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空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

ほんと、図鑑っておもしろいよね

『図鑑少年』という本がある。24の短篇が収められた本で、その表題作には、文字通り、図鑑少年が登場するのだけれど、男の子が図鑑大好きという単純な話ではない。本の紹介文に、《名も知れぬ人々が暮らす都市という空間、そこに無数に潜む事件のきざし……日常のこわれやすさ、出会いの切なさ、そして生きることの儚さが、豊かな陰影で綴られたストーリーの中から浮かび上がってくる》とあるように、ちょっと不思議な味わいをもついい本で、たまに棚から引っ張りだす。


中身がいいのはもちろんなんだけど、でも、この本が気になるのは、やっぱりこのタイトル(と、ついでに言えば、装丁も、なんだよね。中公文庫版は、堀江敏幸という、テイストの似た書き手によるすばらしい解説を得て、装丁といい、文庫のレーベルといい、理想的といっていい組み合わせで文庫化がされていて、もちろん文庫版もすばらしいのだけれど、でも、やっぱりこの本は、親本をおしたい、というのは、この本の造りが中身にぴったり合ってるからなんだよね、と脱線)がいいからなんだよね。


ちょっと前の記事だけど、8/6(土)、朝日新聞の別刷り「be」に「売れ筋拝見」が「子どもの図鑑 ユニークな編集で人気を集める」という記事が載っていましたね。ぼくはかつて図鑑少年だったし、今も児童向けの図鑑を、子どもと同じかそれ以上に楽しめるぐらいの図鑑好きなので、この記事、興味深く読みましたよ。


売れ筋としてあがっているのは、『講談社の動く図鑑MOVE』『小学館の図鑑NEOぷらす』『新ポケット版学研の図鑑』の各シリーズから6点。恐竜に虫に星にって、いまも昔も子どもが好きなものは同じなんだなあ、と思ってランキングを眺めてたんですが、かつてと違うのは、小学館の『もっとくらべる図鑑』『ふしぎの図鑑』といった、従来の生き物の種別の図鑑とは切り口のまったく異なるものが上位に入っていること。これ、おもしろいよね。おとなが読んでも。大好きな図鑑です。前者も好きだけど、後者がこれまた、よくできてるよねえ。


あと、かつてと違うという意味では、『講談社の動く図鑑MOVE』。副題の通り、動画(DVD)がついた図鑑。これまで、図鑑に音声CDがついたものはあったけど、DVDがついたものってなかったのかな。なんでも動画にすればいいってものではないけれど、でも、生き物、とくに恐竜が動いているところを見られるとなると、やっぱり見たくなりますよね。


いずれもすてきな工夫に満ちた本で、元図鑑少年の大人でも楽しめそう。夏休みだし、親子読書にいかが。


ところで。おもしろそう、見たい、などと書いておいてなんなんだけど、でもね、図鑑って、動かなくていいんだよなあと、一方では思います。っていうか、図鑑は、動かないのがいいんだよね、と。


だってね、DVDで動画なんかつけて、動くようにしたら、動いちゃうじゃん、絵が。動かないから、じっくり見られるから、いいんだよ、図鑑って。


子どもが一心になにか集中してるさまを、飽かずに眺める、なんて言うけど、子どもってほんとにそういうふうに本を「見る」んだよね。ぼくもそうだったと思うし、見る本によっては、今もそうなんだろうと思う。そういう、本に穴があくほどじっくり見たい「図鑑少年」にとってはね、図鑑は、動かないのがいいんだよ。だって、じっくり見たいもの。


図鑑って、ベストショットの集成なんだよね。今回の記事でとりあげられているような、恐竜や動物や宇宙や乗り物の図鑑もそうだし、あと、男の子たちの大好きなウルトラ怪獣図鑑とか、ライダー怪人図鑑のたぐい、あるじゃない? あれもまさにそう。ああいう怪獣怪人ものって、それこそテレビ録画でもDVDでも、動画で見ればいい、って思うかもしれないんだけど、番組本編の動く怪獣怪人たちと、図鑑とか、カードになったものとかって、は別なんだよね。


ある動物なり、恐竜なり、怪獣なり怪人なりを、図版1カットと、わずかな説明文で伝えるって、まさに「編集」力を問われること。図版の選び方、説明の与え方で、その生物なり天体なり怪獣なりのイメージって、まったく違うものになってしまう。それこそ、まさに作り手の力がもっとも試されるところなんだよね。そうした工夫なり苦労なりの集大成が図鑑なんだとしたら、それは、動かなくていいと思うんだよね。そのベストショットを、じっくりと眺めたいと、そう思うから。


……なんて、えらそうな図鑑論、ぶってみたけど、でも、たぶん買うと思うけどね、動く恐竜図鑑(苦笑)。でも、これから初めて図鑑を買う方、とくに、お子さんに図鑑を与える方には、ぜひともオーソドックスな、動かない図鑑を買ってあげてほしいなと、そんな気もするのです。



最後に。ほんとにまったくどうでもいい情報だけど、ぼくの好きな図鑑を数点をあげておこう(怪獣怪人図鑑のたぐいはあえて入れませんでした;苦笑)。


  • 石戸忠・今泉忠明監修『日本の生きもの図鑑』(講談社)
  • 白數哲久『楽しく遊ぶ学ぶ ふしぎの図鑑』(小学館の子ども図鑑プレNEO)
  • 松井正文他『両生類・はちゅう類』(小学館の図鑑NEO)
  • 山崎利貞・松橋利光『爬虫・両生類ビジュアルガイド イモリ・サンショウウオの仲間 有尾類・無尾類』(誠文堂新光社)
  • 『宇宙』(学研の図鑑)

1巻ものでハンディな図鑑としては、『日本の生きもの図鑑』の完成度はすごい。毎日持ち歩いて、毎日眺めたい1冊です。『ふしぎの図鑑』は最近の児童向け図鑑としては、『くらべる図鑑』と並ぶ傑作。生き物図鑑では、「恐竜」「水の生き物」「爬虫類・両生類」「鳥」の巻が好きなんですが、「爬虫類・両生類」で児童向け・大人向けからそれぞれ1冊選ぶとこの2冊に。前者は鳴き声CD付きがうれしい。後者は図鑑とはうたってませんが、図鑑的な本としてすばらしいので。あと、生き物系でちょっと変わったところでは、とりのなん子『とりぱん大図鑑』(講談社)は、薄くて網羅的なものではないけれど、『とりぱん』読みにはとっても楽しい1冊。


生き物以外では、宇宙の図鑑が大好き。ワイド版になる前の、学研の函入り図鑑のこの巻はものすごく好きだったなあ。でも、宇宙の世界は変化発見がたくさんありますから、やっぱり最新の研究が反映されたものがいいので、ノスタルジーで古いのを手にとるより、最新の図鑑を手にしたいものです。


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