海文堂書店が、本日、9/30で閉店となりました。
今日は、朝からずっと海文堂書店のことを考えていました。別に同店のことを考えたからといって何がどうなるわけでもないことは十分に承知しているのですが、でも、考えざるを得ないのです。ふと気がつくと、先日訪問したときの、棚の様子を、平野さんの接客姿を、常連らしいお客さんたちのレジでのやりとりを、思い出したりしてまいました。
最終日にお店に駆けつけられない身にできることといえば、地元のなじみの本屋さんに顔を出し、いつものようにお店の人とおしゃべりしたり買い物したりすることぐらいではないか。別にそんなことを考えたからということでもないのですが、ともかく、仕事帰りに吉祥寺へ。BOOKSルーエとパルコブックセンター吉祥寺店で買い物をしてきました。
BOOKSルーエで、花本氏が、「空犬さん! フリペコーナー、見て見て!」と、いつもよりやや高めのテンションで言うので、見てみると、「海文堂の伝言」なるペーパーが置かれていました。
A3四折のA5判。作ったのは花本氏で、同店の常連編集者、石井伸介さんと、海文堂書店の北村知之さんが稿を寄せているほか、ジュンク堂書店仙台ロフト店の佐藤純子さんのマンガも掲載されています。その3本もすばらしいんですが、圧巻は、花本氏が、訪問時にとってきたメモをたよりに自ら描き起こしたという店内図。いやはや。これ、すごいですよ。ちょっと感激します。正確かどうか、網羅的かどうか、縮尺が正しいかどうか、そのような諸々を超越しています。すばらしい。
先日の記事で、神戸在住の鳥瞰図絵師の方が作成し、海文堂書店の最後の営業日3日間に限定発売される絵図についての記事を引用しました。欲しいなあ、でも、買えないなあ、と悔しい思いを、残念な思いをした、神戸に簡単には足を運べない書店好きもいることでしょう。でも、大丈夫です。吉祥寺近隣在住者、中央線沿線在住者の我々には、この花本氏作成のフリペがあるからです。
↑夏葉社島田さんが買ってきてくれました。
この空犬通信でたびたび取り上げてきましたが、書店フリペに関心があるもので、これまで、ほんとにたくさんの、いろいろなタイプの書店フリペを見てきました。そのお店で売っている本の拡販要素が一切なく、同業他店、それも経営的にも地理的にも縁のない他店のことについての文章とイラスト「だけ」でまとめられた書店フリペを目にしたのは初めてかもしれません。
このようなフリペを作らせる海文堂書店というお店もすごいなと思うし、このようなフリペを作り、それを店内で配布してしまうBOOKSルーエというお店もまた、すごいなと思うのです。BOOKSルーエの客であることを、心からうれしく思いました。
「海文堂の伝言」は、BOOKSルーエの2階のフリペコーナーで無料配布中です。海文堂書店に行けなかった方、絵図や夏葉社の写真集を買えなかった方は、ぜひこのフリペを手にとってみてください。
そうそう、無料配布と言えば、先日の記事で紹介した、海文堂書店のしおり3種と、『ほんまに』復活の告知チラシを、西荻窪のブックカフェ、beco cafeに置いてもらうことにしました。同店に行くチャンスのなかった書店好きの方、ぜひbeco cafeをご利用の際は、フリペコーナーをチェックしてみてください。
BOOKSルーエ花本氏渾身の店内図を含むフリペ「海文堂の伝言」。そして、夏葉社島田さんの迅速な決断と行動とで、海文堂書店での販売が可能になった写真集『海文堂書店の8月7日と8月17日』。海文堂書店のすばらしさを伝える重要な記録が、2つも、ここ吉祥寺から生まれたことを、(自分が関わったわけでもなんでもないのに)吉祥寺を利用する本屋さん好きとして、吉祥寺書店員の会「吉っ読」の1人として(花本氏も島田さんも「吉っ読」のメンバーです)、ほんとに、ほんとにうれしく思います。
ぼくは、これから、先日訪問したときに海文堂書店で買ってきたたくさんの本を傍らに積み上げ、このフリペ、とくに店内図を眺めながら、独りで(ほんとは、海文堂の話ができる本好き書店好きと一緒なら、なおよかたんですが)、海文堂書店のおつれさま会を勝手にするつもりです。海文堂書店のみなさん、本当におつかれさまでした。そして、ありがとうございました。
追記(10/2):「海文堂の伝言」、見たい欲しいというご意見をいくつかいただきました。東京近郊の方は、ぜひBOOKSルーエの店頭で入手いただきたいのですが、お店に来られない方で、フリペをご希望の方は、BOOKSルーエに代わって、空犬がお送りしますので、コメント欄、ツイッターのリプライなどでご相談ください(お名前・送り先などの情報がいきなり公開にならないよう、ご連絡くださる際はご注意ください)。
【“さらば海文堂書店……そして、BOOKSルーエ発「海文堂の伝言」”の続きを読む】
出版書店関係者によるライヴイベントのご案内です。
ブックンロール(ブックなし)
日時:11月9日(土)
OPEN 14:00 START 14:30〜18:30
場所:ルースターノースサイド(東京・荻窪)
03-5397-5007
会費:1000円(ワンドリンク付き)
出演:(出演順)
1 PANDA音楽隊
2 The“B”Nuts
3 みぎたとしき
4 N Band
5 TAMI'S BAND
6 酔舎バンド
7 どろポリス
タイトルにあります通り、「ブックンロール」からトークをのぞいた、ライヴのみのイベントです。出演は全員、(「元」も含め)出版・書店関係者です。場所は、過去に「ブックンロール」を開催したことのある荻窪のライヴハウス、ルースター・ノースサイドです。
4の「みぎたとしき」、6「酔舎バンド」は、ブックンロールにも出演したことのある、おなじみのメンツですが、それ以外は、ブックンロール関連のイベントには初めての参加となります。「PANDA音楽隊」は亜紀書房の佐藤さんのバンド。「The“B”Nuts」は東京堂書店の河合さんのバンド。「N Band」は日販の谷いいさんのバンド。「TAMI'S BAND」は元リブロの駒瀬さんのバンド。「どろポリス」は偕成社の西川さんのバンド。「TAMI'S BAND」は、何度もライヴでご一緒しているのですが、それ以外のみなさんは初めてなので、どんなバンドなのか、主催者のぼくも実はよくわかっていません(笑)。楽しみだなあ。
事前の予約などは不要ですので、ぜひ気軽に遊びに来てください。イベント終了後は、荻窪の飲み屋で懇親会を予定しています。出演者だけでなく、お客さんとして来てくださった方も参加できるような、にぎやかな会を考えていますので、ぜひ夜の予定も余裕を持ってきていただけるとうれしいです。
【“ライヴイベント「ブックンロール(ブックなし)」、やります”の続きを読む】
恒例の書店の開店・閉店関連情報のまとめです。前回の記事からまだ2週間ほどですが、けっこうな件数になりましたので、いったんまとめることにします。
●オープン
- 9/26 天狼院書店(15;豊島区南池袋)
- 9/26 文教堂ホビー・アニメガ町田店(60;町田市)
- 9/30 宮脇書店新栗林南店(150;香川県高松市)
- 10/ 2 アニコン千林店(40;大阪市旭区)
- 10/ 4 オークスブックセンター妙典店(60;千葉県市川市)
- 10/ 5 アシーネ新座店(127;埼玉県新座市)
- 11/ 8 未来屋書店小郡店(176;福岡県小郡市)
- 11/19 未来屋書店東員店(317;三重県東員町)
- 12/ 1 宮脇書店ゆめタウン吉田店(145;広島県安芸高田市)
- 12/20 蔦屋書店幕張新都心店(千葉市)
- 12/20 未来屋書店幕張新都心店(千葉市)
まずは、Web・ツイッター他で話題の天狼院書店(@tenroin)から。関連記事はこちら、「天狼院書店、26日にオープン。」(9/25 文化通信)。《元書店員の三浦崇典氏が「次世代型『リアル書店』」を目指して個人で立ち上げた天狼院書店が9月26日、東京・豊島区の南池袋にオープンする。店舗面積は15坪、ビジネスパーソン向けの書籍を中心に陳列》とあります。気になるお店ですので、近いうちにお店を訪ね、あらためて記事で紹介したいと思います。
文教堂ホビー・アニメガ町田店、公式サイトの案内はこちら、関連記事はこちら、「町田ジョルナに「ホビーとアニメ」専門店-異ジャンル融合で集客狙う」(9/27 町田経済新聞)。
記事を引きます。《書籍や文具の販売などを手掛ける文教堂(神奈川県川崎市)がプロデュースするアニメ・コミック専門店とホビー専門店の複合業態。異なる2つのジャンルの融合により老若男女を問わず幅広い集客を狙う。アニメガの店舗としては13店舗目の出店》。
町田ジョルナといえば、昨年10月丸善(MARUZEN町田ジョルナ店;文房具のみで書籍扱いなし)がオープンするも、1年経たない今年の8/25に閉店となっていますが、その跡地を含む場所でしょうか。
オークスブックセンターは、9/23に閉店となった流水書房妙典店の跡地に居抜きで入るお店。
最後の2店はどちらもイオンモール幕張新都心に入るお店。今回のイオンは《売り場面積は約13万平方メートル》で、《国内のモールで3番目に大きいという》大型商業施設。関連記事はこちら。「幕張にイオン巨大モール 13万平方メートル、年末開業」(9/20 朝日新聞)。
朝日の記事では、書店についてはふれられていませんが、別の記事にありました。「「イオンモール幕張新都心」モール4棟に約350の専門店 蔦屋書店」(9/19 Fashionsnap.com)。
このほか、イオンモールに多く出店している未来屋書店も入るようで、求人サイトに案内が出ていました。それぞれの売場面積や、モール内の場所についてはまだわかりません。
モールの巨大さ、店舗数、ターゲットの層の幅広さを考えれば、複数の書店、それもタイプの違う書店が入るのはおかしくない、というか、以前であれば、ここまで大きくない商業施設でも、複数の書店が入ったりしたものですが、最近は、新刊書店が同一商業施設に複数オープンなどというニュースはなかなか聞けなくなりましたから、その意味でも、なんとなくうれしくなりますね。
すみわけについて、蔦屋書店が《代官山店のコンセプトをそのまま表現するという》と完全大人志向を打ち出しているのに対し、未来屋書店は、《日本最大級のエンターテイメント型児童書売場「みらいやのもり」》《こどもとのコミュニケーションを楽しくする文房具》《こどもを中心とする3世代に向けた総合書店》と、「こども」をメインターゲットにしていることを強調しています(前者はFashionsnap.comの記事から、後者はスタッフ募集のサイトから)。
【“天狼院書店、幕張新都心、ジュンク明石……新刊書店の開店・閉店いろいろです”の続きを読む】
月末の閉店が決まっている、神戸・元町の海文堂書店。もう訪問のチャンスはないかなあ、とあきらめていたところ、別の用事になんとか組み込むことができ、短時間ではありますが、先日、お店を訪ねてくることができました。
いつもなら、自分で撮ってきた下手くそな写真の整理が終わったら、いそいそと書店レポートの記事にとりかかるところですが、今回は、なんというか、いつものだらだら書きの駄文にまとめてしまうのが、なんとなく気が進まない感じです。
ぼくには、夏葉社島田さんが書いたこの文章や、ジュンク堂書店仙台ロフト店佐藤純子さんが書いたこの文章のような、すてきな文章は書けません。かといって、キッチンミノルさんの写真がすばらしい夏葉社の新刊『海文堂書店の8月7日と8月17日』が出た後に、下手くそな写真を並べるだけの記事をまとめるのも気が引けます。
だから、たくさんの写真を前にしながら、何もできずに、何も書けずにいます。
佐藤純子さんは、こんなふうに書いています。《海文堂さんがずっとずっとあの場所でたくさんのお客さまに愛されてきた、その体温がお店の本棚からほかほかと伝わってきます。私も神戸に生まれ育っていたら、きっといまここにいるたくさんのお客さまのように、たくさんの時間をこうして過ごしていただろうなぁと思いました》。
《平野さんが神戸の街からずっと気持ちを寄せて、温かい言葉を贈ってくれたから、いままで本屋でいられました。私にできることは、するべきことは、仙台で本を届けること。そう信じることができました》。
島田さんはこんなふうに書いています。《やっぱり、どの棚を見ても、素晴らしいのだった。人文書、文芸書、芸術書、児童書、海事書、文庫、新刊棚、どの棚を見ても、海文堂書店で働くひとたちの心が伝わってくるような棚ばかりであった》。
お会いしたかったお店のみなさんのうち、曜日の関係で、平野さんにしかお会いすることができませんでした。平野さんには、品出しやレジでお忙しいところ、少しだけおしゃべりに付き合っていただきました。
次に、神戸に来ることがあっても、そのときは海文堂書店がないこと、こうして平野さんとおしゃべりしたり、買い物したりすることがかなわないことが、そのときもぴんときませんでしたし、戻ってしばらくたった今も、実感できずにいます。閉店まであと10日ほどのお店にしては、棚が、あまりにも生き生きして、動いているように見えたから、なのかもしれません。
この日、店内で耳にしたことばで、いちばんこたえたのは、地元客らしきおじさんが、レジで月末の閉店を知らされ、思わずもらしたのであろう、こんなひとことでした。
「なんや、次から、どこで本買うたらええねん」。
……ことばもありません。
【“海文堂書店に行ってきました”の続きを読む】
今年はほんとに書店関連本の当たり年で、次から次に、広義の「本屋本」が刊行されています。「本屋本」に目がなく、片端から手にしてきた身にはうれしいんですが、あんまり続くと、買うのも読むのも大変で、いたしかゆしですね。最近の「本屋本」を、雑誌の特集も含め、いくつか紹介します。
『漫画・うんちく書店』。新書で漫画でうんちく……書名・作りからして何やら妙な感じですが、こういう内容です。《青年が本屋で立ち読みをしていると、トレンチコートの男が声をかけてきた。「知っているか? その本に挟まれた二つ折りの紙の名を――」。これを皮切りに、男の薀蓄が怒涛のように炸裂。書店員の習性や業界用語、誰もが知る大型書店チェーンや本の街・神保町についてまで、蘊蓄紳士「雲竹雄三」が語り倒す、うんちくコミック第2弾!》。
読んでみると、まさに本と書店に関する「うんちく」だけで成り立っている、なんだか不思議な漫画でした。ほぼ100%、本好き本屋さん好き向けの本だろうと思いますが、「本好き本屋さん好き」に多く含まれる書店関係者は、ここに書かれているようなことには知っていることも多いだろうし、書店関係でなくてもコアな書店好きには言わずもがなっぽいこともけっこうある感じ。おもしろく読めはするけれど、いったいだれに向けた本なのか、読者対象がどうなのか、いろいろ気になる本でもありました。
『傷だらけの店長 街の本屋24時』は、親本刊行時に、書店に関心のある人たちの間で(いろいろな意味で)大変な話題になった1冊。文庫化にあたり、田口幹人さん(さわや書店)「そういう書店員にわたしはなりたい」、長谷川仁美さん(ブックエキスプレス)「わが輩は、小売である」、笈入建志さん(往来堂書店)「本屋という場所」の3編を巻末に収録。単行本を持っているので購入は見送りましたが、書店員さんたちの解説は読みたいです。
『古本の時間』については、いろいろふれたいことがありますので、稿を分けます。
『kotoba』の特集は「読書人のための京都」。目次には、豪華な執筆陣による、京都+本をキーワードにした文章がいくつも並んでいます。書店的におもしろそうなのは、グレゴリ青山さんの「京都個性派古書店案内」と付録の「読書人のための京都マップ」。後者は、《創刊3周年を記念する特別付録として、おすすめの書店、喫茶店、執筆者おすすめの「京都で居心地の良い場所」、文学スポットなどを掲載した》というもの。こちらのページで、地図の紙面が見られます。
『名古屋とちくさ正文館』は、『本屋図鑑』にも登場する名古屋の名店、ちくさ正文館の店長、古田さんのインタビュー本。《学生時代から映画の自主上映にかかわった著者は、1974年、ちくさ正文館にバイトで入社、78年社員。それ以後40年にわたり、文学好きな経営者のもと、〝名古屋に古田あり〟と謳われた名物店長となる》。
大好きなお店だし、古田さんも尊敬する書店人のお一人なので、喜んで手にとった1冊なんですが、内容については、ちょっと感想を申し上げにくい感じ。というのも、古田さんの書店人人生の話は大変に興味深いもので、そういう部分はおもしろく読めるのですが、今どきの書店のありようについては、ちょっと厳し過ぎるようなところがあるし、どうしても、昔は良かった的なところが目についてしまうし、本屋大賞や『本の雑誌』についても、ここまで書かなくてもなあ、というところがあったりもするし……。勉強にはなる本ですが、読後感的にはやや複雑な思いをさせられる1冊。現役の書店員さんの感想を聞いてみたくなる本です。
この7月には、沖縄の古本屋さんの本、『那覇の市場で古本屋』が出て、しばらく前の記事で紹介しましたが、今度は、空犬通信的にも縁の深い町、東京・西荻窪の古本屋さんの本が登場です。お店は、JR西荻窪駅から徒歩数分、バス通りを少しはずれた、住宅街のなかにある音羽館。この空犬通信でたびたびご案内している、空犬企画・主催のトークイベント、beco talkを開催しているブックカフェ、beco cafeのすぐそばでもあります。
↑こちらが音羽館。
【“書店関連本の刊行が続きます”の続きを読む】
夏葉社の島田さんから、まもなく出る新刊の見本を、(本屋図鑑編集部の特権で)いただきました。
本屋さん好きならば、この表紙だけでぐっときますよね。ツイッターですでに書影は目にしていましたが、実物を手にしたときは、あらためて感激して、思わず見入ってしまいました。
A5判横型で、48ページ、オールカラー。1365円(税込)です。最小限のキャプションのみを添えた、写真集です。ただただ、実物を見ていただきたい、そう思いますので、内容については、くわしくは記しません。海文堂書店のサイトに、内容紹介と写真が1枚あがっていますので、そちらをご覧ください。
すばらしい写真は、キッチンミノルさんの手になるもの。本をぱらぱらめくりながら、やっぱり本屋さんの棚っていいなあと、あらためて実感させられます。とにかく、写真がほんとにすばらしくて、ほんものの棚を見ているようです。こんな、書店のことだらけのブログをやっていて、あちこちの書店レポを書いたりしていますから、本屋さんの棚を撮影させてもらう機会は多いほうです。でも、こちらのは単なる記録用の素人写真。キッチンミノルさんの写真は、記録用途にしてもあまりにも下手くそな当方の素人写真とは、もう、なんというか、まったくの別世界、異次元のレベル。同じように、書店の店内や棚を対象にしているのに、なにゆえこんなに違うのか、と不思議になるぐらい、ぜんぜん違うのです。とにかく、キッチンミノルさんの写真は、すばらしいです。
少し前の記事にも書いた通り、ぼくは「棚」好きなんですが、そういう趣味の持ち主が見ると、ほんと、手が、体が、心が震えます。もちろん、棚自体がすばらしいからこそ、なのですが、でも、文章と同じで、元がすばらしいからといって、だれが撮ってもその棚のすばらしさを同じように引き出せるわけではありませんからね。キッチンミノルさん、ほんとにありがとう。ぼくのように、簡単にお店におじゃまできない身には、最高のプレゼントになりました。
『本屋図鑑』は、取り上げたお店の店内や棚を見せるのに、写真は一切使わずに、すべてイラストで見せました。『本屋図鑑』は、イラストにして正解だったと、島田さんもぼくも思っているのですが、写真で棚や店内を見せるのも、やっぱりいいものだなあと、この本を見て、キッチンミノルさんの写真を見て、あらためて思いました。50ページに満たない、小冊子といっていい分量の本ですが、海文堂書店の魅力をあますことなくとらえた写真の数々が訴えかけてくるものは、見かけの分量の何倍もあります。だから、あかずに、何度も何度も、眺めています。
『海文堂書店の8月7日と8月17日』は、9/21発売です。夏葉社によれば、9/30までは海文堂書店での独占販売で、残部が出た場合、一部のお店で販売予定とのことです。本屋さんの店内の様子をとらえた写真集として、本屋本の歴史に残る1冊になったのではないかと、ひいき目抜きにそう思います。たくさんの本屋さん好きに、手にしてほしい1冊です。
ちなみに、本書のすばらしい写真を手がけたカメラマンのキッチンミノルさんと、『本屋図鑑』にこれまたすばらしいイラストを寄せてくれた得地直美さんはご夫婦です。その意味で、『本屋図鑑』の縁で生まれた1冊、と言ってもそんなに間違いではないかもしれません。だから、ぼくは、この本にはまったくタッチしていないのですが、でも、本屋図鑑編集部の1人として、この本の完成・刊行が、なんとなく、というか、とても、うれしいのです。
島田さん、いい本になったね。
なお、海文堂書店は、既報の通り、9/30で閉店となります。夏葉社島田さんと海文堂書店については、この記事も併せてお読みいただけるとうれしいです。
【“海文堂書店の本が出ます”の続きを読む】
西荻窪のブックカフェ、beco cafeで、ほぼ毎月開催している出版・書店関連テーマのトークイベントbeco talk。第11弾のご案内です。
beco talk vol.11
「ガイブン」はこんなにおもしろい!
〜翻訳文学編集者が語る「ガイブン」の作り方・読み方〜
日時:11月29日(金)
OPEN 19:00 START 19:30(〜21:30)
会場:beco cafe(東京・西荻窪)
会費:1000円(ワンドリンク付)
出演:山口晶(早川書房)、空犬(吉っ読)
*満席のため、予約受付終了となりました。
「なかなか売れない」と言われる「ガイブン(=海外文学)」。そんな「ガイブン」の魅力・読みどころを、現役(酒呑み)ガイブン編集者が(呑みながら)語ります。ガイブンのおもしろさを、おいしいお酒を片手に(酔っぱらいながら)一緒に話しませんか? というのが今回のトークです。
翻訳文学とはどんなジャンルなのか、翻訳文学の編集とはどんな仕事なのか。翻訳家とはどんなふうに仕事をしているのか。山口さんの属する早川書房の翻訳出版の事例を中心に、翻訳文学と翻訳文学編集の全体像を、聞き出したいと思います。
ひとくちに翻訳ものといっても、そのジャンルは多岐にわたっています。早川書房では、SF・ミステリなどのエンターテインメント系列のフィクション作品のほか、純文学作品や演劇作品、ポピュラーサイエンスの作品もたくさん出版しています。山口さんは、コーマック・マッカーシーやカズオ・イシグロらの純文学系列の作品やハヤカワ・ポケット・ミステリの作品などを手がけています。
これまでに手がけてきた過去の人気作家・人気作品の事例をたくさん紹介していただきますので、翻訳文学好きの方はもちろんですが、どうも苦手で読めない、翻訳ものは何を読んでいいかわからない、そんな読者の方にも、ガインブンの入り口として、ぴったりの話が聞けると思います。翻訳ものの編集に長く携わってきたプロによるリアルな話を聞ける、大変に貴重な機会ですので、たくさんの本好きの方に聞きにきていただければと思います。
予約は、9月30日(月)に受付開始となります。予約は、空犬ではなく、お店での受付になりますので、beco cafeにご連絡ください。
【“今年最後のbeco talkは、ガイブン(海外文学)がテーマです”の続きを読む】
しばらく前の記事で紹介済みですが、改装・改称のため、元の店舗を一時閉店、場所を移して仮店舗営業をしていたリブロ吉祥寺店が、先日9/13、パルコブックセンター吉祥寺店として、新たにオープンとなりました。
関連記事はこちら。「リブロ吉祥寺店、パルコブックセンターにリニューアル」(9/6 新文化)、「「パルコブックセンター」本日オープン-リブロ吉祥寺店がリニューアル」(9/15 吉祥寺経済新聞)。サイトの案内はこちら。「9月13日(金) リニューアルオープン」(リブロ「新着情報」)。同店については、空犬通信でも何度もふれていますが、一時閉店の経緯についてはこちらを、仮店舗の様子はこちらをご覧ください。また、リブロ→PBCの先例ということで共通点なども多い、渋谷店の改装直後の様子についてはこちらをご覧ください。
新文化の記事を引きます。《「吉祥寺スタイル」・「コミックギャラリー」コーナーを設けるほか、文具・雑貨コーナーを拡大する。「吉祥寺スタイル」は多目的イベントスペースとしても活用。環境に配慮し照明は全てLED化。また、レジ・什器位置の変更も行う。店舗面積は約245坪。営業時間は午前10時から午後9時まで。店長は栗田克明氏。公式ツイッター@parcobookcenterでは、イベント情報なども発信している》。
オープン当日の様子を、会社帰りに見てきましたので、売場の写真を中心にご紹介します。(以下、店内の様子は9/13の夜時点のもので、写真はお店の方に断って撮影したものです。店内の混雑する夕方から夜にかけての取材だったため、お客さんの写り込みを避けるため、不自然なアングルやトリミングになっている写真がありますが、ご了承ください。)
↑エスカレータを降りると、このような感じ。右にはPBCのロゴ、左にはイベントなどの案内を含むリニューアル告知ポスターが見え、正面は「吉祥寺スタイル」というスペースになっています(後述)。
↑柱にはフロア全体のマップ。この柱の脇にPBC店内のフロアガイドが、裏側に検索機があります。改装前はエスカレーター脇の位置にあったレジの位置が、建物の北側、上りエスカレータ側に変わっています。
場所はB2Fワンフロアで変わらず。エスカレータ逆側、上り口の辺りは、改装前はフェアなどの場所に使われていましたが、その一角にスマホのアクセサリショップが入りました。先の記事にありました通り、総売り場面積は245坪ですから、ほとんど変わらずといっていいでしょう。
通路が以前よりも広めにとられ、全体にゆったりした印象になりました(訪問時、たまたま車いすのお客さんがいらっしゃいましたが、雑誌棚の間の通路なども、問題なく移動できていました)。フロア中央部分の什器の高さがほどほどにおさえられているため、フロアの見通しがよく、また、後述するオレンジのイメージが効いているため、以前よりも明るい印象になった感じがします。
本の在庫は全体に少し減らしたそうですが、レイアウトの工夫や什器の配置のせいか、本が少ない、減った、という印象は受けませんでした。
では、以下、店内の様子を順に見ていきます。まずは、今回の改装の目玉の1つ、改装前、洋書・芸術書などが置かれていた一角をぜいたくに使った新設の「吉祥寺スタイル」。
名前の通り、吉祥寺にちなんだ本がたくさん並んでいます。吉祥寺本にかぎらず、広くフェアにも使われるようです。フロアの中央部分にある平台は可動式になっているため、中央を広く開けて、トークや講演・サイン会などのイベントスペースにも使えるようにデザインされているそうです。20人ぐらい入りそうな感じです。
奥の棚は、広義の吉祥寺本を集めた棚になっています。地元作家・作品については、お隣三鷹駅近くの啓文堂書店三鷹店も力を入れていますが、こちらも負けていません。ご覧の通り、4本の棚をフルに使い、文芸作品にコミックに児童書に実用書にと幅広いジャンルから、地元作家作品や吉祥寺が舞台の作品など、タイプの異なる本がたくさん集められています。このジャンルは、ぼくも強いつもりでいましたが、吉祥寺関連だと知らない本がいくつも目につくなど、楽しい発見がありました。
【“パルコブックセンター吉祥寺店、リニューアルオープン 前編”の続きを読む】
本棚好きの空犬です。本そのものも好きだけど、本が並んでいる空間・場所が好きなもので、本棚は、本屋さんのも、図書館のも、自宅のも、友人知人宅のも、どれもとても気になります。だから、本棚を目にすると、ついつい、見入ってしまいます。
先日も、ああ、いい本が並んでるなあ、好きな作家の本ばっかりだなあ、パラフィンがけの本は見た目が落ち着いていていいなあ、と、うっとり眺めていたんですが、どこの本棚かというと、自室の本棚でした。どうりで、好きな本ばかり並んでるわけだ。安いといいなあ、と思って、裏見返しの値札を確かめたりしてましたからね(笑)。重症です。
本棚が好きなので、本棚関連の本はたいてい手にとります。紹介したい本棚本はたくさんあるんですが、少し例をあげると、たとえば、なかなか気に入る本棚がない、ならば作っちゃえ、という『清く正しい本棚の作り方』(スタジオタッククリエイティブ)、同じく本棚を作るエピソードが出てくる、喜国雅彦さんの『本棚探偵の冒険』 (双葉文庫)、作家ら著名人の本棚を集めた『本棚』『本棚2』(アスペクト)、「「本」のある仕事場」の様子をイラストで描きだした、内澤旬子さん『センセイの書斎』(河出文庫)、そして、そのものずばりの書名に、本棚好きなら手を出さないわけにはいかない『本棚の歴史』(白水社)。
ストレートな本棚本というわけではないですが、得地直美さんの味わい深いイラストで描きだされた、書名まで読み取れる書棚がたくさん登場する『本屋図鑑』を、この一群に加えてもいいかもしれません。とにかく、本棚本は楽しいのです。
さて、そんな本棚本に、また新刊が加わりました。雑誌の特集と単行本を1点ずつ紹介します。
『天然生活』……なんとなく、自分の生活に縁遠そうな感じで、初めて買う雑誌です。特集は、「本棚は親友」。登場するのは、雅姫さん、吉本由美さん、赤木明登さん、岸朝子さん、角田光代さん、高山なおみさん、平澤まりこさん、北杜夫さん他の、本棚や愛読書。
「“あるもの”を使ってつくる」という「アイデア本棚」という記事もあります(紹介されている例は、おしゃれに本を見せる、インテリア的な発想のもので、蔵書家の参考になりそうなものではありませんが……)。「街角の本棚」という記事では、映画館・銭湯・喫茶店などの本棚が紹介されています。
帯に《本好きにとって、本棚は宝物、憧れ、宇宙。そして、本棚はほんとに厄介──。》とある『私の本棚』。本棚好きとしては買わずにはいられない書名であり、テーマであり、そして表紙ですよね。
内容紹介によれば、このような本です。《ずらっと揃った文学全集や、愛おしい本だけを並べた棚など本棚の思い出は人それぞれ。でも一番の悩みは、溢れる本との長年の格闘──小野不由美・椎名誠・児玉清・南伸坊・井上ひさし・荒井良二・西川美和・中野翠・内田樹・金子國義・池上彰・鹿島茂・福岡伸一など23人の読書家による、本棚にまつわるちょっといい話》。
作家・読書家のみなさんが、本と本棚に翻弄される様が楽しくて、あっという間に読めてしまいます。「本棚」の話に特化したものもあれば、自らの読書歴・読書感のような話になっているものもあります。いずれも読ませますが、《僕の本に対する愛着は並外れて強いのだろう》という一文で始まる、児玉清さんの、尋常でない本好きぶりが、ひときわ印象に残りました。
その児玉清さんがなくなって2年少しになります。文中に描かれた、大量の本は、本棚はどうなったんでしょうか……。「蔵書一代」などといいますが、自分がいなくなったら、この本棚はどうなるんだろう……読後、自室の本棚(と、そこに収まりきらずに、本棚周囲に山を作りつつある本たちと)を眺めながら、そんなことをも考えさせられる1冊でした。
お休み期間をはさんだため、前回の開店・閉店情報から、ひと月ほど間があいてしまいました。書店の開店・閉店関連情報のまとめです。
●オープン
- 8/ 7 正文館書店緑区グリーンプラザ店(63;名古屋市緑区)
- 8/17 栞日(しおりび)(20;長野県松本市)
- 9/5 MARUZEN丸広百貨店飯能店(290;埼玉県飯能市)
- 9/20 未来屋書店弘前ヒロロ店(150;青森県弘前市)
- 9/20 ツタヤ渋川店(60;群馬県渋川市)
- 9/20 喜久屋書店東急プラザ新長田店(215;神戸市長田区)
- 9/20 球陽堂書房まちなと店(140;沖縄県浦添市)
- 10/ 2 夢屋書店アピタ初生店(130;静岡県浜松市北区)
- 10/ 4 蔦屋大分森町店(200;大分市)
- 10/ 9 夢屋アピタ西大和店(120;奈良県上牧町)
- 10/10 ジュンク堂書店近鉄あべのハルカス店(650;大阪市阿倍野区)
- 10/19 ESPACE BIBLIO(エスパス・ビブリオ)(東京都千代田区)
- 12/? TSUTAYA盛岡店(2117;岩手県盛岡市)
件数が多いので、大きな案件以外は、ごく簡単に。名古屋の正文館書店、関連記事はこちら。「正文館書店、緑区グリーンプラザ店オープン」(8/13 文化通信)。《2年ぶりの支店開店で、6店舗目となる》とのこと。
松本の栞日は、新刊だけでなく、リトルプレスや古本も置く、カフェ併設のお店とのこと。関連記事はこちら。「松本・駅前大通りに書店「栞日」-作り手と読み手をつなぐ「届け手」に」(9/6 松本経済新聞)。
飯能のMARUZEN(丸善)は、東飯能駅近くの丸広百貨店内、6階のワンフロア店。東飯能・飯能は、行く機会のないエリアで、周辺の書店事情はまったく知らないのですが、検索してみると、両駅周辺だけで、複数の新刊書店がヒットします。そのようなエリアに、300坪近いサイズの書店が加わることの影響は大きそうです。
なお、ジュンク/丸善系列の新店は、毎回どのブランド表記になるのかが気になるところですが、今回は丸善ブランド。ただ、お店の店舗紹介ページでは「MARUZEN」表記になっていますので、それに合わせました。なお、ジュンク堂書店のサイト、会社案内のページでは、「丸善」表記になっています。
くまざわ傘下入りしてから1年少しになる、沖縄の球陽堂書房。今回は、くまざわグループに入ってからは、2店舗目の出店となります。
御茶ノ水の、ESPACE BIBLIOは、原宿にあった旧「ブックス&カフェ ビブリオテック」が、移転・改称となったもの。リニューアルに入れるべき案件かもしれませんが、ここで紹介しておきます。
今回紹介する新規案件のなかで、話題を呼びそうなのが、あべののジュンクと盛岡のTSUTAYAでしょう。まずは、あべのから。噂レベルの段階で、すでに記事では少しふれたことがありますが、大阪市阿倍野区の大型商業施設「あべのハルカス」内に、ジュンク堂書店がかねての噂通り、大型店を出店します。
あべのハルカス近鉄本店ウィング館の7、8階の2フロアで、売場面積650坪という数字は、超大型出店の続いたジュンク堂書店の新店としては控え目な数字に思えてしまいますが、十分に大きなサイズ。5階にはMARUZENの文具が入るそうですから、文具を含めた総売り場面積は、800坪を超えるようです。
あべのには、ビッグウィル阿倍野店がありますが、後述の通り、入れ替わるようなかたちで、10/6に閉店。
以前の記事でふれたこともありますが、天王寺・あべのエリアでは、開店・閉店が続き、書店事情がこの数年でずいぶん大きく動きました。くまざわ、旭屋、リブロ、喜久屋など、すでに複数の書店がしのぎを削るエリアに、今回の大型出店です。周辺各店への影響は、相当大きなものになることでしょう。
子どものころを大阪で過ごしている身には、天王寺は思い出の多い街。小学生のあるころまでは、百貨店イコール、天王寺の近鉄百貨店でした。それだけに、天王寺の書店事情は、やはり気になります。次に大阪に行く機会がありましたら、ぜひ天王寺・あべのエリアの書店をじっくり見てきたいものだと、そんなふうに考えています。
【“ジュンクあべの、TSUTAYA盛岡、旭屋、流水……新刊書店の開店・閉店いろいろです”の続きを読む】
とくに旅好きというわけではない。空港は好きだし、見ている分には飛行機は好きだけど、できれば乗りたくない。そんなタイプなもので、海外に出かけたりすることはまずないんですが、先日、ものすごーく久しぶりに海外へ行く機会がありました。
今回は、本にも書店にも関係のないお出かけで、実際、書店にもまったく寄れなかったので、海外書店レポみたいな記事を書くネタはぜんぜんないのですが、乗り継ぎのために立ち寄った空港内に書店があったので、ちょっとだけのぞいてきました。
今回、ぼくが立ち寄ったのは、ポートランド空港(アメリカ合衆国オレゴン州)内にあるお店で、Powell's Books(パウエルズ書店)の支店の1つ、Powell's Books at PDX。乗換のためのわずかな時間で、しかも家族が一緒でしたから、ほんとにざっと見ただけ。くわしい書店レポートを書けるような訪問ではなかったのですが、それでも、印象に残るところがいくつもありましたので、簡単にまとめておきます。(以下、お店の様子は8月の半ばごろのもの。1店だけを見て書いた、単なる個人の印象で、これを持って、米国の書店事情を云々するものではありません。)
まず、Powell's Books(パウエルズ書店)について。アメリカはオレゴン州ポートランドを本拠とする書店で、Wikipediaによれば、《Powell's headquarters, dubbed Powell's City of Books, claims to be the largest independent new and used bookstore in the world》(パウエルの本店「パウエルズ・シティ・オブ・ブックス」は新刊・古書を扱う独立系書店としては世界最大とされる)とあります。
ほんとは、その本店のほうを見てくることができればよかったんですが、前述の通り、今回見てきたのは、空港内の小さなお店。
↑Powell's Books at PDX、外観。店頭の様子がわかるよう、角度を変えて。店頭は左から、日本の書店の洋書売場でもよく見かける、ペーパーバックを差す回転ラック、隣は後述するお店のスタッフのおすすめ本を並べた平台、その隣が地元作家(「Pacific Northwest Authors」との表示が)の平台、カードの回転ラックをはさんで、児童書の回転ラックが並んでいました。
↑左がお店の看板・ロゴ。右は店頭、正面中央に出ていた看板で、《Beat The Summer Heat With Cool Books & Gifts》(夏の暑さをクールな本とギフトでふっとばそう!)とあります。
それほど広くはない店内をざっと見てみると、こんなようなことがわかりました。
- 本は、面陳が多い(上の外観写真の奥に、棚の様子が少し見える)。というか、ほぼすべてが面陳で棚差しはほとんどない。当然のことながら、広さに比して、本の点数は非常に少ない。
- 本は、新刊中心ではあるが、USEDが混ぜ売りされている。棚やスペースを分けずに、混ぜて並べられていて、USEDには「USED」というシールが表紙に貼ってあり、裏に値段を記したシールが貼られていた。本によっては、新刊と古書の両方が並んでいるものもあった(同じ本の平積みに混在している例も)。
- 店内には雑貨が多い。しおりなどの読書グッズや筆記具などの文具のように、書店で扱われる定番商品もあるが、本にはあまり関係のなさそうなおもちゃ類や靴下なども売られていた。こちらもはっきりと棚が分かれていない感じ。
- お店独自のものと思われる手書きPOPが、店内のあちこちに貼られていた。日本のように、スタンドを使ったものはなく、棚に直接貼られているものが多かった。「STAFF PICK」という表示があった(お店のサイトにもそのようなコーナーがある)。
- 店頭に電子書籍端末が数種並んでいた。
そう、これらって、要するに、日本の書店の、最近の様子と非常に似ている、というか同じなんですよね。空港内の、こんな小さな店にもサイン本が並んでいたりするあたりも、日本の書店と同じ。
↑これが手書きPOPの例。全部を確かめたわけではないですが、カラーコピーではなく、オリジナルで、チェーン内で使い回したりしているのではなく、このお店のスタッフが独自に用意したもののようです。右の写真で、「STAFF PICK」とあるのは、台紙だけが共通で、中はそれぞれ手書きです。書体の違いから、複数のスタッフが携わっているのがわかります。色を使ったり、線を引いたり、太字にしたり……手書きPOPの工夫の仕方にも共通点がたくさんありますね。
【“日米書店の共通項に興味津々……ポートランドのパウエルズ”の続きを読む】
好きな物に囲まれて暮らしているので、自宅・自室は基本的に大好きなんですが、家にいて1つだけ残念なのは、ふらりと書店に行けないこと。この文章にも書きましたが、いま住んでいるところには、徒歩で簡単に行ける範囲に新刊書店がありません。そのため休日は、わざわざお出かけしないと、書店にいけませんし、夏休みをとったりすると、本屋さんに行けない日が続いたりします。
ふだんはあまり意識しませんが、休みをとったりして、しばらく離れてから出社すると、昼休みや会社帰りに、ふらりと書店に寄れるのが、本好きにとってどれだけ幸せなことかを実感させられます。とくに、日中の多くの時間を過ごしているのが神保町だというのは、やはりほんとに幸せなことなのだなあ、とあらためて思います。もうずいぶん長く、この街に出入りしているくせに、ほんとにそう思うのです。ちょっと間が空いただけなのに、この2、3日、昼休みの神保町書店散歩が楽しくてしかたありません。
さて、そんな本好きにとってのパラダイス、神保町の書店ですが、いくつか変化がありましたので、ご紹介しておきます。まずは、三省堂書店神保町本店。先日、9/1から耐震工事が始まっています。
↑店内に貼り出された工事の案内。
併せて、店内の改装も行われていて、各階レジが1階集中レジになるようです。同店のツイッター(@honten_sanseido)では、こんなふうに案内されていました。《三省堂書店神保町本店は、昨日よりレジカウンターが1階に集約されました(3階文房具売場、4階三省堂古書館、6階れんず屋を除く)。また、11月中旬まで耐震工事中につき、一部売場が変更いたします。お客様にはご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解の程よろしくお願い申し上げます》。 文中の「11中旬まで」は、耐震工事の案内ポスターでは、11/16まで、となっています。
各階の売り場のレイアウトが大きく変わっています。営業しながらの工事・改装のため、棚の案内なども確定になっていないところがあり、しばらくは、これまでのレイアウトになれた利用者の方は、本を「探す」機会が増えるかもしれませんが、本好き本屋好きとしては、多少の不自由はがまんして、新しく生まれ変わる売場を楽しみに待ちたいところですね。
続いて、東京堂書店神田神保町本店。9/17から、平日の営業時間が延長になり、21時閉店になるとのことです(現在は20時閉店)。サイトの案内はこちら。夜の早い神保町で、閉店が遅めの書店ができるのは利用者としてはうれしいのですが、お店のみなさんにとっては負担も増え、大変だろうと思います。どうぞ、無理のないようにがんばってほしいものです。
6月には書泉グランデも売場をリニューアルしていますから、わずか3か月の間に神保町の3大新刊書店、3店すべてになんらかのかたちで変化があったことになります。
話は東京堂書店に戻って、神田神保町本店、通りをはさんで斜め前にあり、この6月末に閉店になってしまったChez moi。閉店後、すぐに工事が始まっていましたから、何が入るのかと気になっていたのですが、100円ショップの「ダイソー」が、9/1に、跡地にオープンしました。
100円ショップは、自分でも利用することがありますし、白山通りに1軒あるだけで、神保町にはほかにありませんから、便利は便利、なんでしょう。でも、「本の街」神保町の、メインの通りの1つといっていい、すずらん通りに、それも書店跡に、100円ショップとは……。感情的になんとなくすっきりしない気がしてしまうのは、おそらくぼくだけではないでしょう。ちなみに、Chez moiのお隣、冨山房ビルの1階のドラッグストアは、以前は冨山房書店でした。「書店→100円ショップ」と「書店→ドラッグストア」が隣合っていることになります。だからなんだ、ということではありませんが、なんとなく、ため息が出てしまいます……。
ところで、神保町の話からはちょっと離れますが、東京堂書店がらみで、これにもふれておきましょう。
【“三省堂改装、東京堂時間延長……神保町の書店にいろいろ変化が”の続きを読む】
『本屋図鑑』関連のまとめ記事のなかで紹介済みの「本屋と旅する男 『本屋図鑑』裏話」。夏葉社の島田潤一郎さんが、プレジデントオンラインに寄せた連載です。9/1で連載が終了になりましたので、あらためて以下にまとめます。
通して読むと、あらためて、島田さんの本屋さん愛がどのエピソードからもじわじわと、ひしひしと伝わってきますね。身内ぼめのようでなんですが、ほんと、すてきな文章です。ぼくにはこういう文章は書けないので、同じ『本屋図鑑』に関わった者として、うらやましくなります。
これら島田さんの取材話は、『本屋図鑑』の打合せのたびに、島田さん本人の口から、写真付きでじっくり聞かせてもらっているのに、それでもおもしろく読めてしまいました。初めて読む方にとっては言わずもがなでしょう。本屋さん愛にあふれる島田節を、ぜひ楽しんでいただければと思います。
ところで。第6回でふれられている海文堂書店は、以前の記事でもふれた通り、残念ながら9月末で閉店になってしまいます。
その海文堂書店について、島田さんがツイッターで、こんな報告をしています。《『海文堂書店の8月7日と8月17日(仮)』という簡易製本の写真集を9月20日より、海文堂書店さんで販売いたします。48Pフルカラー。A5。税込1365円。撮影はキッチンミノルさん。買ってくださいー。》
実は、海文堂さんの件を知ったとき、すぐに島田さんにメールし、『千駄木の本屋さん 往来堂の十五年』のような小冊子でもいいから、何か、お店のことを長く記録に残せるようなものを作れないかと相談したのです。そしたら、島田さんはそのときすでに、海文堂さんの本を出すことを決めていて、本を出すつもりだ、同じことを考えていたようでうれしい、と返事をくれました。決断の早さに、その迷いのなさに、ぼくはほんとうに驚かされ、そして、うれしくなりました。
『本屋図鑑』の海文堂書店を取り上げたページに、こんなくだりがあります。《東日本大震災が起こった二〇一一年、この書店が、「激励の言葉より本を売る!」というフレーズとともに、仙台で被災した出版社「荒蝦夷」のフェアをいち早く開催したことは、この書店の性格をなによりも雄弁に語る》。このでんで言うなら、海文堂書店閉店の知らせを知った島田さんが、みなが驚いたショックだ残念だと、ため息をつくほかなかったそのときに、いち早く本の出版を決め、行動を起こしていたこと(取材と撮影に駆けつけていた)は、島田さんの人柄をなによりも雄弁に語るものだと思うのです。
連載「本屋と旅する男 『本屋図鑑』裏話」は、そういう人が書いた文章で、『本屋図鑑』はそういう人が本気で本屋さんに向き合って作った本で、『海文堂書店の8月7日と8月17日』は、そういう人が作る本だ、ということです。
西荻窪のブックカフェ、beco cafeで、ほぼ毎月開催している出版・書店関連テーマのトークイベントbeco talk。しばらく前の記事で告知しました、10月開催の第10弾の予約受付が、本日から始まりました。
beco talk vol.10
本屋でイベント、やってます。
〜担当者が語る書店イベントのあれこれ〜
日時:10月25日(金)
OPEN 19:00 START 19:30(〜21:30)
会場:beco cafe(東京・西荻窪)
会費:1000円(ワンドリンク付)
出演:神矢真由美(紀伊國屋書店新宿南店)、空犬(吉っ読)
出演は、次々におもしろイベントを手がける紀伊國屋書店新宿南店SUPERワクワク隊(@super_wakuwaku)の神矢真由美さん。新刊書店のイベントの魅力とはなんなのか、企画・運営のノウハウは、イベントの裏話は、などなど、書店イベントのすべてを語ります。
書店でイベントをしてみたいという書店関係者や出版関係者の方には、きっと参考になるかと思います。もちろん、書店イベントに興味がある一般の方にも楽しんでいただけるようなトークにするつもりです。本と本屋さんを愛するたくさんの方に聞きにきていただければと思います。
予約は、お店での受付になりますので、beco cafeにご連絡ください。
予約方法や、beco talk自体の説明、今年のbeco cafeイベントのラインナップなどにつきましては、こちらの記事をご覧ください(記事の下のほう、出演者のみなさんのプロフィールの前に、イベントに関する詳細・注意事項などをまとめてあります)。
書評・連載・ラジオ・イベントなど、『本屋図鑑』関連のまとめ、続きです。(*9/3時点での情報です。「予定」とあるものは、名称など詳細が正確でないものがあるかもしれませんが、ご了承ください。この記事は、随時追記・更新していきます。)
『本屋図鑑』にも登場する熊本の書店、長崎書店のブログです。《お店の様子や光景、本棚のことを、愛情をこめて紹介されており、さらに得地直美さんの独特なタッチのイラストが輪をかけて魅力を伝えてきます。きっと本屋さんに行きたくなる1冊です》。
特集は「高知・鹿児島 記憶に残す旅。」。巻末の「Meetsな本」、3冊のうちの1冊として、取り上げられました。
『本屋図鑑』にも登場する神戸の名店、海文堂書店。サイトの連載「本屋の眼」で『本屋図鑑』が紹介されました。「書き手は、平野義昌さん。《すべてのページの文章もイラストも〝本屋愛〟があふれていて、私、思わず目頭を押さえていました》。
9月末に閉店となる同店。ほんとにさびしいです。連載「本屋の眼」も、9/1更新分が最終回となってしまいました。最終回では、『離島の本屋』『那覇の市場で古本屋』、夏の本屋本仲間2点が紹介されています。
海文堂書店の写真集『海文堂書店の8月7日と8月17日』は、9/21に夏葉社から刊行されます。海文堂書店のサイトに写真入りで案内が出ていますので、ぜひご覧ください。そして、このすばらしいお店の姿をとらえたものになるであろう写真集を、ぜひ手にとってください。
書き手は、倉本さおりさん(@kuramotosaori)。倉本さんのツイッターにこんなふうにありました。《明日発売の週刊金曜日8/2号に、『本屋図鑑』(夏葉社)の書評を寄稿しています。作り〈手〉と読み〈手〉、その両者をつなぐ無数の〈手〉のターミナルである「本屋さん」。彼らへの敬愛を結晶にしたような本。まさしく「図鑑」の名にふさわしい作品です。拙文ですが宜しくお願いいたします》。
書評を拝見しました。《ここには、本をめぐる人の営みへの惜しみない敬意と賛辞、そして信頼がある》と、書いていただきました。
本・書店・出版にまつわるテーマのイベントを連日開催する下北沢の書店「B&B」。まさかB&Bで、自分の関わった本に関連するイベントが行われる日が来ることになるとは思ってもみませんでした。『ダ・ヴィンチ』側からは永江朗さんと南陀楼綾繁さんが、『本屋図鑑』編集部からは島田さんが出演し、聞き手はB&Bの内沼晋太郎さんがつとめるという、大変に豪華な出演陣。料金他の詳細はサイトの案内をご覧ください。
「SUNDAY FLICKERS」は、毎週日曜日、AM6:00-AM8:30に、JFN系全国FM局(JFN系全国11局ネット:青森、群馬、栃木、長野、福井、岐阜、三重、兵庫、山陰、広島、徳島)でオンエアされている番組。サイトによれば、放送される週の、《今週のメッセージテーマは・・・「この夏の1冊!」》ということで、こんな説明があがっています。《夏休みは、たまった本を読むにはいいタイミングですよね?今週は、そんな今年の夏にオススメしたい1冊をみなさんから大募集! 古い名作から、最新作、マニアックな1冊まで! 一之輔さん、番ちゃん、リスナーのみなさんに伝えたい、その本のポイントをお願いします!》
『本屋図鑑』が取り上げられるのは、7時15分ごろ、「一之輔のそこがしりたい」というコーナーで、《本屋さんの様子を本にする、という『本屋図鑑』をご紹介します。一之輔さんの知り合いが、素敵な挿絵を描いている本でもあります♪》とあります。
『サンデー毎日』でいちはやく『本屋図鑑』を取り上げてくださったライターの高倉美恵さん(@takakuramie)さんが、おすすめ本を紹介するコーナー。高倉さんのツイッターを引きます。《本日のRKBラジオ「こだわりハーフタイム」にて紹介予定の本は、永江朗「新宿で85年本を売るということ」(メディアファクトリー新書)、得地直美 本屋図鑑編集部「本屋図鑑」の2冊です。福家書店福岡店8月末閉店に寄せて》。
《「町の本屋さん」の大切さやありがたみを、あらためて思い起こさせてくれる一冊だ》と書いていただきました。
和歌山の「すごい本屋さん」、イハラ・ハートショップのblogで紹介いただきました。《作家を育て、出版人を育てている町の本屋さん。『本屋図鑑』の本を持っての旅は、いかがですか》。
ブログ「TRCデータ部ログ MARCを作成する日々の記録」の「日本全国本屋の旅」に、《47都道府県すべての県の本屋さんを紹介。色々なタイプの本屋さんが並んでいます。各店のイラストをじっくり眺めるのも楽しいですね》と書いていただきました。紙面では『離島の本屋』も一緒に紹介されています。
22:00スタート。 「しのばずくん便り (id:shinobazukun)」によれば、このような内容だそうです。 《夏葉社から刊行され話題を呼んでいる『本屋図鑑』。その面白さや、取り上げられた本屋さんについてあれこれ言い合います。ゲストは、『わたしのブックストア』著者の北條一浩さん、羽鳥書店の糸日谷智さん、そして往来堂書店の笈入建志さんです。さて、どんなハナシが飛び出すでしょうか?》
まとめはこちら、「20130807 不忍ブックストリーム 第73回「『本屋図鑑』を勝手に読む」」、録画はこちら「20130807 不忍ブックストリーム 第73回「『本屋図鑑』を勝手に読む」 」でどうぞ。
『本屋図鑑』にも登場する徳島の書店、小山助学館。小山助学館ブックカフェ - B-FM791は、《小山助学館のスタッフ一押し!お薦めの1冊を紹介していただきます。書籍のインフォメーションはもちろん、作品のストーリー背景や作家の素顔、裏話、そのほか出版等にまつわる話が聴けるかも!? “街の本屋さん”が本の世界にナビゲートしてくれる番組、どうぞお楽しみ下さい》というラジオ番組です。
「第35回・第36回 夏葉社「全国本屋図鑑」について」に、音声ファイルへのリンクがあり、放送が聞けるようになっています。
【“書評・連載・ラジオ・イベント……『本屋図鑑』関連のいろいろをまとめました その2【更新】”の続きを読む】
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