今日は、九段下、武道館のすぐそばにある科学技術館で開催されている「スーパーフェスティバル59」に駆けつけるつもりだったんだけど、寝坊してしまったので(どうでもいいことなので、ちっちゃな字にしておくけど、『ウルトラマンA』が40周年記念ということで、当時のTAC隊員が全員集合、トークショー&サイン会を行うというのです! 昭和特撮者としてはこれを逃すわけにはいかない……はずだったのに逃してしまった;泣)、急遽予定変更、両国の江戸東京博物館へ。開催中の企画展「ザ・タワー 都市と塔のものがたり」を観てきましたよ。
展示の詳細については、サイトをご覧ください。本企画展は5/6まで。紹介がぎりぎりになってしまったので、塔・タワー・高層建築が好きな方は、全速力で両国に駆けつけてください。
キルヒャーのバベルの塔で始まり、東京スカイツリーで終わる展示は、凌雲閣(浅草十二階)、エッフェル塔、通天閣、東京タワーなど、パリ・東京・大阪の3つの都市の塔の歴史が中心で、世界のタワーを網羅するようなものではありません。その意味では、現代のタワーマニアを満足させるようなものではないかもしれませんが、ぼくのような、「昭和」+「東京」に興味のあるオールドタイマーにはぴったりの内容でした。
企画展は絵や写真など紙モノが中心でしたが、怪獣たちに倒される東京タワーの動画をエンドレスで流す小さなモニターも用意されていて、ちょっと笑ってしまいました(足を止めて観ていて、ふっと気づいたら、一緒に画面を観ていてたのは、右も左も小学生;笑。ちなみに、流れていたのは、ガメラシリーズのいくつかと、『ウルトラQ』の「ガラモンの逆襲」。ウルトラQはなんと、総天然色のほうでしたよ)。
塔好きは、常設展示室に展示されている、「太陽の塔 黄金の顔」のチェックもお忘れなく。
元の塔のサイズを考えれば当然ではあるのですが、間近で見ると、かなりの迫力です。「太陽の塔」好きとしては、これも一緒に見られて、大満足です。
江戸東京博物館、展示自体は、1時間もあればチェックできますが、本好きは、ぜひ時間に余裕を持って、図書室とミュージアムショップのチェックをお忘れなく。江戸東京関連の資料が充実した図書室は蔵書こそ、それほどの数ではないですが、テーマが絞り込まれているので、江戸東京モードになっている頭で眺めると、気になる本がいくつも見つかりますよ。
上に、企画展の関連図書リストの写真をあげておきましたが、図書室でこれらの実物を手にできますから、企画展で興味覚えたテーマがあったら、まずここでチェックするのもいいでしょう。「スカイツリー」や「タワー」がらみのフェアを考えている書店員さんの参考にもなりそう。1階のミュージアムショップにも江戸東京関連本がずらりと並んでいます。
ミュージアムショップのほかに、企画展の出口にも、ショップが出ています。こちらは企画展の関連グッズを集めたところで、タワー関連の書籍や図録などはこちらに。また怪獣の話で恐縮ですが、動画を流している関係なんでしょうか、タワー関連書に混じって、桜井浩子さん『ヒロコ ウルトラの女神誕生物語』『ウルトラマン青春記 フジ隊員の929日』、佐原健二さんの『素晴らしき特撮人生』(いずれも小学館)、『キャラクター大全 総天然色 ウルトラQ』上下(講談社)、「おとなりのかいじゅう」らが並んでいました。
無理やり本の話をもう少し。
【“タワー・高層建築好きにはおすすめ……江戸東京博物館の企画展「ザ・タワー」は5/6まで”の続きを読む】
4/20(金)に始まった不忍ブックストリート week、本日4/28(土)は第14回一箱古本市でしたね。今日は用事があって行けなかったのですが、5/3(木)もありますから、そちらには駆けつける予定です。
さて、不忍と言えば、往来堂書店。昨年11月に吉祥寺で開催した往来堂書店15周年お祝い会のレポート記事で制作を予告しておきながら作業が遅れていた15周年記念小冊子、本日、とうとう完成しました。じゃーん。(まだ手元に完成品が届いていないので、往来堂書店さんのツイッターから写真を拝借。)
A5判並製16ページ、まさに小冊子です。内容については、往来堂書店のサイトの文章を引かせてもらいましょう。
《棚を「編集」する……その個性的な品揃えで、「文脈棚」ということばを広めたことでも知られる千駄木・往来堂書店。このユニークなお店の姿を記録に残しておきたいと、同店に出入りしている編集者がお店の今の姿を写真を撮り、まとめたのがこの小冊子。写真は素人レベルのものだが、特徴的な並べ方の棚や名物フェア、書皮など、往来堂書店のお店の様子が、同店を訪れたことのない人にもよくわかる1冊になっている。》
わたくし空犬がお店の写真を撮らせてもらい、それをまとめた写真中心の内容になっています。写真は素人レベルのものではずかしいかぎりですが、それを補ってあまりある強力なヘルプを、今回は得ることができました。
まず、イラスト。往来堂書店には店内図(フロアマップ)がなかったんですが、企画時に、それを入れられないかと提案してみたんですね。こちらのイメージしていたのは、ただのフロアマッではなく、『センセイの書斎』の内澤旬子さんや『東京古書店グラフィティ』の池谷伊佐夫さんのような、店内を上からのぞきこんだような、そして、棚の様子までわかるようなもの。ただ、制作費のことを考えると、こうしたプロの方々に頼むのは難しい。
ところが、なんと、そういうイラストを描ける方がお店にいるというんですね。無理を言ってお願いして、無事に掲載されたのが、冊子の冒頭に載っている店内図。イラストを手がけたのは、お店のスタッフの尾仲由布子さん。とてもすてきなイラストで、お店にも貼り出されると思いますので、ぜひこの冊子か、お店で往来堂書店の店内図をチェックしてみてください。
エッセイは3人の方に寄稿いたきました。お一人は、不忍ブックストリート代表で、往来堂書店にも縁の深いライターの南陀楼綾繁さん。そして、往来堂書店の初代店長、安藤哲也さん、現店長の笈入建志さん。みなさん、お店への思いが伝わってくる、すてきな文章を寄せてくださいました。
紙面のデザインは、往来堂書店の日比藍子さんが引き受けてくださいました。イラスト、エッセイ、デザインと、冊子の制作にご協力くださったみなさまに、この場を借りて、あらためてお礼申し上げます。
今回の冊子ですが、お店の意向というか提案もあって、販売することになりました。往来堂書店で、今日から販売となっています。通販も受け付けていて、メール便(80円)で郵送可とのことです。くわしくは、往来堂書店のサイトの、冊子紹介ページをご覧ください。
往来堂書店をご利用になっているみなさま、また、同店に出入りされている出版関係のみなさま、遠方でお店には行けないが興味があるという本好き書店好きのみなさま、この『千駄木の本屋さん 往来堂の十五年』、どうかよろしくお願いします。
先の記事の続きです。
●閉店
- 5/27 すばる書店/TSUTAYAビビットスクエア南船橋店
地図を見てみると、このビビットスクエア南船橋は、「ららぽーとTOKYO BAY」の隣接商業施設のようです。その1階に入っているのがこのすばる書店。ちなみに、お隣「ららぽーとTOKYO BAY」には新刊書店としては、くまざわ書店が入っています。
ふだんは新古書店の開店閉店は取り上げていませんが、これについてはふれておかないといけないでしょう。ブックオフの複合大型店「BOOKOFF SUPER BAZAAR」が、このビビットスクエア南船橋内、3階にできるようです。「4/26【開店】BOOKOFF SUPER BAZAARビビット南船橋」(開店・閉店)。
近くに新古書店ができるだけでも、新刊書店にとっては影響大なのに、すばるにとっては同じ施設内、くまざわにとってもすぐお隣にできるわけで、しかも相手は《本・CD・DVD・ゲームはもちろん、洋服・スポーツ用品・ベビー用品・ブランドバッグ・腕時計・トレカなどいろんなモノが大集合!その数なんと約55万点。まさに日本最大級のブックオフ!!》などとうたっている超のつく大型店(資料によれば、1474坪)ですからね。
すばるの閉店が、このブックオフの出店によるものなのかどうかはわかりません。でも、傍目には、超大型新古書店が新刊書店を追い出したような格好に見えてしまうのはしかたないですね。
別に新古書店が全部ダメだというつもりはありません。あんまり好きではないけれど、利用することだってあります。商売でやってることですから、法に触れないかぎり、どこに出店しようが、出店者の自由でしょう。でも、それにしたって、こんな出店はちょっとどうかなあと、やっぱりそんなふうに思ってしまうんですよ。今回は複合店ですが、それでも、やはり取り扱い商品の中心が「本」であることは間違いないわけですよね。
で、その「本」=商品をどうやって確保しているのかというと、新刊として新刊書店で買われたものを買い取っているわけです。流通サイクル上は、商品の提供者というか補充元というか、そのような存在でもある(ぼくが、書店をそのような存在だと思っているわけではもちろんなく、あくまで、新古書店という業態からすれば、そのように見えるはずだ、という意味です)新刊書店を、自分たちの出店によって圧迫するようなことでいいのだろうかと。新刊書店の疲弊は、将来的に、確実に自分たちにとってもダメージになるわけで、そんなことは当然わかっているはずなのになあ。
念のため繰り返しますが、すばる書店の閉店とブックオフの出店の因果関係はわかりません。ただ、誰がどう考えたって、影響がゼロのはずがない。こういうニュースや、多摩センターのように、新刊書店の跡地(で、しかも近隣にいくつも新刊書店があるエリア)に新古書店が出店したり、新宿や赤坂のように新刊書店の跡地に家電量販店が入ったりといったニュースを見聞きするたび、とても複雑な気分にさせられるのです……。
1週間ほど前にまとめたばかりですが、重要な案件を含む開店・改装・閉店関連ニュースがたまってきたので、まとめます。
●オープン
- 4/20 文教堂湘南とうきゅう店(220)
- 4/24 Brooklyn Parlor HAKATA(127)
- 4/25 QK(ヴィレッジヴァンガードイオンモール船橋QK店)
- 4/26 未来屋書店イオン福津
- 4/26 SPBS annex(7)
- 5/17 スクラム鏡石店(80)
- 5/18 夢屋書店ピアゴ清水高橋店(113)
うち、気になるのは、ブルックリンパーラー、QK、SPBSの3店。いずれも、純粋な新刊書店とはちょっと違う業態のお店ですが、本好き書店好きの関心を引きそうなものばかりなので、一緒に取り上げます。
ブルックリンパーラーはブルーノートジャパンがプロデュースするブックカフェ&ダイニングバーで、東京近郊にお住まいの方なら、新宿マルイアネックスの地下に入っているお店を利用したことのある方もいることでしょう。今回の博多は2号店。関連記事はこちら。「ブルーノートプロデュースのカフェ、博多に九州初出店へ」(4/24 博多経済新聞)。
お店について、サイト、Brooklyn ParlorHAKATAには、こんなふうにありました。《あなたにとって新しい本や音楽に出会える場所。そして、雰囲気を愉しみながら、食事、カフェ、お酒を味わえる場所が、ここブルックリンパーラーです。》《2012年の春。満を持しての2号店目を博多の街にオープンさせます。多くのミュージシャンや芸術家を生んできた福岡の磁場。ここに、また新しい化学変化を誘発するため美味しいビールと食事、ぐっとくる音楽と本を取り揃えてみなさんをお待ちしています。》
店内の様子や、気になる本の品揃え他については、博多経済新聞の記事を引きます。《ニューヨークのブルックリンをイメージし、「音楽、本、食の融合」をテーマに据えた同店。インテリアデザインは「マンダリンオリエンタル東京メインダイニング」や「新丸ビル」などを手掛けたインテリアデザイナーの小坂竜さんが担当したほか、ブックディレクターの幅允孝さんが、九州の著名人の本や音楽やライフスタイルなどをテーマに同店のために選んだ本約1200冊を設置している。店内奥にはライブができるステージなども設けた。》
過去の書店レポート記事で取り上げたことがありますが、博多と言えば、大型店から地域密着型のお店まで、多数の書店がしのぎを削る書店激戦区。地図で見ると、今回のお店は、天神エリアとはちょっと離れているようですし、なにより、一般の新刊書店とも営業スタイルも違いますから、競合云々の話にはならないと思いますが、それでも、地元の書店さんや本好きのみなさんにとっては気になる存在になることは間違いありません。新宿のお店は利用したことがあるのですが、博多のお店も、ブックオカのときなど、次に博多に行く機会があったら、ぜひ訪ねてみたいものです。
QKは聞き慣れない名称ですが、ヴィレッジヴァンガードの新業態とのこと。イオンモール船橋のサイトの表記では「QK」と、ヴィレッジヴァンガードの名がつかない単独のものになっていて(VVのサイトでは、上のかっこ内の表記)、カテゴリーは「キッズ雑貨」、お店の説明には、《「あそべるえほん屋」をコンセプトに、本や雑貨などおもちゃ箱のようなお店です》とあります。書籍と雑貨のバランスがどのような感じなのかはわかりませんが、新刊書店・専門書店の一種にくくっていいでしょう。
イオンモール船橋は4/25、千葉県船橋市にオープンした大型ショッピングモール。新刊書店としては未来屋書店が入り、アニメイトも入っていますから、広義の書籍関連ショップが3店も入っているわけですね。施設の紹介記事は、こちら。「イオンモール船橋開店」(4/26 読売新聞)、「イオン、シニア対応のSC開店 サービスを拡充」(4/25 東京新聞)。
後者の記事では、はっきりと「シニア対応」であることがうたわれていますね。代官山蔦谷もシニア向けをうたっていますし、後述のヒカリエも、(記事にある対象年齢層は20~40代で、「シニア」とは言えませんが)「大人」向けであることを前面に出しています。「シニア対応」はこうした大型商業施設のデフォルトになっていくんでしょうか。こうした商業施設のターゲットのシフトは、中に入る書店の品揃えにも大きく影響しそうです。
上のリストには入れませんでしたが、ヴィレッジヴァンガードは、この春だけで、ほかにも複数の新規店情報がありますが、件数が多すぎてアップデートがついていけませんので、今後は、今回のような新業態や、他店との競合関係、立地など、新刊書店動向的に興味のあるものだけ取り上げていくことにしたいと思います。同チェーンの新店情報は、こちら。
次の「渋谷ヒカリエ」はあちこちで話題になっていますね。オープンは本日4/26。東急文化会館の跡地にできた、地上34階、地下4階の大型複合商業施設で、サイトの説明によれば、《都内初のプラネタリウムや画期的な大劇場「パンテオン」をはじめとした複数の映画館などで構成され、最先端のライフスタイルを提案してきたかつての東急文化会館のDNAを引き継》いでいるとあります。関連記事はたとえばこちら。「大劇場、希少店舗を売りに… 渋谷ヒカリエ、高級感で「大人」に照準」(4/25 Sankei Biz)。 【“Brooklyn Parlor、QK、SPBS、シェ・モワ……新刊書店の開店・閉店いろいろ”の続きを読む】
紀伊國屋書店本町店で発行されていたフリペ「文芸と文庫通信」。この空犬通信では何度も紹介してきましたし(たとえば、こちらとかこちら)、『日販通信』のフリペ特集でもふれているように、大好きなフリペの1つだったんですが、残念ながら、担当されていたHさんの退職で休刊。その後、Hさんが個人的に作った「続」が出たこともありましたが、定期刊行とはならず、なかなか続き、最新号が読めない状態が続いていました。
先日、そのHさん=青衣茗荷さん(@aoi_myoga)から、うれしい連絡がありました。タイトルを「青衣茗荷の文芸通信」にあらためて、ふたたびフリペを作り始めたというのです。で、第一号が完成したから見てほしいと。青衣茗荷さん本人がご自分のブログでも早速報告しているので、くわしくはそちらをどうぞ。「日本酒からジンに切り替わるときが、きっと春。」(4/25 青衣茗荷通信)。
本日、そのリニューアル第一号が手元に届きました。
↑こちら(左)が表紙。A3横置き、4つ折りのスタイルも、描き文字やデザインの感じも、すべて以前のテイスト、そのままでちょっとうれしくなります。そのまま、と言えば、本体同様に凝りに凝った封筒も、「文芸と文庫通信」を送ってもらっていたころと同じで、ますますうれしくなってしまいましたよ。
これはぜひ実物を見てほしいので、中身の写真はあえてあげずにおきます。青衣茗荷さんは、今後このフリペを定期的に作っていくそうで、置いてくださる書店さんを探しているそうです。もちろん、古書店、ブックカフェなど、新刊書店以外のお店も大歓迎です。このすてきなフリペを置いてくださるという書店さんがありましたら、青衣茗荷さんに直接か、空犬までご一報ください。青衣茗荷さんに直接連絡される際は、ツイッターか上の表紙写真に載っているアドレス宛にお願いします。
実物を見てみたいという方は、空犬の手元に数部余裕がありますので、ご一報ください。西荻窪のbeco cafeのフリペコレクションにも加えてもらおうと思っていますので、近日中にそちらでも読めるようになると思います。
今年の6月に開催を予定している、本と書店と音楽のイベント「ブックンロール」、トークの部、ライヴの部、それぞれの出演者が確定、内容もほぼ決まりましたので、あらためてご案内します。
ブックンロール Book'n'Roll 2012
~上を向いて歩こう~
日時:2012年6月29日(金)
OPEN 19:00 START 19:30(~22:30)
場所:ルースター・ノースサイド(東京・荻窪)
杉並区上荻1-24-21-B1 03-5397-5007
http://ogikubo-rooster.com
チャージ*:1000円+ドリンク500円
出演:
(トークの部)
淺井 康雄(ブックポート203緑園店)
上田 砂由里(BOOKS隆文堂)
長谷川 仁美(BOOK EXPRESSディラ大宮店)
花本 武(BOOKSルーエ)
比嘉 栄(三省堂書店新横浜店;司会)
新井 見枝香(三省堂書店有楽町店)
※新井さんは都合により、今回は出演できなくなりました。
(ライヴの部)
長谷川バンド(BOOK EXPRESSディラ大宮店長谷川さんのバンド)
C調ボーイズ(夏葉社島田さんのバンド)
みぎたとしき(ソロ)
ブックスピストルズ(「吉っ読」のバンド)
トークの部「ある本をどのようにして売るか」。1冊の本を課題図書としてピックアップ、それを、現役の書店員であるトーク出演者4人(比嘉さんには司会をお願いしますので、発表者は4人になります)が、どのように売るか、POPやフリペ、多面積みやフェア、独自のディスプレイなど、それぞれが得意な手段をフルに使って拡販のプランを組み立て、それを発表するというものです。
拡販の方法は、とくに制約をもうけず、各出演者が得意な方法で、ということにしました。また、課題図書の扱いにも幅をもたせました。その1冊だけを売る案でもいいし、何かと組み合わせて売るのでも、また、課題図書を中心にしたフェアを組むのでもかまわない、というわけです。
1冊の本が、店頭でどこに置かれているか、どんなふうに置かれているか、何と一緒に並べてあるのか、平積みなのか、面陳なのか、棚差しなのか……そうした本の「居場所」や扱いによって、お客さんへのアピールがまったく違うものになることは、この空犬通信をご覧になっているような本好き書店好きのみなさんには説明不要でしょう。同じ本の売り方に、書店員によって、お店によって、どんな違いが出るのか、これは楽しみですよねえ。書店員の販売テクニックの神髄を見られるかもしれないということで、本に関わる商売をしている人にとってはもちろん、一般の本好き書店好きのみなさんにとっても、またとないチャンスだと思います。
先日、トークの出演者のみなさんと、トークに関する打合せをもちました。そこで初めて出演者の方が顔合わせ、トークの内容や段取りについて確認、詳細をつめたのですが、いやはや、この人たち、まぢですごいです。自分で企画しておいてなんですが、今回の出演者のみなさんは強力ですよ。まだ本番じゃないのにもったいないという感じがするぐらい、おもしろい話が次々に飛び出し、その打合せのときのトークを記録しておきたかったぐらいです。当日は、ほんとにおもしろい話が聞けると思いますので、みなさん、楽しみにしていてください。
イベントは、ライヴの部、トークの部の2部構成です。昨年は、ライヴとトークを交互にしましたが、今回は前半がライヴ、後半がトークとなります。19:30に開演、最初の1時間強がライヴの部、で後半、21時過ぎからの1時間強がトークの部となります。
トーク、ライヴ、どちらかだけ見たいという方は、だいたい上の時間に合わせてお越しください。ただ、席数があまりありませんので、途中から来られた場合、立ち見になる可能性がありますので、その点はご了承ください。
終演は22:30ごろの予定です。イベント終了後、お店が閉店となる24時までは、ドリンクタイムとなります。出演者と交流したい、わいわいお酒が飲みたいという方は、ぜひイベント終了後も残って、一緒にお酒を飲みましょう。
ドリンクはイベント中もイベント終了後もキャッシュオンデリバリー方式になります。お店のメニューにはフードもありますが、テーブルがなく、人数も多いため、食事はしづらいかもしれませんので、おなかがすいちゃいそうな方は、簡単に食事を済ませてからお越しください。
今回も、昨年同様、予約などは必要ありませんので、当日、直接会場にお越しください。
それでは、まだ少し先ですが、6/29(金)、荻窪にて、ブックンロール出演者+スタッフ一同、本好き書店好き音楽好きのみなさんのお越しを心からお待ち申し上げております!
【“ブックンロール4、書店員トークの出演者が決まりました!”の続きを読む】
網羅性も速報性も期待されていない弱小書店ブログではあるんですが、それでも一応、新刊書店の情報を追いかけている身としては、開店閉店情報をまとめた直後に気になるものが続けて判明してしまうと、ふれずにいるわけにもいいかないなあ、という気になってしまいます。別に、誰に頼まれているわけでも、期待されているわけでもないことは十分承知のうえ、なんですけどね(苦笑)。というわけで、数は少ないですが、補足記事をアップします。
- 4/19 【オープン】芳林堂書店鷺ノ宮駅店
- 4/25 【閉店】書原本郷店(49)
- 4/18 【オープン】Tokyo's Tokyo(51)
- 5/ 7 【オープン】くまざわ書店日野店(115)
- 5/24 【オープン】ヤマト屋書店仙台三越店(350)
芳林堂書店鷺ノ宮駅店は、規模などの詳細はわかりませんが、西武新宿線鷺ノ宮駅3階にできるお店。4/17オープンと告知されていたのが2日延期になったようです。鷺ノ宮は書籍の扱いのあるTSUTAYAもありますが、ちょっと離れてますから、いちばん近い競合店だと、鷺ノ宮駅北口側の鷺乃書房でしょうか。地元の本好きにはうれしいニュースでしょうね。
書原本郷店については、開店直後に、こんなレポートを書いています。そちらに書いた通り、書原らしい、とてもいいお店だった印象がありましたので、2年もたたぬうちに閉店となってしまうとは、本当に残念です。
アカデミックな客層の期待できる街で、駅からそんなに離れているわけではない場所の路面店で、近隣に大型店もなく、立地も悪くありません。品揃えには個性がありながら、ふだんづかいのお店としても使いやすい、コンパクトなお店だったのになあ。こういうお店がやっていけないのだとすると、書店応援派としては、悲しくなってしまいます。
Tokyo's Tokyo(トーキョーズ トーキョー)は、原宿の神宮前交差点にオープンした商業施設「東急プラザ表参道原宿」内、5階にできたお店。関連記事を2件、あげておきます。「漫画・アニメがテーマの編集型雑貨店「トーキョーズ トーキョー」、東急プラザ表参道原宿に」(4/14 シブヤ経済新聞)、「東急プラザ :表参道原宿に18日オープン マンガがテーマ「Tokyo’s Tokyo」など」(4/16 毎日新聞)。毎日の記事には、写真特集もあり、店内の様子がたくさんの写真でたしかめられますので、そちらもチェックをお忘れなく。
どのようなお店なのか、が気になるところですが、しぶや経済新聞の記事には、《漫画・アニメ文化をテーマにした編集型の雑貨店》で、《同店の漫画はブックディレクター幅允孝さん(BACH)が》担当した、とあり、毎日の記事には、《アニメやマンガをコンセプトとした雑貨&書店》で、《ブックディレクターの幅允孝さんがマンガや書籍》をセレクトしたとあります。書籍の扱いがあるのか(毎日の写真特集を見るかぎり、マンガ以外の書籍も置かれているようですね)、「書店」と呼んでもいいお店なのかについて、微妙な違いがありますが、ヴィレッジヴァンガードに代表される雑貨などを一緒に扱う広義の新刊書店の1つと考えていいでしょう。
「アニメやマンガをコンセプト」という部分ですが、お店の様子についてはこんなふうに説明されています。《「漫画の中にいるような感覚を体感できる空間」をコンセプトにした店内には、漫画本を開いたようなコマ割りや吹き出し・効果線を取り入れたオリジナルの什器を配置。店員のユニホーム・ショップコートは東コレブランド「アンリアレイジ」が担当し、本来隠すべき縫い代に色を付けるほか、あえて外表に縫うことで「漫画における『線』」を作るという。》(しぶや経済新聞)
マンガの関連商品やフェア・イベントなどについては、こんな感じ。《“音楽”をテーマに「けいおん!」「坂道のアポロン」などのマンガとヘッドホン、“マンガ家”をテーマに「まんが道」「アオイホノオ」「バクマン。」「失踪日記」などのマンガとメモ帳やインク、「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズと同作のTシャツを販売するなど、マンガや雑貨、アパレルをテーマ別に陳列している。5月中旬までアニメ「宇宙兄弟」の原画展を開催しており、今後はマンガ家を招いたイベントも予定。》(毎日新聞)
《「ワンピース」に登場する世界政府海軍本部・三大将の正装コート、「バクマン」が漫画家をモチーフにした漫画であることから、漫画の表現の特徴でもある「ド」「ッ」など擬音語・擬態語のリング、「魔女の宅急便」の主人公キキが頭に赤いリボンを巻いていることから赤いリボンのポーチ、「ジョジョの奇妙な大冒険」第4部「ダイヤモンドは砕けない」に登場するイタリアンシェフ、トニオ・トラサルディーをモチーフにしたTシャツなどを扱う予定。》(しぶや経済新聞)
このトーキョーズトーキョーは2店目。1号店は、羽田空港第2旅客ターミナルにあり、そちらは、《2009年、国内初の空港オリジナル編集型店舗として》オープンしたお店なんだとか。《1号店では「東京発の旅」をコンセプトにしていたが、2店舗目となる今回の店舗では、出店エリアの特性に合わせて漫画・アニメ文化をコンセプトに据えた》とあります。1号店については全体のプロデュースと本のセレクトを幅さんが手がけています。1号店については、こちらを。
写真を見るかぎり、施設自体はもちろん、お店も、40過ぎのおやぢが気楽にうろうろできるような感じではなさそうなんですが(さらに言えば、原宿という街自体、この年になるとなかなか足が向きません)、ちょっと気になるお店なので、近く、見に行ってくるつもりです。
くまざわは、JR中央線日野駅前にできる2フロアのお店。
びっくりしたのは、仙台のヤマト屋書店。仙台の書店事情は、この空犬通信でも何度か取り上げていますが、仙台駅前エリアに大型中型の書店複数が集中する新刊書店激戦区。街の規模や人口から言っても、現時点ですでにオーバーフロアな感じになっているわけですが、さらに新刊書店ができるとは。三越の地下2階にできるお店ということで、駅前の大型店集中エリアから少し離れてはいますが、一番町には、あゆみBOOKS仙台一番町店がありますからね。
ヤマト屋は、350坪と、デパート内の書店としてはけっこう広めのお店。あゆみBOOKSは仙台店が130坪ぐらいだそうですから(ちなみに、仙台一番町店は200坪ぐらい)、単純にサイズのうえでは、3倍弱ぐらいの規模になるわけですね。小規模ながら路面店でアクセスのいいあゆみと、大規模(といっても、仙台駅周辺のメガストアと比べると半分以下ですが)ながら商業施設の地下2階のヤマト屋、という構図ですね。今年もチャンスがあれば仙台には行きたいと思っていますので、仙台行きが実現したら、自分の目で見てきたいと思います。
追記(4/18):上の記事で、注記も何もなしに、さらりとふれてしまいましたが、あゆみBOOKS仙台一番町店は、震災の影響で閉店となったまま、現在も再開の予定が発表されていない状況です。サイトには、《東日本大震災の被害が甚大であるため、被害からの復旧計画や営業再開の期日など諸々含めて現在、調整検討を行っております。詳細が決まり次第、このホームページにてお知らせいたします》とあります。同店の一日も早い復旧、再開を一書店好きとして、心からお祈り申し上げるととともに、不用意な書き方をしてしまったことをお詫び申し上げます。
恒例の新刊書店の開店・改装・閉店ニュースです。件数としてはそんなにたまっているわけではないのですが、いくつか気になる案件がありますので、あんまりためて、記事が長くなりすぎちゃったりしないよう、早めにまとめてみました。(かっこ内の数字は坪数。)
●オープン
- 4/14 bookunion CLASSIC(8)
- 4/25 未来屋書店イオンモール船橋店(241)
- 4/25 アニメイトイオンモール船橋店
- 4/25 未来書店蒲原店(100)
- 4/27 TSUTAYA WAY 名張店(260)
- 4/28 ヴィレッジヴァンガードマルイアネックス新宿(25)
- 5/17 啓林堂書店学園前店(200)
bookunion CLASSICは、ディスクユニオン新宿クラシック館内にできるクラシック音楽専門書店。ブックユニオンとしては4店舗目で、ショップインショップ形式だそうです。関連記事は、こちら。「新宿にクラシック音楽専門書店「ブックユニオン・クラシック」-輸入楽譜にも注力」(4/12 新宿経済新聞)。
品揃えについて、記事には《取扱書籍は、クラシック関連書籍から輸入楽譜、ポケット・スコアなどの楽譜まで幅広くラインアップし、新刊・中古書籍合わせて8000冊をそろえる》とあります。ショップインショップとはいえ、音楽書、ではなく、クラシック音楽に限定のくくりで、こうしたショップが成立してしまうところがさすがディスクユニオンというか、なんというか、すごいですね。
イオンモール船橋は、マックスバリュ新船橋店跡地にできるショッピングモール。未来屋書店が3階に、アニメイトが2階に入るようです。4/17にソフトオープン、4/25にグランドオープンとのこと。これは以前の記事で一度、「新船橋店」として紹介したものと同じもの、こちらが正式名称ということになるのでしょうか。
啓林堂書店は、奈良県奈良市、近鉄奈良線学園前駅前の商業施設「パラディ学園前」3Fのお店だそうです。関連記事は、こちら。「啓林堂書店、奈良市に「学園前店」出店へ」(4/10 新文化)。
●リニューアル(改装・移転・増床など)
- 4/10 文公堂書店(75)
- 4/16 旭屋書店堂島地下街店(47)
- 4/23 東京堂書店シェ・モワ店
- 4/21 アシーネ池田駅前店(95)
- 4/末? 三省堂書店ルクア大阪店
文公堂書店は、JR阿佐ヶ谷駅の駅ビル、ダイヤ街に入っているお店。阿佐ヶ谷の新刊書店としては、(JR駅からはちょっと離れている書原を別にすると)南口すぐの書楽もありますが、2店とも夜遅くまでやっているので、地元の本好きには重宝なお店。阿佐ヶ谷はぼくも一時期住んでいたことがあるので、両店とも昔からなじみのお店。
ずっと改装工事の続いていたダイヤ街ですが、4/20にリニューアルオープンとなるようです。プレスリリースはこちら(*PDFファイルです)。文公堂書店が残れたのはいいんですが、残念ながら、120坪から75坪へと、6割ほどの規模に縮小。これを機にブックカフェになったりしないのかと思ったら、文公堂書店はそのままで、同じくダイヤ街2階にある新星堂がタリーズコーヒーと初のコラボをするとあります。どんな形態になるんだろう。気になりますね。
阿佐ヶ谷の駅ビルは、ダイヤ街もゴールド街も、よく言えば庶民的、悪く言えばあかぬけない、昭和な香りを色濃く残してた、ぼくのようなおやぢにはとても居心地のいい感じだったんですが、ゴールド街の改装で、大好きだったクロンボや可否茶館も閉店になってしまい、今回ダイヤ街も一新されることに。こういう書き方がただのノスタルジーに過ぎないことは十分承知の上ですが、やはり、なんとなくさびしいものです。
先日の大阪書店レポでも少しふれた、旭屋書店堂島地下街店は、3/30から改装工事で4/15まで休業中。什器が入れ替えになるそうです。にぎやかで元気な印象のお店だったので、きれいになるのはいいですが、あまりしゃれた感じに走りすぎないといいのですが。
本店が改装になったばかりの東京堂書店。今度はふくろう店がリニューアルで、それに伴い、店舗名称が旧「ふくろう店」から「シェ・モワ店」に変更になるそうです。「【予告】 ふくろう店が、本と雑貨のお店にリニューアル」(東京堂書店) 。ふくろう店の営業は4/13までで、4/14~4/22 4/23は一時閉店とのこと。
↑店頭に貼り出されていた告知と、店頭で配布されていたチラシ。
ガーリーなイメージのチラシ表面からも想像がつきますが、チラシ裏面の説明を見ると、お店の感じもフェアも完全に女性向け。すぐ斜め前に本店があるわけですし、それを言えば、周囲には強力な大から小まで、硬から軟まで、新刊書店がいくつもあるわけですから、本店に似たような感じにする必要はないわけで、思い切って、少し極端なぐらいの路線・品揃えにして特色を出すのは、戦略的にはごくごく自然なこと。それはわかっているんですが、なんとなく違和感を覚えてしまうのは、やはり東京堂書店のお店だから、でしょうか。だって、まさか東京堂書店のお店のチラシに、《こころにも、おしゃれしない?》なんてコピーが踊っているのを目にすることになるなんて、昔からの利用者にしてみれば、まさか、って感じですからね。4/23のオープンが、いろいろな意味で楽しみです。
アシーネは、大阪府池田市、ダイエー内のお店。東館3Fから西館2Fへ移転になり、わずかに縮小となるようです(99→95坪)。
●閉店
【“東京堂書店におしゃれ雑貨店が登場?!……新刊書店の開店・閉店いろいろです”の続きを読む】
今日は荻窪のブックカフェ、六次元のトークイベント『本屋のカバーが捨てられなくて…』に行ってきました。《どむか氏のブックカバーにまつわるお話》というこのイベント、書皮についての話が次から次に飛び出す、書店好きにはたまらないトークでしたよ。
六次元では、デジタルフォトフレームを使ったブックカバーと、「本を読むモノたち」の展示もありました。4/15までの展示なので、このタイミングで紹介するのは申し訳ないんですが、でも少しでも間に合う方がいればということで。【展示】4月6日(金)⇒4月15日(日)「Book Bang」 どむか×内沼晋太郎 (NUMABOOKS) × BIBLIOPHILIC ×6次元。
最近、このほかにも、出版文化史に興味のある方におすすめの展示・展覧会がいくつか目につきましたので、まとめてご紹介します。
《出版文化が花開いた江戸時代から、私たちが普段目にする本(=洋装本)へと変わった近代、そして電子書籍が登場した現代。そんな本の歴史だけでなく、印刷や装丁の技術、検閲制度、読者と読書の関係性など様々な角度から日本の出版文化を知るための本約80冊を、解説文つきで展示します》というこの展示、ぼくのような出版文化史好きには必見の展示です。千代田図書館と勉誠出版のサイトに写真入りの紹介記事があります。「企画展示「書物で知る出版文化の歴史 ――江戸から現代、そして未来」のお知らせ」(千代田図書館)、「企画展示「書物で知る出版文化の歴史」開催!」(勉誠出版)。
また、《4月30日(月)~5月31日(木)(予定)で、紀伊國屋書店 新宿本店2階で連動フェアを開催します。フェア会場では、展示した本を購入できます(一部を除く)。》とありますから、展示だけじゃなくて、本を買いたい、という方はそちらをチェックされるのもいいかと。
次の「初版本と装丁 近代の文学、夏目漱石を中心に」も、ブックデザインに関心のある向きなら、タイトルだけでどきどきしますね。こんな展示だそうです。《このたび特種東海製紙Pam東京では弊社収蔵品の中から、漱石の作品を中心に、明治から昭和初期にかけて活躍した作家の初版作品を展示いたします。文豪と評され今尚読み続けられる内容もさることながら、漱石の作品に対する美意識が込められた完成度の高いその外観を、同時代、そして漱石に影響を受けた後の作家たちの作品と比較しご覧下さい。》
6/6には、デザイナー、祖父江慎さんが《夏目漱石の本造りへのこだわりについて語》るというセミナーも用意されているようですよ。入場無料、要予約。『坊っちゃん』だけでいったい何種類お持ちなのか、というぐらいに大量にコレクションされていることでも知られる祖父江さんのお話ですから、これはおもしろいものになりそうですよねえ。ぼくも都合がつけば参加したいと思っています。
会場のPam東京はあまり聞き慣れない名前ですが、特種東海製紙のギャラリーで、JR東京駅八重洲南口から徒歩ですぐ、八重洲ブックセンターのお隣のビルの6階だそうです。
次はぼくも大好きなデザイナーの1人、原弘さんの展覧会。場所は、ポロック展が話題になっている東京国立近代美術館本館、2階のギャラリー4。
【“書皮、初版本と装丁、原弘、蔵書票……最近の出版関連の展示から”の続きを読む】
4/10が本屋大賞だったので、4/10と翌11日は、式に参加すべく集まってきた書店員さんたちが、あちこちの書店を回っているのが、ツイッターを眺めていたらまるで実況のように伝わってきて、こちらも一緒に書店回りをしているような感じで、楽しませてもらいました。
それにしても、書店員さんたちの研究心というか探求心というかには、ほんと驚かされます。たまにしか東京に出てこない、なかには初めて東京に出てくる方もいたようなのに、みんな観光のようなこともせずに、せっせと書店回ってるんだからなあ(笑)。おまえも同じこと、都内でも旅先でもやってるじゃないか、と言われればたしかにそうなんですが、ぼくの場合、本の仕事とはいえ、書店員ではないので、毎日書店にいるわけではありません。書店員さんたちは朝から晩まで、毎日書店にいる人びとですからね。いやはや。
この空犬通信では繰り返し書いていることですが、金太郎飴書店なんてないんですよね。書店員さんたちの行動がまさにそのことの証左になっている。同じものを同じ値段で扱っていたって、やっぱり書店はお店によって、人によって、まったく違うものになりうるし、実際になっているのです。だからこそ、みんな、嫌というほど見ているはずの書店を、わざわざ見て回ったりするんですよね。
先の記事にも書いた通り、ぼく自身は本屋大賞には縁がないんですが、知り合いの書店員さんが訪ねてきてくれたりしたので、何人かの方に会うことができました。今回初めてお会いした書店員の1人に、WEB本の雑誌の「突発企画」、「迷う門には福来る」の書き手、久田かおりさんがいます。この連載をお読みの方なら説明不要かと思いますが、独特過ぎる方向感覚をお持ちの方。待ち合わせ場所に本当に現れてくれるのかと、直前まで、どきどきさせてもらいました。
過去3回はどれもおもしろいんですが、最新回、「北の旅は命がけ」もいいですよねえ。笑いながら読み進めると、最後から2つめの文にこうあります。《後で乗務員のヒトに聞いたらこういうことはよくあるそうだ》。読んできた人全員がここで、思いっきり突っ込みを入れている様子が、ほんと、目に浮かぶようです。
このような方を、本屋大賞当日、往来堂書店にお連れして、お昼をご一緒したんですが、今にして思えば、大変なミッションをこなしていたんだなあ(笑)。
「書店」と「迷う」で思い出しました(って、話題の転換が強引なのは承知のうえで)。こんな記事がありましたね。「グーグルのメガネで思う「変なものがそのうち実現する」面白さ」(4/11 PC Online)。Googleのメガネ型ウェアラブル・コンピュータ、「Project Glass」の紹介記事で、直接本とか書店に関係があるわけではないんですが、記事に、書店に出かけるという設定があり、運行情報がチェックできたり地図が示されたりできるという説明に続いて、こんなくだりがありました。《眼鏡は、書店の中でも探している本のありかを教えてくれるし、友達とビデオチャットするのも、眼鏡の中でできる。見ている風景をそのまま、相手とシェアするのもシームレスに可能》。
こんなのがあったら、久田さんも迷わないかもなあ、でも、こんなのがあったら、あのおもしろエッセイは読めないしなあ、って、よけいなお世話すぎることを思いつつ、さらに、街なかではともかく、書店のなかでは要らないかもなあ、とも。欲しい本が決まっていて、一刻も早くその商品にたどり着き、用事を済ませて出たい、と考えるタイプの方、本屋さんでうろうろすることを楽しみだと感じない、感じられないタイプの方には便利なのかもしれないが、おそらく多くの本好きは、本は自分の眼で探したいと本好きなら思うだろうから、メガネに本を見つけられたりしたら、それは便利であるよりむしろよけいなお世話なんじゃないかなあ、などと思ったりしました。まあ、SF好きとしては、こういうガジェット自体はきらいじゃない、というか、むしろ積極的に試してみたい気もするんですけどね。
我ながら、長過ぎる前ふりですが、先日ルーエで買った本の紹介を、ごく簡単に。
まずは映画本を2点。『衝撃の世界映画事件史』は表紙を見ればおわかりの通り、『コーマン帝国』にタイミングを合わせたと思われるムック。2部構成で、副題にある通り「大衆映画の帝王ロジャー・コーマン」と「映画業界が封印したトラブルの歴史」になっています。とりあげられている人物やネタは好みの範疇のものなんですが、ロジャー・コーマンのロングインタビューを含む前半は、既読感があるというか、なんというか、ちょっとのれずにいます。後半に期待。
【“やっぱりすごい書店員さんたち……そして、映画本、特濃ビートルズ本など、ルーエで買った本たち”の続きを読む】
本日発表の本屋大賞は、三浦しをんさんの『舟を編む』に決まったようですね。おめでとうございます。でも、今日は本屋大賞とは関係のない話題を。『本の雑誌』、今月号は、みんな大好き(ですよね?)図鑑特集です。
↑『日販通信』のときもびっくりしたけど、まさか、我がハンドルが、『本の雑誌』の表紙に載る日がくるとは(涙)。
特集「図鑑で遊ぼう!」は、こんな内容。《さあ、春だ! 虫も出てくりゃ、花も咲く。おお、地面をうごめくこの虫はなんだ! というわけで本の雑誌5月号の特集は「図鑑で遊ぼう!」。見てるだけで楽しい大人向けの図鑑を空犬とアルパカがおすすめする悶絶対談から、子どもならではのイチオシ図鑑、偏愛図鑑に翻訳図鑑、図鑑編集者のマル秘話まで、図鑑を持って出かけたくなる春爛漫特集だ。友よ、宇宙の果てから海の底まで、図鑑とともにイモムシ、おじさん、新幹線、ティラノサウルスに会いに行こう!》
図鑑といえば、過去にこんな記事を書いているぐらいの図鑑好き。元図鑑少年にして、現役の図鑑好きでもある身としては、内容紹介に並ぶ文字列を見ているだけでうれしくなる特集です。で、そのうれしい特集に、なんと、図々しいことはなはだしいんですが、対談記事の語り手の一人として登場してしまいました……。しかも、巻頭……。ほんと、すみません……。
タイトルは、「おすすめ図鑑対談 役に立たなくてもいいのだ!」。お相手はアルパカ内田さん。タイトル通り、ふたりがかりで、自分の「偏愛」する図鑑、それも、役に立たなさそうなものたちについて、語りまくっています。どんな図鑑を取り上げ、それをどんなふうに紹介、偏愛しているかは、ぜひ本誌を見てみてくださいね。
アルパカ内田さんとは同世代。どちらも『おじさん図鑑』(小学館)に登場していてもおかしくない、40過ぎのおやぢなんですが、自分の好きな図鑑の話を楽しげに披露しあっている様は、もう、なんというか、男の子丸出しですよね(苦笑)。図鑑少年というのは、一度なってしまうと卒業できないものなのだと、再確認しました。
読者のイチオシ図鑑とか、泉麻人さん、吉野朔美さんらの偏愛図鑑とか、図鑑編集部見学とか、図鑑編集者対談とか、他の記事も図鑑好きにはたまらないものばかりなので、図鑑好きには強くおすすめしたいです。
なかでも、個人的にうれしかったのが、沢野ひとしさんの「図鑑人生」。記事のタイトルがすでに図鑑好き的には琴線ものですが、中身もすばらしくって。昭和31年に出た「小学館学習図鑑シリーズ」を、「これほど丁寧に子どもに親身になって作られた図鑑は見たことがない」と大絶賛しています。うちにもあったんですよねえ、このシリーズ。ぼくが好きだったのは、「動物」の巻。今でも見開きのイラストとか、覚えてるものなあ。沢野さんが紹介している「鳥類」の巻もほしいんですが、記事にご本人が書いているとおり、けっこうな古書価がついているんですよね。でも、ほしいなあ。
対談当日は、本に掲載された記事でふれている図鑑以外にも、たくさんの図鑑を用意していたんですが(関係ないけど、ぼくは軟弱なので、事前に送っておいたんですが、内田さんは、大部の図鑑十数冊を抱えて現れたので、びっくりしてしまいました。人が死んでもおかしくない重量ですから;笑)、時間や紙幅の関係でふれられなかったものがありますし、後になって思いついたものなどもあります。対談に登場していない図鑑をいくつか紹介しておきますね。
おっと、その前に、「図鑑」とはなんぞや?、というお話を。図鑑と言えば、多くの方は、子ども向けの大判の学習図鑑を思い浮かべるのではないかと思いますが、書名に図鑑とつく書物は、児童向け学習図鑑以外にもけっこうたくさんあるんですよね。対象年齢も、判型も、テーマも。さらに、書名に「図鑑」と入っていないけれど、造りや内容はまさに図鑑、という書物もたくさんあるからややこしい。
辞書的な定義だと、写真や絵などを用いて、事物の形や特徴などを説明している本を指すという趣旨のまとめ方をしているものが多いようです。対談にあたって、「図鑑」をどうとらえるかはちょっと迷ったんですよね。書名に「図鑑」が入っていなくても、図鑑的に編集されたものはよしとするか、あくまでも「……図鑑」のみとするか。
結局、対談当日は、書名に「図鑑」とあるものを中心とし、図鑑と入っていないものはごく一部を取り上げるにとどめました。以下にふれるものも、同じ考え方でセレクトしたものです。
- 大伴昌司『カラー版 怪獣ウルトラ図鑑』(秋田書店)
- いんちき番長、加藤アングラ『いんちきおもちゃ大図鑑 中国・香港・台湾・韓国のアヤシイ玩具』(社会評論社)
- 『ロボットと未来のくらし』(小学館なぜなに学習図鑑シリーズ)
- 山下純弘・佐藤隆俊『ティントイ ロボット図鑑』(グリーンアロー出版社)
(いつものように、ここからの脱線が長いのです……。)
【“図鑑好き大集合……『本の雑誌』の今月号は図鑑特集”の続きを読む】
明日はいよいよ本屋大賞の発表ですね。
ツイッターを始めてから、関東圏以外を含むあちこちの書店員さんの知り合いが増えたこともあり、また、書店のことばっかり取り上げているこのようなブログを書いていたりすることもあり、よく、本屋大賞に来ますか?、とか、本屋大賞で会えますよね、といった質問をされることがあります。
書店員の会などをやっているせいで、まぎらわしいのですが、本業は編集で、書店員ではありませんし、その本業も、いつかの記事にも書きました通り、文芸の担当ではないものですから、本屋大賞には縁がないのですよ……。
上京するから、と、わざわざ声をかけてくださる書店員さんがいるのは、ほんとにありがたいことなんですが、そのようなわけで、明日は会場にも、その後の会にもおりませんので、あしからず……。
本屋大賞のことはさておき。書店の店頭で、またまたおもしろいものを見つけましたので紹介します。「エディター視点のレコメンドマガジン」という枕詞のついたフリーペーパー、『rec』のVol.3を、先日書店で見かけたので、入手してきました。この第3号、表紙に「BOOKSTORE IS WONDERLAND」とあります。ふん? おー、これは、なんと。書店特集ではないですか。
発行は、ケイ・ライターズクラブ。サイトには、『rec』について、こんな説明が載っています。《「rec(レック)」は、私たちKWCが発行するフリーペーパーです。好奇心に満ちた編集者たちが、みなさんに知ってほしいこと、楽しんでもらいたいことを勝手にレコメンドします。
コンセプトは、「エディター視点のレコメンドマガジン」。
Recommend=世の中の本当に“いいね!”を「レコメンド」。
Edit=“エモーション”に訴えるカタチに「編集」。
Communication=“伝わる”仕組みで「コミュニケーション」。
という3つのキーワードの頭文字をとって。
「rec(レック)」と命名しました。》
で、今回の第3号。24頁とページ数こそ少ないのですが、最初から最後まで、全編が書店特集にあてられていて、しかもオールカラー。写真・イラストなど図版も豊富で、なおかつビジュアルだけでなく、読ませるところもきちんととってあり、見た目以上の読みでがあります。
「書店ツウ・嶋浩一郎さんプレゼンツ」とある冒頭の記事、「“自分書店”との巡り合い」が、まずいい。書店の楽しみ方がわかりやすく説かれていて、あなたが書店好きなら、うんうんわかると、たくさんうなずかされることになるでしょうし、それほど書店を活用できていない方なら、なるほど、そんな楽しみ方が、という発見がいくつもあるはず。
こういうブログで、書店のことを書いていると、「あっちの書店がいい、こっちの書店はおもしろいと、いろいろ書いているが、どれも同じに見えて、違いやお店の見方がよくわからない。書店の楽しみ方のような記事を書いてはくれまいか」、というような主旨のことを言われることが複数あったもので、そのような文章を準備していたりしたんですが、この記事を読むと、そんな駄文をさらす必要は必要はまったくなくなってしまいましたね。ちなみに、この嶋浩一郎さん、先日の記事でも紹介した、ブック・ディレクター、内沼晋太郎さんが開店準備をすすめているという新刊書店のパートナー、博報堂ケトルの方ですね。
他にも、「街の書店」の分析や、いろいろなお店のユニークな棚を紹介する記事や、POPや書皮の紹介など、とにかく、全編が書店の記事オンリーで、書店好きをあきさせません。取材協力店も数店とそんなに多くないようですが、千駄木の往来堂書店、吉祥寺のBOOKSルーエらが登場しているほか、雑誌の書店特集だとスルーされがちな、三省堂書店、あおい書店といった、チェーンの大型店・中規模店なども登場していて、「おしゃれ」や「セレクトショップ」といったキーワードに偏らない、バランスのいいお店のセレクトになっています。
↑裏表紙には書皮がずらり。
無料配布誌とは思えない充実ぶり、書店好きは必見ですよ。
書店の店頭で見つけたフリーペーパーの紹介ということで、ついでに、最近見つけた他のフリペや、なんとなく紹介しそびれていたものも、まとめて紹介しておこうかな。まずは、書店「以外」発のものから。
↑上で、本屋大賞にふれたので。こちらにも往来堂書店とBOOKSルーエが登場しています。往来堂は、「書店総研」、「書店員人生相談所」「本屋さんが好きな本屋さんはどこだ!?」の3か所も。
【“フリーペーパー『rec』で書店特集……ついでに、その他のフリペたちも”の続きを読む】
前回の記事で、新宿店の閉店を大きく取り上げたばかりのジュンク堂書店。今度は、新規オープンのニュースです。噂だけは以前から聞こえていましたが、ようやく正式発表になったようですね。「中三弘前にジュンク堂書店進出へ」(3/30 東奥日報)、「中三弘前店に大型書店「ジュンク堂」出店」(3/31 陸奥日報)、「ジュンク堂書店弘前・中三に進出 5月・青森県内初」(4/4 河北新報)。
東奥日報を引きます。《全国展開している書店「ジュンク堂書店」(神戸市)が5月3日、百貨店「中三」弘前店内に進出する。中三(青森市、向中野光秀社長)が30日に発表した。ジュンク堂は県内初出店。弘前店の6、7階に入居し、県内最大規模の書店となる。》
中三弘前店を運営する株式会社中三(「なかさん」と読むそうです)によるプレスリリースがありました(リンク先はPDFファイル)。それによれば、《弘前店の6階・7階の2フロアーに、県内一の売場面積、約800坪のスケールで、県内初の大型書店「ジュンク堂書店」をオープンいたします》とのことで、《蔵書数80万冊を超える県内最大規模でジュンク堂ならではの書籍を品揃えし、6階の一角にはMARUZENの文具売場を展開、高級筆記具、ステーショナリーなど多彩な商品を集積して、楽しく、わくわくする新しいコーナーを展開します》となっています。
プレスリリースで約800坪とされている同店のサイズですが、6階が約550坪、7階が約248坪となっている別資料もありました。この数字に文具が含まれているのかどうかはわかりません。
地方にメガストアができるときには、必ずといっていいほど、そんなに大きなお店が必要なのか、大丈夫なのか、周囲の書店への影響は、という話題になります。今回もすでにそのような意見が出ているのを見聞きしましたので、参考までに、ちょっと調べてみました。
弘前市は人口は約18万人。東京で言うと、三鷹市とか小平市とかと同じぐらいの規模のようです。意味のある比較かどうかわかりませんが、同じ東北のジュンク堂の例で見ると、秋田県秋田市は人口約32万人で、ジュンク堂書店秋田店は650坪。岩手県盛岡市は人口約29万人で、ジュンク堂書店盛岡店は730坪。盛岡市は、人口規模的には青森市と同じぐらいのようです。
店舗・商業施設の成否は、お店が市内のどのような場所にあるのか、同業競合店が近くにあるのか、など、種々の要素がありますから、人口は1つの目安に過ぎません。周辺地域からの流入を含む休日人口がどうかというのも大きな要素ですよね。東京、中央線沿線の例でいうと、吉祥寺を抱える武蔵野市は人口14万人弱と、お隣三鷹市の18万強よりもずっと少ないのですが、商圏の規模・賑わいは比較するまでもありません。なので、人口・市のサイズに基づいた単純な比較で安易なことは言えませんが、参考程度に見たとしても、街の規模は、800坪クラスの書店の立地としては、けっこう微妙な感じかもしれません。
競合店としては、弘前には紀伊國屋書店がありますね。あと、調べてみたら、ナショナルチェーンでは宮脇書店(*追記あり)、くまざわ書店もあり、さらに複数の書店があるようです。弘前は訪問したことがなく、街の様子がわからないので、距離的に、商圏的に、客層的に、それらのお店がどのような競合関係になるのか(または、ならないのか)はわかりません。ただ、少なくとも、それほど規模の大きいとは言えなさそうな商圏に、すでにこれだけの同業店があることを思えば、今回の件については、ずいぶん思いきった出店だなあと、そんなふうに思わずにはいられませんね。
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