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空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

やっぱり長崎書店はすばらしかった……熊本書店レポート その2

前回の続きです。熊本の老舗書店、長崎書店を紹介します。


長崎書店は、前回の記事に書いた通り、商店街の中にある路面店で、規模といい、たたずまいといい、まさに「町の本屋さん」。すぐ近くに学参に強い教科書販売店の金龍堂まるぶん店があるので、すみわけも考えてのことでしょう、学参の扱いはありませんが、コンパクトながら、ひと通りのジャンルはカバーしています。


一見、ふつうの町の本屋さんに見えますが、店内を歩いてみると、あちこちに工夫がこらされているのがわかる棚やディスプレイになっています。以下、店内外の様子を写真中心で紹介していきます。(店内写真はすべてお店の方に断って撮影したものです。写真が全体に暗めに写っているのは、当日の天候のせいもありますが、主に当方の技術の問題です。写真は昨年11/4の様子で、お店の様子は変わっている場合があります。)


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↑店舗外観。平日の様子はわかりませんが、休日は、人の流れが絶えない商店街の中にあり(右の写真をご覧ください。常時、こんな感じの人の流れです)、その意味では好立地ですが、すぐそばに競合店(前回のレポートで紹介した金龍堂)があります。2006年にリニューアルし、ご覧のような、おしゃれでかっこいい外観になりました(ちなみに、すぐそばの金龍堂も、2012年にリニューアル)。写真中は、お店の左側面。


121104長崎書店 棚ガイド

↑店内、天井近くに配された、棚の案内。写真だとわかりにくいですが、アルファベットが目立ち、店内のどこにいても、目に入りやすいようになっています。


入り口を入ると、左側すぐの一画が芸術書、右側は、熊本の郷土本・地元関連書棚。あゆみBOOKSのように芸術書を入り口近くに配したり、さわや書店のように郷土本の棚を入り口近くに配したりする例はもちろんありますが、商店街の中の、この規模のお店としては、ちょっとめずらしい配置かもしれません。

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↑芸術書コーナー。棚の角にあたる部分や、天井に近い棚などもうまく使ったスペースになっています。


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↑郷土本・地元関連書棚が充実しています。硬軟取り混ぜた品ぞろえで、当然のことながら知らない作家や書名・版元名がずらりで、印象的な棚になっています。


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↑人文書の棚。この規模の町の本屋さんとしては、かなり点数が多いほうではないでしょうか。


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↑文芸棚の一部。「本の本」好きとしては、やはりこういう棚が気になりますね。点数こそ多くはないですが、よくセレクトされた関連書が並んでいます。さらに、棚前の平台にも「本の本」が並んでいます。これ、くどいようですが、100坪ほどの町の本屋さんの平台ですからね。


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↑文庫棚。POPは少なめ、というか、ほとんどありません。担当の児玉さんに話をうかがったところ、その本の力で見せたいということでしょうか、POPなどで飾り立てるのはあまり好きではないそうで、作家名などを記したプレートさえあまり使いたくない、とのことでした。結果、ご覧の通り、シンプルな棚に。コンパクトにまとまっているため、ガイドのたぐいが少なめでも、探しにくい感じはありません。


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↑文庫棚に占める岩波文庫が、ずいぶん多めです。棚の間に見える←は、エンドで展開中のフェアへの誘導。


121104長崎書店 ビジネス121104長崎書店 ガイド121104長崎書店 食

↑左からビジネス、地図ガイド、食。女性客が多いとのことで、客層を反映した品ぞろえということでしょう、実用書の棚もにぎやかでおもしろい棚になっています。とくに、食の関連を集めた棚は、このジャンルに興味の薄いぼくのような客が見ても、なかなかおもしろい棚になっていました。


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↑スペース的には大きくはないものの、にぎやかで楽しい雰囲気の児童書コーナー。


店内は、主に児玉さんに案内していただいたんですが、棚の説明がとにかくおもしろい。「この棚は昨日、高さを変えたんです」「ここは、この前入れ替えたんです」「ここは、これから○○にするんです」と、棚のあちこちに頻繁に手を入れているそうで、日常的な商品の入れ替えとか、新刊の入れ替えレベルをこえています。説明を受けて棚を見てみると、たしかに、移動にガイドが追いついていなくて、古いままのガイドがついているところがあったり、棚に板を継ぎ足して、高さを変えた跡が残っていたりするところがいくつもありました。もちろん、それが気になるとか、ダメとかいうことはまったくなくて、むしろ、見ていてなんだかうれしくなってしまいました。お店の隅々に、もっといい棚を、もっと見やすい棚を、というスタッフの方の思いが満ちあふれていて、圧倒されました。


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↑圧倒、といえば、お店のいちばん奥の壁を使って、大きく展開されている精神世界の棚。このジャンルは、個人的に弱いので、ふだんちゃんとチェックしていませんし、あまりくわしくないのですが、でも、この規模のお店で、こんなに棚を割いているところはあまりないことぐらいはすぐにわかります。ジャンルや作家のガイドの少ない、すっきりした文庫棚と比較すると、やけにこまかいサブジャンルのガイドがたくさん示されていました。お店でもよく売れているジャンルの1つだそうで、力を入れているとのこと。こういう棚で特徴を出せるというのは、町の本屋さんのやり方としては、とてもおもしろいですね。


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↑店内のほぼ中央あたりにあるメインの平台。お客さんは、女性が6割ぐらいだとか。そのため、平台を女性客に合わせてシフトしたとのことで、おしゃれ雑貨関連の本など、女性を意識した本がずらりと並んでいます。


その平台の入り口・レジに近いほうのエンドでは、長崎書店のオリジナル文庫フェア「La! Bunko2012」が開催中でした。全点に独自帯のかけられたフェアで、なかなかしゃれた帯のデザインや規模、お店にゆかりのある人をまきこんだかたちなど、往来堂書店の「D坂文庫」と共通するものを感じさせます。



121104長崎書店 ギャラリー1121104長崎書店 ギャラリー2121104長崎書店 グリーンブックス

↑店内には、10坪ほどの「長崎書店ギャラリー」があり、展示スペースとして、またフェアスペースとして使われています。訪問時は、日記・手帳・カレンダーフェアが開催中。ギャラリーの外の壁では、バーゲン本を集めた「グリーンブックス」が展開中。フェアとして埋めるには点数が要りそうなかなり大きいスペースをうまく使っています。


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↑ギャラリーと言えば、ギャラリースペース以外にも、店内の棚や壁のあちこちに絵が飾ってあるなど、「飾り」にも気を配ったディスプレイになっています。


ほかにも紹介したい棚はいくつもあるんですが、これから訪問される方も多いでしょうから、店内の様子はこれぐらいにしておきます。


121104長崎書店 リトルスターホール1121104長崎書店 リトルスターホール2

↑ビルの3階にあるイベントスペース「リトルスターホール」。30坪ほどのホールで、刊行記念トークや読み聞かせ、ワークショップなど本に関連するものから、音楽のライヴまで、幅広いイベントに使われているようです。この広さで、音楽もできるスペースがあるのはいいですね。イベント好きとしては、近くのお店ならば、何か企画してイベントでご一緒したいぐらいです(笑)。


121104長崎書店 カバー121104長崎書店 カバーくまモン1121104長崎書店 カバーくまモン2

↑ブックカバー(書皮)は3種いただいてきました。左がレギュラーのもの。くまモンの2種、なかなかかわいい感じに仕上がってますね。


お店のグッズや制作物については、訪問前に書いた記事で、「La!Bunko 2012」の冊子やポスターなど、いくつか紹介していますので、そちらもご覧ください。


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↑たくさん買ってきた本のなかから2冊だけ。左は独自の文庫フェア「La! Bunko」から抜いてきたもの。右は、熊本関連本棚から抜いてきた『殺処分ゼロの理由 熊本方式と呼ばれて』。地元の新聞社、熊本日日新聞社の本です。ノンフィクション作家の片野ゆかさんは、この本について序文で、「日本の動物愛護史の歴史をひもとく貴重な一冊となるでしょう」としています。いろんなことを考えさせられる本でした。


以上、駆け足で、お店の様子を紹介しました。なお、棚については、品ぞろえや本の並びがもっとよくわかるような、棚に寄った写真もたくさん撮ってきたのですが、実際の棚を見ていただきたいということで、そういう写真はあえて控え目にしました。


長崎書店は、いつか行ってみたいと思っている地方の書店(書店のことばかり書いている、こんなblogを好きでやってるぐらいですから、けっこうたくさんあるのです)のなかでも、もっとも気になるお店の1つでした。今回、取材のお願いをしたところ、長崎さんには快諾いただいただけでなく、お店のスタッフの児玉さんとお二人で、食事に付き合ってくださったり、店内をすみずみ案内してくださったり、お店の資料や動画などを見せてくださったり、最後は空港へ向かうバス停まで雨の中を見送りまでしてくださったりと、もういたれりつくせり。すっかりお世話になってしまいました。この場を借りて、日曜日の午後の忙しい時間に、長時間お付き合いくださった長崎書店のみなさんにあらためてお礼申し上げたいと思います。ありがとうございました。


長崎書店、お店はすばらしいし、お店のみなさんもすてきな方々だしで、今回の熊本の書店回りは、最後の最後まで、とても楽しい時間を過ごせました。長崎書店には、取材と買い物合わせて2時間ほどもいたのに、時間が足りない感じでした。


昨年は、ふだんなかなか行く機会のない、東京近郊以外の書店をたくさん訪ねる機会に恵まれ、すてきなお店をいくつも見ることのできた1年でしたが、昨年の訪問店のなかで、長崎書店は、もっとも印象に残ったお店の1つでした。


書店好きのみなさんは、もし九州を訪問する機会がありましたら、ぜひ熊本の長崎書店を訪ねてみてください。きっと幸せな時間を過ごすことができると思います。空犬通信が自信を持っておすすめするお店です。


最後に、長崎書店の長崎さんの近況を。「新文化」の連載「本を手渡す人」に今月から寄稿、半年間にわたり担当されるそうです。前回もふれましたが、講談社の雑誌『HUgE』の書店特集にも登場されたばかり。これだけ意欲的な方ですから、あちこちから注目が集まるのは当然と言えるかもしれませんが、長崎書店の名前をあちこちのメディアで見られるようになるのは、同店のファンとしては、うれしいことですね。

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