あまりにもすごい盤なので、BGM扱いじゃなくて本編で紹介します。
- ジェフ・ベック『ライヴ・ベック '06』
10代の頃から20年も聴いているギタリストだし、曲も知ってる曲ばかり、それなのに、からだが震えます。ギターという楽器のすごさをあらためて感じさせられます。そして、この楽器からここまで引き出せる弾き手はもっとすごい、あらためてベックのすごさに感服です。どう聴いても、これ、還暦過ぎたおっさんのプレイとは思えませんからね。
中身は、2006年のアメリカ・ツアーから1回分の演奏を、歌ものをのぞいて丸ごと収録したもの、だそうです。メンツは前作『ライヴ・ベック』と同じ、つまり、ぼくも運良く見ることができた2005年の日本公演と同じなので、あのときの驚愕と感動を聴きながら再体験できました。
演奏はオーバーダビングも編集もなし、ということで、かぎりなく生に近いライヴ演奏が聴けます。なので、チューニングの乱れも、ミストーンも、リズム隊とのずれなんかもばっちりそのままなんですが、そんな小さな疵たちは、聴いている間、まったく気になりませんでした。
代表曲が目白おし、ライヴベストといっていい選曲です。アップテンポもシャッフルもバラードも捨て曲なし。ベックの代表曲だけでなく、トミー・ボーリンの熱演で有名なビリー・コブハムの『スペクトラム』からの「ストレイタス」、日本公演でもライヴのラストを飾ったスタンダード「オーヴァー・ザ・レインボウ」が収録されているのも、ファンにはうれしいところ。
ベストトラックを1つ挙げるのが困難なほど、ほんと、どの曲もすごいんですが、とくに「トゥー・リヴァーズ」「ナディア」「エンジェル」といった、アーミング、スライド、ハーモニクスを多用したプレイはまさにベックワールド全開。いったいどんなポジションでどう弾いてるのか見当もつかないような、独自過ぎる境地に到達しています。ライヴでこのトーンコントロール、人間業とは思えません。
バックでは、ヴィニー・カリウタのドラムが光っています。ザッパ・バンド出身の凄腕ですが、前任のテリー・ボジオも同じザッパ・バンド。ふたたび、テリーの後釜をつとめることになったわけで、おもしろい縁です。
発売中の『ギター・マガジン』2007年7月号では、アルバム全曲解説のほか、「オーヴァー・ザ・レインボウ」と「スキャッター・ブレイン」の譜面&奏法解説ありなので、ギタリストのみなさんは、併読をおすすめします。