昨日3/29は、西荻窪のブックカフェ、beco cafeで、ほぼ毎月開催しているトークイベント、beco talkでした。第6弾の今回は、「100店営業を目指して」『書店ガール2』はいかに書かれたか。
新刊『書店ガール2 最強のふたり』(PHP文芸文庫)が発売になったばかりの作家、碧野圭さんに登場いただき、書店のこと、『書店ガール』のことを、たっぷりとお話いただきました。
トークの最後には、『書店ガール2』の解説を書かれた高倉美恵さんも登場、作者と解説者の対談も実現。
↑高倉さん作成の『書店ガール2』応援フリーペーパー。自分のお店で使える書店員ならともかく、そうではないのに、そして、版元から頼まれたわけでもなんでもないのに、このようなものを作ってしまうだけですごいですが、最初は、注文書としても使えるよう、番線印と部数を入れる欄を入れたものを作ろうとしていたと言いますから、高倉さんの応援マインド、すごすぎます。裏がこれまたすごくて、作中に出てくるフェアのリストになってます。これ、書店で置いてもらえばいいのになあ。右は高倉さんが名刺代わりに作ったというパーソナルフリペ「高倉美恵のこげなことしとります」Vol.1。
トーク後は、beco talk恒例、出演者を囲んでのドリンクタイム+碧野さん・高倉さんのWサイン会。たくさんのお客さんが残ってくださり、深夜まで、書店や本の話題が飛び交う楽しい時間になりました。
↑碧野さんと高倉さんのサイン。碧野さんのサインは、昨日ではなく、本が出た直後にいただいたものです。高倉さんには、『書店員タカクラの本と本屋の日々……ときどき育児』と、『書店ガール2』の両方にサインをもらいました。(高倉さんが酔っ払って文字が書けなくなる前に、と思って頼んだら、頼んだ時点ですでに怪しかったみたいで、(「空犬」の)「「空」ってこれで合ってる?」とか言いながら書いてくれました(笑))。
ドリンクタイムに残ってくださったみなさんを見渡すと、本を書く人(作者)、編む人(編集者)、刷る人(印刷会社)、流す人(取次)、広める人(出版営業)、売る人(書店員)、読む人(読者)が、みんなそろっていました。1冊の本にいかにたくさんの人が関わっているか、1冊の本がいかに多くの人に支えられているか、ということを、あらためて実感させられました。
参加くださったみなさま、遠くから(福岡から!)駆けつけてくださった高倉さん、そして、碧野さん、ありがとうございました。
碧野さんは、「めざせ!書店訪問100店舗」、空犬はこの「空犬通信」と、書店ブログの書き手同士のトークということで、トーク中で、これまでに訪問したお店の中から、いくつかお店を紹介しましたので、参考に、そのお店のリストをあげておきます。リンクがあるものは、碧野さんのブログまたは空犬通信で、そのお店にふれた記事へのリンクです。各店の様子を写真入りでくわしく紹介していますので、よろしければそれらの記事もご覧ください(上の5店が碧野さんの、下の2店が空犬の紹介店です)。
【“トークイベントbeco talk第6弾終了……4月は「いか文庫」店主による女子会トーク”の続きを読む】
(今回は、本にも書店にもぜんぜん関係のない話題です。)
昨日は、西荻窪のbeco cafeで毎月開催しているトークイベント、beco talkでした。楽しいイベントではあっても、やはり自分で企画・主催しているトークイベントに出演、遅くまでお酒を飲んだりおしゃべりしたり片づけをしたりしていると、いろいろ疲れるものです。
家族の用事で独りだし、天気も今ひとつ。こんな日こそ、一日、家でゆっくりしたかったんですが、運の悪いことに、いま自宅のすぐ近くで工事をやっていて、とてもじゃないけれど、家で、のんびり読書したり昼寝したりができません(なにしろ、ヘッドホンで音楽を聴いていても、工事の音が聞こえるぐらい)。しかたなく、桜と野鳥でも見に行くかと、独りでお出かけしてきました。
【“探鳥散歩日記:羽村堰・草花丘陵”の続きを読む】
先週の金曜日は半日を(本業の用事の)書店回りに費やし、あちこちの書店を回ってきました。丸善丸の内本店に用事があったので、丸の内にできた話題の商業施設「KITTE」に寄り、4階に入ったセレクト系書店マルノウチリーディングスタイルをのぞいてきましたよ。
↑KITTEの外観、建物全体と入り口あたり。平日午後ですが、春休み期間ということもあるんでしょうか、休日かと見紛う人出で、建物の周りではたくさんの人が、東京駅をバックに写真を撮ったり、KITTEの建物自体をパシャパシャやったりしていました。
館内も、大変な混雑ぶり。行列ができているなあ、と思ったら、なんとエスカレータに乗るためのものでした。何十分待ちなどという大げさなものではなく、ふつうに人は流れてはいましたが、館内を自由に行き来できないほどの混雑になっているのはびっくりしました。
↑吹き抜けになったホールの様子。人の波を入れずに撮ったので、混雑具合がわかりにくくなりました。右は、4階から見下ろした様子。ホールが広いので、このアングルだと、人がぱらぱらに見えますが、実際には、もっと人でいっぱいの感じになっていました。
↑マルノウチリーディングスタイルは、4階にいくつか入っているお店のなかで、もっとも大きなスペースを占めています。
「マルノウチリーディングスタイル」……書店事情にくわしい人にも聞き慣れない名前だと思いますが、これは、取次の大阪屋が100%出資で設立した「リーディングスタイル」という会社が初めて出店する複合型店舗。お店のコンセプトについては、サイトにこんな説明があがっています。
《大人の知的好奇心を刺激する書籍と遊び心を刺激する雑貨を揃え、スタッフが一点一点こだわってセレクトした商品を取り揃えてお客様にご提供いたします。カフェでは、体に良い有機野菜などの食材を提供し、購入前の書籍もカフェでコーヒーを飲みながら試し読みいただけます。日々の生活の雑貨と雑貨に関する書籍を買う、カフェで買う前の本を読む等の、様々な読書スタイルのご提案を行います。》
説明にある通り、カフェと書店と雑貨・文具店が合わさったようなお店で、広さは店舗全体で150坪。うち、書店部分の専有面積がどれぐらいなのかはわかりませんが、ざっと見た印象では、カフェ部分が全体の半分ほどを占めている感じでした。関連記事はこちら。「リーディングスタイル、丸の内KITTEに初の店舗」(3/19 文化通信)。
↑こちらが、書店側の入り口付近。入り口正面には、写真のような棚が。この写真で、お店の雰囲気や品ぞろえがなんとなく想像がつくという方もいるかもしれません。
お店には知り合いもいないし、お願いして取材させてもらったわけでもないので、店内の写真はなしです。
↑こちらは、カフェ側の入り口付近。先の書店入り口の左のほうにあります。入り口は別ですが、中でつながっています。カフェスペースにも書棚があるのが見えます。
できてまもないということもあるのでしょうが、ぼくが訪問したときは、店内は、お客さんでいっぱいでした。人の合間を縫うように、店内をざっと一周してみました。もちろん、本業関連の本の品ぞろえも忘れずにチェック。
おしゃれな什器に、セレクトされた品ぞろえの本。オーガニックフォーク系のよく言えば心地よい、悪く言えば当たり障りのないBGM。取り扱い商品に占める雑貨のバランス。おしゃれ文具。広いカフェスペース。何が悪いわけではなまったくないのですが、どうも「既視感」が……。正直なところ、こういうタイプのお店については、「書店」としての品ぞろえやお店の感じについて、感想を述べにくいです。ぼくのような、同店のターゲット客からは大きくはずれた趣味嗜好の持ち主である本好き書店好きが、自分の好みで品ぞろえを云々してもしかたないし、そのようなことが意味のあるお店でもないと思うからです。
あとで誤報だとわかりましたが、同店を紹介したある記事で、大阪のスタンダードブックストアが姉妹店だとなっているのを見ました。どういう経緯で、そんな書き方になってしまったのか、知りませんが、比べたくなるのはわかります。ただ、カバーしている取り扱い商品や購入前商品のカフェ持ち込み可などが共通しているというだけで、品ぞろえはけっこう違うように感じました。広義のセレクト系ショップとは言え、おしゃれ一辺倒ではなく、出版関連テーマのイベントなどにも熱心で、コアな本好きにも支持率の高いスタンダードブックストア比べると、(ここはあえて酷な書き方をしますが)やはりちょっと薄口に感じられてしまうのです。
ただ、だからといって、マルノウチリーディングスタイルが、ダメなお店だなどというつもりはまったくありません。取次主導の運営ならば、もっと品ぞろえを大きく「本」に振っても良かったろうし、実際、そのようにすることは可能だったはずです。それを、あえてそうせず、このようなセレクトにしたというのは、当然、立地と客層を考え、ねらった結果なのでしょう。それが、(今後、継続的にお客さんを引きつけられるかどうかはともかく)成功しているからこそ、お店がお客さんでいっぱいになっているのでしょう。この雰囲気が好きな方にはとても居心地のいいお店に感じられるでしょうし、ざっと施設内を歩いてみた感じでいうと、施設全体の客層にもマッチしているように思いました。
丸の内には、徒歩ですぐのところに、丸善丸の内本店があるわけですし、東京駅構内には、BOOK EXPRESSの店舗が複数あります。駅の出口的にはそれぞれちょっと離れますが、東京駅周辺にまで範囲を広げれば、三省堂書店も、八重洲側には八重洲ブックセンターもあります。だから、ふつうの新刊書店を求める人にとっては、すでに買い物をする場所はあるわけですからね。後発のお店が、差異化を図ろうとすれば、当然、他店とは違う雰囲気にする必要があるわけです。
丸の内側に「書店」ができるというニュースを知ったとき、書店好きとしていちばん気になったのは、丸善丸の内本店への影響です。マルノウチリーディングスタイルの様子を実際に見てみた印象からすると、丸善への影響はほとんどなさそうだと感じました。マルノウチリーディングスタイルを目的買いのお客さんがどれぐらい利用することになるかわかりませんが、同店でお目当ての本が見つからなかったり、本が少ないと感じたりするような人は、丸善にも寄ることになるでしょう。でも、逆はあまりなさそうで、少なくとも従来の本好きを、2店が取り合うような格好にはならないように思いました。
文化通信の記事には、「初の複合店」とありますが、今後、リーディングスタイルが、このタイプのお店を、他のエリアでも展開していくことになるのか、「……リーディングスタイル」というお店があちこちにできることになるのか、気になりますね。それも1号店の成否にかかっているのでしょう。今後が気になるお店ではあります。
これまで、刊行記念トークイベントのほうを、先に紹介してきましたが、肝心の本が、先日発売になりましたので、あらためて紹介します。吉祥寺の書店を舞台にした小説の第2弾です。
内容については、これまでにも簡単にふれていますので、版元の紹介文を引くだけにしておきます。《あの熱いコンビが帰ってきた! 吉祥寺に出店する大手書店チェーンに転職を果たした理子と亜紀。しかし、大型書店という、いままでと違う職責に理子は戸惑っていた。一方、文芸書担当として活躍する亜紀にも問題が。妊娠をきっかけに起こった夫との確執、書籍の回収騒動――。そんな忙しい日々の中、本と本屋の力を信じる二人が立ち向かう新たな挑戦とは? 全国書店員から共感の声が続々と届いた、書店を舞台とした痛快お仕事エンタテインメント第二弾。》
「吉祥寺」の「書店」を舞台にした小説ですから、これは、「吉祥寺書店員の会」を名乗る、我々「吉っ読」の関係者が売らないわけにはいきませんよね。というわけで、「吉っ読」参加の4店は、前作同様、いや、前作以上に力を入れて、それぞれ展開中です。
このエリアにまったく縁のない方が読んでももちろんおもしろく読める本になっていますから、吉祥寺・三鷹にかぎらず、いろいろなお店・地域で売れてほしいのですが、吉祥寺・三鷹の武蔵野エリアおよび近隣にお住まいの方は、この本は、ぜひ「吉っ読」参加店でお買い上げいただけると、関係者一同、とてもうれしいです。
今日は、仕事で半日書店回りをしてきたんですが、仕事の用事が終わってから、三鷹・吉祥寺を回って、「吉っ読」参加店の店頭の様子を大急ぎで取材してきましたので、写真入りで簡単に紹介します。(店内写真はすべてお店の方に断って撮影したものです。写真は本日3/22夕刻の様子で、お店の様子は変わっている場合があります。)
まずは、三鷹から唯一参加の啓文堂書店三鷹店。
↑レジ(下りエスカレータ側のメインレジ)前のワゴンで展開中でした。「吉っ読」参加店には、それぞれ、店名入りの、作者・碧野圭さんの手描きPOPが飾られているはずで、各店でそれぞれちょっとずつ違ったものになっていたりしますので、ファンの方はぜひチェックしてみてください。
次は、啓文堂書店吉祥寺店。
↑上りエスカレータ正面というお店でいちばん目立つ新刊平台で、ご覧の通りの多面展開中でした。離れたところからも目につきます。文庫担当の方に(版元の営業でもこの本の編集担当でもないのに;苦笑)ごあいさつ、話をうかがったところ、前作も好調に、そして長く売れていたので、とても期待している、とのことでした。
続いて、リブロ吉祥寺店。
↑こちらも、啓文堂吉祥寺同様、下りエスカレータ正面という、お店の一等地とも言うべき新刊平台で、大きく展開されています。出版社から写真に写っているものよりもさらに大きいパネルをもらったので、近くディスプレイに手を入れて、バージョンアップする予定だ、と話してくれたのは、前作のときも、吉祥寺でいちばん売りたい!と、強力な応援をしてくれた文庫担当のKさん。(余談ですが、お店にしょっちゅう来るくせに、夏葉社の本とか、碧野さんの本とか、自分の担当外の本の話ばっかりしているので、Kさんには、いったい何をしているのか、と思われているかもしれません;笑)。
最後は、BOOKSルーエ。
↑2階の文庫新刊台に並んでいます。他店に比べて積み方が控え目なのは、リニューアル後のスペースを考えると仕方ないですが、ただ、平台の角で、階段を上がってくると、すぐに目に入るところにありますから、場所的にはいいロケーション。決して見劣りするわけではありませんでしたよ。
【“「吉祥寺」の「書店」が舞台です……『書店ガール2』が発売になりました”の続きを読む】
今日は、その近未来的な造りで、なんだかすごいとネットでも話題になっていた成蹊大学の「情報図書館」が見学できるというので、ちょっと出かけてきましたよ。
↑こちらが、その「情報図書館」。
外から見ると、前面がガラス貼りの造りこそモダンに見えるものの、それほど変わった意匠にも思えませんが、中に入るとこれが、なかなかすごいんですね。ただ、残念ながら、中は撮影禁止。中の様子をWebで公開しているサイトがありますので、そちらをご覧ください。たとえば、こちら。
この図書館公開は、成蹊学園創立100周年記念行事として開催された「成蹊ミステリ・フォーラム」内のイベントの1つ。フォーラムは《作家 島田荘司氏をお招きしての講演のほか、ミステリ資料の展示やミステリ研究の報告・講義が予定されています》というもので、詳細は、大学のサイトに案内があります。「成蹊学園創立100周年記念行事「成蹊ミステリ・フォーラム」が2013年3月16日(土)に開催されます。」(3/5 成蹊大学)。こちらでチラシ(パンフレット)がダウンロードできます(リンク先はPDFです)。
公開は、図書館と書庫に分かれています。「ミステリ資料展示」と題された前者は、情報図書館の2階を公開、大学院生によるガイド付きで、ミステリ関連の収蔵資料を見られるようにしたものです。ずらりと並んだ探偵小説・ミステリ関連の書籍類もなかなか壮観でしたが、なんといっても驚かされたのは、未公開資料だという夢野久作の書簡。
巻紙に毛筆で綴られた達筆のくずし字は、素人にはほとんど読めないのですが、現代仮名遣いで書き下した文章が添えられています。読めるようになっているのは、たくさんある(実父杉山茂丸のもの含め、たしか百数十通とありました)コレクションのごく一部ですが、ガラスケースの前から動けなくなるぐらいの迫力でした。分量・内容、保存状態、いずれも久作読みなら驚愕必至のものになっていましたよ。
そして、もう1つがこれまたすごい。「ミステリSFコレクション書庫見学」と題された書庫の見学は、図書館とは別の建物に設けられた、ふだんは非公開の書庫を、図書館スタッフの方のガイド付きで見学するというもの。東京創元社の戸川安宣さん他、数人の方がミステリ・SF関連の蔵書を寄贈されたのを整理してまとめたもので、和書・洋書・雑誌など合わせて数万冊(数の説明がありましたが、失念してしまいました)におよぶコレクション。
コレクションは、稀覯本ではなく、(そういう本こそ、むしろ時間がたつとアクセスしづらくなるということから)「ふつうの本」が中心だという説明がありました。それでも、明治・大正の本もあるようでしたし、雑誌のなかには、有名作家がデビュー前に参加していた同人誌(宮部みゆきさんが参加していた同人誌が例として紹介されていました)があったりと、一般の読書人にしてみれば、量も中身も、とても「ふつう」のレベルではなく、棚の間を歩いているだけで、くらくらしました。自由に居てよい、と言われたら、探偵小説・ミステリ・SFなどが好きな方なら、何時間でもいられるでしょう。
残念ながら、見学は15分ほどと短時間で、書庫の中を自由に見ることができるようなものではなく、もう少し棚をじっくり見せてもらえたらなおよかったのになあ、という感じがしないでもなかったのですが、それでもふだん見られないものを見せてもらえたのですから、ぜいたくを言ってはいけませんね。
見学ツアーでは、図書館のスタッフの方のほかに、御本を寄贈された戸川安宣さんも、自らガイドとして説明をしてくださいました。資料で驚いたのが、すべての本が、ビニールの袋に包まれていたこと。これは、戸川さんの説明によると、ふつう図書館では函や帯、投げ込みなどが廃棄されてしまうが、本の造り手としては、そうしたものが捨てられてしまうのはしのびない、また、そうしたものが資料の価値を生むこともある、だから、寄贈された状態をそのままに保存するよう、頼んでそうしてもらった、ということだそうです。
図書館の本によくあるように、カバーの上から保護のビニールをかけられてしまうと本の質感が失われ、どの本も均質になってしまいますよね。とくに、函入り本が函をはずされてしまうと、本の印象はまったく別のものになってしまいます。それが、すべて元の状態(寄贈時にすでに帯や投げ込みがないものは別として)で保存されるというのは、資料図書の保存方法としては画期的なことではないかな、と思いました。
見学自体は、図書館も書庫も短時間でしたし、膨大なコレクションのごく一部を目にできたに過ぎませんが、それでも、今日は探偵やSFに強い新刊書店と古書店を数軒じっくり見て回ったぐらいの濃度の収穫があったような気がします。
乱歩関連に力を入れている立教大学、横溝正史の二松学舎大学など、大学が探偵小説の資料保存や研究に力を入れる例が、ここ数年続いています。成蹊大学が今後どんなふうにこの分野の資料収集に力を入れていくのか分かりませんが、江戸川乱歩と小酒井不木の往復書簡を集めた『子不語の夢』(皓星社)の編などを手がけた、探偵小説・ミステリ研究の浜田雄介先生が関わっていらっしゃるとのことですし、書庫も、今後の寄贈、資料増加を見込んで、かなりスペースに余裕をとってありましたし、また、先の久作の書簡のように、書籍以外の貴重な資料も収集範囲にしていることなどからも、今後の充実が期待できますね。
ところで。今日の公開ですが、ツイッターでフォローし合っている方が、なんと先にお名前をあげた東京創元社の戸川さんのご家族(ご子息)で、お父様もいらっしゃるので、どうですかと直接誘っていただいて、参加したものでした。
見学ツアーが終わってから、お二人と、食事をご一緒させていただきました。戸川安宣さんと言えば、70年代から東京創元社で長く編集を担当された方。こちらは、小学校のときから、創元文庫を読んできた身です。目の前に、『日本探偵小説全集』や『中井英夫全集』を手がけた方がいらっしゃるというのは、なんだか信じられないような話です。
名刺交換だけして、簡単にごあいさつできたら、それだけでも満足、ぐらいに思っていたんですが、お話をうかがうと、戸川さんの口からは、(まあ、当然といえば当然なんですが)次から次に、本でしか目にしたことのような人名やその方にまつわるエピソードが出てきて、おもしろいどころではないわけです。すっかり舞い上がってしまって、あれこれ質問したりしているうちに、あっというまに3時間以上……。書庫見学のツアーガイドでお疲れのはずで、しかも、この後、まだ懇親会なども控えていた方に、すっかり時間をとらせてしまいました。猛省。
これでも、一応出版人の端くれです。出版関係の集まりやイベントで、有名な編集者の方々、それこそ、自分が子どものころに読んでいた児童文学作品の編集をされた方、ウルトラ怪獣図鑑を手がけた方、好きで読んできた作家・作品を担当された方、いろいろな方にお会いしたりお見かけしたりする機会がありました。そのたびに、感激したり、感銘を受けたり、刺激を受けたりしてきましたが、今日は、なんというか、これまでのそうした出会いとは、また違った、特別なものになりました。
素人相手に長時間のおしゃべりにお付き合いくださった戸川安宣さん、そして、今日の機会をセッティングしてくださったご子息の戸川さん、ほんとうにありがとうございました。
↑今日は、戸川さんが解説を担当された文庫で、ぼくも大好きな、久世光彦さんの『一九三四年冬——乱歩』(創元推理文庫)を頂戴しました。調子に乗って、サインまでいただいてしまいました。(戸川さんが久世さんにお会いになったときのことが、この本の解説でもふれられています。解説に書かれていないことも含め、久世さんがらみのエピソードをいろいろ聞かせていただきましたが、これがもう、一人で聞いているのがもったいないぐらいにおもしろかったです。)
以下、東京創元社と戸川さんのことで、ちょっと個人的な話を書きます。(ほんとに、ものすごく個人的な話です。)
【“「成蹊ミステリ・フォーラム」に行ってきました……そして、東京創元社のこと、戸川安宣さんのこと”の続きを読む】
いつものように、ここ最近の新刊書店、開店・閉店関連をまとめます。今回は、ちょっとためてしまい、件数が多いので、長文になっています。
●オープン
- 2/21 くまざわ書店アリオ札幌店(639;札幌市)
- 3/12 ヴィレッジヴァンガードイオンつくば(24;茨城県つくば市)
- 3/15 蔦屋赤穂店(136;兵庫県赤穂市)
- 3/15 ブックスオオトリ四つ木メディア店(55;葛飾区)
- 3/16 ゲオ東松山店(20;埼玉県東松山市)
- 3/19 平清書店朝日店(40;富山県朝日町)
- 3/20 夢屋書店ピアゴ水口店(78;滋賀県甲賀市)
- 3/21 芳林堂書店平井店(60;江戸川区)
- 3/21 正育堂柴又店(60;葛飾区)
- 3/23 丸善四日市店(500;三重県四日市市)
- 3/23 ゲオ佐野店(20;栃木県佐野市)
- 3/29 蔦屋十日市店(143;岡山市北区)
- 3/30 有隣堂町田モディ店(322;東京都町田市)
- 3/中 蔦屋書店仙台泉店(3025;宮城県仙台市)
- 4/ 2 有隣堂武蔵小杉店(85;川崎市中原区)
- 4/ 2 マチカラブックス熊本駅(75;熊本市)
- 4/16 大垣書店神戸ハーバーランドumie店(460;神戸市中央区)
- 4/18 未来屋書店東久留米店(170;東京都東久留米市)
- 11/? 明文堂書店小松店(石川県小松市)
件数が多いので、それぞれは簡単にいきます。まずは、1/14に閉店となった丸善の後継テナントとしてオープンした、くまざわ書店アリオ札幌店から。関連記事は、こちら。「くまざわ書店アリオ札幌店がオープン」(2/20 財界さっぽろ)。
オープンは2/20ですが、記事によれば、《雑誌など一部の売り場は2月2日から営業していた》とのこと。児童書に力を入れているんでしょうか、《森田健嗣店長は、「児童書コーナーが今日オープンしました。子供連れのお客さまが多いので、売り場スペースを広く取っています。今後は子供向けのさまざまなイベントを予定しています」とPR》、オープニングイベントも、《2月23日にはドラえもん、3月23と24日にはノンタン、3月31日にはギャルソン(怪談レストラン)の着ぐるみが登場し、子どもたちと触れあう。3月3日以降、毎月第1日曜には「おはなし会」も開く》など、児童書関連が目白押しですね。
今回の新規店のなかで、もっとも話題になっているのは、やはり蔦屋書店仙台泉店でしょうか。関連記事を見ます。「TSUTAYA 仙台・泉に大型複合書店 3月中旬開業」(3/7 河北新報)。
記事を引きます。《複合書店としては国内最大級の「蔦屋書店 仙台泉店」が3月中旬にオープンすると明らかにした。約80万冊に及ぶ書籍のほか、10万枚のDVDなどもそろえる》。
取り扱い商品・売場構成については、《3階建てで、書籍・雑誌、玩具などを1階で販売。2階はDVD・CDのレンタル、販売コーナーとする》とあります。
驚くのはそのサイズで、《売り場面積は1、2階だけで約1万平方メートルに上る》とあり、《書店調査会社のアルメディア(東京)によると、店舗面積は札幌市内にある国内最大の他社店舗(8600平方メートル)を上回るという》のだそうです。1万平方メートル! 坪換算で、3000坪超ですよ。複合型店舗の総売り場面積ですから、そのまま書店のサイズというわけではないものの、驚きの規模ですね。ちなみに、国内最大の他社店舗というのはコーチャンフォーですが、今回の新店で、蔦谷は、売上・店舗数だけでなく、店舗サイズでも「日本一」となるわけですね。いやはや。
《書籍では児童書や絵本も計3万冊そろえる。団塊世代向けに歴史や哲学など人文系の本も充実させ、レンタルDVDでは1940〜60年代の名画も用意。販売CDでは1万枚のクラシックやジャズも扱う》といったあたりの説明を見ると、代官山蔦谷とも共通するコンセプトのようですね。
仙台と言えば、この空犬通信でも何度も取り上げてきましたが、全国でも有数の書店激戦区の1つ。駅周辺に同一グループの大型店が複数軒を連ねています。今回のお店、気になる立地ですが、《ショッピングセンターなどが並ぶ仙台市泉区大沢の商業エリアの一角。店舗と一体となった612台分の駐車場を備える》とあります。土地勘がないので、位置関係がよくわかりませんが、仙台駅周辺からはけっこう離れているようですね。ただ、施設全体のサイズや駐車場規模からしても、周囲の相当広いエリアから集客を想定していることでしょう。当然、仙台駅周辺の書店にも影響はゼロではないでしょうね。
最後の明文堂の件は、ずいぶん先ですが、この記事によるもの。「明文堂プランナー、新春方針発表会を開催 11月に小松店開店へ」(3/6 文化通信)。《タリーズコーヒージャパン(東京)と提携したカフェ併設型の店舗とし、DVDなどのレンタルコーナーやイベントホール、フードコートなどを設けたいとした》とあります。
●リニューアル
- 2/ 6 喜久屋書店ジョイプラザ店(兵庫県神戸市)
- 3/ 1 ヨドバシカメラマルチメディア宇都宮店(栃木県宇都宮市)
- 3/10 オリオン書房ノルテ店
- 3/15 正育堂書店入間店(180;埼玉県入間市)
- 3/11 青山ブックセンター丸ビル店(70;東京都千代田区)
- 3/18 シェ・モア(Chez moi)(神保町)
- 3/27 東武ブックス北千住北店(59;足立区)
- 4/ 1 京都大学生協書籍部ルネ(100;京都市左京区)
- 4/ 5 宮脇書店大洲店(270;愛媛県大洲市)
神戸の喜久屋書店は、ジョイプラザ自体が改装のために1/31に閉館。近くのアスタプラザイースト2階に場所を移し、仮店舗営業中とのことです。ジョイプラザはサイトによれば、今年の9月に全館オープン予定とのこと。リニューアルオープン時には、また戻ることになるのでしょうか。喜久屋書店の案内はこちら、ジョイプラザの案内はこちら。
立川のオリオン書房、これをリニューアルと扱っていいかどうか迷いますが、同店が熱心に取り組んできた書店でのイベントと関わりがありますから、ふれておきます。児童書売場の横、厳密には、店内ではなく、お店の外に隣接するかっこうのラウンジが、閉店になったそうです。
オリオン書房ノルテ店といえば、イベントに熱心なことでも知られるお店。イベントの多くが、このラウンジで行われてきたほか、フェアに使われたこともありました。店内のスペースも比較的ゆったりとられたお店なので、お店の一角を使ってイベントは続けられるのかどうか、公式サイトには説明がないようですし、最近、お店にも行く機会が作れず、実際の様子を見ていないので、わからないのですが、同店の利用者・ファンとしては、大変気になりますね。
ちなみに、跡地にはクイックガレージが入るそうです。リブロにジュンクにオリオンに……クイックガレージが書店の店内、または隣接地に入るケースは、これからもありそうです。
2006年のオープンの、青山ブックセンター丸ビル店、リニューアルについては公式サイトに案内が出ていました。「丸ビル店リニューアルオープンのお知らせ」(青山ブックセンター)。
サイトの案内を引きます。《青山ブックセンター丸ビル店は、2013年3月11日(月)11時にリニューアルオープン致します。雑誌がお店の1ヶ所に集まってより探しやすくなります。また、コミックの品揃えが約3倍になりますので、連続モノを選んだり新しい作品と出会うチャンスも増え、ご来店いただくのがますます楽しくなることでしょう。女性の方向けのライフスタイル書もより充実いたします。丸の内での生活を、より満喫していただける書籍をたくさんご用意いたしております》。
東京堂書店、本店の斜め前にある、女性向けの品ぞろえに特化したシェ・モア(Chez moi )。前のふくろう店が、リニューアルで生まれ変わったのが2012年の4月ですが、1周年を待たずに、リニューアルとなるようです。「【Chez moi】 店内商品入れ替えのお知らせ」(3/6 東京堂書店)。
↑店頭の案内と、現在の店舗の外観。
サイトにはこのようにあります。《3/17(日)Chez moi は、商品入れ替えのため、臨時休業いたします。さらに、魅力のある、書籍を取り揃え入れ替え準備中です。3/18を、お楽しみに!》 これだけではどんなふうに変わるのかよくわかりませんが、東京堂書店、知り合いのKさんの話だと、「楽しみにしていてください!」とのことだったので、ちょっと期待しています。来週、リニューアルオープンになりましたら、あらためて取材させてもらい、お店の様子を紹介したいと思います。
●閉店
- 1/31 ブックセンター東久留米
- 1/31 喜久屋書店ジョイプラザ店(兵庫県神戸市)
- 2/20 ブックランドとおの杭瀬店(兵庫県尼崎市)
- 2/28 田中書店(愛知県豊川市)
- 3/19 明屋書店五反田店
- 4/14 啓文社蔵王店(200;広島県福山市)
- 4/28 リーブルなにわ(北海道札幌市)
【“蔦屋書店仙台泉店、田中書店、リーブルなにわ……新刊書店の開店・閉店いろいろです”の続きを読む】
以前の記事でご紹介しました、「紀伊國屋じんぶん大賞2012――読者と選ぶ人文書ベスト30」の"コラボフェア"として、同じ場所で同時開催していただいた「出版業界のインフラたち『Twitter出版速報四天王』が選ぶ2012年のおすすめ人文書」フェア。選書リストとコメントが、紀伊國屋書店のサイトにアップされました。「「出版業界のインフラたち『Twitter出版速報四天王』が選ぶ2012年のおすすめ人文書」ブックフェアリスト 」(3/11 紀伊國屋書店)。
選書は楽しかったし、こうしてフェアになったのも、それもよりによって紀伊國屋新宿本店のフェアになってしまったのも、大変にうれしいことなんですが、でも、一方で、こんなところに名を連ねてしまってよかったのかと、図々しいにもほどがあるのではないかと、今さらながらに、恐れ多い気持ちでいっぱいになってしまっており、記事を眺めながら、お医者さんから控えるように厳しく指導されているお酒に、つい手を出してしまいました……。
『Twitter出版速報四天王』が選ぶ2012年のおすすめ人文書」ブックフェアリスト、空犬分の書目ですが、先の記事にも書きました通り、他の方との差異化を図りたいという気持ちと、自分の得意分野に寄せたいという気持ちとから、自分の主分野である(と勝手に思っている)メディア論・メディア史寄りの本、とくに出版・書店関連本に大幅に偏って選んでいます。ですので、ストレートな人文書には分類されにくいものも混じっているかもしれませんが、そのような趣味の持ち主によるものだと思っていただけるとうれしいです。
ところで、空犬選書分に、『東京プリズン』があがっていますが、これは、ぼくが選んだものではありません。正しくは、『商店街はなぜ滅びるのか』(光文社新書)。コメントは正しく入っているようですので、書名と書影が何かと入れ替わってしまったようですね。(赤坂真理さんの本、この本はこの本でおもしろく読みましたし、フィクションではありますが、人文書のフェアに紛れ込ませてもなんら問題ない、というか、かえっておもしろいという1冊なので、間違えられて困った気があんまりしていなかったりします(笑)。)
『Twitter出版速報四天王』(いまでもまだはずかしい……)、他のお三方、河村書店さん(@consaba)、ハマザキカクさん(@hamazakikaku)、永田さん(@n11booksさん)は、さすがの選書、さすがのコメントですね。自分も候補に入れていたような、好きな本もあれば、存在すら知らなかった本もあったりして、いろいろ勉強になります。
ところで、当方の分だけ、コメントの字数がやけに少なめで、全体にあっさりしているのは、POPを意識して短めにしたのだと、前回の記事でも言い訳めいたことを書きましたが、こうして、並べられてしまうと、読みの深さとコメント力の差であることは、あまりにも歴然ですね(苦笑)。
紀伊國屋書店新宿店、人文ご担当のみなさま、ありがとうございました。そして、きっかけを作ってくれたハマザキカクさん、最初の場を提供してくれた紀伊國屋書店新宿南店super wakuwakuの関係者のみなさんにも、あらためて感謝です。
店頭のフェアは残念ながら、先日3/9に終わってしまいましたので、フェアを見逃したという方、また、遠方で行けなかったという方は、ぜひサイトで、リストとコメントをご覧いただけるとうれしいです。もちろん、メインの「紀伊國屋じんぶん大賞2012──読者と選ぶ人文書ベスト30 」のほうも忘れずにチェックしてください。
吉祥寺書店員の会「吉っ読」に参加している吉祥寺&三鷹の書店4店による合同フリペ、「ブックトラック」。第4号がこのたび完成しました。
まもなく、BOOKSルーエ、リブロ吉祥寺店、啓文堂書店吉祥寺店+三鷹店の4店で配布開始となります。吉祥寺・三鷹の書店にお寄りの際はぜひ探してみてください。少し遅れますが、西荻窪のブックカフェbeco cafeでも配布予定です。
「ブックトラック」4号、吉祥寺・三鷹の書店をご利用の方、近隣にお住まいの方は、ぜひ配布店の店頭で入手いただければと思います。遠方にお住まいで、店頭に取りにいけないが、欲しい、読みたいという方は、コメント欄にてご相談ください。なお、いつも空犬宛てに書店フリペを送ってくださるみなさんや、フリペ展などイベントでお世話になっているみなさんには、後日お送りする予定ですので、しばらくお待ちください。
「ブックトラック」は、「吉っ読」の書店員の寄稿が中心のフリペですが、毎号1本、対談またはインタビューを掲載しています。4号の対談頁には、元書店員・ライターで、福岡の地域ブックイベント「ブックオカ」実行委員でもある高倉美恵さん(@takakuramie)にご登場いただきました。
高倉さんは、3/15に発売予定の、吉祥寺の書店を舞台とする、碧野圭さんの小説『書店ガール』の続編、『書店ガール2』(PHP文芸文庫)の解説を担当されました。なぜ、吉祥寺から遠く離れた福岡にお住まいの元書店員さんが解説を手がけることになったのかは、フリペの対談記事で明かされていますので、ぜひそちらをお読みになってみてください。
高倉さんは、3/29にbeco cafeで開催予定の『書店ガール2』刊行記念トークイベントbeco talk vol.6 刊行記念トーク 「100店営業を目指して」 『書店ガール2』はいかに書かれたかにも特別ゲストとして出演、トークイベントの最後のほうで、作者の碧野圭さんと対談されます。本の解説やフリペの対談ではふれられていないような、裏話なども聞けるかもしれません。(定員に達したため、予約受付を終了したとのことです。ご予約くださったみなさま、ありがとうございました)。
というわけで。まもなく配布開始のフリペ「ブックトラック」4号と、3/15発売の『書店ガール2』(PHP文芸文庫)、いずれも、よろしくお願いします! 『書店ガール2』につきましては、発売になりましたら、あらためて、くわしく紹介する予定です。
昼休みは、ほぼ毎日、神保町の書店を散策しては、気になる本をチェックしています。このところ、気になる本のなかに、探偵小説関連本が多いことに気づいたので、ちょっとまとめてみました。
いやはや、これらがすべて、同じ日の東京堂書店の平台に並んでいたりしますからね。しかも、どれも、けっこうな分量、いい値段のするもばかり。全部買ってたら、時間的にも経済的にも大変、探偵小説好きは、うれしい悲鳴といったところでしょう。
3号も出たというだけでびっくりしていたのに、まだ続くのか、と、あらためて驚かされてしまった『横溝正史研究』(戎光祥出版)。第4号の特集は「横溝正史の一九三〇年代―『鬼火』から『真珠郎』まで」。個人的にも大好きな時代がピックアップされていますから、これは買わないわけにはいきません。編集後記では、次号にふれられていたりもするので、まだまだ続くもよう。
『怪樹の腕』という書名の、字面のインパクトも、また表紙装画のインパクトもすごいのが、『怪樹の腕〈ウィアード・テールズ〉戦前邦訳傑作選』。「かいじゅのうで」と読みます。内容は、《「戦前に紹介された作品のなかから、アメリカの著名な怪奇小説専門誌〈ウィアード・テールズ〉に発表されたホラー短編の秀作怪作を選り抜き、当時の文章のまま現代によみがえらせたものである》というもの。目次には、延原謙訳とか、甲賀三郎翻案とか、妹尾アキ夫訳といった文字列並んでいます。メンツ的にも古い探偵小説が好きな身にはたまらないものになっていますね。
『探偵作家発見100』は、《戦中から昭和20年代、探偵雑誌や娯楽雑誌、あるいはカストリ雑誌に探偵小説を発表しその多くは忘れられた作家100名を掘り起こした若狭さんのライフワーク》というもの。「忘れられた」としてしまうのは気の毒な名前も混じっていますが、この時代が好きで読んでいる身にも未知の名前もあちこちにあって、勉強になります。しかし、あきらかに一部のマニア向けと思われるこのような本が、売上ランキングに入ってしまう東京堂書店って、お店も、そこに集まる人も、やっぱりすごいなあ、と、変なところに感心してしまいました(この本を、こんなにたくさん平積みにしている書店は、東京堂書店ぐらいだと思う)。
『蘭郁二郎探偵小説選』(論創社)は、海野十三と並ぶ、戦前の科学寄りの探偵小説の書き手、蘭郁二郎の作品集、第2弾。第1弾は《科学探偵&少年探偵シリーズを集成》という内容でしたが、この第2弾は《時局下に書き継がれた幻の探偵小説集。犯人当て懸賞小説「黒い東京地図」、文体模写小説「死後の眼」ほかデビュー作から遺作までを俯瞰。「蚯蚓語」などのエッセイも同時収録》という内容になっています。
そうそう、このほかに、これもありました。
【“横溝正史、探偵作家発見、蘭郁二郎、久生十蘭……探偵小説関連本が続きます”の続きを読む】
風邪でダウン、数日を寝て過ごし、今日、久しぶりに出社するも、まだ完全復調はならず、なんとなくふらふらの空犬です。
ふだんも、土日は書店に行けないことが多いから2日ぐらい空くのは当たり前なんですが、平日も入れて、4日も空いてしまうと、しかも、気になる新刊が複数あったりすると、書店に行きたくて、家で寝ていてもなんだか落ち着きません。昼休みは、東京堂書店、三省堂書店他、神保町の新刊書店・古書店をたっぷりとうろうろしてきましたよ。それにしても、お店の平台って、たった数日、間があいただけでも新鮮に見えるものですねえ。
今回の風邪はちょっとひどくて、丸4日、何もできず、食事(それも、薬を飲むための軽いもの)前後のわずかな時間をのぞいて、ほとんどずっと寝てました。これで元気なら、読書が大いに進むところですが、風邪で頭がぼーっとしてるときは、なかなか中身が頭に入ってきませんね。
風邪で伏せっているときは、児童文学を読むと書いていたのは、松浦寿輝さんだったか、金井美恵子さんだったか、お二人両方だったか。ぼくも以前からそうで、調子が悪いときの床での読書は、児童文学かコミックにしています。今回手にしたのは、ドリトル先生のシリーズ数冊(シリーズのなかでも非日常感のとりわけ強い「月へゆく」「月から帰る」)と、『とりぱん』(我が家では親子共通のお気に入りマンガです)、それに『第七女子会彷徨』(これ、最近のお気に入りマンガの1つ)。へんてこな組み合わせですが、少なくともこれらを手にしている時間だけは、楽しく過ごすことができましたよ。本好きのみなさんは、病気でダウンしてるときは、どんな本を読んでるのか、気になります。
さて。今日は体調も悪いので、仕事は早々に切り上げたんですが、帰りにBOOKSルーエに寄るのは忘れません。こんな本たちを買ってきましたよ。
『スペイン文学案内』、スペイン文学史・文学ガイドがコンパクトにまとめられたのって、文庫クセジュ『スペイン文学史』がありますが(こちらは、お世辞にも読みやすいとは言えないのですが……)、それ以来でしょうか。翻訳文学読みにはうれしい1冊ですね。ラテンアメリカ文学好きもおさえておくといいかもしれませんよ。
ディックの新刊……「テ−1−20」ということは、20冊目ですね。この通し番号になる前は「六九六」でした。創元ディック、最初の1冊は、『去年を待ちながら』で、1989年刊、20年以上前ですよ。いやはや。創元ディックについては、ふれたいこともあるので、別にまとめます。
『渡りの足跡』は、《一万キロを無着陸で羽ばたき続ける――。渡り鳥たちを訪ねて知床、カムチャツカへ。奇跡を見つめた旅の記録》という内容の1冊で、読売文学賞随筆・紀行賞を受賞しています。
野鳥好きとしては読まずにはいられない内容で、単行本のときから気になってはいたんですが、なんとなく読み逃していたので、うれしい文庫化です。
梨木香歩さんで鳥関係と言えば、3月末にこんな本も出るようです。
【“空間亀裂、スペイン文学、渡りの足跡……風邪っぴきの読書と今日買った本たち。”の続きを読む】
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