この夏は、結局、京王新宿、西武池袋、東急渋谷の、都内百貨店3大メジャー古本市(いま勝手に名付けました)すべてをのぞきにいくことができた空犬です。
一時期よりたしかに開催数自体がが少なくなったし、集まる人の数もあきらかに激減、一昔前ならふつうに見られたレジの大行列もすっかり見なくなったしで、全体的にさびしい感じがしないではないんですが、それでも、古本屋さんには出入りしづらいような人も気軽に足を運べるデパート古本市が、こうして今も複数残って、それなりに人を集めている、というのは、もうそれだけで喜ぶべきことなんでしょうね。
それなりの年になって、探求本もしぼられてきたせいか、はたまた、ふだんから新刊をたくさん買っているので古本市では新古本的な買い物をほとんどしないせいか、年々、古本市で買う本も減ってきてはいます。それでも今年は何冊かうれしい掘り出しがありましたよ。
ここで、とくとくと特撮本の紹介なんかを始めちゃうと、せっかく最近増えた読者のみなさんが、ささーとよそのページに行っちゃって戻ってきてくれない可能性が高いので、ここでは今年の夏の成果を代表する1冊として、書店派にふさわしいこの本を紹介しておきましょう。
- 尾崎秀樹・宗武朝子『日本の書店百年 明治・大正・昭和の出版販売小史』(青英舎)
タイトルからして、書店ウォッチャーを自称し、このような書店のことだらけのブログを書いている身としては、むしろこれまで持っていなかったことをカミングアウトするほうがはずかしいぐらいなんですが、これ、なにしろ1万円近い本で、さすがの書店派も即買いにはちょっとためらう値段なんですよね。
中身が、その値段もやむなしと思えるボリュームならまだしも、これ、中を見ると、ページ数こそ600超ですが、組は一段でやけに余白も多くとっちゃったりとかして、専門書の割になんだかずいぶん読みやすい。悪くいうと、値段の割に、ちょっとすかすかした感じなんですよねえ。しかも、これ、専門書としては致命的といってもいいと思うんですが、人名・店名・事項などの索引がなし。
そんなこんなで、存在は知りつつ、また、気にはなりつつ、ちょっと手にする機会を逸していた本書、今回、ふつうの単行本並の値段で出会えてしまいました。ラッキー。
Webの内容紹介を引きます。《京・大阪・江戸に集中していた書肆も、明治になって地方に広がり、学制改革・国会開設・日清日露の緊張・大正デモクラシー・円本洪水・出版統制を経て、今日の諸様態に至る。その百年の歩みを、概説するのではなく、実際に現場で携わっていた書店・出版人の諸先輩にじかに話を伺い、全体をまとめた。本書は出版販売百年の貴重な証言です。 》
少し補足すると、全体が7部に分かれています。うち1~6部は地方別になっていて、各地方の代表的な書店が紹介されています。たとえば、北海道・東北なら冨貴堂、仙台金港堂。関東なら煥乎堂、有隣堂。東京なら丸善、春陽堂、三省堂書店、紀伊國屋書店、東海・北陸なら戸田書店、博信堂、近畿なら旭屋書店、中国・四国・九州なら今井書店、啓文社……といった具合に、40数店が紹介されています。それぞれ、編者にあがっている2人のどちらかが、各店の関係者(社長だったり、親族だったり、お店によっていろいろ)にインタビューするスタイルでまとめられています。
まだ全体をぱらぱらやっただけですが、これ、やっぱり書店派としては当然おさえておきたい文献でした。今さらなんですが……。各地の老舗、有名店が、どんなふうにでき、今にいたったか(もちろん、続いていないお店もあるが)……書店の苦戦が言われて久しい今だからこそ、こうしたパイオニアたちのことばはよけいにしみます。
読みでのある中身だけに、やっぱり索引はほしかったなあ。取り上げられたお店は、当然のことながら、みな歴史のあるところばかり。過去に、どんな作家・版元の、どんな本を、どんなふうに売ったか、なんて話がたくさん出てくるわけです。もちろん、お店独自の歴史もありますが、一方、時代的に共通する部分もたくさんあるわけです。すると、当然、「立川文庫」「博文館」「日本出版配給株式会社(日配)」「円本」「赤本」……こうした出版史のキーワードは、あっちにもこっちにも出てくることになります。業界全体の歴史を見渡すために、本書を読み込もうと思えば、そうした横断的な読みをしたくなるんですが、索引のない本はその点つらい。残念。
とはいえ、それでも、この本が、書店史・出版史的に、貴重な記録であることには変わりありません。値段が値段だし、いま現在進行形で書店に関わっている方に、強くすすめられるものか、というとちょっと微妙な気もするのですが、書店史・出版史に興味のある方は、図書館や古書店をあたられる価値はあるのではないかと思いますよ。
なお、この本の刊行は、1991年(平成2年)。この後、平成をカバーする書店史が、将来書かれることがあるのかどうかは、現在ではわかりません。もしも、そのようなものが書かれるとしたら、ここに取り上げられたような、パイオニアたちの発言・証言とはかなりノリの違うものにならざるを得ないだろう、そんな気がします。
もちろん、この本にも創業の苦労、立ち上げの苦労はたくさん語られているのだけれど、でも、それらの苦労話と、いま業界全体がおかれている状況の厳しさとは、本質的に違うものである気がするからです。でもねえ、だからといって、主要書店の誰にインタビューしても、『傷だらけの店長』のような「傷だらけ」の話になってしまうようでは、やはり悲しい。そうならないように、書店を応援するために、一読者として、また一出版関係者として、何が自分にできるのかと、結局そんなところにまた戻ってきてしまい……はあ、書店応援派は頭が痛い……。
ツイッターに流したところ、多少反応をいただきましたので、念のため、こちらにも。
文庫数冊とビールの6缶パックを抱えてお出かけ、公園や川べりなど快適な場所で、半日ごろごろと飲酒読書を楽しむ、ただそれだけのことに「遠足」という名前を付けて、仲間うちで楽しんでいる、というのは、過去に何度かこの空犬通信でご紹介した通り。元の計画がこちら、昨年実際に行ったときの様子がこちら。読んでいただけるとおわかりの通り、まあ、別にわざわざ名前をつけるまでもないような、ゆるゆるの集まりです。
で、今年も行きますよ、遠足。今年は、9/4(土)に予定してます。こんな、ゆるゆるな集まりなんですが、ご興味のある本好きの方がいらっしゃったら、ご一緒にいかがでしょう。読書会と違って、別にコアな本の話をするわけでも、読書論を闘わせるわけでもありません。ジャンルや立場の違いはまったく関係なし、むしろ、好みのジャンルの違いがあったほうが楽しいかも、ぐらいに考えてたりします。
あんまりいないだろうことは重々わかっているうえで、こんなこと書いてるんですが、もし万一、興味あるぞ、という奇特な方がいらっしゃったら、ブログのコメントか、ツイッターでご一報ください。
書店がらみのマジメな話題が続いたので(プロレスに脱線してるじゃねえか、というツッコミには返す言葉もありません……)、ちょっと息抜きにこんなのも。もうしばらく前の話になりますが、BOOKSルーエで、こんなの買っちゃいました。
- 大人の科学マガジン特別編集『iPad+iPhoneで楽しむ楽器+音楽製作アプリ150』(学研)
楽器、とくにギターについては、一応30年ぐらいやっていたりするもので、腕前はともかく、思い入れだけは相当にあります。長年使っている楽器は、もうなんというか腕の延長みたいなもの。ですから、当然、リアルな楽器でないといかんわけです。
アコースティック、エレクトリック、リアル、バーチャル、マジメ、おもちゃ……広義の楽器に好きなものはたくさんあるんですが、もしも、なんらかの理由で、1つの楽器しか選べない、なんてことになったら、当然ギター、それもリアルなギター(このような限定の仕方自体、なんだか変な気がするけれど)選ぶに決まってるわけです(ちなみに、我が愛機はFenderのテレキャスター)。
と、ここまで書いておいて、そんなリアル楽器志向、ギター愛と矛盾するように思われるかもしれませんが、一方で、おもちゃ楽器にも目がないんですよね。これは、YMOのリアルタイム世代であることと関係があるのかないのか、自分でもわかりませんが、とにかく、好きなんですよ。これまでも、KORGのカオシレーターや、DS-10にはまっちゃった話は何度か記事に書いたりしている通り。
先日、吉っ読で開催したイベント「ブックンロール」では、吉っ読バンド、その名もブックスピストルズとして、拙すぎる演奏を披露したんですが、実はこのバンドも、学研の「大人の科学」の付録とか、おもちゃ楽器だけで演奏をできないか、という飲み会の与太話が元になっているんですよ。それぐらい、おもちゃ楽器への関心は強い、というわけなんですね。
で、iPadなんですが、これ、電子書籍リーダーとしての評価はともかく(ところで、iPad、電子書籍リーダーとしての使い勝手、電子版と冊子版を読み比べた感想などを記事にまとめるつもりでいたんですが、もうさんざんいろんなところでいろんな方が書いてますから、もういいや、別に空犬が書かなくてもいいよね、という気になっちゃったりしてます……)、個人的には、音楽関係にやられてしまいました。
だって、これ、音楽ガジェットとしてみたら、好き者はたまらんですよ。いやはや、すごい。こんな楽しいおもちゃだとは思わなかった。DSi+DS-10を手に入れたときも、こんなにおもしろいおもちゃ楽器があっていいのかと驚きましたが、ある意味、そのレベルを超えてますよね。
ツイッターでいろいろ言及されてましたから、すでにご存じの方も多いと思いますが、これ、ご覧になったことありますか?
【“iPadで音楽、そしてKORGからまたしてもキラーソフトが”の続きを読む】
吉祥寺在住・利用者の本好き書店好きにとって、現在最大の関心事といっていい、ジュンク堂書店の出店問題。同店のツイッターアカウントと公式サイトで、正式にアナウンスされましたね。以下、短いので、サイトから引かせていただきます。
《ジュンク堂書店 吉祥寺店 10月中旬オープン!
コピス吉祥寺 6階・7階に、新店舗をオープンします。
2010年3月、惜しまれつつ閉店した伊勢丹吉祥寺店の跡地が、 10月に「コピス吉祥寺」としてリニューアルオープン。ジュンク堂書店はこの中核テナントとなります。
売り場面積 約1100坪の書店は、エリアでも最大級となります。ジュンク堂ならではの品揃えで、みなさまをお待ち申し上げます。 》
エリアでも最大級……まさにそうなんですよね。なにしろ、1100坪。ジュンク堂書店の出店は、地方都市でも700、800坪は当たり前、大都市・首都圏なら1000坪超が当然という感じ。かつては新店報道のたびに驚かされたものですが、その驚きも薄れてきてしまい、慣れというのはこわいものだなあとあらためて思わされますが、これ、とんでもない数字ですよ。
既存店のリブロ、啓文堂書店、ブックファーストの各吉祥寺店、そしてBOOKSルーエ、これら4店の床面積を全部合わせたのとほぼ同じですから。この数字、ブックンロールのトークのなかで、参考値として報告したんですが、さすがに会場がどよめいていました。いかに同店が大きいか、いかにそれまでの商圏と小売店の関係を根底から覆すような出店であるかが、この数字だけでもご想像いただけるかと思います。つまり、これ、ヨドバシカメラが吉祥寺にやってきたときと、同程度のインパクトだと言っていいと思うのですよ。
前後して、コピス吉祥寺の開店日およびショップリストも公開されましたね。開店日は10月15日(金)。ショップのリスト、テキスト版はこちら、外観図やフロアコンセプトなど詳細な情報を含むPDF版のプレスリリースはこちら。
周りのお店への影響という点で、関係者の気になるところであった開店時間、ジュンク堂書店のサイトでは未定となっていますが、コピスのサイトでは、10:00~21:00となっています。夜が比較的早めになっているのは、近隣の店舗への配慮でしょうか。これで、少なくとも、吉祥寺でいちばん遅くまでやっている新刊書店の座は、BOOKSルーエが守れることになりました。よかったね。
吉祥寺とは、井の頭線の端っこ同士の関係、いろいろな点で縁のある渋谷への出店は、ひと足早い、9月2日(木)。こちらは、正式には「MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店」。こちらも気になりますね。
それにしても、ジュンク堂書店の出店計画、個別に見ても、その規模やテンポに驚かされますが、年間で見てみると、あらためて驚かされますね。2010年に入ってからの主なところをピックアップすると、4月には新・鹿児島店(1300坪)、5月には岡山店(750坪)、9月には先の渋谷店(1100坪)、10月には吉祥寺店(1100坪)と広島店(1200坪)、そして、10月末には郡山(720坪)。増床などをのぞいてこれですからね。ここまでで、6000坪を超えてますよ。1業種の1チェーン(部分的にコラボがあるとは言え)が数か月の間に展開したものとしては、これ、冷静に考えて、ものすごい数字ですよね。
ジュンク堂書店は、この空犬通信に、出店問題云々の前からよく登場していることからおわかりいただけるかと思いますが、個人的には好きなお店です。一読者としてもそうですし、仕事的にもとても大事なお店です。知り合いも、それこそ、一緒にお酒を飲みにいける仲良しもいます。何もここで名指しで何か批判をしたいとか、そういう店ではもともとまったくないのです。
そういう、個人的なつながりや、新宿店、池袋本店、大阪本店といった特定の店舗への思い入れとはまったく別のところで、やはり、ちょっと不安や疑問や違和感が、頭をかすめるのをどうすることもできないのです。だって、超大型書店の需要がもともと存在した渋谷はともかく、その他の街に、800~1000坪もの書店が、商圏的に見て必要だとは、個人的には思えないもの(鹿児島をのぞき、他の街は、一応街の規模や様子、主要な書店を自分の目で見ていますが、そのうえでの感想です)。とくに、10月末の郡山はびっくりですね。佐藤書店、八重洲ブックンセンター、リブロなどがあったはずの街ですが、700坪超の書店とは……。
……すみません、話がとっちらかってしまいました。いろいろむずかしい問題もあって、わたしの筆力ではまとめきれず、書こう書こうと思いつつ、というか、そのうち書くと予告までしながら書けていないんですが、この問題、つまり、「すでに既存店のある、大規模とは言えない商圏への出店」問題については、稿をあらためます。
先日取り上げた、紀伊國屋書店梅田店リニューアルの件、半分ずつの営業ってどんなふうなのかなあ、と書いたら、早速、吉っ読関西特派員T氏から、レポートが寄せられましたので、ご紹介します。
↑吉っ読関西特派員T氏が撮影した同店の様子と、案内の看板。
《売場面積は半分で仮稼働中でした。》上左の写真に写る壁が、営業スペースと作業スペースの仕切りでしょうか。
《什器は木目でひたすら明るい印象。メイン導線がデパ地下みたいです。》このあたり、新文化の記事にあった、《什器や照明のほか、天井などの内装を一新。》《左右2カ所に入口が設けられている同店だが、新たに双方から店内中央に繋がる幅2・5メートルの通路を設けて店内への導線とする》と同じ印象のようです。それにしても、デパ地下みたい、というのがちょっと気になりますね。
改装・移転の場合、ふつう一定期間店を閉めてしまことが多いので、このような「途中」の様子が見られるのは、めずらしいケースかもしれませんね。というわけで、吉っ読関西特派員T殿、サンキュウでした!
昭和プロレス世代、とくに新日派にとっては、忘れられない存在でしょう。「元プロレスラー山本小鉄氏が死去 テレビ解説でも人気」(47News)。山本小鉄さんのご冥福を心からお祈り申し上げます。
遅めの、そして短めの夏休み親子旅行から戻ってきました。先日は、国立科学博物館(上野)で開催中の「大哺乳類展 海のなかまたち」に、今回は、下田の下田海中水族館に行ってくるなど、この2日ほどを大好きな海獣類三昧で過ごしてゴキゲンの空犬です。
旅行から帰って、ためていたこの3日ほどの新聞を、今晩ようやくチェックし終えたところなんですが、本日8/28の朝日新聞、書店的・メディア的に重要な記事が3本も載ってましたね。
- 「苦境続き、HMV渋谷店閉店 存在意義探るCD店」(8/28 朝日新聞)
- 「足を運ばせる演出に目を HMVし渋谷閉店に寄せて」(8/28 朝日新聞)
- 「丸善社長・CHIグループ社長 小城武彦さん(49歳)「日本的経営」の神髄を探る」(be on Saturday「フロントランナー」)
先日のHMV渋谷店閉店は、往時の同店を知るファンにはショッキングな出来事でしたね。「苦境続き、HMV渋谷店閉店 存在意義探るCD店」は、同じく苦戦の続く書店に関心を持つ身としても目を止めずにはいられない記事ですが、朝日新聞朝刊で、その隣に掲載されていた「足を運ばせる演出に目を HMV渋谷閉店に寄せて」に書かれた内容が、書店派としては、より気になるものになっています。
書き手は、DJの沖野修也氏。アナログレコードなど、「モノ」に直接ふれて音楽を聴き/聴かせる立場にある方だからこその視点なんでしょうか、などと書くとちょっとこじつけっぽいかもしれませんが、とにかく、リアルな店のことに非常に理解のある書き方に、書店派としてもちょっとうれしく思うところがありましたので、少し引かせてもらいます。
《店舗のメリットを活かした工夫や商法の見直しで活路を見いだすことは出来るはずだ。顧客に最高のサービスを提供できていたのか? 店頭のディスプレーはレコード会社からの販促費と引き換えの単なる露出機会の提供ではなかったか?》
……文中の「レコード会社」を「出版社」に置き換えれば、そのまま書店の話に読めそうです。
《単にものを売るということの前に、リアルな体感の演出や直接的なコミュニケーションという人間らしい営みの重要性を、いま一度、僕たち業界人は見直すべき時期なのかもしれない。思わず足を運びたくなるようなCDショップの需要は、非現実的な話ではないと思う。》
……こうして引用してみると、再販制の有無などシステムの違い、ディスクと紙本という形態の違いはあれ、直面している問題には共通点が多いことがよくわかりますよね。こういう、本・書店の業界の人たちにも広く読まれたほうがいい記事がWebにあがっていないのは、ちょっと残念。
書店事情的にさらに重要なのが、「be on Saturday」の「フロントランナー」に取り上げられた、丸善社長/CHIグループ社長の小城武彦さんの記事「「日本的経営」の神髄を探る」と「「日本ならではの書籍流通モデルを生み出したい」」。これも、本・書店に関わる人たちに広く読まれるべき文章に思えるものですが、残念ながらWebにアップされていません。それこそ全文引用したいぐらいなんですが、そういうわけにもいきませんので、一部を引かせてもらいます。
《米国は日本の25倍の面積ですが、書店数は1万店を切っています。一方で、日本は1万5千店以上残っている。米国人が本を買うには、車で30分走らなければいけません。日本人は通勤や通学途中に立ち寄って買えます。書店のインフラが強い日本に電子書籍が入っても、米国のように一気に広がるはずはないでしょう。》
……いつだったか紹介した、書店数は多すぎる、1万で十分、みたいな乱暴なことを平気で書いていた人に読ませたいような文章です。
《日本では、紙とデジタル、リアル書店とネット書店、この「2次元ハイブリッド」になると考えています。ネットと書店がうまくコンビネーションをはかり、紙とデジタルでどうシナジー(相乗効果)を出すかが問われると思います。》
丸善にもオンラインストアがありますが、オンライン書店としてそれほど強いイメージはない気がするのは、ぼくがあまり使っていないだけだから、なのかもしれませんが、一般的にもオンライン書店の代表格という存在ではないでしょう。それだけに、この部分で今後、グループの強みを活かして、丸善/CHIがどんなふうな「ハイブリッド」としての充実ぶりを見せてくれるか、注目したいところですね。
《買いたい本が決まっていればネットの方が早い。でも、それでは読書の範囲が広がらないんです。》
全面的に同感です。リアル書店なら、どう読書の範囲が広がるのか、それをどのように読者に伝えていくのか、そこですよね、むずかしいのは。
《本屋は驚きを持って本と出会う場所であるべきです。本屋がつまらない場所になっていることが出版不況の一つの要因だと思います。》
こういう考えの人がトップにいる書店って、なんていうか、頼もしい感じがする、なんて書くとちょっとえらそうでしょうか。読者の側からは、その「驚き」をこそ、お店に求めている人はたくさんいるのだ、ということをお伝えしたいですね。
《書店のデジタル武装も進めます。今は店舗の検索端末で本を探しても、店になければそれで終わり。なければ通販で届けるか、デジタル配信するか、その場でプリントオンデマンドで印字するか、お客が選べるようにしたい。》
この部分については、三省堂書店や紀伊國屋書店の取り組みもすでに報道されています。でも、それを、大手が個別に取り組むだけではおそらくダメでしょう。その点については、こんなことばが続いています。
《日本の書店ネットワークを守ることも使命だと考えています。毎年1千軒近い書店が廃業しているのが現実です。だから、できあがったシステムは、他の書店にも利用してもらうつもりです。》
インフラに手をつけることは、中小規模のお店には現状では無理でしょう。だからこそ、こうした大きなチェーンが、先例を作り、そのシステムを、書店全体に広げたり共有したりしていけるかどうか、そこが非常に重要になってきますよね。さらにいえば、そこに出版社がどんなふうに、そして、どの程度関われるのかも。
《おじいちゃんと孫が散歩がてらに書店で本を買える……そんな光景は残したいですね。》
……ぜひ残しましょうよ。ねえ。
大阪を、いや日本を代表する書店の1つと言っていいでしょう、大阪・梅田の紀伊國屋書店梅田本店が、リニューアル作業中のようです。「紀伊國屋書店梅田本店、9月17日にリニューアルオープン」(8/24 新文化)。
同記事によれば、《什器や照明のほか、天井などの内装を一新。さらにリニューアルに伴い、在庫量も約10%増加する》とのこと。さらに、《左右2カ所に入口が設けられている同店だが、新たに双方から店内中央に繋がる幅2・5メートルの通路を設けて店内への導線とする》ともあります。これは、見た目がずいぶん変わりそうな感じですね。
ちなみに、リニューアルオープン前の現在、お店はどうなっているのかと不思議に思いますよね。なにしろ、阪急梅田駅の直下、というこれ以上ない立地の同店。お店の混雑ぶりでは、日本一と言っていいようなお店です。中学生の頃(というと、30年近く前か、うわ……)から知ってますが、開店直後でも、閉店間際でも、平日でも、休日でも、とにかく、閑古鳥なんて見たことがない。人がいないということがないお店ですからねえ。
サイトには、《7月22日(木)より一部売場を縮小し》としか説明がありませんから、ほかにも不思議に思った方は多かったようで、そんな疑問をつぶやいたところ、《売り場を半分ずつ交互に閉めてのリニューアル&営業中だそうです》と教えていただきました。情報をお寄せくださったみなさま、ありがとうございます。ふだんの混雑ぶりを思うと、半分のスペースだからといってお客さんは半分にはならないでしょうから、お客さんをさばくのがふだんよりも大変なのではないかと想像してしまいます。
同店は、大阪にいたころ、とくに高校生のころは通いまくったお店。旭屋書店本店と並んで、大阪・梅田といえばこの書店という感じの、個人的にものすごーく思い出と思い入れのあるお店です。その意味では、店内の様子が見知ったものから変わってしまうことに、さびしい感じがないではないんですが、でも、このリニューアルを機に、さらに元気な店になって、長く続いてくれるほうがずっといいですからね。というわけで、紀伊國屋書店梅田本店、どんなふうになるのか、楽しみだなあ。
昨日は、記事にもあげた通り、会社帰りに、往来堂書店とブックスアイに寄ってきました。その後、ブックンロールがらみの用事があったので、吉祥寺へ、いつものようにBOOKSルーエにも寄ったのです(2軒も書店に寄ったんだから、そんな日ぐらいまっすぐ帰ればよかろうに、という声が聞こえてきそう……)。
さすがに、2店でお金も使ったし、荷物も重いしで、最初から「今日は買い物しないよ」と宣言していたんですが、どういうわけか、帰るときには、まんまとおすすめ文庫をつかまされていました。いったいどうなってるんだ。
- 中島らも、ミスター・ヒト『クマと闘ったヒト』(MF文庫ダ・ヴィンチ)
- 和田京平『読む全日本プロレス』(MF文庫ダ・ヴィンチ)
「これ、見てくださいよ!」と花本氏に拉致られて向かった先は、新刊文庫平台。なんか、いかにも空犬が好きそうな文庫が並んでいる。しかも、POP付きだ。さらに、『クマ』のほうは、レジ台にまで平積みという特別扱いぶり。この並び、この扱いを見せられたら、買わないわけにはいかんでしょう。ねえ。
メディアファクトリーの「MF文庫ダ・ヴィンチ」、もう2周年なんですね。まずはおめでとうございます。なんだか落ち着かないレーベル名だし、正直なところ、そんなに期待も注目もしていなかったんですが(失礼!)、あらためてみると、ラインナップがバラバ……もとい、バラエティに富んできて、なかなかおもしろいタイトルがそろってきましたよね。
しかし、2周年記念とどういう関係があるのかわかりませんが、今月の新刊、5点のうち、2点がプロレス関連作品と、妙なバランスになっています。こういう「好きなんだからいいじゃん」的な感じ、個人的には好きなんですけどね。でも、一般的な受けはどうなのかなあ、とちょっと心配にも……。
だって、うち1冊は、著者が「ミスター・ヒト」で、書名が『クマと闘ったヒト』ですよ。内容紹介とか、帯の《プロレス黄金時代の内幕を大暴露!!》の文言がなければ、知らないヒト、いや、人にはなんの本だか、さっぱりわかりませんよねえ、これ。しかも著者、らもさんと併記だし。ますます、どんな本だかわからない。
【“クマとヒトとらも、全日本プロレス……昨日ルーエで買った文庫たち。”の続きを読む】
都営線の駅で無料配布されている『中央公論Adagio』。現在配布中の22号の特集は「円谷英二と勝どきを歩く」です。特撮者のみなさんはチェックを。
……すみません、それだけです。
昨日、往来堂書店に寄ってきた話を書きましたが、その帰り道、ブックスアイ根津店にも寄ってきましたよ。
↑店頭の様子。看板には《とにかく暑いです。店内で少し休んで!》とあります。
茗荷谷のお店については以前から噂を聞いて、気になっていました。根津にあるのも知っていたんですが、なんとなくチェックしそびれていたのでした。で、今日入ってみたら、うわ、これはすごいや。
造りは、寄ってきたばかりの往来堂書店より少し広いぐらい。ぱっと見た感じは、街の本屋さんの風情です。ところが、店内に入ってみると、あちこちに、ただの街本屋さんらしからぬ工夫がされていて、本好きの目を引きます。
入ってすぐ左脇で展開されている「森絵都さんがオススメする本」というフェア。選書リストに、版元の名前とかチェーンの名前とかがないので、聞いてみたら、親会社さんのつながりで実現したという独自のフェアなんだとか。選書リストはけっこうな冊数で、本好きが喜びそうな本がたくさん含まれていますが、棚では、差しと面をうまく組み合わせて、1本にきれいにおさめ、さらに平台では森さんの本(一部サイン本)までカバーしています。
↑そのとなりでは、これはブックスアイ版の夏文庫フェアといった趣でしょうか。本好き出版営業10人よるフェア(独自帯あり)、「炎の営業」こと本の雑誌の杉江さんのセレクトによるフェア(これも独自帯)、ブックスアイ茗荷谷店、根津店それぞれのスタッフのおすすめ文庫(これも独自帯)などが棚1本分、並んでいます。うわ。
↑奥へ行くとさらに驚きが。写真でわかるでしょうか、「文芸書」とあるんですが、これが、この規模の書店の文芸棚とは根本的に異なる棚になっていて驚き。だって、3本しかない棚、ふつうなら本屋大賞に上位入賞するような人気エンタメ系フィクション作家の作品で埋まってしまうはず。それが、セレクトされている作家が、本谷有希子、川上未映子、多和田葉子、内田樹、岡潔となんだかすごいのです。しかも、ほかに、みすず書房の本に1段、講談社文芸文庫に2段、割かれていたりするんですよ。うわ。
↑《多和田葉子は「言葉の小説家」である》……大好きな、大好きな多和田葉子さんの本が、最新刊だけでなく、旧刊まで含めてそろえてあるお店が大型書店以外にいったいどれだけあるだろう……棚の前で、わなわなと感動に震えてしまったことですよ。
そのほか、文庫の棚、棚上の空きスペースをふと見ると、沖積舎の高額な探偵復刻本が並んでいたり。いちいち街の本屋さんのイメージを裏切る本が並んでいて、くらくらしてきます。
↑当然、このような書店ではたくさん買い物をしていかなくてはならないんですが、今日はもともと荷物が重いうえに、往来堂さんでも買い物してしまっていたので、2冊だけ。うち1冊にカバーをかけてもらいました。
↑森さんのデビュー作は、出たときにすぐ読みました。ぼくがまだ駆け出しの編集者だったころにデビューされた作家、しかも同世代ってことで、ずっと気になる存在でした。娘がそのうち読めるようにと、フォア文庫版のサイン本を購入。多和田さんはもちろん持ってる文庫だけど、この棚から買わないわけにはいかなくて……。
↑店内の案内図というと、上から見たかたちのいわゆる間取り図で、棚にジャンルを入れたり、番号をふったりするのがふつう。こちらのはユニークで、ご覧の通り、手書きのイラストです。中の店内の様子を描いたページがすごくて、お客さんの服の柄とか文字まで描き込んであって、決してお店の全体図が一目でわかる感じでは正直なところないんですが、そんなことはどうでもいいと思わせるようなものになっています。これ、いいですよ、すごく。BOOKSルーエの花本氏に見せたら、こんなの見たことないと、彼も驚いてまして、うちでもやりたい!と早速影響を受けてました。これ、イベント前に発見していたら、ブックンロールで紹介できたのになあ。残念。
というわけで。往来堂書店、1軒だけだとしてもたまにのぞきにきたくなる街だというのに、こんなに近くに、すてきな書店がもう1軒あるとは! この界隈の本好きはとても幸せだと思います。ぼく自身、わざわざいく感じの街なので、なかなかしょっちゅうは足が向かないんですが、あなたが書店好き、それも棚から本を発見するのが好きなタイプの書店好きなら、今回のブックスアイも、前回の往来堂書店も、わざわざ足を運ぶ、その価値の大いにあるお店だと思います。空犬通信、強くおすすめの2店です。
今日は会社帰りに、往来堂書店に寄ってきましたよ。
往来堂書店さんには、ブックンロールの資料として配付した「往来っ子新聞」を提供していただいていました。本日は、そのお礼ということで、イベントで配った資料のセットをご担当のHさんにお届けがてら、前回訪問時には買い物もできなかったので、ゆっくり店内を見せていただこうと思った次第。
↑店頭の様子。日が落ちてからの感じ(右)もいいですね。
↑「往来っ子新聞」、最新号他、前回いただいて来なかった号をゲット。55号には橋本治さんのインタビューが収録されてます。
↑往来堂版の夏文庫、といっていいでしょう、乱歩ファンにはネーミングだけで気になってしまうD坂文庫の棚。
↑D坂文庫には全点(!)にこの、オリジナル帯がかかっています。しかも、写真でご覧いただけるでしょうか、デザインこそ共通ですが、文言は各本独自のものになっています。
↑文庫サイズの立派な冊子もありますよ。選書は、お店のスタッフのみなさんのほか、出入りの版元関係者や、お店と親しいライターさんなども。ブックンロールに来てくださった方の名前もありました。
2冊買うといただけるという「乱歩メモ帖」。乱歩者としてはゲットしないわけにはいきませんよね。3冊お買い上げで、無事入手できました。手作り感に充ち満ちた作りに、ちょっと感激……。「これ、すごいですねえ!」「いやあ、むだにがんばってて……」、と、ご担当のHさん。
むだながんばり?……どこかで聞いたなと思ったら、おお、BOOKSルーエの花本氏が、そして吉っ読の空犬氏がよく言われていることではないですかっ! 同好の士、ってことでしょうか(笑)。「情熱があさっての方向に向いている」とは、ある書店員さんが、花本くんだったか、BOOK EXPRESS ディラ上野店の長谷川さんだったかの、フリペの姿勢を指して言ったことだったかと記憶しますが、まさに、このお店で展開されているいろんなことたちも、「アサッテの情熱」に貫かれたものだとお見受けしました。ちなみに、本日の空犬の通勤読書は『アサッテの人』(講談社文庫)です!
↑ふだんはブックカバーはお断りするんですが、初めてのところとか、久しぶりのところでは、かけてもらうことも。今日は久しぶりだったのと、ここで紹介したいので、1冊だけかけてもらいました。
本日のお買い上げはこんな本たちです。上の3冊がD坂文庫からのセレクトです。
うち2冊は、すでに所有している感が濃厚だったんですが、まあいいや、と思って買ったら、1冊だけダブりでした。まあ、いいよね(苦笑)。
というわけで、往来堂書店、夕方の短時間でしたが、今日はとても楽しいひと時を過ごせましたよ。この規模の本屋さんで、来るたびに発見があるというのは、すごいことだと思うのです。神保町に職場があり、しょっちゅう新宿他の大型書店に出入りしている身には、ほんと、新鮮な感じです。これで、帰りに行きやすいところにあったら、もっとしょっちゅう通えるのになあ、なんて詮無いことを考えたりしてしまいました。
昨日は、用事があって西荻窪のbeco cafeへ。帰りに、なずな屋さんに寄ってきましたよ。7/12の記事に書きましたとおり、古書興居島屋があったところに、元の感じをそのまま残すかたちで、屋号を変えてオープンしたお店です。ツイッターでも、オープンの様子はいろんな人に取り上げられてましたね。
↑見た目はこんな感じ。
↑もとの看板(左)には、この間の経緯を説明する紙が貼られていましたよ。
「微ニューアル」をうたっていただけあって、店内の様子もそんなに大きくは変わっていない様子。ここが文庫で、ここが写真集で……という棚配置もほぼそのまま。入り口から見て左側の壁に、マッチ箱のラベルなどの紙モノが並ぶ点も以前の通り。前のお店の感じが好きだった人には、安心できる雰囲気になっているといっていいと思います。
興居島屋さんには、ブックンロールの資料として配付したかった「おに吉」を提供していただきましたので、そのお礼ということで、イベントで配った資料のセットを持っていったのです。屋号が変わっているわけで、当然違う人がいるだろうけれど、事情を話して代わりにもらっていただこうと思っていったら、「おに吉」を用意してくださったときの女性がいらっしゃったので、ひと安心。
今日は両手にものすごい荷物だったので、1冊も買う余裕はなかったんですが、文庫を2冊買ってきてしまいましたよ。
『追憶』は大好きな日記で、親本も、文庫も持ってる(しかも3冊ぐらい)んだけど、だれかにあげるとき用に、見かけると買っちゃうんだよねえ。尾崎一雄は、昨日、大河堂書店で迷って見送った1冊。
西荻で古書店巡りをするときのお店が、1軒マイナスにならなくて、ほんと、よかった。またbecoに来るたびに、のぞきにくることにしよう。
先日、ブックンロールの会場で、ミシマ社のWさんに、久しぶりにお会いしました。
ミシマ社といえば、ユニークな活動と出版物で、業界のなかでも気になる存在。以前から個人的にとても興味があって、いつだったか、吉祥寺でのミシマ社の方々と版元・書店が集まる会に、リトルモアさんに声をかけてもらったときは、喜んで駆けつけたんですが、運悪く、その日はダブルブッキングで、短時間顔を出して、名刺交換しただけ、ほとんどおしゃべりらしいおしゃべりもできずに退散、となってしまったことがありました。
そんなわずかな接点しかなかったのに、こちらのことを覚えていてくださったWさんが声をかけてくださり、しばし立ち話、こんな新聞をいただきましたよ。
同社が不定期で出している通信で、その名も「ミシマ社新聞」。手書き題字がいい味を出しています。イベントでは、書店発のフリーペーパーを各種紹介したんですが、これは版元発のフリーペーパーですね。版元にも、書店さんや読者の方向けに情報発信を工夫しているところはいくつかあって、イベントでも、ベレ出版さんの「ベレベレ通信」を紹介したりしました。この「ミシマ社新聞」も、全編手書きではないですが、全体に漂う手作り感とちょっとゆるい感じが、なかないい具合。
見れば、4周年とあります。気になる本をたくさん出しているところなので、もっと長くやってるような気も……一方、ユニークな出版社ができたらしいと話を聞いたのはごく最近のような気もして、その意味ではもっと短い気も。とにかく、なんか感慨深いですね。って、よその人間が言うのもなんですが。
この「ミシマ社新聞」とブログで紹介されている、4周年記念のプレゼントキャンペーンが、人に本を贈ると本がもらえるという、すごくすてきなもの。くわしくは、ぜひサイトや新聞をご覧になってみてください。
本を贈るのって、むずかしい行為だと思うんですよ。ぼく自身は、本をたくさん買ってる・持ってるイメージがあるせいか、ほとんどプレゼントされることなんてないんですが(ちょっとさびしい……)、自分では人に本をあげるのは、けっこう、というか、かなり好きな方だったりします。だから、人に本を贈ったら、今度は、自分が好き本を贈られる、というこのキャンペーンは、結果的には1冊の本を(ちょっと遠回りして)買うのと同じではないか、というふうに見えるかもしれませんが、間に人が入っているという点で、ぜんぜん違うものだと思うのです。
【“人に本を贈ること……ミシマ社さんですてきなキャンペーンをやってますよ”の続きを読む】
武蔵野・三鷹エリアの麺好きは、要チェックですね。
版元、の内容紹介はこんな感じ。《2010年1月、多くのファンに惜しまれつつ閉店した一軒のラーメン屋をめぐる物語。「江ぐち」の麺はちぢれが少なく、断面が角型で、しかも黄色くなくて、独特。駄菓子のような、気軽に食べたくなるおいしさ。3人の店員もいい味出していて、三鷹と言えばココ、そんな伝説のラーメン屋だったのです。》
同店をご存じの方、好きな方はわざわざ言わないでもわかってもらえると思いますが、ここ、いわゆる名店とは違うタイプのところで、それがよかったんですよね。だから、「伝説のラーメン屋」などと言われるとちょっと違和感が……。
版元の紹介にはありませんが、この本、《小説中華そば「江ぐち」」(新潮OH!文庫 2001年刊)の改題増補》です(bk1の内容紹介より)。同サイトの案内のほうが、本の中身がわかりやすいので、引いておきましょう。《気がついたら行きつけの店。勝手に店員にアダ名をつけたりしてね。でも今はもうない伝説の店…。1984年、25歳だった著者が紹介するラーメン店「江ぐち」の物語。42歳時点での途中経過、51歳までの江ぐち日記も掲載。》
もとの文庫版は好きな本だし、「江ぐち」に何年も通った身としては、持っておきたい気もするものの、でも、文庫を所有しているだけに、即買いはちょっとためらわれたりも。毎度のことですが、「新版」とか「新訳版」とか「増補版」とかって、元版所有者としては頭が痛いところですよね。
今日は、小田急線の経堂にお住まいの知り合いのお宅におじゃましてきました。頼まれていた探求本を見つけたので、それをお届けがてら、お昼をごちそうになってきたのです。
このお宅、一家そろっての特撮好きという大変にうらやましい家庭。なにしろ、お嬢さん(6歳)が、「(ウルトラセブンの)ユートムの次はなんだ?」というクイズを出したら、お父さんもお兄ちゃん(中3)も(当然ぼくも)、順番に、あれだこれだと、次から次に答えたりして、ひとしきりもりあがってしまうんだから、すごい。よほど共通の知識がないと、こういうトリビアって、成立しませんよね(笑)。
ちなみに、このクイズ、お父さんがメインの怪獣(星人)を(ベル星人)、ぼくがサブの怪獣を(グモンガ)、お兄ちゃんがエピソードのタイトルを(「空間X脱出」)順にあてるという見事な連携で解決(笑)。いいなあ、わが家も今からこんなふうにならないかな。
↑これに入ってます。
閑話休題。小田急線の経堂と言えば、空犬通信的には、やはり植草甚一さんの街。当然、今日はJJのTシャツを着て出かけてきましたよ。で、その植草甚一さんといえば、遠藤書店。経堂の北口、すずらん通り沿いにある古本屋さんです。
小さいなお店は、コミック・アダルトはなし、明るくてきれいで、分類もこまかくされていて、とても見やすい感じです。文庫のレーベル別に分けるだけでなく、さらに「世界のあれこれ」(文言はうろ覚え)のように、さらに下位分類がされています。近くに住んでいたら通いたい店ですね。
同店と植草甚一さんについては、こんな記事がありましたから、ご存じのない方はこちらをどうぞ。「あの植草甚一さんも通いつめた、経堂の遠藤書店」(経堂系ドットコム)。ちなみに、上の写真は、今日寄ってきた本店の写真。この記事で紹介されている、南口の農大通りのお店は閉店してしまったようで、現在はありません。残念。
もう1軒、農大通り沿いにある、大河堂書店にも寄ってきました。こちらはアダルトは少し、コミックはけっこう置いていますが、かための本もそろっていて、とくに文庫のコーナーには、ものすごくレアというわけではないけれど新古系の店ではあんまり見かけない、古本屋さんで出会うのがうれしいタイプの古めの文庫がかなりそろっていました。
↑日の強い時間帯だったので、店頭のワゴンに覆いがかかってますが、ふつうに営業中でした。
気になる文庫はいくつもあったんですが、たとえば。旺文社文庫の尾崎一雄には講談社文芸文庫になっていないものもありますが、それらが並んでいて、ちょっと惹かれたんですが、いつも持ち歩いているチェックリストを持って出なかったので、どれを持ってる持ってないがわからず、断念。ううむ。
もう1軒、これは今日おじゃましたSさん宅で、きっと空犬が好きだろうと教えてもらったのが、ホームランレコード。
【“JJTシャツ着用で植草甚一で有名な遠藤書店へ……経堂の古本屋さんを回ってきましたよ”の続きを読む】
イベント翌日の土曜日。今日の午前中はずっと、いただいたたくさんのメールやツイート、ブログコメントへの返信・お礼や、遠方で参加できなかった方や知り合いへの報告メールなどを書いていた気がします。ふう。
小規模なイベントとはいえ、準備には半年以上かけましたから、無事に終わってほっとしつつも、もうイベントの打合せとか、バンドの練習とか、トークの中身を考えたりとかがないのかと思うと、ちょっとさびしい気も……。
さて。昨日のイベント「ブックンロールでは、書店から独自に情報を発信している例としてPOPとフリーペーパーを取り上げました。複数の方から、POPの話が参考になった、POP対決がおもしろかったという感想をいただきました。本の作り手にとっても、売り手にとっても、本を書店で買う立場の読み手にとっても、POPって気になりますよね。POPが店内でお客さんの足を止めさせる重要なアイテムであることは、もちろんわかってはいましたが、そのことが昨日の話で、あらためてよくわかりました。
昨晩イベントで読めずにいた『朝日新聞』金曜日の夕刊をぱらぱらやっていたら、「ブックアベニュー」がちょうどPOPの特集でしたね。いろいろなお店の書店員さんたちによる、手作りPOPの力作たちが紹介されていました。昨日のイベントでも、出演者の方3人の実作を会場でお見せしたんですが、そのときのことが思い出され、もちろんただの偶然であることはわかっているんですが、話題の妙なシンクロに、ちょっとうれしくなりました。
紹介されていた書店のうち、紀伊國屋書店新宿本店にはしょっちゅう寄ってますが、それ以外、有隣堂横浜駅西口店、文華堂湘南台店、平坂書房MORE'S店、ACADEMIA港北店は、みな神奈川エリアのお店ということで、ふだんはなかなか拝見することができないところばかり。
そういうお店で実際に使われるているのかもしれないPOPを、こうしてカラーで見られるのは、書店好きにはたまりません。いい企画ですよね。この広告記事、「書店員のみなさんの力作POPを募集します!」とあるから、今後も続くのでしょう。楽しみですね。腕に覚えのある書店員のみなさん、挑戦されてはいかがでしょう?
↑記事で紹介されていた本のなかでは、これが気になります。著者の秋山あゆ子さんの『くものすおやぶん』は、わが家では親子のお気に入り本の1つです。
↑POP、そして神奈川の書店さんといえば、いま読んでいる本の1冊にこれも。ブックンロールでPOPの話をしてくれた達人3人も、見れば誰の作とすぐにわかる個性的なPOPの書き手ですが、梅原さんのPOPもそうですね。デザイン・書体・文言、そして選書、すべてに梅原印が感じられ、1つの世界ができあがっています。
書店がらみの、ちょっとマヂメな話が続きましたので、今日は最近買った本の紹介でも。
- 須永朝彦『天使』(国書刊行会)
- 小川洋子『原稿零枚日記』(集英社)
- 江藤茂博他『横溝正史研究』2(戎光祥出版)
須永朝彦さんの本は、《初期短篇小説から、20数篇を選りすぐった傑作選》とのこと。西沢書店の単行本ほかを所有してますから、作品は重なりそうですが、西沢書店のは函入りの立派な本で、しかも旧かなですからね。雰囲気はあっていいのですが、気軽な読書にはちと向かない。なので、現代かな使いで軽装の傑作選の刊行はうれしいですね。重複覚悟で、やっぱり買っちゃいました。
こんな文字たちが目次に踊っています。契、天使、ぬばたま、綴織画、就眠儀式、木犀、花刑、蝙蝠男、光と影、白鳥、誘惑、銀毛狼皮、月光浴……本編を読みもせぬうちから、目次のこれら文字列に、なんだかざわざわした感じがしてきます。深夜読書にぴったりの1冊かと。
小川洋子さんの新作、なによりタイトルがいいですよね。『原稿零枚日記』。『日記』、それも小説家の日記には、それがフィクションとして書かれたものも含めて、目がないほうなので、これも読むのが楽しみ。あえて、内容紹介のたぐいも一切目に入らないようにしています。
『横溝正史研究』、創刊号が出たときは驚きましたが、ちゃんと2号が出ましたね。特集は「ビジュアライズ横溝正史ミステリー」。まだ創刊号のほうも通読できていないんだけど(苦笑)。ちなみに、すでに続刊も予告されています。『横溝正史研究3、特集は「倉敷・岡山殺人事件」。急いで読まないとね。
横溝者は必読なのは当然として、目次には、「正史・乱歩・馬琴 "絵になる"物語の系譜とその映像化」(芦辺拓)、「海野十三との交流 短編「蟹」を読む」(大石征也)といった稿も見えますから、乱歩者、そして広く戦前探偵小説に興味のある向きも目を通す価値がありそう。
吉祥寺書店員の会「吉っ読」初のイベント、「ブックンロール」、無事に終えて帰宅しました。イベントの出来については、参加してくださったみなさんの評価を待たないといけませんが、みなさんのおかげで、少なくとも主催者側にとっては、大変に楽しい会になりました。出演・参加くださった皆様、また、ツイートやコメントで応援してくださった皆様に、心から御礼申し上げます。ありがとうございました。
ツイッターやブログでいただいているコメントには明日以降、順次ご返信させていただきます。
とりいそぎ、イベント無事終了のご報告と御礼まで。
最近、書店の出店と閉店と、そんなことばっかり書いている気がします……。でも、都内の書店の動きは、つらいニュースも楽しいことも、どっちもちゃんと追っかけていかないとね。で、今日のネタは、明日あさってにでもあげようかと思っていたら、ツイートしたらたくさんの方から反応があったので、急遽、急いでアップすることにした、こちらの件。「ディラ品川店閉店いたします。」(8/18 BOOK EXPRESS What's new)。
大変に短いのでそのまま引かせてもらいます。《日頃のご愛顧、誠にありがとうございます。ディラ品川店は平成22年9月8日(水)22:00をもって閉店とさせていただきます。長らくのご愛顧ありがとうございました。》これだけ。ず、ずいぶんとあっさりしてますね……。
ブックエキスプレスディラ品川店といえば、大型ターミナル駅のコンコース内、ほぼ中央といっていいような好立地のお店。同店を利用したことのある方ならご存じの通り、いつ行ってもお客さんで賑わっていて、人がいない様子を見たことがないほど。お店の混雑ぶり・活気で言えば(ついでに言えば、それらから想像される売上の面でも)、エキナカのブックエキスプレスチェーンのなかでも、東京・上野などと並んで、トップクラスの店のはず。そのようなチェーンを代表するといって店舗の1つについて、今後のことの説明が何もない状態で、「閉店」とだけアナウンスされるとは……。
書店関連のツイートを眺めていて発見したのですが、閉店前ということで、同店では、「手書きPOPの冊子」なるものを配布していたそうです。これ、数日前の情報だからもうないだろうなあ。あったら欲しいなあ……。
同チェーンでは、先月8月末に、さいたま新都心店が閉店したばかり。同駅そばのショッピングセンター内には、大型(たしか、600坪以上のはず)で、品揃えも豊富、ディスプレイにも工夫がされていて、広くて明るい店内と、非常に魅力的な紀伊國屋書店さいたま新都心店があるので、競合の結果なのか、それとも、別の事情によるものなのかよくわかりませんが、いずれも、売上不振店をたたむといった単純なものにはまったく思えないだけに、とても気になります。
ツイッターに反応してくださった方々の声をみると、びっくりした、というのが圧倒的。それだけ、まさかこの店が閉まるなんて!、お客さんにとってはそういうお店だったっていうことですよね。「困る」という意見も複数ありました。品川には、駅の周りに複数の書店がありますが、駅のサイズ自体が大きいので、ちょっと方向が違うと、書店に行くのも大変だったりしますから、このお店を重宝に思っている人はきっと多いだろうことは、誰でも想像がつきますもんね。
この件、圧倒的に情報が不足しているので、また何かわかったらレポートしますが、何かご存じの方は、ご教示いただけるとうれしいです。
吉祥寺書店員の会「吉っ読」による、本・書店・吉祥寺をテーマにしたイベント「ブックンロール」がいよいよ明日となりました。明日は大事な一日、前日ぐらい早く寝て明日にそなえればいいものを、こんな時間になってもまだ、進行を確認したり、資料を作ったり直したり、お金の計算をしたり……やることがたくさんあって寝られません(涙)。
さて、一昨日書いた書店に関する記事、翌日になってもまだ多くの方から反応をいただけたりして、引き続き、びっくりしている次第です。いつもより多くの方に読んでいただけただけでもうれしいんですが、とくに、書店関係の複数の方から、言いたかったことを書いてくれた、という主旨のお言葉をいただけけたのは、望外の喜びでした。自称書店応援サイトをやっている者として、これ以上励みになることはありません。
書店をとりまく諸々について、こんな弱小ブログに何か書くことにどれほどの意味があるのかと、しょっちゅうくじけそうになっているんですが、もうちょっとがんばってもいいかなと、そんなふうに思えました。ありがとうございました。
そういえば、以前に、やはり書店の今後について、松岡正剛さんの(ことはリスペクトしつつも、ですが)発言(の一部)に、「従来の書店」への無理解としか思えない、不用意な物言いがあったことを取り上げたこともありました(いつもよりは反応がありましたが、今回ほどではありませんでした。ちなみに)。松岡正剛さんと、先日取り上げた「出版流通コンサルティング」氏を同列に扱うわけではありませんが、「従来の書店」を上から目線で雑ぱくにまとめてしまおうとする態度には共通するものが感じられたのです。青臭いことをあえて書きますが、書店の存在が自分にとってあまりにも大事なので、そういう態度や物言いが許せないのです。
ぼくは、どっちかっていうと打たれ弱くて、簡単に死にそうにできてるタイプ、本来はとにかく平和に生きたいほうで、批判だの反論だのは得意ではないし、炎上とかトラブルとか、そういうのからは走って逃げたいほうなんですが、でも、この種の書店への無理解な物言いを目にしてしまうと、どうしても看過できない。急にアントニオ猪木スイッチがonになってしまうのです。だから。楽しいことしか取り上げませんとした空犬宣言と全面的に矛盾していますが、書店問題について先日のようなことがあったら、やっぱり異を唱えていこうと思っています。
さて。最近はやたらにこの話題が多いんですが、今日もまた書店の出店、それも中央線沿線の新店をご紹介します。もうご存じの方も多いかと思いますが、荻窪に、啓文堂書店がお店を出します。「啓文堂書店荻窪店オープニングスタッフ募集」(8/16 啓文堂書店公式サイト)。
サイトによれば、開店は10月上旬、場所はJR荻窪駅の駅に隣接する商業ビルで、現在改装中のタウンセブン6階とのこと。ここは、以前に新星堂書籍があったところ。階も同じ6階ですから、書店が純粋にプラスになるわけではなく、入れ替わりの感じですね。
JR荻窪駅の北口側の新刊書店としては、ルミネの4階にある八重洲ブックセンター、そしてブックオフの隣という、いろいろな意味で気の毒すぎる立地のブックセンター荻窪があります。旧新星堂も含めた3店の直線距離は非常に近いのですが、商業ビル内の2店と路面店ということで、うまく棲み分けがなされていたのでしょう。規模や品揃えで突出している店がないのも、共存という意味ではいいのかもしれません。
10月と言えば、ジュンク堂書店吉祥寺店がいよいよオープンとなるタイミング。2駅離れているとは言え、同じ沿線に1000坪の大型書店ができるとなれば、影響がないわけはないでしょう。当然、そのことを見越した上での出店計画だと思うのですが、さて、どんなお店になるのでしょうか。
タウンセブンという、昭和テイストの色濃く残る商業ビル内の書店ということを意識していたのでしょう、新星堂は、いい意味でとても庶民的な店でした。容れ物のタウンセブン自体がどう変わるのかにもよるでしょうが、啓文堂書店がそのなかでどんなお店づくりをするのか、中央線沿線住人の書店好きとしては、ちょっと楽しみです。ジュンク堂書店吉祥寺の影響も含めると、荻窪への出店は、決してラクなものにはならないだろうと予想されますが、啓文堂書店のみなさんにはぜひがんばってほしいものです。
商圏としてそれほど広くはなく、既存の書店が複数あるエリアへの書店の出店については、いろいろ思うところがあるので、稿をあらためて、ちょっとまとめてみたいと思います。
↑そのテーマで書くとなると、この本のことにもふれたい、というか、この本のことはきちんとメインで取り上げたいのですが、どうも簡単には書けない内容なもので……ずっと完成できない宿題みたいになってます。
吉祥寺書店員の会「吉っ読」のイベント、ブックンロールを2日後に控えた今日、吉っ読バンドあらため「ブックスピストルズ」の、本番前、最後のスタジオ練習を終えて、先ほどいい気分で帰宅した空犬です。
昨日は、書店について書かれた文章2つを紹介した記事を書きました。すると、昨晩のうちにすぐ、知り合い書店員から「読んだよ!」とメールが。そのほか、メールやらツイッターなどで、めずらしくいろいろな方から反応いただき、いつにない反響に、書いた本人がびっくりしています。
我が空犬通信の昨日の訪問者数も、ふだんの倍以上。ふだんはブログの訪問者数もコメントも拍手の有無もあんまり気にしていないのですが(というか、あまりにも少ないので、気にしていると、書く気力に影響が出ちゃうもので;苦笑)、昨日の記事はなんと、二桁の拍手が! 空犬通信、始まって以来のことではないでしょうか……(10超えただけでびっくりしているんだから、ふだんがいかに少ないか、ってことを吐露しているようで、なんかフクザツなんですけどね)。でも、我が駄文に、こんなにもたくさんの方に反応いただき、ほんと、うれしいかぎりです。ありがとうございました。
別に、ぼくの文章力やテーマ設定がどうのこうのではないのは、書いた本人がいちばんよくわかっています。昨日取り上げた書店関連の文章のうち、後者の内容があまりにひどすぎたことが、やはり大きいのでしょう。自分のブログには、楽しくないことはあんまり書きたくないんだけど、でも、昨日はあの文章を取り上げて、正解だったかなと思っています。
これからも、書店を取り巻く諸々について、「全面的に応援」の立場からいろいろ発言していきたいと思っています。昨日の記事に反応して、初めてのぞいてくださった方がたくさんいらっしゃるかと思いますが、もしも書店問題に関心があるという方がいらっしゃいましたら、ときどきのぞきに来ていただけるとうれしいです。
広義の「書店の未来」について書かれたもので、対照的といっていい内容と読後感の文章を、たまたま続けて2本読みましたので、ご紹介します。
まず前者、「第3章 アイディアマンと本屋の未来について考える」。内沼晋太郎氏と嶋浩一郎氏の対談です。「好きな本屋・嫌いな本屋」「本屋の未来」「お客さん同士のコミュニケーション」「新しい形態の書店」「実際に本屋をやるとしたら?」といった、書店に関心のある向きには気になるテーマが目次に並んでいます。
実際に読んでもらうのがいいので、とくに引用や紹介はしませんが、いやはや、お二人とも書店の店頭、書店の実際をよく見ています。嶋氏が好きな書店としてあげているのが、ぼく自身、阿佐ヶ谷時代には通いまくった、南阿佐谷にある書原だというのがいいではないですか。これだけで、話の続きが読みたくなりますよね。
対談中、書店がこれからどうしたらいいか、どうしたらおもしろくなるかについて、アイディアがぽんぽんとびだします。それらは、「対談編」とは別に、「アイディアまとめ編」として一覧になっていますから、対談読了後に、書店関係者なら、自分のお店を思い浮かべながら、一般読者ならひいきのお店をイメージしながら、これらのうち、どれなら実現可能か、どれが実現したら楽しいか、などと、ああでもないこうでもないと考えてみるのも一興でしょう。
ここに出ているアイディアのすべてに、全面的に賛同・共感するわけではありません。でも、いろいろな意味で刺激になりましたね。とくに、いまは、吉祥寺の大型書店出店問題で、書店関係者と顔を合わせれば、どうしよう、ああしようと、そんな話ばっかりしてる時期なもので、よけいに。なにより、書店をどうしたらいいか、って、考えてるだけで楽しいではないですか。ねえ。
そういえば、吉っ読の例会飲み会でも、こんなことしよう、あんなことできないかな、なんて話を、これまでさんざんしてきたのでした。今回のブックンロールだって、そういう流れで生まれてきたわけですしね。さすがに、我々は、お二人のようなアイディアマンではありませんから、こんなにたくさんのすてきな案をぽんぽんあげられるわけではありません。だから、比べたりしたら、怒られそうですが、やってることは同じだなあ、と、ちょっとうれしくなってしまったのでした。吉っ読でも、例会のたびに、とびだしたアイディアをストックしておいて、こんなふうにブログで披露したりしたらおもしろいかも、そんなふうにも思った次第です。
で、一方の後者。こちらは、同じく書店の今後、とくに減少傾向(とその先)についてまとめたものですが、楽しいアイディアに満ちていた内沼嶋両氏の対談とまったく違うノリで、書店好き、書店関係者にはあんまりな書き方がされているところもあったりして、驚いてしまいました(以下、いささか批判めいたことを書きますので、書店問題にご興味のある方だけお読みください)。
【“アイディアマンはもちろん、そうでない人も、書店の未来について考え(たりす)る”の続きを読む】
「ブックンロール」がらみの用事があったので、BOOKSルーエへ。しばらくおしゃべりした後、PARCOへ移動。先日の記事でお伝えしましたとおり、HMV吉祥寺PARCOが、明日8月17日で閉店とのなります。これまで何度も利用してきた身としては、やはり最後にのぞいておかねば、しかもセール中だというから、何か買ってこなくちゃ、ってことで、行ってきましたよ。
↑入り口に掲示されていた閉店の案内。
店内のDVDと輸入CDは全品30%オフ。ロンロン閉店前の新星堂が、閉店日が近づくにつれ、50%、70%オフのたたき売り、全部もってけ!状態になっていたのに比べると、同じ閉店でもずいぶんおとなしめのセールです。
CDよりも、洋画のDVDを、と思って、棚をチェックしてみたんですが、もう商品が売れちゃったのか、それとも在庫減らすために引き上げちゃったのか、すかすか。端から端まで見てみたんですが、即買いしたくなるようなタイトルはなし。ううむ、残念。
商品数の問題だけじゃないんでしょうね。30%オフって、Amazonや、それこそHMVのオンラインショップでも、それぐらいで買えちゃったりするから、ちょっと特別感に欠ける感じも。それに、ブルーレイが対象外だったり、『第9地区』のような出たばかりの新作も対象外だったりで、どうも放出感の点でやや弱いセールになっちゃってる感じがするんですよねえ。
閉店しようってお店のセールにけちをつけるつもりはまったくなくて、むしろ、最後ぐらいはと、いいものが残ってたら、まとめ買いするぜ!ぐらいのつもりでいたので、ちょっと肩すかし、何も買えなくて残念に思った次第。まあ、半額とか70%オフって言われると、さして欲しくないものまで買っちゃったりするから、その意味では冷静に見ることができて、経済的にはよかったのかもしれないけれど……。
お店は明日まで。吉祥寺には、ディスクユニオンもタワレコも新星堂もあるけれど、でも、やっぱりリブロの行き帰りにCDやDVDを気軽に見られなくなるのは残念だなあ……。
↑唯一、購入を迷ったのはこれ。『月に囚われた男』はすごく観たかったんだけど、劇場で見逃していたもの。『地球に落ちてきた男』とのカップリングというのはなかなかナイスだと思います。どんな組み合わせや、ってツッコミたくなる人もいそうですね。ご存じない方いるかもなので、念のため、『月に』の監督、ダンカン・ジョーンズは『地球に』の主演デヴィッド・ボウイの息子。
ソフト自体はそれぞれの単品と同じ仕様のようですが、このBOXのみの特典として、『地球に落ちてきた男』の劇場用パンフレット縮尺版がついているそうです。それはちょっとほしいかも。まあ、結局迷って買わなかったんですが、こうして、後で調べてみたら、Webでも20数パーセントオフで買えるんだものなあ。
すみません。手違いで、まったくわけのわからない本文になってたようなので、書き直しました。
吉っ読日記に、この秋に予定されている、一連の吉祥寺関連ニュースを、時系列でまとめて紹介する記事を書きました。こちらです。よろしければご一読ください。
朝日新聞、昨日8/14の朝刊に、『乙女の密告』の赤染晶子さんが、「かまい」という題で、芥川賞受賞エッセーを寄せていましたね。
《京都の小さな商店街に小さな本屋さんがある。》と書き出されるこの文章、書店云々を抜きにしてもすてきで印象に残るすばらしいものなんですが(スイカの話とか、なんかおかしくていい感じ)、ぼくのような書店好き、それも、街の本屋さんでの幸せな体験があるものには、とくにぐっとくるものになっています。
今もあるというそのお店で、自著を注文したあとのくだりなんて、ほんとにいいもんなあ。そして、最後の店主のセリフの引用……ぼく自身、大阪で子ども時代を過ごしているもので、誰というわけでもない、いろいろな大阪の書店のおっちゃん、おばちゃんたちが目に浮かんだり想像されたりして、何度も読み返してしまいました。
赤染さん、一度も読んだことのない方ですが、この前の村田沙耶香さんのとき同様、この一文で、ころりとファンになってしまいましたよ。Webにはあがっていないようですが、本好き書店好きは、探してでも読む価値があると思いますよ。
↑芥川受賞作(左)はまだ買っていませんが、掲載号(右)を購入してあるので、まずはこれで。受賞作は、選評込みで読みたいので、毎回掲載号を買って読んでいるのです。
この前紹介した村田沙耶香さんの文章といい、今回の赤染さんの文章といい、やはり身近に街の本屋さんがあったからこその出会いであり、出来事であり、なんですよね。こういう、本屋さんがらみのすてきな文章を読んでいると、自分にもあったそうした小さな本屋さんとの出会いを、記録として書いて残しておきたいような気もするものの、でも、それはただの素人の思い出雑記に過ぎないわけでは、いくらくだらないことを垂れ流しまくっている個人ブログとはいえ、そのようなことを書くのはどうかと、ふだん、怪獣の話はなんの躊躇もなく(ないわけではないが、一見そのように見える程度にはリミッターの効きが弱い)書くくせに、「書店を応援するブログを自称してるんだから、大いに書店のこと書いたらええやないか」という話になると、うーんとか言ってるんだから、我ながらよくわからん……。しかも、文章が滅茶苦茶だ。
【“書店好き必読です……赤染晶子さんの受賞エッセイ「かまい」”の続きを読む】
先日ご紹介しました、吉祥寺の“一人”出版社、夏葉社さん、この秋の新刊ですが、チラシができあがりましたよ。
↑写真なので、ちょっとゆがんでます。そのうち、可能ならPDFをアップします。
『レンブラントの帽子』に続く、夏葉社さんの新刊、第2弾です。前回も渋いセレクトですが、今回も、というか、今回はさらに、というか、いいところに目をつけますねえ。
『昔日の客』は、かつて大田区は大森馬込にあった古本屋「山王書房」の店主、関口良雄さんの手になる古本随筆。山王書房といえば、上林暁、尾崎一雄ほか、多くの文学者に愛されたことで知られる店。その店主の関口さんは、単に作家と交流があったというだけでなく、本格的な書誌研究に手を染めたことでも知られ、『上林暁文学書目』『尾崎一雄文学書目』などを残しています。日本文学、それもひと昔前のそれが好きな方なら、必ず耳に目にしたことのある店名であり著者名でしょう。
わたくし空犬も、こうした作家周辺の読書を通じて、山王書房の名を、そして店主の関口さんの名を、さらに、彼が残したこの『昔日の客』の存在を知りました。とくに、空犬お気に入り作家の1人、野呂邦暢さんのエッセイに、この本が出てくることもあって、ずっと読みたかったんですよねえ。
そんな本が、よりによって吉祥寺の、しかも、最近知り合ったばかりの出版社から復刊されることになるとは! なんたる偶然、なんたる縁……。縁といえば、この本、チラシの紹介文などにあがっている作家のなかに、いわゆる中央線文士に分類される名前が含まれているぐらいですから、中央線にも縁がないわけではなく、いつだったか、吉祥寺のお隣駅、西荻窪発の本イベント、西荻ブックマークでも取り上げられていたんですよね。いま調べたみたら、ありました。こちら。
というわけで。『昔日の客』、古本・山王書房・三茶書房・日本近代文学館、浅見淵・上林暁・川端康成・尾崎一雄・尾崎士郎・野呂邦暢・三島由紀夫・沢木耕太郎……こうしたキーワードにぴんとくる人には強くおすすめの1冊です。発売は、9月下旬予定、予価2300円です。書店関係の方はどうぞ、夏葉社さんに直接ご注文ください。一般の読者の方は、しばしお待ちを。発売日などの詳細は、同じく夏葉社さんのサイトでチェックしてください。おそらくBOOKSルーエをはじめ、吉祥寺の書店では取り扱いがあると思いますが、そのあたり、くわしい情報は、またこの空犬通信でもご紹介する予定です。
↑これらもぜひ一緒に。
昨日は、西荻窪のbeco cafeに「吉っ読」メンバーが集合、イベント「ブックンロール」の作業やら打合せやらをやってきました。イベント当日に会場でお客さんに配る資料類などの準備が中心です。吉祥寺の出版社、夏葉社も、この秋の新刊チラシを届けがてら、手伝いに来てくれました。なんか、文化祭気分でわいわいやれて、たいそう楽しい時間でしたよ。そのときの様子は、「吉っ読」会長、BOOKSルーエの花本氏がこんな文章にまとめてますので、よろしければご覧くださいな。
この2週間ぐらいは、毎晩のように、大量のメール、大量の資料、大量の計算、あの人は来るのか来ないのか、この人から連絡がないな、あの資料がまだそろわない、きー、みたいな日々で、もうへとへとのくたくただったんですが、昨日の作業&打合せで、準備関係が一気に進んだこともあり、ちょっと気がラクに。ってんで、今日は、会社帰りに渋谷へ、「第19回東急東横店渋谷大古本市」をのぞきにいってきましたよ。
ここ、毎年のように来ていますが、エスカレータの脇に、いつも西村文生堂さんが、ショーケースを出していて、それをのぞくのが毎回の楽しみなんです。今回は、アート文庫さんも並んで出していましたね。どちらも、探偵や古いSF好きなむきにはたまらない品々を出してくれるお店。乱歩、香山、海野、大下、小栗、そしてジュブナイルSFの数々……ガラスケースに入っている高額本たちは、まさに眼福。ため息が出るものばかりです。
値札が見えないようになっている商品が多いんだけど、買えないことはわかっていても、やっぱり値段を知りたい(ま、だいたいの相場は、古書目録やらWebやらを見ているのでわかるけれど)。が、さすがに、お店の人に、わざわざカギを開けて「見せてくれ」とはなかなか言えません。なので、ただ眺めるだけ。はあ……。
今回もいくつか買い物はしたんですが、その報告はまたにして、今日は、できたての書店フリペ(フリーペーパー)の紹介を。じゃーん。
いちばん左は、おなじみ、BOOKSルーエ発行の「ルーエの伝言」、最新の35号です。今回の特集は、イベント「ブックンロール」に合わせて、ってことで、「ロックンロール」。あまりにも特集に無関係かつ著作権無視的な表紙が逆に目を引きますね。あっ、わたくし空犬も、久しぶりに寄稿しております。
まんなかは、BOOK EXPRESS ディラ上野店発行の「季刊めくる」。長谷川編集長が結婚したと思ったら、特集がこれ。「ウェディング大特集」。もちろん、絵に描いたようなラヴラヴうふーんな内容にはまったくなっていないあたりが、さすがというか、実にすばらしい。
そして、右、お待たせしました、1年ぶりの登場です。BOOKSルーエとBOOK EXPRESS ディラ上野店のコラボフリペ、「メクルエデン」の第2号です。全編にあふれる意味と方向性のない情熱……内容の説明がしにくいので、ぜひ現物をご覧ください。
これらのフリペは、発行店の店頭で無料配布されています。「メクルエデン」は、吉祥寺でも上野でも入手可能ですよ。ぜひぜひ、お店で手に入れてください。
あと、「ブックンロール」でも、これらを含む、わたくし空犬がせっせと集めた書店フリペセットを配布予定です。そのセットの内容については、イベント終了後に、吉っ読のサイトで紹介する予定ですが、それを読んで、フリペセットがほしい!、なんて奇特なことを思われた方がいらっしゃいましたら、少し余分にセットを組むつもりなので、いつものように、コメント欄にてご連絡いただければと思います(ただし、数にかぎりが、っていうか、数部しかないので、必ず差し上げられるとはかぎりません。あしからず)。
といっても、今回は書店ではなくて、CDショップ。PARCOの地下、リブロ吉祥寺店の上のフロアにあるHMV吉祥寺PARCOが、今月17日で閉店とのことです。嗚呼……。
書店と同じく、というか、もしかしたら書店以上にきびしいと聞くCDショップ。なかでも、HMVは、新宿タカシマヤに入っていた新宿店、渋谷店、銀座インズ店など、大型の、または旗艦の、といっていいクラスの店舗の閉店が相次ぎ、「お店でCD購入派」に残念な思いをさせまくっていたところに、またこのニュース。しかも、我らが地元、吉祥寺で、とは。
ディスクユニオンやタワレコを併用しているので、ここばっかりというわけではありませんが、それなりによく使っていたお店だけに、ぼく自身もちょっとショックです。
現在は閉店前のセール中とのこと。この週末にでも、ちょっとのぞいてくるかなあ。というわけで、地元のCD派は、ぜひ閉店前の様子を見に行ってみてください。
イベント「ブックンロール」まであと10日を切り、あいかわらず直前の準備でばたばたの空犬です。
さて、吉祥寺の書店・出版関係者にとっていまもっとも気になる、伊勢丹吉祥寺跡地にジュンク堂書店が出店する件、同店公式サイトの「お知らせ」に正式なアナウンスがあがりましたね。「ジュンク堂書店 吉祥寺店 10月13日オープン!」。
短いので、そのまま引かせていただきます。
《コピス吉祥寺 6階・7階に、新店舗をオープンします。
2010年3月、惜しまれつつ閉店した伊勢丹吉祥寺店の跡地が、 10月に「コピス吉祥寺」としてリニューアルオープン。ジュンク堂書店はこの中核テナントとなります。
売り場面積 約1100坪の書店は、エリアでも最大級となります。ジュンク堂ならではの品揃えで、みなさまをお待ち申し上げます。
営業時間 未定
所在地 東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目11-5 コピス吉祥寺 6・7階
*オープニングスタッフの募集は追ってお知らせします。》
10月13日……2か月後、ですか。いよいよ、って感じです。いろいろ気になること、書きたいこともあるんですが、とりあえず今日のところは開店日のご報告だけ。
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