夏葉社の島田さんから、まもなく出る新刊の見本を、(本屋図鑑編集部の特権で)いただきました。
- キッチンミノル写真『海文堂書店の8月7日と8月17日』(夏葉社)
本屋さん好きならば、この表紙だけでぐっときますよね。ツイッターですでに書影は目にしていましたが、実物を手にしたときは、あらためて感激して、思わず見入ってしまいました。
A5判横型で、48ページ、オールカラー。1365円(税込)です。最小限のキャプションのみを添えた、写真集です。ただただ、実物を見ていただきたい、そう思いますので、内容については、くわしくは記しません。海文堂書店のサイトに、内容紹介と写真が1枚あがっていますので、そちらをご覧ください。
すばらしい写真は、キッチンミノルさんの手になるもの。本をぱらぱらめくりながら、やっぱり本屋さんの棚っていいなあと、あらためて実感させられます。とにかく、写真がほんとにすばらしくて、ほんものの棚を見ているようです。こんな、書店のことだらけのブログをやっていて、あちこちの書店レポを書いたりしていますから、本屋さんの棚を撮影させてもらう機会は多いほうです。でも、こちらのは単なる記録用の素人写真。キッチンミノルさんの写真は、記録用途にしてもあまりにも下手くそな当方の素人写真とは、もう、なんというか、まったくの別世界、異次元のレベル。同じように、書店の店内や棚を対象にしているのに、なにゆえこんなに違うのか、と不思議になるぐらい、ぜんぜん違うのです。とにかく、キッチンミノルさんの写真は、すばらしいです。
少し前の記事にも書いた通り、ぼくは「棚」好きなんですが、そういう趣味の持ち主が見ると、ほんと、手が、体が、心が震えます。もちろん、棚自体がすばらしいからこそ、なのですが、でも、文章と同じで、元がすばらしいからといって、だれが撮ってもその棚のすばらしさを同じように引き出せるわけではありませんからね。キッチンミノルさん、ほんとにありがとう。ぼくのように、簡単にお店におじゃまできない身には、最高のプレゼントになりました。
『本屋図鑑』は、取り上げたお店の店内や棚を見せるのに、写真は一切使わずに、すべてイラストで見せました。『本屋図鑑』は、イラストにして正解だったと、島田さんもぼくも思っているのですが、写真で棚や店内を見せるのも、やっぱりいいものだなあと、この本を見て、キッチンミノルさんの写真を見て、あらためて思いました。50ページに満たない、小冊子といっていい分量の本ですが、海文堂書店の魅力をあますことなくとらえた写真の数々が訴えかけてくるものは、見かけの分量の何倍もあります。だから、あかずに、何度も何度も、眺めています。
『海文堂書店の8月7日と8月17日』は、9/21発売です。夏葉社によれば、9/30までは海文堂書店での独占販売で、残部が出た場合、一部のお店で販売予定とのことです。本屋さんの店内の様子をとらえた写真集として、本屋本の歴史に残る1冊になったのではないかと、ひいき目抜きにそう思います。たくさんの本屋さん好きに、手にしてほしい1冊です。
ちなみに、本書のすばらしい写真を手がけたカメラマンのキッチンミノルさんと、『本屋図鑑』にこれまたすばらしいイラストを寄せてくれた得地直美さんはご夫婦です。その意味で、『本屋図鑑』の縁で生まれた1冊、と言ってもそんなに間違いではないかもしれません。だから、ぼくは、この本にはまったくタッチしていないのですが、でも、本屋図鑑編集部の1人として、この本の完成・刊行が、なんとなく、というか、とても、うれしいのです。
島田さん、いい本になったね。
なお、海文堂書店は、既報の通り、9/30で閉店となります。夏葉社島田さんと海文堂書店については、この記事も併せてお読みいただけるとうれしいです。
本屋さん関連本の近刊ということで、夏葉社島田さんにも縁の深い版元から刊行される、この本にもふれておきます。
- 木村俊介『善き書店員 (仮)』(ミシマ社)
内容紹介によれば、《現役書店員6名へそれぞれ平均3時間に渡るロングインタビューを敢行。「書店員」という仕事を通してこの時代に「働く」ということの本質へと肉迫》というもの。これは、本屋さん好き、本屋本好きとしては、大変気になりますね。
本書に登場する書店員さんは、小山貴之さん(東京堂書店)、佐藤純子さん(ジュンク堂書店)、高頭佐和子さん(丸善)、長崎健一さん(長崎書店)、堀部篤史さん(恵文社)、藤森真琴さん(廣文館)。なかなかユニークな人選になっていますね。
10月刊行予定とのことです。刊行されましたら、また記事であらためて取り上げたいと思います。