あいかわらず、へとへとでめげめげの日々です。なもので、ますます趣味に逃避したい気分。で、すみません、また買ってしまいました。こうゆうの。
言わずとしれた邦画SFホラーの傑作ですよね。帯に
《今までのホラー映画は、ゴケミドロの模倣に過ぎない!》
と威勢のいい文句が踊ってますが、それぐらい大きく出たくなるのもわかる気がしますね。タイトルといい、全体を覆うダークな雰囲気といい、特撮の出来といい、そして何より、救いのない結末といい。これ、やっぱりいいんですよねえ。ジャケもこわいし……。つっこみどころがないわけではないんですが、そういうところも込みで、怪奇ものとしては、空犬お気に入りの1本です。
ところで、このDVD、「SHV邦画まる得キャンペーン」という廉価シリーズの1本として再発されたもの。38タイトルのなかにはまったく興味外のものもけっこうあるんですが、空犬通信的には、『八つ墓村』をはじめとする野村芳太郎監督作品7作や、『復讐するは我にあり』が含まれているあたりはうれしいところ。
【“ゴケミドロ、八つ墓、ギララ……SHVまる得キャンペーン”の続きを読む】
最近は、購入本の新刊比率が高くて、古本を買う機会がぐっと減っていたのですが、先日、久しぶりに古本らしい古本を買いました。
文庫や新書の東京本が大好きな空犬としては見逃せない1冊です。もちろん、Amazonにジャケがあがっているはずもないので、書影をあげておきます。あと、和紙を使った本扉の題字が妙な迫力で、いい味なので、並べておきます。
ね、いい感じでしょ。新書判ですが、カバーをとると表紙は紙クロス貼に書名が銀の箔押しと、なんだか洒落ています。装丁は、高橋忠弥。昭和31年の本ですが、当時はこんな造本がありえたんですね。同じシリーズ、同じ高見編で『浅草』が出ていますが、巻末広告には「写真豊富入瀟洒本」とあって、思わずほおがゆるみます。「瀟洒本」ってのがいいじゃありませんか。そう書きたくなるナイスな造本です。
【“瀟洒な古本新書『銀座』……最近買った本たち。”の続きを読む】
昨日の記事で予告した、これ、なんだかすごい小説です。
なにしろ、主要登場人物の「言語」がみな過剰なんです。主人公河野は関西弁だし、神様もどきの「ファンタジー」は俺様節、東京女片桐は勝男(河野の名)を「カッツォ」と呼ぶ言語感覚の持ち主、澤田は九州弁。1人(かりん)をのぞいてみんなこんな感じ。リアリティを置き去りにして、人物像が暴走しかねない設定だけど、それがそうなっていないのは作家の力、なんでしょう。帯の文句、《芥川賞作家の真骨頂!》がうなずける読後感です。
例によってストーリーを紹介したりはしませんが、興味のある方は、できるだけよけいな先入観なしに、それこそ、カバー裏の内容紹介も読まずに読み始めるのがおすすめです。
ところで、
【“『海の仙人』がおもしろい”の続きを読む】
- 『映画秘宝』2007年3月号(洋泉社)
- 『この映画がすごい!』2007年3月号(宝島社)
- 『PLAYBOY』2007年3月号(集英社)
映画雑誌2種はいつものやつですね。『映画秘宝』、『この映画がすごい!』ともに表紙はビヨンセ。ダイアナ・ロス&シュープリームスがイメージだという映画『ドリームガールズ』は、ジェイミー・フォックス、エディー・マーフィーら、ブラックエンターテイメントの大物が周りを固め、アカデミー賞8部門ノミネートの話題作。ビヨンセは映画は初主演のようですが、はたして演技のほうはどうなんでしょうか。それにしても、2冊並べると……大変濃いです。
『秘宝』、特集は好例のベスト&トホホ。2006年度のベストは……(ドラムロール)、じゃーん、って『グエムル 漢江の怪物』かよ! 怪獣パニックものがトップに来ても何の違和感もない映画雑誌……さすが秘宝です。ちなみに、空犬ベストの『ヒストリー・オブ・バイオレンス』は4位(読者投票では1位)、トホホは『日本沈没』でした。……おめでとうございます。
【“2006ベスト、消えたスター、女性ヴォーカル……最近買った雑誌たち。”の続きを読む】
このところ、ちょっと仕事が忙しいのと、精神的にこたえる出来事があったのとで、へとへと&めげめげの日々、家でも会社でも努めてそのような雰囲気は外に出さないようにはしているのですが、その分かえって、鬱々はどんどん体内にたまっていく感じ、深夜残業を終えて、家族の寝静まった家に帰ってきて一人でいると、ビール男の空犬がビールさえ飲む気になれず、はあーっ、と特大のため息が出たりして、とてもブログの更新ではありません。
せめてメールとニュースでものぞいておくかと、パソコンに向かったら、こういう気分のときにかぎって、これまたものすごいこたえる事件が目に飛び込んできたりします。風見しんごさんの娘さんが亡くなったニュース……。書いてるだけで沈みます。ぜんぜん関心外のタレントさんだし、実際、記事を読んでもすぐに顔が出てこなかったぐらいなんだけど、読めばずいぶん子煩悩なお父さん、いいパパじゃありませんか。そんなパパが娘を奪われるなんて……。はあ……。
お葬式でも人目をはばからず号泣してたっていうけど、そうなるでしょう、そりゃあ。それを見た師匠格の欽ちゃんがもらい泣きしてたって、記事になってたけど、ぼくなんて、号泣してる風見氏を目にするどころか、記事の見出し見ただけで目の湿度700パーセントです。大変です。モニタ、よく見えません。
……ああ、本にも書店にもさっぱり関係のないことを書きまくっています。でも、しかたないんですよ、こういうブルーな時は本の中身が頭に入ってこなくて読めないもので……。
と、最近はこんな日々で、更新も滞りがちだったのですが、昨日、ちょっと気分転換になる楽しいことがありました。懇意の書店員のみなさんと飲みにいったりという話は昨年、何度かこのブログでも紹介していますが、その書店員さん飲み会、今年初めての会が昨日あったのです。
会にはブックスルーエ、ジュンク堂書店池袋&新宿と、いつものみなさんに、残念ながら今月7日で閉店してしまった有隣堂ルミネエスト新宿店のみなさんもたくさん参加してくれました。
最近読んだ本、いま平積みにしている新刊、プロモーションでお店にやってきた作家のエピソード、展開中のフェア、いま売りたい作家、あやしい客、クレーム対応、本屋大賞、ポップ、フリペ……こんな感じで話題はつきません。書店のみなさんと、本や書店の話(ばっかりでもないのですが)で大いに盛り上がれる会が、本好き書店好きに楽しくないわけがありません。実にいい会でした。いま空犬的には、書店員のみなさんとの飲み会が、あらゆる酒席のなかでいちばん楽しいです。
当たり前かもしれませんが、書店の人たちもいろいろアイディアを持っていて、それがお酒や会の雰囲気の勢いもあってか、じゃんじゃん出てくるのがおもしろい。そして、そういうのが交換されるのを見聞きするのは、出版社の人間にはいい刺激になっています。昨晩も、いろんなフェアのアイディアが出ておもしろかったのですが、たとえば、チェーンでも系列でもなんでもない別々の店で、同じフェアを同時にしかけたり、ある本のポップをよくよく見てみたら、その店の担当者のおすすめ文句と並んで、他店の担当者のコメントが載ってるコラボポップを作ったり、なんて感じで、書店の枠を大きくはみ出すような案も出たりして、しかも、それがいちがいにありえない話でもない感じ、試してみたらなんだかおもしろいそう。同じ街の書店はライバルかもしれませんが、少し離れてしまえば利害関係もないですからね。こういう会がきっかけになって、ふつうなら地理的にもお店の関係的にも縁のなさそうな書店同士でフェアやイベントが実現したり、なんてのもあるかもしません。複数の書店で共同製作のフリペなら、今すぐにでも作れそうな気がします。
【“ブルーな日々、そして書店飲み会開催”の続きを読む】
仕事が忙しいと、とたんに更新がにぶります……。
今日も先ほど帰宅したばかり、へとへとでとても更新の気分ではなかったのですが、ネットのニュースでこれがとびこんできたので、書店応援サイトとしては、取り上げないわけにはいきません。「本屋大賞:劇団ひとり「陰日向に咲く」など10作品ノミネート」。
候補作品を挙げておきます。
- 三浦しをん『風が強く吹いている』(新潮社)
- 有川浩『図書館戦争』(メディアワークス)
- 劇団ひとり『陰日向に咲く』(幻冬舎)
- 佐藤多佳子『一瞬の風になれ』(講談社)
- 三崎亜記『失われた町』(集英社)
- 万城目学『鴨川ホルモー』(産業編集センター)
- 伊坂幸太郎『終末のフール』(集英社)
- 宮部みゆき『名もなき毒』(幻冬舎)
- 小川洋子『ミーナの行進』(中央公論新社)
- 森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』(角川書店)
……うーん、新旧混在は多少あるものの、なんだか直木賞の候補作一覧みたいですね、まるで。順当な選、なんでしょうが、サプライズはない、というと意地悪な見方をしているみたいですが、やはり、本屋大賞という賞であるからには、「さすが、本のプロ、こんなものに注目してたのか!」というサプライズが候補の中にあってもいいのになあ、などと思います。
【“本屋大賞、ノミネート作発表!”の続きを読む】
音楽を聴くだけでなく演奏したりするのも好きであることは、このブログでもたびたびふれてきた通り。ただ、楽器好き、演奏好きといっても、別に、高価な楽器や演奏技術云々にはあんまりこだわりがありません(もちろん、両方あるにこしたことはないですが)。むしろ、安い楽器は大好きだし、技術より楽しければそれでいい、というスタンスなので、こういう本はすごく好きです。
- 山口とも『ともともと遊ぼう! ガラクタえんそう会』(リットーミュージック)
ふだんはたたいてはいけないとされているもの、たとえば食器や缶などを、たたいたり、それを材料にして楽器(のようなもの)を作ったりしよう、というとても楽しい本です。DVDもついています。
巻末の著者から保護者へのメッセージ(版元の紹介ページで読めます)を見ると、
《この本とDVDでは、ふだん“たたいてはいけない”とされているものを楽器として使っているので、戸惑われる方も多いでしょう。確かに食器やフライパンなどをたたくのはお行儀の良いことではありませんし、場合によってはお子さんが食器をたたいて壊してしまうこともあるかもしれません。ですから、ご家庭の教育方針に合わないようでしたら、この本やDVDをお子さんに見せるのはおやめください。》
などと書いてあって、ますます好感が持てます。
楽器のなかでも、打楽器というのは敷居が低く、理屈抜きで楽しめるもので、空犬も大好きです。立派な楽器がなくても、音を出す、というのは単純に楽しいもの。子どもがいる人は、この本で紹介されているような「ガラクタえんそう会」を一緒にやればとても楽しいだろうし、子どもがいなくても、こういう手作り感、ガラクタ感が好きな大人にはたまらない中身だと思います。ぜひお試しを。
表紙のあやしいおじさん、“ともとも”こと山口ともは、NHK教育「ドレミノテレビ」に出てた人ですよね。表紙から最後まで、ほとんど全ページ出ずっぱり、やや露出し過ぎの感がないでもないですが、まあ、そこは、こういう楽しい本を作ってくれたということで不問に。
文章量も増え、内容もちょっとマジメな音楽寄りになりはしますが、同じ主旨の本としては、この本も大好きです。
- トム・ウォルサー『きみも音楽家(ミュージシャン)になれる 子どものためのライフ・スタイル』(晶文社)
職業音楽家への道の手引き、ではまったくありません。とも本同様、身の回りのものを使って自分だけの楽器作りをしてみよう、というのが主旨で、とも本にない「ボディミュージック」、つまり自分のからだまで“楽器”にする方法などに記述がさかれているのもgoodです。
こむずかしい音楽評論などはまったく興味がなくなってしまって久しいのですが、こういう楽しい音楽本であれば、話は別。ぜひ自分の娘にも読ませたいものです。
1/4の日記で候補作を紹介した今回の芥川賞・直木賞、選考結果が発表になりました。「芥川賞に23歳、青山七恵さん 直木賞は受賞者なし」(朝日新聞)。
青山七恵という作家、受賞作の「ひとり日和」(『文藝』秋号)も『窓の灯』も未読なので、作家・作品に関してはコメントのしようがないのですが、出版業界的・書店業界的には、今回は地味な感じは否めませんね。23歳の女性、と若い女性が受賞者であることを各記事ともアピールする書きっぷりですが、それもなんだか無理無理な感じです。あと、石原慎太郎と村上龍がそろって会見して、絶賛してるのもなんだか妙でしたね。
直木賞は受賞作なし、ですか。なるほど。っていう感じで、こちらもコメントのしにくい、なんだかなあ、な結果になりました。
別にひいきの作家や作品が含まれているわけではないので、該当作なしでも個人的には別にかまいません。ただ、読者や書店に対して説得力がない気がするんですよね、選考基準や選評が。森絵都にあげて、北村薫にはあげない、と。三浦しおんにあげて、萩原や白石にはあげないと。別にそれが、阿刀田らの言う「直木賞の基準」なんだと、選考委員様たちが胸をはって言えるのならそれでいいでしょう。でも、まさに、そこに説得力がどうも欠けているから、朝日新聞様の書評で、直木賞受賞でさあこれから売るぞ売れるぞなんて本が、ほめてるんだかけなしてるんだかわからないような取り上げ方をされる、なんてことが起こるんじゃないだろうか(この件に関しては昨年の日記に書きました)……などとちょっと意地悪なことを考えたりもするのです。
【“芥川賞は青山七恵、直木賞はなし、だそうです”の続きを読む】
文庫新書他をまとめ買いしてしまいました。
- 絲山秋子『海の仙人』(新潮文庫)
- 三崎亜記『となり町戦争』(集英社文庫)
- 町田康『パンク侍、斬られて候』(角川文庫)
- 横溝正史『横溝正史翻訳コレクション 鍾乳洞殺人事件/二輪馬車の秘密』(扶桑社文庫)
- 斎藤兆史『これが正しい! 英語学習法』(ちくまプリマー新書)
- 岩波書店編集部編『翻訳家の仕事』(岩波新書)
- Laurie Lynn Drummond『Anything You Say Can and Will Be Used Against You』(Perennial)
『となり』『パンク』は単行本で既読ですが、なんとなく買ってしまいました。『横溝』は「昭和ミステリ秘宝」の1冊。ものすごく濃い本がたくさん入ったシリーズですが、こんなものまで加わるとはあらためて驚きです。
【“仙人、戦争、パンク、横溝、翻訳……今日買った本たち。”の続きを読む】
- 『幻影城の時代』(「幻影城の時代」の会)
- 『ギターマガジン』2007年2月号(リットーミュージック)
『幻影城』という雑誌がかつてあったのはご存じでしょうか。「ミステリー」ではなく「探偵小説」にこだわったつくりで、一部の探偵者にはたぶん熱狂的に支持されたであろう雑誌です。
この『幻影城の時代』はまさにタイトル通り、その『幻影城』の時代を回顧する内容になっています。「回顧編」と「資料編」に別れていて、それぞれ1冊をわけあって、別々の表紙で始まり真ん中で出会うというスタイルになっています。探偵者は必携の資料と言えそうです。
下は、今月のギタマガ。表紙はデレク・トラックス、特集はスライド・ギターというまさに空犬向きの1冊になっています。……ただ、空犬向き、ということは必ずしも一般的ではない、ということであって、この雑誌、この特集、ぼくにはいいけれど、一方で、こんな内容ではたしてふつうに売れるものなのか、なんだか心配になってしまいます……。
【“幻影城、スライドギター……最近買った雑誌たち。”の続きを読む】
冬と言えば、われわれ古本者にとっては、古書市のシーズン。ところが、こういうときにかぎって、仕事が忙しい。昨年12/12の日記で紹介した「銀座古書の市」は、残念ながら所用で行けず、さらには、すでに先週10日(水)から始まっていて、あさってには終わってしまう、松屋浅草の「第11回古本まつり」にもまだ顔を出せていません。とほほ……。
と、残念に思っていたら、先日、立派な古書目録がまた届きました。
銀座松坂屋「古書籍・書画幅大即売会」
2007年2月1日(木)~5日(月)
松坂屋銀座店7F催事場
250ページを超える、見応えのある目録です。名前は「古書籍・書画幅大即売会」ですが、開催事務局は「銀座ブックバザール実行委員会」となっていますので、実質的には、7/16の日記で紹介した「銀座ブックバザール」の冬期版という感じですね。
内容が充実しているのはいいのですが、美術品、書、画などが多くて、雑本好きの空犬にはやや敷居が高い感じもあります。ただ、参加店の半数以上が東京・神奈川以外の書店で、何度も古書店巡りをしている京都はともかく、徳島、福岡、熊本、沖縄といった、まず実際に訪問する機会のなさそうな地域の書店の“棚”が見られるのはうれしいところ。
東京近郊の古本者は2月になったら忘れずに、銀座松坂屋に全速力でかけつけてください。
【“まもなく開催、銀座松坂屋の古書市”の続きを読む】
こんな本が出ましたね。
- 三留まゆみ『ブライアン・デ・パルマ―World is yours』(洋泉社)
デビュー作から最新作『ブラック・ダリア』まで、全作品のレビューが含まれる、デ・パルマ・ガイドの決定版的な内容になっているようです。
昨年の『映画秘宝』、デ・パルマ&『ブラック・ダリア』特集号や自著などで、たびたびデ・パルマへの濃厚な思い入れを披露しまくっている三留まゆみが監修者ですから、さぞかし濃いものになっているでしょう。
空犬は未読ですが、近々にチェックの予定。デ・パルマニアンなみなさんは全速力で書店にかけつけてください。
ところで、デ・パルマの監督作は20少しありますが、どれをベストとするかは、
【““World is yours”……ブライアン・デ・パルマ本出ました”の続きを読む】
今日、いつものように書店をぶらぶらしていたら、たまたま「本の本」が複数目に付いたのでまとめ買い、こんなセレクションになりました。
- 須賀敦子『須賀敦子全集 第4巻』(河出文庫)
- 北原尚彦『発掘! 子どもの古本』(ちくま文庫)
- 田口久美子『書店風雲録』(ちくま文庫)
昨年10/16の日記で刊行開始を紹介した『須賀敦子全集』のうち、楽しみにしていたのが、この本関係の著書を集めた第4巻。収録されている『遠い朝の本たち』も『本に読まれて』も単行本を持っているのですが、この2冊がまとまって、さらに単行本未収録の書評・映画評が収録とくれば、本好きなら手元に置きたくなるというもの。表紙もまさに内容にぴったりでいい感じ、帯の文句もgoodです。
【“須賀敦子、子どもの古本、リブロ……今日買った“本の本”たち。”の続きを読む】
本はもちろん「読む」ものなんですが、「聴く」のもけっこういいんですよね。「声に出して読む」なんたらみたいな本はなんだかうさんくさくてあんまり好きではないのですが、好きな作品が作家本人や、すぐれた朗読者(たとえば、この前取り上げた岸田今日子さんのような俳優)によって読まれるのを聴くと、目で読むのとがらりと印象が変わったり、新たな発見があったりなど、黙読とは違う魅力に出会えることがあります。そういえば、昨年、このブログでも報告した多和田葉子さんの朗読、ほんとによかったなあ、などと思い出したりします。
朗読っていいよね、という話を、知り合いの書店員Kさんとたまたましていたら、こんなすごい作品集があるのを教えてもらいました。
くわしい内容はサイトを見ていただくとして、どうですか、これ。すばらしいではないですか。作品のセレクトといい、朗読者のメンツといい、ものすごーく惹かれます。ぜひ聞いてみたいところだけれど……うーん、21,000円かあ……。即買いはちょっとためらわれる値段です。CD10枚組で、解説書付き、立派な収納箱に収められているようですから、内容や造りからすれば“高い”わけではないんでしょうが、庶民にはやっぱり高いです。でも、聞いてみたいなあ、これ。
朗読といえば、こんなフリペが出ていますね。
【“「音で読む」、本の楽しみ”の続きを読む】
昨年からずっと書きたかった辞書の話です。昨年末、『論座』2007年1月号(朝日新聞社)に「辞書が消える日」などと、関係者や愛好者にはショッキングなタイトルの特集が掲載されました。
なかみは、電子メディアにおされて大変な“視界なき”辞書出版社の暗中模索ぶりを紹介するルポ、もういいよという感じがしないでもない「紙派か電子派か」を識者に語らせる記事、それに永江朗の「辞書の本質を受け継ぐ器の行方」の3本。ルポはまっとうかつマジメな内容で、よく調べて書かれている感じはするのですが、特集全体に、辞書界・出版界を心配してくれてるんだか、不安をあおってるんだかわからぬような、なんとも言えぬあいまいさが満ちていて、読んでいて、妙にイライラさせられました。この読後感は出版関係者だから、なのかもしれませんが、関係者でないふつうの読者の方は、こうういう記事を読んだら、どんなふうに思うものなんでしょうか。
大メディアは、こういうよその危機をあおるようなノリが好きなのか、本気で心配してるのか、よくわかりませんが、本がらみの「なんとかが苦境」みたいな記事、ちょっと多い気がします。朝日新聞には、昨年、書店、特に街中の書店がきびしい、があり、年末には「2006 出版界この1年」でも「雑誌は依然不調、書店経営苦境に」が。さらに、一昨日紹介したばかりですが、年が明けて1週間もたたぬうちに、早速スポーツ誌が苦境の記事。辞書については、やはり昨年12/9の朝日新聞夕刊に「辞書ネット化 書籍版ピンチ」なんて記事が載ってました。
いずれも苦戦、苦境は事実でしょう。おっしゃる通りです。でもさ、なんか腹立つんだよね。先日も書いたことですが。何百万も出している大新聞様が、苦しい苦しい、ピンチだ、苦境だって、こうも書店業界、出版界の苦しさをたびたびアピールしてくれちゃったりすると。妙に腹が立つのですよ、わけもなく。
……ちょっとクールダウン。とにかく。辞書の周辺は暗い話ばかりのようですが、それでも、辞書出版社はあきらめずにがんばっています。それが象徴的にあらわれたのが、この秋冬に重なった英和辞典の新刊ラッシュでしょう。
- 『ウィズダム英和辞典』第2版(三省堂)
- 『ジーニアス英和辞典』第4版(大修館書店)
- 『ロングマン英和辞典』(桐原書店)
【“またもや三つ巴?……この冬、英和辞典がおもしろい!?”の続きを読む】
この前、サンヤツを眺めていたら、こんな書名を発見して思わず笑ってしまいました。
三冠だなんて、全日本プロレスみたいですが(ちなみに、現三冠王者は鈴木みのる、って本稿にはまったく関係ありません)、受賞作を3本集めた作品集ということです。ちなみに、その3本と賞は以下の通り。
- 「なにもしてない」(野間文芸新人賞受賞作)
- 「二百回忌」(三島由紀夫賞受賞作)
- 「タイムスリップ・コンビナート」(芥川賞受賞作)
選集のたぐいに複数の受賞作が含まれること自体は別にめずらしいことではないでしょうが、意識的に集めて書名にしてしまう、というのは過去に例がないかもしれません。編集者のアイディアなんでしょうか、あれこれよくひねり出すものです。文芸誌の新人賞や、ふつうの読者が聞いたこともないようなマイナー賞や地方賞など小物の寄せ集めではなく、ブンガク的にはメジャーな賞を3つおさえている作家だからこそ、成立した企画ですね。
気になる書名、といえば、最近の読了本にこんなのがありました。
- 伊井直行『愛と癒しと殺人に欠けた小説集』(講談社)
【“三冠、愛と癒し……最近気になった書名たち。”の続きを読む】
昨日、1/7で有隣堂ルミネエスト新宿店が、残念ながら閉店となりました。このブログでもすでに何度も書いてきたことですが、空犬通信的には非常に重要な出来事なので、あらためて紹介しておくしだいです。同店の書店員のみなさま、おつかれさまでした。また別の書店でお目にかかれることを願ってやみません。
閉店前にもう一度お店を見ておきたくて、先日訪問した際に、「うーりん新聞」最終号を入手してきました。
ご覧の通り、黒枠です。将来、もしかしたら有隣堂さんの別のお店で復活することがあるかもしれませんが、とりあえずは、これで最後かと思うと、お店の利用者として、また新聞の愛読者としてはさびしいかぎりです。
去る者あれば来る者も、ではないですが、この「うーりん新聞」とまさに入れ替わるようにして、吉祥寺の書店、ブックスルーエから、昨年、新しい書店フリペが誕生、年内に2号が刊行されたのは、すでに本ブログでも紹介した通りですが、その「ルーエの伝言」の最新号ができました。じゃーん。
2号で紙面をリニューアルされたばかりですが、今回は判型がひと回り小さくなって、文庫サイズになりました。そう、見た目もまさに「うーりん新聞」ライクになったわけです。別に、「うーりん」に合わせてそうしようということではなく、このサイズにしてみたら、なかなかよかったので、ということなんですが……。紙の節約にもなりますしね。
詩、ミステリー、コミック、ラノベ、日記、イラストなどなど、サイズは小さくなっても中身のバラエティはかわりません。ちなみに、空犬は今回、ポップの話を寄稿しています。この連休から店頭に並び始めているはずなので、沿線の本好きはぜひブックスルーエで手にとってみてください。
【“「うーりん」最終号、そして、「ルーエ伝言」最新号”の続きを読む】
またこういう話題ですか……。朝日新聞、昨日1/6の夕刊の第1面の記事は「スポーツ総合誌苦境」。記事によれば、サッカーW杯惨敗が響いて、サッカー専門誌以外のスポーツ誌が、休刊・廃刊に追い込まれるなどの事態になっているそうです。
格闘技以外のスポーツにはほとんど興味がないので、スポーツ誌は無縁の存在、このジャンルではトップだという『Number』の格闘技特集を立ち読みする程度です。なもので、休刊になってさびしいスポーツ誌があるわけでもなく、くわしいことはよくわからないのですが、それでも、やはり出版に関わる者にとってうれしい話題ではありません。
昨年の朝日新聞には、紙の辞書が苦戦という記事がありましたし(この件は近日中に取り上げる予定)、さらにその前は、街の書店が危機だというのもありました(こちらはは本ブログでも取り上げました)。メディア、特に大新聞が取り上げる本の世界は苦戦苦境話ばかり、それが事実なんだとしても、当事者・関係者にとってはなんだかおもしろくありません。この手の記事が載るたびに、暗い気分にさせられます。
ちなみに、その朝日新聞がまとめた2006年出版界はこれ。「雑誌は不振、書店は苦境 2006出版界この1年」(朝日新聞)。……この記事をネタに1本書くつもりでいたのですが、いざ何か書こうと、あらためて記事を読んでみると、はあ、ため息ばかりが出てくるような内容で、コメントを加える気になれません……。ちなみに、紙面では並んで掲載されていた「2006 ベストセラーこの1年」によれば、昨年のベストセラー1位と2位は、こちらだそうです。
これらの本にわざわざけちをつけようとは思いませんが、少なくとも本好きとして、出版関係者として、その大ヒットを手放しでは喜びにくい本ではある気がして、なんというか、フクザツな気分です。
◆今日のBGM◆
ボウイの旧作が紙ジャケで出るようですね。今年が生誕60周年なんだそうで、その記念という意味合いなんでしょうか。ジャケの一覧はこちらでどうぞ。このジギーを含む、『スペイス・オディティ』から『ダイヤモンドの犬』までの初期7枚は、空犬愛聴盤です。
- 三崎亜記『失われた町』(集英社)
- カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』(集英社)
- 石上三登志『吸血鬼だらけの宇宙船 怪奇・SF映画論』(奇想天外社)
- 『熱狂短編マンガ傑作集'83』(小学館)
- 新モノラルブラザーズ 『恍惚のセクカワ・レコード・コレクション』(桃園書房)
『失われた』は直木賞の候補になったから、というわけではなく、しばらく前に読んだ『バスジャック』の印象があったので、なんとなく手にしたもの。遊び心のある装丁です。映画化で文庫売れているようですね。
【“町、イシグロ、吸血鬼、短編漫画、レコジャケ……最近買った本たち。”の続きを読む】
出版関連のニュースで吉本興業の名を続けて目にすることになるとは思いませんでした。「吉本興業が男性コミック誌創刊へ」が4日に、「吉本興業と小学館、東京・神田にお笑い劇場 7月開場」が5日にメディアで報じられていましたね。
男性向けの隔週コミック誌『コミックヨシモト』は、B5判340ページで320円。コミック誌は読まないのでよくわかりませんが、吉本はお笑いや舞台の構成でお話作りはお手の物でしょうし、絵は本業の漫画家に依頼するそうですから、意外にオーソドックスな中身になるのかもしれません。落語の漫画化なども含まれるあたりが目新しいところでしょうか。異業種の参入が、低迷が言われるコミック雑誌界にとって刺激になることを期待したいものです。
もう1つ、神保町にできるエンタテインメントシアターのほう個人的にも楽しみな話題です。地下2階地上6階の建物は現在建設中で、今年6月に竣工、7月からスタートとのことです。地下には、完全デジタル対応の映画館「神保町シアター」が、2回にはライブエンタテインメント劇場「神保町花月」が入るそうです。前者は100席、後者も126席と、演芸の館としてはかなり小規模ではありますが、神保町にはシネコンのような大規模なものよりもこれぐらいのもののほうが似合いそうです。
そういえば、街の雰囲気からすれば、本来この種の施設や店が複数あってもおかしくないのに、神保町には、岩波ホールはあるものの、ほかに映画館はないし、音楽や演劇で知られるハコもありません。神保町の新しい顔になれるかどうか、ちょっと楽しみであります。
お笑いや映画を観に神保町にやってきた人が、本の街を「発見」、雑誌や関連本を求めて書店に寄っていく、なんて光景が当たり前になるといいなあ、などと思います。
【“出版界にも吉本が?……神保町シアタービルとコミック誌創刊”の続きを読む】
第136回芥川賞・直木賞の候補作品が発表されましたね。「芥川賞・直木賞候補作決まる 選考会は16日」(朝日新聞)。リストアップしておきます。
●芥川賞
- 青山七恵「ひとり日和」(『文藝』秋号)
- 佐川光晴「家族の肖像」(『文学界』12月号)
- 柴崎友香「その街の今は」(『新潮』7月号)
- 田中慎弥「図書準備室」(『新潮』7月号)
- 星野智幸「植物診断室」(『文学界』9月号)
●直木賞
- 池井戸潤『空飛ぶタイヤ』(実業之日本社)
- 荻原浩『四度目の氷河期』(新潮社)
- 北村薫『ひとがた流し』(朝日新聞社)
- 佐藤多佳子『一瞬の風になれ』(講談社)
- 白石一文『どれくらいの愛情』(文芸春秋)
- 三崎亜記『失われた町』(集英社)
【“発表! 第136回芥川賞・直木賞の候補作品”の続きを読む】
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
お店関係は今日2日から営業開始というところが多いようですね。書店のみなさん、本当におつかれさまです。
ところで、初売りと言えば福袋。あるデパートの初売りチラシをなんとなく眺めていたら、テナントで入っているある書店さんで、洋書福袋が売られるとあるのを発見して驚きました。本で福袋……けっこう大胆な発想ですよね。
自分では買わないのでよくわかりませんが、福袋って、そのショップなりブランドなりへの信頼感や強い嗜好があってこそ成立する物ですよね、たぶん。「好みの近似値」が存在しにくく、100%個人の嗜好に支えられているのが「本」という物なわけですから、いくら本好き書店好きでも、完全にお店まかせで中身の見えないセレクションにお金を出すのはかなり冒険に感じられるのではないでしょうか。くだんの福袋、くわしい説明はないですし、店頭のものも見ていないので、なんとも言えないのですが、「アートブック」とか「ミステリー・ペーパーバック」とか「絵本」など、ある程度の“くくり”でもあるのでしょうか。それなら多少はリスクが減るものの、たとえジャンル分けされていたとしても、やはり本の福袋の冒険度が非常に高いことには変わりはないと思うのですが……。もし洋書福袋を買われたというチャレンジャーな方がいらっしゃたら、ぜひコメント欄にてご報告いただきたいものです。
さて、新春ということで、本年最初の読了本と映画を報告します。まず本はこちら。
- フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』(中央公論新社)
正確に言うと、昨年の読み残しをこの2日で読了したものです。
【“ギャツビー、ハリーハウゼン……今年の最初の本&映画たち。”の続きを読む】
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