出版業界の人間ではありますが、お店に出入りするのは仕事としてよりも、客としてのほうが時間も回数も多いわけです。そういう書店好きのいち客としては、「こういう客っているよね」というネタって、あんまり楽しく読めない、というか、なんというか……。他の書店好きや書店関係者のみなさんの感想を聞いてみたいと思いました。
最後の齋藤孝さんのは、まだ出ていない本です。《ほぼ毎日、短時間であっても書店に足を運び、棚を眺めてパラ見・立ち読みとあらゆる愉しみ方を堪能する著者。旺盛な執筆活動の源は、リアル書店が与える知的刺激にあった》とありますが、さて、書店のことがどんなふうに書かれているか。楽しみでもあり、やや心配でもあり……。10/29発売。
あと、書名に「本屋さん」とあり、本屋さんでの待合せの様子を描いたカバー装画がいい感じの新刊に、三浦しをんさんの『本屋さんで待ちあわせ』(大和書房)があります。《本屋大賞に輝く人気作家が愛をこめて語りつくした活字と漫画とエトセトラ》というこの本、書店の話が出てくるのかなあと思ったら、書評が中心のようで、書店論的な文章はないそうです。
あと、「本の本」関連で気になる新刊としては、こんな新刊たちがあります。
前者はサイトにも詳細がまだあがっていないようですが、どちらも「本の本」としてはおもしろそうで、気になりますが、いわゆる「書店本」ではなさそうですね。
雑誌でも書店関連特集が、それも、お店紹介が中心のよくある書店特集ではないものとして、これがありました。
【“松丸本舗、ヒナ書房、ミステリマガジン……最近買った書店関連本たち。”の続きを読む】
秋は本関連のイベントがたくさんありますね。名古屋ではブックマーク名古屋が開催中ですが、今月下旬に、その名古屋に、数年ぶりに行ってきます。気がつけばあと10日ほどということで、書店リストや書店回りのルート作成に余念のない空犬です。1日半しか時間はないのに、行きたい書店の数は両手でもおさまりません。はてどうしたものかと、名古屋の書店事情にくわしい方にいろいろ教えていただいたりもしながら、日々頭を悩ませています。
そうこうしているうちに、秋の地域ブックイベントの雄、「ブックオカ」も近づいてきました。「読書の秋の風物詩『ブックオカ』が今年も開催!」(10/8 ロケタッチ新聞 福岡版)。
昨年も何度も空犬通信で取り上げ、詳細な書店レポート(こちらと、こちらと、こちら)もあげていますので、ぜひそちらもご覧いただきたいのですが、ご存じない方のために記事から部分を引いておくと、こんな感じのイベントです。《書店や書店員、出版者や編集者をはじめ、本好きによる本好きのためのイベント『BOOKUOKA(ブックオカ)』が今年も開催されます。期間は10月20日(土)〜11月20日(木)の1ヶ月間で、2006年に始まって以来7回目を迎えるイベントです》。
ブックオカと言えば、毎年オリジナルブックカバー、それも著名なイラストレーター・絵本作家さんらの協力を得た、豪華なブックカバーを用意することでも知られていますが、今年のブックカバーも、メンツが豪華だというので、早くも本好きの間で話題になっていますね。 「ブックオカ:直筆原稿と読書の秋 田中さんと角田さん書き下ろし、文庫カバー--福岡で開催」(10/5 毎日新聞)。
芥川賞作家と直木賞作家のコラボ(一度にお二人のものが載るわけではないようですが)、それも直筆原稿をあしらったものだというのですから、これは豪華ですよねえ。よく実現したなあ。《県内約50店で文庫本を買うと包装してもらえる》そうですから、現地でお買い物の際は忘れずに。ぼくは、ふだんブックカバーは断っちゃうタイプなので、間違えて断っちゃわないように気をつけなくては。お二人のトークイベントもあります。詳細はブックオカのサイトをご覧ください。
ブックオカでは、昨年書店フリペの展示が開催されたのですが、今年もフリペ展が開催されるようですよ。 「第2回 書店フリペの世界展〜全国の書店員がつくった 小さな偏愛メディア」(bookuoka 2012)。うれしいことに、今回、吉祥寺&三鷹の書店合同フリペ「ブックトラック」も参加できることになったんですよ。
知り合いの天神の書店員さんにフリペを送ったら、ぜひにと声をかけていただいて。しかも、参考にと思って、一緒に送った「青衣茗荷の文芸通信」も気に入ってもらえたようで、そちらも一緒に参加を、ということになりました。サイトを見たら、ほかにも、「ハセガワしんぶん」や「次読むならコレにしやぁ〜」など、知り合いや仲良しが手がけているフリペの名もあります。これらと一緒に並べてもらえるなんて、ほんと、うれしいなあ。
↑届いたばかりの「青衣茗荷の文芸通信」第6号と、毎度のことながら、これ自体が作品になっている封筒。ブックオカのフリペ展にはこの号が並びます。
1日だけではありますが、来月初旬に福岡に行ってくるつもりですので、フリペ展や一箱古本市の様子は、後日、あらためてこの空犬通信でレポートしたいと思います。
昨年から今年にかけて、メディアで図鑑関係の記事が目につきますね。この空犬通信でも過去に、こんな記事やこんな記事で、そうした小ブームとも言える動きについてふれたことがありますが、図鑑人気はまだ続いているようですね。最近もこんな記事を見かけました。
《これまでは、電車の運転士や宇宙飛行士といった子供に人気の職業を解説するものが多かったが、8月には、大人でもなかなか一言では説明できない総合商社の複合的な仕事を描いた》という『総合商社図鑑』(日経BPコンサルティング)が紹介されているのですが、これはたしかに大人が楽しめそうな図鑑ですよねえ。こういう本が話題になるのは、図鑑好きとしてはうれしいことです。さらにしばらく前には、こんな記事もありました。
図鑑好きにはうれしい記事ですし、こういうユニークな切り口のおもしろ図鑑が話題になるのは大歓迎なんですが、ただ、「美坊主」がどうのこうの、とかになると、さすがについていけません……。
というわけで、最近目についた図鑑で、個人的に気になったものを3点ご紹介します。
「文学少女図鑑」……本好きの娘の読書姿ならいくら眺めていてもあきない、娘持ちの図鑑好きとしては大変気になる書名です。しかも、大好きな写真集、ケルテスの『On Reading』を紹介した記事にも書いた通り、こちらは老若男女、美醜を問わず、《他人が本を読んでいる姿を見るだけでも、うれしくなっちゃったりする》タイプなものですから、なおのこと気になります。《街角で本を読んでいる少女のふとした一瞬をカメラに収めたブックガイド写真集》という説明を見て、思わず購入しました。
……正直な感想を言うと、やっぱり『On Reading』のほうがいいなあ。これはこれですてきな写真集だと思うのですが、個人的に残念なのは、「文学少女」のみなさんがカメラ目線なんですよね。ぼくは、読書姿が好きなのであって、本を片手に、カメラを見ているポートレートが見たいわけではないのです。この切り口だと、結局は、モデルの方が好みかどうかに感心が集約されてしまうような、そんな気もしてしまいます(実際、あるオンライン書店のレビューでは、取り上げられているモデルの方たちの何人が「きれいな娘」かといった、おそらくは撮影された方の意図とは違うかたちの評価がされていたりします)。
目線がどうこうなど関係ない、本好きの女性の写真を見ているだけで楽しいという方ももちろんいるでしょうから、そのような方にはいい写真集になるかもしれません。
次の『世界一美しい団地図鑑』はまず書名がいいですよね。団地が美しいかどうかなんて、考えたことがありませんが、というか、一般的には美的な価値観を云々するものではないと思われている可能性が高いものだと思いますが、これを見ると、なるほど、「美しい」と感じさせられる団地があることが、それもけっこうあちことにあることがわかって、とてもおもしろい。
門外漢なので建築のこまかいことはわかりませんが、写真と間取りなどの図面を見ているだけでも楽しいです。中央線沿線住人で、以前短期間阿佐ヶ谷に住んでいたこともある身としては、何度も散歩に通った阿佐ヶ谷住宅が載っているのもうれしい。阿佐ヶ谷住宅にはすてきなフォルムの給水塔があるんですが、残念ながら、本書では、写真に小さく写っているだけ。この写真が大きければ、なおよかったのになあ。
関連書も映画も出尽くして、はやぶさ騒動もちょっと落ち着いた感がありますが、この夏に、満を持してという感じで登場したのが、『小惑星探査機「はやぶさ」大図鑑 』。上記2点は変わり種図鑑でしたが、こちらはまさに王道の図鑑の作り。なにしろ、プロジェクトマネージャーだった川口淳一郎さんの監修ですからね。児童書の作りですが、大人が読んでも問題なし、というか、この本に詰め込まれた細部を味わいつくそうと思ったら、大人のほうがいいかも、というぐらいの充実ぶりです。「はやぶさ」の物語に夢中になった、すべての宇宙好き、メカ好きに強くおすすめしたい1冊です。
タイトルに「図鑑」とはありませんが、これも立派な図鑑の仲間、ということで、最後にこれも紹介しておきます。
【“文学少女、団地、はやぶさ……最近買ったおもしろ図鑑たち。”の続きを読む】
大阪書店レポート、今回は町の本屋さん3店をピックアップしましたので、それ以外はごくごく簡単に。
↑ジュンク堂書店難波店。同じビルの1階にあったコミック売り場が、別のビルに移転となっています。今回は時間がなくて、そちらは回れませんでした。
↑そのジュンク堂書店難波店からもっとも近いのが、なんばウォーク1番街にあるブックファーストなんばウォーク店。ジュンクのコミック売り場が、地下街からのアクセスという点でいうと、やや面倒な位置になった影響で、こちらのコミックの売上が伸びているとかで、扱い冊数も増やした、という主旨のことを聞きました。
↑同じなんばウォークにあるお店ですが、なんば駅をはさんでジュンク、ブックファーストとは、反対側、日本橋寄りにある、リブロなんばウォーク店。店長の筒井氏は、吉っ読仲間。久しぶりに再会をはたし、いろいろ情報交換してきましたよ。小規模ながら、ビジネスマンから女性客から、競馬関連客(近くにウインズがあります)まで、幅広いお客さんをカバーする町の本屋さん的たたずまいのお店。三省堂堂神保町本店のそれと比べるとはるかに小規模なものではありますが、レトルトカレーなどを並べたカレーフェアも開催中でした。
↑1階の壁際の棚の感じがいつ見てもすてきな、ジュンク堂書店千日前店は今回は写真なし。その近くにある波屋書房も、必ず訪問するお店です。店頭の手書きの案内がいい感じ。食関係の充実で知られる店ですが、レジの手前右側の平台を埋める演芸書の濃さもすごい。この3月に訪問したときの様子をこちらでふれています。
↑旭屋書店なんばCITY店。こんなお洒落な外観なのに、関西最大かつ特濃の鉄道売り場をもつという、ユニークすぎるバランスの同店。こんなふうなお洒落外観のお店になるずっとずっと前、高校生のころから個人的に大好きで出入りしているお店です。見た目はすっかり変わってしまいましたが、今でも、大阪書店回りのときには寄らずにいられないお店です。
お店のなかに、小規模な別のお店が入っているといった感じの鉄道売り場(右の写真のあたりが鉄道売り場。急いで撮ったら、ぼけぼけ……)は、そこだけあきらかにお客さんの層が違っていて、売り場の雰囲気が見るからに違うのがおかしい(笑)。『新文化』の9/27号に掲載の記事「オンリーワンの店作りで活路」で、同店の様子がくわしく紹介されています。売り場の写真のほか、店長の城崎さんも鉄道帽をかぶって登場しています。8面の大半を使った詳細な記事ですので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。
以上は、ミナミのお店。ここから、キタに移動します。
ブックファースト梅田店は、今回は写真はなし。1階文庫平台の階段積み(と、勝手に呼んでいるだけで、実際はどう呼称されているのかは知りません)が美しい同店。1階では、港の人のフェアが開催中でした。関西の旅先で、鎌倉の出版社の、それも、知り合いのいる小規模出版社のフェアに出会うなんて、それだけでうれしくなってしまいますよね。
↑何度も書いていますが、ぼくにとって、大阪の書店と言えば、この紀伊國屋書店梅田本店と、閉店になってしまった旭屋書店本店でした。超混雑がデフォルトみたいなお店なので、担当の方や知り合いに声をかけるのも大変です。一瞬も人の流れが途切れないので、写真もご覧の通りのわけのわからないものに……。でも、このぎゅーぎゅー感は、やっぱりいいんですよねえ。リニューアルで、せっせと通っていたころとはお店の様子は変わってしまいましたが、でも、今も大好きなお店です。
↑ぎゅーぎゅー、と言えば、逆に、訪問したのが月末の日曜だというというのに台風のせいで気の毒なぐらい静かだったのが、堂島の、ジュンク堂書店大阪本店。でも、おかげで、担当の方とはゆっくりじっくり話せましたし、店内もゆっくり見ることができて、それはそれで、よかったんですが、お店の方には気の毒でした。
↑そのジュンクのすぐ近く、堂島の地下街にあるのが、旭屋書店堂島地下街店。リニューアルされたことはこの空犬通信でも取り上げていますが、どんなふうに変わったか気になっていたので、見てきましたよ。
お店は、お洒落雑貨かコスメ関係のお店かと見紛うような、真っ白なイメージ。本は面陳多用、点数は少なめです。棚の分け方もユニークで、リニューアル前から広告関係など、クリエイティブな職業の方を対象としたような本が目立つなど、品揃えに特徴があるお店でしたが、それがさらに推し進められた感じ。「クリエイティブワーク」「冒険&ミステリー」「You Are So Beautiful」(店内でメモをとったわけではないので、うろ覚えです)といった、フェア棚とジャンル棚の中間みたいな感じの、特徴的でユニークなジャンルガイドが見られます。
旭屋書店は、東梅田の近くにも地下街店がありますが、通常の一般書店タイプのそちらとは、まったく違うコンセプトのお店になっています。同チェーンで同じ地下街立地のお店との差異化を図りつつ、そばの超大型店ともまったく違う路線で、ということで考えられたお店造りなんでしょうか。今後が気になるお店です。
↑雨なのに、というか、雨だからなのか、1階付近は多くの人でにぎわっていた、丸善&ジュンク堂書店梅田店。さすがに、上のほうの階は、堂島の大阪本店同様、やや静かめでした。
↑スタンダードブックストア。台風で午後の予定がとんでしまい、時間のできた日曜日のお昼に行ってみたら、MJ同様、雨を避けてきたお客さんたちでしょうか、席がいっぱいで座れませんでした。雨の落ち着いた夜に出直してみたら、今度はゆっくり座れたので、写真のカレーとビールを堪能してきましたよ。
【“大型書店他を簡単に……大阪書店レポート 追記”の続きを読む】
大阪書店回りレポート、第3回の今回は、長谷川書店を紹介します。(ちなみに、今年の3月にも訪問しているのですが、そのときは店内の取材ができず、写真なしのレポートしかあげられませんでした。前回のレポートはこちら。)
長谷川書店は、梅田と河原町を結ぶ阪急京都線の水無瀬駅が最寄り駅。2店あって、水無瀬駅前店は、改札を出て右斜め前あたり、駅の構内にあります。島本店は改札正面の商店街「島本センター街」を抜けたあたり。水無瀬駅前店が30坪、島本店46店。
まずは水無瀬駅前店の様子からご紹介します。(いつものように、店内の写真はすべてお店の方の許可を得て撮影したものです。)
↑水無瀬駅前店外観。
↑レジ側から店内を見渡した様子。写真には写っていませんが、『テルマエ・ロマエ』のポスターのある棚の左奥に引っ込んだスペースがあって、ゲーム売り場になっています。
↑雑誌の棚。右は壁際に置かれた小さな棚。
↑レジまわり。雑誌や単行本の新刊、フリーペーパーなどが、一見、脈絡のない感じで集められていて、不思議な感じのスペースになっています。東京の往来堂書店ならともかく、この規模の町の本屋さんで、特等席と言えるレジのこの場所に、ミロコマチコさんの『オオカミがとぶひ』と『ホロホロチョウのよる』を並べているお店は、そんなにないでしょう。
↑店内中央から入り口側を振り返ると、入り口左側は、新刊単行本を集めた棚に、テレビ雑誌などのささったラックと、ふつうの売り場なんですが……。
【“「個性」と「ふつう」のバランスの妙、長谷川書店……大阪書店レポート その3”の続きを読む】
大阪書店回りレポート、第2回の今回は、隆祥館書店を紹介します。
隆祥館書店、業界では有名なお店ですよね。何がどう有名なのか、というところから書いてると、ただでさえ長い記事が大変なことになりそうなので、関連記事をあげておきます。たとえば、「お客様を知る力は日本一!の書店員」(2011/8/11 全国書店新聞)、「〈本の舞台裏〉お客知る力は日本一」(2011/7/31 朝日新聞)、「座談会・きょうから取り組む雑誌販売のメンテナンス 」(2009/07/01 全国書店新聞)。
こんなふうにがんばっている町の本屋さんに興味がなかったわけではもちろんないのですが、先にも書いたように、どうしても書店回りは仕事の用事優先で、限られた時間では、キタとミナミの主要店を回るので精一杯、この隆祥館書店のように、最寄り駅に他のついでがないお店は、なかなか行くチャンスが作れなかったのです。今回は、大阪の書店員仲間が案内・同行してくれるというので、この機会を逃す手はないということで、行ってきましたよ。
隆祥館書店と言えば、この方、営業部長の二村知子さん。二村さんにお話をうかがいながら(後述の通り、うかがいながら、というほどにはお話はうかがえなかったのですが、それはともかく)、店内を見せていただきました。(いつものように、店内の写真はすべてお店の方の許可を得て撮影したものです。)
↑お店の外観。雨が降っていたので、傘をさしながらの撮影だったために、このような残念な写真に……。これでは、お店の外観がわかりませんね。
↑お店の側面には、こんな貼り紙が。写真、拡大すれば読めるとおもいますので、ぜひ読んでみてください。どのようなお店なのか、が、とてもよくわかると思います。
お店は15坪。店内をただ見るだけなら、数分もかからないような広さです。でもね、これがすごい。
土曜の夕方。折しも降り出した雨のせいもあってか、それともふだんからこうなのか、街にそれほど人通りはありません。なのに、とにかくお客さんがひっきりなしにやってきます。二村さんにはいろいろとお話をうかがいたかったのですが、なにしろ、客が途切れないので、なかなか声すらかけられません。我々が滞在していたのは半時間ほどだと思いますが、誇張抜きで、いっときもレジがあかないのです。次から次にやってくるのは、みな地元の常連さんと思われる方々で、年輩の方が多いようです。そして、ほぼ全員が必ずおしゃべりしていきます。
もちろん本の問い合わせや注文などの話が多いようですが、なかには世間話がメインの方も。二村さんと言えば、とにかくたくさんのお客さんの顔と買う本・雑誌が頭に入っている、地元密着型商売の徹底で知られる方ですが、我々が店にいたわずかな時間にも、そうした接客力は存分に発揮されていました。棚や平台をまったく見ることもなしに「あれ、ある?」といった感じで入ってくるお客さん(いますよね;笑)に、「おばあちゃん、これでしょ?」と即答する場面も。お客さんが二村さんを信頼しきっているのがわかります。おそらく、こんなやりとりが一日に何十件もあるのでしょう。傍でじゃまにならぬようにやりとりを見聞きさせていただきましたが、いやはや、このやりとり、この感じ、ちょっと感激してしまいました。
↑レジの奥の棚の様子です。写真ではわかりにくいと思いますが、定期や注文の取り置きと思われる本がぎっしり。くどいようですが、たった15坪ほどのお店ですよ。その規模のお店のレジで、これだけたくさんの取り置き本が並んでいるのを目にすることは、まずありません。同行してくれた現役書店員2人も、びっくりしていました。
↑入り口正面の棚。「秋らしい飾りつけにした」という二村さん。棚の上のほうには、大型本かつ高額本の『世界の夢の本屋さん2』が2冊面陳になっていたり、お隣にはこれも大きくて高額の『大阪市今昔写真集』が並んでいます。ただ、そのような豪華本や見栄えのいい本ばかりを集めた棚になっているかというと、ぜんぜんそんなことはなくて、硬軟とりまぜたバラエティに富んだセレクトになっているのがわかります。
↑レジまわり。お客さんへの告知・案内に、新刊に、フリペにチラシにと、わずかな隙間も作らないという感じで、情報量ぎっしりの空間になっています。おしゃべりするお客さんはみな、このレジ前に長時間滞在していましたから、ここに情報を集中させるのは当然なわけですね。写真には写っていませんが、低いところにも本が置かれていて、荷物を手にしようと目線を下にやると別の本が目に入る、といった感じの工夫もされています。
↑町の本屋さんですから、夕方や休日には子どもや若者も来るのでしょう。コミックの新刊情報が手書きでこんなふうに張り出されていました。
↑雑誌の棚。男性向け女性向けに大きく分けられ、背中合わせになっています。
↑左は文庫の棚。点数自体はもちろんそれほど多くはないのですが、ご覧のように、著者の名前のプレートがぎっしり。著者名がほとんどですが、それらに混じって、手前には、「女性の生き方」といった表示も見えます。右は文芸書の棚。
↑平台あれこれ。角をうまく使った平台には、隙間を利用して、POPや記事のコピーなどが多めに用意されています。ただ、本の上に飛び出るように置かれてあるものが少ないせいか、実際の様子を見ると、うるさい感じはしません。右は、「大阪ではたぶんここにしかないかも」と二村さんのいう『羅針盤の針は夢に向け』。モスバーガーの創業者の方の本なのだとか。
↑児童書に雑学に図鑑にと、バラエティに富んだセレクトの、おすすめ本の棚。おすすめ本には手書きPOPも。ここにも『世界の夢の本屋さん』がありますね。あの大型&高額本、いったい何冊仕入れたんだろう(笑)。
【“これぞ町の本屋さん、隆祥館書店……大阪書店レポート その2”の続きを読む】
仕事で書店回りをしようと思うと、どうしても大店中心、同じお店を回ることになってしまいます。そういうお店にも、もちろん新しい発見はたくさんあるのですが、レポートの内容もどうしても似たものになってしまいます。今回の大阪書店回りレポートは、初めて訪問したお店、過去に十分に紹介できなかったお店を中心に、ということで、以下の3店をピックアップしたいと思います。いずれも、「町の本屋さん」です。(かっこ内は最寄り駅)。
まずは、清風堂書店から。同店は、梅田の地下鉄・谷町線の東梅田駅のすぐそばにあります。2フロアで、地下1階にコミックの売場(75坪)があり、改札のある地下2階にそれ以外の売場(110坪)があります。
地下鉄駅近くの100坪強のお店ということで、一見、よくある一般新刊書店に見えるんですが、中に入ると、規模の割りにやけに多めにつけられたジャンルガイドが目に飛び込んできます。それぞれのプレートは目立つように棚から大きく飛び出していて、その文言も、他書店では見かけないようなものがいくつもあります。店内を一周すると、何やら棚の感じが違うこと、非常に特徴的な品ぞろえであることがすぐにわかります。
なんといっても同店の品ぞろえを特徴的なものにしているのは、教育関連書の充実です。お店全体の3分の1ぐらいのスペースがあてられている感じでしょうか。とにかく、この規模のお店で、これだけ教育関連書をそろえているお店はちょっと見たことがありません。「教育」の下位ジャンルとして、「国語」「体育」など、各教科に分かれているのは当然として、それ以外にも、こまかな下位ジャンルに分けられていて、しかも、それぞれに複数の本が並んでいます。「学級劇の脚本」といった(素人の目には)変わったジャンルプレートまで立っています。
↑写真が暗くてわかりにくいと思いますが、このようなフロア構成になっています。
レシートにも《教育・社会科学など一味ちがった品ぞろえを心がけています》とありますが、まさにお店のうたい文句通りの品ぞろえになっているというわけです。「社会科学」がどのように充実しているのかを語るにはこちらの知識不足でなんとも言えないのですが、教育同様、こちらにもまずよそで見かけないようなジャンルプレートや本が並んでいます。「民主文学」なんて棚もあるんですよ。こんなジャンルプレート、初めて見ましたよ。
教育・社会科学以外の棚もなかなかユニーク。この規模と立地でこんなに置いて大丈夫かな、というぐらい、岩波文庫・岩波新書がずらり、その隣には講談社やちくまの学術系文庫がたくさん並んでいます。で、お店全体がマジメ一方の品ぞろえなのかと言えば、そんなことはなくて、「サブカル」の棚にもあやしげな本がずらりと並んでいますし、文庫棚を見れば、官能文庫なども多め。時代小説が多いことも合わせると、年輩男性のお客さんが多いのでしょうか。
「本の本」の棚にもしっかりスペースが割かれていて、『書店ガール』など書店を舞台にした小説からノンフィクションまでいろいろ。「本の本」の隣は詩歌や落語の棚で、これらが官能文庫の裏側なのが、なんだかいい組合せ(笑)。
ちなみに、「本の本」の棚前の平台では、先日紹介した佐野衛さんの本『書店の棚 本の気配』が平積み(ただし1冊)になっていました。今回の大阪・京都書店回りでは、たくさんのお店を回りましたが、大型店ならともかく、この規模の書店で、いくら全国的に有名なお店とは言え、地元のお店ではない書店の元店長さんが書いた本がこんなふうに並べられるなんて、まずないことでしょう(他のお店だと、京都のFUTABA+でも面陳になっていました)。なかなかうれしくなるような話ではないですか。
雑誌コーナーも、一見ふつうの雑誌売場に見えますが、映画雑誌の平台を見ると、映画秘宝のムック、それも最近出たものが全部ずらりと並んでいたりと、こちらにもこまかなこだわりらしきものが見られます。
コミックは独立した売場になっていて、1つ上の地下1階にあります。地下2階の8割程度の広さがすべてコミック関連で埋められていて、かなり充実した売場になっているように見えます。コミックの品ぞろえについてはこちらの知識が足りなくてよくわからないのですが、地下街にある100坪台の規模のお店で、メインの売り場のほかに、これだけの売場を確保している例は、なかなかないのではないでしょうか。
↑こちらがコミック売り場。階段をあがってすぐですが、店内でつながっているわけではありません。
毎回行くたびに気になっているお店なので、ちゃんとお店の人に断って取材させてもらい、店内の写真をお見せできればいいのですが、いつ行っても、おそらくはアルバイトの方と思われる若い方しか店頭にいないので、お話をうかがったり、撮影させてもらったりできずにいるのが残念。
場所的に、梅田の地下街の少しはずれで、誰もがふらりと通るような場所でないのがちょっと残念なぐらいに、特徴のあるお店です。本好き書店好きのみなさんが、梅田近辺で書店回りをする際は、忘れずに、地下鉄駅・東梅田の奥のほうまで足を延ばして、同店の売場をチェックしてみてください。
ちなみに、次に紹介する隆祥館書店は、同じ、地下鉄谷町線の駅が最寄りですから、セットで訪問されるといいでしょう。
↑清風堂のブックカバー。
仕事のついでがあったので、大阪・京都の書店をいろいろ見てきましたよ。ちょうど台風のときにあたってしまって、一時はどうなることかと思いましたが、日曜に少し降られはしたものの、それほどの影響はなく済みました。
仕事の用事が中心だということもあって、大阪・京都の書店回りは、いつも同じところになりがちなんですが、今回は初めてのお店、それも以前からずっと気になっていたお店も見てくることができました。近日中に、レポートを上げる予定です。
土曜の夜は、知り合いの書店員さんたちが一席もうけてくれたので、店頭ではなかなかゆっくりできない本や書店の話もたくさんできました。みなさん、ありがとうございました。
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