しばらく前の記事でご紹介したフェア「はじめての海外文学」。記事で紹介したお店はもちろん、それ以外のお店での開催が追加で決まるなど、さらに広がりを見せているようですね。
フェアの企画者である酒井七海さんのお店、丸善津田沼店を訪ね、フェアの様子を見てきましたので、簡単にご紹介したいと思います。(店内写真はすべてお店の方に断って撮影したものです。写真は2/21の様子で、フェアの開催場所や内容、店頭の様子は変わっている場合があります。)
フェアの場所は、同店正面入り口のエスカレータを上がって、右手奥、レジの正面です。写真をご覧いただければおわかりの通り、かなり大きなスペースを使って展開されています。点数の多いフェアで、本とPOPがこんなふうに並ぶと壮観ですね。並べることができなかった本(品切れ)があるそうで、これでも全点ではないそうです。
台の上に歩道橋のように枠(お店の方の手作りです)をわたして、それにポップが添付されています。POPが大きくて、少し本が見えにくくなってしまったと、酒井さん。たしかに、本の視認性という点ではそうかもしれませんが、POPの文言を読みたい人にはこれぐらいの大きさのほうがいいかもしれませんね。それに、POPの間から、書影がのぞいている様子もなかなか味わいがあります。
↑このアングルで見ると、手作り感と、本の並べ方がよくわかります。
↑こちらは本にかかっている統一帯。
台の手間、中央には、フェアの冊子が置いてあります。こちらは無料配布で、この冊子だけをお持ちになるお客さんも多いようで、順調にはけているのだそうですよ。フェアのガイドとして使えるだけでなく、フェア終了後も海外文学の読書ガイドとして使えるようなものになっていますからね。店頭をご覧になったら、ぜひ冊子をチェックするのを忘れずに。
このフェアは複数店舗で開催中で、これまでフェア開催店をいくつか訪ねて、店頭の様子を目にしてきましたが、ここまで大きな規模で開催さいているお店はありませんでした。そこは、企画者のお店、力の入れようが違います。さすがという感じですね。
2/16付の読売新聞夕刊でフェアの様子が取り上げられています。記事には同店のランキングが載っているのですが、なるほど!というものから予想外のものまで、隣り合っているのが不思議に思えるような組み合わせの、興味深いランキングになっています。ちなみに、同店の1位は、ダニロ・キシュ『若き日の哀しみ』(創元ライブラリ)で、「ダントツの1位」(酒井さん)なのだそうですよ。
このフェアの仕掛け人、丸善津田沼店の酒井七海さんが、3/27に西荻窪のブックカフェ、beco cafeで開催されるトークイベントに出演、「はじめての海外文学」フェアの話をします。「beco talk vol.22読みたい! 売りたい! 海外文学〜フェア「はじめての海外文学」を振り返る〜」。いくつかメディアなどにも取り上げられて話題を呼んでいる同フェアですが、酒井さん自身がフェアについて、まとまった話をする機会はそんなにないと思います。海外文学読みにも、海外文学の売り手や作り手にも参考になりそうな話がたくさん聞けそうなこのトーク。いや、参考云々以前に、酒井さんの話はとにかく楽しい(取材の日は、イベントの打ち合わせも兼ねたものだったんですが、時間が足りなくなるぐらい、盛り上がってしまいました)ので、本好き本屋好きのみなさんは、ぜひ聞きにきてください。
↑フェアから買ってきた本。ぼくも一応、選書に参加させてもらったくらいの海外文学読みではあるので、今回のフェア、既読本・所有本の率がけっこう高くて、買い物はずいぶん悩みました。
↑丸善津田沼店と言えば、自店のものだけでなく、他店のものも一緒に並べるコラボなど、書店フリペに力を入れているお店としても知られています。文芸コーナーにバックナンバー含めてたくさん並んでいますから、同店を訪問したら、とくに小説読みの方はフリペのチェックもお忘れなく。
さて、過去の記事でも何度か紹介してきましたが、同店のある津田沼エリアと言えば、東京近郊屈指の書店激戦区。複数の新刊書店がしのぎを削っているのですが、うち、パルコ津田沼店の中に入っていた芳林堂書店津田沼店が2014年5月に閉店となり、跡地に、くまざわ書店アカデミアが入りました。
芳林堂書店の津田沼店と言えば、同地で30年以上の長きにわたって営業を続けてきたお店。ブックス昭和堂と並んで、昔からの住民・利用者にとっては、津田沼と言えば、という存在で、ぼくもA館にあったころはよく利用したのですが、B館に移転してからは、ごぶさたになっていました。閉店前のしばらくは、店頭や棚の様子が、ちょっと元気のない感じになってしまっていてさびしく思っていたら、とうとう閉店に……。
くまざわ書店のサイトでは、「くまざわ書店津田沼パルコ店」となっていますが、お店の表記は「ACADEMIA くまざわ書店 」。こちらは別ブランドの「アカデミア」で一応の差異化ははかられてはいるものの、実質的には津田沼の駅周辺でのくまざわ書店は2店舗体制となるわけです。片方の、つまり既存のお店が50坪以下の小さなお店だったりするのなら、まだ2店体制もわかりますが、駅の南口側にある、コンコースから直結のお店は、2フロアにまたがる中規模店ですからね。そのようなお店がありながら、駅の反対側とはいえ、徒歩で数分の、これまたコンコース直結の建物内に出店するのですから、かなり強気な出店といっていいでしょう。
で、パルコのアカデミアですが、芳林堂時代とはまさに「生まれ変わった」という表現がぴったりの、明るいお店になっていました。パルコの客層にきっちり合わせてきたのでしょう、くまざわおなじみのアクリル什器が通常以上に多用された感のある店内は、照明もディスプレイも明るいイメージ。キッズコーナーが広めにとってあり、そのそばに生活実用書を持ってきたあたりも、若めのお母さんとお子さんの組み合わせを意識した配置と言えそうで、ほかにも女性向けを意識した並びや造りがあちこちに目につきます。
一方、そこはさすがくまざわ書店、書評コーナーの充実や、人文書他、かための本の品揃えもさすがですし、この立地、この規模ならもっと減らされていてもおかしくない学術系文庫なども、きっちり揃っています。芳林堂がなくなって残念に思っていた、津田沼駅北口側利用者の本好きの方も、このお店ならばひと安心、というか、満足に思っているのではないでしょうか。
↑店内は撮れませんので、通路から少しだけ。
追記(2/28):丸善&ジュンク堂書店のサイトに、フェアの詳細な紹介ページができています。酒井さんのインタビューも読めますよ。こちらもぜひ。「はじめての海外文学」(丸善&ジュンク堂ネットストア)。