大阪書店回りレポート、天王寺・あべの篇です。今回ご紹介するのは、以下の3店です。
- ジュンク堂書店 近鉄あべのハルカス店
- スタンダードブックストア あべの
- 喜久屋書店阿倍野店
10/19の記事に少し書きましたが、天王寺・あべのエリアの激変ぶりは予想以上でした。書店は、かつては、天王寺といえば、ユーゴー書店(閉店)に喜久屋書店に、という感じだったのが、今では、半日で回りきれないほどの書店がひしめく一大書店激戦区になっています。うち、もっとも最近できた2店、ジュンクとスタンダードを中心に簡単に紹介します。
↑ジュンク堂書店 近鉄あべのハルカス店。写真は、通路付近から撮らせてもらったこれだけ。知り合いが別の店舗から異動したと聞いていたのですが、残念ながら当日は会えず。見知った顔もなかったので、店内の撮影はできませんでした。
お店は、あべのハルカス近鉄本店ウイング館内にあり、7Fと8Fの2フロアに分かれています。フロアマップはこちらで見られます。7階は、エスカレーターと他店舗を真ん中に囲むようなコの字型のレイアウト。児童書以外の全ジャンルがまとまっています。各ジャンルの棚が整然と並ぶ、いつものジュンクスタイルの棚配置ですが、ジュンクにしては、棚の高さがやや低めにおさえられている印象を受けました。ただ、フロアを見渡せるほど低い、というわけではないのですが。
ジュンクのお店ですから、専門書を含む蔵書はいつも通り、さすがという感じで、具体的に何か不足を感じさせるような棚が目についたわけではないのですが、滞在が短時間だったせいもあるかもしれませんが、店内をうろうろしていて、なんとなく何かが足りない感じを受けてしまいました。レジが、コの字型のコのそれぞれ端にあり、新刊話題書コーナーがエスカレーター脇にあるせいか、店内の配置上のアクセントが少なく、単調に感じさせてしまうせいかもしれません。同じように棚が整然と並んでいても、ジュンクの店がすべてそのように単調に感じさせるかというとそんなことはまったくないので、やはり、並べ方や配置の工夫の違いなのかもしれません。
8階は児童書だけが独立した売り場になっています。ジュンクの入っている8階は、あべのハルカス近鉄本店のフロア構成でいうと、タワー館はベビー・こども服の売り場で、ジュンクが入っているウイング館は「kodomoの街」という専門店街になっています。つまり、子ども一色のフロアなんですね。
↑こんな写真だけを見せてもあんまり意味がないと思いますが(苦笑)、ジュンクの児童書売り場、本館に相当するタワー館とは逆側のエレベーターホールから見たところです。レンガを模した壁の向こう側がジュンクの売り場になっています。
児童書売り場は、デパート内でここまでそろえるか、というほどの、ジュンクらしいとしか言いようのない品揃え、点数。売り場内には座り読みのスペースもあり、親子連れで埋まっていました。売り場内にはお客さんもたくさんいましたが、ジュンク目当てで来る人ばかりではないだろう、というか、むしろそのような人のほうが少ないであろうとさえ思われる、デパートにやってくるふつうのママたちが、はたして、この膨大といっていい量の本のなかから目当てのものを選べるのかどうか……。複数の親子連れが、座り読みコーナーで本を読みもせずに楽しそうにおしゃべりしている様子を見ながら、そんなことを考えてしまいました。
次は、今回、天王寺・あべのエリアでいちばん楽しみにしていた、スタンダードブックストア あべの。天王寺駅側から見ると、ジュンクが入っているあべのハルカスの先にあるファッションビル、あべのHOOP内、6階にあるお店です。
↑通路から見たところ。
前日の町本会には、元海文堂書店で、現在はスタンダードブックストア あべので書籍を担当しているKさんが駆けつけてくれたんですが、この日はお休みとのこと。店内に、声をかけられそうな方がいなかったので、撮影はできませんでした。写真で様子を紹介したい棚がいくつもあったので、残念。
スタンダードブックストアといえば、心斎橋と茶屋町の2店は、大阪の本好きにとってははずせない定番ブックスポットとしてすっかり浸透した感があります。「本屋ですが、ベストセラーは置いていません。」というキャッチコピーがすべてをあらわしているといってもいいお店ですよね。
あべののお店は、その意味ではもちろん、きっちりと「スタンダードブックストア」しています。しているのですが、よその2店とはどこか違う感じもする。それは、やっぱり本の棚の違いなのかなあ、と。他の2店の書籍のセレクトがダメだとかそういうことが言いたいのではなく、なんというか、あべのの本の棚には、他の2店とは違う濃度のようなものが感じられて、見応えがあるのです。棚を流せない。これは、やっぱり、Kさんの影響というか、Kさんがお店にもたらしたものなんだろうなあ。そんなことを思いながら、時間をかけて棚を眺めてきました。
↑この日、初めての休憩。気づいたら、足が棒になってました(苦笑)。ビールを飲みながら、お店で買ったばかりの本をぱらぱらと。右は、スタンダードブックストアの書皮としおり。
最後は、喜久屋書店阿倍野店へ。前回、天王寺を訪問した際は寄る時間がなかったため、同店訪問は本当に久しぶりです。
喜久屋書店阿倍野店は、駅から徒歩数分のアポロビルの2階にあります。児童書とコミックの売り場が別になっていて、児童書を扱うこども館とコミックの漫画館は、アポロビルに隣接していて連絡通路で行き来できるルシアスビルの2Fにあります。それぞれ「館」となっていますが、同一フロアに隣合っています。
↑店内に掲示されている案内図。3つの売り場の位置関係などがわかります。
ジュンク堂書店が来てしまったので、エリア最大ではなくなりましたが、喜久屋書店阿倍野店は長らく地域では最大だったお店で、450坪あります。上のフロアマップを見てもわかる通り、児童書・コミック以外のジャンルがワンフロアにまとまっていて、この規模のお店としては、とても使いやすいレイアウトになっています。
↑写真が暗く写ってしまいましたが、こども館の様子。写真は撮れませんでしたが、「漫画館」の品揃えはさすが。
エスカレーターを上がると正面がフェアコーナーになっているのですが、端から見ていくと、なんと、夏葉社のフェアが開催中ではないですか。島田さんから教えてもらうか、ツイッターで見かけるかしていたのに、失念していたため、うれしい驚きでした。
↑こちらが夏葉社フェア。『本屋図鑑』も並んでいます。旅先の本屋さんでこういう出会いがあるなんて、しかも、自分の関わった本が並んでいるところに出会えるなんて、ほんと、こんなにうれしいことはありません。企画・担当されたのは文芸ご担当の市岡さんで、当日は会えなかったのですが、名刺を残したところ、後日、大変丁寧なメールまで頂戴してしまいました。
棚の様子を撮影させてもらおうと、話しかけた方がたまたま店長の榎本さん。夕方の忙しい時間隊だったにもかかわらず、お店の話をいろいろうかがうことができました。
店長さんからうかがった話のなかに印象的なものがありました。「気づいたら、駅からいちばん遠い書店になっていた」というのです。言われて驚きました。駅からすぐの本屋さんだと思っていたからです。「遠い」といっても、地図を見ていただければわかるように、徒歩、3〜5分ほどの距離です。店長さんの言う、この場合の「遠い」は、おそらく物理的な距離のことだけではないのだろうと思うのです。単に「遠い」だけなら、スタンダードのほうが遠いし、さらにその先にあるツタヤのほうが遠い。
でも、駅から来るお客さんにしてみれば、駅直結のMiO内にある旭屋書店や地下街にあるリブロは当然として、目の前にぐんとそびえていて目に入らないわけのない、あべのハルカス内にあるジュンクや、その先のファッションビルに入っているスタンダードのほうが「近い」のかもしれません。駅からの客の視線や動きは、ハルカスのほうに流れているからです。喜久屋書店は、そうした客の流れや視線とは、直角の方向にあります。駅から喜久屋書店がある方向を見ても、本屋があることを示す「本」の看板のようなサインは一切ないのです。
↑地下街には、このような案内もちゃんと出てはいるのですが……。
↑喜久屋書店の書皮。
強力なライバル書店が新たに、それも複数近所にできて、さぞや大変だろうと、客がいなかったらどうしよう、と思って来てみたら、店内にはたくさんのお客さんがいたので、ちょっと安心していました。それだけに、店長さんの「いちばん遠い」には考えさせられるものがありました。
直前に見たスタンダードは予想以上にすてきなお店でしたし、ジュンクの品揃えも強力としかいいようのないものでしたが、やはり、天王寺のような庶民的な街には、喜久屋書店のような(いい意味で)庶民的で敷居の低い本屋さんがあったほうがいいし、必要だと思うのです。喜久屋書店阿倍野店には、天王寺・あべのエリアを代表するお店の1つとして、ぜひともがんばってほしいものです。
以上、駆け足で、天王寺・あべのエリアの書店3店をご紹介しました。今回紹介した3店のほかにも、天王寺・あべのエリアにはたくさんの書店がありますので、このエリアで書店巡りをされる方は、事前に店の場所をきちんとおさえて、さらに、時間も余裕をもって長めにとってから行かれるといいと思います。
↑今回、大阪のあちこちの本屋さんでたくさんの本を買ってきました。この3冊は、関西の書き手の方、それも3冊とも女性の手になるもの。3冊とも大変楽しく読んだので、余力があれば、後日、これら大阪での収穫本のことも書きたいと思います。