夏文庫の話が続きます。
昨日書きました通り、現在「吉っ読」では、夏文庫の選書中です。メンバーがそれぞれ、これぞという文庫を持ち寄り、議論しながら決める予定です。仮に1人5冊持ち寄ったら、10人で50冊。フェアが20冊か10冊か未定ですが、いずれにしても、絞り込みは相当にきびしい作業になりそう。書店で店頭フェアを組むのってこういう作業なんですね。大変さがわかります。
空犬も「吉っ読」の一員としておすすめ文庫を提案するのですが、できればやはり若い書店員たちのセレクトを優先したい。というわけで、場合によっては、空犬のおすすめ文庫は1冊も残らない、いや残さないかもしれません。でも、いいんです。こんなときのための空犬通信ですからね。というわけで、ひと足先に、「空犬通信presents 夏の空犬文庫9冊」を空犬書房の店頭(←ああ、もちろんこのサイトです)限定で公開してみることにしました。
単に好きな文庫を挙げるだけでは意味がありません。昨日書いた「吉っ読」のナツヨミ選書ルールはそのまま適用し、書店員になったつもりで、「夏のフェアで売ってみたい文庫」という観点を自分なりに貫いて選んでみます。古本好きの空犬も、今回はもちろん現役本のみ、各文庫から1冊にします。帯とかポップをつけるならこんなコピーにしてみたい、なんてのもつけてみます。現役の書店員さん、文庫版元さんから見たらリストもコピーも失笑ものでしょうが、そこは素人のお遊びですから、笑って読み飛ばしてくださいね。
「空犬通信presents 夏の空犬文庫9冊」
- 色川武大『うらおもて人生録』(新潮文庫)
- 北上次郎『感情の法則』(幻冬舎文庫)
- 池内紀『作家の生き方』(集英社文庫)
- なぎら健壱『東京酒場漂流記』(ちくま文庫)
- 嶽本野ばら『カフェー小品集』(小学館文庫)
- ロバート・ハインライン『夏への扉』(ハヤカワSF文庫)
- 佐藤正午『ありのすさび』(光文社文庫)
- 東雅夫・紀田順一郎編『日本怪奇小説傑作集』1~3(創元推理文庫)
- 保坂和志『季節の記憶』(中公文庫)
【“空犬通信presents 夏の9冊……夏文庫3”の続きを読む】
夏文庫の話、続きです。
正確には、夏文庫、ではないですが、最近の文庫フェアでは、早川書房の「燃え萌え雑学フェア」がなかなかユニーク内容で印象的です。
早川が「燃え萌え」かあ……しかし、このフェアタイトル、チラシのビジュアル、よく早川書房で企画通ったなあ。ぼくはけっこうこの感じ、好きです。応援したくなります。版元の案内によれば、このようなフェアだそうです。
《友だちがたくさんいる人、スピーチで笑いをとれる人、部下に慕われる人・・・・・・彼らはみんな雑学を身につけている。雑学は人生の勝利をつかむキーアイテムだ。萌えイラストや劇画の帯が付いた文庫が書店に並んでいます。ネタが豊富な人気者に変身する絶好の機会を逃してはならない。ハイセンスなうんちくの宝庫、ハヤカワ・ノンフィクション文庫から珠玉の雑学を取りそろえた「燃え萌え雑学フェア」開催中!》
ハヤカワ文庫と言えば、ミステリーにSFに、というイメージの方も多いでしょうが、ノンフィクション、とくに自然科学系NFにいいのがたくさんあるんですよねえ。フェアの対象文庫からこの3冊を紹介しておきます。
余談ですが、ノンフィクションは文庫だけでなく単行本も充実です。少し前なら、『誰も読まなかったコペルニクス』が本好きをうならせずにおかない中身でしたし、最近なら、『ひとりぼっちのジョージ』(いま読んでる途中で、読み終わったらちゃんと紹介します)が、実に早川書房らしいノンフィクション、いい本です。
さて、今回も前置き、長過ぎです。夏文庫の続きでした。
夏文庫と言えば、何度かこのブログでも報告していますが、「吉っ読」も夏文庫フェアになぐりこみ……あわわ、いや、そっと隅っこに加えていただいたりなんかしちゃう予定です。現在、メンバーで鋭意選書中なんですが、だいたいこんな中身を考えています。
【“燃え萌えの早川、吉祥寺のナツヨミ……夏文庫2”の続きを読む】
今日は銀座に出る用事があったので、短時間銀ぶら。散歩にはまったく不向きな殺人的な暑さ、ふだんなら楽しいぶらぶらもほとんど苦行でしたが、ちょうど昼休みの時間だったので、ブックファースト銀座コア店など、お気に入りのお店を急いでひと回り。教文館では畳むと掌サイズのかわいい「銀座マップ」を、伊東屋では仕事用にフランスの小学生が使ってそうなノートを、松坂屋の熱帯魚売り場では夏の水温上昇防止のファンを、山野楽器ではスライドバーを入手。重くなった鞄を手に、散歩はますます苦行度を増すのでありました……。
↑レトロチックな表紙もgood。なぜかハングル併記です。
前置き、長すぎです。さて、本好きにとって夏といえば、夏文庫の季節。新潮社、集英社、角川文庫の3社による毎年恒例のフェアが始まりましたね。文庫好きのわたくしは、すでに買ったり読んだりしているものが多くて、実際には夏フェア文庫を買う機会は少なかったりするのですが、それでも、書店店頭に主要文庫版元のタイトルがずらりと並ぶのは壮観、眺めているだけでも楽しくなりますし、何より、なつかしい作品を再発見したり、よくしっている作品が違う装幀で出ているのを目にしたりできる楽しみもあります。
「新潮文庫の100冊」は黄色のテーマカラーにパンダは変わらず、セレクトも名作比率の高い従来のオーソドックス路線。2冊買うともらえるYonda?グッズは今回はアロハブックカバーです。
「発見。夏の百冊 角川文庫」、カバはそのままですが、昨年のキャラクター、宮崎あおいの姿はありません。アイドル市場では結婚は商品価値の暴落につながったりすることがままあるようですが、本格女優の彼女の場合はそれは関係ないでしょうね。いろんな人がいろんなところで本を読んでいるところをとらえた、ちょっとタワレコのNo music, no lifeのポスターを思わせなくもないビジュアルが載っていて、そして最後の見開きのコピーがこれ。「夏は過ぎても、本は残る。」
「ナツイチ、 夏の1冊 集英社文庫」は、昨年に引き続き蒼井優。新・角に比べ、現代作家・作品の比率が非常に高く、旬の人気作家コレクションの趣があります。そんななか、わずかに含まれた古典に仰天のしかけが。
【“夏と言えば夏文庫、フェア始まります! 夏文庫1”の続きを読む】
本日(6/27)、吉祥寺にて「吉っ読」のお披露目会を開催しました。版元さん、書店さん合わせて20数名の方にご参加いただき、大変にぎやかな会になりました。事前にお断りしていませんので、お名前を挙げることはしませんが、今日ご参加いただいた以下の皆様に、この場を借りてあらためて御礼申しあげる次第です。
WAVE出版Aさん
太田出版Mさん
河出書房新社Iさん
コン企画Kさん
視覚デザイン研究所Sさん
ジャイブOさん、Uさん
集英社Sさん、Mさん
集英社サービスYさん
新文化Mさん
早川書房Yさん
プレジデントIさん
文芸春秋Iさん
よるひるプロKさん
リトルモアFさん
オリオン書房Sさん
ブックファースト神田店Sさん。
本当にありがとうございました!
会では、ここに書き切れないほどの話題が飛び交い、交換されました。それらについては追々、このブログで、また「吉っ読」のサイトで紹介したいと思います。
とりあえず、「吉っ読」の活動、第一弾として、夏文庫の独自フェアを開催の予定です。詳細は、本ブログはもちろん、近日中に吉っ読のサイトにアップするほか、冊子も作って、ブックスルーエ、弘栄堂他で配布の予定です。乞ご期待!
ジュンク堂書店池袋店でお買い物。いつもエレベータで上まで行って、1階ずつ降りてくるのですが、昨日は、ちょうど日が落ちて街にネオンがともり始める時間帯でした。とりたてて美しい夜景が見られる場所でもそれほどの高さがあるわけでもないのですが、それでも、窓際からのこの眺めはなかなかいいものです。そういえば、都内の大型店で、このジュンク堂書店池袋店のように、エスカレータが窓際にあって店内を上下しながら外を眺められるような店ってないですね。そういうところもお気に入りの理由なのかも、と、この日池袋のネオンを見ながら思ったりしたのでした。
さて、この日はジュンク堂書店池袋店および新宿店のみなさん数人とお酒を飲んできました。他の書店も交えてのにぎやかな会は何度かあったのですが、ジュンク堂書店さんだけ、それも池袋の方中心の小規模な会は初めて。店頭でできないようなおしゃべりもたくさんできるのがこういう会のいいところ。担当のKさん、新宿のYさんとは知り合ってもう何年かになるのですが、お互いに初めて聞くような話もじゃんじゃん飛び出したりして、実に楽しい会でした。みなさん、あらためて感謝です!
それにしても、こうして書店員のみなさんと飲んでいるといつも感じることなんですが、みなさんの書店LOVEは、ほんと、すごいです。朝から晩まで本に囲まれて仕事をしている人たちが、休憩時間にもよその書店に行く、休日にもよその書店に行く、友だちと会うのに書店で待ち合わせをする、そのついでについ棚を直してしまう……と、本や書店と一体化した日常はほかにもいろいろ続くのですが、そんな話をふつうにしていますからね。そういうのを聞いていると、書籍の販売現場が、このような“born to書店員”としか言いようのない方たちに支えられているのだということをあらためて知らされ、なんだか妙にうれしくなります。たまたま自分より年下の女性ばかりだったので、もう途中から父親モードですよ(苦笑)。みなさんの話にうんうんうなずいたり笑ったりしながら、みんなにわからぬよう、お父さんはこっそり泣いていましたよ。ほんと、困った生き物ですよ、父親というのは。
なかに来春から正社員として働くことになるという方がいて、周りの先輩から、今のうちに旅行しておいたほうがいいよ、などとすすめられていたのですが、その方は、5日棚を離れると落ち着かない、いやそれどころか2日でもダメなんです、などとおっしゃっていました。いやはや、どうですか、この書店員魂が炸裂する発言は! こんなセリフが年若い書店員の方からふつうに聞けるのだから、書店業界はまだまだだいじょうぶでしょう。
ちなみに、この日は時間が短かったので、購入本は1冊のみ。
待望の新作『インランド・エンパイア』もまもなくですね。東京では恵比寿ガーデンシネマで7/21から。リンチ者は全速力で駆けつけてください。
ところで。明日は「吉っ読」のお披露目会。出版社・書店の方がたくさん集まってくださるようで、会のメンバーのなかでひとりオヤジモードの私は、もう心配で心配で眠れません。くわしくは、またこのブログで報告します。
先日、Webでこんな記事が目にとびこんできて驚かされました。「朝日ソノラマ、9月末解散へ=出版物は朝日新聞社が継承」。ちょっと引用します。
《朝日新聞社は21日、子会社の朝日ソノラマが9月末で解散すると発表した。債務超過で事業継続が困難になったためで、出版物は朝日新聞社出版本部が継承する。》
ということなんだそうです。また、他の記事にもあたったところ、同社は「店仕舞い」という表現を使っているようです。
朝日ソノラマは、一般の読者の方にとって、どのようなイメージの版元なのかわかりませんが、空犬にとっては、特撮関連書籍の版元、そしてソノラマ海外文庫の版元というイメージです。決して我が蔵書に占める割合は高くない、どころか、数えられるぐらいではあるのですが、そのいずれもお気に入りだったり超貴重本だったりする、個人的にはなかなかに微妙な位置づけの版元でした。
空犬にとっての朝日ソノラマベストは、この本です。
だってこの本、副題が「特撮・怪獣・SF・ホラー キーワードライブラリー」ですよ。空犬のために作られたような本ではないですか。「どんな映画がお好きなんですか?」って聞かれたら、「こんな感じです」と、この本を見せようと思ってるぐらいですから(そんな機会、一度もないけど)。
あと、一部の文庫マニアに人気が高いソノラマ海外文庫も忘れがたいシリーズです。なにしろ、昨年、一昨年の「奇想作家」の小ブームに先駆けること20年以上、早くもジェラルド・カーシュ、エイヴラム・ディヴィドスンらをおさえてましたからね。P・K・ディックも入ってました。古書価もそれなりに高くついてるみたいですね。
解散、の記事を見て、なんとなくこんなことを考えていたのですが、なんという偶然でしょうか、昨日届いた「銀座ブックバザール」の古書目録をぱらぱらやっていたら、神保町の@ワンダーの出品物に、なんと「朝日ソノラマ海外文庫〈33冊一括〉」なんてものすごいのが出ているではありませんか! ちなみにお値段、22万500円也。4、9、別巻の3冊欠けでこの値段ですからね。いやはや。
記事によれば、出版物は引き継がれるようですし、書店店頭から在庫が引き上げられるような事態ではなさそうなのですが、それでも、個性ある出版社の名前が消えてしまうのは、やはり、読者として、そして同業者としてなんだか残念です。
「吉っ読」の版元さん向けお披露目会を近々に控え、物理的にも精神的にも大忙しの空犬です。空き時間のすべてを「吉っ読」関連の準備だのなんだのにつぎこんでいる状態なので、しばらくブログは簡略版になるかも、です。
さて、最近買った本たちです。
- 福岡伸一『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)
- 最相葉月『あのころの未来 星新一の預言』(新潮文庫)
- 田村功『ベルギービールという芸術』(光文社新書)
- 野呂邦暢 『丘の火』(文藝春秋)
- トルーマン・カポーティ『真夏の航海』(ランダムハウス講談社)
- 『映画秘宝』2007年8月号(洋泉社)
“本と酒をこよなく愛する千葉近辺の書店員&出版社員”の集まり酒飲み書店員のみなさんの会に参加させていただけることになり、「吉っ読」会長の2人、ブックスルーエ花本氏と弘栄堂書店岡田氏、空犬の3人で、船橋まで行ってまいりました。
いやはや、この人数、この活気! 大変な盛り上がりぶりに、最初は驚いてしまいました。ただ、入りにくい雰囲気はまったくありません。まだ実体もないに等しい、得体のしれない書店グループの代表を名乗る我々を、実にあたたかく迎えてくださり、会のこともいろいろと教えていただきました。うわさに聞いていましたが、うわさ以上、想像以上に楽しい会でした。とくに、ときわ書房のUさん、堀江良文堂のTさんには会の話をたくさん聞かせていただきました。あらためてこの場を借りて御礼申し上げます。
ただ、教えをこうだけではやはりつまらない。そこは「吉っ読」が3人しておじゃましたかいがないというもの。名刺を交換しまくった後、お話をする機会のあった方には、「ルーエの伝言」を配布し、「吉っ読」のキャラ「ぶっくん」の愛らしい姿を見せ、吉祥寺でおもしろいことをやります、吉祥寺にぜひ来てください、吉祥寺吉祥寺と、3人で吉祥寺をそこここで連呼、大いに宣伝活動にも励んできたのであります。その効果なのかどうか、吉祥寺での例会に参加したいという方までいらっしゃいました。
うれしいのは、「新文化」の花本氏連載「ルーエからのエール」を読んで、また書店ネットワーク経由で、「吉っ読」のことをすでに聞き知っていたという方が複数いらっしゃったこと。ありがたいことです。
というわけで、今日お目にかかった方、全部のお名前を挙げることはできませんが(なにしろ、今日名刺交換した方々の名刺、手元のを数えると約30枚ですから……)、あらためてお礼を言いたい気分です。ありがとうございました。「吉っ読」会長の2人も大いに刺激になったことでありましょう。さて、次は、「吉っ読」の会です。今月末に予定しています。今度の会は比較的大きい物になりそうです。その会については、またこのブログでも報告したいと思います。
梅雨入り、なのに雨、降りませんね。昨年の今ごろも紹介した沢田
としきさんの作品展、今年も青山の同じ場所でまもなく開催されます。(以下、沢田さんの情報メール「SAWADA TOSHIKI WEB PAPEL」から引用させていただきます。)
沢田としき作品展「YUI de JOY」
2007年 6月25日(月)~30日(土)
11:00am→7:00pm 最終日は5:00pmまで
スペースユイ
港区南青山3-4-11 ハヤカワビル1F
Tel : 03-3479-5889
板を彫り着彩した素朴な風合いのWOOD CUT PAINT シリーズを中心にしたJOYな作品展です。
http://www.spaceyui.com/schedule.html
スペースユイ 地図
地下鉄外苑前より徒歩8分・表参道より徒歩10分
昨年は絵本の新刊『ピリカ、おかあさんへの旅』刊行に合わせた原画展で、すばらしい内容でしたが、今回は木彫り作品シリーズとのこと。楽しみです。
ふだんは手に取らない雑誌ですが、書店特集となれば、手にとらずにはいられません。
特集は「本屋さん大好き!!」。目次はこんな感じです。
エッセイ特集 私たちの思い出の本屋さん
~MY MEMORIAL BOOKSHOP~
高野秀行 吉田篤弘 万城目学 皆川博子
大森 望 みうらじゅん 米澤穂信カリスマ書店員が語る この一冊に、魂込めて売りました
紀伊國屋書店本町店・百々さん 青山ブックセンター六本木店・間室さん
さわや書店本店(盛岡)・伊藤さん 丸善丸の内本店・上村さん
恵文社一乗寺店(京都) 能邨さん、オリオン書房・白川さん実録・妄想の向こう側 本屋さんになりたい。
森岡書店 バサラブックス ブックギャラリーポポタム
海月書林 茶房高円寺書林対談 本屋という森へ、狩りに出かけよう
佐藤多佳子×荻原規子永江さんがいうところの書店(員)ブームの流れなんでしょうね。今年に入ってすでに『論座』や『ダカーポ』もありましたが、半年のあいだに、これだけ書店関連特集が続くのもなんだかすごいことです。
書店好きとしては、こういう特集を一般誌で読めるのはうれしいことではあるのですが、ただ、やれ「カリスマ」だ、やれ「ブーム」だなどとやたらにメディアに持ち上げられると、なんだか反動がありそうでちょっと心配です。一時的な盛り上がりに終わって、その後はぱったり……なんてことにならないか、という意味で。書店員のみなさんが自分の売りたい本について発言できる機会や場所がこの“ブーム”を機にしっかり確保され、それが維持され、出版業界・書店業界に自然に定着する、そんなふうになるといいのになあ、なんてことを考えながら、ベルギービールを飲んでいます。そういえば、今日は父の日。
昨日は「吉っ読」の飲み会でした。毎月末に例会をすることになっているのですが、その準備のためということで、主要メンバーで集まって打ち合わせをしたわけです。
「吉っ読」のサイト、名刺、吉祥寺ブックマップ、夏のフェア、秋の賞もの、サイトの連載企画……いろいろアイディアが出たり、大事なことが決まったりしたんですが、それらの詳細は、「吉っ読」サイトで後日。
昨日は、地域密着型書店ネットワークの先輩の例として、不忍ブックストリートの地図、神保町の地図「じんぼうエリア周遊マップ」、福岡のブックオカ(高倉さん、先日は、コメントありがとうございました)のBOOK MAPなどを持参し、集まったメンバーに、参考にと紹介しました。東京エリアの2つはともかく、福岡のブックオカはまだ知らないメンバーもいたのですが、BOOK MAPの完成度、内容の充実度、地域との密着度などに、みな驚いていました。ぼくも最初に見たときはすごいなあと驚いたり、うらやましく思ったりしたものです。同じ業界にこれだけのことを実現している人たちがいる、という事実は、「吉っ読」の年若い書店員たちにとって、大いに刺激と励みとになったに違いありません。「吉っ読」もがんばらねば、とあらためて思います。
さて、今日はサイト立ち上げに先駆けて、我らが「吉っ読」のキャラクターをご紹介します。こんな感じです。じゃーん。
どうですか。かわいいでしょう。ちなみに、名前は「ぶっくん」といいます。メンバーみんなで案を持ち寄って決めたのですが、ダントツの支持、文句なしの全員一致でした。ルーエのSさんの力作です(“力”作にしては、かなりゆるい感じに仕上がってますが、それがまたいいんですよねえ;笑)。
「吉っ読」のサイト、名刺、それからフェアやイベントの刷り物など、「吉っ読」にかかわるいろんなところに今後登場することになりますので、よろしくお願いします。ちなみに、みんなけっこう気に入ってるので、ぶっくんTシャツまで作ろうかなどとも話してます(苦笑)。調子にのりすぎかなあ。欲しい人がたくさん集まったら作れるんだけどなあ……。
あまりにもすごい盤なので、BGM扱いじゃなくて本編で紹介します。
10代の頃から20年も聴いているギタリストだし、曲も知ってる曲ばかり、それなのに、からだが震えます。ギターという楽器のすごさをあらためて感じさせられます。そして、この楽器からここまで引き出せる弾き手はもっとすごい、あらためてベックのすごさに感服です。どう聴いても、これ、還暦過ぎたおっさんのプレイとは思えませんからね。
中身は、2006年のアメリカ・ツアーから1回分の演奏を、歌ものをのぞいて丸ごと収録したもの、だそうです。メンツは前作『ライヴ・ベック』と同じ、つまり、ぼくも運良く見ることができた2005年の日本公演と同じなので、あのときの驚愕と感動を聴きながら再体験できました。
演奏はオーバーダビングも編集もなし、ということで、かぎりなく生に近いライヴ演奏が聴けます。なので、チューニングの乱れも、ミストーンも、リズム隊とのずれなんかもばっちりそのままなんですが、そんな小さな疵たちは、聴いている間、まったく気になりませんでした。
代表曲が目白おし、ライヴベストといっていい選曲です。アップテンポもシャッフルもバラードも捨て曲なし。ベックの代表曲だけでなく、トミー・ボーリンの熱演で有名なビリー・コブハムの『スペクトラム』からの「ストレイタス」、日本公演でもライヴのラストを飾ったスタンダード「オーヴァー・ザ・レインボウ」が収録されているのも、ファンにはうれしいところ。
ベストトラックを1つ挙げるのが困難なほど、ほんと、どの曲もすごいんですが、とくに「トゥー・リヴァーズ」「ナディア」「エンジェル」といった、アーミング、スライド、ハーモニクスを多用したプレイはまさにベックワールド全開。いったいどんなポジションでどう弾いてるのか見当もつかないような、独自過ぎる境地に到達しています。ライヴでこのトーンコントロール、人間業とは思えません。
バックでは、ヴィニー・カリウタのドラムが光っています。ザッパ・バンド出身の凄腕ですが、前任のテリー・ボジオも同じザッパ・バンド。ふたたび、テリーの後釜をつとめることになったわけで、おもしろい縁です。
発売中の『ギター・マガジン』2007年7月号では、アルバム全曲解説のほか、「オーヴァー・ザ・レインボウ」と「スキャッター・ブレイン」の譜面&奏法解説ありなので、ギタリストのみなさんは、併読をおすすめします。
漫画はあまり読まない、などと何度も書いてるくせに、オバQのことは熱く語るわ、ついこの前は『ブンブン堂のグレちゃん』(あっ、これ、後日くわしく紹介としながら、風邪で忘れてた……近日中にあらためて)を取り上げたばかりだわで、これで今回もコミックだと、いつも書いてることと違うじゃねえか、って、がらっぱちな突っ込みを入れられそうで不安な空犬です。でも、この本は紹介せずにはいられんのですよ。
空犬なんて名乗ってるぐらいですから、どちらかというと犬派なんですが、猫も大好きなんです。人間を2つのタイプに分ける式の考え方にはぜんぜん興味ないんですが、街なかで猫を見かけたときに、立ち止まってつい見ちゃう人と、気づきもしないか気づいても通り過ぎちゃう人とがいるとしたら、確実に前者のタイプです。ふだん利用する駐輪場でたまに会う猫がいるのですが、先日の深夜に見かけたときなんて、お酒が入っていたせいか、気づいたら目の前に座って20分も話し込んでしまいました。(←この人は、猫好きではなく、ただの酔っぱらい、なのかもしれません。)
猫好きに関しては"軽症"の空犬ですが、それでも、本書を読んでいる間じゅう、ハートわしづかまれっぱなしですから、重度の猫病患者がこの本を手にしたらいったいどんなことになるのか、人様のことながら心配でしかたありません。それぐらい、ものすごい本です。史上最強の猫漫画だと思います。
角川のPR誌『本の旅人』に連載された、猫エッセイ漫画……内容の説明・紹介はこれで十分、っていうかあえてしません。だって、このカバー絵だけで十分でしょう。店頭で、この“こわかわ”顔のグーグーを目にしたときは、あまりのかわいさに悶死しそうになりました。
というわけで、みなさん、全速力で書店にかけつけ、迷わずゲットしてください。なになに? まだ前2巻もお読みでない? それはなんと幸運な! だって、これ1冊でも心臓が幸福感で決壊必至という読書時間を過ごせるのに、3冊分もまとめて体験できるんですからっ! ぜひ3巻まとめ買いして、一気読みで……あっ、あれ? でも、1巻2巻、品切れ? えっ、ほんと? そんなあ(泣)。大島先生、待たせすぎですよう、3が出てくる前に1、2が切れちゃいましたよう(涙)!
(空犬註:第2巻が出たのはなんと2002年。3巻は2001~2003の連載が元になっていて、材料はあったはずなのに、単行本化に5年もかかっている。あまりにファン泣かせな……。)
↑この2巻のカバー絵のグーグーが、これまたもう、たまらんのです。(カバーのことばっかり書いてるみたいですが、中身はもっとすごいです。くどいようですが。)
【“大島先生、お待ちしておりました……グーグー5年ぶりの新刊”の続きを読む】
紹介したい本が山のようにたまって順番待ちだというのに、よりによってこの本を取り上げなくてもと、我ながら思うのだけれど、やっぱり取り上げます。
どうですか、この表紙。この人、いくつでしたっけ……。
表紙、帯、本文、写真、ポエム、扉題字、あとがき……ほぼ全編にわたって、破壊的にくだらない、ふらちで下品で無意味で適当でいい加減な思想(のようなもの)があふれまくっています。良識派読書人の神経を逆なですること必至の、政治的にまったく正しくない文言が並びまくっていますので、こういうノリを笑い飛ばせないタイプの方は心臓によくないでしょうから、手に取らないよう、気をつけてください。っていうか、この表紙で手が伸びる人なら、まず確実に中身もオッケーだと思いますが(苦笑)。
ちなみに、帯の文句は、無意味さ、図々しさで勝る『適当論』(ソフトバンク新書)の
《興味のない人も/せめて5冊は買ってほしい》
の方が好きですね。この「せめて」が大変に効いています。最近の傑作帯コピーの1つ、『板尾日記』の
《人の日記を読んだりするのは最低やと思います。》
《今、板尾日記3を書いていますが、2より面白いです。》
と、別に似てはいないのですが、なにやら通じるものがあるような気もします。
うっ、なんだか高田純次本だけ取り上げて終わるのもなんなので、一応本好き・本棚好きらしい、このような本も紹介しておきます。
【“適当、図書館……最近読んだ本たち。”の続きを読む】
昨日に続き、東京創元社の文庫の話です。ディックの新刊文庫が出ましたね。
- フィリップ・K・ディック『最後から二番目の真実』(創元SF文庫)
以前はサンリオSF文庫から出ていたものの新訳です。手元のサンリオ版と比べてみると、訳はずいぶんすっきりして、読みやすくなっており、冒頭の数頁を読み比べただけで、印象がずいぶん違います。既読の方も、ぜひこの版での再読をおすすめします。
思えば、創元SF文庫でディック作品の刊行が始まったのは1989年。初回は、『去年を待ちながら』『ザップ・ガン』の2点でした。初回を飾るタイトルとしては、ある意味、なんじゃそりゃ?なセレクトですが、代表作でなかっただけに、よけいに「その後」がありそうな感じが強く出ていて、ファンは否応なく期待させられたものでした。新刊が出るたびに、巻末の著作リストに付された「創元文庫・近刊」の文字が増えていくのを見て、これって、未刊のSF作品、サンリオで埋もれてしまったSF作品をカバーしようとしているってことじゃん!と気づいたときは、狂喜しつつも、一方で、その壮大な計画にくらくらしながら、「だいじょうぶ、創元さん?」と不安になったりもしたものです。
あれから約20年。これまでに出たタイトルにはすでに品切れのものも出ていますが、こうしてゆっくりではあるけれど、着実に刊行自体は進んでいるわけです。『中井英夫全集』だってずいぶん時間はかかったけど、ちゃんと完結したもんなあ。
『最後から…』には著作リストがついていないけれど、2005年刊の『ドクター・ブラッドマネー』の解説によれば、サンリオSF文庫が刊行したディック作品21作の中で、再刊されていない作品は5冊のみ、うち1冊がこの『最後から…』だから、あと4冊だ。未訳作品も、SF4冊、主流小説5冊と、わずか10冊ほどを残すのみ。ディックの邦訳がすべて読める、という事態が近い将来訪れるかもしれないのです。えええーっ! 自分で書いててなんだけど、そりゃすごい!
というわけで、ファンのみなさん、東京創元社という、このすばらしい版元の努力に応えるには、とにかく「新刊が出たら買う」、それしかありません。ディック作品にはたしかに出来不出来のムラがあります。そんなことは百も承知。でも、たいした作品じゃないからととばしちゃったり、昔は読んでたけど、なんて途中であきちゃったりやめちゃったりせずに、ディック新刊の発売日には全速力で書店にかけつけていただきたいと思います。そして、版元の東京創元社にも、残り数冊を残して力尽きる……なんてことにならぬよう、あと少し、ぜひぜひがんばっていただきたいものであります。空犬通信は、全面的に応援する所存です。
【“ディック文庫化作品、残りカウントダウン……やっぱりすごい東京創元社”の続きを読む】
「えっ、こんなのが文庫に?」という感じの、マイナーな、そしてちょっと無気味な物語たちの文庫化が目につきました。
- ディーノ・ブッツァーティ『神を見た犬』(光文社古典新訳文庫)
- トーマス・オーウェン『青い蛇』(創元推理文庫)
いずれもよく文庫にするなあという感じです。ブッツァーティはイタリアの幻想文学作家。以前は以下のような単行本の短編集が出ていました。
最初の2冊は品切れのようです。ほかに児童文学作品もあります。印象的な短篇の数々はぼくも好きで読んだものですが、でも、ドストエフスキーやバーネットらの名が並ぶ「古典」文庫のシリーズに入るような作家なのか、と言われるとうーんという気もします。ロダーリのときもちょっと感じたことではありますが、でも、「古典」かどうかなんてこむずかしい議論は抜きにして、こういう異色なものが入ること自体、このシリーズの容れ物の大きさを示すものとして、むしろ評価したいところです。
光文社古典新訳文庫、デビュー時はいろんな書店で派手に平積み展開されている光景を目にしましたが、その後は、苦戦も漏れききます。実際、置いていない書店もけっこうあるようで、ぼくの最寄り駅の書店にもなかったりします。一方で、ドストエフスキーが何万部売れた、などという話も聞きます。すべてのタイトルがそうはいかないでしょうが、新訳によって新しい読者が獲得できたのは事実でしょうから、これからもぜひ、大御所だけでなく、こうしたマイナーポエットも交えた、独自の、そして魅力的なラインナップで、細々でもいいから続けていってほしいものです。個人的には、講談社文芸文庫の翻訳文庫版、のような位置づけに育つといいなあ、などと思っています。
トーマス・オーウェンは先に刊行された『黒い玉』に続く2冊目の文庫化。こちらはベルギーの幻想文学作家ですが、帯のコピー《読む者を、不安の霧の中へ置き去りにする十六の幻想》の通り、ブッツァーティ以上に、無気味で、奇妙な味わいの強い、マイナーポエット。とても文庫で広く読まれるような作家に思えませんが、だからこそよけいにうれしい文庫化と言えそうです。
【“神を見た犬、青い蛇……最近買った本たち。”の続きを読む】
久しぶりに特殊映画ネタです。WHDジャパンという会社が出している「レトロムービーコレクション」なるシリーズをご存じでしょうか。WHDジャパン公式カルトDVD販売サイトでその全貌が確かめられます。商品自体はAmazonなどでもふつうに買えます。
最初の頃のラインナップには『メトロポリス』だの、『カリガリ博士』だの、『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』だの、まあSFやホラーではあるんだけど、そのなかでは比較的メジャーで、一応は名作とされているものが混じっています。しかも、値段が500円ですよ。そりゃ買うでしょ。サウンドがサラウンドじゃなくても、字幕のON/OFFがなくても。書店によく置いてある名画廉価DVDのちょっとマイナー版?ぐらいに思っていたら、いやいや。
サイトで最近のタイトルを見てみてください。大蜥蜴、美人モデル、ロボット、金星ロケット、生首、ゾンビ……順調に特殊さといかがわしさを増し、まさにボンクラ魂炸裂、ウルトラハイテンションなラインナップに育ちつつあります。先月は、『大蜥蜴の怪』なんて、怪獣好きのぼくでも脱力必至のタイトルが平然と出てましたし、今月出たタイトルなんて、ロジャー・コーマンの『呪われた海の怪物』に、ジェス・フランコの『ゾンビの秘宝』ですよっ! なんだそりゃ(←いや、ぼくはいいんだけど、他のみなさんならこう言うかな、って思って書いてみました)。いったいどんなセレクションなんだ(苦笑)。誰がどう選んだらこんなセレクトになるんだ。っていいながら、全部買ってるけど。
いやあ、それにしても勇気ある会社です。たぶん、ぼく同様、一部の好き者は大喜びだろうけれど、その数はそんなには多くないであろうことも十分に想像がつきます。いったい何枚プレスしているのやら。どう考えても、いつまでも残ってそうなラインナップに思えませんから、ぼくはしかたなく(?)片っ端から買いまくってます。だって、500円とか、700円とか、高くても1500円だし(笑)。
こうして特殊な映画たちのことを書くと、みなさんがずずずと引いていくであろうことは重々わかってはいるんですが、やはり書かずにはいられません。みなさん、だまされたと思って、一度どれか買ってみてください。500円とか700円ほどですから。おそらくは、見終わったあと、「ほんとにだまされた!」って思うことになるでしょうから、って、あわわ、何書いてんだ。冗談です。いや、冗談とは言い切れないな……って何書いてんだっ。
ちなみに、これらのシリーズ、黒幕は石田一氏のようで、作品によって「トータル監修」「字幕監修」などとクレジットされています。特殊映画好きにはもうおなじみの名前ですね。SF/ホラー映画史の研究家で、このジャンルが好きなファンなら、『図説 ホラー・シネマ 銀幕の怪奇と幻想』、『ムービー・モンスターズ』などの著作は当然書棚に並んでいるでしょうし、『日本版スターログ』『ホラー・ワールド』『アメージング・ムービーズ』といった氏が発行・編集に関わったジャンル雑誌はコンプリートですよね。えっ、違うの? 持ってない? おかしいなあ、我が家には全部あるのになあ……。
話はDVDシリーズに戻ります。とにかく、この「レトロ・ムービー・コレクション」、これからもまだまだマニアなら悶死必至の、信じられないようなB級(ときにZ級)作品をぞくぞくと発掘してくれそうな感じ。特殊映画好きとしてはまったく目が離せません。SF、ホラー、カルト、特撮などのファンのみなさんには、強くおすすめしたいと思います。
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久々の更新です。風邪はほぼ治った感じですが、喉をやられて、咳がなかなか抜けません。周りでも風邪っぴきが少なくないようです。書店で働く人や本好きのみなさんはただでさえほこりっぽい環境にいるはずですから、季節の変わり目の呼吸系トラブルにはご注意を。
さて、今日はジュンク堂書店池袋本店に行ってきました。神保町で働いてますから、書店に足は運ばぬ日はないのですが、このところ、神保町以外の書店に行く時間があまりとれずにいたのです。本を買うのをすべて神保町界隈で完結させてしまうのは嫌なので、本はやっぱり好きな書店、地元の書店で買いたい。そんな状況でのジュンク堂書店訪問です。仕事の用事で訪ねたKさんとおしゃべり、それに最近復帰されたMさんと久々にフロアで会い、元気な姿を目にすることもできて、なんだかいい気分だったこともあり、そして買いたい本見たい本がたまっていたこともありで、仕事中だというのに、ちょっと長居、気になる本をまとめ買いしてしまいました。ちなみに、全部仕事とは無関係の本。何やってんだか……。
ジュンク堂書店池袋店は、ご存じの通り1F集中レジ。各階でセレクトした本はスーパー感覚で、かごに入れて1Fまで持っていけるのですが、「あ、いいな、これ」「おっ、こんなの出てたんだ」「へー、知らない本だ」なんて(もちろん頭の中で)言いながら、次々に本を手にしていく、これが実に楽しい。いつもやってることなんだけど、やっぱりこういう大きな、しかも自分の好きな書店ですると格別に楽しいものです。
毎回毎回こんなまとめ買いをしていたら、物理的にも経済的にも破綻しちゃうので、たまにしかできません。だからよけいに楽しいのかもしれません。ちなみに、1回の冊数ですが、ふだんから、1冊だけ、という買い方はなんとなく苦手です。そういえば、しばらく前になりますが、永江朗氏も、こんなことを書いていました。
《本を一冊だけ買うのが苦手だ。二千円以上ならそうでもないが、千円以下の場合には、必ず他にも本を探して、二冊以上になるようにしている。千五百円前後の場合は、たいへん微妙だ。とりわけ、文庫を一冊だけ、新書を一冊だけ買うのは気が引ける。なぜだろう。たしかにケーキや生菓子を一個買いするときも気が引けてしまうが。》(『出版ダイジェスト』2006年10月21日号「ぶらぶら棚を眺め読みたい本を」永江朗)
この後、客が買うのがたった1冊だろうが、それがHな本だろうがなんだろうが、書店の人は何とも思わないであろうことが、書き手自身の実体験からよくわかっている(永江氏は元書店員)んだけど……といったことが語られるのですが、ぼくも同じことが気になってしまうのです。どうも1冊だけ、それも文庫1冊だけだったりすると買いづらくて、合わせるものを探してしまいます。しかも、はずかしい本は買わない(そういうのは、面が割れてない、地元の本屋さんで買う)から、選ぶのに時間がかかっちゃったりして大変。誰もあんたの買うものなんか気にしちゃいないって……そんなことはわかってるんですけどね。
世の中の本好きのみなさんが、この「1回の買い物で、何冊(orいくら)買うか」問題に、どのように対処されてるのか、興味津々です。
ちなみに、これらが今日買った本、最近買った本(の一部)です。
【“本をどこで何冊買うか……それが問題だったりする(こともある)”の続きを読む】
これ、ものすごーくおもしろく読みました。
- グレゴリ青山『ブンブン堂のグレちゃん 大阪古本屋バイト日記』(イースト・プレス)
副題にある通り、著者が大阪の古本屋でバイトをしていた日々を漫画日記で綴ったものです。画風は好みが別れるところかもしれませんが、本好き、古本好きにはおすすめです。とくに、大阪の古本屋事情にくわしい人なら、あの店この店もという感じで大いに楽しめることうけあいです。今日は風邪でちょっと元気がないので、復調したらあらためてくわしく紹介します。
ずいぶん前に読了していたのですが、なかなか紹介できずにいました。
- 浅井輝久『ABC青山ブックセンターの再生』(新風舎文庫)
こういうテーマの本が文庫になること自体、めずらしいし、大手の文庫シリーズではちょっと考えられません。新風舎文庫、というか新風舎のような自費出版中心でやってるところの出版物には、同じ版元としてはどうしても偏見があって、あまり手にとる気になれずにいたのですが、こういう本や、同じ書店ものの菊地敬一『ヴィレッジ・ヴァンガードで休日を』をラインナップに入れられてしまうと、書店好きとしてはやはり無視はできません。
中身のほうですが、前半では青山ブックセンター(以下ABC)の倒産と再生の経緯、後半ではABCの経営戦略を例にとった書店経営論的な内容になっています。あとがきによれば、社内セミナーを元にした報告書がベースになっているとのこと。そのせいか、倒産~再生の経緯が時系列で語られていなかったり、お店を知っていることが前提のような書き方で、お店の規模や歴史などの基本情報がきちんと説明されていないところがあり、事情にうとい読者には前半の話はわかりにくいのではないかと思われます。
また、文章も、ブログを引用するなど、非常に安易な書き方がされているところも目についたり、同じような話が繰り返し出てくるところがあったりなど、商業出版物としてはもう少し整えてほしかったと思われる点も大いに目につきます。ただ、それらの疵があるにしても、書店に興味のある方、書店関係者にとっては必読の1冊だろうと思います。一度倒産したのが、有志の署名活動などに支えられて復活するという、ほかで聞いたこともないような経緯をたどった書店の歴史と、ABCという魅力ある書店を支えた経営哲学とが、わずか700円ほどの文庫で手軽に読めるのですから。これはぜひとも書店関係者に広く手にとってほしいと思います。
ところで、青山ブックセンターの六本木店、リニューアルオープンから1周年とのこと。立地のこともあって、ABCは六本木店も本店もそれほど熱心な利用者ではないのですが、それでも、この個性的な書店が失われずに残って、こうして1年がたとうとしているのを聞くと、いち書店好きとしては本当にうれしく思います。ぜひともこのままがんばってほしいものです。
一昨日、5月30日(水)、以前から何度かこのブログでご紹介している吉祥寺書店員の集まり、「吉祥寺会(仮)」の例会、というか飲み会がありました。今まで仮の名称で落ち着かなかったのですが、とうとう正式名称が決まりましたのでご報告します。じゃーん。その名も「吉っ読」。これで「きっちょむ」と読みます。欧文で表記するなら、Kichi-Yom。
メンバーは、今のところブックスルーエと弘栄堂書店吉祥寺店の書店員のみなさん合わせて10名ほど。あくまで「吉祥寺」の「書店員」の会ですから、わたくし空犬はまあお手伝いというか相談役というか、そういう立場です。今は2店10名ほどの規模ですが、吉祥寺は新刊・専門・古本など合わせれば20を超える書店がありますから、これからどんどん広がっていくかもしれません。吉祥寺の書店関係者の方からのコンタクト、お待ちしています! もちろん、吉祥寺以外の書店や版元からの協力やコラボなどの申し出も大歓迎。この記事を読んでくださった方、噂を聞いたという版元の方、ご興味のある向きは、ブックスルーエの花本氏または弘栄堂書店の岡田氏までご連絡ください。もちろん、本ブログのコメント欄でもOKです。(早速ご連絡くださったオリオン書房の白川さん、ありがとうございました!)
5/30の会では、今後の活動目標など、いろんなことが決まりました。ただ、大量のアルコール摂取の影響下で大事なことが決まったので、全員がちゃんと覚えているかどうかやや心配です。書店員の集まりとしては先輩にあたる千葉の酒飲み書店員の会をまねたわけではないのですが、こちらの集まりも、「吉っ読」よりむしろ「吉っ飲」とするのがふさわしいのではないかと思えるほど、毎回のアルコール摂取量が大変なことになっているのです(苦笑)。冗談はともかく、ぼくの記憶にある範囲では以下のようなことが決まりました。
- 夏の文庫フェアに合わせた、吉祥寺独自セレクトの文庫フェア
- 秋の読書週間頃に合わせた賞もの(書店大賞、吉祥寺版みたいなもの?)
先に書いちゃうと、実現しなかったときが格好悪いですが、ええい、このほうがいい意味でのプレッシャーになるでしょう。ぼくなんか気が早いので、「結成1周年記念パーティは、はて、どこでやろうかなあ」なんて、早くも妄想をふくらませてるぐらいですから……。
近日中に「吉っ読」のサイトも立ち上げます。会の詳細や今後の活動については、そのサイトでくわしくご紹介する予定です。サイトができましたら、このブログでも報告しますので、本好き・書店好きのみなさんは、ぜひぜひのぞいてみてください。ブックスルーエで配布中のフリペ「ルーエの伝言」のバックナンバーも読めるようにする予定です。
というわけで、「本の街」としての吉祥寺をアピールすべく、本格的に活動を開始した「吉っ読」。「いま吉祥寺の書店がおもしろい!」なんて、「○カーポ」「○ヴィンチ」「○座」「○の雑誌」などのメディアが取り上げてくれる日を目指し、酒飲みの与太話に終わらぬよう、これからがんばります。
追記。会については、花本氏がルーエからのエールに第25回「『吉っ読』宣言」という記事を書いてますので、こちらもどうぞ。
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