先日、というには時間が経ってしまったのですが、YouTubeラジオのゲストに呼んでいただき、本と本屋さんの話をしてきましたよ。番組は、「本こたラジオ」。
この「本こたラジオ」、「本とまち」がコンセプトの《生活のまち・妙蓮寺の「まちの本屋」から、生活のことばで本を語るYoutubeラジオ》。生配信で、アーカイブを含めると200〜300人ほどの方が視聴しているとのことです。
声をかけてくれたのは、『バウルを探して〈完全版〉』や、本好きの間ではもはや定番の1冊といっていい『本を贈る』などを手がける横浜の出版社、三輪舎の代表にして編集者の中岡祐介さん。
YouTubeで生配信って、しかも、番組を楽しんでいる人たちが300人もいるって、話し手が空犬で大丈夫なのかなあ、最近課外活動もさぼり気味だしなあ、と不安もあったんですが、会場の本屋・生活綴方は、妙蓮寺の石堂書店の向かいにある姉妹店。妙蓮寺の石堂書店といえば、町本会(町には本屋さんが必要です会議)の開催店です。縁のある、というかぼくにとってはとても大事なお店の1つなんですが、ちょっと遠くて、何かのついでにというのが難しい立地なので、このところはごぶさた。これはもう訪ねるしかないと、お受けしたのでした。
「本こたラジオ」、パーソナリティをつとめるのは、中岡さんと、本屋・生活綴方の店主鈴木雅代さん。1時間強の番組ですが、ぼくが呼んでもらったのは「本々(ほんほん)バトン」という、本にかかわる人たちによるリレートークのコーナーです。
とくにお題や指定のテーマはなかったんですが、『本屋図鑑』の空犬太郎が『本屋会議』で縁のできた石堂書店(のそば)でおしゃべりするわけですから、当然のことながら、やはり本屋さんの話が中心に。お二人を相手に30分ほど、本屋さんの話をいろいろとしてきましたよ。本や本屋の話を誰かとするのはやっぱり楽しいものだなあ、と、そんな当たり前のことを再発見&再確認できた、大変に楽しい時間となりました。聞いてくださった方にとっても楽しいものになっているといいのですが……。
このコーナー、ぼくは5人目のゲストで、これまでは以下の方が出演されたとのことです。
- 第1回 橋本亮二さん(朝日出版社・十七時退勤社)
- 第2回 友田とんさん(代わりに読む人)
- 第3回 北野太一さん(素粒社)
- 第4回 筒井菜央さん(左右社)
過去の分もアーカイブで聴けますので、興味のある方はぜひそちらもチェックしてみてください。
出演者が次の出演者候補をセレクトするリレー方式になっています。候補は広義の本関係者であれば誰でもOKとのことでしたが、町本会・『本屋会議』で石堂書店と縁のできた身としては、ここはやはり書店員につなぎたいところ。というわけで、ぼくからは吉祥寺時代からの付き合いで、現在は西荻窪、今野書店で活躍中の花本武さんを紹介しましたよ。
……という記事を早々に用意して、花本氏の出演が決まったらアップしようと思っていたんですが、見事に日を失念しており、当日(本日7/13です……)、放送が終わってからのアップになってしまいました(泣)。ぼくも日中は仕事で聴けなかったし、アーカイブで楽しむつもりでしたので、みなさんもぜひ、アーカイブで楽しんでいただければ。
……と思ったら、本屋・生活綴方(@tsudurikata)の公式アカウントから、こんなツイートが。《お詫び、そして大変残念なお知らせ。本日昼に放送しました「本こたラジオ」のアーカイブですが誤ってYoutubeから削除してしまったためにWWW(ワールドワイドウェブ)の藻屑と消えてしまいました。事前収録していた花本さんの録音を含めて後日「復元」します。ただし、二度と同じものは放送できません》。なんと……。これは残念だなあ。「復元」を楽しみに待つしかないですね。
放送は平日、火曜日のお昼ということで、放送当日は休みをとって、妙蓮寺の石堂書店、本屋・生活綴方を訪ねてきたんですが、久しぶりの妙蓮寺、なつかしい感じのする駅前や、チェーン店だらけでもシャッターだらけでもない、昔ながらのというフレーズがこんなにぴったりくる商店街もあるまいとう感じの商店街の様子もそのままで、駅を降りるだけで、街を歩くだけでほっとします。
↑石堂書店の外観。立地も、品ぞろえも、たたずまいも、これぞ街の本屋さん、です。
少し早めにおじゃましたので、放送前に、中岡祐介さんに、三輪舎がオフィスをかまえる、石堂書店の二階、その名も「本屋の二階」や本屋・生活綴方を案内してもらいました。
↑本屋・生活綴方の入り口。石堂書店の斜め前。ぼくが町本会で訪ねたころは、物置のような状態になっていたんですが、まさかの大変身。石堂書店と補完しあうような品ぞろえ。
「本屋の二階」も本屋・生活綴方も、町本会が開催されたときにはなかったもの。町本会後、どのようにこれらができたのかについては、このブログで簡単に紹介するには余るおもしろい経緯がありますので、それらは、ぜひ本屋・生活綴方発のZINE『点綴(てんてい)』を。
本屋・生活綴方は、本屋特集の『本の雑誌』2021年5月号にも登場。店主、鈴木さんが「ドアのない2つの本屋から」を寄稿しています。
↑本屋・生活綴方で買った本。大竹昭子『スナップショットは日記か? 森山大道の写真と日本の日記文学の伝統 大竹昭子 随想録』(カタリココ文庫)とウチダゴウ『鬼は逃げる』(三輪舎)。
このお店で買い物をするなら、やはり1冊は詩集にしたいなあと思って店内を見ていたら、後者の装丁、とくに紙面の仕立てが目にとまったのでした。他にも気になる詩集はいくつかあって、けっこう迷ったんですが、最終的に手にしたのが三輪舎の本だったのはほんとに偶然です。
↑石堂書店で買った本。岸政彦・柴崎友香『大阪』(河出書房新社)。大阪の本を大阪出身者が妙蓮寺で買うというのも妙な(洒落ではなく)話ですが、それまで何度も他の店で目にしていた本でも、そこで出会ったときに買いたくなる、そんなタイミングやそんな場所(店)というがあるものなんですよね。
ところで。用事で訪ねた街や旅先の本屋さんで買い物をするとき、(選ぶ余裕があるときは)できれば1冊しかない本は避けるようにしています。ぼくはふだんは神保町と中央線沿線という書店がたくさんある街に出入りしたり住んでいたりするので、それら複数の書店を使えますが、その街のその店でしか買い物ができない/しないお客さんもいるはずです。だから、そのようなお客さんたちの出会いの機会は奪いたくないのです。
でも、一方で、その店に1冊しかないような本をこそ、つまりはふだんはなかなか動きそうにない本をこそ、たまに訪問して買い物をする当方のようなタイプが買うべきなのではないか、というふうにも思えて、毎回悩むのでした……。
『大阪』は棚に1冊の本でしたが、ぼくが買うべき本、今ここで手にすべき本、そんなふうに思えた本だったのでした。
↑本屋・生活綴方を本を買ったら、ロゴの入ったこんなかわいいレシートが。