今日は親子で立川へ。週末も一日は仕事、もう一日は終日ダウン、みたいなのが続いていたので、久しぶりのお出かけです。映画『マジック・ツリーハウス』を観て、オリオン書房ノルテ店でたくさん買い物してきました。
この『マジック・ツリーハウス』、原作は児童書・YAに関心のある方なら説明不要の大人気ベストセラーシリーズ。映画版のポスターの絵に本が乱れ飛んでいる様子にもあきらかですが、「本」が重要な役割を果たしている作品ですよね。
今回、ちびっこたちに混じって一緒に映画を観てみると、大人の目には、その世界観やキャラ設定にいささか首をかしげたくなるようなところがありはするのですが、でも、本を読んでいたことで誰かを助けられたり、困ったことにあたるたびに本にあたって知識を得たり、本の世界へ行こうと主人公の子どもたちが駆け出すシーンがあったり、というのを観ると、まあ、細部の甘いところはいいかな、などと、つい点が甘くなってしまいます。
閑話休題。ノルテも仕事抜きでゆっくり訪れるのは久しぶり、今日は2時間近く滞在。居心地のいい本屋さんだとこうなっちゃうんですよねえ。たくさん買ってきたものの一部を。
- 円城塔『道化師の蝶』(講談社)
- ヘンリー・スコット・ホランド『さよならのあとで』(夏葉社)
- 山本直樹監修『21世紀のための吾妻ひでお Azuma Hideo Best Selection』(河出書房新社)
『道化師の蝶』は、芥川受賞作に、『群像』2月号に掲載されている中編「松ノ枝の記」を併録して単行本化されたもの。朝日新聞に載っていた全5段の広告もなかなか異例のものでした。新聞広告でさえ、その難解ぶり、読めなさそうな感じが強調されてしまう本作、円城さんの過去作を読んでいない、円城作品初遭遇の本読みの方々がどんな反応をされるのか、興味津々です。
大森望さんが、WEB本の雑誌に、「円城塔『道化師の蝶』攻略ガイド」 (1/27 WEB本の雑誌)という記事をアップしています。途中に《思いきりネタバレなので、未読の人はくれぐれも注意してください》とありますから、作品を読む前に目を通される方は、くれぐれもご注意を。ナボコフとの関係などが丁寧に説明されています。
夏葉社の新刊『さよならのあとで』、ノルテ店では、ぼくが気づいただけで4か所に置かれていました。この本については、稿をあらためて。
知り合いに会うかもしれないお店でこのような表紙の本をいい年したおやぢが買うのは、いささか勇気が要るんですが、買ってしまいました、『21世紀のための吾妻ひでお Azuma Hideo Best Selection』。どのような表紙かは、版元のサイトやオンライン書店で見てみてください。内容は、《「吾妻マンガに影響を受けた」と公言する漫画家・山本直樹が監修を担当》した《吾妻ひでお究極のベスト選集》。膨大な作品群から、よくまあ、この分量の1巻本にまとめたなあと、そのことがまず驚きです。
ノルテ店、エスカレータあがって正面の新刊コーナー、裏側の平台では、芥川賞の2人のフェアのほか、昨年40周年を迎えた工作舎のフェア、「工作舎40周年ベスト40 本は暗い玩具(オブジェ)である」、青土社の『ユリイカ』のバックナンバーフェア、「本の本」を集めた「World Book Tour」(「Book World Tour」だったかもしれない)など、本好きが喜びそうなフェアが複数展開中。ここだけで、いくらでもおもしろ本をピックアップできそうで、ほんと、油断できません(笑)。
日が迫っているものばかりですが、気になる出版・書店関連イベントをいくつかご紹介します。
昨年には、「自著を語る」にも登場した石橋毅史さんの講演会の案内が「日本の古本屋メールマガジン」第111号に載っていました。タイトルは「古書店も新刊書店も『本屋』である」。1/29(日)の14時から、 東京古書会館の2階情報コーナーで。行きたいけど、この日はダメなんだなあ。残念。『「本屋」は死なない』の読者の方は要チェックです。
なお、メルマガの案内によれば、この講演、「小口絵の世界へ」という、東京古書会館で、1/27~1/29の3日間、開催される展示会のイベントとして行われるのだそうです。小口絵本が100冊以上展示されるというから、こちらの展示も気になります。また、同じメルマガには、こんな展示の案内も。「企画展示「気になる古書目案内-前期:女子が作った古書販売目録、後期:男子が作った古書販売目録-」。こちらは、昨年から始まっていて、3/24(土)まで。会場は、千代田図書館、9階展示ウォールとのこと。
第146回芥川賞を受賞した円城塔さん『道化師の蝶』のサイン会、ほかにもあるのかもしれませんが、目についたのを3つ。関東のファンは、2/3の三省堂書店神保町本店か2/5のリブロ池袋本店に、関西のファンは、2/10の紀伊國屋書店梅田本店の会へ。時間や整理券などの詳細はそれぞれサイトを見てください。写真は、三省堂書店神保町本店に貼られているサイン会の案内。
メディア的な話題は同時受賞のもう一方、キレキャラの方のほうに完全に持っていかれている感じで、サイトをいろいろ眺めていたら、「完全に無視されている」などと書いてあるものも(泣)。なんかくやしい感じだけど、でも、騒がれすぎないのも円城さんの作風を考えるといいのかもなあ、などと思ったりもしています。円城さんといえば、こんな記事がありました。「寄稿 円城塔さん、芥川賞に決まって 「中間の賞」広げるのが良い」(1/26 MSN産経ニュース)。《だからもし、わたしの奇妙な小説を手に取ってしまい、内容が不明すぎると困った方には、今後のわたしのなりゆき自体を、ほのかに気にして頂きたい。》《もともと、小さな生き物である。裸になっても、またやり直せばよいだけである》……ぼくは(SF読みだから、ということだけでなく)やっぱり円城塔さんを応援していこうと、そう思うのです。
さて、最後のは、「キノベス!」、2012年の第1位に選ばれた三浦しをんさんと、2011年の第1位作品『いちばんここに似合う人』の翻訳を手がけた岸本佐知子さんのトーク。この組み合わせだけで、わくわくしますよね。サイトによれば、内容は、《辞書をつくる人々の奮闘を描く『舟を編む』で「キノベス!2012」第1位に輝いた三浦しをんさんと、昨年、『いちばんここに似合う人』で「キノベス!」を受賞した翻訳家の岸本佐知子さん。日々、辞書と付き合い、ことばをつむぐおふたりが感じる辞書の魅力、ことばのおもしろさ、本のもつ可能性とは...? 「キノベス!」受賞記念とはいっても普段からなかよしのおふたりのトーク。いったいどっちに転がるか...お楽しみに!》とのこと。学会のような場ならともかく、書店での一般向けトークイベントで「辞書」がテーマの1つになるというのは、きわめてめずらしいことですよね。これは気になるなあ。
2/4(土)、紀伊國屋サザンシアターにて。チケット発売・電話予約はすでに始まっていますので、興味のある方はお急ぎあれ。ちなみに、今日、電話で確かめてみたところ、まだ空きがありましたよ。
昨日は、吉祥寺書店員の会「吉っ読(きっちょむ)」の新年会でした。場所は、吉祥寺のいせや総本店。吉っ読メンバーのほか、仲良しの出版・書店関係のみなさんが30人も集まってくれました。昨日ご参加くださったみなさま、ありがとうございました。
昨日の新年会は、今年の6月に開催を予定している、本と書店と音楽のイベント「ブックンロール」の話をする場にしたいということで、トークのテーマ案についてみなさんからお話をうかがったり、当日のヘルプを募集したりしました。
ブックンロール Book'n'Roll Vol.4
日時:2012年6月29日(金)
OPEN 19:00 START 19:30(~22:30)
場所:ルースター・ノースサイド(東京・荻窪)
杉並区上荻1-24-21-B1 03-5397-5007
http://ogikubo-rooster.com
チャージ:1000円+ドリンク500円(予定)
出演:(バンドの部)
ブックスピストルズ(「吉っ読」のバンド)
C調ボーイズ(夏葉社島田さんのバンド)
(トークの部)未定
トークの部のテーマ案は、今のところ以下の3つです(すべて吉っ読の案です)。
- 1)アンダー35 若手(?)書店員座談会
- 2)本屋でガールトーク 書店員女子会
- 3)日本の夢の本屋さん
これがタイトルというわけではありません。さすがに、もうちょっと練らないとね(苦笑)。
1つめ、2つめは、書店員のみなさんによる座談会。3つめのは、昨年出たすばらしい書店本『世界の夢の本屋さん』(エクスナレッジ)の日本版&吉っ読版ってことで、書店通3~5人が、あちこちのすてきな書店(できれば、ふだん行けないエリアのお店)の写真を持ち寄って、それをスライド上映しながら、ガイド付きのバーチャル書店巡りをしようというもの。
これらの案について、どれがいいとか、誰に出てほしいとか、このテーマなら誰が適任とか、何かご意見がありましたら、ぜひお聞かせください。出演候補は自薦他薦どちらも大歓迎です。また、これ以外のテーマ案についても、引き続き募集します。リクエスト、ご意見は、ぜひこの空犬通信のコメント欄でお寄せください。
イベントを手伝ってくださる方も引き続き募集しております。うれしいことに、昨日の会でも数人の方が手をあげてくださいました。イベントはみんなでわいわいやるほうが楽しいですからね。本と書店のイベントに関わってみたい、手伝ってもいい、などという方がいらっしゃいましたら、ぜひわたくし空犬か、BOOKSルーエの花本氏までご一報ください。
【“吉っ読新年会、そして、ふたたびブックンロールのご案内とお願い”の続きを読む】
新刊書店の開店閉店情報です。既報のものも含めて、今年の春頃までの分で、こちらで把握できているもの、最近報道されたものなどをまとめてみました。
●オープン/リニューアル
- 1/5【オープン】Brown Books Cafe南三条屋根裏店
- 1/23【リニューアルオープン】リブロecute大宮店
- 3/17【オープン】蔦屋書店フォレオ菖蒲店(2268)
- 3/30【リニューアルオープン】東京堂書店
Brown Books Cafe南三条屋根裏店は、札幌市中央区、すすきののお店。場所は、昨年10月に閉店した「はろー書店」の跡地だそうです。ちなみに、この「はろー書店」、ぼくは行ったことがないので、どんなお店だったのか残念ながら知らないのですが、Webなどで同店の閉店を惜しむ声を読むと、アート系の本や雑貨を扱う、すてきなお店だったようですね。
で、Brown Books Cafe南三条屋根裏店ですが、お店のblogによれば、「コーヒー豆、コーヒー器具、本、ポストカード、雑貨の店」とのこと。書籍の扱いがどの程度なのかわかりませんので、ここで最近オープンの新刊書店の1つとして扱っていいのかどうか微妙な感じですが、ファンのついていた個性的な書店が閉店した跡地に、ブックカフェができるというのは、元のお店の利用者にとっても、同地の本好きのみなさんにとっても、きっとうれしいことだろうと思いますので、紹介しておきます。
東京堂書店のリニューアルについては、昨年の記事でも少しふれたことがありましたが、とうとう工事が始まりましたね。少し前のことになりますが、1/10、1/11の2日間、改装のための臨時休業がありましたが、翌日の東京堂書店をのぞいてみたら、もと雑誌のあったあたりが囲われていて、1階の売り場は3分の2ほどになっていました。向かって左側の入り口が閉じられ、そちらに、営業中であること、リニューアルオープンは3/30であることをうたった貼り紙が出ていました。
↑左は1/10、11の一時休業時に出ていた貼り紙。右は、現在はりだされているもの。
ちょっと狭くなってしまった売り場は、最初はちょっと違和感がありましたが、そこはさすが東京堂書店、狭くなっても、ちゃんと「らしさ」をあちこちに残しています。入り口入ってすぐ脇で展開されている小出版社の全点フェアも継続、第5弾は港の人です。雰囲気のある、美しい本たちが並んでいます。売り場を縮小しても、こういうフェアや、ウェッジ文庫のフェア、ちくま文庫の在庫僅少本の棚、同店名物の1つ、サイン本の棚などをちゃんと残しているあたりは、さすが東京堂書店という感じで、うれしくなりますね。
同店の改装の様子については、WEB本の雑誌に、「創業120年を超える東京堂書店の大改装がはじまった! その1」、「神保町・東京堂書店の大改装がはじまった! その2」があがっていて、写真入りで、店内の様子が見られます。そちらもぜひ。
なお、同店の営業ですが、WEB本の雑誌の記事によれば、《1月11日まで臨時休業し、12日からは仮囲い部分有りの営業を2月23日まで行い、24日から3月29日までは休業、そして3月30日グランドオープンとなるそうだ》とのこと。
●閉店
- 1/14【閉店】くまざわ書店カリヨン店
- 1/15【閉店】旭屋書店名古屋ラシック店(610)
- 1/15【閉店】狛江ブックセンター
- 1/20【閉店】宮子
宮古書店 - 1/20【閉店】金高堂書店高知大丸店
- 1/29【閉店】山下書店東京ドーム店
- 1/31【閉店】金海堂伊敷店
- 3/30【閉店】ジュンク堂書店新宿店(1650)
宮子書店は四谷三丁目のお店。四谷三丁目は地下鉄駅なので、実際には「駅前」ではないんですが、たたずまいはまさに駅前の本屋さん、という雰囲気のお店でした。地下鉄駅の真上、交差点のすぐそばの路面店で、周りに大型書店があるわけではなく、立地は悪くない。少し歩きはしますが、四ッ谷には大学(上智大学)もある。昼夜ともそれなりに人通りもあります。文鳥堂書店が閉店したときにも感じたことですが、このような街で書店がやっていけないなんて、ほんと、さびしいことです。
金海堂は鹿児島の老舗書店。このような記事があります。「老舗書店の金海堂、伊敷店も閉店へ 鹿児島市」(1/21 373news.com)。記事タイトルに「も」とあることから最近ほかにも閉店があったことがうかがわれ、記事には《同社は「条件がそろえば再び鹿児島市で店を構えたい」としている》とあるものの、こちらも苦戦している感じです。
山下書店については、昨年の記事で少しふれました。このところ本業が忙しくて、神保町から歩いていける水道橋にさえなかなか行く時間を作れなかったのですが、やはり閉店前に、このユニークなお店の様子はしっかり見ておきたいと思っています。同店がどんなお店だったのか、書き手の愛が伝わってくるこんな記事がありました。「さらば、愛しの山下書店東京ドーム店。“文系野球の総本山”が閉店間近!!」(1/20 Number)。
あと、これは「閉店」の話ではないのですが、ぼく自身もどうなるかちょっと心配に思っていましたし、周りでも、閉店になってしまうものと思っている人が複数いましたので、合わせて紹介しておきます。
【“新刊書店の開店・閉店いろいろです”の続きを読む】
昨年からけっこうな頻度で続いている一般誌での「書店」特集。今年最初(でいいのかな)の書店特集雑誌が出ましたね。
「【新春特集】「本屋」は死なない」。新潮社の雑誌ということで、石橋毅史さんの書名を冠したものになっています。
雑誌のメインの特集(「人生後半戦の生き方」)ではなく、第2特集ですので、20ページほどと、それほどの分量ではないのですが、書店好きには気になる記事や書き手の名が並んでいます。収録されているのは、石橋さんによる「芳林堂がめざした「理想の書店」」のほか、「[書店匿名座談会]「技術」と「工夫」でまだまだ活路はある!」、「【ミニエッセイ】「私の好きな本屋」」など。
寄稿者は、ミニエッセイには松浦弥太郎さん、中島京子さん、堀江敏幸さん、穂村弘さん、川上弘美さん、菊池雄星さん、原武史さん、柳家喬太郎さん、山本容子さん、小谷野敦さん、童門冬二さん、華恵さん、樋口真嗣さん、川原泉さん、柳澤秀夫さんらが名を連ね、そのほか、幅允孝さん、津野海太郎さんの名も目次に見えます。特集以外の内容も含めた詳細は、版元のサイトで目次が読めますから、こちらでどうぞ。
発売日に購入、早速読んでみました。記事のなかでは、やはり石橋さんの「芳林堂がめざした「理想の書店」」が印象に残りました。芳林堂書店池袋店が閉店したのは2003年12月31日。10年近い年月がたっているわけですから、当たり前なのかもしれませんが、同店のことを「知らない」という年若い書店員もぼくのまわりでは少なくありません。このまま忘れられてしまうには惜しいお店なので、このような記事が書店特集のメインの1本として書かれたことを、同店を利用していた一人として、うれしく思います。
石橋さんの記事に、芳林堂書店にお勤めだった江口淳さん(ツイッターのアカウントは@futagoyama)のお名前が出てきます。江口さんは、この特集号刊行の少し前、1月7日に、交通事故でお亡くなりになっています。江口淳さんとは面識はなかったのですが、この空犬通信にも何度かコメントを寄せてくださり、ツイッターでもやりとりをしたことがありました。江口さんがこの石橋さんの記事を読まれたら、きっと喜ばれたことでしょう。
ちょっと話がそれました。今回の『新潮45』の書店特集、書店好きの方はもちろん、『「本屋」は死なない』で書き手の石橋さんに興味を持たれた方は要チェックかと思います。
さて、その石橋さんですが、『週刊ポスト』2012年1/13・20号(小学館)の「ポスト・ブック・レビュー」の「著者に訊け!」に登場、2ページにわたって大きく取り上げられていますね。このほか、『婦人公論』にも書評が載ったという情報を見かけましたが、書評自体は未見です。
【“『新潮45』で書店特集が……「【新春特集】「本屋」は死なない」”の続きを読む】
一般紙に取り上げられた書店関連の記事から、先の記事で紹介済みの丸善名古屋栄店の件以外で、気になったものをいくつかピックアップしてご紹介します。
「被災地・大槌町に書店誕生」は、文化通信の星野渉さんによる記事。被災地での書店開店の件だけを取り上げたようにも見えてしまうタイトルですが、書店の新規開店、とくにチェーンではない独立系の書店の開店のことや、書店数・開店数、アメリカの事例など、短文ながら書店事情がわかりやすくまとめられた記事になっていますので、書店に関心のある方はぜひ一読を。
次の佐野眞一の記事は、1/3に亡くなられた紀伊國屋書店名誉会長・松原治さんの追悼記事。一部を引きます。《松原氏が書店業界に与えた影響の大きさは計り知れない。もし松原氏がいなければ、全国主要都市に大型書店が出店する現在の状況は生まれていなかった。》《松原氏は「家業」に過ぎなかった町の「本屋」さんを、海外にもチェーン店を持つ「書店」にしただけでなく、「産業」として育てた最大の功労者だった。》Webには上がっていないようですが、書店に関心のある方は、わざわざ探してでても目を通しておく価値があるかと。
日経の記事は、「蔦屋書店」「TSUTAYA」のトップカルチャーの出店戦略を伝えるもの。トップカルチャーの大型出店の件は、昨年も何度かこの空犬通信でもふれていますが、今回の日経の記事では、出店計画のいくつかが具体的な数字入りで紹介されています。
【“一頁堂書店、松原会長追悼、トップカルチャー出店計画……新聞の書店関連記事から”の続きを読む】
昨年の記事で旭屋書店の本店と名古屋ラシック店の閉店のことを取り上げましたが、今日1/15は名古屋ラシック店の最終営業日。同店の関係者のみなさま、おつかれさまでした。
旭屋書店関連では残念なニュースが続くことになってしまいましたが、今日はちょっとうれしいニュースのご報告を。旭屋書店本店で発行されていたフリーペーパー「おすすめ本処かわら版」は、先の記事のほか、過去に何度もこの空犬通信で紹介している通り、個人的に好きな書店フリペの1つ。同店の閉店でこのユニークなフリペがなくなってしまうのはさびしいなあと思っていたら、うれしいことに、先日、Webで復活していましたよ。サイトはこちら。名称はもちろん「おすすめ本処かわら版」のままです。
「【元・書店員たちによる読書日記】のプロフィール」にはこんなふうにあります。《私たちはこのかわら版で、新刊・既刊に関わらず、自分にとっていま最も「熱い」本を紹介してきました。このたび店の改装閉店のため、冊子での発行ができなくなり、かわら版メンバーも解散か?!と思われましたが、ネットで続けよう!ということになりました。これからもおすすめの本を紹介したり、「七人の読書侍」と銘打った読書日記をつけていきますので、そんな私たちの架空書店に遊びに来てください。》
書店で独自に発行されているフリーペーパーは、昨年から大変な盛り上がりを見せていて、いまではあちこちでたくさんのフリーペーパーが発行されています。何年も続いていたり、通算号数が3けたに及ぼうという長寿のものもありますが、一方、発行店が閉店になってしまったり、担当されていた方が退職・異動になってしまったりで、休刊・終刊になってしまうこともしばしば。その場合、別のお店や別の担当の方に引き継がれることはまれで、そのままなくなってしまうのがふつうです。紙とWebの違いはあるとはいえ、今回のように、別のかたちで復活するのはきわめてめずらしいこと。うれしいですね。
サイトでは、かわら版のメンバーのみなさんによる自己紹介(お店時代の担当フロアがお名前に併記されているあたりに、みなさんのお店への思いがあらわれていて、うれしい)や読書日記が読めますよ。残念ながら、冊子版の大きな特徴だったオール手書きまでは再現されていませんが、作り手のみなさんが同じですから、ノリは全面に再現されているはず。冊子版の読者だった方はもちろん、初めての方もぜひこの「おすすめ本処かわら版」をチェックしてみてください。
ちなみに、ぼくは先日13日に初めてサイトのことを知らされたのですが、早速アクセスしてみたところ、13日の時点での最新紹介本は、『マインド・イーター』(創元SF文庫)で、その前の記事は『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(ハヤカワ文庫SF)と、SF者にはうれしいセレクトでのスタートになっていました。偶然そのようなセレクトになっただけだとは思いますが、「再会」のときに、最初に目に飛び込んできたのが自分の好きな、得意なジャンルの本だというのはちょっとうれしいですね。まだ紹介点数も記事の数も少ないのですが、これからが楽しみです。
ところで、昨年の記事では、名古屋の書店事情のことにもふれたのですが、ここにきて、またちょっとショックなニュースが報じられましたね。「「栄の丸善」ピンチ 6月めど退去、移転先未定」(1/14 中日新聞)。
【“旭屋書店本店の名物フリペ「おすすめ本処かわら版」がWebで復活……そして、どうなる? 丸善名古屋栄店”の続きを読む】
3連休の初日、休日出勤で、会社へ。夕方でひと区切りついたので、久しぶりに仕事帰りに新宿に寄り、ブックファースト、紀伊國屋、ジュンク堂を回ってきました。
↑ブックファースト新宿店で入手したフリペ2種。雑誌情報紙「Tokyo Magazine Center NEWS」と、語学・洋書情報紙「SPACE」。 以前にも書きましたが、フリペと言えば、文芸・文庫・コミック関連のものが多いなか、語学関連はめずらしい。ボリュームも中身もシンプルな造りですが、上の最新号はNo.14とあり、ちゃんと続いているところがすごい。「英単語でふりかえる2011年」と、この分量で読み物記事があるのもgood。
↑ジュンク堂書店新宿店で入手した、久しぶりの「淳久文芸倶楽部」。例によって、号数や発行年月の表示はないんですが、最近できたもののようですよ。
↑『書標』2012年1月号。表紙の感じが変わりましたね。今号から能勢仁さんによる「世界の本屋さん」になるそうです。書店好きには楽しみですね。
さて、そのジュンク。お店が入っている新宿アルコットが3月で閉店、跡地がビックカメラになることは、昨年のこちらの記事で、さらにユニクロが入ることになったことについては、こちらの記事で紹介済みです。
後者には、《地上8階のうち下の3フロアが、これで埋まることになったわけですから、ふつうに考えて、ジュンク堂新宿店が残り5フロアに残る可能性は、大幅に減少することになります。仮に、残る=再出店があるにしても、現在のような3フロアで、というのはあり得ないでしょう。ううむ、どうなる、ジュンク堂新宿店……。》と書きました。その時点では、(可能性の低いものも含めると)、そのまま3フロアで残る、縮小して残る、新宿エリア内の別の場所に移転する、完全に閉店し新宿エリアから撤退する、の4パタンが考えられたわけですが、どうやら4つめになることが正式に決まったようです。プレスリリースなどは出ていませんが、岡社長のコメントもあったらしく、もう取次や版元にもオープンになったようです。
姫路の例など、移転のために一時閉店して再開店というのはありましたが、「ジュンク」ブランドでは、純粋な閉店というのは初めてですよね。それが、よりによって新宿店とは……。
ジュンク堂書店新宿店は、紀伊國屋書店新宿本店と並んで、もっともよく利用する、そして個人的に好きな大型店の1つ。別のお店で知り合っていた書店員さんと、このお店で偶然ばったり再会したり、なんてうれしい出来事もあったりして、2004年の開店以来、ずっと親しんできたお店です。
今日も、久しぶりに6~8階の3フロアをうろうろ回ってみたんですが、棚もフェアも、ここはいいんだよなあ。ただの大きいお店、ではなくて。6階では先日読了したばかりのポピュラーサイエンスの書評集『科学の栞』に紹介された本を集めたフェアが(そう言えば、この本には新書にはめずらしい、著者以外によるあとがきがついていて、それを書いているのがジュンク堂書店の大内さんだった)。6階は、「ふるさとの棚」のコーナーもすごいんだよね。地方出版物の品揃えがすごいのは言うまでもないんですが、その見せ方もすごくて。ここだけ別のお店かというぐらい、ものすごくにぎやかでユニークな楽しい一画になっています。7階のエスカレータ脇やエレベータ前のフェアも見逃せない。エスカレータ脇では、2011年デビュー作家のフェアが。
現在の店舗での営業は3月末まで。……こんなふうに歩けるのも、あと3月足らずなのか……。それまでは通常通りの営業のようですから、せっせと通いって、たくさん本を買いたいと思います。
それにしても。昨年の旭屋書店本店といい、りとるといい、今回のジュンク新宿といい、縁のあるお店、個人的に思い入れのあるお店が次々に、という感じ。ため息しか出てきません。
【“ジュンク新宿3月末閉店が確定、書店フリペ……新刊書店いろいろ”の続きを読む】
ペースを落とす、などと言いながら、結局連続更新してるなあ(苦笑)。まあ、でも今日は仕事始め、書店通い始めだから、ということで。
年明けの初日、例年なら、仕事を早めに片づけて、午後は、お世話になっている書店の担当のみなさんにあいさつに行きます(出版営業でもなんでもないのにね;笑)。とくに、地元、BOOKSルーエの年始のあいさつはここ数年欠かしたことがないんですが、今年はさすがに仕事量的に、早い時間から外を歩き回るのは無理で、断念しました(泣)。というわけで、いつもなら早々に顔を出しているはずのお店にしばらく行けない感じです。すみません……。
昼休みには、三省堂書店、東京堂書店、書泉など、神保町の書店をいつものように巡回。いつもやってることだけど、年末年始の休みをはさんで久しぶりだったので、いつものお店をいつものようにうろうろ見て回るだけで、とっても楽しい時間を過ごすことができました。いつものお店がいつもどおりにあるって、ほんと、うれしいなあ。出版を仕事に選ぶ前にたくさんお世話になった旭屋書店本店、出版を仕事に選んでからたくさんお世話になった「りとる」……昨年の暮れに、自分にとってとても大事な、サイズもタイプもまったく違うこの2店の閉店があったので、よけいにそんなふうに思えたのかもしれません。
今日からしばらくは、ちょっとでも気を抜くと本が出ない、といった感じの日が続きますから、初日の今日もフル残業体制。でも、BOOKSルーエにだけは、顔を出したかったので、なんとか閉店ぎりぎりに飛び込み、店長さんと花本氏にあいさつだけしてきました。
いまの仕事の波が落ち着いたら、あちこちの書店を訪ねて、あちこちの書店の店頭の楽しさを伝える記事を書いていきたいものです。書店のみなさま、今年もどうぞよろしくお願いします。
仕事始めの今日、神保町と吉祥寺で買った本を簡単に。
【“仕事始め、書店通い始め”の続きを読む】
あけましておめでとうございます。本年も、どうぞよろしくお願いします。空犬通信ですが、昨年最後の記事に書きました通り、トピックを絞り込み、少しペースも落として、ゆっくり続けようかと思っています。
さて、年明けて最初の本……別に前日までと何が違うわけではないのですが、気分的にはやはり、一年の最初の本ということで特別感のある、その最初の本……ですが、少し迷った末に、昨年からの読みさし本から、この本を(読みさしはほかにもたくさんあったにもかかわらず、あえて)手にとりました。
昨年の終わりに、冒頭を少し読んだだけで大きな衝撃を受けていたので、そうなることはわかっていたのですが、涙でぼろぼろになりながら読了。元日の午後、年初の読書にはヘビー過ぎる本でしたが、今読んでおかなくては、という気がしていましたし、そして、読了したいま、やはり読んでおいてよかったと思っています。
ただ、やはり、大変な読書ではありました。どの描写も、どの場面もずしりとくるものばかりですが、なかでも、子どもがらみのエピソードは、子を持つ親としては平静な気持ちで読み進めることができず、何度もページをめくる手が止まってしまいます。読みながら震えをおさえることができません。
新聞やWebで目にしてきた、犠牲になられた方々のリスト。被災地に係累がいないこともあり、これまでは、何の気なしに眺めることの多かったリストの、その背後にこんなことがあったとは……。人の安否や身元を確認すること、そのことに、どれだけの人の手がかけられていて、それがどれだけ大変なことだったのか。
震災後は、マスコミの情報の遅さに対する批判があちこちでなされましたよね(同時期に読んだ、『「僕のお父さんは東電の社員です」』では、小学生からもそのような批判がされていました)。速報性の求められない仕事をしているとはいえ、こちらも一応は広義のマスコミ、出版の世界の片隅に身を置く者です。身内をかばうような言い方をするつもりはありませんし、すぐれたルポを1冊読んだからといって、わかったようなことを言うつもりもないのですが、こういう本を読むと、遅いだの速いだのと、簡単には口にできないし、したくないなあと、そんな気がします。Webやツイッターやメールや各種の速報サービスなどで、情報が瞬時に手元に流れてくることに慣れ過ぎてしまったのかも……読み終えてから、そんなことも思ったりしました。
情報の速度、ということでいうと、この丁寧で濃密な取材が震災からわずか半年ほどの間になされていたことにもあらためて驚愕させられました(あとがきの日付が9月になっているのです)。
手軽に読み通せる本ではありませんから、簡単に「おすすめ」などと書くことはできません。ぼくでさえこんな調子ですから、ここに描かれた世界に立場的にもっと近い人にはさらにつらい読書になるはずだし、読み通せないという方もいるでしょう。実際、この本を読んでしばらくは、読後感があまりに強烈で脳内がしばらく支配されてしまい、2日ほどは、他の本の内容が頭にすんなり入ってきませんでした。
でも。上にも書きましたが、今この時期に読んでおいてよかったと、心からそう思える1冊でした。年初の記事がちょっと重たい本の紹介になってしまいました……。
2012年も、このような読み応えのある、すばらしい本にたくさん出会えますように。
2012年が、出版・書店に関わる人たちにとって、いい年となりますように。
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