月末の閉店が決まっている、神戸・元町の海文堂書店。もう訪問のチャンスはないかなあ、とあきらめていたところ、別の用事になんとか組み込むことができ、短時間ではありますが、先日、お店を訪ねてくることができました。
いつもなら、自分で撮ってきた下手くそな写真の整理が終わったら、いそいそと書店レポートの記事にとりかかるところですが、今回は、なんというか、いつものだらだら書きの駄文にまとめてしまうのが、なんとなく気が進まない感じです。
ぼくには、夏葉社島田さんが書いたこの文章や、ジュンク堂書店仙台ロフト店佐藤純子さんが書いたこの文章のような、すてきな文章は書けません。かといって、キッチンミノルさんの写真がすばらしい夏葉社の新刊『海文堂書店の8月7日と8月17日』が出た後に、下手くそな写真を並べるだけの記事をまとめるのも気が引けます。
だから、たくさんの写真を前にしながら、何もできずに、何も書けずにいます。
佐藤純子さんは、こんなふうに書いています。《海文堂さんがずっとずっとあの場所でたくさんのお客さまに愛されてきた、その体温がお店の本棚からほかほかと伝わってきます。私も神戸に生まれ育っていたら、きっといまここにいるたくさんのお客さまのように、たくさんの時間をこうして過ごしていただろうなぁと思いました》。
《平野さんが神戸の街からずっと気持ちを寄せて、温かい言葉を贈ってくれたから、いままで本屋でいられました。私にできることは、するべきことは、仙台で本を届けること。そう信じることができました》。
島田さんはこんなふうに書いています。《やっぱり、どの棚を見ても、素晴らしいのだった。人文書、文芸書、芸術書、児童書、海事書、文庫、新刊棚、どの棚を見ても、海文堂書店で働くひとたちの心が伝わってくるような棚ばかりであった》。
お会いしたかったお店のみなさんのうち、曜日の関係で、平野さんにしかお会いすることができませんでした。平野さんには、品出しやレジでお忙しいところ、少しだけおしゃべりに付き合っていただきました。
次に、神戸に来ることがあっても、そのときは海文堂書店がないこと、こうして平野さんとおしゃべりしたり、買い物したりすることがかなわないことが、そのときもぴんときませんでしたし、戻ってしばらくたった今も、実感できずにいます。閉店まであと10日ほどのお店にしては、棚が、あまりにも生き生きして、動いているように見えたから、なのかもしれません。
この日、店内で耳にしたことばで、いちばんこたえたのは、地元客らしきおじさんが、レジで月末の閉店を知らされ、思わずもらしたのであろう、こんなひとことでした。
「なんや、次から、どこで本買うたらええねん」。
……ことばもありません。
↑たくさん買った本のうち1冊にだけ、カバーをかけていただきました。写真は文庫用ので、単行本用のは、なくなりそうだとのことでしたので、あきらめました。この後、閉店までに駆けつけてくれるであろう、お客さんたちの分が残っていたほうがいいですからね。
↑海文堂書店のすてきなしおり3種。平野さんのご厚意で、少し多めにいただいてきました。海文堂に思いを寄せながらも訪問のかなわない、周りの書店好きに配りたいと思います。(ですので、ご希望の方で、受け取りが可能な方は、コメント他でお声おかけください。)。
↑ビニール2種。こういうものも、写真に撮っておきたくなります。
↑『ほんまに』(くとうてん)復活を告げるチラシ。Vol.15は12月発売予定で、特集は「新刊書店と本の話 [街の本屋]海文堂書店閉店に思う」。こちらのチラシも少しまとめていただいてきましたので、しおりと併せ、beco cafeに置かせてもらうほか、beco cafeなどのイベント時にも配りたいと思います。
↑本以外のものも買ってきました。こちらは、廃海図を再利用したレターセット。
お店の姿を記録に残したい……そう考えたのは、夏葉社の島田さんだけではなかったようです。「絵図:「海文堂」の思い出、いつまでも 鳥瞰図絵師・青山さん、恩返しで絵図描く /兵庫」(9/25 毎日新聞)。
《9月末で閉店する老舗書店「海文堂書店」(神戸市中央区)の店内を描いた絵図(A3判)を完成させた。中学生の頃から通い、さまざまな本と出合った特別な思い入れのある同店の閉店にショックを受け「こんなにすてきな本屋さんがあったという思い出を残したい」と、店への恩返しのつもりで描いたという。絵図は28〜30日、同店で販売する。1部630円》。
なんとか訪問をはたせたと思ったら、今度は、最後の3日限定の、こんな絵図が刊行されるとは(苦笑)。
これから同店を訪問される方は、ぜひ、このすてきなお店の姿を目に焼き付けてきてください。お店のみなさんが最後まで手をかけた棚や平台から、本を買ってください。そして、よかったら、写真集『海文堂書店の8月7日と8月17日』と絵図とを、手にとってみてください。