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空犬通信

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今年最初の満月の夜に、「月の本」を読む

今日、1/27は満月。2013年、最初の満月ですね。今日は天気がよかったので、東京西部、武蔵野のあたりでは、月がとてもきれいに見えていました。月は、独りで眺めているだけでもいいものですが、誰かと一緒に楽しむのもいいものです。今日は、娘を誘って、望遠鏡と双眼鏡を使った屋内での月見を、親子でしばし楽しみました。


月はいいですね。天気にさえ恵まれれば、新月のときをのぞき、ほぼ毎日、夜空にふつうに見られる、我々にもっとも身近で当たり前な天体。でも、いつ見ても、どれだけ眺めても見飽きることがありません。天文の知識がまったくない素人にも、容易に見つけることができますし、日々、その姿を変え、しかもその変化が素人にもわかりやすく、形状や位置、色味の違いを手軽に楽しむことができます。先に、天気に恵まれれば、と書きましたが、曇り空におぼろげに見える月や暈をかぶった月も、こうこうとと明るく夜空を照らす晴天の月とはまた違った趣があっていいものです。とにかく、実に手軽に、いろいろな楽しみ方をできる天体ですよね。


そんな月を楽しむ月見人にぴったりの本が昨年出ましたね。



本書は、《もっとも身近でありながら、今なお多くの謎を秘める月。つねに人々の心を捉えてきたこの天体を、13の切り口から、古今東西の文化や科学的発見の歴史を通じて概観する》という内容。月を天文学的に、科学的に解説した本にもすばらしいものがいくつもありますし、写真集にもすぐれたものがいくつもあって、ぼくもそれら月関連本はいくつも所有していますが、この本は、月を文化史的にとらえた本。先にあげたような天文本とはまった違ったノリで、理系の話題に弱い文系読者にも大いに楽しめる中身になっています。


とても読みやすい文章で、天文読み物につきものの、難しい理系的な話は一切ありません。基本的には、落ち着いたマジメな感じの読み物ですが、ときどき顔を出すユーモアも効果的です(たとえば、月面図の作成に情熱をかけた人物について、《仕事にうちこむメドラーの執念も相当なもので、望遠鏡を覗いていない瞬間がめったになかったため、妻の顔を見ることはとてもまれだったと伝えられている》といった、思わず(笑)をつけたくなるようなくだりがさらりと出てきたりします。どんだけ望遠鏡見てるんだって(笑))


仕事帰りに、思わず夜空を見上げてしまう、そんな月好きのみなさんに広くすすめたい1冊です。


なお、本書は、1/20付日経新聞の書評欄で取り上げられています。評者は高山宏さん。「月 ベアント・ブルンナー著 人の願いと不安を反映する「鏡」」(1/20 日本経済新聞)。《M・ニコルソンの『月世界への旅』、松岡正剛『ルナティックス』とともに、博識と洞察に驚かされる月の博物学の名作》と大絶賛。ぼくの駄文と違って、すぐにも読みたくなる紹介文になっているので、ぜひこちらもチェックしてみてください。


昨年出た月の本としては、これもすばらしい本です。



《新月から三日月、そして満月を経て、再び新月へとめぐるサイクルを、わかりやすくたどるユニークな知識絵本。宇宙の不思議に迫ります。2012年〜19年の満ちかけ表付き》という本書。対象は小学生中学年からということで、児童向けの絵本なんですが、子ども向けとばかにするなかれ。書名通り、「月の満ちかけ」について、コンパクトにまとめられていて、大人でも十分に楽しめ、また勉強になります。というか、本書でカバーされている内容を、子どもにきちんと説明できる人は、相当な天文好き以外に、そんなにはいないのでは、などとも思ったりしたほど。親子での月見に最適な手引きとして、おすすめです。


ちなみに、この本は、NET21による第2回「街の本屋が選んだ絵本大賞」の、「絵本ピカピカ賞」に選ばれています。関連記事は、こちら。「NET21絵本大賞、「しろくまのパンツ」がグランプリ」(新文化)。


白水社で昨年出た天文本には、こんなのもありました。




《信仰、民俗、伝承、神話、芸術(文学、美術、建築)など、世界のさまざまな地域や時代における星と人間との関わりをまとめたはじめての事典》という内容の本書。「事典」とありますが、気軽な気持ちでぱらぱらやると、次から次に知らないことば、知らない事項が出てきて驚かされます。


試みに、今日の記事のテーマ、「月」を引いてみると、「月」という、天体単独を取り上げた百科事典的な項目はありません。ないのですが、「月」を冠する項目が80項目以上(!)、20頁近く(!)にわたって並んでいます。これは、「月」で始まる項目の数で、途中に出てくるものや、項目表記には「月」となくても関連する項目まで入れれば、さらに増えるでしょう。いやはや。


しかも、並んでいる項目が、見事に知らないものばかり。拾い読みしているだけでわくわくさせられます。なかには、「月犬とランプ」とか「月の犬と月蝕」といった、「空犬」なんてハンドルを使っている身には非常に気になる項目も含まれていたりします(ちなみに、いずれもミャンマーの伝承のよう)


やや高価な本ですし、値段的にも、内容的にも、前2書に比べると気軽にすすめにくい感じの本ではあるのですが、星や星座にまつわる伝説など、星の文化史的な側面に興味のある方ならば、楽しめそうな1冊になっています。


次の満月は、2/26。満月もいいですが、形を変える途中の月もそれぞれに魅力があってすばらしいので、ぜひ、今日紹介した本や、Webで見られる月齢カレンダーなどをお伴に、月を楽しんでみていただければと思います。


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